説明

内燃機関

【課題】EGRクーラが煤類で汚れることを、簡単な構造で防止する。
【解決手段】排気通路8と吸気通路5とがEGR通路13で接続されており、EGR通路13に、EGRクーラ15とEGRバルブ16とが介挿されている。EGRバルブ16はEGRクーラ15よりも上流側に位置しており、EGR通路13のうちEGRクーラ15とEGRバルブ16との間の部位に、ある程度の容積を持つ貯留室17が接続されている。スロットルバルブ14が全開から全閉に移行すると、EGR通路13の内部は負圧状態になるため、貯留室17に溜まっていた排気ガスがEGRクーラ15を通って排気通路8に流入する。このときの排気ガスの流れにより、EGRクーラ15に付着した煤類は吹き飛ばされて排気通路8に排出される。貯留室17を設けるだけで、EGRクーラ15の汚れを自動的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた車両用内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両用内燃機関では、排気ガス中の窒素酸化物排出抑制等のため、排気ガスの一部を吸気通路に戻すEGR装置を備えている。EGR装置は必須要素としてEGR通路を備えており、EGR通路は、吸気通路のうち、例えばエアクリーナと吸気絞りバルブ(スロットルバルブ)との間に接続されており、清浄空気と排気ガスとの混合ガスが機関に供給される。排気ガスの還流量は内燃機関の運転状況に応じて制御する必要があり、そこで、EGR通路には流量制御用のEGRバルブを設けている。
【0003】
また、高温の排気ガスがそのまま新気に混入すると充填効率が低下するため、一般に、EGR通路には水冷式のEGRクーラを設けている。EGRバルブとEGRクーラとの配置関係をみると、EGRバルブをEGRクーラの上流側に設けた場合と下流側に設けた場合とがある。
【0004】
そして、排気ガスに煤などが含まれているため、機関の運転を継続しているとEGRクーラが煤で汚損する可能性があり、これが進行するとEGRクーラの冷却性能低下を招来するおそれがある。そこで、EGRクーラの細管に付着した煤類を除去することが提案されており、その例として特許文献には、EGR通路のうちEGRクーラの上流側と吸気通路とを連通管路で接続すると共に、EGRクーラを跨ぐバイパス管路を設け、EGRクーラの冷却能力を検知するセンサに基づいて、バルブを操作して吸気通路から空気をEGRクーラに逆流させることで、煤の除去を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この特許文献1は、2本の管路と3つのバルブとを新たに追加せねばならないため、構造が著しく複雑化して製造コストが大幅にアップする問題や、EGRクーラから除去された煤は吸気通路を介して燃焼室に一挙に入るため、煤が吸排気弁の摺動部に入り込んで動作不良を起こしたり、煤がシリンダボアの内面に付着してシリンダボアを傷付けたりする問題が懸念される。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、特別の制御機構を設けることなく、簡単な構造でEGRクーラを浄化できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく本願発明は、ピストンが摺動自在に嵌まったシリンダボアを有する機関本体と、前記シリンダボアに空気を供給する吸気通路と、前記シリンダボアで発生した排気ガスを排出する排気通路と、排気ガスの一部を吸気通路に還流するために前記排気通路と吸気通路とに接続されたEGR通路とを有しており、前記EGR通路には、排気ガスを冷却するためのEGRクーラと排気ガスの還流量を制御するEGRバルブとが、EGRバルブがEGRクーラの下流側に位置するようにして介挿されている内燃機関において、前記EGR通路のうち前記EGRバルブとEGRクーラとの間の部位に、排気ガスを溜める貯留室を接続した。
【発明の効果】
【0009】
シリンダボアから排出された排気ガスは大気圧より大きい圧力を有しており、このため、例えば排気ターボ過給機の駆動が可能になる。そして、EGR通路を通って吸気通路に流れる排気ガスも当然ながら大気圧より高い圧力を有しており、この圧力により、排気ガスは吸気通路に入り込む。
【0010】
従って、貯留室には、圧力を有する排気ガスが溜められており、一種の蓄圧室(アキュームレータ)として機能しているが、EGRバルブを開いている状態ではEGR通路の圧力と貯留室の圧力とは均衡しているので、排気ガスは貯留室の存在によって影響を受けることなく吸気通路に流入する。
【0011】
さて、EGRバルブは常に開いている訳ではなく、機関にある程度の負荷が掛かっている状態でのみ開くように設定されているのが普通であり、例えば、アクセル全開状態からアクセル全閉に移行するとEGRバルブが急閉するというように、車両の走行状態に応じてEGRバルブの開閉が頻繁に繰り返される。
【0012】
そして、EGRバルブが急閉すると、エジェクタ効果により、EGR通路に溜まった排気ガスは排気通路に吸引される現象が生じるが、EGR通路に接続された貯留室に圧力を持った状態で排気ガスが溜まっているため、貯留室に溜まった排気ガスは、EGRバルブの閉じ動作により、EGRクーラを通って排気通路に逆流していく。
【0013】
つまり、排気ガスの全量がEGR通路の接続部を素通りして排気通路の終端に向かうことによる吸引効果(プル効果)と、圧力を持った排気ガスが排気通路に向かうことによるプッシュ効果とにより、ある程度の流速を持って排気ガスがEGRクーラの内部を逆流するのであり、この排気ガスの逆流により、EGRクーラの細管に付着した煤類を除去して排気通路に逃がすことができる。
【0014】
このように、本願発明では、EGRクーラに煤類が付着しても、特別の管路やセンサや制御手段を負荷することなく、貯留室を設けるだけで煤類を自動的に除去できるため、コスト面において格段に優れている。また、EGRクーラから除去された煤類は排気通路に排出されるため、機関のトラブルの原因になることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)(B)とも本願発明の実施形態を示す概念図(模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態に基づいて説明する。本実施形態は、車両用内燃機関(ガソリンエンジン)に適用している。内燃機関は3気筒縦型のタイプであり、シリンダブロックやシリンダヘッドを主要要素とする機関本体1を有しており、機関本体1には、ピストンが嵌まった3つのシリンダボア2が左右方向に並んで形成されている。
【0017】
また、機関本体1(シリンダヘッド)の一方の面には吸気マニホールド3が装着されており、機関本体1の他方の面には排気マニホールド4が装着されている。吸気マニホールド3には吸気通路5が接続されており、吸気通路5のうち上流部にエアクリーナ6が配置され、それより下流側にはインタークーラ7が介挿されている。
【0018】
排気マニホールド4には排気通路8が接続されており、この排気通路8に触媒方式等の排気浄化装置9を介挿している。排気通路8の下流側の末端には消音器(図示せず)を接続しており、排気ガスは最終的には大気に放出される。
【0019】
本実施形態の内燃機関は排気ターボ過給機10を有しており、排気ターボ過給機10のタービン室10aは排気通路8のうち空気浄化装置9より上流側の部位に接続され、排気ターボ過給機10の圧縮室10bは、吸気通路5のうちエアクリーナ6とインタークーラ7との間の部位が接続されている。吸気通路8のうちインタークーラ7の下流側にはサージタンク11が介挿されており、更に、インタークーラ7とサージタンク11との間にはアクセルペダルに関連したスロットルバルブ12を設けている。
【0020】
吸気通路5と排気通路8とは、EGR通路13で接続されている。排気通路8に対するEGR通路13の接続部は、(A)のタイプでは気浄化装置9の下流側に位置しており、(B)のタイプでは、排気ターボ過給機10より上流側に位置している((A)のタイプにおいても、EGR通路13を排気通路8のうち排気ターボ過給機10より上流側に接続することは可能である。)。
【0021】
吸気通路5に対するEGR通路13の接続部は、(A)のタイプではエアクリーナ6と排気ターボ過給機10との間の部位に位置しており、(B)に示すタイプでは、排気ターボ過給機10とインタークーラ7との間の部位に位置している。(B)に示すタイプでは、吸気通路5のうちEGR通路13の接続部より上流側の部位に吸気絞り弁14を設けている。
【0022】
EGR通路13には、水冷式のEGRクーラ15とEGRバルブ16とが、EGRバルブ16が下流側に位置するようにして介挿されている。敢えて述べる必要はないが、EGRクーラ15は、冷却水の流入口15aと排出口15bとを備えている。そして、EGR通路13うちEGRクーラ15とEGRバルブ16との間の部位に、排気ガスを蓄える貯留室17が設けられている。貯留室17は、EGR通路13の本来の容積に対して付加された容積を有したらよいが、例えば、EGRクーラ15の容積の半分程度以上とすることができる。
【0023】
以上の構成において、EGRバルブ16が開いている状態では、還流排気ガスは貯留室17とは関係なく吸気通路5に送られる。そして、例えば加速してから減速する場合のように、スロットルバルブ12が全開から全閉に移行すると、EGRバルブ16が急閉し、これに伴って、排気通路8を流れる排気ガスは、その全量がEGR通路13との接続部を素通りして消音器の方に向かう。
【0024】
すると、エジェクタ効果によってEGR通路13の内部は負圧になるため、EGR通路13の内部に溜まった排気ガスは排気通路8に向けて吸引されると共に、圧力を持って貯留室17に溜まっていた排気ガスがEGRクーラ15を通って排気通路8に向けて一気に流れる。これにより、EGRクーラ15に内面に付着していた煤類は排気ガスの流れで吹き飛ばされて、排気通路8に排除される。そして、EGRバルブ16の開閉は車両の運転に伴って頻繁に行われるため、EGRクーラ15に煤類が付着しかけてもすぐに除去される。従って、EGRクーラ15を常に綺麗な状態に保持して、EGRクーラ15の冷却性能を長期にわたって高い状態に維持できるのである。
【0025】
(A)及び(B)に示す例では、貯留室17の付け根(枝部)はEGR通路13に対して略直交した姿勢になっているが、(C)に示すように、逆流排気ガスがEGRクーラ15に流れ易くなるように付け根部を傾斜させることも可能である。この場合は、貯留室17に溜まった排気ガスの排出とEGRバルブ16との開閉との応答性が高くなって、逆流する排気ガスの流速を速くできると推測される。
【0026】
また、貯留室17は実施形態のようにEGR通路13から分岐とした状態に設けることに限定されるものではなく、EGR通路13を囲うように形成したり、EGR通路13に膨大部を形成してこれを貯留室と成したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は内燃機関に実際に適用できる。従って、産業上、利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 機関本体
2 シリンダボア
3 吸気マニホールド
4 排気マニホールド
5 吸気通路
6 エアクリーナ
7 インタークーラ
8 排気通路
10 排気ターボ過給機
11 サージタンク
12 スロットルバルブ
13 EGR通路
15 EGRクーラ
16 EGRバルブ
17 貯留室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンが摺動自在に嵌まったシリンダボアを有する機関本体と、前記シリンダボアに空気を供給する吸気通路と、前記シリンダボアで発生した排気ガスを排出する排気通路と、排気ガスの一部を吸気通路に還流するために前記排気通路と吸気通路とに接続されたEGR通路とを有しており、前記EGR通路には、排気ガスを冷却するためのEGRクーラと排気ガスの還流量を制御するEGRバルブとが、EGRバルブがEGRクーラの下流側に位置するようにして介挿されている構成であって、
前記EGR通路のうち前記EGRバルブとEGRクーラとの間の部位に、排気ガスを溜める貯留室が接続されている、
内燃機関。

【図1】
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