説明

内燃機関

【課題】圧縮着火燃焼を行う運転領域を有する内燃機関において、特に高回転域における着火性を高めて、圧縮着火燃焼の安定性を高める。
【解決手段】内燃機関は、エンジン1の気筒11内に吸気を送る吸気通路41において、当該吸気が接触する内壁の断熱度合いを変化させるように構成された断熱度合い変化手段(第1吸気通路43、第2吸気通路44、切替弁47)を備える。断熱度合い変化手段は、エンジンが圧縮着火を行う運転領域において、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、低回転域にあるときよりも、内壁の断熱度合いを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、少なくとも一部の運転領域において、燃焼室内の混合気を圧縮着火燃焼させる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、低負荷低回転の運転領域で圧縮着火燃焼を行うガソリンエンジンにおいて、その圧縮着火を安定化させるためにアシスト点火を行う技術が記載されている。
【0003】
例えば特許文献2には、吸気ポートに燃料噴射弁を配置したガソリンエンジンにおいて、その吸気ポート内に配置した断熱部材の内圧を、エンジンの温度に応じて変更することが記載されている。つまり、断熱部材は、吸気ポートの内壁の一部を構成するように配置されており、エンジン始動時(つまり冷間時)には、断熱部材の内圧を大気圧に維持することによって、シリンダヘッドからの熱を吸気ポートに伝達して燃料の霧化を促進し、エミッション性及び燃費の悪化を防止する一方、エンジンの温間時には断熱部材の内圧を負圧にすることによって、吸入空気の昇温を防止し、充填効率を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−105974号公報
【特許文献2】特開2010−223073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されているような圧縮着火燃焼を行う運転領域を有するエンジンにおいては、高回転域では、1サイクル当たりの時間が短くなって混合気の反応時間が不足するため、低回転域に比べて圧縮端温度が低くなり、圧縮着火の着火性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮着火燃焼を行う運転領域を有する内燃機関において、特に高回転域における着火性を高めて、圧縮着火燃焼の安定性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する内燃機関は、燃焼室内の混合気を圧縮着火させる運転領域を有するよう構成されたエンジンと、前記エンジンの気筒内に吸気を送る吸気通路において、当該吸気が接触する内壁の断熱度合いを変化させるように構成された断熱度合い変化手段と、を備え、前記断熱度合い変化手段は、前記エンジンが前記圧縮着火を行う運転領域において、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、低回転域にあるときよりも、前記内壁の断熱度合いを低下させる。
【0008】
この構成によると、内燃機関は、吸気通路において吸気が接触する内壁の断熱度合いを変化させるように構成された断熱度合い変化手段を備えており、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、低回転域にあるときよりも、内壁の断熱度合いを低下させる。エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、1サイクル当たりの時間が相対的に長くなり、気筒内の混合気の反応時間を長く確保することが可能であるため、圧縮着火の着火性は良好になる。そこで、エンジンが圧縮着火を行う運転領域において低回転域にあるときには、吸気通路の内壁の断熱度合いを相対的に高めて、気筒内に導入される吸気の温度上昇を抑制する。このことは、燃焼温度を低下させ、燃焼室内での燃焼ガス温と燃焼室壁面温度との差温を小さくする。その結果、圧縮着火燃焼の安定性を確保しつつも、冷却損失の低減に有利になる。
【0009】
一方、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、気筒内の混合気の反応時間が相対的に短くなり、圧縮着火の着火性が低下する。そこで、エンジンが圧縮着火を行う運転領域において高回転域にあるときには、吸気通路の内壁の断熱度合いを相対的に低下して、気筒内に導入される吸気を吸気通路の内壁を通じて加熱して、その温度を高める。このことは、圧縮着火の着火性を向上させるため、圧縮着火燃焼の安定性が確保される。
【0010】
ここで、「低回転域」「高回転域」はそれぞれ、エンジンの定格回転を低回転側及び高回転側の2つの領域に区分したときの、低回転域、及び、高回転域としてもよい。また、エンジンの定格回転を低回転域、中回転域、及び高回転域の3つの領域に区分したときの、低回転域、及び、高回転域としてもよいし、低及び中回転域を、ここでいう「低回転域」としてもよいし、それとは逆に、中及び高回転域を、ここでいう「高回転域」としてもよい。
【0011】
前記断熱度合い変化手段は、断熱度合いが所定よりも高く設定された内壁を有する第1吸気通路と、前記第1吸気通路に並列に設けられかつ、当該第1吸気通路よりも断熱度合いが低い内壁の第2吸気通路と、前記第1及び第2吸気通路を通過する吸気の流量割合を調整する流量調整機構と、を有し、前記流量調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、前記第1吸気通路を通過する吸気割合を、前記第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高めると共に、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、前記第2吸気通路を通過する吸気割合を、前記第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高める、としてもよい。
【0012】
第1吸気通路は、断熱度合いが所定よりも高く設定された内壁を有しているため、ここを通過する吸気は、その温度上昇が抑制される。第1吸気通路は、例えば、吸気通路を構成する母材よりも熱伝導率が低い断熱層によってその内壁面を構成してもよい。
【0013】
一方、第2吸気通路は、第1吸気通路よりも断熱度合いが低い内壁であるため、ここを通過する吸気は、その温度上昇が許容される。第2吸気通路は、第1吸気通路のような断熱層を設けない通路として構成してもよい。
【0014】
そうして、流量調整機構は、エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、第1吸気通路を通過する吸気割合を、第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高める。このことにより、吸気の温度上昇は抑制される。その結果、前述したように、圧縮着火燃焼の安定性を確保しつつも、冷却損失の低減に有利になる。尚、このときに、吸気は、第1吸気通路のみを通過させ、第2吸気通路を通過させないようにしてもよい。
【0015】
一方、流量調整機構は、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、第2吸気通路を通過する吸気割合を、第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高める。前記と同様に、このときに吸気は、第2吸気通路のみを通過させ、第1吸気通路を通過させないようにしてもよい。このことにより、吸気は加熱され易くなるから、前述したように、圧縮着火燃焼の安定性を確保することが可能になる。
【0016】
前記断熱度合い変化手段は、吸気通路の内壁面を覆うように設けられた中空部と、当該中空部内の圧力を変更可能に構成された圧力調整機構と、を有し、前記圧力調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧よりも低くすると共に、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧以上にする、としてもよい。
【0017】
こうすることで、圧力調整機構が、エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、中空部内の圧力を大気圧よりも低くすることによって、内壁の断熱度合いが高まり、吸気の温度上昇は抑制される。その結果、前述したように、圧縮着火燃焼の安定性を確保しつつも、冷却損失の低減に有利になる。
【0018】
一方、圧力調整機構は、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、中空部内の圧力を大気圧以上にする。このことにより、内壁の断熱度合いが低下し、吸気が加熱され易くなる。その結果、気筒内に導入される吸気の温度が高まり着火性が向上するため、圧縮着火燃焼の安定性が確保される。
【0019】
前記流量調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、前記第1吸気通路を通過する吸気割合を、前記第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高めると共に、前記エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、前記第2吸気通路を通過する吸気割合を、前記第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高める、としてもよい。
【0020】
エンジンの運転状態が高負荷域にあるときには、燃焼室内の圧縮端温度及び圧縮端圧力が高くなって圧縮着火の着火性は高まる一方で、燃焼温度が高くなることに起因して冷却損失が増える。そこで、エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、第1吸気通路を通過する吸気割合を、第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高めて、気筒内に導入する吸気の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0021】
一方、エンジンの運転状態が低負荷域にあるときには、前記とは逆に、燃焼室内の圧縮端温度及び圧縮端圧力が低くなって圧縮着火の着火性が低下する。そこで、エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、第2吸気通路を通過する吸気割合を、第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高めて、気筒内に導入する吸気の温度上昇を図ることで、圧縮着火の着火性が高まり、圧縮着火燃焼が安定化する。
【0022】
前記圧力調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧よりも低くすると共に、前記エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧以上にする、としてもよい。
【0023】
こうすることで、前記と同様に、エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、中空部内の圧力を大気圧よりも低くして断熱度合いを高めることにより、気筒内に導入する吸気の温度上昇を抑制することで、圧縮着火の着火性を確保しつつも、冷却損失が低減する。
【0024】
一方、エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、中空部内の圧力を大気圧以上にして断熱度合いを低下することにより、気筒内に導入する吸気を加熱して、圧縮着火の着火性が確保される。
【0025】
ここで、「低回転高負荷域」「高回転低負荷域」はそれぞれ、縦軸をエンジン負荷、横軸をエンジン回転数としたエンジンの運転領域を、例えば右斜め上方向に延びる1本の分割線によって2つに区分したときの、低回転高負荷域、及び、高回転低負荷域としてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、前記の内燃機関は、エンジンが圧縮着火を行う運転領域において低回転域にあるときには、吸気通路の内壁の断熱度合いを相対的に高めて、気筒内に導入される吸気の温度上昇を抑制することにより、圧縮着火燃焼の安定性を確保しつつも、冷却損失の低減に有利になる一方、エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、吸気通路の内壁の断熱度合いを相対的に低下して、気筒内に導入される吸気の温度を高めることによって、圧縮着火の着火性が向上し、圧縮着火燃焼の安定性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】内燃機関の構成を概略的に示す図である。
【図2】吸気通路内壁の断熱度合いに関するエンジンの運転マップの一例を示す図である。
【図3】吸気通路内壁の断熱度合いに関する、図2とは異なる運転マップの一例を示す図である。
【図4】図1とは異なる構成の内燃機関の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、リーンバーンエンジン(以下、単にエンジンとも言う)の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1に示すように、エンジン・システムは、エンジン1、エンジン1に付随する様々なアクチュエーター、様々なセンサ、及びセンサからの信号に基づきアクチュエーターを制御するエンジン制御器100を有する。
【0029】
エンジン1は、火花点火式内燃機関であって、図例では一つのみ図示するが、複数のシリンダ11を有する。エンジン1は、自動車等の車両に搭載され、その出力軸は、図示しないが、変速機を介して駆動輪に連結されている。エンジン1の出力が駆動輪に伝達されることによって、車両が推進する。エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えており、シリンダブロック12の内部にシリンダ11が形成されている。シリンダブロック12及びシリンダヘッド13の内部には、冷却水が流れるウォータージャケット121(但し、シリンダブロック12内のウォータージャケットのみを図示する)が形成されている。
【0030】
ピストン15は、各シリンダ11内に摺動自在に嵌挿されており、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画している。この実施形態では、ピストン15の冠面に凹部が形成されている。
【0031】
図1には一つのみ示すが、シリンダ11毎に2つの吸気ポート18がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の下面(燃焼室17の上面を区画する天井面)に開口することで燃焼室17に連通している。同様に、シリンダ11毎に2つの排気ポート19がシリンダヘッド13に形成され、それぞれがシリンダヘッド13の天井面に開口することで燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、シリンダ11内に導入される新気が流れる吸気通路41に接続されている。吸気通路41における図示省略の上流側には、吸気流量を調整するスロットル弁20が介設しており、スロットル弁20は、エンジン制御器100からの制御信号を受けてその開度が調整される。一方、排気ポート19は、各シリンダ11からの既燃ガス(排気ガス)が流れる排気通路(図示省略)に接続されている。排気通路には、図示は省略するが、一つ以上の触媒コンバータを有する排気ガス浄化システムが配置される。
【0032】
図に示すように、吸気弁21及び排気弁22はそれぞれ、吸気ポート18及び排気ポート19を燃焼室17から遮断(閉)することができるように配設されている。吸気弁21は吸気弁駆動機構により、排気弁22は排気弁駆動機構により、それぞれ駆動される。吸気弁21及び排気弁22は所定のタイミングで往復動して、吸気ポート18及び排気ポート19を開閉し、シリンダ11内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、図示は省略するが、それぞれ、クランクシャフトに駆動連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有し、これらのカムシャフトはクランクシャフトの回転と同期して回転する。また、少なくとも吸気弁駆動機構は、吸気カムシャフトの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は機械式の位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)23を含んで構成されている。VVT23と共に、弁リフト量を連続的に変更可能なリフト可変機構(CVVL(Continuous Variable Valve Lift))を備えるようにしてもよい。
【0033】
点火プラグ31は、例えばねじ等の周知の構造によって、シリンダヘッド13に取り付けられている。点火プラグ31は、この実施形態では、シリンダ11の中心軸に対し、排気側に傾斜した状態で取り付けられており、その先端部(電極)は燃焼室17の天井部に臨んでいる。尚、点火プラグ31の配置はこれに限定されるものではない。点火システム32は、エンジン制御器100からの制御信号を受けて、点火プラグ31が所望の点火タイミングで火花を発生するよう、それに通電する。一例として、点火システム32はプラズマ発生回路を備え、点火プラグはプラズマ点火式のプラグとしてもよい。後述するように、このエンジン1は混合気をリーンにするため、着火エネルギの高いプラズマ点火式のプラグの採用は、着火安定性を向上する上で有利になる。
【0034】
燃料噴射弁33は、この実施形態ではシリンダ11の中心軸に沿って配置され、例えばブラケットを使用する等の周知の構造でシリンダヘッド13に取り付けられている。燃料噴射弁33の先端は、燃焼室17の天井部の中心に臨んでいる。尚、燃料噴射弁33の配置はこれに限定されるものではない。燃料噴射弁33はまた、例えば多噴口型の燃料噴射弁であるが、これに限定されるものではない。燃料供給システム34は、燃料噴射弁33に燃料を供給する燃料供給系と、燃料噴射弁33を駆動する電気回路と、を備えている。電気回路は、エンジン制御器100からの制御信号を受けて燃料噴射弁33を作動させ、所定のタイミングで所望量の燃料を、燃焼室17内に噴射させる。ここで、このリーンバーンエンジン1の燃料は、この実施形態ではガソリンであるが、これに限定されるものではなく、軽油やバイオエタノール等を含む各種の液化燃料、及び、天然ガス等を含む各種の気体燃料を適宜採用し得る。尚、使用する燃料によっては、点火プラグ31を省略しても良い。
【0035】
エンジン制御器100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
【0036】
エンジン制御器100は、少なくとも、エアフローセンサ71からの吸気流量に関する信号、クランク角センサ72からのクランク角パルス信号、アクセル・ペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ73からのアクセル開度信号、車速センサ74からの車速信号をそれぞれ受ける。エンジン制御器100は、これらの入力信号に基づいて、以下のようなエンジン1の制御パラメーターを計算する。例えば、所望のスロットル開度信号、燃料噴射パルス、点火信号、バルブ位相角信号等である。そしてエンジン制御器100は、それらの信号を、スロットル弁20(スロットル弁20を動かすスロットルアクチュエーター)、燃料供給システム34、点火システム32及びVVT23等に出力する。
【0037】
このリーンバーンエンジン1の特徴的な点は、エンジンの図示熱効率を高めて、燃費性能を従来に比べて大幅に向上させる観点から、エンジン1の幾何学的圧縮比εを18以上40以下の超高圧縮比に設定すると共に、少なくとも部分負荷の運転領域においては空気過剰率λを2.5以上8以下に設定して、混合気をリーン化することに対し、燃焼室17の断熱構造を、さらに組み合わせる点にある。
【0038】
ここで、このエンジン1は圧縮比=膨張比となる構成から、高圧縮比と同時に、比較的高い膨張比を有するエンジン1でもある。尚、圧縮比<膨張比となる構成(例えばアトキンソンサイクルや、ミラーサイクル)を採用してもよい。
【0039】
また、燃焼室17は、図1に示すように、シリンダ11の壁面と、ピストン15の冠面と、シリンダヘッド13の下面(天井面)と、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッドの面と、によって区画形成されており、これらの各面に、後述する構成を有する断熱層61,62,63,64,65が設けられることによって、燃焼室17が断熱化されている。尚、以下において、これらの断熱層61〜65を総称する場合は、断熱層に符号「6」を付す場合がある。断熱層6は、これらの区画面の全てに設けてもよいし、これらの区画面の一部に設けてもよい。また、図例では、シリンダ壁面の断熱層61は、ピストン15が上死点に位置した状態で、そのピストンリング14よりも上側の位置に設けられており、これにより断熱層61上をピストンリング14が摺動しない構成としている。但し、シリンダ壁面の断熱層61はこの構成に限らず、断熱層61を下向きに延長することによって、ピストン15のストロークの全域、又は、その一部に断熱層61を設けてもよい。また、燃焼室17を直接区画する壁面ではないが、吸気ポート18や排気ポート19における、燃焼室17の天井面側の開口近傍のポート壁面に断熱層を設けてもよい。尚、図1に図示する各断熱層61〜65の厚みは実際の厚みを示すものではなく単なる例示であると共に、各面における断熱層の厚みの大小関係を示すものでもない。
【0040】
このリーンバーンエンジン1では、前述の通り幾何学的圧縮比εを18≦ε≦40に設定している。理論サイクルであるオットーサイクルにおける理論熱効率ηthは、ηth=1−1/(εκ−1)であり、圧縮比εを高くすればするほど、理論熱効率ηthは高くなる。また、ガスの比熱比κを高めれば高めるほど、言い換えると、空気過剰率λを高めれば高めるほど、理論熱効率ηthは高くなる。
【0041】
しかしながら、エンジン(正確には、燃焼室の断熱構造を有しないエンジン)の図示熱効率は、所定の幾何学的圧縮比ε(例えば15程度)でピークになり、幾何学的圧縮比εをそれ以上に高めても図示熱効率は高くならず、逆に、図示熱効率は低下することになる。これは、燃料量及び吸気量を一定のままで幾何学的圧縮比を高くした場合、圧縮比が高くなればなるほど、燃焼圧力及び燃焼温度が高くなることに起因している。つまり、燃焼室17を区画する面を通じて熱が放出することに伴う冷却損失は、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定され、燃焼ガスの圧力及び温度が高くなるほど熱伝達率は高くなるから、燃焼圧力及び燃焼温度が高くなることは、その分、冷却損失を増大させることになる。その結果、リーンバーンエンジンは、幾何学的圧縮比が高くなればなるほど、図示熱効率が低下してしまうのである。このように、混合気をリーン化しつつ、幾何学的圧縮比を高めることによってエンジンの図示熱効率を高めようとしても、冷却損失が増大することにより、理論熱効率よりも大幅に低い図示熱効率で頭打ちなってしまう。
【0042】
これに対し、このリーンバーンエンジン1では、高い幾何学的圧縮比εにおいて図示熱効率が高まるように、燃焼室17の断熱構造を組み合わせている。つまり、燃焼室17の断熱化により冷却損失を低減させ、それによって図示熱効率を高める。
【0043】
一方で、燃焼室17を断熱化して冷却損失を低減させるだけでは、その冷却損失の低減分が排気損失に転換されて図示熱効率の向上にはあまり寄与しないところ、このリーンバーンエンジン1では、前述したように、高圧縮比化に伴う高膨張比化によって、冷却損失の低減分に相当する燃焼ガスのエネルギを、機械仕事に効率よく変換している。すなわち、このリーンバーンエンジン1は、冷却損失及び排気損失を共に低減させる構成を採用することによって、図示熱効率を大幅に向上させているということができる。
【0044】
ここで、空気過剰率λについて検討する。空気過剰率λが2.5よりも低くなると燃焼室17内の最高燃焼温度が高くなって、燃焼室17からRawNOxが排出され得る。前述したように、このリーンバーンエンジン1は、冷却損失と共に排気損失の低減をも図っているため、排気温度が比較的低く触媒の活性化には不利である。そのため、燃焼室17からのRawNOxの排出を回避乃至抑制することが望ましく、そのためには、空気過剰率λを2.5以上に設定することが好ましい。言い換えると、燃焼室17内の最高燃焼温度が所定温度(例えば、RawNOxが生成し得る温度としての1800K(ケルビン))以下となる範囲で、空気過剰率λを設定することが望ましい。エンジン制御器100は、例えばエンジン1の部分負荷における運転領域内で、負荷の上昇に伴い(言い換えると、燃料噴射量の増量により空気過剰率λが上がることに伴い)、最高燃焼温度が所定温度を超えるようなときには、空気過剰率λを下げてエンジン1を運転することが望ましい。
【0045】
一方、本願発明者らの検討によると、空気過剰率λ=8で図示熱効率がピークになることから、空気過剰率λの範囲としては、2.5≦λ≦8が好ましい。尚、エンジン1の全負荷の運転領域においては、トルク優先により、空気過剰率λをさらに下げて例えばλ=1としてもよい。前記の空気過剰率λの数値範囲は、エンジン1の、少なくとも部分負荷の運転領域における好ましい範囲である。
【0046】
尚、混合気のリーン化は、スロットル弁20を開き側に設定することになるから、ガス交換損失(ポンピングロス)の低減による図示熱効率の向上にも寄与し得る。
【0047】
次に、燃焼室17の断熱構造について、さらに詳細に説明する。燃焼室17の断熱構造は、前述したように、燃焼室17を区画する各区画面に設けた断熱層61〜65によって構成されるが、これらの断熱層61〜65は、燃焼室17内の燃焼ガスの熱が、区画面を通じて放出されることを抑制するため、燃焼室17を構成する金属製の母材よりも熱伝導率が低く設定される。ここで、シリンダ11の壁面に設けた断熱層61については、シリンダブロック12が母材であり、ピストン15の冠面に設けた断熱層62についてはピストン15が母材であり、シリンダヘッド13の天井面に設けた断熱層63については、シリンダヘッド13が母材であり、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面に設けた断熱層64,65については、吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ母材である。従って、母材の材質は、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びピストン15については、アルミニウム合金や鋳鉄となり、吸気弁21及び排気弁22については、耐熱鋼や鋳鉄等となる。但し、前述したように、このリーンバーンエンジン1は排気損失を低減していることから、排気ガス温度が大幅に低下しているため、特に排気弁22については耐熱鋼でなくても、従来は使用することができなかった、又は、使用することが困難であった材料(例えばアルミニウム合金等)を使用することも可能である。
【0048】
また、断熱層6は、冷却損失を低減する上で、母材よりも容積比熱が小さいことが好ましい。つまり、燃焼室17内のガス温度は燃焼サイクルの進行によって変動するが、燃焼室の断熱構造を有しない従来のエンジンは、シリンダヘッドやシリンダブロック内に形成したウォータージャケット内を冷却水が流れることにより、燃焼室17を区画する面の温度は、燃焼サイクルの進行にかかわらず、概略一定に維持される。
【0049】
一方で、冷却損失は、前述の通り、冷却損失=熱伝達率×伝熱面積×(ガス温度−区画面の温度)によって決定されることから、ガス温度と壁面の温度との差温が大きくなればなるほど冷却損失は大きくなってしまう。冷却損失を抑制するためには、ガス温度と区画面の温度との差温は小さくすることが望ましいが、前述したように、燃焼室17の区画面の温度を概略一定に維持した場合、ガス温度の変動に伴い差温が大きくなることは避けられない。
【0050】
そこで、前記の断熱層6は熱容量を小さくし、燃焼室17の区画面の温度が、燃焼室17内のガス温度の変動に追従して変化することが好ましい。
【0051】
また、断熱層6の熱容量を小さくすることは、排気損失の低減にも有利になる。つまり、仮に断熱層の熱容量が大きいときは、燃焼室17内の温度が低下したときでも、区画面の温度が下がらない一方で、燃焼室17が断熱構造を有しているため、燃焼室17内の温度を高温のままに維持してしまう。このことは、結果として排気損失を増大させることになり、エンジン1の熱効率の向上を阻害する。
【0052】
これに対し、断熱層6の熱容量を小さくすることは、燃焼室17内の温度が低下したときに、それに追従して区画面の温度が低下する。従って、燃焼室17内の温度を高温に維持してしまうことを回避し得るから、前述した、温度追従性に伴う冷却損失の抑制のほか、排気損失の抑制にも有利になり得る。
【0053】
断熱層6の例示として、この断熱層6は、シリンダ11の壁面、ピストン15の冠面、シリンダヘッド13の天井面、並びに、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッド面、つまり、燃焼室17を区画する区画面に、例えばプラズマ溶射により形成した、ジルコニア(ZrO)、又は、部分安定化ジルコニア(PSZ)の皮膜によって構成してもよい。ジルコニア又は部分安定化ジルコニアは、熱伝導率が比較的低くかつ、容積比熱も比較的小さいため、母材によりも熱伝導率が低くかつ、容積比熱が母材と同じか、それよりも小さい断熱層6が構成される。
【0054】
図2は、リーンバーンエンジン1の温間時における運転マップの一例を示している。前述したように、全負荷の運転領域において空気過剰率をλ=1にする場合は、点火プラグ31の駆動によって燃焼室17内の混合気に点火する火花点火モードとし、空気過剰率λを、2.5〜8に設定する、それ以外の運転領域(言い換えると部分負荷の運転領域)では、燃焼室17内の混合気を圧縮着火させる圧縮着火モードとすればよい。
【0055】
この圧縮着火モードにおいて、エンジン1の運転状態が低回転高負荷域にあるとき、言い換えると、図2において右斜め上方向に延びる一点鎖線よりも上側の領域にあるときには、低回転であるために1サイクル当たりの時間が相対的に長くなり、シリンダ11内の混合気の反応時間を長く確保することが可能である。また、高負荷であるために燃焼室17内の圧縮端温度及び圧縮端圧力が比較的高くなる。このため、圧縮着火の着火性が高まり、圧縮着火燃焼は安定化する。
【0056】
これに対し、エンジン1の運転状態が高回転低負荷域にあるとき、言い換えると、図2において右斜め上方向に延びる一点鎖線よりも下側の領域にあるときには、高回転であるために1サイクル当たりの時間が相対的に短くなり、シリンダ11内の混合気の反応時間を長く確保することができない。また、低負荷であるために燃焼室17内の圧縮端温度及び圧縮端圧力が比較的低くなってしまう。このことは、圧縮着火の着火性を低下させてしまう。
【0057】
また、前述した冷却損失を低減する上では、燃焼温度と燃焼室17の区画面との差温を小さくすることが有効であり、そのためには、例えばシリンダ11内に導入する吸気の温度を下げて、燃焼温度を、その分低下させることが有効である。
【0058】
そこで、このリーンバーンエンジン1では、エンジン1の運転状態に応じて、シリンダ11内に導入する吸気の温度を調整可能に構成されている。具体的には、図1に示すように、エンジン1に取り付けられた吸気通路41内における下流側の部分には、区画壁42が設けられており、これによって、吸気通路41内は互いに並行な第1吸気通路43と第2吸気通路44とに分岐されている。
【0059】
第1吸気通路43内には、その内壁に、吸気がこの第1吸気通路43内を通過するときに、シリンダヘッド13等から受熱して温度が上がることを抑制乃至回避するような、熱伝導率が非常に低くて断熱性に優れた断熱層45が設けられている。断熱層45は、例えば前述したように、ジルコニア又は部分安定化ジルコニアによって構成してもよい。但し、これに限定されない。これに対し、第2吸気通路44には、そうした断熱層が設けられていないため、吸気がこの第2吸気通路44内を通過するときには、シリンダヘッド13等から受熱して温度が上がり易い。また、吸気通路41における第2吸気通路44側には、エンジン1の冷却水通路46が隣接して設けられており、この冷却水通路46には、比較的高温の冷却水が流れるように構成されている。これによって、第2吸気通路44の内壁の温度を高い温度に維持している。このことは、吸気の温度上昇を促進する上で有利になる。
【0060】
そうして、吸気通路41内において、第1吸気通路43と第2吸気通路44との分岐口には、図1に矢印で示すように、吸気が通過する通路を切り替える切替弁47が配設されており、この切替弁47は、エンジン制御器100によって制御される。
【0061】
エンジン制御器100は、図2に示すように、エンジン1の運転状態が低回転高負荷域にあるときには、切替弁47の切替によって吸気を第1吸気通路43に導く。第1吸気通路43の内壁は、第2吸気通路44と比較して断熱度合いが高いため、吸気がシリンダヘッド13等から受熱することが抑制されて、吸気の温度上昇が抑制される。これにより、シリンダ11内に導入される吸気の温度が低くなるから、前述の通り、燃焼温度が低下して冷却損失の低減に有利になる。一方で、運転状態が低回転高負荷域にあることで圧縮着火燃焼の安定化は確保されている。
【0062】
これに対し、エンジン制御器100は、エンジン1の運転状態が高回転低負荷域にあるときには、切替弁47の切替によって吸気を第2吸気通路44に導く。第2吸気通路44の内壁は、第1吸気通路43と比較して断熱度合いが低く、吸気はシリンダヘッド13等から受熱して温度が上昇する。こうして、シリンダ11内に導入される吸気の温度が高まることによって、混合気の反応時間が短くかつ、圧縮端温度及び圧縮端圧力が比較的低くなる運転状態でも、圧縮着火の着火性が確保されて圧縮着火燃焼が安定化する。
【0063】
尚、切替弁47を中間開度が可能に構成して、エンジン制御器100がその開度を調整するようにしてもよい。つまり、エンジン1の運転状態が低回転高負荷域にあるときには、第1吸気通路43を通過する吸気の割合が、第2吸気通路44を通過する吸気の割合よりも高くなるようにすると共に、エンジン1の運転状態が高回転低負荷域にあるときには、第2吸気通路44を通過する吸気の割合が、第1吸気通路43を通過する吸気の割合よりも高くなるようにしてもよい。また、エンジン1の運転状態に応じて切替弁47の開度を調整することによって、第1及び第2吸気通路43、44についての吸気の通過割合を微調整してもよい。
【0064】
図3は、図2とは異なる運転マップを示しており、この運転マップでは、一点鎖線で示すように、エンジン1の運転領域を、一点鎖線よりも左側の低回転域と、一点鎖線よりも右側の高回転域とに区分している。尚、図2の分割線は例示であり、この分割線を、図例よりも低回転側に変更したり、図例よりも高回転側に変更したりしてもよい。
【0065】
エンジン制御器100は、エンジン1の運転状態が低回転域にあるときには、切替弁47の切替によって吸気を第1吸気通路43に導き、シリンダ11内に導入される吸気の温度を低くする。このことで、前述の通り、燃焼温度を低下させて冷却損失の低減に有利になると共に、運転状態が低回転域にあることで圧縮着火燃焼の安定化が確保される。
【0066】
一方、エンジン制御器100は、エンジン1の運転状態が高回転域にあるときには、切替弁47の切替によって吸気を第2吸気通路44に導き、シリンダ11内に導入する吸気の温度を高める。このことによって、前述したように、圧縮着火の着火性が確保されて、圧縮着火燃焼が安定化する。
【0067】
図4は、図1とは異なる構成のエンジン・システムを示しており、図1と図4とで構成が実質的に同じ部材については同じ符号を付す。このエンジン・システムでは、吸気通路41内を2つに分岐するのではなく、吸気通路41の一部の内壁を、内圧調整によって断熱度を変更可能な中空部51によって構成している。
【0068】
中空部51は、同軸上に配置された内筒と外筒とを含み、その内筒と外筒との間に、横断面環状の中空部分が形成された概略円管状の部材である。中空部51は、その内筒の内周面が吸気ポート18の内壁の一部を構成するように、シリンダヘッド13内に設けられている。中空部51の中空部分は、シリンダヘッド13の側面に開口している。シリンダヘッド13の側面には、中間部材54が取り付けられており、この中間部材54の内部には、吸気通路41と吸気ポート18とをつなぐ接続路541と、この接続路541とは別の連通路542とが形成されている。中空部51の中空部分は、中間部材54によってその開口が閉塞されていると共に、連通路542を介して小型アキュームレータ52に連通している。
【0069】
小型アキュームレータ52は、逆止弁を介して、図示省略のマスターバックに接続されており、これによって、小型アキュームレータ52内は所定の負圧状態に保たれている。
【0070】
中空部51と小型アキュームレータ52との間には、エンジン制御器100によって制御される圧力制御弁53が介設されており、エンジン制御器100が圧力制御弁53を制御することによって、中空部51内の圧力状態を、中空部51を小型アキュームレータ52に連通させて負圧にした状態と、中空部51を大気に開放して正圧(つまり、大気圧)にした状態とに切り替え可能に構成されている。
【0071】
そうして、エンジン制御器100は、図2に示すように、エンジン1の運転状態が低回転高負荷域にあるときには、圧力制御弁53の制御によって中空部51内を負圧状態にし、これによって吸気ポート18の内壁の断熱度合いを高める。これにより、吸気がここを通過する際に、シリンダヘッド13等から受熱することが防止され、吸気の温度上昇が抑制される。このことは、シリンダ11内に導入される吸気の温度を低くし、前述の通り、燃焼温度を低下させて冷却損失の低減に有利になると共に、運転状態が低回転高負荷域にあることで、圧縮着火燃焼の安定化が確保される。
【0072】
一方、エンジン制御器100は、エンジン1の運転状態が高回転低負荷域にあるときには、圧力制御弁53の制御によって中空部51内を正圧状態にし、吸気ポート18の内壁の断熱度合いを低下させる。これにより、吸気がここを通過する際に、シリンダヘッド13等から受熱して温度が上昇する。このことは、前述の通り、圧縮着火の着火性を高めて、圧縮着火燃焼の安定化が確保される。
【0073】
また、エンジン制御器100は、図3に示すように、エンジン1の運転状態が低回転域にあるときに、圧力制御弁53の制御によって中空部51内を負圧状態にしてもよく、これにより、シリンダ11内に導入される吸気の温度が低くなり、圧縮着火燃焼の安定化を確保しつつも、燃焼温度を低下させて冷却損失の低減に有利になる一方、エンジン1の運転状態が高回転域にあるときには、エンジン制御器100は、圧力制御弁53の制御によって中空部51内を正圧状態にし、ここを通過する際に吸気を加熱することで、圧縮着火の着火性を高めて圧縮着火燃焼の安定化を確保してもよい。
【0074】
尚、ここに開示する技術は、前述したような、燃焼室17の断熱構造を有する高圧縮比のリーンバーンエンジン1への適用に限定されるものではなく、少なくとも一部の運転領域において、燃焼室内の混合気を圧縮着火燃焼させるエンジンに、広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 リーンバーンエンジン(エンジン)
17 燃焼室
11 シリンダ(気筒)
41 吸気通路
43 第1吸気通路
44 第2吸気通路
45 断熱層
47 切替弁(流量調整機構)
51 中空部
52 小型アキュームレータ(圧力調整機構)
53 圧力制御弁(圧力調整機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内の混合気を圧縮着火させる運転領域を有するよう構成されたエンジンと、
前記エンジンの気筒内に吸気を送る吸気通路において、当該吸気が接触する内壁の断熱度合いを変化させるように構成された断熱度合い変化手段と、を備え、
前記断熱度合い変化手段は、前記エンジンが前記圧縮着火を行う運転領域において、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、低回転域にあるときよりも、前記内壁の断熱度合いを低下させる内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記断熱度合い変化手段は、
断熱度合いが所定よりも高く設定された内壁を有する第1吸気通路と、
前記第1吸気通路に並列に設けられかつ、当該第1吸気通路よりも断熱度合いが低い内壁の第2吸気通路と、
前記第1及び第2吸気通路を通過する吸気の流量割合を調整する流量調整機構と、を有し、
前記流量調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、前記第1吸気通路を通過する吸気割合を、前記第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高めると共に、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、前記第2吸気通路を通過する吸気割合を、前記第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高める内燃機関。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記断熱度合い変化手段は、吸気通路の内壁面を覆うように設けられた中空部と、当該中空部内の圧力を変更可能に構成された圧力調整機構と、を有し、
前記圧力調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧よりも低くすると共に、前記エンジンの運転状態が高回転域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧以上にする内燃機関。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関において、
前記流量調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、前記第1吸気通路を通過する吸気割合を、前記第2吸気通路を通過する吸気割合よりも高めると共に、前記エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、前記第2吸気通路を通過する吸気割合を、前記第1吸気通路を通過する吸気割合よりも高める内燃機関。
【請求項5】
請求項3に記載の内燃機関において、
前記圧力調整機構は、前記エンジンの運転状態が低回転高負荷域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧よりも低くすると共に、前記エンジンの運転状態が高回転低負荷域にあるときには、前記中空部内の圧力を大気圧以上にする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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