内皮前駆細胞の刺激並びに臓器の再生及び内臓障害の進行の抑制のための低用量エリスロポエチンの使用
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員、増殖及び分化の刺激、脈管形成の刺激、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療及びこのような疾患を治療する医薬組成物の調製のための低用量エリスロポエチンの使用並びにエリスロポエチン及び内皮前駆細胞の刺激のためのその他の適当な活性成分を含む医薬組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員、増殖及び分化の刺激、脈管形成の刺激、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療、このような疾患の治療のための医薬組成物の調製のための特に低用量のエリスロポエチン(EPO)の単独の、又は他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と組み合わせた使用並びにエリスロポエチン及び内皮前駆細胞の刺激及び器官保護、器官再生、特に新規な血管及び組織の新生、器官障害の進行の抑制に適したその他の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0002】
また本発明はヒト又は動物の身体の美容治療の分野で、即ち「美容術(beauty care)」として、特にしわ及び小じわの予防及び減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚、特に顔の皮膚の保護と緊張のため及びメイクアップのファウンデーションとして、好ましくは局所的に適用するための特に本発明に基づく低用量のエリスロポエチン及び適した活性成分の使用に関する。また本発明に基づくエリスロポエチンの局所的適用は老年性色素斑の発生と発達を防止し、肌の状態をきれいにし、皮膚の若返り(rejuvenation)過程を促進し、毛髪の成長を速める。
【0003】
また本発明はヒト又は動物の身体の自然な日周期リズムに合わせた適用のために適し、かつ設計されている医薬組成物の調製のための、好ましくは低用量のエリスロポエチン、即ち好ましくは下記の段落「本発明に基づくEPOの用量」で定義するように用量されたEPOの使用に関する。ヒトの場合、内因性エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(日最大値)があるから、最大の生物学的かつ治療的効果を得るために、上記で定義した低用量のエリスロポエチンの本発明に基づく投与は午前、特に6時〜10時の期間に行われる。この期間内にEPOを一回量として又は複数回の用量で投与することができる。好ましくは本教示により挙げられたすべての使用のため、特にヒト又は動物の身体又は細胞の美容上及び治療上の処置のために、本発明に基づき一回量又は複数回の用量としてのこの使用が提案される。
【0004】
本発明に基づきエリスロポエチンの使用の別の実施形態では、細胞治療用組織細胞の癒合(settling)と血管系への十分な結合を保証するために、好ましくは低用量のエリスロポエチンであらかじめin vitro培養し、及び/又は好ましくは本発明に基づき低用量のエリスロポエチンを局所的又は全身的に適用して、内皮前駆細胞を他の細胞治療用細胞集団と同時にin vivo適用する。
【0005】
また本発明は、血管系への十分な結合により細胞治療用組織細胞の癒合を改善するために内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を適用する場合、好ましくは午前6時〜10時の期間に適用するための、好ましくは低用量エリスロポエチンのin vivo使用に関する。また本発明は、血管系への十分な結合により細胞治療用組織細胞の癒合を改善する内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の培養のための、好ましくは低用量のエリスロポエチンのin vitro使用に関する。
【0006】
また本発明は特に疾患の予防又は治療のための、又は移植又は内植の間に用いられる、医薬組成物又はキット、内皮前駆細胞の数と機能の増加及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制のために少なくとも1つの他の化学的、熱的、機械的又は生物学的因子、特に薬理的活性成分と共に逐次時間的に連続する投与で使用される医薬組成物又はキットの調製のための特に低用量のエリスロポエチンの使用に関する。
【0007】
また本発明は特に疾患の予防又は治療のための、又は移植又は内植の間に用いられる、医薬組成物又はキット、特に低用量で使用され、内皮前駆細胞の数と機能を高め及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制する、エリスロポエチンと少なくとも1つの他の化学的、熱的、機械的又は生物学的因子との同時投与のための医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。
【0008】
そこで本発明は内皮前駆細胞の数と機能を高め、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、低用量エリスロポエチンと、好ましい態様では単数又は複数の他の薬理的活性成分、例えばVEGF、GM−CSF、MCSF、トロンボポエチン、SDF−1、SCF(幹細胞因子)、NGF(神経成長因子)、PIGF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、AT−1遮断薬及びNO供与体との、好ましくは逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。その場合本発明に基づき次の順序で、即ちA)骨髄又は幹細胞のための特異的組織、ニッチの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、B)骨髄又はその他の「幹細胞」ニッチから末梢血への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の動員、C)選択的培養条件好ましくは酸素分0.1%〜10%の低酸素条件下での培養で末梢血中及び/又はex vivoの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、D)障害部位への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞のホーミング、E)標的組織への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の接着及び移動、F)内皮前駆細胞による脈管新生の順序で影響を受けることになる。
【0009】
また本発明は内皮前駆細胞の数と機能を高めし、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、任意であり、好ましくは身体特有のEPO産生の自然な日周期リズムに合わせた前述の使用、即ち午前6時〜10時の期間の投与のために適し、かつ設計されている適用形態での、本発明に基づく低用量エリスロポエチンと、必要に応じて単数又は複数の他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の、時間的に連続する、又は同時のin vivo及びin vitro投与に関する。
【0010】
また本発明は、内皮前駆細胞の生理的動員、増殖及び分化の刺激、脈管形成の刺激、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療及びこのような疾患の治療用の医薬組成物の調製のための本発明に基づく低用量エリスロポエチンの使用、並びにエリスロポエチン及びa)内皮前駆細胞の機能異常及びb)心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、高い不斉ジメチルアルギニン(ADMA)レベル、インスリン抵抗性、高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿症又は<80ml/min、特に30好ましくは40〜80ml/minの糸球体濾過率(GFR)を有する患者の又は患者のための内皮前駆細胞の刺激に適したその他の活性成分を含む医薬組成物の使用に関する。
【0011】
血管内皮は、血管を内張りする細胞層である。内皮は血液を他の血管層から分離する。しかし、内皮は受動的障壁をなすだけでなく、能動的に血管壁張力の調節に介入する。従って内皮依存性の血管拡張も問題になる。内皮はその位置により血行ストレス及び代謝ストレスに持続的にさらされる。病原的状態、例えば高血圧、高いLDL値、NO合成酵素の内因性阻害因子である不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の値の上昇、高コレステロール血症、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、インスリン抵抗性又は高血糖の場合は、しばしば内皮の機能異常が起こり、次いで形態的に明瞭な障害、例えばアテローム硬化性プラークの形成及び/又はその他の内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、タンパク尿、神経障害又は微小循環障害が続発することがある。変化した又は低下した内皮細胞機能又は内皮細胞の障害の非常に早い兆候は、内皮細胞依存性血管拡張の低下である。
【0012】
さらには冠動脈性心臓病(KHK)なしで存在する危険因子、例えば高血圧、腎機能減退、高リポタンパク血症、高ホモシステイン血症、インスリン抵抗性又は糖尿病では、内皮機能異常がNO(=EDRF[血管内膜由来弛緩因子])の産生の減少及びエンドセリン産生の増加となって現れる。高いエンドセリン血漿濃度は異常な細胞合体、炎症、血管腫瘍及び重篤な血管狭窄をもたらす。また内皮機能異常は接着分子、例えばICAM[細胞間接着分子]−1及びVCAM[血管細胞接着分子]−1の産生の増強が特徴であり、このため血小板と単核細胞が大量に内皮に付着する。それが原因で血管壁緊張が増加する。こうして様々な系で不均衡が作り出され、血管収縮、接着、凝集、凝結、アテローマ動脈硬化症及びアテローマ血栓症が促進される。精神的負荷でさえ測定可能な内皮機能異常をもたらし、それが4時間に及び持続することがある。
【0013】
内皮前駆細胞は新しい血管の形成にも関与する。血管の形成は多数の過程、例えば胚形成、女性生殖周期、創傷の治癒、腫瘍の成長及び虚血領域の脈管新生で重要である。当初は、生後血管形成、即ち出生後の血管形成は主として血管新生過程によるとされた。血管新生とは、既存の血管系から毛管が出芽することによって新しい血管を形成することである。血管新生ではまず血管を取り巻く基底膜がタンパク質分解酵素によって分解され、血管周囲隙の細胞外基質が断片化される。そのとき放出される血管新生刺激は、既に分化した既存の内皮細胞を走化刺激の方向へ移動させ、それと同時に内皮細胞が増殖し、かつトランスフォームする。内皮細胞が互いに付加することによって、毛管様腔を有する新しい血管ループが形成される。その後、新しい基底膜の合成が始まる。
【背景技術】
【0014】
ところが最近の研究が示すところでは、成人の身体での新しい血管の形成は血管新生だけでなく、脈管形成機構にも基づいている。脈管形成とは、in situで分化する内皮前駆細胞からの血管新生を意味する。脈管形成は胚形成に限られるというドグマは、健康なヒト及び動物の末梢血で内皮前駆細胞(EPC)が検出されたことにより誤りが証明された。動物モデルを使用して、骨髄由来の内皮前駆細胞が血管新生に積極的に関与することを証明することができた。また内皮特異性抗原を発現する、白血球の特異的CD34陽性部分群が虚血区域に認められることが判明した。さらにCD133+及びCD34+細胞から成人の身体の血管形成に重要な寄与をなす内皮前駆細胞(EPC)がin vitroで得られる(Asaharaら、Science, 275(1997), 964-967;Crosbyら、Circ. Res., 87(2000), 728-730;Gehlingら、Blood, 95(2000), 3106-3112)。また単離したCD34+細胞又は培養した内皮前駆細胞の注射が糖尿病マウスで血流の再生を促進すること(Schattemanら、J. Clin. Invest., 106(2000), 571-578)、そしてin vivoで血管新生を改善すること(Asaharaら、Circ. Res., 85(1999), 221-228;Crosbyら、Circ. Res., 87(2000), 728-730;Muroharaら、J. Clin. Invest., 105(2000), 1527-1536)が示された。さらにCD34+細胞によって誘導された血管新生は心機能を改善することを示すことができた(Kocherら、Nat. M-ed., 7(2001), 430-436)。CD34+細胞のほかに、CD34陰性単核血球も適当な分化転換により内皮前駆細胞の供給源の役割をする。
【0015】
ところが内皮前駆細胞の動員と分化の基礎をなす機構は、まだ完全に解明されていない。分子生物学的及び細胞生物学的研究は、種々のサイトカイン及び血管原性成長因子が骨髄の内皮前駆細胞の動員に刺激的に作用することを示唆する。VEGF及びGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)などの前血管形成因子は内皮前駆細胞の数を増加することが知られている(Asaharaら、EMBO J., 18(1999), 3964-3972;Tak-ahashiら、Nat. Med., 5(1999), 434-438)。VEGF(血管内皮成長因子)とは、種々のイソ形で現れ、例えば成長する内皮細胞の表面に現れる2つのチロシンキナーゼ受容体VEGF−R1(flt−1)及びVGEF−R2(flk−1)に結合するタンパク質である(Wernertら、Angew. Chemie, 21(1999), 3432-3435)。VEGF受容体の活性化はRas−Raf−MAP−キナーゼ経路を経て内皮細胞又は内皮前駆細胞の表面のプロテイナーゼ及び特異的インテグリンを発現させ、最後に血管形成刺激の方向へのこれらの細胞の増殖及び移動を開始する。CM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)とは、これまで好ましくは好中球、マクロファージ及び好酸球を含む白血球の刺激について知られていたサイトカインである。PIGF(胎盤成長因子)については、内皮前駆細胞の動員を刺激するが、その増殖を刺激しないことが知られている。Llevadotらの研究(J. Clin. Invest., 108(2001), 399-405)により、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特に脂質低減薬として使用され、冠動脈障害の罹患率と致死率を減少するスタチンは内皮前駆細胞を動員することが明らかである。またDimmelerら(J. Clin. Invest., 108(2001), 391-397)は、スタチン例えばアトルバスタチン及びシンバスタチンが、末梢血から単離した単核細胞及びCD34+幹細胞で内皮前駆細胞の分化をin vitro及びin vivoで著しく改善することを示すことができた。スタチンによるマウスの治療は多数の分化した内皮前駆細胞をもたらし、その際スタチンはVEGFと同程度の効果を示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の根底にあるのは、内皮前駆細胞の刺激の改善及び特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する障害の治療のための手段及び方法並びに種々の組織の保護及び再生のための手段及び方法を提供するという技術問題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又はヒト又は動物の身体の血管新生又は脈管形成刺激の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するために、特に低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという学説によって、この技術問題を解決する。本発明に基づく内皮前駆細胞の動員及び/又は分化の刺激は、出生後の血管新生、特に脈管形成の増大及び内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連する疾患の治療並びに有害な化学的、熱的、機械的及び生物学的因子に対する種々の組織の保護及び再生のための重要な新規な治療戦略をなす。
【0018】
本発明はまた内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の治療のために、低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという教示によってこの技術問題を解決する。
【0019】
さらに本発明は、それぞれ特異的な組織機能の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の状態にある様々な種類の組織の保護及び再生ために低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという教示によって、この技術問題を解決する。
【0020】
またこの基本的な技術問題は、低用量のエリスロポエチンと単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって解決される。
【0021】
そこで本発明は特に下記の実施形態A)〜K)のそれぞれ唯一つ及び/又は組合せに関する。
【0022】
A)特に疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のためのエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチン及び/又は医薬組成物がヒト又は動物の身体への6時〜10時の期間の午前適用のために適し、かつ設計されている使用。
【0023】
B)特に疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための、好ましくは実施形態A)と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、低用量の医薬組成物がa)内皮前駆細胞の少なくとも1つの機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高いADMA値又は高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さ、タンパク尿又は<80ml/min、好ましくは30〜60ml/minの糸球体濾過率を有するヒト又は動物患者の予防又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【0024】
C)ヒト又は動物の身体の美容治療のため、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、内皮再生の促進、毛髪の成長の促進のため及び/又はメイクアップのファウンデーションとしての、好ましくは実施形態A)、B)又はA)とB)と組み合わせたエリスロポエチンの使用。
【0025】
D)ヒト又は動物の身体の美容治療のため、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、内皮再生の促進、毛髪の成長の促進のため及び/又はメイクアップのファウンデーションとして特に局所適用する美容剤の調製のための、好ましくは実施形態A)、B)又はA)とB)と組み合わせたエリスロポエチンの使用。
【0026】
E)エリスロポエチン及び内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含むヒト又は動物の身体の組織又は血管の再生のための医薬組成物の調製のための、好ましくはA)、B)、C)又はD)の実施形態の1つ若しくは幾つか並びに/又は内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、混合物を適用の前にin vitroでエリスロポエチンと接触させる使用。
【0027】
F)エリスロポエチン及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む、ヒト又は動物の身体の組織又は血管の再生用の医薬組成物の調製のための、好ましくは実施形態A)、B)、C)、D)又はE)の1つ若しくは幾つか並びに/又はは内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチンを混合物の適用の前又は後又は同時にヒト又は動物の身体に投与する使用。
【0028】
G)エリスロポエチン及び少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子を含む、疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のための、好ましくは実施形態A)〜F)の1つ若しくは幾つか及び/又は少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、医薬組成物又はキットがエリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の適用のために適し、かつ設計されている使用。従って、本発明はまた上記G)で示したエリスロポエチンの使用であって、機械的因子が体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である使用に関する。また本発明は上記G)で示したエリスロポエチンの使用であって、生物学的因子が固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚である使用に関する。これに関連して生物学的因子は、毛髪インプラントをも意味する。従って、本発明の特に好ましい実施形態は上記の種類の生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に移植体例えば歯、歯牙代替物、歯牙インプラント、骨代替物例えば股関節プロテーゼ、靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の全身的適用又は移植部位への局所的適用に用いられる医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関し、その場合エリスロポエチンは上記の生物学的又は機械的因子例えば体内プロテーゼの内植の前、例えば内植の数週前に全身的又は局所的に適用され、続いて内植が行われる。また別の実施形態では上記の生物学的又は機械的因子の内植をエリスロポエチンの使用と共に行うものとする。別の実施形態ではエリスロポエチンを上記の体内プロテーゼ又は機械的若しくは生物学的因子の内植の後に行うものとする。この実施形態によれば、インプラント例えば歯又は骨プロテーゼが内植される組織又は身体構造が動員又は調節され、こうして、例えば、身体構造上又は身体構造内での増殖により、生物学的又は機械的因子、例えばインプラントの身体構造へのはるかに良好な、それと共に迅速な統合、例えば癒着及び癒合が可能になる。
【0029】
H)実施形態A)〜G)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、医薬組成物がヒト又は動物の身体に適用されたときにヘマトクリット値の増加、特にエリスロポエチンの適用の前のヘマトクリット値の10%以上の増加を生じない使用。
【0030】
I)医薬組成物での実施形態A)〜H)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、赤血球形成効果がない低い用量、特に0.001IU/体重kg〜90、特に50IU/体重kgの用量のエリスロポエチンが上記の予防、処置又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【0031】
K)実施例A)〜I)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度を有する状態又は創傷及びその後遺症である使用。
【0032】
また本発明はエリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含み、エリスロポエチンが好ましくは低用量であるキットの調製に関する。
【0033】
本発明に基づき意外なことに、低用量エリスロポエチンによる治療が内皮前駆細胞の生理的動員をもたらし、その際循環内皮前駆細胞の数が増加し、その分化が誘導されることが認められた。さらに特定の病的状態で現れる内皮前駆細胞の機能不全が補償される。本発明に基づき、末期の慢性腎障害の患者で循環幹細胞の数が健康な被験者とちょうど同じレベルであるが、この患者では内皮前駆細胞を経て内皮細胞に分化する能力が失われていることを示すことができた。慢性腎障害の患者では、接着能力を持ち、内皮細胞表現型を示す細胞の数が、健康な被験者に比して著しく減少している(de Grootら;Kidn-ey Int.,2004; 66:641-6)。内皮前駆細胞のこの機能低下は、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの中度の腎機能減退で認められる。ところが本発明に基づき、この患者と腎臓が健康な患者及び/又は被験者とを本発明に基づき低用量のエリスロポエチンで処置した後に、循環幹細胞の数が50%以上と著しく増加することが判明した。その場合特に内皮細胞表現型を発現する細胞の数が劇的に増加する。機能的細胞培養テストで証明されたところでは、低用量エリスロポエチン治療によって、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの慢性腎障害の患者で阻害された内皮前駆細胞の接着能力が3倍に、腎臓が健康な被験者及び/又は患者では2〜3倍に増加する。分化する内皮前駆細胞又は内皮細胞の接着能力は、新しい組織及び/又は血管の形成のための基本前提の1つである。このようにエリスロポエチンは、適当な脈管形成又は血管新生刺激が放出される組織又は臓器、例えば特に腎臓で血管新生、特に脈管形成を誘導する。
【0034】
本発明に基づきヒト又は動物の身体、特に成人の身体で内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するために、低用量のエリスロポエチンを使用することができる。従って本発明に基づき、血管の病変が存在する組織又は臓器で脈管形成による血管新生を刺激するために低用量エリスロポエチンを好適に使用することができる。さらに低用量エリスロポエチンによる内皮前駆細胞の刺激に基づき、内皮組織の形成を誘導することもできる。従って本発明に基づき内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の疾患の治療にも低用量エリスロポエチンを使用することができる。このような機能異常を有する患者集団は、通常心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高ホモステイン血症、高いADMA濃度及び内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、蛋白尿又は30好ましくは40〜80ml/minの糸球体濾過率(GFR)を有する。
【0035】
また本発明は化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の作用により機能異常を生じた組織の保護及び再生のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。また本発明に基づき低用量エリスロポエチンの局所的適用は、皮膚特に顔の皮膚の既存のしわの予防及び減少並びに皮膚の保護及び老年性色素斑の減少に関する。その場合本発明に基づき低用量のエリスロポエチン又は誘導体の使用は、単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と逐次に又は時間的に連続して又は同時に行うことができる。最大の生物学的効果を得るために、低用量エリスロポエチンを日周期リズムに合わせて治療に用いることができる。好ましい実施形態では細胞治療用組織細胞が血管系に十分に結合して癒合することを保証するために、本発明に基づき低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養し及び/又は低用量エリスロポエチンを局所的及び全身的にin vivo適用して、内皮前駆細胞を他の細胞治療用細胞集団と同時に適用する。
【0036】
本発明に関連して「エリスロポエチン」又は「EPO」とは、適当なレベルの用量で幹細胞から赤芽球を経て赤血球に至る成長、分化及び成熟を制御する物質を意味する。
【0037】
エリスロポエチンは166個のアミノ酸と3個のグリコシル化部位及び約34000Daの分子量を有する糖タンパク質である。赤血球前駆細胞のEPO誘導性分化の間、グロビン合成が誘導され、ヘム錯体の合成及びフェリチン受容体の数が増大する。それによって細胞がより多くの鉄を吸収し、機能性ヘモグロビンを合成することができる。成熟した赤血球でヘモグロビンは酸素を結合する。こうして赤血球又はそれに含まれるヘモグロビンは身体の酸素供給のために重要な役割を果たす。これらの過程はEPOと赤血球前駆細胞の細胞表面の当該の受容体との相互作用によって誘発される(Graber及びKranz, Ann. Rev. Med. 29(1978), 51-56)。
【0038】
ここで使用する「エリスロポエチン」の語はあらゆる起源のEPO、特にヒト又は動物のEPOを含む。ここで使用する語は、天然に現われる、即ち野性型のEPOだけでなく、野性型エリスロポエチンの生物学的作用を示す限り、その誘導体、類似体、修飾体、ムテイン、変異体等も包含する。
【0039】
本発明に関連して「誘導体」とは、エリスロポエチンの基本構造を維持して、単数又は複数の原子もしくは分子群又は残基の置換、特に糖鎖例えばエチレングリコールの置換によって得られ、及び/又はそのアミノ酸配列が天然に現われるヒト又は動物のエリスロポエチンタンパク質と少なくとも1つの位置で異なるが、アミノ酸レベルで本質的に高い相同性と、同等な生物学的活性を有する、エリスロポエチンの機能的等価物又は派生物を意味する。例えば本発明で使用することができるエリスロポエチン誘導体は例えば国際特許公開WO94/25055、欧州特許EP0148605B1又は国際特許公開WO95/05465で周知である。
【0040】
「相同性」とは、特に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%以上、95%以上、97%以上及び99%以上の配列同一性を意味する。当業者に周知の「相同性」という表現は、こうして配列間の一致によって決まる2つ以上のポリペプチド分子の近縁度を表す。その場合一致は同一性による一致も、同類アミノ酸交換をも意味する。
【0041】
本発明に基づき「誘導体」の概念は、N末端部分又はC末端部分に他のタンパク質の機能的ドメインがある融合タンパク質も含む。発明の一実施形態では、この他のタンパク質は例えばGM−CSF、VEGF、PIGF、スタチン又は内皮前駆細胞に対して刺激作用を有するその他の因子である。発明の別の実施形態では、他のタンパク質とは分化した内皮細胞に対して刺激作用を有する因子、例えばアンギオゲニン、VEGF(血管内皮成長因子)又はbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)である。bFGF及びVEGFについては、この成長因子が内皮細胞に対して強いマイトジェン活性及び走化活性を働かせることが知られている。
【0042】
エリスロポエチン誘導体と天然のエリスロポエチンの間の相違は、例えばエリスロポエチン−アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の突然変異、例えば欠失、置換、挿入、付加、塩基交換及び/又は組換えによって生じたものである。本発明に基づきエリスロポエチンとして(EPO)α、(EPO)β、Aranesp(ダルベポエチンα)又はCera(連続的エリスロポエチン受容体アゴニスト)を使用することが好ましい。それは自然に現われる配列変異、例えば他の生物の配列、又は自然に突然変異した配列、又はこの専門分野で周知の慣用の手段、例えば化学的因子及び/又は物理的因子により、エリスロポエチンをコードする核酸配列に意図的に導入された突然変異であることももちろん可能である。本発明に関連して「誘導体」の概念は、突然変異したエリスロポエチン分子、即ちエリスロポエチンムテインも含む。
【0043】
本発明に基づきエリスロポエチンのペプチド又はタンパク質類似体も使用することができる。本発明に関連して「類似体」の概念は、エリスロポエチン−アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持たないが、その三次元構造がエリスロポエチンの三次元構造に著しく類似し、従って比較可能な生物学的活性を有する化合物を含む。エリスロポエチン類似体は、例えばエリスロポエチンのその受容体への結合を受け持つアミノ酸配列を適当なコンホメーションで含み、従ってエリスロポエチン結合領域の必須の表面特性を模擬することができる化合物である。このような化合物は例えばWrightonら、Science, 273(1996), 458に記載されている。本発明に基づき使用されるEPOは様々な方法で、例えばヒトの尿から、又は再生不良性貧血患者の尿又は血漿(血清を含む)から分離することによって調製することができる(Miyakeら、J.B.C. 252(1977), 5558)。ヒトEPOは例えばヒト腎癌細胞の組織培養から(日本特許公開公報55790/1979)、ヒトEPOの形成能力を有するヒト・リンパ球細胞から(日本特許公開公報40411/1982)またヒト細胞ラインの細胞融合によって得られるハイブリドーマからも得ることができる。またEPOの当該のアミノ酸配列をコードする適当なDNA又はRNAにより所望のタンパク質を遺伝子技術的に例えば細菌、酵母、植物、動物又はヒト細胞ラインを用いて作ることによって、EPOを遺伝子工学的方法で調製することもできる。このような方法は例えば欧州特許EP0148605B2又は欧州特許EP0205564B2及び欧州特許EP0411678B1に記載されている。
【0044】
本発明は特に内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又はヒト又は動物の身体、特に成人の身体で脈管形成又は血管新生の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するための低用量エリスロポエチンの使用に関する。
【0045】
また本発明は低用量エリスロポエチンと、内皮前駆細胞の機能と数を増大し、低用量エリスロポエチンの臓器保護及び再生作用を強化する少なくとも1つの別の適した化学的、熱的、機械的又は生物学的因子又は活性成分、特に薬理的活性成分の逐次使用に関する。
【0046】
また本発明は好ましくは内皮前駆細胞の数と機能を高め、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うための、低用量エリスロポエチンと、その他の薬理的活性成分、例えばVEGF、GM−CSF、M−CSF、トロンボポエチン、SCF、SDF−1、NGF、PIGF、HMG−Co還元酵素阻害剤、ACE遮断薬、AT−1阻害剤及びNO供与体の1つ又は幾つかとの逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。その場合本発明に基づき次の順序、即ちA)骨髄又は組織由来「幹細胞」ニッチの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、B)骨髄又はその他の「幹細胞」ニッチから末梢血への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の動員、C)末梢血中及び/又はex vivoの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の選択的培養条件での定量的及び定性的最適化、好ましくは酸素分0.1%〜10%の低酸素条件での培養、D)幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の障害部位へのホーミング、E)目標細胞への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の接着及び移動、F)内皮前駆細胞による脈管新生の順序で影響を受けることになる。
【0047】
そこで本発明は低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養した内皮前駆細胞及び単数又は複数の細胞治療用細胞集団、特に肝細胞、筋細胞、心筋細胞又は膵臓細胞移植体の同時の、及び異なる時間での適用及び/又はこの細胞治療用細胞集団の機能、癒合、血管新生及び受容者の血流への接続を改善し、促進する低用量エリスロポエチンの局所的及び全身的in vivo適用に関する。
【0048】
本発明は「美容術」、特にしわ及び小じわの予防又は差当り重要な減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚特に顔の皮膚の保護及び緊張のため、またメイクアップのファウンデーションとして局所的に適用される特に低用量のエリスロポエチン又は適当な活性成分の使用に関する。またエリスロポエチンの局所的適用は老年性色素斑の発生及び進行を防止し、肌の状態をきれいにし、皮膚の若返り過程、特に内皮形成を促進する。さらにエリスロポエチンは毛髪の成長を促進する。
【0049】
また本発明は身体特有の日周期リズムに合わせた適用のために適し、かつ設計されている医薬組成物の調製のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。内因性エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(一日の最大)があるから、最大の生物学的、治療的及び美容的効果を得るために、低用量エリスロポエチンの投与は好ましくは午前中、特に6時〜10時に行う。
【0050】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員の刺激又は/及び増殖及び分化、又は/及び脈管形成の刺激又は/及び内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療、及び/又はこのような疾患の治療のための医薬組成物の調製のための低用量エリスロポエチンの使用並びにa)少なくとも1つの内皮前駆細胞機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子、例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高ホモシステイン血症、高いADMAレベル及びc)少なくとも1つの内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿又は80ml/min、特に30、好ましくは40〜80ml/min以下の糸球体濾過率(GFR)を有する患者で内皮前駆細胞を刺激するための、エリスロポエチン及びその他の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0051】
また本発明の好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の数及び機能を高め、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うための、低用量エリスロポエチン及びその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の1つ又は幾つかの逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。この場合機械的因子は体内プロテーゼ、好ましくは例えば歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である。また生物学的因子は固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚であり、又は毛髪インプラントである。こうして本発明は、同時に又は続いて又は事前に内植された機械的因子、例えば体内プロテーゼ又は生物学的因子をよりよく、より迅速に、より効果的に周囲の身体構造で増殖させ又は統合させるために、特に低用量でEPOを使用するものである。従って本発明は生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、歯牙インプラント又はその他の体内プロテーゼ例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進し及び/又は速める医薬組成物又はキットを調製するためのエリスロポエチンの使用に関する。場合によってはその際エリスロポエチンを細胞治療用細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では、患者の標的構造、特に標的組織、標的骨又は標的軟骨への生物学的又は機械的因子の統合の改善、特に促進及び/又は加速のための医薬組成物又はキットの調製のためにエリスロポエチンを上記のように使用する場合、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の基質材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療用細胞集団として造骨細胞、骨形成能力を持つ細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では、特に使用される機械的因子が有機接着剤例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又は医薬キットに含まれるようにすることができる。
【0052】
本発明に関連して「内皮前駆細胞」(内皮プロジェニター細胞;EPC)とは、内皮細胞への分化能力を持ち、血流中で循環する細胞を意味する。胚形成時に現われる内皮前駆細胞は血管芽細胞である。成人の身体に現われる内皮前駆細胞は、末梢血から分離された単核細胞、特にCD34+CD14+単球及び/又はCD+幹細胞から得ることができる血管芽細胞様の細胞である。
【0053】
本発明に関連して「動員」又は「生理的動員」とは、骨髄又は代替「幹細胞」ニッチからの幹細胞及び/又は前駆細胞の、成長因子による活性化過程を意味する。その場合幹細胞又は前駆細胞は血流、特に末梢血に到達する。
【0054】
本発明に関連して「増殖」とは、細胞が拡大し、続いて2個以上の娘細胞に分裂する能力を意味する。そこで内皮前駆細胞のEPO仲介性刺激は、特に内皮前駆細胞の数、それと共に分裂挙動に関係する。
【0055】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「分化」とは、骨髄又は組織由来ニッチに由来する単核細胞から内皮前駆細胞を経て内皮細胞に至る推移を意味する。「内皮細胞」とは、内皮即ち血管及び漿膜腔の単層の細胞内層を構成する細胞を意味する。内皮細胞は血管活性物質、例えば血管拡張物質、例えばEDRF(内皮誘導性弛緩因子)又は収縮物質、例えばエンドセリン、血液凝固阻害又は活性因子及び血管透過性調節因子を放出するのが特徴である。また内皮細胞は内皮下結合組織の成分、特にIV型及びV型コラーゲン、細胞接着性タンパク質、例えばラミニン、フィブロネクチン及びトロンボスポンジン、例えば平滑筋の成長因子及び血管新生因子を合成する。
【0056】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「移動」とは、血流中にある内皮前駆細胞が脈管形成又は血管新生刺激の方向に移動し、脈管形成又は血管新生刺激の領域に集中することを意味する。「脈管形成刺激」とは、特異的に内皮前駆細胞に作用し、これを化学的刺激が出る身体部位へ移動させるヒト又は動物の身体の組織又は血管の化学的刺激を意味する。こうして脈管形成刺激によって脈管形成過程が誘導される。「血管新生刺激」とは、分化した内皮細胞に特異的に作用し、これを化学的刺激が出る身体部位へ移動させるヒト又は動物の身体の組織又は血管の化学的刺激を意味する。こうして血管新生刺激は血管新生の誘導をもたらす。
【0057】
発明の別の実施形態では、分化する内皮前駆細胞の接着能力を高めるために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体が使用される。本発明に基づきエリスロポエチンは内皮前駆細胞の接着能力即ち細胞間接着能力を改善するために使用される。分化する内皮前駆細胞又は分化した内皮細胞の接着は、新しい血管又は新しい内皮組織の形成のための基本前提の1つである。細胞接着はタンパク質分子によって仲介される。
【0058】
また本発明は血管新生の刺激、特に脈管形成の刺激のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。本発明に関連して「脈管形成」とはin situで分化する内皮前駆細胞からの血管新生を意味する。本発明に基づき低用量エリスロポエチンを使用することによって、傷んだ血管区域の再生のために内皮前駆細胞が血管新生又は局所的血管新生に大いに寄与することとなる。即ち本発明に基づき低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用は新しい血管の形成を促し、及び/又は局所的血管新生による傷んだ血管区域の補充を促進することが見込まれる。
【0059】
発明の別の実施形態では、内皮前駆細胞を刺激して内皮組織を形成するために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0060】
発明の特に好ましい実施形態では、内皮前駆細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の病理学的状態又は疾患もしくはその後遺症の治療のために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0061】
本発明に関連して「疾患(disease)」、「病理学的状態(pathological states)」又は「障害(disorders)」とは、主観的に感知され、又は客観的に認定される肉体的、心的又は精神的異変を伴う臓器又は全身の生命過程の欠陥を意味する。本発明に基づき特に取り上げられるのは、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患、即ちこの細胞のこのような機能異常の結果であり、又はこの細胞によって仲介される疾患である。また本発明に基づき「疾患」、「病理学的状態」又は「障害」とは、低用量エリスロポエチン又は適当な活性成分の投与によって進行が停止し、又は特に抑制される臓器又は全身の生命過程の欠陥を意味する。「後遺症」とは二次疾患、即ち一次的病像に付随する第2の障害のことである。
【0062】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「機能異常」とは、この細胞の重要な細胞機能、例えば代謝能力、刺激応答、可動性、分裂挙動又は分化挙動の欠陥を意味する。内皮前駆細胞の機能異常は、例えばこの細胞がまったく又は不十分にしか増殖しないことである。エリスロポエチンの使用によって内皮前駆細胞の増殖が刺激されるから、それによって内皮前駆細胞及び内皮細胞の不十分な分裂挙動を補償し、内皮前駆細胞又は内皮細胞の数を増加することができる。内皮前駆細胞の機能異常は、例えばこの細胞の内皮細胞への分化能力の障害である。また内皮前駆細胞の機能異常は接着能力の障害及び/又は血管新生又は脈管形成刺激の方向への移動能力の障害によっても引き起こされる。内皮前駆細胞のこのような機能異常の結果、内皮組織の新生及び/又は脈管形成が阻害され又は妨げられる。また内皮前駆細胞の機能異常は病原的に、例えば高血圧、高リポタンパク質血、高いADMA血中濃度、尿毒症又は糖尿病により誘発されることもある。内皮前駆細胞の機能異常は例えばLアルギニンからのNO合成(NOS)によるNO(=EDRF)の産生の減少、エンドセリン産生の増加及び/又は接着分子例えばICAM−1及びVCAM−1の産生の強化となって現われる。
【0063】
本発明に基づき内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患は特に高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローマ動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、子癇前症、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/min、好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA濃度、創傷治癒及びその後遺症である。
【0064】
「高コレステロール血症」は高い血中コレステロール濃度が特徴である。一次高コレステロール血症の極めて多い形態は多因性高コレステロール血症である。二次コレステロール血症はしばしば糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下及び肝障害に現われる。
【0065】
「糖尿病」には様々な病因と病理学的状態の種々の形のグルコース代謝欠陥が包含される。血管関連の糖尿病合併症の発症には、特にAGE−RAGE系が原因となる。AGE(後期糖化生成物)は、タンパク質又は脂質が長期にわたり還元糖例えばグルコースにさらされた後に、一連の複雑な反応によって発生する。AGEの結合は通常の老化過程で起こり、糖尿病やアルツハイマー病では大規模に起こる。AGEの結合によって酸化ストレス、転写因子NF−kBの活性化及び内皮ホメオスタシスの欠陥が生じる。
【0066】
「インスリン抵抗性」とは、インスリンの生理的シグナルカスケードを無視し、このため当該の患者が正常なグルコース代謝を示さない、種々の身体細胞のシグナル伝達欠陥のことである。
【0067】
「内皮仲介性慢性炎症障害」は有害な刺激に対する身体及びその組織の防御反応に基づくヒト又は動物の身体の障害又は状態であって、特定のシグナル分子が内皮細胞の性質を変え、他種の細胞の活性化と相俟って、白血球が内皮細胞に付着し続け、遂には組織に侵入し、そこに炎症を引き起こすものである。内皮仲介性炎症の一例は白血球性血管炎である。内皮仲介性炎症性病理学的状態の活性化で中心的役割を果たすのは、転写因子NF−kBである。内皮仲介性慢性炎症を生じるもう一つの系はAGE−RAGE系である。
【0068】
「内皮増殖症」とは非血小板減少性紫斑病での退行性及び増殖性内皮病変を意味する。「細網内皮増殖症」とは網内組織球系例えば細網の疾患、細網症、網内系組織球症及びハンド・シュラー・クリスチャン病を意味する。
【0069】
「レイノー病」とは、血管収縮即ち血管痙攣に原因し、たいてい指の動脈に発作的に現われる虚血状態のことである。一次的レイノー病は四肢末端部の小動脈の純機能異常であるが、二次的レイノー病は別の疾患、例えば血管炎に基づくものである。
【0070】
「子癇前症」は母体の内皮及び血管の疾患であり、胎盤からの内皮向性物質の影響と思われる。子癇前症は、多数の臓器の機能異常をもたらし、多様な症候群となって現われる多系障害である。この障害で典型的な血行障害は、局所的に様々に発現する血管抵抗の増加の結果である。子癇前症で確実と見られるのは、内皮機能異常が発病の中心的構成部分であるということである。
【0071】
本発明に関連して「腎不全」とは、腎臓の尿排出物質排泄能力が局限されていることを意味し、進行した段階では電解質、水及び酸・塩基収支の調節能力も失われる。末期腎不全は排泄及び内分泌に関する腎機能の崩壊が特徴である。
【0072】
本発明に基づき腎不全は急性腎障害、ショック腎又はショック尿閉とも呼ばれる急性腎機能障害である。急性腎不全はたいてい可逆的な腎障害の結果として腎排泄機能の突発的な部分的又は全面的喪失が特徴である。原因は失血(多発性外傷、胃腸又は産後出血、心臓、血管、腹部又は前立腺の大きな手術的処置)の結果生じる血液量減少、低血圧及び脱水症による血流減少、ショック(心筋梗塞、塞栓症)、重い感染症(敗血症、腹膜炎、胆嚢炎)、溶血(溶血性尿毒症症候群、発作性血色素尿症、輸血事故)、筋融解(クラッシュ症候群、横紋筋融解、筋炎、火傷)、水及び電解質損失(大量嘔吐、下痢、多汗、腸閉塞、急性膵炎)である。その他の原因は腎細胞毒素例えば外因性毒素、例えばアニリン、グリコール化合物、メタノール等又は内因性毒素、例えばミオグロビン及びシュウ酸塩である。急性腎不全の別の原因は腎臓病、例えば炎症性腎症又は腎臓移植の後の拒絶反応である。急性腎不全は排尿障害の結果、尿閉によって引き起こされることもある。好ましくは低用量のエリスロポエチンによる、本発明に基づく急性腎不全の治療は、本発明に基づき急性腎不全の進行を阻止し、又は少なくとも緩和する。
【0073】
また本発明に基づき腎不全は慢性腎不全でもある。慢性腎不全の原因は脈管性、糸球体性及び尿細管間質性腎疾患、感染症及び先天的又は後天的構造欠陥である。慢性腎不全の原因は慢性糸球体症、慢性腎盂腎炎、鎮痛薬腎症、閉塞性尿路疾患並びに動脈及び細動脈硬化症である。慢性腎不全は、末期には尿毒症に移行する。本発明に基づく低用量エリスロポエチンによる慢性腎不全の治療は、本発明に基づき慢性腎不全の進行の緩和をもたらす。
【0074】
そこで本発明は急性及び慢性腎不全で腎組織の障害の阻止、緩和又は抑制及び/又は傷んだ腎組織の再生に用いられる薬剤の調製のための好ましくは低用量のEPOの使用に関する。
【0075】
本発明に基づき腎機能減退とは、糸球体濾過率が80ml/minをすでに下回っている状態のことである。従って腎機能減退は糸球体性、尿細管間質性及び脈管性腎障害の早期段階に関係する。本発明に基づく低用量エリスロポエチンによる腎障害治療は、本発明に基づき初期の腎組織及び/又は腎機能異常の進行の緩和及び再生をもたらす。
【0076】
本発明に関連して「微量アルブミン尿症」とは、当該の患者が30mg/24時間以上の尿中アルブミンの非生理的排泄を示す病像を意味する。このアルブミン排泄の増加は早期徴候として初期の腎機能低下を伴って現われ、腎構造の構造的変化を付随する腎臓の最初の病理的転換過程の結果である。
【0077】
本発明に関連して「タンパク尿症」とは、当該の患者が150mg/24時間以上の非生理的タンパク質排泄を示す病像を意味する。尿によるタンパク質排泄のこの増加(>150mg/24時間)は病的とみなされ、さらに医学的解明と治療が必要である。
【0078】
本発明に関連して「高いADMA値」とは、当該の患者が1.3μmol/l以上の非生理的な高いADMA血中濃度を示す病像を意味する。この高いADMA濃度は内皮機能異常を伴って現われ、この分子の分解又は排泄過程での代謝機能異常の結果である。
【0079】
本発明に関連して「創傷の治癒」とは、破壊された組織の再生又は創傷の閉塞のための生理的過程、特に結合組織及び毛細管の新生を意味する。創傷の治癒は、一次的創傷治癒(最初の意図的な治癒)であり、きれいな創傷の場合、迅速で合併症のない急速な閉塞を特徴とし、血行良好な、場合によっては適応した創縁の間の最小の結合組織新生に起因する。 大きく離れた、特に挫滅した、又は壊疽を生じた創縁を有する創傷及び創傷感染の場合は、遅滞した二次的創傷治癒(Sanatio per secundam intentionem)が生じる。その場合細菌性又は非細菌性炎症の結果、組織欠陥が肉芽組織でふさがれ、瘢痕組織が広く形成される。縁端からの内皮形成は創傷治癒の終結をなす。創傷治癒は3段階、即ち潜伏期、増殖期及び修復期に分けられる。一方、潜伏期は特に創傷発生後第1時間の痂皮形成を伴う滲出期と、創傷発生後1日〜3日の期間にわたる異化自己分解を伴う吸収期に分かれる。増殖期は繊維芽細胞によるコラーゲン形成を伴う同化的修復が特徴であり、創傷発生後第4日〜第7日に現われる。創傷発生後第8日から肉芽組織の瘢痕への変態を特徴とする修復期が現われる。
【0080】
本発明に関連して「創傷」とは、機械的損傷又は物理的原因による細胞障害によって引き起こされ、物質損失を伴う又は伴わない身体組織の連結の断絶を意味する。本発明の意味で創傷は疾患ともみなされる。創傷の形態には機械的創傷、熱的創傷、化学的創傷、放射線誘発性創傷及び疾患誘発性創傷がある。機械的創傷は外的強制力の作用によって発生し、特に切傷、刺傷、挫傷、破裂傷、裂傷、擦過傷、掻傷、咬傷及び銃傷として生じる。熱的創傷は熱又は寒冷の作用によって発生する。化学的創傷は特に酸又はアルカリ溶液による腐蝕によって発生する。放射線誘発性創傷は例えば化学光線及び電離線の作用によって発生する。障害誘発性創傷は特に鬱血誘発性創傷、外傷性創傷、糖尿病性創傷等である。本発明に基づき、創傷治癒のために低用量エリスロポエチンを好ましくは局所的に又は脈管内に適用することが定められている。
【0081】
本発明は高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害、例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率80ml/minより小さい、特に30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。
【0082】
本発明に基づきエリスロポエチンは、上記の疾患、特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の状態を治癒し、又はこの状態を予防し、このような疾患の進行を停止し、及び/又はこのような疾患の病理学的状態を緩和するのに十分な治療有効量で患者に投与するものとする。患者に投与される用量は多くの因子、例えば患者の年齢、体重及び性別、障害の重度等に関係する。
【0083】
「本発明に基づくEPOの用量」
本発明に基づきエリスロポエチンは本教示のすべての使用、方法及び組成物で、腎性貧血の治療のための周知の使用量より低い僅かな量で使用することが好ましい。その場合本学説の意味でin vivo即ち患者当りの僅かな又は低い投与量(dose)又は用量(dosage)とは、障害の重度及び腎機能に応じて1〜2000、好ましくは20〜2000単位(IU:国際単位)/週のEPO用量、好ましくは20〜1500IU/週の用量、特に20〜1000IU/週の用量、特に20〜950IU/週の用量、特に20〜900IU/週の用量、特に20〜850IU/週の用量、特に20〜800IU/週の用量、特に20〜750IU/週の用量、特に20〜700IU/週の用量、特に20〜650IU/週の用量、特に20〜600IU/週の用量、特に20〜550IU/週の用量、特に20〜500IU/週の用量、特に20〜450IU/週の用量、特に20〜400IU/週の用量、特に20〜350IU/週の用量、特に20〜300IU/週の用量、特に20〜250IU/週の用量、特に20〜200IU/週の用量、特に20〜150IU/週の用量を意味する。また本発明に基づき1〜450、好ましくは1〜9IU/週の用量を使用することも考えられる。本発明に基づき定められる上記のすべての用量、例えば1〜2000単位(IU)/週、患者当り、特に例えば500〜2000IU/週、患者当りの用量は赤血球増加以下量、即ちヘマトクリット値の増加を生じない、特にEPOによる治療の前のヘマトクリット値と比較して10%、特に5%、好ましくは2%以上のヘマトクリット値の上昇を生じない用量である。本発明に基づき定められる赤血球増加以下量は1〜90単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜45、特に1〜30単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜20単位EPO(IU)/体重kg、特に1〜15単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜10単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜4単位(IU)EPO/体重kgの週量、又は0.001〜0.4μg/体重kg、0.001〜0.3μg/体重kg、0.001〜0.25μg/体重kg、0.001〜0.2μg/体重kg、0.001〜0.15μg/体重kg、0.001〜0.1μg/体重kg、0.001〜0.09μg/体重kg、0.001〜0.08μg/体重kg、0.001〜0.07μg/体重kg、0.001〜0.06μg/体重kg、0.001〜0.05μg/体重kg、0.001〜0.04μg/体重kg、0.001〜0.03μg/体重kg、0.001〜0.02μg/体重kg、0.001〜0.01μg/体重kg、0.001〜0.009μg/体重kg、0.001〜0.008μg/体重kg、0.001〜0.007μg/体重kg、0.001〜0.006μg/体重kg、0.001〜0.005μg/体重kg、0.001〜0.004μg/体重kg、0.001〜0.003μg/体重kg、0.001〜0.002μg/体重kgの比較可能なAranesp週量に相当する。Aranespは二重ポリエチレングリコール化EPOである。
【0084】
本発明に基づき本教示のすべての使用、方法及び組成物で、エリスロポエチンは腎性貧血の治療のための周知の使用量より低い僅かな用量で使用することが特に好ましい。その場合本学説の意味でin vivo即ち患者当りの僅かな又は低い投与量又は用量とは、障害の重度及び腎機能に応じて体重kg及び週につき0.001〜90、好ましくは0.001〜50単位(IU:国際単位)のEPO用量、特に0.05〜45IU/kg/週の用量、特に0.05〜40IU/kg/週の用量、特に0.05〜35IU/kg/週の用量、特に0.05〜33IU/kg/週の用量、特に0.05〜31IU/kg/週の用量、特に0.05〜29IU/kg/週の用量、特に0.05〜27IU/kg/週の用量、特に0.05〜25IU/kg/週の用量、特に0.05〜23IU/kg/週の用量、特に0.05〜21IU/kg/週の用量、特に0.05〜20IU/kg/週の用量、特に0.05〜19IU/kg/週の用量、特に0.05〜17IU/kg/週の用量、特に0.05〜15IU/kg/週の用量、特に0.05〜13IU/kg/週の用量、特に0.05〜11IU/kg/週の用量、特に0.05〜9IU/kg/週の用量、特に0.05〜7IU/kg/週の用量、特に0.05〜5IU/kg/週の用量、特に0.05〜3IU/kg/週の用量、特に0.05〜1IU/kg/週の用量を意味する。また本発明に基づき0.001〜20、好ましくは0.05〜10IU/kg/週の用量を使用することも考えられる。本発明に基づき定められる上記のすべての用量、例えば0.01〜90単位(IU)/kg/週、患者当り、特に例えば0.01〜50IU/kg/週、患者当りの用量は、赤血球増加以下量、即ちヘマトクリット値の増加を生じない、特にEPOによる治療の前のヘマトクリット値と比較して10%、特に5%、好ましくは2%以上のヘマトクリット値の上昇をもたらさない用量である。本発明に基づき定められる赤血球増加以下量は約0.001〜90単位(IU)EPO/体重kg、特に0.001〜50、特に0.001〜45IU EPO/体重kg、特に1〜15IU EPO/体重kg、特に1〜10IU EPO/体重kg、特に1〜4IU EPO/体重kgの週量、又は体重kgにつき0.000005〜0.45μg、0.00025〜0.250μg/体重kg、0.00025〜0.225μg/体重kg、0.00025〜0.2μg/体重kg、0.00025〜0.175μg/体重kg、0.00025〜0.165μg/体重kg、0.00025〜0.155μg/体重kg、0.00025〜0.145μg/体重kg、0.00025〜0.135μg/体重kg、0.00025〜0.125μg/体重kg、0.00025〜0.115μg/体重kg、0.00025〜0.105μg/体重kg、0.00025〜0.095μg/体重kg、0.00025〜0.085μg/体重kg、0.00025〜0.075μg/体重kg、0.00025〜0.065μg/体重kg、0.00025〜0.055μg/体重kg、0.00025〜0.045μg/体重kg、0.00025〜0.035μg/体重kg、0.00025〜0.025μg/体重kg、0.00025〜0.015μg/体重kg、0.00025〜0.005μg/体重kgの比較可能なAranesp週量である。Aranespとは二重ポリエチレングリコール化EPOである。本発明に基づき内皮前駆細胞の機能異常を伴う疾患又は病理学的状態の治療のために定められた上記の僅かな用量、例えば患者当り0.001〜90単位/体重kg/週、特に例えば患者当り0.001〜50単位/kg/週の用量は、通常腎性貧血の治療のために使用される。
【0085】
上記の用量は、別に指示しなければ毎週投与される一回量であるが、1週間に数回の一回量に配分し、即ち多回量として使用することもできる。
【0086】
発明の特に好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の機能異常に関連する病理学的状態又は疾患の治療に用いる医薬組成物又は薬剤の調製のための活性成分としての、前節「本発明に基づくEPOの用量」で定義された低用量のエリスロポエチン又はその誘導体の使用に関する。
【0087】
本発明に基づき「活性成分」とは、標的分子又は標的細胞又は標的組織と接触して組織、臓器又は身体の特異的機能に差別的に影響を及ぼす内因性の又は外因性のの物質を意味する。従って、本発明に基づきエリスロポエチンは本発明医薬組成物の活性成分としてヒト又は動物の身体の内皮前駆細胞に接触して、内皮前駆細胞の機能異常が補償され、この機能異常の結果起こる疾患が効果的に根治、軽減又は除去され、又はこの疾患が効果的に予防されるように、内皮前駆細胞の増殖、分化及び/又は移動挙動に影響を及ぼし、また低用量エリスロポエチンの使用は様々な臓器及び臓器系で臓器再生及び機能減退の進行の抑制をもたらす。
【0088】
本発明に関連して「医薬組成物」又は「薬剤」とは、治療効果を喚起する少なくとも1つの天然の、又は合成的に作られた活性成分を含み、診断、治療及び/又は予防目的のために使用され、ヒト又は動物の身体の健康を促進又は回復する混合物を意味する。医薬組成物は固体及び液体混合物である。例えば活性成分を含む医薬組成物は単数又は複数の薬剤学的相容性成分を含むことができる。さらに医薬組成物は専門分野で常用される添加物例えば安定剤、調製助剤、離型剤、増量剤、乳化剤又は医薬組成物の調製に常用されるその他の物質を含むことができる。
【0089】
本発明に基づき特に高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、子癇前症、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療のために、好ましくは低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するものとする。
【0090】
本発明に基づく医薬組成物は局所的投与にも、全身投与にも適している。
【0091】
発明の好ましい実施形態では、医薬組成物が非経口的、特に静脈内、筋肉内、皮内又は皮下投与のために使用される。エリスロポエチンを含む薬剤は注射薬又は輸液の形を有することが好ましい。
【0092】
別の使用においては、エリスロポエチンを含む医薬組成物が経口投与される。例えばエリスロポエチンを含む薬剤は液状投薬形態、例えば溶液、懸濁液又は乳液として、又はは固形投薬形態、例えば錠剤として投与される。
【0093】
別の使用であっては、医薬組成物が肺投与又は吸入に適している。即ち本発明に基づきエリスロポエチンが患者の肺に直接投与されて治療効果を挙げる。エリスロポエチンのこの投与形態は、注射を行わずに、エリスロポエチン用量を患者に迅速に放出することを可能にする。肺によりエリスロポエチンを吸収すれば、多量のエリスロポエチンを肺経由で血流に放出することができ、このため血流に多量のエリスロポエチンが生じる。発明の好ましい実施形態では、肺により吸収される医薬組成物は水溶液又は無水溶液もしくは乾燥粉末である。肺投与されるエリスロポエチン含有薬剤が乾燥粉末の形であれば、これは好ましくはエリスロポエチン含有粒子からなり、その場合薬物が患者の肺の遠位領域に到達し得るように、粒子は10μm以下の直径を有することが好ましい。発明の特に好ましい実施形態では、肺投与される薬物はエーロゾルである。
【0094】
発明の特に好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を治療する医薬組成物の調製のためのエリスロポエチンの使用に関し、医薬組成物が活性成分としてエリスロポエチンのほかに、内皮前駆細胞の刺激のための少なくとも1つの別の補助活性成分を含むものである。
【0095】
好ましくは別の活性成分は、特に骨髄又は「その他の幹細胞」ニッチからの内皮前駆細胞の生理的動員を刺激する活性成分である。また本発明に基づき別の活性成分は、特に内皮前駆細胞の分裂挙動、即ち増殖を刺激する活性成分である。しかし本発明に基づき別の活性成分が内皮前駆細胞の分化挙動及び/又は移動挙動を刺激することも可能である。特に内皮前駆細胞を刺激する別の活性成分はVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬及びNO供与体特にLアルギニンであることが好ましい。
【0096】
また本発明に基づき少なくとも1つの別の活性成分は特に分化した内皮細胞、即ちその増殖及び/又は移動を刺激するが、内皮前駆細胞は刺激しない。この活性成分は特にbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)又はアンギオゲニンであることが好ましい。
【0097】
発明の別の実施形態は内皮前駆細胞の刺激、特に動員、増殖、内皮細胞への分化の刺激及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動のための医薬組成物の調製に用いられる活性成分としてのエリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用に関する。さらに本発明に基づき、特に成人のヒト又は動物の身体で脈管形成及び/又は内皮形成を刺激する医薬組成物の調製のための活性成分として、エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0098】
そこで本発明は内皮前駆細胞の刺激、特にその動員、増殖、内皮細胞への分化及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動の刺激、脈管形成及び/又は内皮形成の刺激及び内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の疾患の治療のための医薬組成物に関する。特に本発明は活性成分としてのエリスロポエチン並びに内皮前駆細胞及び分化した内皮細胞の刺激のための少なくとも1つの別の活性成分を含む医薬組成物又は薬剤に関する。本発明の好ましい実施形態はエリスロポエチン及びVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にスタチン例えばシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチン、ACE遮断薬例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン及びNO供与体特にLアルギニン、bFGF及びアンギオゲニンからなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0099】
発明の別の好ましい実施形態は、移植可能な内皮調製物の調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。その場合本発明に基づき特にエリスロポエチンの存在下で内皮前駆細胞を培養することにより内皮細胞をin vitroで調製し、続いてレシピエント生物、特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を患う生体に移植するものである。例えば密度勾配遠心分離法によって血液から単核細胞(MNC)を分離し、適当な培地でin vitro培養することができる。単核細胞の分離及びin vitro培養の方法は例えばAsahara, Science, 275(1997), 964-967;Dimmelerら、J. Clin. Invest., 108(2001), 391-397及びLlevadotら、J. Clin. Invest, 108(2001), 399-405に記載されている。続いてMNCに含まれる内皮前駆細胞をその増殖及び分化挙動に関して刺激し、特に分化した付着内皮細胞の数を増加するために、単核細胞をエリスロポエチンの存在下で引続き培養する。また本発明に基づきエリスロポエチン並びに内皮前駆細胞の増殖及び分化を刺激する少なくとも1つの別の物質の存在下でMNCの培養を行う。特に別の物質としてVEGF、PIGF、GM−CSF、LアルギニンなどのNO供与体、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬又はHMG−CoA還元酵素阻害剤例えば特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンを使用することが好ましい。
【0100】
発明の別の好ましい実施形態では、血管系に十分に結合して細胞治療用組織細胞が癒合することを保証するために、低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養し、及び/又は低用量エリスロポエチンを局所的及び全身的にin vivo適用して、内皮前駆細胞を当該の患者の他の細胞治療用細胞集団例えば肝細胞、筋細胞、心筋細胞又は膵臓細胞と同時に適用する。
【0101】
また発明の別の好ましい実施形態は、患者の身体の特定部位、例えば内植部位を動員し、内皮前駆細胞の数及び機能を増大し、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うために、低用量エリスロポエチン並びに単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子を逐次に又は時間的に連続して又は同時に投与する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。この場合機械的因子は例えば体内プロテーゼ、好ましくは例えば歯、骨又は靭帯/腱代替物の内植体である。また生物学的因子は固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓、皮膚又は毛髪インプラントである。このようにして本発明は同時に、続いて又は事前に内植された機械的因子例えば体内プロテーゼもしくは生物学的因子をよりよく、より急速に、より効果的に周囲の身体構造に癒合又は統合させるために、EPOを低用量で使用する。そこで本発明はまた生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、歯牙インプラント又はその他の体内プロテーゼ例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の、周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。場合によってはその際エリスロポエチンを細胞治療に適した細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することもできる。別の好ましい実施形態では、患者の目標構造、特に目標組織、目標骨又は目標軟骨への生物学的又は機械的因子の統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの上記の使用であって、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療用細胞集団として造骨細胞、骨形成能力を持つ細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では特に使用される機械的因子が有機接着剤、例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又はキットに含まれるようにすることができる。
【0102】
発明の別の好ましい構成では、「美容術」としての局所的適用、特にしわ及び小じわの予防又は差当り重要な減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚特に顔の皮膚の保護及び緊張のため及びメイクアップのファウンデーションとして、エリスロポエチン又は適当な活性成分の使用が定められている。エリスロポエチンの局所的適用によって老年性色素斑の発生及び発達が防止され、肌の状態がきれいになり、好ましくは迅速な内皮再形成により皮膚の若返り過程、さらには毛髪の成長が促進されることになる。
【0103】
別の応用形態では日周期リズムに合わせた低用量エリスロポエチンの投与が行われる。内因的エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(日最大値)があり、従って最大の生物学的効果を得るために、低用量エリスロポエチンの投与を好ましくは午前中、特に6時〜10時に行うべきである。
【0104】
発明の別の好ましい実施形態では、移植される組織又は臓器の前処理及び/又は再処理のために、低用量エリスロポエチンの使用が定められている。その場合移植体を移植の前、好ましくはその直前に、なおドナーの身体中で低用量エリスロポエチンで処理する。移植の時点から受容者の身体を同じく低用量エリスロポエチンで処理することもできる。本発明に基づき移植臓器又は組織の移植の直前又は直後のエリスロポエチンによるこの処理によって、身体に移植した後の移植体に脈管形成が誘導されるから、新しい血管が急速に形成され、この新たに形成された血管が受容者の身体の血管系と急速に結合されることとなる。またこうして急速に内皮の形成が得られる。こうして低用量エリスロポエチンによる臓器及び組織移植体の処理は身体へのこの系の急速な癒合をもたらすから、拒絶反応の危険が大幅に減少される。しかも低用量エリスロポエチンの投与によって臓器再生が刺激される。
【0105】
発明の別の実施態様では、臓器又は組織移植体を移植の前に低用量エリスロポエチンと内皮前駆細胞を刺激する少なくとも1つの別の因子との組合せによって処理する。好ましくはこの因子は、VEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬例えば、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬又は特にLアルギニンであるNO供与体からなるグループから選ばれた物質である。別の実施態様では臓器又は組織移植体を移植の前にエリスロポエチンのほかに、分化した内皮細胞の増殖及び移動を刺激する別の物質で処理する。特にこの物質はアンギオゲニン又はbFGFであることが好ましい。別の実施態様では、分離され、場合によってはin vitroで拡張された内皮前駆細胞を使用して、エリスロポエチンによる臓器又は組織移植体の前処理を行う。
【0106】
発明の別の好ましい実施形態では、内植可能又は移植可能な細胞含有in vitro臓器又は組織の調製のために低用量エリスロポエチンを使用する。本発明に基づき特にレシピエント生物の体内にある内皮前駆細胞、特にその生理的動員、移動、増殖及び分化を刺激するために、in vitroで作られた臓器又は組織を移植又は内植の前に低用量エリスロポエチンによりin vi-tro処理する。in vitro臓器又は組織の移植又は内植の後にレシピエント生物をさらに本発明に基づく用量の低用量エリスロポエチンで処理することが好ましい。本発明に基づきin vitro臓器又は組織を移植又は内植の前にエリスロポエチンで処理し、場合によってはレシピエント生物をエリスロポエチンで後処理することによって、体内に移植又は内植した後のin vitro臓器又は組織系に、脈管形成が誘導されることによって急速に新しい血管が形成され、この新たに形成された血管がレシピエント生物の血液系と急速に結合されることとなる。またこうして急速に内皮の形成、それと共に内皮再形成が得られる。こうして低用量エリスロポエチンによるin vit-ro臓器又は組織系の処理は身体へのこの系の急速な癒合をもたらすから、拒絶反応の危険が大幅に減少され、移植体の保護に役立つ。
【0107】
「in vitro臓器又は組織系」とは、所定の細胞を使用し、及び/又は所定の組織を使用して、所定の培養条件のもとでin vitroで調製される移植又は内植可能な細胞含有組織又は臓器を意味する。「内植可能(implantable)なin vitro臓器又は組織系」とは、細胞のほかに体外材料を含む系を意味する。「移植可能な(transplantable)in vitro臓器又は組織系」とは、特に同じ又は他の個人の細胞、組織及び臓器のほかに身体固有の物質を含む細胞含有系を意味する。in vitro臓器又は組織は、特にその構造が、代替される自然の臓器又は組織にほぼ相当し、従って代替された臓器又は組織の機能をin vivoで継承することができるのが特徴である。
【0108】
本発明の一実施態様では、in vitro臓器又は組織を移植又は内植の前に、エリスロポエチンと内皮前駆細胞を刺激する少なくとも1つの別の因子との組合せで処理する。この因子はVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬例えば、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬及びNO供与体からなるグループから選ばれた単数又は複数の物質であることが好ましい。別の実施態様ではin vitro臓器又は組織系を移植又は内植の前に、エリスロポエチンのほかに分化した内皮細胞の増殖及び移動を刺激する別の物質で処理する。特にこの物質はアンギオゲニン又はbFGFであることが好ましい。別の実施態様ではさらにin vitro臓器又は組織系は、分離され場合によってはin vitroで拡張された内皮前駆細胞を含む。
【0109】
発明の別の好ましい実施形態は血管プロテーゼ又は心臓弁の調製のための低用量エリスロポエチンの使用に関し、血管プロテーゼ又は心臓弁を身体、特に人体に挿入する前にエリスロポエチンで被覆するものである。血管プロテーゼ又は心臓弁をエリスロポエチンで被覆することによって、受容体の体内で内皮前駆細胞が刺激され、特に骨髄からの動員、増殖、内皮細胞への分化及び使用された血管プロテーゼ又は心臓弁への移動が刺激されることとなる。こうして調製された血管プロテーゼ又は心臓弁を体内に挿入した後、これを特に本発明に基づく用量のエリスロポエチンで再処理することができる。挿入された血管プロテーゼ上の内皮層の形成がこうしてより迅速に起こり、当該の身体区域に迅速に癒合する。好ましい実施態様では血管プロテーゼ及び心臓弁の被覆のために、分離され、in vitroで拡張された内皮前駆細胞をさらに使用する。
【0110】
また本発明は以下を包含する内皮細胞形成の刺激方法に関する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)単離され、内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)低用量エリスロポエチンの存在下で細胞集団を培養する。
【0111】
本発明に基づき細胞集団の培養は、内皮前駆細胞を刺激する別の物質の存在下で行うことができる。
【0112】
また本発明は「本発明に基づくEPOの用量」の段落で説明したような僅かな用量のエリスロポエチンを単独で、又はその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と組み合わせて、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を有する患者に投与して行う、このような疾患の治療方法に関する。本発明方法は特に人体の疾患、例えば高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、急性又は慢性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率80ml/minより小さい、特に30〜80、好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療に適している。
【0113】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法の好ましい実施形態では、エリスロポエチンのほかに、VEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を患者に投与する。投与されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであることが好ましい。投与されるACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどの活性成分、投与されるAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどの活性成分である。投与されるNO供与体は好ましくはLアルギニンである。
【0114】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法の別の好ましい実施形態では、ヒトの生体の血液から内皮前駆細胞を分離し、低用量エリスロポエチンを使用してin vitroで拡張し、内皮細胞に分化し、分化した内皮細胞又は分化する内皮前駆細胞の精製及び単離の後に、続いてこれを内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常により損傷した患者の身体区域、組織又は臓器に適宜に移植し、そこに局所的内皮新生を誘導するものである。こうして患者の損傷した身体区域、組織及び/又は臓器の適切かつ迅速な治療が可能である。内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法のこの実施形態は、次の諸段階を包含する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)内皮前駆細胞の増殖及び/又は内皮細胞への分化を刺激するために、低用量エリスロポエチンの存在下で、内皮前駆細胞を含む細胞集団を培養し、
d)分化した内皮細胞を単離及び精製し、
e)内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を有する身体に、分化した内皮細胞を移植する。
【0115】
分化した内皮細胞を身体に移植した後、これを特に本発明に基づき定められた低用量、即ち「本発明に基づくEPOの用量」の節で定義した例えば1、好ましくは0.001〜90IU/kg/週又は20〜2000IU/kg/週のエリスロポエチンで再処理することができる。
【0116】
本発明に基づき内皮前駆細胞を含む細胞集団をVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE遮断薬及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下でin vitro培養することができる。培養に使用されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、ACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルのような物質、そしてAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンのような物質であることが好ましい。
【0117】
内皮前駆細胞の数と機能を増大し、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、内皮前駆細胞を含む細胞集団と低用量エリスロポエチン及び単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって処理することができる。
【0118】
発明の別の好ましい実施形態は下記を包含する血管障害の治療方法に関する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)内皮前駆細胞の増殖及び/又は内皮細胞への分化を刺激するために、エリスロポエチンの存在下で、内皮前駆細胞を含む細胞集団を培養し、
d)分化した内皮細胞を分離及び精製し、
e)血管障害を有する身体に内皮細胞を移植する。
【0119】
内皮細胞を身体に移植した後、好ましくは本発明に基づく低用量、即ち「本発明に基づくEPOの用量」の段落で定義した例えば0.001〜90IU/kg/週又は20IU/週〜2000IU/週の用量のエリスロポエチンで再処理することができる。
【0120】
本発明に基づき内皮前駆細胞を含む細胞集団をVEGF、PIGF、GM−CSF、ACE遮断薬、AT−1遮断薬及び/又はHMG−CoA還元酵素阻害剤からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下でin vitro培養することが可能である。培養に使用されるACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリル、培養に使用されるAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンのような物質、そして培養に使用されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであることが好ましい。
【0121】
本発明に基づき内皮前駆細胞の数と機能を増大し、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、内皮前駆細胞を含む細胞集団を低用量エリスロポエチン及び単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって処理することができる。この場合機械的因子は体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である。また生物学的因子は固形臓器例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚であり、又は毛髪インプラントである。こうして本発明は同時に又は続いて又は事前に内植された機械的因子例えば体内プロテーゼ又は生物学的因子をよりよく、より迅速に、より効果的に周囲の身体構造に癒合又は統合させるために、EPOを特に低用量で使用する。そこで本発明は生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、インプラント義歯又はその他の体内プロテーゼ、例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の、周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。その場合好ましい実施形態ではエリスロポエチンを細胞治療に適した細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では患者の目標構造、特に目標組織、目標骨又は目標軟骨への生物学的又は機械的因子の統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの上記の使用で、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療に適した細胞集団として造骨細胞、造骨機能を有する細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では、特に使用される機械的因子が有機接着剤、例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又は医薬キットに含まれるようにすることができる。
【0122】
本発明に基づく血管障害の治療方法は、人体の血液から内皮前駆細胞を単離し、低用量エリスロポエチンを使用してin vitroで拡張し、内皮細胞に分化し、分化した内皮細胞又は分化する内皮前駆細胞の精製と単離の後に、続いてこれを傷んだ血管又は虚血区域に適宜に移植して、そこに局所的血管新生を誘導するものである。こうして傷んだ血管又は虚血組織の適切かつ迅速な治療が可能である。本発明に基づく血管障害の治療方法は虚血、特に脳虚血、四肢の虚血性障害、卒中発作、急性動脈閉塞、動脈閉塞病、レイノー病及びバッカク中毒のような血管障害の治療に特に適している。
【0123】
発明のその他の有利な実施態様は従属請求項で明らかである。
【0124】
下記の図と実施例に基づき発明を詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0125】
実施例1 腎性貧血患者でのEPOの効果
末期の腎臓病(終末前腎不全、クレアチニン・クリアランス<35ml/min)の結果、腎性貧血(Hb[ヘモグロビン]<10.5g/dl)を有する患者でのエリスロポエチンの効果を調べた。11人の患者を少なくとも8週の期間にわたって平均5000IU・rhEPO(組換えヒト・エリスロポエチン)の週量のエリスロポエチンで脈管内又は皮下投与により治療した。エリスロポエチン治療の後に患者の血液中の内皮前駆細胞を20週の期間にわたって調べ、0、2、4、6及び8週後に内皮前駆細胞の数及び分化状態をフローサイトメトリー及び培養テストにより分析した。
【0126】
循環末梢血幹細胞(CPBSC)はCD34抗原もCD45抗原も発現する小さな細胞集団である。ISHAGE基準に基づきフローサイトメトリーによりCPBSCの数を決定するためのテストが開発された(Sutherlandら、J. Hematoth., 5(1996), 213-226)。このテストを使用してCD34及びCD45細胞の発現パターン及び幹細胞の形態を決定した。こうしてμl当りのCPBSCの絶対数及び全白血球数に対するCPBSCの百分比を決定した。
【0127】
図1はISHAGE基準に基づく循環CD34+幹細胞のFACS[蛍光活性化セルソーター]分析の結果を示す。
【0128】
図2は8週の期間にわたりFACS分析により確かめたCD+幹細胞の数を示す。
【0129】
細胞培養テスト
Asahara, Science, 275(1997), 964-967に記載された方法によりヒト血液試料からフィコールの密度勾配遠心分離法で単核末梢血球(PBMC)を単離した。細胞を培養板にフィブロネクチンと共に塗抹し、EC基礎培地に保持した。EC基礎培地はEBM−2基礎培地(Clonetics社)及びEGM−2 Quots(hEGF;GA−1000(ゲンタマイシン、アムホテリシン−B)FBS、VEGF、hFGF−B(w/ヘパリン)、R3−IGF−1、アスコルビン酸、ヘパリン)からなる。4日間の培養の後に板を洗浄して非付着細胞を除去した。残る付着細胞をトリプシンで処理し、再び播種した。続いてこれをさらに3日間培養した。内皮表現型を有する細胞を単離後第7日にポジティブ染色により2つの異なる内皮マーカーに関して同定した。ここで取り上げられるのはDil標識を付したアセチル化低密度リポタンパク質(acLOL−Dil)及びハリエニシダ・アグルチニン−1(UEA−1)である。この研究の結果を図3に示す。
【0130】
結果が示すところでは、エリスロポエチンは内皮前駆細胞を動員し、循環内皮前駆細胞の数を増加することができる。その場合特定の病状、例えば腎性貧血で現われる機能異常が補償される。この結果を図4に示す。
【0131】
フローサイトメトリーで確かめたところでは、末期の腎臓病患者の循環CD34+幹細胞の数は健康な被験者の血液中の循環CD34+幹細胞の数に相当する。エリスロポエチン治療の開始後、血流中のCD34+幹細胞の数は50%以上と、著しく増加する。細胞培養テストを使用して確かめたところでは、エリスロポエチンによる治療の後に、内皮表現型を発現する細胞の数が劇的に増大する。機能的細胞培養テストで内皮前駆細胞の著しく阻害された能力が3倍以上も増加した。
【0132】
実施例2 rhEPOの全身使用により改善された創傷治癒
FVB/Nマウスをイソフロランの吸入麻酔により麻酔した。両方の後足の毛を脱毛液で除去し、70%アルコールで消毒した。無菌の4mm一方向生検用組織パンチでマウスの右側腹部にそれぞれ1つの皮膚創傷を付けた。反対側は内部対照として保存した。ペニシリンG(20000単位/kg)で術後抗生剤遮蔽を1回行った。全研究期間にわたり組換えヒト・エリスロポエチン類似体Aranesp(0.1μg/体重kg)の全研究期間中毎週1回の皮下注射を行った。治療は組織パンチの取り外しの7日前に開始した。結果を図8に示す。図はEPOの投与が創傷治癒過程を著しく速めることを示している。
【0133】
図19は創傷治癒に対するエリスロポエチンの効果を示す。図が示すところでは、組織パンチでマウスに付けた標準的な皮膚創傷の低用量エリスロポエチン(20IU・EPO/kg/週)による治療で7〜8日後にすでに創傷が完全に閉じたが、生理食塩水(塩水)による治療では創傷が13〜14日後にようやく完全に閉じた。高い用量のエリスロポエチン(200IU・EPO/kg/週)による試験動物の治療は、対照群と比較して創傷治癒の加速を観察することができなかった。高用量エリスロポエチンで治療した実験動物のうち2頭は観察期間中に死亡した。エリスロポエチン又は生理食塩水による治療は、手術日に皮膚創傷を付けた後に開始した。組換えヒト・エリスロポエチンは毎週1回s.c.(皮下)注射(20IU/kgEPO又は200IU/kg/EPO)により投与した(各グループでn=5)。
【0134】
実施例3 エリスロポエチン治療による慢性腎不全の進行の緩和
8週齢のスプレーグ・ドーリーラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。第0日にラットから右腎を摘出し、摘出後直ちに組織検査のためにホルマリンで固定した。左腎では、上下の腎極に供給する区域動脈を結紮した。それによって当該の腎区域の腎梗塞が起こり、中央の3分の1の腎臓だけが機能を維持する。毎週1回0.1μg/体重kgの用量のエリスロポエチン類似体Aranesp又は対照のためにNaClをラットに皮下(s.c.)注射した。
【0135】
図10は2つの試験群のカプラン・メイヤー生存曲線を示す。Aranesp治療動物は生理食塩水治療動物と比較して、生存が明らかに改善されている。
【0136】
図15〜18には、エリスロポエチン治療の後、腎組織は病変を示さないが、NaCl治療の後は重い病変が認められることが示されている(図8〜11を参照)。広範な組織学的研究が明らかにしたところでは、Aranesp治療動物では生理食塩水治療動物より著しく高い血管密度(CD31)が観察される(データは示さず)。
【0137】
実施例4 急性腎不全の進行の緩和
この研究には体重250〜300gのスプレーグ・ドーリーラットを使用した。試験群の1つに急性腎不全の誘導の前日に0.1μg/kgの用量のAranespを1回与えた。ラットをケタミン(120mg/体重kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。同時に生理食塩水を皮下注射した試験動物群を対照として使用した。動脈鉗子を右腎動脈に取り付けることによって、腎臓の血流を45分間中断した。この時間の間に左側で腎摘除を行った。別の対照群では偽手術を行った。この場合は開腹して、左腎動脈を露出させたが、血液供給は中断せず、対側の右腎を摘出した。すべての動物を60分の期間のあいだ麻酔し、手術の24時間後に殺した。
【0138】
残りの右腎の45分の虚血とその後の再潅流は、生理食塩水治療動物で激しい急性腎機能喪失を生じた。これは係数7だけ上昇した血清クレアチニン値となって現れた(p<0.05)。これに対してエリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は虚血−再潅流障害の誘導の翌日に血清クレアチニン値の4倍の増加しか示さなかった。右腎を偽手術し、左側で腎摘除した動物では滞留値の上昇は起こらなかった。結果を図9に示す。
【0139】
実施例5 腎機能減退患者での内皮前駆細胞の分化能力の低下
46人の尿毒症患者と、年齢及び性別が一致する46人の健康な対照被験者で、内皮前駆細胞の分化状態を培養テストにより分析した。その際意外なことに、この分化アッセイで尿毒症患者の内皮前駆細胞の数が健康な対照被験者に比して著しく減少していることが認められた(図7)。健康な被験者の単核細胞を単離して、糖尿病患者の血清の存在下でこれを培養すると、この細胞の内皮前駆細胞への分化能力が同様に減少する(図6)。
【0140】
実施例6 健康な被験者での内皮前駆細胞の分化能力の刺激
4人の健康な若年男子を8週の期間にわたり体重kg当り30IUのエポエチンβで週1回治療した。その際内皮前駆細胞の分化能力を被験者のrhEPO治療の前に、また被験者のrhEPO治療の1、2、3、4、5、6及び7週後に毎週培養アッセイで、その接着能力及び2つのマーカーacLDL及びUEAに基づいて決定した。その場合EPCの50%以上の相対的増加が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】循環CD34+幹細胞(cSC)のFACS分析の結果を示す。(A−D):患者試料;(E−F):アイソタイプ対照。CD34マーカー(B及びF)の付加的発現、特徴的な低〜中位のCD45抗原発現(C及びG)、特徴的な光散乱性(D及びH)に基づいてcSCを同定した。cSC絶対数は単核細胞及びリンパ球100000個当りで計算した。
【図2】フローサイトメトリーによる循環幹細胞の定量的アッセイを示す。図はrhEPO(組換えヒト・エリスロポエチン)を使用したエリスロポエチン治療の0、2、4、6及び8週後の時間依存的効果を示す。n=11、値は平均値+/−標準偏差に相当する。中央値を線で示す。*:2週と比較してp<0.01、Ψ:4週と比較してp<0.05、#:8週と比較してp<0.05
【図3】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図はrhEPO治療がEPCの相対数を増加することを示す。腎患者のrhEPO治療の前並びに患者のrhEPO治療の2、4、6及び8週後にEPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=11、値は平均値+/−標準偏差に相当する。中央値を線で示す。*:治療前の期間に対してp<0.01、#:治療前の期間に対してp<0.001
【図4】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図は、rhEPO治療の開始前のEPCの絶対数が、年齢及び性別の一致する健康な被験者に比して著しく減少していることを示す。即ち腎性貧血患者は対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。腎性貧血のrhEPO治療の開始の8週後に機能性EPCのこの減少した数が補償される。rhEPOによる腎患者の治療の前並びにrhEPOによる患者の治療の2、4、6及び8週後にEPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=11。8週の経過及び全対照を例示する。絶対値は一方では個別値として示されている。さらにボックスプロットを示す(第90/第75/第50/第25及び第10百分位数及び平均値)。健康な対照として年齢及び性別の一致する被験者を使用し、同様にEPCを単離し、特徴づけた(n=11)。
【図5】健康な若い被験者の培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図はrhEPO治療(30IUエポエチンβ/体重kg/週)がEPCの相対数を増加することを示す。rhEPOによる被験者の治療の前並びにrhEPOによる被験者の治療の1、2、3、4、5、6及び7週後に毎週EPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=4、値は平均値+/−標準偏差に相当する。
【図6】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。代表的な写真は尿毒症患者のEPCの絶対数が、年齢及び性別の一致する健康な被検者に比して著しく減少していることを示す(上の列−in vivo)。腎機能が減退した患者はこのように対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。健康な被験者の前駆細胞を尿毒症患者の血清で共生培養すれば、その内皮前駆細胞の分化能力が減少する(下側の列−in vitro)。腎機能の減退及びそれから誘導される尿毒症はこのように内皮前駆細胞の機能異常をもたらす。
【図7】腎機能が減退した46人の尿毒症患者の培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを、年齢及び性別の一致する46人の被験者と比較してボックスプロットとして示す(第90/第75/第50/第25及び第10百分位数並びに平均値)。その場合尿毒症患者の内皮前駆細胞の数は健康な被験者に比して著しく減少している。腎機能減退患者はこうして対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。
【図8】創傷治癒に対するエリスロポエチンの効果を示す。図は、マウスに組織パンチで付けた標準的な皮膚創傷のエリスロポエチン治療で創傷が7日〜8日後にすでに完全に閉じたが、生理食塩水による創傷の治療では創傷が13日〜14日後にようやく完全に閉じたことを示す。エリスロポエチン又は生理的食塩水による治療は皮膚創傷を付ける7日前に開始した。組換えヒト・エリスロポエチンをs.c.(皮下)注射(0.1mg/kg Aranesp)により週1回投与した(各グループでn=5)。
【図9】エリスロポエチンが急性腎障害(急性腎不全)の後の腎機能喪失を緩和することを示す。スプレーグ・ドーリーラット(250〜300g)を研究に採用した。ラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。試験群の1つには急性腎不全の誘導の前日に1回0.1μg/体重kgのAranespを与えた。対照として、同時に生理食塩水を皮下注射した試験動物グループを使用した。右腎動脈に動脈鉗子を取り付けることによって、腎臓への血流を45分間中断した。この時間のあいだに左側で腎摘除を行った。別の対照群で偽手術を行った。この場合は開腹して左腎動脈を露出させたが、血液供給を中断せず、対側の右腎を摘出した。すべての動物を60分間麻酔し、手術の24時間後に殺した。生理食塩水で治療した動物では、残りの右腎の45分の虚血とその後の再潅流が激しい急性腎機能不全を生じた。このことは血清クレアチニン値に反映される。虚血−再潅流の24時間後の血清クレアチニン値は虚血−再潅流の前の値の7倍である(p<0.05)。これに対してエリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は虚血−再潅流障害の誘導の1日後に血清クレアチニン値の4倍の上昇を示したに過ぎない。右腎を偽手術し、左側で腎摘除した動物では、停滞値の上昇が起こらなかった。図はEPO治療動物(IR+EPO)、NaCl治療動物(IR)及び偽手術動物(Schein−OP)の虚血−再潅流(IR)障害の前及びその24時間後の血清中クレアチニン濃度を示す。図で明らかなように、Aranesp治療動物の虚血−再潅流障害の24時間後の血清クレアチニン濃度は、行わない対照(NaCl治療)に比べてほぼ半減している。
【図10】慢性腎不全を誘導し、Aranesp又はNaClで治療した2つの試験群のカプラン・メイヤー生存曲線を示す。8週齢のスプレーグ・ドーリーラットを研究に採用した。ラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。第0日に右腎を摘出し、摘出後直ちに組織学的研究のためにホルマリンで固定した。左腎では上下の腎極に供給する区域動脈を結紮した。それによって当該の腎区域の腎梗塞が起こり、中央の3分の1の腎臓だけが機能を維持する。ラットにAranesp(0.1μg/体重kg)又は生理食塩水を皮下注射で毎週1回与えた。エリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は食塩で治療した動物に対して著しい生存利得を有する(p=0.027;ログランクテスト)。
【図11】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間のあいだ毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は重い高血圧障害、動脈内膜炎を伴ういわゆる悪性腎硬化症の危険がある、特徴的なタマネギの皮状の血管壁増殖を有する中位の大きさの糸球体動脈を示す。
【図12】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図はいわゆる増殖性FSGS[巣状糸球体硬化症](右糸球体)としての活発な巣状分節性糸球体硬化症を示す。他方の糸球体(左)は環状糸球の虚血性虚脱を示す。図の下側に重い内皮障害を有する小血管が見える。観察される組織学的変化は、高血圧性臓器障害又は5/6腎切除後の過負荷腎臓病に関連する変化に相当する。
【図13】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は代償的に肥大した糸球体のほぼ完全な硬化又は破壊と、当該の輸入細動脈の鮮明なヒアリノーシス又はフィブリノイド壊死を示す。
【図14】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は重い高血圧性障害、いわゆる悪性腎硬化症で特徴的なタマネギの皮状の血管壁増殖及び血管壁壊死を有する糸球体細動脈を示す(図右側を参照)。左側に正常な(まだ)障害のない細動脈が見える。
【図15】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg/kg Aranesp)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図16】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg Aranesp/kg)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す(倍率630倍)。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図17】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg Aranesp/kg)の後の、慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図18】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg/kg Aranesp)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す(倍率630倍)。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図19】創傷治癒過程に対するEPOの効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員、増殖及び分化の刺激、脈管形成の刺激、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療、このような疾患の治療のための医薬組成物の調製のための特に低用量のエリスロポエチン(EPO)の単独の、又は他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と組み合わせた使用並びにエリスロポエチン及び内皮前駆細胞の刺激及び器官保護、器官再生、特に新規な血管及び組織の新生、器官障害の進行の抑制に適したその他の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0002】
また本発明はヒト又は動物の身体の美容治療の分野で、即ち「美容術(beauty care)」として、特にしわ及び小じわの予防及び減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚、特に顔の皮膚の保護と緊張のため及びメイクアップのファウンデーションとして、好ましくは局所的に適用するための特に本発明に基づく低用量のエリスロポエチン及び適した活性成分の使用に関する。また本発明に基づくエリスロポエチンの局所的適用は老年性色素斑の発生と発達を防止し、肌の状態をきれいにし、皮膚の若返り(rejuvenation)過程を促進し、毛髪の成長を速める。
【0003】
また本発明はヒト又は動物の身体の自然な日周期リズムに合わせた適用のために適し、かつ設計されている医薬組成物の調製のための、好ましくは低用量のエリスロポエチン、即ち好ましくは下記の段落「本発明に基づくEPOの用量」で定義するように用量されたEPOの使用に関する。ヒトの場合、内因性エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(日最大値)があるから、最大の生物学的かつ治療的効果を得るために、上記で定義した低用量のエリスロポエチンの本発明に基づく投与は午前、特に6時〜10時の期間に行われる。この期間内にEPOを一回量として又は複数回の用量で投与することができる。好ましくは本教示により挙げられたすべての使用のため、特にヒト又は動物の身体又は細胞の美容上及び治療上の処置のために、本発明に基づき一回量又は複数回の用量としてのこの使用が提案される。
【0004】
本発明に基づきエリスロポエチンの使用の別の実施形態では、細胞治療用組織細胞の癒合(settling)と血管系への十分な結合を保証するために、好ましくは低用量のエリスロポエチンであらかじめin vitro培養し、及び/又は好ましくは本発明に基づき低用量のエリスロポエチンを局所的又は全身的に適用して、内皮前駆細胞を他の細胞治療用細胞集団と同時にin vivo適用する。
【0005】
また本発明は、血管系への十分な結合により細胞治療用組織細胞の癒合を改善するために内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を適用する場合、好ましくは午前6時〜10時の期間に適用するための、好ましくは低用量エリスロポエチンのin vivo使用に関する。また本発明は、血管系への十分な結合により細胞治療用組織細胞の癒合を改善する内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の培養のための、好ましくは低用量のエリスロポエチンのin vitro使用に関する。
【0006】
また本発明は特に疾患の予防又は治療のための、又は移植又は内植の間に用いられる、医薬組成物又はキット、内皮前駆細胞の数と機能の増加及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制のために少なくとも1つの他の化学的、熱的、機械的又は生物学的因子、特に薬理的活性成分と共に逐次時間的に連続する投与で使用される医薬組成物又はキットの調製のための特に低用量のエリスロポエチンの使用に関する。
【0007】
また本発明は特に疾患の予防又は治療のための、又は移植又は内植の間に用いられる、医薬組成物又はキット、特に低用量で使用され、内皮前駆細胞の数と機能を高め及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制する、エリスロポエチンと少なくとも1つの他の化学的、熱的、機械的又は生物学的因子との同時投与のための医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。
【0008】
そこで本発明は内皮前駆細胞の数と機能を高め、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、低用量エリスロポエチンと、好ましい態様では単数又は複数の他の薬理的活性成分、例えばVEGF、GM−CSF、MCSF、トロンボポエチン、SDF−1、SCF(幹細胞因子)、NGF(神経成長因子)、PIGF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、AT−1遮断薬及びNO供与体との、好ましくは逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。その場合本発明に基づき次の順序で、即ちA)骨髄又は幹細胞のための特異的組織、ニッチの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、B)骨髄又はその他の「幹細胞」ニッチから末梢血への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の動員、C)選択的培養条件好ましくは酸素分0.1%〜10%の低酸素条件下での培養で末梢血中及び/又はex vivoの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、D)障害部位への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞のホーミング、E)標的組織への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の接着及び移動、F)内皮前駆細胞による脈管新生の順序で影響を受けることになる。
【0009】
また本発明は内皮前駆細胞の数と機能を高めし、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、任意であり、好ましくは身体特有のEPO産生の自然な日周期リズムに合わせた前述の使用、即ち午前6時〜10時の期間の投与のために適し、かつ設計されている適用形態での、本発明に基づく低用量エリスロポエチンと、必要に応じて単数又は複数の他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の、時間的に連続する、又は同時のin vivo及びin vitro投与に関する。
【0010】
また本発明は、内皮前駆細胞の生理的動員、増殖及び分化の刺激、脈管形成の刺激、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療及びこのような疾患の治療用の医薬組成物の調製のための本発明に基づく低用量エリスロポエチンの使用、並びにエリスロポエチン及びa)内皮前駆細胞の機能異常及びb)心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、高い不斉ジメチルアルギニン(ADMA)レベル、インスリン抵抗性、高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿症又は<80ml/min、特に30好ましくは40〜80ml/minの糸球体濾過率(GFR)を有する患者の又は患者のための内皮前駆細胞の刺激に適したその他の活性成分を含む医薬組成物の使用に関する。
【0011】
血管内皮は、血管を内張りする細胞層である。内皮は血液を他の血管層から分離する。しかし、内皮は受動的障壁をなすだけでなく、能動的に血管壁張力の調節に介入する。従って内皮依存性の血管拡張も問題になる。内皮はその位置により血行ストレス及び代謝ストレスに持続的にさらされる。病原的状態、例えば高血圧、高いLDL値、NO合成酵素の内因性阻害因子である不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の値の上昇、高コレステロール血症、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、インスリン抵抗性又は高血糖の場合は、しばしば内皮の機能異常が起こり、次いで形態的に明瞭な障害、例えばアテローム硬化性プラークの形成及び/又はその他の内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、タンパク尿、神経障害又は微小循環障害が続発することがある。変化した又は低下した内皮細胞機能又は内皮細胞の障害の非常に早い兆候は、内皮細胞依存性血管拡張の低下である。
【0012】
さらには冠動脈性心臓病(KHK)なしで存在する危険因子、例えば高血圧、腎機能減退、高リポタンパク血症、高ホモシステイン血症、インスリン抵抗性又は糖尿病では、内皮機能異常がNO(=EDRF[血管内膜由来弛緩因子])の産生の減少及びエンドセリン産生の増加となって現れる。高いエンドセリン血漿濃度は異常な細胞合体、炎症、血管腫瘍及び重篤な血管狭窄をもたらす。また内皮機能異常は接着分子、例えばICAM[細胞間接着分子]−1及びVCAM[血管細胞接着分子]−1の産生の増強が特徴であり、このため血小板と単核細胞が大量に内皮に付着する。それが原因で血管壁緊張が増加する。こうして様々な系で不均衡が作り出され、血管収縮、接着、凝集、凝結、アテローマ動脈硬化症及びアテローマ血栓症が促進される。精神的負荷でさえ測定可能な内皮機能異常をもたらし、それが4時間に及び持続することがある。
【0013】
内皮前駆細胞は新しい血管の形成にも関与する。血管の形成は多数の過程、例えば胚形成、女性生殖周期、創傷の治癒、腫瘍の成長及び虚血領域の脈管新生で重要である。当初は、生後血管形成、即ち出生後の血管形成は主として血管新生過程によるとされた。血管新生とは、既存の血管系から毛管が出芽することによって新しい血管を形成することである。血管新生ではまず血管を取り巻く基底膜がタンパク質分解酵素によって分解され、血管周囲隙の細胞外基質が断片化される。そのとき放出される血管新生刺激は、既に分化した既存の内皮細胞を走化刺激の方向へ移動させ、それと同時に内皮細胞が増殖し、かつトランスフォームする。内皮細胞が互いに付加することによって、毛管様腔を有する新しい血管ループが形成される。その後、新しい基底膜の合成が始まる。
【背景技術】
【0014】
ところが最近の研究が示すところでは、成人の身体での新しい血管の形成は血管新生だけでなく、脈管形成機構にも基づいている。脈管形成とは、in situで分化する内皮前駆細胞からの血管新生を意味する。脈管形成は胚形成に限られるというドグマは、健康なヒト及び動物の末梢血で内皮前駆細胞(EPC)が検出されたことにより誤りが証明された。動物モデルを使用して、骨髄由来の内皮前駆細胞が血管新生に積極的に関与することを証明することができた。また内皮特異性抗原を発現する、白血球の特異的CD34陽性部分群が虚血区域に認められることが判明した。さらにCD133+及びCD34+細胞から成人の身体の血管形成に重要な寄与をなす内皮前駆細胞(EPC)がin vitroで得られる(Asaharaら、Science, 275(1997), 964-967;Crosbyら、Circ. Res., 87(2000), 728-730;Gehlingら、Blood, 95(2000), 3106-3112)。また単離したCD34+細胞又は培養した内皮前駆細胞の注射が糖尿病マウスで血流の再生を促進すること(Schattemanら、J. Clin. Invest., 106(2000), 571-578)、そしてin vivoで血管新生を改善すること(Asaharaら、Circ. Res., 85(1999), 221-228;Crosbyら、Circ. Res., 87(2000), 728-730;Muroharaら、J. Clin. Invest., 105(2000), 1527-1536)が示された。さらにCD34+細胞によって誘導された血管新生は心機能を改善することを示すことができた(Kocherら、Nat. M-ed., 7(2001), 430-436)。CD34+細胞のほかに、CD34陰性単核血球も適当な分化転換により内皮前駆細胞の供給源の役割をする。
【0015】
ところが内皮前駆細胞の動員と分化の基礎をなす機構は、まだ完全に解明されていない。分子生物学的及び細胞生物学的研究は、種々のサイトカイン及び血管原性成長因子が骨髄の内皮前駆細胞の動員に刺激的に作用することを示唆する。VEGF及びGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)などの前血管形成因子は内皮前駆細胞の数を増加することが知られている(Asaharaら、EMBO J., 18(1999), 3964-3972;Tak-ahashiら、Nat. Med., 5(1999), 434-438)。VEGF(血管内皮成長因子)とは、種々のイソ形で現れ、例えば成長する内皮細胞の表面に現れる2つのチロシンキナーゼ受容体VEGF−R1(flt−1)及びVGEF−R2(flk−1)に結合するタンパク質である(Wernertら、Angew. Chemie, 21(1999), 3432-3435)。VEGF受容体の活性化はRas−Raf−MAP−キナーゼ経路を経て内皮細胞又は内皮前駆細胞の表面のプロテイナーゼ及び特異的インテグリンを発現させ、最後に血管形成刺激の方向へのこれらの細胞の増殖及び移動を開始する。CM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)とは、これまで好ましくは好中球、マクロファージ及び好酸球を含む白血球の刺激について知られていたサイトカインである。PIGF(胎盤成長因子)については、内皮前駆細胞の動員を刺激するが、その増殖を刺激しないことが知られている。Llevadotらの研究(J. Clin. Invest., 108(2001), 399-405)により、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特に脂質低減薬として使用され、冠動脈障害の罹患率と致死率を減少するスタチンは内皮前駆細胞を動員することが明らかである。またDimmelerら(J. Clin. Invest., 108(2001), 391-397)は、スタチン例えばアトルバスタチン及びシンバスタチンが、末梢血から単離した単核細胞及びCD34+幹細胞で内皮前駆細胞の分化をin vitro及びin vivoで著しく改善することを示すことができた。スタチンによるマウスの治療は多数の分化した内皮前駆細胞をもたらし、その際スタチンはVEGFと同程度の効果を示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の根底にあるのは、内皮前駆細胞の刺激の改善及び特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する障害の治療のための手段及び方法並びに種々の組織の保護及び再生のための手段及び方法を提供するという技術問題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又はヒト又は動物の身体の血管新生又は脈管形成刺激の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するために、特に低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという学説によって、この技術問題を解決する。本発明に基づく内皮前駆細胞の動員及び/又は分化の刺激は、出生後の血管新生、特に脈管形成の増大及び内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連する疾患の治療並びに有害な化学的、熱的、機械的及び生物学的因子に対する種々の組織の保護及び再生のための重要な新規な治療戦略をなす。
【0018】
本発明はまた内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の治療のために、低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという教示によってこの技術問題を解決する。
【0019】
さらに本発明は、それぞれ特異的な組織機能の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の状態にある様々な種類の組織の保護及び再生ために低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するという教示によって、この技術問題を解決する。
【0020】
またこの基本的な技術問題は、低用量のエリスロポエチンと単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって解決される。
【0021】
そこで本発明は特に下記の実施形態A)〜K)のそれぞれ唯一つ及び/又は組合せに関する。
【0022】
A)特に疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のためのエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチン及び/又は医薬組成物がヒト又は動物の身体への6時〜10時の期間の午前適用のために適し、かつ設計されている使用。
【0023】
B)特に疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための、好ましくは実施形態A)と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、低用量の医薬組成物がa)内皮前駆細胞の少なくとも1つの機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高いADMA値又は高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さ、タンパク尿又は<80ml/min、好ましくは30〜60ml/minの糸球体濾過率を有するヒト又は動物患者の予防又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【0024】
C)ヒト又は動物の身体の美容治療のため、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、内皮再生の促進、毛髪の成長の促進のため及び/又はメイクアップのファウンデーションとしての、好ましくは実施形態A)、B)又はA)とB)と組み合わせたエリスロポエチンの使用。
【0025】
D)ヒト又は動物の身体の美容治療のため、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、内皮再生の促進、毛髪の成長の促進のため及び/又はメイクアップのファウンデーションとして特に局所適用する美容剤の調製のための、好ましくは実施形態A)、B)又はA)とB)と組み合わせたエリスロポエチンの使用。
【0026】
E)エリスロポエチン及び内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含むヒト又は動物の身体の組織又は血管の再生のための医薬組成物の調製のための、好ましくはA)、B)、C)又はD)の実施形態の1つ若しくは幾つか並びに/又は内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、混合物を適用の前にin vitroでエリスロポエチンと接触させる使用。
【0027】
F)エリスロポエチン及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む、ヒト又は動物の身体の組織又は血管の再生用の医薬組成物の調製のための、好ましくは実施形態A)、B)、C)、D)又はE)の1つ若しくは幾つか並びに/又はは内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチンを混合物の適用の前又は後又は同時にヒト又は動物の身体に投与する使用。
【0028】
G)エリスロポエチン及び少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子を含む、疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のための、好ましくは実施形態A)〜F)の1つ若しくは幾つか及び/又は少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子と組み合わせたエリスロポエチンの使用であって、医薬組成物又はキットがエリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の適用のために適し、かつ設計されている使用。従って、本発明はまた上記G)で示したエリスロポエチンの使用であって、機械的因子が体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である使用に関する。また本発明は上記G)で示したエリスロポエチンの使用であって、生物学的因子が固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚である使用に関する。これに関連して生物学的因子は、毛髪インプラントをも意味する。従って、本発明の特に好ましい実施形態は上記の種類の生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に移植体例えば歯、歯牙代替物、歯牙インプラント、骨代替物例えば股関節プロテーゼ、靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の全身的適用又は移植部位への局所的適用に用いられる医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関し、その場合エリスロポエチンは上記の生物学的又は機械的因子例えば体内プロテーゼの内植の前、例えば内植の数週前に全身的又は局所的に適用され、続いて内植が行われる。また別の実施形態では上記の生物学的又は機械的因子の内植をエリスロポエチンの使用と共に行うものとする。別の実施形態ではエリスロポエチンを上記の体内プロテーゼ又は機械的若しくは生物学的因子の内植の後に行うものとする。この実施形態によれば、インプラント例えば歯又は骨プロテーゼが内植される組織又は身体構造が動員又は調節され、こうして、例えば、身体構造上又は身体構造内での増殖により、生物学的又は機械的因子、例えばインプラントの身体構造へのはるかに良好な、それと共に迅速な統合、例えば癒着及び癒合が可能になる。
【0029】
H)実施形態A)〜G)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、医薬組成物がヒト又は動物の身体に適用されたときにヘマトクリット値の増加、特にエリスロポエチンの適用の前のヘマトクリット値の10%以上の増加を生じない使用。
【0030】
I)医薬組成物での実施形態A)〜H)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、赤血球形成効果がない低い用量、特に0.001IU/体重kg〜90、特に50IU/体重kgの用量のエリスロポエチンが上記の予防、処置又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【0031】
K)実施例A)〜I)の1つ又は幾つかによるエリスロポエチンの使用であって、疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度を有する状態又は創傷及びその後遺症である使用。
【0032】
また本発明はエリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含み、エリスロポエチンが好ましくは低用量であるキットの調製に関する。
【0033】
本発明に基づき意外なことに、低用量エリスロポエチンによる治療が内皮前駆細胞の生理的動員をもたらし、その際循環内皮前駆細胞の数が増加し、その分化が誘導されることが認められた。さらに特定の病的状態で現れる内皮前駆細胞の機能不全が補償される。本発明に基づき、末期の慢性腎障害の患者で循環幹細胞の数が健康な被験者とちょうど同じレベルであるが、この患者では内皮前駆細胞を経て内皮細胞に分化する能力が失われていることを示すことができた。慢性腎障害の患者では、接着能力を持ち、内皮細胞表現型を示す細胞の数が、健康な被験者に比して著しく減少している(de Grootら;Kidn-ey Int.,2004; 66:641-6)。内皮前駆細胞のこの機能低下は、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの中度の腎機能減退で認められる。ところが本発明に基づき、この患者と腎臓が健康な患者及び/又は被験者とを本発明に基づき低用量のエリスロポエチンで処置した後に、循環幹細胞の数が50%以上と著しく増加することが判明した。その場合特に内皮細胞表現型を発現する細胞の数が劇的に増加する。機能的細胞培養テストで証明されたところでは、低用量エリスロポエチン治療によって、糸球体濾過率30好ましくは40〜80ml/minの慢性腎障害の患者で阻害された内皮前駆細胞の接着能力が3倍に、腎臓が健康な被験者及び/又は患者では2〜3倍に増加する。分化する内皮前駆細胞又は内皮細胞の接着能力は、新しい組織及び/又は血管の形成のための基本前提の1つである。このようにエリスロポエチンは、適当な脈管形成又は血管新生刺激が放出される組織又は臓器、例えば特に腎臓で血管新生、特に脈管形成を誘導する。
【0034】
本発明に基づきヒト又は動物の身体、特に成人の身体で内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するために、低用量のエリスロポエチンを使用することができる。従って本発明に基づき、血管の病変が存在する組織又は臓器で脈管形成による血管新生を刺激するために低用量エリスロポエチンを好適に使用することができる。さらに低用量エリスロポエチンによる内皮前駆細胞の刺激に基づき、内皮組織の形成を誘導することもできる。従って本発明に基づき内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の疾患の治療にも低用量エリスロポエチンを使用することができる。このような機能異常を有する患者集団は、通常心血管危険因子例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高ホモステイン血症、高いADMA濃度及び内臓障害例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、蛋白尿又は30好ましくは40〜80ml/minの糸球体濾過率(GFR)を有する。
【0035】
また本発明は化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の作用により機能異常を生じた組織の保護及び再生のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。また本発明に基づき低用量エリスロポエチンの局所的適用は、皮膚特に顔の皮膚の既存のしわの予防及び減少並びに皮膚の保護及び老年性色素斑の減少に関する。その場合本発明に基づき低用量のエリスロポエチン又は誘導体の使用は、単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と逐次に又は時間的に連続して又は同時に行うことができる。最大の生物学的効果を得るために、低用量エリスロポエチンを日周期リズムに合わせて治療に用いることができる。好ましい実施形態では細胞治療用組織細胞が血管系に十分に結合して癒合することを保証するために、本発明に基づき低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養し及び/又は低用量エリスロポエチンを局所的及び全身的にin vivo適用して、内皮前駆細胞を他の細胞治療用細胞集団と同時に適用する。
【0036】
本発明に関連して「エリスロポエチン」又は「EPO」とは、適当なレベルの用量で幹細胞から赤芽球を経て赤血球に至る成長、分化及び成熟を制御する物質を意味する。
【0037】
エリスロポエチンは166個のアミノ酸と3個のグリコシル化部位及び約34000Daの分子量を有する糖タンパク質である。赤血球前駆細胞のEPO誘導性分化の間、グロビン合成が誘導され、ヘム錯体の合成及びフェリチン受容体の数が増大する。それによって細胞がより多くの鉄を吸収し、機能性ヘモグロビンを合成することができる。成熟した赤血球でヘモグロビンは酸素を結合する。こうして赤血球又はそれに含まれるヘモグロビンは身体の酸素供給のために重要な役割を果たす。これらの過程はEPOと赤血球前駆細胞の細胞表面の当該の受容体との相互作用によって誘発される(Graber及びKranz, Ann. Rev. Med. 29(1978), 51-56)。
【0038】
ここで使用する「エリスロポエチン」の語はあらゆる起源のEPO、特にヒト又は動物のEPOを含む。ここで使用する語は、天然に現われる、即ち野性型のEPOだけでなく、野性型エリスロポエチンの生物学的作用を示す限り、その誘導体、類似体、修飾体、ムテイン、変異体等も包含する。
【0039】
本発明に関連して「誘導体」とは、エリスロポエチンの基本構造を維持して、単数又は複数の原子もしくは分子群又は残基の置換、特に糖鎖例えばエチレングリコールの置換によって得られ、及び/又はそのアミノ酸配列が天然に現われるヒト又は動物のエリスロポエチンタンパク質と少なくとも1つの位置で異なるが、アミノ酸レベルで本質的に高い相同性と、同等な生物学的活性を有する、エリスロポエチンの機能的等価物又は派生物を意味する。例えば本発明で使用することができるエリスロポエチン誘導体は例えば国際特許公開WO94/25055、欧州特許EP0148605B1又は国際特許公開WO95/05465で周知である。
【0040】
「相同性」とは、特に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%以上、95%以上、97%以上及び99%以上の配列同一性を意味する。当業者に周知の「相同性」という表現は、こうして配列間の一致によって決まる2つ以上のポリペプチド分子の近縁度を表す。その場合一致は同一性による一致も、同類アミノ酸交換をも意味する。
【0041】
本発明に基づき「誘導体」の概念は、N末端部分又はC末端部分に他のタンパク質の機能的ドメインがある融合タンパク質も含む。発明の一実施形態では、この他のタンパク質は例えばGM−CSF、VEGF、PIGF、スタチン又は内皮前駆細胞に対して刺激作用を有するその他の因子である。発明の別の実施形態では、他のタンパク質とは分化した内皮細胞に対して刺激作用を有する因子、例えばアンギオゲニン、VEGF(血管内皮成長因子)又はbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)である。bFGF及びVEGFについては、この成長因子が内皮細胞に対して強いマイトジェン活性及び走化活性を働かせることが知られている。
【0042】
エリスロポエチン誘導体と天然のエリスロポエチンの間の相違は、例えばエリスロポエチン−アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の突然変異、例えば欠失、置換、挿入、付加、塩基交換及び/又は組換えによって生じたものである。本発明に基づきエリスロポエチンとして(EPO)α、(EPO)β、Aranesp(ダルベポエチンα)又はCera(連続的エリスロポエチン受容体アゴニスト)を使用することが好ましい。それは自然に現われる配列変異、例えば他の生物の配列、又は自然に突然変異した配列、又はこの専門分野で周知の慣用の手段、例えば化学的因子及び/又は物理的因子により、エリスロポエチンをコードする核酸配列に意図的に導入された突然変異であることももちろん可能である。本発明に関連して「誘導体」の概念は、突然変異したエリスロポエチン分子、即ちエリスロポエチンムテインも含む。
【0043】
本発明に基づきエリスロポエチンのペプチド又はタンパク質類似体も使用することができる。本発明に関連して「類似体」の概念は、エリスロポエチン−アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持たないが、その三次元構造がエリスロポエチンの三次元構造に著しく類似し、従って比較可能な生物学的活性を有する化合物を含む。エリスロポエチン類似体は、例えばエリスロポエチンのその受容体への結合を受け持つアミノ酸配列を適当なコンホメーションで含み、従ってエリスロポエチン結合領域の必須の表面特性を模擬することができる化合物である。このような化合物は例えばWrightonら、Science, 273(1996), 458に記載されている。本発明に基づき使用されるEPOは様々な方法で、例えばヒトの尿から、又は再生不良性貧血患者の尿又は血漿(血清を含む)から分離することによって調製することができる(Miyakeら、J.B.C. 252(1977), 5558)。ヒトEPOは例えばヒト腎癌細胞の組織培養から(日本特許公開公報55790/1979)、ヒトEPOの形成能力を有するヒト・リンパ球細胞から(日本特許公開公報40411/1982)またヒト細胞ラインの細胞融合によって得られるハイブリドーマからも得ることができる。またEPOの当該のアミノ酸配列をコードする適当なDNA又はRNAにより所望のタンパク質を遺伝子技術的に例えば細菌、酵母、植物、動物又はヒト細胞ラインを用いて作ることによって、EPOを遺伝子工学的方法で調製することもできる。このような方法は例えば欧州特許EP0148605B2又は欧州特許EP0205564B2及び欧州特許EP0411678B1に記載されている。
【0044】
本発明は特に内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又はヒト又は動物の身体、特に成人の身体で脈管形成又は血管新生の方向への内皮前駆細胞の移動を刺激するための低用量エリスロポエチンの使用に関する。
【0045】
また本発明は低用量エリスロポエチンと、内皮前駆細胞の機能と数を増大し、低用量エリスロポエチンの臓器保護及び再生作用を強化する少なくとも1つの別の適した化学的、熱的、機械的又は生物学的因子又は活性成分、特に薬理的活性成分の逐次使用に関する。
【0046】
また本発明は好ましくは内皮前駆細胞の数と機能を高め、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うための、低用量エリスロポエチンと、その他の薬理的活性成分、例えばVEGF、GM−CSF、M−CSF、トロンボポエチン、SCF、SDF−1、NGF、PIGF、HMG−Co還元酵素阻害剤、ACE遮断薬、AT−1阻害剤及びNO供与体の1つ又は幾つかとの逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。その場合本発明に基づき次の順序、即ちA)骨髄又は組織由来「幹細胞」ニッチの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の定量的及び定性的最適化、B)骨髄又はその他の「幹細胞」ニッチから末梢血への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の動員、C)末梢血中及び/又はex vivoの幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の選択的培養条件での定量的及び定性的最適化、好ましくは酸素分0.1%〜10%の低酸素条件での培養、D)幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の障害部位へのホーミング、E)目標細胞への幹細胞及び/又は内皮前駆細胞の接着及び移動、F)内皮前駆細胞による脈管新生の順序で影響を受けることになる。
【0047】
そこで本発明は低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養した内皮前駆細胞及び単数又は複数の細胞治療用細胞集団、特に肝細胞、筋細胞、心筋細胞又は膵臓細胞移植体の同時の、及び異なる時間での適用及び/又はこの細胞治療用細胞集団の機能、癒合、血管新生及び受容者の血流への接続を改善し、促進する低用量エリスロポエチンの局所的及び全身的in vivo適用に関する。
【0048】
本発明は「美容術」、特にしわ及び小じわの予防又は差当り重要な減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚特に顔の皮膚の保護及び緊張のため、またメイクアップのファウンデーションとして局所的に適用される特に低用量のエリスロポエチン又は適当な活性成分の使用に関する。またエリスロポエチンの局所的適用は老年性色素斑の発生及び進行を防止し、肌の状態をきれいにし、皮膚の若返り過程、特に内皮形成を促進する。さらにエリスロポエチンは毛髪の成長を促進する。
【0049】
また本発明は身体特有の日周期リズムに合わせた適用のために適し、かつ設計されている医薬組成物の調製のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。内因性エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(一日の最大)があるから、最大の生物学的、治療的及び美容的効果を得るために、低用量エリスロポエチンの投与は好ましくは午前中、特に6時〜10時に行う。
【0050】
本発明は内皮前駆細胞の生理的動員の刺激又は/及び増殖及び分化、又は/及び脈管形成の刺激又は/及び内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の治療、及び/又はこのような疾患の治療のための医薬組成物の調製のための低用量エリスロポエチンの使用並びにa)少なくとも1つの内皮前駆細胞機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子、例えば高血圧、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、高ホモシステイン血症、高いADMAレベル及びc)少なくとも1つの内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿、認知機能異常、頚動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿又は80ml/min、特に30、好ましくは40〜80ml/min以下の糸球体濾過率(GFR)を有する患者で内皮前駆細胞を刺激するための、エリスロポエチン及びその他の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0051】
また本発明の好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の数及び機能を高め、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うための、低用量エリスロポエチン及びその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の1つ又は幾つかの逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与に関する。この場合機械的因子は体内プロテーゼ、好ましくは例えば歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である。また生物学的因子は固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚であり、又は毛髪インプラントである。こうして本発明は、同時に又は続いて又は事前に内植された機械的因子、例えば体内プロテーゼ又は生物学的因子をよりよく、より迅速に、より効果的に周囲の身体構造で増殖させ又は統合させるために、特に低用量でEPOを使用するものである。従って本発明は生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、歯牙インプラント又はその他の体内プロテーゼ例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進し及び/又は速める医薬組成物又はキットを調製するためのエリスロポエチンの使用に関する。場合によってはその際エリスロポエチンを細胞治療用細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では、患者の標的構造、特に標的組織、標的骨又は標的軟骨への生物学的又は機械的因子の統合の改善、特に促進及び/又は加速のための医薬組成物又はキットの調製のためにエリスロポエチンを上記のように使用する場合、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の基質材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療用細胞集団として造骨細胞、骨形成能力を持つ細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では、特に使用される機械的因子が有機接着剤例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又は医薬キットに含まれるようにすることができる。
【0052】
本発明に関連して「内皮前駆細胞」(内皮プロジェニター細胞;EPC)とは、内皮細胞への分化能力を持ち、血流中で循環する細胞を意味する。胚形成時に現われる内皮前駆細胞は血管芽細胞である。成人の身体に現われる内皮前駆細胞は、末梢血から分離された単核細胞、特にCD34+CD14+単球及び/又はCD+幹細胞から得ることができる血管芽細胞様の細胞である。
【0053】
本発明に関連して「動員」又は「生理的動員」とは、骨髄又は代替「幹細胞」ニッチからの幹細胞及び/又は前駆細胞の、成長因子による活性化過程を意味する。その場合幹細胞又は前駆細胞は血流、特に末梢血に到達する。
【0054】
本発明に関連して「増殖」とは、細胞が拡大し、続いて2個以上の娘細胞に分裂する能力を意味する。そこで内皮前駆細胞のEPO仲介性刺激は、特に内皮前駆細胞の数、それと共に分裂挙動に関係する。
【0055】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「分化」とは、骨髄又は組織由来ニッチに由来する単核細胞から内皮前駆細胞を経て内皮細胞に至る推移を意味する。「内皮細胞」とは、内皮即ち血管及び漿膜腔の単層の細胞内層を構成する細胞を意味する。内皮細胞は血管活性物質、例えば血管拡張物質、例えばEDRF(内皮誘導性弛緩因子)又は収縮物質、例えばエンドセリン、血液凝固阻害又は活性因子及び血管透過性調節因子を放出するのが特徴である。また内皮細胞は内皮下結合組織の成分、特にIV型及びV型コラーゲン、細胞接着性タンパク質、例えばラミニン、フィブロネクチン及びトロンボスポンジン、例えば平滑筋の成長因子及び血管新生因子を合成する。
【0056】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「移動」とは、血流中にある内皮前駆細胞が脈管形成又は血管新生刺激の方向に移動し、脈管形成又は血管新生刺激の領域に集中することを意味する。「脈管形成刺激」とは、特異的に内皮前駆細胞に作用し、これを化学的刺激が出る身体部位へ移動させるヒト又は動物の身体の組織又は血管の化学的刺激を意味する。こうして脈管形成刺激によって脈管形成過程が誘導される。「血管新生刺激」とは、分化した内皮細胞に特異的に作用し、これを化学的刺激が出る身体部位へ移動させるヒト又は動物の身体の組織又は血管の化学的刺激を意味する。こうして血管新生刺激は血管新生の誘導をもたらす。
【0057】
発明の別の実施形態では、分化する内皮前駆細胞の接着能力を高めるために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体が使用される。本発明に基づきエリスロポエチンは内皮前駆細胞の接着能力即ち細胞間接着能力を改善するために使用される。分化する内皮前駆細胞又は分化した内皮細胞の接着は、新しい血管又は新しい内皮組織の形成のための基本前提の1つである。細胞接着はタンパク質分子によって仲介される。
【0058】
また本発明は血管新生の刺激、特に脈管形成の刺激のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。本発明に関連して「脈管形成」とはin situで分化する内皮前駆細胞からの血管新生を意味する。本発明に基づき低用量エリスロポエチンを使用することによって、傷んだ血管区域の再生のために内皮前駆細胞が血管新生又は局所的血管新生に大いに寄与することとなる。即ち本発明に基づき低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用は新しい血管の形成を促し、及び/又は局所的血管新生による傷んだ血管区域の補充を促進することが見込まれる。
【0059】
発明の別の実施形態では、内皮前駆細胞を刺激して内皮組織を形成するために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0060】
発明の特に好ましい実施形態では、内皮前駆細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の病理学的状態又は疾患もしくはその後遺症の治療のために、低用量エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0061】
本発明に関連して「疾患(disease)」、「病理学的状態(pathological states)」又は「障害(disorders)」とは、主観的に感知され、又は客観的に認定される肉体的、心的又は精神的異変を伴う臓器又は全身の生命過程の欠陥を意味する。本発明に基づき特に取り上げられるのは、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患、即ちこの細胞のこのような機能異常の結果であり、又はこの細胞によって仲介される疾患である。また本発明に基づき「疾患」、「病理学的状態」又は「障害」とは、低用量エリスロポエチン又は適当な活性成分の投与によって進行が停止し、又は特に抑制される臓器又は全身の生命過程の欠陥を意味する。「後遺症」とは二次疾患、即ち一次的病像に付随する第2の障害のことである。
【0062】
本発明に関連して内皮前駆細胞の「機能異常」とは、この細胞の重要な細胞機能、例えば代謝能力、刺激応答、可動性、分裂挙動又は分化挙動の欠陥を意味する。内皮前駆細胞の機能異常は、例えばこの細胞がまったく又は不十分にしか増殖しないことである。エリスロポエチンの使用によって内皮前駆細胞の増殖が刺激されるから、それによって内皮前駆細胞及び内皮細胞の不十分な分裂挙動を補償し、内皮前駆細胞又は内皮細胞の数を増加することができる。内皮前駆細胞の機能異常は、例えばこの細胞の内皮細胞への分化能力の障害である。また内皮前駆細胞の機能異常は接着能力の障害及び/又は血管新生又は脈管形成刺激の方向への移動能力の障害によっても引き起こされる。内皮前駆細胞のこのような機能異常の結果、内皮組織の新生及び/又は脈管形成が阻害され又は妨げられる。また内皮前駆細胞の機能異常は病原的に、例えば高血圧、高リポタンパク質血、高いADMA血中濃度、尿毒症又は糖尿病により誘発されることもある。内皮前駆細胞の機能異常は例えばLアルギニンからのNO合成(NOS)によるNO(=EDRF)の産生の減少、エンドセリン産生の増加及び/又は接着分子例えばICAM−1及びVCAM−1の産生の強化となって現われる。
【0063】
本発明に基づき内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患は特に高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローマ動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、子癇前症、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/min、好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA濃度、創傷治癒及びその後遺症である。
【0064】
「高コレステロール血症」は高い血中コレステロール濃度が特徴である。一次高コレステロール血症の極めて多い形態は多因性高コレステロール血症である。二次コレステロール血症はしばしば糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下及び肝障害に現われる。
【0065】
「糖尿病」には様々な病因と病理学的状態の種々の形のグルコース代謝欠陥が包含される。血管関連の糖尿病合併症の発症には、特にAGE−RAGE系が原因となる。AGE(後期糖化生成物)は、タンパク質又は脂質が長期にわたり還元糖例えばグルコースにさらされた後に、一連の複雑な反応によって発生する。AGEの結合は通常の老化過程で起こり、糖尿病やアルツハイマー病では大規模に起こる。AGEの結合によって酸化ストレス、転写因子NF−kBの活性化及び内皮ホメオスタシスの欠陥が生じる。
【0066】
「インスリン抵抗性」とは、インスリンの生理的シグナルカスケードを無視し、このため当該の患者が正常なグルコース代謝を示さない、種々の身体細胞のシグナル伝達欠陥のことである。
【0067】
「内皮仲介性慢性炎症障害」は有害な刺激に対する身体及びその組織の防御反応に基づくヒト又は動物の身体の障害又は状態であって、特定のシグナル分子が内皮細胞の性質を変え、他種の細胞の活性化と相俟って、白血球が内皮細胞に付着し続け、遂には組織に侵入し、そこに炎症を引き起こすものである。内皮仲介性炎症の一例は白血球性血管炎である。内皮仲介性炎症性病理学的状態の活性化で中心的役割を果たすのは、転写因子NF−kBである。内皮仲介性慢性炎症を生じるもう一つの系はAGE−RAGE系である。
【0068】
「内皮増殖症」とは非血小板減少性紫斑病での退行性及び増殖性内皮病変を意味する。「細網内皮増殖症」とは網内組織球系例えば細網の疾患、細網症、網内系組織球症及びハンド・シュラー・クリスチャン病を意味する。
【0069】
「レイノー病」とは、血管収縮即ち血管痙攣に原因し、たいてい指の動脈に発作的に現われる虚血状態のことである。一次的レイノー病は四肢末端部の小動脈の純機能異常であるが、二次的レイノー病は別の疾患、例えば血管炎に基づくものである。
【0070】
「子癇前症」は母体の内皮及び血管の疾患であり、胎盤からの内皮向性物質の影響と思われる。子癇前症は、多数の臓器の機能異常をもたらし、多様な症候群となって現われる多系障害である。この障害で典型的な血行障害は、局所的に様々に発現する血管抵抗の増加の結果である。子癇前症で確実と見られるのは、内皮機能異常が発病の中心的構成部分であるということである。
【0071】
本発明に関連して「腎不全」とは、腎臓の尿排出物質排泄能力が局限されていることを意味し、進行した段階では電解質、水及び酸・塩基収支の調節能力も失われる。末期腎不全は排泄及び内分泌に関する腎機能の崩壊が特徴である。
【0072】
本発明に基づき腎不全は急性腎障害、ショック腎又はショック尿閉とも呼ばれる急性腎機能障害である。急性腎不全はたいてい可逆的な腎障害の結果として腎排泄機能の突発的な部分的又は全面的喪失が特徴である。原因は失血(多発性外傷、胃腸又は産後出血、心臓、血管、腹部又は前立腺の大きな手術的処置)の結果生じる血液量減少、低血圧及び脱水症による血流減少、ショック(心筋梗塞、塞栓症)、重い感染症(敗血症、腹膜炎、胆嚢炎)、溶血(溶血性尿毒症症候群、発作性血色素尿症、輸血事故)、筋融解(クラッシュ症候群、横紋筋融解、筋炎、火傷)、水及び電解質損失(大量嘔吐、下痢、多汗、腸閉塞、急性膵炎)である。その他の原因は腎細胞毒素例えば外因性毒素、例えばアニリン、グリコール化合物、メタノール等又は内因性毒素、例えばミオグロビン及びシュウ酸塩である。急性腎不全の別の原因は腎臓病、例えば炎症性腎症又は腎臓移植の後の拒絶反応である。急性腎不全は排尿障害の結果、尿閉によって引き起こされることもある。好ましくは低用量のエリスロポエチンによる、本発明に基づく急性腎不全の治療は、本発明に基づき急性腎不全の進行を阻止し、又は少なくとも緩和する。
【0073】
また本発明に基づき腎不全は慢性腎不全でもある。慢性腎不全の原因は脈管性、糸球体性及び尿細管間質性腎疾患、感染症及び先天的又は後天的構造欠陥である。慢性腎不全の原因は慢性糸球体症、慢性腎盂腎炎、鎮痛薬腎症、閉塞性尿路疾患並びに動脈及び細動脈硬化症である。慢性腎不全は、末期には尿毒症に移行する。本発明に基づく低用量エリスロポエチンによる慢性腎不全の治療は、本発明に基づき慢性腎不全の進行の緩和をもたらす。
【0074】
そこで本発明は急性及び慢性腎不全で腎組織の障害の阻止、緩和又は抑制及び/又は傷んだ腎組織の再生に用いられる薬剤の調製のための好ましくは低用量のEPOの使用に関する。
【0075】
本発明に基づき腎機能減退とは、糸球体濾過率が80ml/minをすでに下回っている状態のことである。従って腎機能減退は糸球体性、尿細管間質性及び脈管性腎障害の早期段階に関係する。本発明に基づく低用量エリスロポエチンによる腎障害治療は、本発明に基づき初期の腎組織及び/又は腎機能異常の進行の緩和及び再生をもたらす。
【0076】
本発明に関連して「微量アルブミン尿症」とは、当該の患者が30mg/24時間以上の尿中アルブミンの非生理的排泄を示す病像を意味する。このアルブミン排泄の増加は早期徴候として初期の腎機能低下を伴って現われ、腎構造の構造的変化を付随する腎臓の最初の病理的転換過程の結果である。
【0077】
本発明に関連して「タンパク尿症」とは、当該の患者が150mg/24時間以上の非生理的タンパク質排泄を示す病像を意味する。尿によるタンパク質排泄のこの増加(>150mg/24時間)は病的とみなされ、さらに医学的解明と治療が必要である。
【0078】
本発明に関連して「高いADMA値」とは、当該の患者が1.3μmol/l以上の非生理的な高いADMA血中濃度を示す病像を意味する。この高いADMA濃度は内皮機能異常を伴って現われ、この分子の分解又は排泄過程での代謝機能異常の結果である。
【0079】
本発明に関連して「創傷の治癒」とは、破壊された組織の再生又は創傷の閉塞のための生理的過程、特に結合組織及び毛細管の新生を意味する。創傷の治癒は、一次的創傷治癒(最初の意図的な治癒)であり、きれいな創傷の場合、迅速で合併症のない急速な閉塞を特徴とし、血行良好な、場合によっては適応した創縁の間の最小の結合組織新生に起因する。 大きく離れた、特に挫滅した、又は壊疽を生じた創縁を有する創傷及び創傷感染の場合は、遅滞した二次的創傷治癒(Sanatio per secundam intentionem)が生じる。その場合細菌性又は非細菌性炎症の結果、組織欠陥が肉芽組織でふさがれ、瘢痕組織が広く形成される。縁端からの内皮形成は創傷治癒の終結をなす。創傷治癒は3段階、即ち潜伏期、増殖期及び修復期に分けられる。一方、潜伏期は特に創傷発生後第1時間の痂皮形成を伴う滲出期と、創傷発生後1日〜3日の期間にわたる異化自己分解を伴う吸収期に分かれる。増殖期は繊維芽細胞によるコラーゲン形成を伴う同化的修復が特徴であり、創傷発生後第4日〜第7日に現われる。創傷発生後第8日から肉芽組織の瘢痕への変態を特徴とする修復期が現われる。
【0080】
本発明に関連して「創傷」とは、機械的損傷又は物理的原因による細胞障害によって引き起こされ、物質損失を伴う又は伴わない身体組織の連結の断絶を意味する。本発明の意味で創傷は疾患ともみなされる。創傷の形態には機械的創傷、熱的創傷、化学的創傷、放射線誘発性創傷及び疾患誘発性創傷がある。機械的創傷は外的強制力の作用によって発生し、特に切傷、刺傷、挫傷、破裂傷、裂傷、擦過傷、掻傷、咬傷及び銃傷として生じる。熱的創傷は熱又は寒冷の作用によって発生する。化学的創傷は特に酸又はアルカリ溶液による腐蝕によって発生する。放射線誘発性創傷は例えば化学光線及び電離線の作用によって発生する。障害誘発性創傷は特に鬱血誘発性創傷、外傷性創傷、糖尿病性創傷等である。本発明に基づき、創傷治癒のために低用量エリスロポエチンを好ましくは局所的に又は脈管内に適用することが定められている。
【0081】
本発明は高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害、例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率80ml/minより小さい、特に30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療のための低用量エリスロポエチンの使用に関する。
【0082】
本発明に基づきエリスロポエチンは、上記の疾患、特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の状態を治癒し、又はこの状態を予防し、このような疾患の進行を停止し、及び/又はこのような疾患の病理学的状態を緩和するのに十分な治療有効量で患者に投与するものとする。患者に投与される用量は多くの因子、例えば患者の年齢、体重及び性別、障害の重度等に関係する。
【0083】
「本発明に基づくEPOの用量」
本発明に基づきエリスロポエチンは本教示のすべての使用、方法及び組成物で、腎性貧血の治療のための周知の使用量より低い僅かな量で使用することが好ましい。その場合本学説の意味でin vivo即ち患者当りの僅かな又は低い投与量(dose)又は用量(dosage)とは、障害の重度及び腎機能に応じて1〜2000、好ましくは20〜2000単位(IU:国際単位)/週のEPO用量、好ましくは20〜1500IU/週の用量、特に20〜1000IU/週の用量、特に20〜950IU/週の用量、特に20〜900IU/週の用量、特に20〜850IU/週の用量、特に20〜800IU/週の用量、特に20〜750IU/週の用量、特に20〜700IU/週の用量、特に20〜650IU/週の用量、特に20〜600IU/週の用量、特に20〜550IU/週の用量、特に20〜500IU/週の用量、特に20〜450IU/週の用量、特に20〜400IU/週の用量、特に20〜350IU/週の用量、特に20〜300IU/週の用量、特に20〜250IU/週の用量、特に20〜200IU/週の用量、特に20〜150IU/週の用量を意味する。また本発明に基づき1〜450、好ましくは1〜9IU/週の用量を使用することも考えられる。本発明に基づき定められる上記のすべての用量、例えば1〜2000単位(IU)/週、患者当り、特に例えば500〜2000IU/週、患者当りの用量は赤血球増加以下量、即ちヘマトクリット値の増加を生じない、特にEPOによる治療の前のヘマトクリット値と比較して10%、特に5%、好ましくは2%以上のヘマトクリット値の上昇を生じない用量である。本発明に基づき定められる赤血球増加以下量は1〜90単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜45、特に1〜30単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜20単位EPO(IU)/体重kg、特に1〜15単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜10単位(IU)EPO/体重kg、特に1〜4単位(IU)EPO/体重kgの週量、又は0.001〜0.4μg/体重kg、0.001〜0.3μg/体重kg、0.001〜0.25μg/体重kg、0.001〜0.2μg/体重kg、0.001〜0.15μg/体重kg、0.001〜0.1μg/体重kg、0.001〜0.09μg/体重kg、0.001〜0.08μg/体重kg、0.001〜0.07μg/体重kg、0.001〜0.06μg/体重kg、0.001〜0.05μg/体重kg、0.001〜0.04μg/体重kg、0.001〜0.03μg/体重kg、0.001〜0.02μg/体重kg、0.001〜0.01μg/体重kg、0.001〜0.009μg/体重kg、0.001〜0.008μg/体重kg、0.001〜0.007μg/体重kg、0.001〜0.006μg/体重kg、0.001〜0.005μg/体重kg、0.001〜0.004μg/体重kg、0.001〜0.003μg/体重kg、0.001〜0.002μg/体重kgの比較可能なAranesp週量に相当する。Aranespは二重ポリエチレングリコール化EPOである。
【0084】
本発明に基づき本教示のすべての使用、方法及び組成物で、エリスロポエチンは腎性貧血の治療のための周知の使用量より低い僅かな用量で使用することが特に好ましい。その場合本学説の意味でin vivo即ち患者当りの僅かな又は低い投与量又は用量とは、障害の重度及び腎機能に応じて体重kg及び週につき0.001〜90、好ましくは0.001〜50単位(IU:国際単位)のEPO用量、特に0.05〜45IU/kg/週の用量、特に0.05〜40IU/kg/週の用量、特に0.05〜35IU/kg/週の用量、特に0.05〜33IU/kg/週の用量、特に0.05〜31IU/kg/週の用量、特に0.05〜29IU/kg/週の用量、特に0.05〜27IU/kg/週の用量、特に0.05〜25IU/kg/週の用量、特に0.05〜23IU/kg/週の用量、特に0.05〜21IU/kg/週の用量、特に0.05〜20IU/kg/週の用量、特に0.05〜19IU/kg/週の用量、特に0.05〜17IU/kg/週の用量、特に0.05〜15IU/kg/週の用量、特に0.05〜13IU/kg/週の用量、特に0.05〜11IU/kg/週の用量、特に0.05〜9IU/kg/週の用量、特に0.05〜7IU/kg/週の用量、特に0.05〜5IU/kg/週の用量、特に0.05〜3IU/kg/週の用量、特に0.05〜1IU/kg/週の用量を意味する。また本発明に基づき0.001〜20、好ましくは0.05〜10IU/kg/週の用量を使用することも考えられる。本発明に基づき定められる上記のすべての用量、例えば0.01〜90単位(IU)/kg/週、患者当り、特に例えば0.01〜50IU/kg/週、患者当りの用量は、赤血球増加以下量、即ちヘマトクリット値の増加を生じない、特にEPOによる治療の前のヘマトクリット値と比較して10%、特に5%、好ましくは2%以上のヘマトクリット値の上昇をもたらさない用量である。本発明に基づき定められる赤血球増加以下量は約0.001〜90単位(IU)EPO/体重kg、特に0.001〜50、特に0.001〜45IU EPO/体重kg、特に1〜15IU EPO/体重kg、特に1〜10IU EPO/体重kg、特に1〜4IU EPO/体重kgの週量、又は体重kgにつき0.000005〜0.45μg、0.00025〜0.250μg/体重kg、0.00025〜0.225μg/体重kg、0.00025〜0.2μg/体重kg、0.00025〜0.175μg/体重kg、0.00025〜0.165μg/体重kg、0.00025〜0.155μg/体重kg、0.00025〜0.145μg/体重kg、0.00025〜0.135μg/体重kg、0.00025〜0.125μg/体重kg、0.00025〜0.115μg/体重kg、0.00025〜0.105μg/体重kg、0.00025〜0.095μg/体重kg、0.00025〜0.085μg/体重kg、0.00025〜0.075μg/体重kg、0.00025〜0.065μg/体重kg、0.00025〜0.055μg/体重kg、0.00025〜0.045μg/体重kg、0.00025〜0.035μg/体重kg、0.00025〜0.025μg/体重kg、0.00025〜0.015μg/体重kg、0.00025〜0.005μg/体重kgの比較可能なAranesp週量である。Aranespとは二重ポリエチレングリコール化EPOである。本発明に基づき内皮前駆細胞の機能異常を伴う疾患又は病理学的状態の治療のために定められた上記の僅かな用量、例えば患者当り0.001〜90単位/体重kg/週、特に例えば患者当り0.001〜50単位/kg/週の用量は、通常腎性貧血の治療のために使用される。
【0085】
上記の用量は、別に指示しなければ毎週投与される一回量であるが、1週間に数回の一回量に配分し、即ち多回量として使用することもできる。
【0086】
発明の特に好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の機能異常に関連する病理学的状態又は疾患の治療に用いる医薬組成物又は薬剤の調製のための活性成分としての、前節「本発明に基づくEPOの用量」で定義された低用量のエリスロポエチン又はその誘導体の使用に関する。
【0087】
本発明に基づき「活性成分」とは、標的分子又は標的細胞又は標的組織と接触して組織、臓器又は身体の特異的機能に差別的に影響を及ぼす内因性の又は外因性のの物質を意味する。従って、本発明に基づきエリスロポエチンは本発明医薬組成物の活性成分としてヒト又は動物の身体の内皮前駆細胞に接触して、内皮前駆細胞の機能異常が補償され、この機能異常の結果起こる疾患が効果的に根治、軽減又は除去され、又はこの疾患が効果的に予防されるように、内皮前駆細胞の増殖、分化及び/又は移動挙動に影響を及ぼし、また低用量エリスロポエチンの使用は様々な臓器及び臓器系で臓器再生及び機能減退の進行の抑制をもたらす。
【0088】
本発明に関連して「医薬組成物」又は「薬剤」とは、治療効果を喚起する少なくとも1つの天然の、又は合成的に作られた活性成分を含み、診断、治療及び/又は予防目的のために使用され、ヒト又は動物の身体の健康を促進又は回復する混合物を意味する。医薬組成物は固体及び液体混合物である。例えば活性成分を含む医薬組成物は単数又は複数の薬剤学的相容性成分を含むことができる。さらに医薬組成物は専門分野で常用される添加物例えば安定剤、調製助剤、離型剤、増量剤、乳化剤又は医薬組成物の調製に常用されるその他の物質を含むことができる。
【0089】
本発明に基づき特に高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、子癇前症、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療のために、好ましくは低用量のエリスロポエチン及び/又はその誘導体を使用するものとする。
【0090】
本発明に基づく医薬組成物は局所的投与にも、全身投与にも適している。
【0091】
発明の好ましい実施形態では、医薬組成物が非経口的、特に静脈内、筋肉内、皮内又は皮下投与のために使用される。エリスロポエチンを含む薬剤は注射薬又は輸液の形を有することが好ましい。
【0092】
別の使用においては、エリスロポエチンを含む医薬組成物が経口投与される。例えばエリスロポエチンを含む薬剤は液状投薬形態、例えば溶液、懸濁液又は乳液として、又はは固形投薬形態、例えば錠剤として投与される。
【0093】
別の使用であっては、医薬組成物が肺投与又は吸入に適している。即ち本発明に基づきエリスロポエチンが患者の肺に直接投与されて治療効果を挙げる。エリスロポエチンのこの投与形態は、注射を行わずに、エリスロポエチン用量を患者に迅速に放出することを可能にする。肺によりエリスロポエチンを吸収すれば、多量のエリスロポエチンを肺経由で血流に放出することができ、このため血流に多量のエリスロポエチンが生じる。発明の好ましい実施形態では、肺により吸収される医薬組成物は水溶液又は無水溶液もしくは乾燥粉末である。肺投与されるエリスロポエチン含有薬剤が乾燥粉末の形であれば、これは好ましくはエリスロポエチン含有粒子からなり、その場合薬物が患者の肺の遠位領域に到達し得るように、粒子は10μm以下の直径を有することが好ましい。発明の特に好ましい実施形態では、肺投与される薬物はエーロゾルである。
【0094】
発明の特に好ましい実施形態は、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を治療する医薬組成物の調製のためのエリスロポエチンの使用に関し、医薬組成物が活性成分としてエリスロポエチンのほかに、内皮前駆細胞の刺激のための少なくとも1つの別の補助活性成分を含むものである。
【0095】
好ましくは別の活性成分は、特に骨髄又は「その他の幹細胞」ニッチからの内皮前駆細胞の生理的動員を刺激する活性成分である。また本発明に基づき別の活性成分は、特に内皮前駆細胞の分裂挙動、即ち増殖を刺激する活性成分である。しかし本発明に基づき別の活性成分が内皮前駆細胞の分化挙動及び/又は移動挙動を刺激することも可能である。特に内皮前駆細胞を刺激する別の活性成分はVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬及びNO供与体特にLアルギニンであることが好ましい。
【0096】
また本発明に基づき少なくとも1つの別の活性成分は特に分化した内皮細胞、即ちその増殖及び/又は移動を刺激するが、内皮前駆細胞は刺激しない。この活性成分は特にbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)又はアンギオゲニンであることが好ましい。
【0097】
発明の別の実施形態は内皮前駆細胞の刺激、特に動員、増殖、内皮細胞への分化の刺激及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動のための医薬組成物の調製に用いられる活性成分としてのエリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用に関する。さらに本発明に基づき、特に成人のヒト又は動物の身体で脈管形成及び/又は内皮形成を刺激する医薬組成物の調製のための活性成分として、エリスロポエチン及び/又はその誘導体の使用が提供される。
【0098】
そこで本発明は内皮前駆細胞の刺激、特にその動員、増殖、内皮細胞への分化及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動の刺激、脈管形成及び/又は内皮形成の刺激及び内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の疾患の治療のための医薬組成物に関する。特に本発明は活性成分としてのエリスロポエチン並びに内皮前駆細胞及び分化した内皮細胞の刺激のための少なくとも1つの別の活性成分を含む医薬組成物又は薬剤に関する。本発明の好ましい実施形態はエリスロポエチン及びVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にスタチン例えばシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチン、ACE遮断薬例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン及びNO供与体特にLアルギニン、bFGF及びアンギオゲニンからなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を含む医薬組成物に関する。
【0099】
発明の別の好ましい実施形態は、移植可能な内皮調製物の調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。その場合本発明に基づき特にエリスロポエチンの存在下で内皮前駆細胞を培養することにより内皮細胞をin vitroで調製し、続いてレシピエント生物、特に内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を患う生体に移植するものである。例えば密度勾配遠心分離法によって血液から単核細胞(MNC)を分離し、適当な培地でin vitro培養することができる。単核細胞の分離及びin vitro培養の方法は例えばAsahara, Science, 275(1997), 964-967;Dimmelerら、J. Clin. Invest., 108(2001), 391-397及びLlevadotら、J. Clin. Invest, 108(2001), 399-405に記載されている。続いてMNCに含まれる内皮前駆細胞をその増殖及び分化挙動に関して刺激し、特に分化した付着内皮細胞の数を増加するために、単核細胞をエリスロポエチンの存在下で引続き培養する。また本発明に基づきエリスロポエチン並びに内皮前駆細胞の増殖及び分化を刺激する少なくとも1つの別の物質の存在下でMNCの培養を行う。特に別の物質としてVEGF、PIGF、GM−CSF、LアルギニンなどのNO供与体、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬又はHMG−CoA還元酵素阻害剤例えば特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンを使用することが好ましい。
【0100】
発明の別の好ましい実施形態では、血管系に十分に結合して細胞治療用組織細胞が癒合することを保証するために、低用量エリスロポエチンであらかじめin vitro培養し、及び/又は低用量エリスロポエチンを局所的及び全身的にin vivo適用して、内皮前駆細胞を当該の患者の他の細胞治療用細胞集団例えば肝細胞、筋細胞、心筋細胞又は膵臓細胞と同時に適用する。
【0101】
また発明の別の好ましい実施形態は、患者の身体の特定部位、例えば内植部位を動員し、内皮前駆細胞の数及び機能を増大し、及び/又は組織障害の再生又は進行の抑制を行うために、低用量エリスロポエチン並びに単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子を逐次に又は時間的に連続して又は同時に投与する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。この場合機械的因子は例えば体内プロテーゼ、好ましくは例えば歯、骨又は靭帯/腱代替物の内植体である。また生物学的因子は固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓、皮膚又は毛髪インプラントである。このようにして本発明は同時に、続いて又は事前に内植された機械的因子例えば体内プロテーゼもしくは生物学的因子をよりよく、より急速に、より効果的に周囲の身体構造に癒合又は統合させるために、EPOを低用量で使用する。そこで本発明はまた生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、歯牙インプラント又はその他の体内プロテーゼ例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の、周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。場合によってはその際エリスロポエチンを細胞治療に適した細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することもできる。別の好ましい実施形態では、患者の目標構造、特に目標組織、目標骨又は目標軟骨への生物学的又は機械的因子の統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの上記の使用であって、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療用細胞集団として造骨細胞、骨形成能力を持つ細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では特に使用される機械的因子が有機接着剤、例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又はキットに含まれるようにすることができる。
【0102】
発明の別の好ましい構成では、「美容術」としての局所的適用、特にしわ及び小じわの予防又は差当り重要な減少、結合組織の強化、有害な環境因子に対する皮膚特に顔の皮膚の保護及び緊張のため及びメイクアップのファウンデーションとして、エリスロポエチン又は適当な活性成分の使用が定められている。エリスロポエチンの局所的適用によって老年性色素斑の発生及び発達が防止され、肌の状態がきれいになり、好ましくは迅速な内皮再形成により皮膚の若返り過程、さらには毛髪の成長が促進されることになる。
【0103】
別の応用形態では日周期リズムに合わせた低用量エリスロポエチンの投与が行われる。内因的エリスロポエチン産生は午後遅くにピーク段階(日最大値)があり、従って最大の生物学的効果を得るために、低用量エリスロポエチンの投与を好ましくは午前中、特に6時〜10時に行うべきである。
【0104】
発明の別の好ましい実施形態では、移植される組織又は臓器の前処理及び/又は再処理のために、低用量エリスロポエチンの使用が定められている。その場合移植体を移植の前、好ましくはその直前に、なおドナーの身体中で低用量エリスロポエチンで処理する。移植の時点から受容者の身体を同じく低用量エリスロポエチンで処理することもできる。本発明に基づき移植臓器又は組織の移植の直前又は直後のエリスロポエチンによるこの処理によって、身体に移植した後の移植体に脈管形成が誘導されるから、新しい血管が急速に形成され、この新たに形成された血管が受容者の身体の血管系と急速に結合されることとなる。またこうして急速に内皮の形成が得られる。こうして低用量エリスロポエチンによる臓器及び組織移植体の処理は身体へのこの系の急速な癒合をもたらすから、拒絶反応の危険が大幅に減少される。しかも低用量エリスロポエチンの投与によって臓器再生が刺激される。
【0105】
発明の別の実施態様では、臓器又は組織移植体を移植の前に低用量エリスロポエチンと内皮前駆細胞を刺激する少なくとも1つの別の因子との組合せによって処理する。好ましくはこの因子は、VEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬例えば、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬又は特にLアルギニンであるNO供与体からなるグループから選ばれた物質である。別の実施態様では臓器又は組織移植体を移植の前にエリスロポエチンのほかに、分化した内皮細胞の増殖及び移動を刺激する別の物質で処理する。特にこの物質はアンギオゲニン又はbFGFであることが好ましい。別の実施態様では、分離され、場合によってはin vitroで拡張された内皮前駆細胞を使用して、エリスロポエチンによる臓器又は組織移植体の前処理を行う。
【0106】
発明の別の好ましい実施形態では、内植可能又は移植可能な細胞含有in vitro臓器又は組織の調製のために低用量エリスロポエチンを使用する。本発明に基づき特にレシピエント生物の体内にある内皮前駆細胞、特にその生理的動員、移動、増殖及び分化を刺激するために、in vitroで作られた臓器又は組織を移植又は内植の前に低用量エリスロポエチンによりin vi-tro処理する。in vitro臓器又は組織の移植又は内植の後にレシピエント生物をさらに本発明に基づく用量の低用量エリスロポエチンで処理することが好ましい。本発明に基づきin vitro臓器又は組織を移植又は内植の前にエリスロポエチンで処理し、場合によってはレシピエント生物をエリスロポエチンで後処理することによって、体内に移植又は内植した後のin vitro臓器又は組織系に、脈管形成が誘導されることによって急速に新しい血管が形成され、この新たに形成された血管がレシピエント生物の血液系と急速に結合されることとなる。またこうして急速に内皮の形成、それと共に内皮再形成が得られる。こうして低用量エリスロポエチンによるin vit-ro臓器又は組織系の処理は身体へのこの系の急速な癒合をもたらすから、拒絶反応の危険が大幅に減少され、移植体の保護に役立つ。
【0107】
「in vitro臓器又は組織系」とは、所定の細胞を使用し、及び/又は所定の組織を使用して、所定の培養条件のもとでin vitroで調製される移植又は内植可能な細胞含有組織又は臓器を意味する。「内植可能(implantable)なin vitro臓器又は組織系」とは、細胞のほかに体外材料を含む系を意味する。「移植可能な(transplantable)in vitro臓器又は組織系」とは、特に同じ又は他の個人の細胞、組織及び臓器のほかに身体固有の物質を含む細胞含有系を意味する。in vitro臓器又は組織は、特にその構造が、代替される自然の臓器又は組織にほぼ相当し、従って代替された臓器又は組織の機能をin vivoで継承することができるのが特徴である。
【0108】
本発明の一実施態様では、in vitro臓器又は組織を移植又は内植の前に、エリスロポエチンと内皮前駆細胞を刺激する少なくとも1つの別の因子との組合せで処理する。この因子はVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、エナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどのACE遮断薬例えば、イルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどのAT−1遮断薬及びNO供与体からなるグループから選ばれた単数又は複数の物質であることが好ましい。別の実施態様ではin vitro臓器又は組織系を移植又は内植の前に、エリスロポエチンのほかに分化した内皮細胞の増殖及び移動を刺激する別の物質で処理する。特にこの物質はアンギオゲニン又はbFGFであることが好ましい。別の実施態様ではさらにin vitro臓器又は組織系は、分離され場合によってはin vitroで拡張された内皮前駆細胞を含む。
【0109】
発明の別の好ましい実施形態は血管プロテーゼ又は心臓弁の調製のための低用量エリスロポエチンの使用に関し、血管プロテーゼ又は心臓弁を身体、特に人体に挿入する前にエリスロポエチンで被覆するものである。血管プロテーゼ又は心臓弁をエリスロポエチンで被覆することによって、受容体の体内で内皮前駆細胞が刺激され、特に骨髄からの動員、増殖、内皮細胞への分化及び使用された血管プロテーゼ又は心臓弁への移動が刺激されることとなる。こうして調製された血管プロテーゼ又は心臓弁を体内に挿入した後、これを特に本発明に基づく用量のエリスロポエチンで再処理することができる。挿入された血管プロテーゼ上の内皮層の形成がこうしてより迅速に起こり、当該の身体区域に迅速に癒合する。好ましい実施態様では血管プロテーゼ及び心臓弁の被覆のために、分離され、in vitroで拡張された内皮前駆細胞をさらに使用する。
【0110】
また本発明は以下を包含する内皮細胞形成の刺激方法に関する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)単離され、内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)低用量エリスロポエチンの存在下で細胞集団を培養する。
【0111】
本発明に基づき細胞集団の培養は、内皮前駆細胞を刺激する別の物質の存在下で行うことができる。
【0112】
また本発明は「本発明に基づくEPOの用量」の段落で説明したような僅かな用量のエリスロポエチンを単独で、又はその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子と組み合わせて、内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を有する患者に投与して行う、このような疾患の治療方法に関する。本発明方法は特に人体の疾患、例えば高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害例えば血管炎、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、急性又は慢性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率80ml/minより小さい、特に30〜80、好ましくは40〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿症、タンパク尿症、高いADMA濃度又は創傷及びその後遺症の治療に適している。
【0113】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法の好ましい実施形態では、エリスロポエチンのほかに、VEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を患者に投与する。投与されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであることが好ましい。投与されるACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどの活性成分、投与されるAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどの活性成分である。投与されるNO供与体は好ましくはLアルギニンである。
【0114】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法の別の好ましい実施形態では、ヒトの生体の血液から内皮前駆細胞を分離し、低用量エリスロポエチンを使用してin vitroで拡張し、内皮細胞に分化し、分化した内皮細胞又は分化する内皮前駆細胞の精製及び単離の後に、続いてこれを内皮前駆細胞及び/又は内皮細胞の機能異常により損傷した患者の身体区域、組織又は臓器に適宜に移植し、そこに局所的内皮新生を誘導するものである。こうして患者の損傷した身体区域、組織及び/又は臓器の適切かつ迅速な治療が可能である。内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患の本発明に基づく治療方法のこの実施形態は、次の諸段階を包含する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)内皮前駆細胞の増殖及び/又は内皮細胞への分化を刺激するために、低用量エリスロポエチンの存在下で、内皮前駆細胞を含む細胞集団を培養し、
d)分化した内皮細胞を単離及び精製し、
e)内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患を有する身体に、分化した内皮細胞を移植する。
【0115】
分化した内皮細胞を身体に移植した後、これを特に本発明に基づき定められた低用量、即ち「本発明に基づくEPOの用量」の節で定義した例えば1、好ましくは0.001〜90IU/kg/週又は20〜2000IU/kg/週のエリスロポエチンで再処理することができる。
【0116】
本発明に基づき内皮前駆細胞を含む細胞集団をVEGF、PIGF、GM−CSF、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE遮断薬及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下でin vitro培養することができる。培養に使用されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチン、ACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルのような物質、そしてAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンのような物質であることが好ましい。
【0117】
内皮前駆細胞の数と機能を増大し、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、内皮前駆細胞を含む細胞集団と低用量エリスロポエチン及び単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって処理することができる。
【0118】
発明の別の好ましい実施形態は下記を包含する血管障害の治療方法に関する。即ち
a)密度勾配遠心分離法により内皮前駆細胞を含む細胞集団を血液から単離し、
b)内皮前駆細胞を含む細胞集団を細胞培地で培養し、
c)内皮前駆細胞の増殖及び/又は内皮細胞への分化を刺激するために、エリスロポエチンの存在下で、内皮前駆細胞を含む細胞集団を培養し、
d)分化した内皮細胞を分離及び精製し、
e)血管障害を有する身体に内皮細胞を移植する。
【0119】
内皮細胞を身体に移植した後、好ましくは本発明に基づく低用量、即ち「本発明に基づくEPOの用量」の段落で定義した例えば0.001〜90IU/kg/週又は20IU/週〜2000IU/週の用量のエリスロポエチンで再処理することができる。
【0120】
本発明に基づき内皮前駆細胞を含む細胞集団をVEGF、PIGF、GM−CSF、ACE遮断薬、AT−1遮断薬及び/又はHMG−CoA還元酵素阻害剤からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下でin vitro培養することが可能である。培養に使用されるACE遮断薬はエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリル、培養に使用されるAT−1遮断薬はイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンのような物質、そして培養に使用されるHMG−CoA還元酵素阻害剤はシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであることが好ましい。
【0121】
本発明に基づき内皮前駆細胞の数と機能を増大し、及び/又は組織障害を再生し又は進行を抑制するために、内皮前駆細胞を含む細胞集団を低用量エリスロポエチン及び単数又は複数のその他の化学的、熱的、機械的及び生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の投与によって処理することができる。この場合機械的因子は体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である。また生物学的因子は固形臓器例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓又は皮膚であり、又は毛髪インプラントである。こうして本発明は同時に又は続いて又は事前に内植された機械的因子例えば体内プロテーゼ又は生物学的因子をよりよく、より迅速に、より効果的に周囲の身体構造に癒合又は統合させるために、EPOを特に低用量で使用する。そこで本発明は生物学的因子又は体内プロテーゼ、特に歯、義歯、インプラント義歯又はその他の体内プロテーゼ、例えば骨代替物、骨インプラント、特に股関節プロテーゼ又は靭帯/腱代替物例えば十字靭帯の、周囲の身体構造への統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの使用に関する。その場合好ましい実施形態ではエリスロポエチンを細胞治療に適した細胞集団及び/又は内皮前駆細胞と共に使用することができる。別の好ましい実施形態では患者の目標構造、特に目標組織、目標骨又は目標軟骨への生物学的又は機械的因子の統合を改善し、特に促進及び/又は加速する医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチンの上記の使用で、使用される機械的因子を例えば鋼、セラミック、プラスチック又はその他の材料で製造することができる。さらに上記の使用で細胞治療に適した細胞集団として造骨細胞、造骨機能を有する細胞、血小板、血球等を使用することができる。別の好ましい実施形態では、特に使用される機械的因子が有機接着剤、例えばフィブリン接着剤と共に医薬組成物又は医薬キットに含まれるようにすることができる。
【0122】
本発明に基づく血管障害の治療方法は、人体の血液から内皮前駆細胞を単離し、低用量エリスロポエチンを使用してin vitroで拡張し、内皮細胞に分化し、分化した内皮細胞又は分化する内皮前駆細胞の精製と単離の後に、続いてこれを傷んだ血管又は虚血区域に適宜に移植して、そこに局所的血管新生を誘導するものである。こうして傷んだ血管又は虚血組織の適切かつ迅速な治療が可能である。本発明に基づく血管障害の治療方法は虚血、特に脳虚血、四肢の虚血性障害、卒中発作、急性動脈閉塞、動脈閉塞病、レイノー病及びバッカク中毒のような血管障害の治療に特に適している。
【0123】
発明のその他の有利な実施態様は従属請求項で明らかである。
【0124】
下記の図と実施例に基づき発明を詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0125】
実施例1 腎性貧血患者でのEPOの効果
末期の腎臓病(終末前腎不全、クレアチニン・クリアランス<35ml/min)の結果、腎性貧血(Hb[ヘモグロビン]<10.5g/dl)を有する患者でのエリスロポエチンの効果を調べた。11人の患者を少なくとも8週の期間にわたって平均5000IU・rhEPO(組換えヒト・エリスロポエチン)の週量のエリスロポエチンで脈管内又は皮下投与により治療した。エリスロポエチン治療の後に患者の血液中の内皮前駆細胞を20週の期間にわたって調べ、0、2、4、6及び8週後に内皮前駆細胞の数及び分化状態をフローサイトメトリー及び培養テストにより分析した。
【0126】
循環末梢血幹細胞(CPBSC)はCD34抗原もCD45抗原も発現する小さな細胞集団である。ISHAGE基準に基づきフローサイトメトリーによりCPBSCの数を決定するためのテストが開発された(Sutherlandら、J. Hematoth., 5(1996), 213-226)。このテストを使用してCD34及びCD45細胞の発現パターン及び幹細胞の形態を決定した。こうしてμl当りのCPBSCの絶対数及び全白血球数に対するCPBSCの百分比を決定した。
【0127】
図1はISHAGE基準に基づく循環CD34+幹細胞のFACS[蛍光活性化セルソーター]分析の結果を示す。
【0128】
図2は8週の期間にわたりFACS分析により確かめたCD+幹細胞の数を示す。
【0129】
細胞培養テスト
Asahara, Science, 275(1997), 964-967に記載された方法によりヒト血液試料からフィコールの密度勾配遠心分離法で単核末梢血球(PBMC)を単離した。細胞を培養板にフィブロネクチンと共に塗抹し、EC基礎培地に保持した。EC基礎培地はEBM−2基礎培地(Clonetics社)及びEGM−2 Quots(hEGF;GA−1000(ゲンタマイシン、アムホテリシン−B)FBS、VEGF、hFGF−B(w/ヘパリン)、R3−IGF−1、アスコルビン酸、ヘパリン)からなる。4日間の培養の後に板を洗浄して非付着細胞を除去した。残る付着細胞をトリプシンで処理し、再び播種した。続いてこれをさらに3日間培養した。内皮表現型を有する細胞を単離後第7日にポジティブ染色により2つの異なる内皮マーカーに関して同定した。ここで取り上げられるのはDil標識を付したアセチル化低密度リポタンパク質(acLOL−Dil)及びハリエニシダ・アグルチニン−1(UEA−1)である。この研究の結果を図3に示す。
【0130】
結果が示すところでは、エリスロポエチンは内皮前駆細胞を動員し、循環内皮前駆細胞の数を増加することができる。その場合特定の病状、例えば腎性貧血で現われる機能異常が補償される。この結果を図4に示す。
【0131】
フローサイトメトリーで確かめたところでは、末期の腎臓病患者の循環CD34+幹細胞の数は健康な被験者の血液中の循環CD34+幹細胞の数に相当する。エリスロポエチン治療の開始後、血流中のCD34+幹細胞の数は50%以上と、著しく増加する。細胞培養テストを使用して確かめたところでは、エリスロポエチンによる治療の後に、内皮表現型を発現する細胞の数が劇的に増大する。機能的細胞培養テストで内皮前駆細胞の著しく阻害された能力が3倍以上も増加した。
【0132】
実施例2 rhEPOの全身使用により改善された創傷治癒
FVB/Nマウスをイソフロランの吸入麻酔により麻酔した。両方の後足の毛を脱毛液で除去し、70%アルコールで消毒した。無菌の4mm一方向生検用組織パンチでマウスの右側腹部にそれぞれ1つの皮膚創傷を付けた。反対側は内部対照として保存した。ペニシリンG(20000単位/kg)で術後抗生剤遮蔽を1回行った。全研究期間にわたり組換えヒト・エリスロポエチン類似体Aranesp(0.1μg/体重kg)の全研究期間中毎週1回の皮下注射を行った。治療は組織パンチの取り外しの7日前に開始した。結果を図8に示す。図はEPOの投与が創傷治癒過程を著しく速めることを示している。
【0133】
図19は創傷治癒に対するエリスロポエチンの効果を示す。図が示すところでは、組織パンチでマウスに付けた標準的な皮膚創傷の低用量エリスロポエチン(20IU・EPO/kg/週)による治療で7〜8日後にすでに創傷が完全に閉じたが、生理食塩水(塩水)による治療では創傷が13〜14日後にようやく完全に閉じた。高い用量のエリスロポエチン(200IU・EPO/kg/週)による試験動物の治療は、対照群と比較して創傷治癒の加速を観察することができなかった。高用量エリスロポエチンで治療した実験動物のうち2頭は観察期間中に死亡した。エリスロポエチン又は生理食塩水による治療は、手術日に皮膚創傷を付けた後に開始した。組換えヒト・エリスロポエチンは毎週1回s.c.(皮下)注射(20IU/kgEPO又は200IU/kg/EPO)により投与した(各グループでn=5)。
【0134】
実施例3 エリスロポエチン治療による慢性腎不全の進行の緩和
8週齢のスプレーグ・ドーリーラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。第0日にラットから右腎を摘出し、摘出後直ちに組織検査のためにホルマリンで固定した。左腎では、上下の腎極に供給する区域動脈を結紮した。それによって当該の腎区域の腎梗塞が起こり、中央の3分の1の腎臓だけが機能を維持する。毎週1回0.1μg/体重kgの用量のエリスロポエチン類似体Aranesp又は対照のためにNaClをラットに皮下(s.c.)注射した。
【0135】
図10は2つの試験群のカプラン・メイヤー生存曲線を示す。Aranesp治療動物は生理食塩水治療動物と比較して、生存が明らかに改善されている。
【0136】
図15〜18には、エリスロポエチン治療の後、腎組織は病変を示さないが、NaCl治療の後は重い病変が認められることが示されている(図8〜11を参照)。広範な組織学的研究が明らかにしたところでは、Aranesp治療動物では生理食塩水治療動物より著しく高い血管密度(CD31)が観察される(データは示さず)。
【0137】
実施例4 急性腎不全の進行の緩和
この研究には体重250〜300gのスプレーグ・ドーリーラットを使用した。試験群の1つに急性腎不全の誘導の前日に0.1μg/kgの用量のAranespを1回与えた。ラットをケタミン(120mg/体重kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。同時に生理食塩水を皮下注射した試験動物群を対照として使用した。動脈鉗子を右腎動脈に取り付けることによって、腎臓の血流を45分間中断した。この時間の間に左側で腎摘除を行った。別の対照群では偽手術を行った。この場合は開腹して、左腎動脈を露出させたが、血液供給は中断せず、対側の右腎を摘出した。すべての動物を60分の期間のあいだ麻酔し、手術の24時間後に殺した。
【0138】
残りの右腎の45分の虚血とその後の再潅流は、生理食塩水治療動物で激しい急性腎機能喪失を生じた。これは係数7だけ上昇した血清クレアチニン値となって現れた(p<0.05)。これに対してエリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は虚血−再潅流障害の誘導の翌日に血清クレアチニン値の4倍の増加しか示さなかった。右腎を偽手術し、左側で腎摘除した動物では滞留値の上昇は起こらなかった。結果を図9に示す。
【0139】
実施例5 腎機能減退患者での内皮前駆細胞の分化能力の低下
46人の尿毒症患者と、年齢及び性別が一致する46人の健康な対照被験者で、内皮前駆細胞の分化状態を培養テストにより分析した。その際意外なことに、この分化アッセイで尿毒症患者の内皮前駆細胞の数が健康な対照被験者に比して著しく減少していることが認められた(図7)。健康な被験者の単核細胞を単離して、糖尿病患者の血清の存在下でこれを培養すると、この細胞の内皮前駆細胞への分化能力が同様に減少する(図6)。
【0140】
実施例6 健康な被験者での内皮前駆細胞の分化能力の刺激
4人の健康な若年男子を8週の期間にわたり体重kg当り30IUのエポエチンβで週1回治療した。その際内皮前駆細胞の分化能力を被験者のrhEPO治療の前に、また被験者のrhEPO治療の1、2、3、4、5、6及び7週後に毎週培養アッセイで、その接着能力及び2つのマーカーacLDL及びUEAに基づいて決定した。その場合EPCの50%以上の相対的増加が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】循環CD34+幹細胞(cSC)のFACS分析の結果を示す。(A−D):患者試料;(E−F):アイソタイプ対照。CD34マーカー(B及びF)の付加的発現、特徴的な低〜中位のCD45抗原発現(C及びG)、特徴的な光散乱性(D及びH)に基づいてcSCを同定した。cSC絶対数は単核細胞及びリンパ球100000個当りで計算した。
【図2】フローサイトメトリーによる循環幹細胞の定量的アッセイを示す。図はrhEPO(組換えヒト・エリスロポエチン)を使用したエリスロポエチン治療の0、2、4、6及び8週後の時間依存的効果を示す。n=11、値は平均値+/−標準偏差に相当する。中央値を線で示す。*:2週と比較してp<0.01、Ψ:4週と比較してp<0.05、#:8週と比較してp<0.05
【図3】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図はrhEPO治療がEPCの相対数を増加することを示す。腎患者のrhEPO治療の前並びに患者のrhEPO治療の2、4、6及び8週後にEPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=11、値は平均値+/−標準偏差に相当する。中央値を線で示す。*:治療前の期間に対してp<0.01、#:治療前の期間に対してp<0.001
【図4】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図は、rhEPO治療の開始前のEPCの絶対数が、年齢及び性別の一致する健康な被験者に比して著しく減少していることを示す。即ち腎性貧血患者は対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。腎性貧血のrhEPO治療の開始の8週後に機能性EPCのこの減少した数が補償される。rhEPOによる腎患者の治療の前並びにrhEPOによる患者の治療の2、4、6及び8週後にEPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=11。8週の経過及び全対照を例示する。絶対値は一方では個別値として示されている。さらにボックスプロットを示す(第90/第75/第50/第25及び第10百分位数及び平均値)。健康な対照として年齢及び性別の一致する被験者を使用し、同様にEPCを単離し、特徴づけた(n=11)。
【図5】健康な若い被験者の培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。図はrhEPO治療(30IUエポエチンβ/体重kg/週)がEPCの相対数を増加することを示す。rhEPOによる被験者の治療の前並びにrhEPOによる被験者の治療の1、2、3、4、5、6及び7週後に毎週EPCを単離し、その接着能力及び2つのマーカーacLDL−Dil及びUEA−1FITCに基づいて特徴づけた。n=4、値は平均値+/−標準偏差に相当する。
【図6】培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを示す。代表的な写真は尿毒症患者のEPCの絶対数が、年齢及び性別の一致する健康な被検者に比して著しく減少していることを示す(上の列−in vivo)。腎機能が減退した患者はこのように対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。健康な被験者の前駆細胞を尿毒症患者の血清で共生培養すれば、その内皮前駆細胞の分化能力が減少する(下側の列−in vitro)。腎機能の減退及びそれから誘導される尿毒症はこのように内皮前駆細胞の機能異常をもたらす。
【図7】腎機能が減退した46人の尿毒症患者の培養した内皮前駆細胞(EPC)の定量的アッセイを、年齢及び性別の一致する46人の被験者と比較してボックスプロットとして示す(第90/第75/第50/第25及び第10百分位数並びに平均値)。その場合尿毒症患者の内皮前駆細胞の数は健康な被験者に比して著しく減少している。腎機能減退患者はこうして対照者に比して明瞭なEPC機能異常を示す。
【図8】創傷治癒に対するエリスロポエチンの効果を示す。図は、マウスに組織パンチで付けた標準的な皮膚創傷のエリスロポエチン治療で創傷が7日〜8日後にすでに完全に閉じたが、生理食塩水による創傷の治療では創傷が13日〜14日後にようやく完全に閉じたことを示す。エリスロポエチン又は生理的食塩水による治療は皮膚創傷を付ける7日前に開始した。組換えヒト・エリスロポエチンをs.c.(皮下)注射(0.1mg/kg Aranesp)により週1回投与した(各グループでn=5)。
【図9】エリスロポエチンが急性腎障害(急性腎不全)の後の腎機能喪失を緩和することを示す。スプレーグ・ドーリーラット(250〜300g)を研究に採用した。ラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。試験群の1つには急性腎不全の誘導の前日に1回0.1μg/体重kgのAranespを与えた。対照として、同時に生理食塩水を皮下注射した試験動物グループを使用した。右腎動脈に動脈鉗子を取り付けることによって、腎臓への血流を45分間中断した。この時間のあいだに左側で腎摘除を行った。別の対照群で偽手術を行った。この場合は開腹して左腎動脈を露出させたが、血液供給を中断せず、対側の右腎を摘出した。すべての動物を60分間麻酔し、手術の24時間後に殺した。生理食塩水で治療した動物では、残りの右腎の45分の虚血とその後の再潅流が激しい急性腎機能不全を生じた。このことは血清クレアチニン値に反映される。虚血−再潅流の24時間後の血清クレアチニン値は虚血−再潅流の前の値の7倍である(p<0.05)。これに対してエリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は虚血−再潅流障害の誘導の1日後に血清クレアチニン値の4倍の上昇を示したに過ぎない。右腎を偽手術し、左側で腎摘除した動物では、停滞値の上昇が起こらなかった。図はEPO治療動物(IR+EPO)、NaCl治療動物(IR)及び偽手術動物(Schein−OP)の虚血−再潅流(IR)障害の前及びその24時間後の血清中クレアチニン濃度を示す。図で明らかなように、Aranesp治療動物の虚血−再潅流障害の24時間後の血清クレアチニン濃度は、行わない対照(NaCl治療)に比べてほぼ半減している。
【図10】慢性腎不全を誘導し、Aranesp又はNaClで治療した2つの試験群のカプラン・メイヤー生存曲線を示す。8週齢のスプレーグ・ドーリーラットを研究に採用した。ラットをケタミン(120mg/kg)及びロンパン(10mg/kg)で麻酔した。第0日に右腎を摘出し、摘出後直ちに組織学的研究のためにホルマリンで固定した。左腎では上下の腎極に供給する区域動脈を結紮した。それによって当該の腎区域の腎梗塞が起こり、中央の3分の1の腎臓だけが機能を維持する。ラットにAranesp(0.1μg/体重kg)又は生理食塩水を皮下注射で毎週1回与えた。エリスロポエチン類似体Aranespで治療した動物は食塩で治療した動物に対して著しい生存利得を有する(p=0.027;ログランクテスト)。
【図11】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間のあいだ毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は重い高血圧障害、動脈内膜炎を伴ういわゆる悪性腎硬化症の危険がある、特徴的なタマネギの皮状の血管壁増殖を有する中位の大きさの糸球体動脈を示す。
【図12】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図はいわゆる増殖性FSGS[巣状糸球体硬化症](右糸球体)としての活発な巣状分節性糸球体硬化症を示す。他方の糸球体(左)は環状糸球の虚血性虚脱を示す。図の下側に重い内皮障害を有する小血管が見える。観察される組織学的変化は、高血圧性臓器障害又は5/6腎切除後の過負荷腎臓病に関連する変化に相当する。
【図13】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は代償的に肥大した糸球体のほぼ完全な硬化又は破壊と、当該の輸入細動脈の鮮明なヒアリノーシス又はフィブリノイド壊死を示す。
【図14】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のNaCl治療の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は重い高血圧性障害、いわゆる悪性腎硬化症で特徴的なタマネギの皮状の血管壁増殖及び血管壁壊死を有する糸球体細動脈を示す(図右側を参照)。左側に正常な(まだ)障害のない細動脈が見える。
【図15】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg/kg Aranesp)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図16】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg Aranesp/kg)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す(倍率630倍)。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図17】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg Aranesp/kg)の後の、慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図18】慢性腎不全の誘導の6週後の光学顕微鏡による腎臓断面を示す。慢性腎不全の誘導の直後に始まり6週の期間にわたり毎週1回のAranesp(EPO)治療(0.1mg/kg Aranesp)の後の慢性腎不全を有するスプレーグ・ドーリーラットの組織学的変化を示す。慢性腎不全は右腎の摘出と、上下の腎極に供給する左腎区域動脈の結紮の結果生じたものである。図は柔軟な輸入細動脈を有する正常な糸球体を示す(倍率630倍)。尿細管間質に病理的所見は認められない。
【図19】創傷治癒過程に対するEPOの効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む、疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがa)内皮前駆細胞の少なくとも1つの機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子、例えば高血圧症、高コレステロール血症、高い不斉ジメチルアルギニン(ADMA)値、高インスリン抵抗性又は高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈の動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿又は80ml/minより小さい、好ましくは30〜80ml/minの糸球体濾過率を有するヒト又は動物患者の予防又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項2】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の美容治療、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、再上皮化の促進、毛髪成長の促進のために及び/又はメイクアップのファウンデーションとして適し、かつ設計されている使用。
【請求項3】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製、特に局所適用に用いる美容剤の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の美容治療、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、再上皮化の促進、毛髪成長の促進のために及び/又はメイクアップのファウンデーションとして適し、かつ設計されている使用。
【請求項4】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の組織及び血管の再生のために適し、かつ設計されており、混合物を適用の前にin vitroでエリスロポエチンと接触させる使用。
【請求項5】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の組織及び血管の再生のために適し、かつ設計されており、混合物の適用の前又は後又は同時に混合物を投与する使用。
【請求項6】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチン及びその誘導体の使用並びに/又はもしくはこの用量のエリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子とを含む疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のための少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子、特に薬理学的活性成分の使用であって、この用量のエリスロポエチンが、エリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の適用のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項7】
機械的因子が体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である請求項6に記載のエリスロポエチンの使用。
【請求項8】
生物学的因子が固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓、皮膚又は毛髪インプラントである請求項6に記載の使用。
【請求項9】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンが疾患の予防又は治療のために適し、かつ設計されており、疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿又は創傷及びその後遺症である使用。
【請求項10】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の、エリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含むキットの調製のための使用であって、エリスロポエチンが低用量で存在している使用。
【請求項11】
医薬組成物が内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又は内皮前駆細胞の血管新生又は脈管形成刺激の方向への移動を刺激するために使用される請求項1〜10のいずれか1つに記載の使用。
【請求項12】
分化する内皮前駆細胞の接着能力を高める請求項1〜11に記載の使用。
【請求項13】
内皮前駆細胞の刺激が内皮組織の形成をもたらす請求項1〜12に記載の使用。
【請求項14】
内皮前駆細胞の刺激が新しい血管の形成をもたらす請求項1〜13のいずれか1つに記載の使用。
【請求項15】
内皮前駆細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の病理学的状態又は疾患の治療のための、0.001〜90IU/体重kg/週の少用量のエリスロポエチンの使用。
【請求項16】
内皮前駆細胞の機能異常がその増殖能力の障害、内皮細胞への分化能力の障害、接着能力の障害及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動能力の障害である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
内皮前駆細胞の機能異常が内皮組織及び/又は血管の形成を阻害し又は妨げる請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
内皮前駆細胞の機能異常が病原性の原因を有する請求項15〜17のいずれか1つに記載の使用。
【請求項19】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する病理学的状態又は疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA値又は創傷及び/又はその後遺症である請求項15〜18のいずれか1つに記載の使用。
【請求項20】
高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA値又は創傷及び/又はその後遺症の治療のための、特に0.001〜90IU/体重kg/週の低用量のエリスロポエチンの使用。
【請求項21】
患者当り0.001〜90単位/体重kg/週の用量のエリスロポエチンを投与する請求項1〜20のいずれか1つに記載の使用。
【請求項22】
患者当り0.05〜50単位/体重kg/週の用量のエリスロポエチンを投与する請求項21に記載の使用。
【請求項23】
医薬組成物が非経口、特に脈管内、筋肉内、皮内又は皮下投与にも、局所的投与にも適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項24】
医薬組成物が注射薬又は輸液である請求項23に記載の使用。
【請求項25】
医薬組成物が肺投与に適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項26】
医薬組成物が水溶液、非水溶液又は粉末である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
医薬組成物がエーロゾル製剤の形である請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
医薬組成物が経口投与に適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項29】
医薬組成物が溶液、懸濁液、乳剤又は錠剤である請求項28に記載の使用。
【請求項30】
医薬組成物が内皮前駆細胞の刺激のための少なくとも1つの別の活性成分を含む請求項1〜29のいずれか1つに記載の使用。
【請求項31】
別の活性成分がVEGF(血管内皮成長因子)、PIGF(胎盤成長因子)、GM−CSF(顆粒体マクロファージコロニー刺激因子)、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤、AT−1遮断薬、HMG−CoA(ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA)還元酵素阻害剤及び/又はNO供与体である請求項30に記載の使用。
【請求項32】
HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチン、例えばシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチンであり、ACE阻害剤が、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリルなどの活性成分であり、及び/又はAT−1遮断薬が、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタンなどの活性成分である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
移植可能な内皮細胞製剤の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項34】
少量の、即ち0.001〜90IU/kg/週のエリスロポエチンの存在下で内皮前駆細胞を培養することにより内皮細胞をin vitroで調製する請求項33に記載の使用。
【請求項35】
VEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチン及びNO供与体、特にL−アルギニンからなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下で内皮前駆細胞の培養を行う請求項33又は34に記載の使用。
【請求項36】
組織又は臓器移植体の前処理及び/又はさらなる処理のための低用量、即ち0.001〜90IU/kg/週のエリスロポエチンの使用。
【請求項37】
分離した内皮前駆細胞を使用して組織又は臓器移植体の前処理を行う請求項36に記載の使用。
【請求項38】
脈管形成及び/又は内皮細胞形成の誘導のために、in vitro臓器又は組織系を移植又は内植の前にエリスロポエチンで処理する、内植可能又は移植可能な細胞含有in vitro臓器又は組織系の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項39】
in vitro臓器又は組織系が内皮前駆細胞を含む請求項38に記載の使用。
【請求項40】
血管プロテーゼ又は心臓弁をエリスロポエチンで被覆する、血管プロテーゼ又は心臓弁の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項41】
血管プロテーゼ又は心臓弁の被覆が内皮前駆細胞を含む請求項40に記載の使用。
【請求項42】
エリスロポエチンがヒト又は動物のエリスロポエチンである請求項1〜41のいずれか1つに記載の使用。
【請求項43】
エリスロポエチンがエリスロポエチンの誘導体、類似体、修飾体又はムテインである請求項42に記載の使用。
【請求項44】
ヒトの尿、再生不良性貧血患者の尿又は血漿、ヒト腎癌細胞の組織培養、ヒト・エリスロポエチンの形成能力を有するヒト・リンパ球細胞もしくはヒト又は動物の細胞ラインの細胞融合によって得たハイブリドーマ培養からエリスロポエチンを分離する請求項42又は43に記載の使用。
【請求項45】
エリスロポエチンがDNA組換え技術により調製したエリスロポエチンである請求項42又は43に記載の使用。
【請求項46】
活性成分としてエリスロポエチン及び/又はその誘導体、類似体、修飾体又はムテイン並びにVEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を好ましくは小容量で、特に0.001〜90IU/体重kg/週で含む、内皮前駆細胞の刺激、内皮組織の形成の刺激、脈管形成の刺激及び/又は内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の治療のための医薬組成物。
【請求項47】
活性成分としてエリスロポエチン及び/又はその誘導体、類似体、修飾体若しくはムテインを好ましくは好ましくは小容量で、特に0.001〜90IU/体重kg/週の容量で含む、高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、靭帯及び腱障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿又は創傷及びその後遺症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項48】
VEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分をさらに含む請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
HMG−CoA還元酵素阻害剤がシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであり、ACE阻害剤がエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどの活性成分であり、及び/又はAT−1遮断薬がイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどの活性成分である請求項46又は47に記載の医薬組成物。
【請求項50】
NO供与体がLアルギニンである請求項46又は47に記載の医薬組成物。
【請求項51】
疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための請求項1〜50に記載のエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチン及び/又は医薬組成物がヒト又は動物の身体への6時〜10時の期間の午前適用のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項52】
エリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含むキットであって、エリスロポエチンが好ましくは低用量であるキット。
【請求項53】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含むヒト又は動物の身体の疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、機械的又は生物学的因子、特に体内プロテーゼ、特にインプラント、例えばインプラント義歯、義歯、骨インプラント、骨代替物、特に関節プロテーゼ、靭帯/腱代替物、例えば十字靭帯又は固形臓器の、インプラント又は体内プロテーゼを取り囲む身体構造への統合を改善し、特に促進し及び/又は速めるために、上記の低用量のエリスロポエチンが適し、かつ設計されている使用。
【請求項54】
薬剤又はキットがさらに組織及び血管の再生のための細胞治療剤、特に内皮前駆細胞及び/又はその他の細胞治療用細胞集団を含む請求項53に記載の使用。
【請求項55】
体内プロテーゼが鋼、セラミック、プラスチック又はその他の基質材料で形成されている請求項53又は54のいずれか1つに記載の使用。
【請求項56】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量のエリスロポエチン、体内プロテーゼ及び場合によっては細胞治療剤、好ましくは内皮前駆細胞又はその他の細胞治療用細胞集団を含むキット。
【請求項1】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む、疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがa)内皮前駆細胞の少なくとも1つの機能異常、b)少なくとも1つの心血管危険因子、例えば高血圧症、高コレステロール血症、高い不斉ジメチルアルギニン(ADMA)値、高インスリン抵抗性又は高ホモシステイン血症及びc)少なくとも1つの内臓障害、例えば左心室肥大、微量アルブミン尿症、認知機能異常、頚動脈の動脈内膜中膜厚さの増加、タンパク尿又は80ml/minより小さい、好ましくは30〜80ml/minの糸球体濾過率を有するヒト又は動物患者の予防又は治療のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項2】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の美容治療、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、再上皮化の促進、毛髪成長の促進のために及び/又はメイクアップのファウンデーションとして適し、かつ設計されている使用。
【請求項3】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製、特に局所適用に用いる美容剤の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の美容治療、特にしわ形成の治療、結合組織の強化、皮膚の保護及び緊張、有害な環境作用に対する保護、老年性色素斑の治療、再上皮化の促進、毛髪成長の促進のために及び/又はメイクアップのファウンデーションとして適し、かつ設計されている使用。
【請求項4】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の組織及び血管の再生のために適し、かつ設計されており、混合物を適用の前にin vitroでエリスロポエチンと接触させる使用。
【請求項5】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量及び/又は内皮前駆細胞と少なくとも1つの細胞治療用細胞集団の混合物を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンがヒト又は動物の身体の組織及び血管の再生のために適し、かつ設計されており、混合物の適用の前又は後又は同時に混合物を投与する使用。
【請求項6】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチン及びその誘導体の使用並びに/又はもしくはこの用量のエリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子とを含む疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のための少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子、特に薬理学的活性成分の使用であって、この用量のエリスロポエチンが、エリスロポエチンと少なくとも1つの化学的、熱的、機械的又は生物学的因子の逐次の又は時間的に連続する又は同時の適用のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項7】
機械的因子が体内プロテーゼ、好ましくは歯、骨又は靭帯/腱代替物のための内植体である請求項6に記載のエリスロポエチンの使用。
【請求項8】
生物学的因子が固形臓器、例えば肝臓、腎臓、心臓、膵臓、皮膚又は毛髪インプラントである請求項6に記載の使用。
【請求項9】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、この用量のエリスロポエチンが疾患の予防又は治療のために適し、かつ設計されており、疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿又は創傷及びその後遺症である使用。
【請求項10】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含む医薬組成物の調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の、エリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含むキットの調製のための使用であって、エリスロポエチンが低用量で存在している使用。
【請求項11】
医薬組成物が内皮前駆細胞の生理的動員、内皮前駆細胞の増殖、内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及び/又は内皮前駆細胞の血管新生又は脈管形成刺激の方向への移動を刺激するために使用される請求項1〜10のいずれか1つに記載の使用。
【請求項12】
分化する内皮前駆細胞の接着能力を高める請求項1〜11に記載の使用。
【請求項13】
内皮前駆細胞の刺激が内皮組織の形成をもたらす請求項1〜12に記載の使用。
【請求項14】
内皮前駆細胞の刺激が新しい血管の形成をもたらす請求項1〜13のいずれか1つに記載の使用。
【請求項15】
内皮前駆細胞の機能異常に関連するヒト又は動物の身体の病理学的状態又は疾患の治療のための、0.001〜90IU/体重kg/週の少用量のエリスロポエチンの使用。
【請求項16】
内皮前駆細胞の機能異常がその増殖能力の障害、内皮細胞への分化能力の障害、接着能力の障害及び/又は脈管形成又は血管新生刺激の方向への移動能力の障害である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
内皮前駆細胞の機能異常が内皮組織及び/又は血管の形成を阻害し又は妨げる請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
内皮前駆細胞の機能異常が病原性の原因を有する請求項15〜17のいずれか1つに記載の使用。
【請求項19】
内皮前駆細胞の機能異常に関連する病理学的状態又は疾患が高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA値又は創傷及び/又はその後遺症である請求項15〜18のいずれか1つに記載の使用。
【請求項20】
高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、粘膜障害又は損傷特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿、高いADMA値又は創傷及び/又はその後遺症の治療のための、特に0.001〜90IU/体重kg/週の低用量のエリスロポエチンの使用。
【請求項21】
患者当り0.001〜90単位/体重kg/週の用量のエリスロポエチンを投与する請求項1〜20のいずれか1つに記載の使用。
【請求項22】
患者当り0.05〜50単位/体重kg/週の用量のエリスロポエチンを投与する請求項21に記載の使用。
【請求項23】
医薬組成物が非経口、特に脈管内、筋肉内、皮内又は皮下投与にも、局所的投与にも適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項24】
医薬組成物が注射薬又は輸液である請求項23に記載の使用。
【請求項25】
医薬組成物が肺投与に適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項26】
医薬組成物が水溶液、非水溶液又は粉末である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
医薬組成物がエーロゾル製剤の形である請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
医薬組成物が経口投与に適している請求項1〜22のいずれか1つに記載の使用。
【請求項29】
医薬組成物が溶液、懸濁液、乳剤又は錠剤である請求項28に記載の使用。
【請求項30】
医薬組成物が内皮前駆細胞の刺激のための少なくとも1つの別の活性成分を含む請求項1〜29のいずれか1つに記載の使用。
【請求項31】
別の活性成分がVEGF(血管内皮成長因子)、PIGF(胎盤成長因子)、GM−CSF(顆粒体マクロファージコロニー刺激因子)、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤、AT−1遮断薬、HMG−CoA(ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA)還元酵素阻害剤及び/又はNO供与体である請求項30に記載の使用。
【請求項32】
HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチン、例えばシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチンであり、ACE阻害剤が、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリルなどの活性成分であり、及び/又はAT−1遮断薬が、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタンなどの活性成分である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
移植可能な内皮細胞製剤の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項34】
少量の、即ち0.001〜90IU/kg/週のエリスロポエチンの存在下で内皮前駆細胞を培養することにより内皮細胞をin vitroで調製する請求項33に記載の使用。
【請求項35】
VEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤、特にシンバスタチン、メバスタチン又はアトルバスタチン及びNO供与体、特にL−アルギニンからなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分の存在下で内皮前駆細胞の培養を行う請求項33又は34に記載の使用。
【請求項36】
組織又は臓器移植体の前処理及び/又はさらなる処理のための低用量、即ち0.001〜90IU/kg/週のエリスロポエチンの使用。
【請求項37】
分離した内皮前駆細胞を使用して組織又は臓器移植体の前処理を行う請求項36に記載の使用。
【請求項38】
脈管形成及び/又は内皮細胞形成の誘導のために、in vitro臓器又は組織系を移植又は内植の前にエリスロポエチンで処理する、内植可能又は移植可能な細胞含有in vitro臓器又は組織系の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項39】
in vitro臓器又は組織系が内皮前駆細胞を含む請求項38に記載の使用。
【請求項40】
血管プロテーゼ又は心臓弁をエリスロポエチンで被覆する、血管プロテーゼ又は心臓弁の調製のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項41】
血管プロテーゼ又は心臓弁の被覆が内皮前駆細胞を含む請求項40に記載の使用。
【請求項42】
エリスロポエチンがヒト又は動物のエリスロポエチンである請求項1〜41のいずれか1つに記載の使用。
【請求項43】
エリスロポエチンがエリスロポエチンの誘導体、類似体、修飾体又はムテインである請求項42に記載の使用。
【請求項44】
ヒトの尿、再生不良性貧血患者の尿又は血漿、ヒト腎癌細胞の組織培養、ヒト・エリスロポエチンの形成能力を有するヒト・リンパ球細胞もしくはヒト又は動物の細胞ラインの細胞融合によって得たハイブリドーマ培養からエリスロポエチンを分離する請求項42又は43に記載の使用。
【請求項45】
エリスロポエチンがDNA組換え技術により調製したエリスロポエチンである請求項42又は43に記載の使用。
【請求項46】
活性成分としてエリスロポエチン及び/又はその誘導体、類似体、修飾体又はムテイン並びにVEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分を好ましくは小容量で、特に0.001〜90IU/体重kg/週で含む、内皮前駆細胞の刺激、内皮組織の形成の刺激、脈管形成の刺激及び/又は内皮前駆細胞の機能異常に関連する疾患又は病理学的状態の治療のための医薬組成物。
【請求項47】
活性成分としてエリスロポエチン及び/又はその誘導体、類似体、修飾体若しくはムテインを好ましくは好ましくは小容量で、特に0.001〜90IU/体重kg/週の容量で含む、高コレステロール血症、糖尿病、インスリン抵抗性、内皮仲介性慢性炎症障害、細網内皮増殖症を含む内皮増殖症、アテローム動脈硬化症、老人性心臓循環障害、四肢の虚血性障害、子癇前症、レイノー病、肝障害例えば肝炎、肝硬変、急性又は慢性肝不全、骨及び軟骨障害又は損傷、靭帯及び腱障害又は損傷、特に胃腸管の粘膜障害又は損傷、クローン病、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧、慢性又は急性腎不全、特に末期腎不全、糸球体濾過率30〜80ml/minの腎機能減退、微量アルブミン尿、タンパク尿又は創傷及びその後遺症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項48】
VEGF、PIGF、GM−CSF、ACE阻害剤、例えばエナラプリル、ラミプリル又はトランドラプリル、AT−1遮断薬、例えばイルベサルタン、ロルサルタン又はオルメサラタン、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びNO供与体からなるグループから選ばれた少なくとも1つの別の活性成分をさらに含む請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
HMG−CoA還元酵素阻害剤がシンバスタチン、メバスタチン若しくはアトルバスタチンなどのスタチンであり、ACE阻害剤がエナラプリル、ラミプリル若しくはトランドラプリルなどの活性成分であり、及び/又はAT−1遮断薬がイルベサルタン、ロルサルタン若しくはオルメサラタンなどの活性成分である請求項46又は47に記載の医薬組成物。
【請求項50】
NO供与体がLアルギニンである請求項46又は47に記載の医薬組成物。
【請求項51】
疾患の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための請求項1〜50に記載のエリスロポエチンの使用であって、エリスロポエチン及び/又は医薬組成物がヒト又は動物の身体への6時〜10時の期間の午前適用のために適し、かつ設計されている使用。
【請求項52】
エリスロポエチン、内皮前駆細胞及び少なくとも1つの細胞治療用細胞集団を含むキットであって、エリスロポエチンが好ましくは低用量であるキット。
【請求項53】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量を含むヒト又は動物の身体の疾患の予防又は治療用の医薬組成物又はキットの調製のためのエリスロポエチン及び/又は誘導体の使用であって、機械的又は生物学的因子、特に体内プロテーゼ、特にインプラント、例えばインプラント義歯、義歯、骨インプラント、骨代替物、特に関節プロテーゼ、靭帯/腱代替物、例えば十字靭帯又は固形臓器の、インプラント又は体内プロテーゼを取り囲む身体構造への統合を改善し、特に促進し及び/又は速めるために、上記の低用量のエリスロポエチンが適し、かつ設計されている使用。
【請求項54】
薬剤又はキットがさらに組織及び血管の再生のための細胞治療剤、特に内皮前駆細胞及び/又はその他の細胞治療用細胞集団を含む請求項53に記載の使用。
【請求項55】
体内プロテーゼが鋼、セラミック、プラスチック又はその他の基質材料で形成されている請求項53又は54のいずれか1つに記載の使用。
【請求項56】
0.001〜90IU/体重kg/週、好ましくは0.05〜50IU/体重kg/週の用量のエリスロポエチン、体内プロテーゼ及び場合によっては細胞治療剤、好ましくは内皮前駆細胞又はその他の細胞治療用細胞集団を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−518769(P2007−518769A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550060(P2006−550060)
【出願日】平成17年1月22日(2005.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000618
【国際公開番号】WO2005/070450
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505028565)イーピーオープラス ゲーエムベーハー ウント コムパニー カーゲー (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月22日(2005.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000618
【国際公開番号】WO2005/070450
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505028565)イーピーオープラス ゲーエムベーハー ウント コムパニー カーゲー (6)
【Fターム(参考)】
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