説明

内用パドル

【課題】ハンドルを洗浄できると共に、オートクレーブ滅菌によっても変形を生じない。
【解決手段】生体に接触して電圧を印加するための電極20と、電圧の供給源である装置本体から前記電極20までの電圧供給経路を少なくとも構成する電圧線路を備えたケーブル30、40と、前記電極20を支持する部分と前記ケーブル30、40との接合部を、密封構造とするハンドル11と、前記ハンドル11内の気体を前記ハンドル11の外における外気に連絡するための気体流路としての透通孔37を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者の心臓(生体)に直接接触する電極を有する内用パドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の内用パドルは患者の心臓を一対の電極により挟むようにして、除細動器から電圧を印加するために用いられる。この内用パドルとして、電極側とハンドルを分離できるタイプのものが知られている。この内用パドルはハンドル部が滅菌に耐えられるように構成されている(特許文献1、特に、0027参照)。
【0003】
一方、電極側とハンドルが切り離しできないタイプの内用パドルも知られており、ハンドルを流水等による洗浄と滅菌をすることが求められる。しかし、電極とハンドルが密閉構造でないため、流水による洗浄では血液等が電極とハンドルの隙間などから侵入してしまうため、布等により血液等の拭取りが行われている。
【0004】
そして、拭取後、内用パドルの滅菌が行われる。滅菌としては2気圧程度において130゜Cの高温下において10乃至20分程度の滅菌の後に、減圧により常圧へ導入される処理を繰り返すオートクレーブと称される処理が行われる。電極とハンドルが密閉構造とすると流水による洗浄は可能となるが、オートクレーブ滅菌を行うと密閉構造であるがため、ハンドル内部の圧力が外部圧力より高くなるため、ハンドルの外側を覆うカバーが膨張して変形してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−337193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような内用パドルが有する問題点に鑑みなされたもので、その目的は、ハンドルを流水等によって洗浄することが可能であると共に、オートクレーブ滅菌によってもカバーが膨張による変形を生じることのない、内用パドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る内用パドルは、生体に接触して電圧を印加するための電極と、電圧の供給源である装置本体から前記電極までの電圧供給経路を少なくとも構成する電圧線路を備えたケーブルと、前記電極を支持する部分と前記ケーブルとの接合部を、密封構造とするハンドルと、前記ハンドル内の気体を前記ハンドルの外における外気に連絡するための気体流路とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る内用パドルは、ケーブル内の気体流路は閉塞防止構造を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る内用パドルにおいて、気体流路における外気との連絡開口部は、前記ケーブルが前記装置本体に接続される接続部に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る内用パドルでは、ハンドルの握部は、シャフト部を中心として対称であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内用パドルによれば、生体に接触して電圧を印加するための電極と、電圧の供給源である装置本体から前記電極までの電圧供給経路を少なくとも構成する電圧線路を備えたケーブルと、前記電極を支持する部分と前記ケーブルとの接合部を、密封構造とするハンドルと、前記ハンドル内の気体を前記ハンドルの外における外気に連絡するための気体流路とを備えているので、ハンドルの内部が密封されていることから洗浄が可能であり、しかも気体流路が、オートクレーブ滅菌の際にハンドルの気体を逃がす経路として働き、オートクレーブ滅菌によってもハンドルが膨張による変形を生じること防止できる。
【0012】
本発明に係る内用パドルによれば、ケーブル内の気体流路は閉塞防止構造を有しているので折れ曲がりにより気体流路が塞がれることはなく、ケーブルを利用してオートクレーブ滅菌の際にハンドル内の気体を逃がすことができる。
【0013】
本発明に係る内用パドルによれば、気体流路における外気との連絡開口部が、前記ケーブルが前記装置本体に接続される接続部に形成されているので、オートクレーブ滅菌の際にハンドル内の気体を装置本体付近まで逃がして排気でき、術中において血液や各種溶液などが連絡開口部から入り込む危険を回避することができる。
【0014】
本発明に係る内用パドルによれば、ハンドルの握部は、シャフト部を中心として対称であるので、使用者が右利きでも左利きでも扱いやすい内用パドルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る内用パドルの使用状態を示す図。
【図2】図1の内用パドルの縦方向断面図。
【図3】図2におけるA−A断面図。
【図4】図1の内用パドルの正面図。
【図5】図1の内用パドルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して、本発明に係る内用パドルの実施例を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1は、本発明の実施例に係る内用パドルの使用状態における斜視図を示し、図2は、図1の概ね縦方向を断面線とした場合の断面図を示し、図3は、図2のA−A断面図を示す。実施例に係る内用パドルは、スイッチ付の第1のパドル10とスイッチが付いていない第2のパドル10Aとが一対で用いられる。
【0017】
第1のパドル10と第2のパドル10Aとは、ハンドル11の一端側に電極20が設けられており、ハンドル11の他端側からケーブル30、40が公知の図示しない除細動器まで接続可能に延びるものである。
【0018】
電極20は、シャフト部21と、シャフト部21の先端側に設けられた円盤状の円盤電極部22を備えている。シャフト部21は円盤電極部22側へ向かって細径とされている円柱状の良導電材料により構成されおり、円盤電極部22側に位置するシャフト部21の一部がハンドル11から露出している。
【0019】
ハンドル11は、硬質の絶縁性樹脂等により構成される内側ケース12と、この内側ケース12を被覆する軟質の絶縁性樹脂などの外成型材料により構成されるカバー13とから構成されている。なお、内側ケース12とカバー13は、一体であり同一の素材からなる構成とすることも可能である。ハンドル11は基本的に中空円筒形状であり、ハンドル11におけるシャフト部21が突出する側の端部に近い部位には、ハンドル11の径を一周するように外方へ突出するストッパ23aが形成されている。ストッパ23aからシャフト部21側へ向かって細径に形成されている。
【0020】
ハンドル11は、ストッパ23aからシャフト部21とは逆側へ向かって、ほぼ等しい径の中空円筒形状の手に持って支持し易い形状をなす握部23を有する。この握部23から更に端部へ向かって湾曲して絞られるように形成され、ケーブル30、40がハンドル11内に入り込む透孔24を有するスリーブ25が形成されている。
【0021】
第1のパドル10にあっては、スリーブ25に近接した握部23の端部には、カバー13によって凸形状のキートップカバー部28が形成されている。キートップカバー部28からストッパ23a側へ連続する所定長の部位には、内側ケース12が存在せず、カバー13に接触する状態のスイッチ筐体60が配置され、スイッチ筐体60のキーが上記キートップカバー部28に当接している。
【0022】
図4、図5に示すように、ハンドル11の握部23及びストッパ23aは、シャフト部21における長さ方向の軸を中心として左右対称に形成されている。図4、図5には代表例として第1のパドル10を示しているが、スイッチが付いていない第2のパドル10Aについても同様に、シャフト部21における長さ方向の軸を中心とした左右対称の構造となっている。このため、使用者が右利きでも左利きでも、利き手に第1のパドル10を持ってスイッチを操作することができ扱いやすいという特徴を有する。
【0023】
図3に示すように、ケーブル30には、高圧線31と二本の信号線32、33が配線されており、ケーブル40には高圧線41と二本のダミー線42、43が配線されている。ダミー線42、43の芯線部分は、ケプラーと称される極細の繊維芯により構成されている。
【0024】
高圧線31、41及び信号線32、33の芯線、更に、ダミー線42、43の芯線の外側は絶縁体34により被覆されている。ケーブル30、40の最外郭は、シールド材35で被覆されている。ケーブル30、40におけるシールド材35の内壁部には、ケーブル30、40の長さ方向に向かって連通する適宜な断面形状を有する複数の透通孔37が形成されている。この複数の透通孔37は、ハンドル11の内側ケース12内部に存在する気体をハンドル11の外における外気に連絡するための気体流路を構成する。また、透通孔37は複数あることにより、ケーブル30、40が折れ曲がっても透通孔37が閉塞することのない閉塞防止構造となっている。この実施例では、シールド材35と絶縁体34の間に生じている空隙Sについても、ハンドル11の内側ケース12内部に存在する気体をハンドル11の外における外気に連絡するための気体流路として機能する。
【0025】
ケーブル30の高圧線31は、ハンドル11内を配線されてシャフト部21の基部に形成されたネジ止部21aにネジ27によって結合されている。ケーブル30の二本の信号線32、33は、ハンドル11内を配線されてスイッチ筐体60のスイッチ接点に繋がっている端子T1、T2に接続されている。また、ケーブル40の高圧線41は、ハンドル11内を配線されてシャフト部21の基部に形成されたネジ止部21aにネジ27によって結合されている。
【0026】
カバーにおけるケーブル30、40を被覆するスリーブ25の部分70及びシャフト部21を支持する部分80は、それぞれ密着により水密に構成され、ハンドル11は、電極20を支持する部分80と上記ケーブル30、40との接合部である部分70を融着により密封構造にて内蔵するケース部を構成している。
【0027】
ケーブル30、40の他端側には電圧の供給源である装置本体を構成する除細動器のパドル接続コネクタに接続するための本体−パドルコネクタ50に接続されている。このように、気体流路を構成する複数の透通孔37における外気との連絡開口部が、装置本体である除細動器におけるケーブル30、40との接続部に形成されている。
【0028】
以上の構成に係る内用パドルは次の通りに用いられる。本体−パドルコネクタ50を除細動器のパドル接続コネクタに接続する。除細動器の電源を投入し、心電図の誘導を確認し、非同期除細動モードを確認する。第1のパドル10及び第2のパドル10Aを支持して円盤電極部22、22により心臓を挟み、出力エネルギーの設定及びエキルギー充電を行い、キートップカバー部28を押圧して通電を行う。このとき、使用者の利き手に第1のパドル10を持ってスイッチを操作することができるので扱いやすい。使用後には、電源をオフとして、上記と逆の手順でパドルを外す。
【0029】
上記の後に洗浄及びオートクレーブ滅菌が行われる。ここで、前述の通り、カバー13におけるケーブル30、40を被覆するスリーブ25の部分70及びシャフト部21を被覆する部分80は、それぞれ水密に構成されているので、洗浄に係る液体や血液がハンドル11内部に侵入する虞がなく、十分な洗浄を行うことができる。
【0030】
また、オートクレーブ滅菌の際にハンドル11内部が高圧となるが、ハンドル11の内側ケース12の内部に存在する気体は、複数の透通孔37やシールド材35と絶縁体34の間に生じている空隙Sを介して本体−パドルコネクタ50から排気される。しかも、透通孔37が複数ある閉塞防止構造であるため、このオートクレーブ滅菌の際にケーブル30、40が折れ曲って上記気体の通路を塞ぐことがなく、カバー13の変形を生じさせることはない。
【0031】
なお、本実施例では、シールド材35に気体流路としての透通孔37を形成したが、ハンドル11の内側ケース12の内部に存在する気体を上記ハンドル11の外における外気に連絡するための気体流路であれば、ケーブル30、40内にチューブを設けるなど、適宜な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10、10A パドル
11 ハンドル
12 内側ケース
13 カバー
20 電極
21 シャフト部
22 円盤電極部
23 握部
30、40 ケーブル
31、41 高圧線
37 透通孔
50 本体−パドルコネクタ
60 スイッチ筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に接触して電圧を印加するための電極と、
電圧の供給源である装置本体から前記電極までの電圧供給経路を少なくとも構成する電圧線路を備えたケーブルと、
前記電極を支持する部分と前記ケーブルとの接合部を、密封構造とするハンドルと、
前記ハンドル内の気体を前記ハンドルの外における外気に連絡するための気体流路と
を具備することを特徴とする内用パドル。
【請求項2】
ケーブル内の気体流路は閉塞防止構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の内用パドル。
【請求項3】
気体流路における外気との連絡開口部は、前記ケーブルが前記装置本体に接続される接続部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内用パドル。
【請求項4】
ハンドルの握部は、シャフト部を中心として対称であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内用パドル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19577(P2011−19577A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165157(P2009−165157)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】