内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を減弱するためのオピオイドアンタゴニストの使用
本発明は、末梢限局的アンタゴニストであってもよいがこれに限定されないオピオイドアンタゴニスト、例えば、メチルナルトレキソン又はアルビモパンを用いた細胞増殖及び細胞遊走、とりわけ血管形成に関連するものであってもよい内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を減弱する、例えば、阻害する又は低減する方法を提供する。単独で又は例えば、抗癌剤(5−フルオロウラシル若しくはベバシズマブ)と組み合わせて治療される疾患は、例えば、癌、糖尿病、鎌状赤血球貧血、血管損傷、増殖性網膜症である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内皮細胞の遊走及び/又は内皮細胞の増殖、とりわけ腫瘍に関連する内皮細胞の遊走及び/又は内皮細胞の増殖のオピオイドアンタゴニストを利用する減弱方法と関連する。
【背景技術】
【0002】
(連邦政府支援研究又は連邦政府支援開発に関する陳述)
本発明は国立保健研究所助成:DE12322;DE00470;及びDE015830によって一部分支援された。米国政府は本発明におけるいくらかの権利を有する。
【0003】
(緒言)
細胞増殖は全ての生命体における正常な持続的過程であり、規則正しい細胞周期を維持するために繊細にバランスを保たれる非常に多くの因子及びシグナルを含んでいる。哺乳類細胞が増殖する及び分裂するのかどうかは、様々なフィードバック調節機構によって決定され、これには細胞が増殖することができるスペースの利用可能性並びに周辺環境における特異的な刺激性及び阻害性の因子の分泌が含まれる。
【0004】
血管形成(Angiogenesis)及び血管形成関連性疾患(angiogenesis-related diseases)は、細胞増殖に影響される。血管形成(angiogensis)の過程は結果として、新たな血管の形成をもたらす。正常な生理的条件下で、ヒトを含む動物は極めて特定の限られた状況においてのみ血管形成(angiogensis)を経験する。例えば、血管形成(angiogensis)は創傷治癒、胎児及び胚の発生並びに黄体、子宮内膜及び胎盤の形成において正常に観察される。
血管形成(angiogensis)の過程の間、既存の血管の一部として静止状態で正常に存在する内皮細胞は、遊走性増殖性状態に入る。当該内皮細胞の遊走性増殖性状態は、当該細胞が機能的な新たな血管の一部として静止状態に戻る際に最終的に解消される。新たな毛細血管の生成は、空間的様式及び時間的様式の両方で起こる多くの細胞イベント及び分子イベントを必要とする複雑な過程を含む。これらの活動のいくつかには、元の血管の周囲の基底膜の分解、結合組織間質を通る内皮細胞の遊走、細胞増殖、チューブ様構造の形成及びこれらの内皮細胞に裏打ちされるチューブの新たな血管への成熟が含まれる(Cliff, 1963; Schoefl, 1963; Ausprunck and Folkman, 1977)。いくつかの重要な血管形成因子(angiogenic factors)には、塩基性繊維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、サイトカイン、細胞外マトリクスタンパク及びマトリクスメタロプロテアーゼが含まれる。これらの因子は、間質細胞によって及び当該領域へ補充される活性化型白血球によって局所的に産生される(Risau, W. (1997) Nature 386(6626):671-674; Risau and Flamme (1995) Ann. Rev. Cell Dev. Biol. 11:73-91)。他の血管形成因子(angiogenic factors)とは違って、VEGFは、血管形成(angiogensis)の間の内皮細胞特異的な分裂促進因子としての役割を果たす(Terman et al., 1992 及び Ferrara, 1993)。
【0005】
いくつかの新生物(例えば、腫瘍)は、血管形成(angiogensis)を刺激して利用することができ、これにより栄養分の取り込みを上昇させることができる。血管形成(angiogensis)は直径2mm〜3mmを超える固形腫瘍の増殖に関して及び腫瘍転移に関して必須のものであることが分かった(Folkman, 1995; reviewed in Bouck et al., 1996)。吻合及び毛細血管成熟をもたらす正常な血管形成(angiogensis)とは対照的に、新生組織形成に関連する血管形成(angiogensis)は持続的過程である。内皮細胞は近傍の新生細胞によって活性化されて血管形成(angiogensis)を刺激するVEGFのみならず周囲の細胞外マトリクスを分解するマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)をも分泌する。次に当該内皮細胞は細胞外マトリクスに浸潤し、そこで遊走し、増殖し、組織化して新たな血管を形成し、これにより新生物増殖及び新生物生存が支持される。
【0006】
新たに血管新生化された新生物は、増殖し続けてさらなる栄養分欠乏及び慢性的な血管形成促進性シグナル伝達をもたらす。新生物の脈管構造は、くぼみの存在及び低い割合の吻合を特徴とする。この部分的な機能障害性脈管構造は、血管形成(angiogensis)に関する永続的な要求を増幅させる。さらに、この不完全な脈管構造は、新生細胞を体循環へ流すことを可能にする。従って、新生物の血管形成能(angiogenic potential)は、転移能と関連する(Weidner et al. (1991) N. Engl. J. Med. 324(1):1-8; Folkman and Shing (1992) J. Biol. Chem. 267(16):10931-10934)。
【0007】
新生物の重要な割合は持続的な血管形成(angiogensis)に依存するので、血管形成(angiogensis)の阻害は新生物増殖をブロックし、多くの場合当該新生物の完全なネクローシスをもたらす(Weidner et al. (1991) N. Engl. J. Med. 324(1):1-8; Folkman and Shing (1992) J. Biol. Chem. 267(16):10931-10934)。
【0008】
血管形成(angiogensis)に関わる当該過程のいずれかの抑制及び/又は当該過程のいずれかの因子の抑制は新たな血管の形成を阻害することができ、従って、腫瘍増殖及び腫瘍転移の発生に作用を及ぼすことができる。実際に、1つの内皮細胞の排除が100個の腫瘍細胞の増殖を阻害することができることが見積もられた(Thorpe et al.m 1995)。血管形成因子(angiogenic factor)VEGFに対して生み出された抗体がインビボで腫瘍増殖を抑制することを示すことも分かった(Kim et al., 1993)。
【0009】
癌及び多くの医学的な状態を有する患者を治療すること及び管理することの一部として、モルヒネのようなオピオイドアゴニストが関連する疼痛のために広く使用されている。例えば、モルヒネは、米国で毎年癌で亡くなる患者の約半数の末期の看護において使用されている。モルヒネのようなオピオイドアゴニストには、生物系中のμレセプター、κレセプター及びδレセプターのような内因性オピオイドレセプターのシリーズに作用する化合物の群が含まれる。通常、これらの内因性レセプターは、内因性オピオイドに結合する。内因性オピオイドは、哺乳類細胞によって自然的に産生される。内因性オピオイドには、βエンドルフィン、エンケファリン及びダイノルフィンが含まれる。βエンドルフィンはμレセプターへの優先性を示し、エンケファリンはδレセプターへの優先性を示し、さらにダイノルフィンはκレセプターへの優先性を示す。オピオイドアゴニストは、それらの内因性オピオイドレセプターへの優先的効果によって分類される。概して、μレセプターは、疼痛緩和及び化学的依存性(例えば、薬物依存及びアルコール依存)に関連する。例えばモルヒネは、μオピオイドアゴニストである。オピオイドレセプターは、脳及び中枢神経系(CNS)、例えば、中枢性レセプター(central receptor)に限定されない。末梢性オピオイドレセプターは、全身の他の組織、例えば胃腸組織で検出されうる。
【0010】
疼痛管理における広範な使用にもかかわらず、モルヒネ及び他のオピオイド医薬は、末梢性レセプターの活性化によって引き起こされるかもしれない深刻な副作用を起こしうる。当該副作用は管理しがたく、結果としてオピオイド基盤の疼痛管理の患者による拒絶をもたらしうる。オピオイド治療の副作用には、悪心、便秘、消化管運動の阻害、呼吸抑制及び免疫抑制が含まれる。さらに、モルヒネ及び他のオピオイドレセプターアゴニストは、標準的なモルヒネの血中濃度又はモルヒネと等価な血中濃度でインビトロ及びインビボにおけるヒト微小血管内皮細胞増殖及び血管形成(angiogensis)を刺激することができる。オピオイドアゴニストのこの血管形成促進性活性(pro-angiogensis activity)は、オピオイドアゴニストが疼痛に関する緩和剤である一方で、腫瘍増殖を加速するかもしれない。
【0011】
オピオイドアンタゴニストも同様に、オピオイドレセプターへのそれらの効果によって、例えば、あるレセプターに他のレセプターよりもより効果的に拮抗するというそれらの能力によって分類される。例えば、オピオイドアンタゴニストのナロキソンは全てのオピオイドレセプターで競合的アンタゴニストとして機能するが、κレセプターでよりもμレセプターで約10倍より有効であり、従って、μオピオイドアンタゴニストとして分類される。オピオイドアンタゴニストは、中枢性レセプター(central receptor)、末梢性レセプター又はその両方に拮抗するかもしれない。オピオイドアンタゴニスト及びとりわけ末梢性オピオイドアンタゴニストは、過剰の内因性オピオイドの好ましくない効果を減らすためだけでなく外因的に投与されるオピオイドの副作用を減らすために使用されてきた。オピオイドアンタゴニストはまた、米国特許No. 6,384,044 及び 6,136,780 並びに化学論文 Gupta et al. Cancer Research, 62: 4491-98 (2002) に記載されるとおり、特定の型の癌に関する抗癌剤としてのそれらの潜在的用途に関しても検討されてきた。オピオイドアンタゴニストの抗癌効果は賛否両論あり十分に理解されていないが、オピオイドアンタゴニストの抗癌効果は、それらが少しでも示される限りは、血管形成(angiogensis)とは無関係であることが維持される(Poonawala T, et al., Wound Repair Regen. 2005 Mar-Apr;13(2):165-74; Popov I., Acta Chir Iugosl. 2004;51(2):117-21; Blebea J, et al., J Vasc Surg. 2002 Mar;35(3):532-8; Balasubramanian S, et al., J Mol Cell Cardiol. 2001 Dec;33(12):2179-87; Zagon IS, et al., Int J Oncol. 2000 Nov;17(5):1053-61; Blebea J et al., J Vasc Surg. 2000 Aug;32(2):364-73; Pasi A, et al., Gen Pharmacol. (991;22(6):1077-9.))。実際に、マウスの異種移植腫瘍モデルにおいて、オピオイドアンタゴニストのナロキソンがモルヒネ誘導性血管形成(angiogensis)に有意な効果を発揮しなかったことが報告されている(Gupta et al. Cancer Research, 62: 4491-98 (2002))。従って、オピオイドアンタゴニストが血管形成(angiogensis)に関連する内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を阻害することができることがここに発見されることは驚くべきことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な説明)
本発明は、末梢限局的アンタゴニストであってもよいがこれに限定されないオピオイドアンタゴニストを用いた細胞増殖及び細胞遊走、とりわけ血管形成(angiogensis)に関連するものであってもよい内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を減弱する、例えば、阻害する又は低減する方法を提供する。
【0013】
本発明のある側面に従って、治療方法が提供される。当該方法は、内皮細胞の好ましくない遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。当該治療は、遊走及び増殖の1つ又は両方を阻害してもよい。当該好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖は、好ましくない血管新生(neovascularization)又は血管形成(angiogenesis)であってもよいがこれらに限定されない好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖であってもよい。好ましくない血管新生の例としては、癌の血管新生及び目の血管新生に関連する血管新生が挙げられるが、これらに限定されない。疾患は、好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とするいずれの疾患であってもよい。重要な当該疾患は、癌、鎌状赤血球貧血、血管損傷(vascular wounds)、増殖性網膜症並びに腎臓及び肺での好ましくない内皮細胞増殖である。
【0014】
重要な実施態様において、当該オピオイドアンタゴニストは、末梢性オピオイドアンタゴニストである。末梢性オピオイドアンタゴニストとしては、第四級の若しくは第三級のモルフィナン誘導体、ピペリジン-N-アルキルカルボキシラート及び第四級のベンゾモルファンが挙げられるが、これらに限定されない。ある重要な当該末梢性オピオイドアンタゴニストは、メチルナルトレキソンである。他のオピオイドアンタゴニストは、アルビモパンである。重要な実施態様において、有効量は、患者が持続的に少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、好ましくは少なくとも4週間前記オピオイドアンタゴニストの有効な循環血の血漿レベルを有するような量である。
【0015】
本発明はまた、オピオイドアンタゴニストではないがそれにもかかわらず内皮細胞の好ましくない遊走又は増殖を特徴とする疾患の治療に有用な薬剤とのオピオイドアンタゴニストの共投与であってもよい。当該薬剤の例としては、抗癌剤、抗血管新生剤(例えば、抗VEGFモノクローナル抗体)、抗糖尿病剤、抗鎌状赤血球剤、創傷治癒剤及び抗内皮細胞増殖剤が挙げられる。
【0016】
患者が患者の有する特定の疾患、当該疾患の重症度及び患者が疼痛管理に関して有する要求に応じて併用のオピオイド治療を受けていてもよいし又は受けていなくてもよいことが理解される。いくつかの実施態様において、患者は併用のオピオイド治療を受けている。いくつかの実施態様において、患者は併用のオピオイド治療を受けていない。いくつかの実施態様において、患者は慢性的オピオイド治療の併用を受けている。いくつかの実施態様において、患者は慢性的オピオイド治療の併用を受けていない。
【0017】
本発明の他の側面に従って、内皮細胞におけるVEGF活性の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
本発明の他の側面に従って、内皮細胞における外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
【0018】
本発明の他の側面に従って、内皮細胞におけるRhoA活性化の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
上述のいずれの実施態様に従っても、当該オピオイドアンタゴニストは、好ましくは末梢性オピオイドアンタゴニストであり、さらにより好ましくはメチルナルトレキソンである。
【0019】
本発明は腫瘍又は癌の内皮細胞の遊走及び/又は増殖を減弱する方法を提供し、当該方法は当該細胞を抗遊走性量又は抗増殖性量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。他の側面において、本発明は、癌に関連する血管形成(angiogensis)を減弱する方法を提供する。従って、本発明は、ヒト癌患者を治療すること、例えば、当該患者の癌組織へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む当該患者の癌性組織における血管形成(angiogensis)を減弱する方法によってヒト癌患者を治療することを熟慮する。
【0020】
本発明はまた、当該治療を必要とする患者へ血管の形成を阻害するのに有効な量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む異常な血管新生の治療方法を提供する。
本発明にはまた、腫瘍細胞又は腫瘍組織を増殖を阻害する量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む動物組織における腫瘍進行(tumor progression)及び腫瘍転移を減弱する方法、及び患者へ少なくとも1つのオピオイドアンタゴニストを過剰増殖細胞の増殖を減弱するのに有効な量で投与することを含む当該患者における過剰増殖細胞の増殖を減弱する方法が含まれる。
【0021】
ある実施態様において、当該方法は、癌の発生(development)又は再発を治療若しくは阻害するために、末梢性オピオイドアンタゴニスト、特にノルオキシモルフォンの第四級誘導体を癌の患者へ投与することを含み、癌は血管形成(angiogenesis)を伴うか又は伴わない。血管形成(angiogenesis)を伴わない癌には、新脈管構造(neovasculature)によって栄養を供給される固形癌の形成を含まないものを含む。ある種の血液細胞癌、例えば、白血病(白血球細胞又は白血球の癌)、リンパ腫(リンパ節又はリンパ球細胞で発生する)、及び骨髄成分の癌のいくつかは、このカテゴリーに分類される。従って、本発明のある側面において、治療方法が提供される。該方法は、細胞の異常増殖を特徴とする疾患を伴う患者へ有効量の末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。ある実施態様においては、該細胞は癌細胞である。該癌細胞は、血管形成(angiogenesis)を伴う又は血管形成(angiogenesis)を伴わない癌細胞であってもよい。ある実施態様においては、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。
【0022】
さらなる実施態様において、本発明は、末梢性オピオイドアンタゴニストと、オピオイド若しくはオピオイドアンタゴニストではない少なくとも一つの他の治療剤とを患者へ共投与する、癌の治療方法を提供する。適した治療剤としては、抗癌剤(化学療法剤及び抗悪性腫瘍剤を含む)、並びに他の抗血管形成剤(antiangiogensis agent)が挙げられる。オピオイドアンタゴニストの種々の抗癌剤、放射線療法又は他の抗血管形成剤(antiangiogensis agent)との共投与が癌性細胞への著しく増強された抗増殖性効果を生じさせることができ、従って、増大した治療効果をもたらすことが見出され、例えば、ある種の腫瘍へ末梢性オピオイドアンタゴニストを用いることによって、他の治療レジメンへのそれらの応答を増強することができる。特に、著しく増大した抗血管形成効果(antiangiogenic effect)であってもよいがこれに限定されない、著しく増大した抗増殖性効果は、以下により詳細に記載される共投与される組合せで得られる。既存のレジメンを増強することができるだけではなく、新たなレジメンも可能であり、従って、例えば、薬剤又は放射線を単独で用いる治療レジメンと比較して、抗癌化合物のより低い濃度、放射線のより低い線量、又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drug)のより低い濃度がもたらされる。従って、抗癌剤、他の抗血管形成剤(antiangiogenic drug)又は放射線療法に伴う有害副作用が、抗癌剤、他の抗血管形成剤(antiangiogenic drug)又は放射線療法を単独で用いる際に通常観察されるよりも、かなり低減した治療を提供する潜在性が存在する。従って、本発明のある側面において、治療方法が提供される。該方法は、細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ、有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤(antiangiogenic agent)を投与することを含む。ある実施態様においては、該細胞は癌細胞である。ある実施態様においては、該オピオイドアンタゴニストは末梢性オピオイドアンタゴニストである。ある実施態様においては、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。本発明の他の側面において、医療介入後の患者における癌の再発リスクを低減する方法が提供される。該方法は、該医療介入前(before)、間(during)又は後(after)に、該患者へ、有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤(antiangiogenic agent)を投与することを含む。ある実施態様において、該オピオイドアンタゴニストは末梢性オピオイドアンタゴニストである。ある実施態様において、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。
【0023】
ある実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、隣接作用的に(peri-operatively)使用される。“隣接作用的に(peri-operatively)”とは、外科手術又は外科的若しくは内視鏡的な方法、例えば、大腸内視鏡、胃腹腔鏡及びとりわけ腫瘍の除去を含む外科手術又は外科的方法の直前(例えば、これらに備えて)、それらの間及び/又はそれらの直後であることを意味する。オピオイドアンタゴニストは、腫瘍の再発及び/又は腫瘍の転移、とりわけそれらに関連する血管形成(angiogensis)に起因する腫瘍の再発及び/又は腫瘍の転移を減弱するように作用する。
【0024】
オピオイドアンタゴニストが好ましくは持続的な投薬レジメン、例えば、最小血中レベルを維持する、さらにより好ましくは比較的一定の血中レベルを維持するレジメンで与えられることが見込まれる。本発明の方法が異常な血管形成(angiogensis)に関連する特定の疾患における予防的有用性を有していてもよいことが熟慮される。従って、本発明は哺乳類における疾患の出現又は再出現を抑制する方法を提供し、当該疾患は異常な血管形成(angiogensis)であってもよい好ましくない内皮細胞遊走又は内皮細胞増殖を特徴とし、当該方法は当該治療を必要とする哺乳類へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含み、当該疾患は癌、鎌状赤血球貧血、眼の血管新生疾患(ocular neovascular disease)、糖尿病、眼の網膜症(ocular retinopathy)又は腎臓、眼若しくは肺における他の好ましくない内皮細胞増殖である。従って本明細書で使用されるとおり、好ましくない内皮細胞増殖又は内皮細胞遊走を特徴とする疾患を有する患者を治療することには、当該疾患を阻害又は治療するために活動性疾患を有する患者を治療すること及び疾患の再発生を阻害するために患者を治療することが含まれる。例えば、患者は固形腫瘍を除去されてもよく、さらに患者は当該腫瘍が再発生するのを阻害するために治療を受けてもよい。
【0025】
細胞増殖を減弱することで、本発明は哺乳類において血管内皮増殖因子(VEGF)を発現する細胞の異常な細胞増殖の治療のための方法を提供し、当該方法は当該哺乳類へ治療的有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。本発明にはまた、組織又は内皮細胞の集団を少なくとも1つのオピオイドアンタゴニストのVEGF誘導性血管形成(angiogensis)を阻害するのに有効な条件下の量及び血管形成疾患(angiogenic disease)を治療するのに有効な条件下の量を含む組成物に接触させることを含む血管形成疾患の治療方法だけでなく、癌性組織におけるVEGF産生を阻害するのに十分な量のオピオイドアンタゴニストを患者へ投与することを含む当該患者における癌性組織の治療方法も含まれる。
【0026】
他の側面において、本発明は血管形成(angiogensis)、とりわけオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)(例えば、腫瘍細胞の)を阻害する又は低減する方法を提供し、当該方法は、オピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを血管形成(angiogensis)を経験する細胞へ投与すること又は提供することによる。さらなる側面において、本発明は、オピオイド治療を受けている患者における又は血管形成(angiogensis)が内因性オピオイドによって誘導される患者におけるオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)の治療方法を提供する。前者のグループは概して、オピオイド基盤の疼痛管理中の癌患者である。当該方法は、オピオイドアンタゴニストを抗血管形成量(antiangiogenic amount)で、例えば、オピオイド誘導性血管形成(angiogensis)を阻害する又は低減するのに十分な量で患者へ投与することを含む。オピオイド治療を受けている患者において、当該オピオイドと末梢性オピオイドアンタゴニストは共投与されてもよい。従って、末梢性オピオイドアンタゴニストは腫瘍細胞でのオピオイドの血管形成効果(angiogenic effects)を阻害する又は低減するため及び腫瘍の増殖を減弱するために用いることができる。適切なオピオイドアンタゴニストは概して、種々の異なる部類の化合物に属する複素環式アミン化合物であってもよい。例えば、ある部類は適切にモルフィナンの第三級誘導体、及びとりわけ、ノルオキシモルフォンの第三級誘導体である。ある実施態様において、当該ノルオキシモルフォンの第三級誘導体は、例えば、ナロキソン又はナルトレキソンである。
【0027】
適切な末梢性オピオイドアンタゴニストはまた概して、種々の異なる部類の化合物に属してもよい複素環式アミン化合物である。例えば、ある部類は適切にモルフィナンの第四級誘導体、及びとりわけノルオキシモルフォンの第四級誘導体である。ある実施態様において、当該ノルオキシモルフォンの第四級誘導体は、例えば、N-メチルナルトレキソン(又は、簡単にメチルナルトレキソン)である。他の部類は、N置換型ピペリジンである。ある実施態様において、当該N-ピペリジンは、ピペリジン-N-アルキルカルボニラート、例えば、アルビモパンのようなものである。本発明の方法に有用であってもよい他の部類の化合物は、ベンゾモルファンの第四級誘導体である。
【0028】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストはμオピオイドアンタゴニストであってもよい。他の実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、κオピオイドアンタゴニストであってもよい。本発明はまた、μアンタゴニストの組み合わせ、κアンタゴニストの組み合わせ及びμアンタゴニストとκアンタゴニストの組み合わせ、例えば、メチルナルトレキソンとアルビモパンの組み合わせ又はナルトレキソンとメチルナルトレキソンの組み合わせを含む1つを超えるオピオイドアンタゴニストの投与をも包含する。
【0029】
さらなる実施態様において、本発明は、オピオイドを受けている患者におけるオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)の治療方法を提供し、末梢性オピオイドアンタゴニスト及びオピオイド若しくはオピオイドアンタゴニストではない少なくとも1つの他の治療薬が当該患者へ共投与される。適切な治療薬としては、他の抗血管形成剤(anti-angiogensis agents)だけでなく抗癌剤(化学療法剤及び抗悪性腫瘍剤を含む)が挙げられる。
【0030】
さらに他の側面において、本発明は、医療介入(当該介入は、外科手術、例えば、肺の外科手術、外科的及び内視鏡的方法、例えば、大腸内視鏡、胃腹腔鏡、化学療法などであってもよいが、これらに限定されない)後の癌又は腫瘍の再発リスクを低減する方法を提供し、当該方法は、癌患者へオピオイドアンタゴニストを共投与することを含む。従って、本発明は例えば、手術後の再発、例えば患者における乳癌の再発を最小限にする方法を熟慮し、当該方法は、当該患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。本発明に従う末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、MNTXはまた、内皮細胞におけるVEGF、血小板由来増殖因子(PDGF)又はスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の刺激性若しくは誘導性細胞増殖を阻害することもできる。
【0031】
本発明は、添付の図面と共に本明細書に提示される詳細な説明及び特定の実施態様を参照することによってよりよく理解され、十分に理解されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、内皮細胞の異常な若しくは好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱する方法を提供する。従って、本発明は、オピオイドアンタゴニストを使用することによる患者の組織又は器官における血管形成(angiogensis)を減弱する方法並びに哺乳類における血管形成に関連する(angiogenic related)疾患及び他の過剰増殖性疾患を治療するための新たなアプローチを提供する。例えば、上述のとおり、固形腫瘍は、当該腫瘍の内部の細胞へ栄養分を届けるための新たな血管の生成に依存する。血管形成(angiogensis)に関して要求される増殖因子は当該腫瘍細胞によって生成することができるか又はその代わりとしてオピオイドのような外因性因子が新たな血管増殖を刺激することができる。本発明はオピオイドアンタゴニストを使用することによって、当該腫瘍細胞自身ではなくむしろ当該腫瘍の内部での新たな血管の生成が標的である当該腫瘍の治療への新たな治療的アプローチを提供する。当該治療は、抵抗性腫瘍細胞の発生をそう簡単にもたらさない。
【0033】
本明細書に記載されるオピオイドアンタゴニストは、内因性若しくは外因性のオピオイド及びVEGF、PDGF、S1Pなどのような増殖因子によって誘導される増殖及び遊走を阻害する。末梢性オピオイドアンタゴニストはとりわけ、オピオイド誘導性及び増殖因子誘導性の内皮細胞の増殖及び遊走を阻害するかなりの有効性を示した。末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン(MNTX)は、濃度依存的にオピオイド誘導性及び増殖因子誘導性の増殖及び遊走の両方を阻害した。さらに、ナロキソンはまた、オピオイド誘導性の内皮遊走を阻害した。しかしながら、注目すべきは、DAMGO誘導性の内皮細胞の遊走のナロキソン阻害が比較的高いマイクロモル濃度のナロキソンで起きたことである。さらに、オピオイドアンタゴニスト及びとりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストであるMNTXが、レセプターリン酸化の阻害及び/又はトランス活性化の阻害及びそれに続くRhoA活性化の阻害によってアゴニスト誘導性の内皮細胞(EC)増殖及び遊走を阻害することがここに発見された。当該アゴニストは、内因性及び/又は外医院性のオピオイド、血管形成因子(angiogenic factors)(VEGF)及び他の増殖刺激性因子及び/又は遊走刺激性因子(PDGF、S1P、S1P3レセプター、RhoAなど)であってもよい。これらの結果は、オピオイドアンタゴニストによる血管形成(angiogensis)の阻害が他の疾患のうちで癌に関して有用な治療介入となり得ることを示唆する。
【0034】
本発明はまた、癌細胞それ自身の異常な若しくは好ましくない増殖を減弱する方法も提供する。本発明のこの側面は、血管形成活性(angiogenic activity)の存在又は非存在を伴う状態に有用である。血管形成活性(angiogenic activity)の非存在は、以下の特徴の一つ以上によって証明される:非固形腫瘍又は既存の血管の反発(repulsion)が存在する及び/又は腫瘍中に微小血管が存在しない腫瘍、限定的な増殖、例えば、インビボで約1mmまでの直径(その時点でさらなる拡大(expansion)が停止される)、血管形成性フェノタイプ(angiogenic phenotype)へ切り替わるまで宿主へ無害である等。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)は、完全に無血管性であってもよいし又は赤血球なしで空の管腔を含みうる。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)と血管形成性腫瘍(angiogenic tumor)との間の全体としての違いは(つまり、白腫瘍(white tumor)対赤腫瘍(red tumor))、血管形成性転換(angiogenic switch)が既に低酸素の腫瘍で達成された後の血流の発生(onset)に付随する反応性充血に起因する可能性が最も高い。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)系列の例としては、乳腺癌、骨肉腫、神経膠芽腫、胚腎臓腫瘍(embryonic kidney tumor)等が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍の休眠に関与することのできる多くの因子が存在し、非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)の腫瘍拡大(tumor expansion)に関する律速段階は、血管形成(angiogenesis)及び/又は分化プログラム、腫瘍細胞生存、宿主への応答等の欠如により制御されうる。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)のいくらかは血管形成性フェノタイプ(angiogenic phenotype)へ転換することはないが、多くは血管形成性(angiogenic)かつ有害なフェノタイプへの自然形質転換を経験する。従って、非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)の治療は、治療上重要である。
【0035】
血管形成(angiogenesis)を伴わない癌は、新脈管構造によって栄養を供給される固形癌の形成を含まないものを含む。ある種の血液細胞癌、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及び有毛細胞白血病を含む白血病;ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、中枢神経系原発リンパ腫を含むリンパ腫(リンパ節又はリンパ細胞で生じる);並びにユーイング肉腫及び骨肉腫を含む骨髄成分の癌のいくつか等は、このカテゴリーに分類することができる。
【0036】
本発明のいずれの実施態様が明らかにされる前に、本発明が以下の記載で示される又は添付される図面の描画で明らかにされる本発明の構造及び機能の当該詳細へのその適用に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施態様であってもよく、種々の様式で実施することができ又は実行することができる。また、本明細書で用いられる表現及び専門用語が記述の目的であり、限定するものとみなされるべきでないことも理解されるべきである。本明細書における“含む(including)”、“含む(comprising)”又は“有する(having)”のような用語及びそれらのバリエーションの使用は、付加的な事項だけでなくその後に記載される事項及びそられの対応する言葉を包含することを意図する。
【0037】
特に断りのない限り、技術用語は慣例的用法に従って使用される。しかしながら、本明細書で使用されるとおり、以下の定義が本発明の理解をする際に技術を有する実施者を助けるのに有用であってもよい。
【0038】
“患者”は、ヒト、イヌ、ネコ及びウマについて言及する。
“慢性的オピオイド使用”は、当業界で周知のとおり、事前のオピオイド使用の結果として治療効果を実現するのに十分に高いレベルのオピオイドに関する必要性について言及し、またこれにより特徴付けられる。本明細書で使用されるとおりの慢性的オピオイド使用は、1週間以上の毎日のオピオイド治療又は少なくとも2週間の断続的オピオイド使用であってもよい。
【0039】
“アルキル”は、飽和され、当該鎖中に1個〜約10個の炭素原子を有する直鎖、分鎖又は環状であってもよい脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。
“低アルキル”は、1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基について言及する。
【0040】
“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、当該鎖中に2個〜約10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルケニル基の例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基が挙げられる。
【0041】
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、当該鎖中に2個〜約10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルキニル基の例としては、エチニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基が挙げられる。
【0042】
“アルキレン”は、1個〜約6個の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該アルキレン基は、直鎖、分鎖又は環状であってもよい。当該アルキレン基の間に1個以上の酸素原子、硫黄原子又は置換されていてもよい窒素原子が挿入されていてもよく、当該窒素置換基は既に記載されたとおりのアルキルである。
【0043】
“アルケニレン”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むアルキレン基について言及する。アルケニレン基の例としては、エテニレン(-CH=CH-)及びプロペニレン(CH=CHCH2-)が挙げられる。
【0044】
“シクロアルキル”は、約3個〜約10個の炭素を有するいずれの安定的な単環式又は二環式の環、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該シクロアルキル基は、1つ以上のシクロアルキル基置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0045】
“シクロアルキル置換型アルキル”は、末端炭素がシクロアルキル基で、好ましくは、C3−C8シクロアルキル基で置換される直鎖アルキル基、好ましくは低アルキル基について言及する。シクロアルキル置換型アルキル基の例としては、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロプロピルメチルなどが挙げられる。
【0046】
“シクロアルケニル”は、約4個〜約10個の炭素を有するオレフィン的に(olefinically)不飽和な脂環式基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。
“アルコキシ”は、アルキル-O-基について言及し、アルキルは上述のとおりである。アルコキシ基の例としては例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びヘプトキシが挙げられる。
“アルコキシ-アルキル”は、アルキル-O-アルキル基について言及し、アルキルは上述のとおりである。
【0047】
“アシル”は、アルキル-CO基を意味し、アルキルは上述のとおりである。アシル基の例としては、アセチル、プロパノイル、2-メチルプロパノイル、ブタノイル及びパルミトイルが挙げられる。
“アリール”は、約6個〜約10個の炭素を含む芳香族炭素環式遊離基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該アリール基は、1つ又は2つ又はそれ以上のアリール基置換基で置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0048】
“アリール置換型アルキル”は、末端炭素が、置換されていてもよいアリール基で、好ましくは、置換されていてもよいフェニル環で置換される直鎖アルキル基、好ましくは、低アルキル基について言及する。アリール置換型アルキル基の例としては例えば、フェニルメチル、フェニルエチル及び3-(4-メチルフェニル)プロピルが挙げられる。
【0049】
“複素環”は、約4員〜約10員を含む単環式環系炭素環式遊離基又は多環式環系炭素環式遊離基であって、当該環の1つ以上の員が炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素又は硫黄であるもの、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該複素環基は、芳香族又は非芳香族であってもよい。複素環基の例としては例えば、ピロール及びピペリジン基が挙げられる。
【0050】
“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードについて言及する。
“末梢性”とは、オピオイドアンタゴニストに関して、主に生理系及び中枢神経系の外側の構成部分(component)で作用するオピオイドアンタゴニストを表し、例えば、オピオイドの主要な効果を阻害するのに有効な量で、それらは容易には血液脳関門を横断しない。言い換えれば、末梢性に投与される際に、末梢性オピオイドアンタゴニストはオピオイドの鎮痛効果を有効に阻害せず、例えば、それらはオピオイドの鎮痛効果を低減しない。例えば、本発明の方法で採用される末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、低減された中枢神経系(CNS)活性を発揮する又は実質的に何らの中枢神経系(CNS)活性を発揮しない一方で、胃腸組織に関して高レベルの活性を発揮する。本発明の方法で採用される末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、CNSにおいては約5% 〜 約15 % 未満しかそれらの薬理学的活性を適切に発揮せず、最も適切には約0%(例えば、CNS活性なし)である。末梢性オピオイドアンタゴニストの非中枢作用の特性は多くの場合、当該分子の電荷、極性及び/又はサイズに関連する。例えば、中枢作用性第四級アミンオピオイドアンタゴニストが中性分子である一方で、末梢性に作用する第四級アミンオピオイドアンタゴニストは、プラスに帯電される。本発明において有用な末梢性オピオイドアンタゴニストは概して、μオピオイドアンタゴニスト及び/又はκオピオイドアンタゴニストである。
【0051】
本明細書で用いられるとおり、“抗血管形成(antiangiogensis)”又は“抗血管形成性(antiangiogenic)”は、新たな血管の増殖を減弱する、例えば、阻害する、低減する又は調節する分子/化合物の能力、概して及び例えば、特定の増殖因子の存在する培養下のヒト微小血管内皮細胞の遊走及び増殖を低減する又は阻害する分子/化合物の能力について言及することを意図する。上述のとおり、内皮細胞による新たな血管の形成には、当該細胞の遊走、増殖及び分化が含まれる。
【0052】
本発明の方法の以下の記載において、特に定めのない限り、プロセス処置は室温及び大気圧で実行される。本明細書に列挙されるいずれの数値範囲もが下位値から上位値までの全ての値を含むことも明確に理解され、例えば、列挙される最低の値から最高の値までの間の数値のあらゆる可能な組み合わせも本出願に明示的に記載されていると考えられるべきである。例えば、濃度範囲又は有益な効果の範囲が1% 〜 50 % として記載される場合には、2% 〜 40 %、10 % 〜 30 % 又は1% 〜 3 % などのような値が本出願に明示的に列挙されることを意図する。これらは、具体的に表されるものの例にすぎない。
【0053】
ある側面において、本発明は、患者の組織若しくは器官における、異常な又は好ましくない細胞の、とりわけ、内皮細胞の遊走及び/又は増殖、並びに異常な又は好ましくない血管形成(angiogenesis)を減弱する方法に関する。当該方法は、1つ以上のオピオイドアンタゴニストを、内皮細胞の遊走及び増殖並びに血管形成(angiogenesis)を阻害するのに有効な量で、患者の組織又は器官の内皮細胞へ提供すること又は投与することを含む。当該血管形成(angiogenesis)は一つには、オピオイド治療、とりわけ癌患者における疼痛管理のためのオピオイド治療を受けること又は高レベルの内因性オピオイドを有することの結果であってもよい。
【0054】
モルヒネ及びμアゴニストであるエンケファリンDAMGO([D-Ala2, N-McPhe4, Gly5-ol]エンケファリン)が各々、例えば、ケモタキシスアッセイ(下記の実施例において詳述されるとおり)又は腫瘍血管形成(angiogenesis)における因子及び腫瘍血管形成に影響を及ぼす薬剤を同定するために用いられる他の同様のアッセイによって測定されるとおり、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と同様に内皮細胞の遊走を濃度依存的に上昇させることが観察された。モルヒネの臨床的に関連する濃度で、当該効果の大きさは、VEGFによって実現される大きさの約 70 % である。当該モルヒネを基盤とする内皮細胞の遊走は、μオピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン(MNTX)によって濃度依存的様式で低減される。例えば、モルヒネによって誘導される内皮細胞の遊走は、10-7M 程度の低い濃度において、10-7MのMNTXによって著しくブロックされる(図2)。当該減弱は、内皮細胞の遊走がμオピオイドレセプター(MOR)へのモルヒネの作用によって介在されることを強く示唆する。下記の実施例で記載されるとおり、他のオピオイドレセプターでなくてむしろMORによる当該効果は、選択性の高い合成エンケファリンμアゴニストであるDAMGOもまた遊走を誘導することを示す実験によって確認される。DAMGOによって誘導される当該遊走性効果もまた、MNTXによってブロックされる(図3)。
【0055】
ある総合的な概説(Neumann et al. Pain 1982;13:247-52)において、癌患者における鎮痛は、モルヒネの定常状態濃度の範囲及び 6 ng/mL 〜 364 ng/mL の範囲の血漿濃度と関連していた。十分に臨床投与量の範囲にある 100 ng/mL で内皮細胞の遊走を引き起こすモルヒネの効果が観察された。従って、本明細書において本発明者らは、MNTXの血漿レベルを約 25 ng/mL 〜 約 150 ng/mL の最低レベルの血漿MNTXに維持するMNTXの投与量が適切であると考えている。当該投与量は達成可能であり、また十分に許容される(Yuan et al., J Clin Pharmacol 2005;45:538-46)。
【0056】
経口で与えられる他の選択的な末梢性オピオイドアンタゴニストであるアルビモパンは、手術後のイレウスの予防及びオピオイド誘導性の便秘の管理に関して開発の後期にある(Moss et al., Pain relief without side effects: peripheral opioid antagonists. In Schwartz, A.J., editor. 33rd ASA Refresher Course in Anesthesiology. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins (in press))。膜を横断するアルビモパンのいくらかの透過性が存在し(J. Foss, et al., Clin. Pharm. & Ther. 2005, PII-90, p. 74)、従って、アルビモパンは経口的に与えられる際でさえ鎮痛に影響を及ぼすことなくいくつかのオピオイドの全身作用を戻す能力を保有しているかもしれない。
【0057】
いずれの特定の学説によって束縛されることなく、MNTXはナロキソンと違って生理的pHで荷電される分子であるので、内皮細胞の遊走へのμオピオイドの効果の機構は膜レベルで起こるのかもしれない。VEGFがレセプターチロシンキナーゼによって作用する一方で、モルヒネはGタンパク結合型レセプターを介して作用する。μアゴニスト及びVEGFの作用が独立したものであるかもしれない一方で、機構としてのレセプタートランス活性化の証拠が浮かびつつある。従前の研究は、百日咳毒素依存性GPCRがVEGFレセプター2/FLK1をトランス活性化することを明らかにした(Zeng, H. et al., J. Biol. Chem. 2003;278:20738-45)。当該様式によって、モルヒネはF11c−1をトランス活性化し、内皮細胞増殖及び腫瘍増殖が発生しうる環境を促進することができる。T241繊維肉腫細胞で感染させるMORノックアウトマウスの最近の研究は、コントロールに対するモルヒネ処理されたマウスにおける腫瘍増殖の発生頻度の著しい差及びF11c−1発現の10倍の上昇を明らかにし、モルヒネ処理されたKOマウスにおける上昇は全くなかった(K. Gupta、私信)。これは、モルヒネが、おそらくFLK1のリン酸化をトランス活性化することによって、内皮細胞増殖を刺激し、腫瘍細胞増殖を促進することのさらなる証拠を提供する。従って、本発明は、他の末梢性オピオイドと同様にMNTXをVEGFを標的にする現行の治療と共に使用する潜在的な臨床戦略を提供する。レセプタートランス活性化による直接的な効果も起こりうるが、腫瘍の増殖に関わる潜在的な付加的因子はおそらく、疼痛及び炎症のインテグレーターとしてのケモカインの役割であろう。この主題における最近の概説(White et al., Nature Rev. Drug Discovery 2005;4:834-44)もまた、オピオイドレセプターを活性化する際の白血球に関する見込まれる役割を示唆する。
【0058】
さらに、モルヒネ、DAMGO及びVEGFがRhoAを活性化し、これがMNTXのようなオピオイドアンタゴニストによって阻害されることが観察された。RhoAは、血管形成(angiogensis)に関わる重要なシグナル伝達分子である(Aepfelbacher et al., 1997; Cascone et al., 2003; Hoang et al., 2004; Liu and Sanger, 2004)。VEGFレセプターのトランス活性化は、オピエート誘導性のRhoA活性化のために重要である。RhoA発現を静めることはオピオイド誘導性及びVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走をブロックし、アゴニスト誘導性のEC血管形成活性(angiogenic activity)におけるRhoAの活性化に関する役割を明らかにした。MNTX介在性のRhoA活性化の減弱は、オピオイド誘導性血管形成(angiogensis)及びVEGF誘導性血管形成(angiogensis)におけるMNTXの阻害性の役割に重要であるかもしれない。
【0059】
モルヒネ及び他のオピオイドは臨床投与量で内皮細胞の遊走を促進するので、本発明は血管形成プロセス(angiogenic process)を頼りにする腫瘍を有するかなりの投与量のオピオイド及び持続性投与量のオピオイドを受ける患者のためのオピオイドアンタゴニスト治療において治療的価値を有していてもよい。さらに、本発明者らの臨床的な注目は外因的に投与されるモルヒネに集中されてきた一方で、ストレス若しくは疼痛によって放出される内因性オピオイドもまた、内皮細胞の遊走に影響を及ぼしてもよい。下記の実施例において詳述される内皮細胞の遊走実験に基づいて、MNTX及びオピオイドアンタゴニストは概して、外因性オピオイド投与がなくても抗血管形成治療(antiangiogenic therapy)として治療的価値を有する(本明細書に詳述されるとおり)。本発明の方法が、腫瘍の内部での及び腫瘍への血管の成長を阻害する又は低減することが考えられる。腫瘍の内部での血管の成長を阻害することは、栄養分及び酸素が特定のサイズを超える増殖を支持するために当該腫瘍へ供給されるのを妨げる。血管の数又は他の腫瘍の数を最小限にすることはまた、当該腫瘍が転移する確率を減少させる。
【0060】
本発明は、血管形成プロセス(angiogenic process)を頼りにする腫瘍を有する患者のためのオピオイドアンタゴニスト治療において治療的価値を有していてもよい。血管形成プロセス(angiogenic process)に頼る腫瘍は、固形腫瘍、白血病及び骨髄腫である。固形腫瘍としては、副腎皮質癌、膀胱の腫瘍:扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、尿路上皮癌;骨の腫瘍:アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢胞、軟骨芽細胞腫、軟骨種、軟骨粘液線維腫、軟骨肉腫、繊維性骨異形成症、巨細胞腫瘍、骨軟骨腫、骨肉腫;乳腺腫瘍:分泌腺管癌、脊索腫;結腸腫瘍:結腸直腸腺癌;眼腫瘍:後ブドウ膜黒色腫(posterior uveal melanoma)、骨繊維形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、頭部及び頚部の扁平上皮癌(squamous cell carcinoma);腎臓腫瘍:嫌色素細胞性腎癌、腎明細胞癌、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)、腎臓:乳頭状腎細胞癌、原発性腎臓ASPSCR1-TFE3腫瘍(primary renal ASPSCR1-TFE3 tumor)、腎細胞癌:肝腫瘍:肝芽腫、肝細胞癌;肺腫瘍:非小細胞癌、小細胞癌;軟部悪性黒色腫;神経系腫瘍:髄芽細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、アストロサイトの腫瘍、上衣腫、末梢神経鞘腫瘍、クロム親和性細胞腫;卵巣腫瘍:上皮腫瘍、胚細胞性腫瘍、性索間質腫瘍、周囲細胞腫(pericytoma);下垂体腺腫;ラブドイド腫瘍;皮膚腫瘍:皮膚性の良性線維性組織球腫;平滑筋腫瘍:静脈内平滑筋腫症;軟部組織腫瘍:脂肪肉腫、粘液性脂肪肉腫、低グレードの繊維粘液肉腫(low grade fibromyxoid sarcoma)、平滑筋肉腫、胞状軟部肉腫、血管腫様線維性組織球腫(AFH)、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、弾性線維腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液様軟骨肉腫(extraskeletal myxoid chondrosarcoma)、炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor)、脂肪芽細胞腫、脂肪腫/良性脂肪腫瘍(benign lipomatous tumors)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍(malignant lipomatous tumors)、悪性筋上皮腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma);睾丸の腫瘍:生殖細胞腫瘍、精母細胞セミノーマ(spermatocytic seminoma):甲状腺腫瘍、未分化(未分化の)癌、膨大細胞腫瘍(oncocytic tumors)、乳頭癌;子宮腫瘍:子宮頚部癌、子宮内膜癌、平滑筋腫などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
本発明のある実施態様において、当該腫瘍は、前立腺癌、結腸癌のような胃腸腫瘍又は膵癌であり、本発明の化合物は、本明細書に記載されるとおりの他の抗癌剤と共に共投与される。
【0062】
本発明に従うオピオイドアンタゴニストには、中枢的に(centrally)作用するオピオイドアンタゴニスト及び末梢的に作用するオピオイドアンタゴニストの両方が含まれる。特に価値が高いそれらのアンタゴニストは適切に末梢性オピオイドアンタゴニストであることが熟慮される。μオピオイドアンタゴニストがとりわけ適切であってもよく、とりわけ、末梢性μオピオイドアンタゴニストが適切であってもよい。オピオイドアンタゴニストは、当該末梢性に制限される特性を維持しつつ構造を変化することができる化合物の種類を形成する。これらの化合物には、第三級モルフィナン及び第四級モルフィナン、とりわけ、ノルオキシモルフォン誘導体、N-置換型ピペリジン及びとりわけ、ピペリジン-N-アルキルカルボキラート及び20の第三級及び第四級のベンゾモルファン(20 tertiary and quaternary benzomorphans)が含まれる。末梢的に制限されるアンタゴニストは、構造が変化される間、概して極性を荷電され及び/又は高分子量であり、その各々は血液脳関門をそれらのアンタゴニストが横断するのを妨害する。
【0063】
血液脳関門を横断し、中枢的に(centrally)(及び、末梢的に)活性を有するオピオイドアンタゴニストの例としては例えば、ナロキソン、ナルトレキソン(それらの各々は、Baxter Pharmaceutical Products, Inc. から商業的に入手可能である)及びナルメフェン(例えば、DuPont Pharma から入手可能)が挙げられる。これらは、中枢神経系における血管形成(angiogenesis)を減弱するのに又は疼痛管理若しくは他のオピオイド治療に関して治療されていない患者における血管形成(angiogenesis)を減弱するのに価値を有していてもよい。
【0064】
本発明に有用な末梢性オピオイドアンタゴニストは、第四級モルフィナン誘導体である化合物、さらにとりわけ、式(I)の第四級ノルオキシモルフォンであってもよい。
【化1】
【0065】
(式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり、X-は、アニオン、とりわけ、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はメチルスルファートアニオンである。)式(I)のノルオキソモルフォン誘導体は例えば、参照によって本明細書に取り込まれる米国特許No. 4,176,186 の手順に従って調製することができる;さらに、米国特許Nos. 4,719,215; 4,861,781; 5,102,887; 5,972,954 及び 6,274,591, 米国特許出願 Nos. 2002/0028825 及び 2003/0022909; 並びに PCT公開 Nos. WO 99/22737 及び WO 98/25613 も参照のこと、これらの全ては、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0066】
特に価値のある式(I)の化合物は、式中Rがシクロプロピルメチルである式(II)で表されるとおりのN-メチルナルトレキソン(又は簡単に、メチルナルトレキソン)である。
【化2】
【0067】
(式中、X-は、上述のとおりである。)メチルナルトレキソンは、オピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。メチルナルトレキソンは塩として存在し、従って、本明細書において用いられる“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”は、塩を包含する。“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”は具体的に挙げると、メチルナルトレキソンの臭化物塩、塩化物塩、ヨウ化物塩、カルボナート塩及びスルファート塩であってもよいが、これらに限定されない。本文献においてMNTXの臭化物塩に関して用いられる名前としては、メチルナルトレキソンブロミド;N-メチルナルトレキソンブロミド;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド; SC-37359、MRZ-2663-BR 及び N-シクロプロピルメチルノロキシ-モルヒネ-メトブロミドが挙げられる。メチルナルトレキソンは例えば、Mallinckrodt Pharmaceuticals, St. Louis, Mo から商業的に入手可能である。メチルナルトレキソンは、水に溶けやすい白色結晶性粉末として、概して臭化物塩として提供される。当該化合物は、逆相HPLCにより提供されるとおり 99.4 % 純粋であり、同じ方法により 0.011 % 未満の四級化されていないナルトレキソンを含む。メチルナルトレキソンは、例えば、約5mg/mLの濃度の無菌溶液として調製することができる。
【0068】
他の適切な末梢性オピオイドアンタゴニストは、N-置換型ピペリジン、とりわけ、式(III)で表されるとおりのピペリジン-N-アルキルカルボキシラートであってもよい。
【化3】
【0069】
(式中、
R1は、水素又はアルキルであり;
R2は、水素、アルキル又はアルケニルであり;
R3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R4は、水素、アルキル又はアルケニルであり;
Aは、OR5又はNR6R7であり;
R5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R6は、水素又はアルキルであり;
R7は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル、アリール置換型アルキル又はアルキレン置換型Bであるか、又は結合される窒素原子と共にR6及びR7はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Bは、
【化4】
【0070】
であり;
R8は、水素又はアルキルであり;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR8及びR9はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Wは、OR10、NR11R12又はOEであり;
R10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルケニル又はアリール置換型アルキルであり;
R11は、水素又はアルキルであり;
R12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル、アリール置換型アルキル又はアルキレン置換型C(=O)Yであるか、又は結合される窒素原子と共にピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Eは、
【化5】
アルキレン置換型(C=O)D又は-R13OC(=O)R14であり;
R13は、アルキル置換型アルキレンであり;
R14は、アルキルであり;
Dは、OR15又はNR16R17であり;
R15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換型アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル又はシクロアルケニル置換型アルキルであり;
R17は、水素又はアルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR16及びR17はピロール若しくはピペリジンからなる群より選択される複素環を形成し;
Yは、OR18又はNR19R20であり;
R18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R19は、水素又はアルキルであり;
R20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR19及びR20はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
R21は、水素又はアルキルであり;さらに、
nは、0〜4である。)
【0071】
価値を有していてもよい特定のピペリジン-N-アルキルカルボニラートは、下記の式(IV)として表されるアルビモパンのようなN-アルキルアミノ-3, 4, 4 置換型ピペリジンである。
【化6】
【0072】
適切なN-置換型ピペリジンは、米国特許 Nos. 5,270,328; 6,451,806; 6,469,030 に開示されるとおりに調製されてもよく、その全ては参照によって本明細書に取り込まれる。アルビモパンは、Adolor Corp., Exton, PA から入手可能である。当該化合物は、適度の高い分子量、両性イオン形態及び極性を有し、これらは血液脳関門への侵入を妨げる。
【0073】
さらに他の適切な末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、第四級ベンゾモルファン化合物であってもよい。本発明の方法で採用される第四級ベンゾモルファン化合物は、低減されたアゴニスト活性しか発揮せず、好ましくは、実質的にアゴニスト活性を全く発揮しない一方で、高いレベルのモルヒネ拮抗作用を発揮する。
【0074】
本発明の方法で採用されてもよい第四級ベンゾモルファン化合物は、以下の式(V)を有する。
【化7】
【0075】
(式中、
R1は、水素、アシル又はアセトキシであり;
R2は、アルキル又はアルケニルであり;
Rは、アルキル、アルケニル又はアルキニルであり、さらに、
X-は、アニオン、とりわけ、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はメチルスルファートアニオンである。)
【0076】
本発明の方法で採用されてもよいベンゾモルファン化合物の特定の第四級誘導体は、式(V)の以下の化合物であってもよい:2'-ヒドロキシ5,9-ジメチル-2,2-ジアリル-6,7-ベンゾモルファニウム-ブロミド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2アリル-6,7-ベンゾモルファニウム-ブロミド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-プロパルギル-6,7ベンゾモルファニウム-ブロミド; 及び 2'-アセトキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-アリ)-6,7ベンゾモルファニウム-ブロミド。
【0077】
本発明の方法で採用されてもよい他の第四級ベンゾモルファン化合物は例えば、米国特許 No. 3,723,440 に記載されるものであり、その全ての開示は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0078】
本発明の方法で採用される化合物は、プロドラッグ形態で存在してもよい。本明細書で用いられるとおり、“プロドラッグ”には、当該プロドラッグが哺乳類患者へ投与される際に、式(I)〜式(V)又はインビボで本発明の方法で採用される他の式若しくは化合物に従う活性親薬剤を放出するいずれの共有結合的に結合されるキャリアも含まれることが意図される。プロドラッグは非常に多くの好ましい医薬品の特性(例えば、溶解性、生物学的利用率、製造など)を向上させることが知られるので、必要に応じて、本発明の方法で採用される化合物はプロドラッグ形態で送達されてもよい。従って、本発明は、プロドラッグを送達する方法を熟慮する。本発明で採用される化合物のプロドラッグは、修飾部(modifications)がありふれた操作又はインビボで切断されて当該親化合物になるような方法で、当該化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてもよい。
【0079】
従って、プロドラッグは例えば、当該化合物中のヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基がいずれの基に結合された本明細書に記載される化合物であって、当該プロドラッグが哺乳類患者へ投与される際に切断されてそれぞれ、遊離型ヒドロキシル、遊離型アミノ又はカルボン酸を形成する前記化合物であってもよい。
【0080】
例としては、アセタート、ホルマート並びにアルコール官能基及びアミン官能基のベンゾアート誘導体; 並びにメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソ-プロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステル、シクロプロピルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル及びフェネチルエステルなどのようなアルキルエステル、炭素環式エステル、アリールエステル及びアルキルアリールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
述べられるとおり、本発明の方法で採用される化合物は、当業者によく知られる多くの方法で調製されてもよい。本発明に関連して開示される全ての調製は、ミリグラムスケール、グラムスケール、マルチグラムスケール、キログラムスケール、マルチキログラムスケール又は医薬品市場向けスケールを含むいずれのスケールでも実施されることが熟慮される。
【0082】
本発明の方法で採用される化合物は1つ以上の非対称的に置換される炭素原子を含んでいてもよく、さらに、光学活性形態又はラセミ形態で単離されてもよい。従って、特定の立体化学形態又は異性体形態が具体的に示唆される場合を除いて、あらゆる鏡像異性体形態、ジアステレオマー形態、ラセミ形態、エピマー形態及び構造のあらゆる幾何異性体形態が意図される。当該光学活性形態の調製の仕方及び単離の仕方は、当業界でよく知られる。例えば、立体異性体の混合物は、ラセミ形態の分割、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、キラルクロマトグラフィー、優先晶出法(preferential salt formation)、再結晶などであってもよいがこれらに限定されない標準的な技術によって又はキラル出発物質からのキラル合成若しくは標的キラル中心の意図的な合成のどちらかによって分離されてもよい。
【0083】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、μオピオイドアンタゴニストであってもよい。他の実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、κオピオイドアンタゴニストであってもよい。本発明はまた、μアンタゴニストの組み合わせ、κアンタゴニストの組み合わせ及びμアンタゴニストとκアンタゴニストの組み合わせ、例えば、メチルナルトレキソンとアルビモパンの組み合わせであってもよい1つを超えるオピオイドアンタゴニストの投与をも包含する。
【0084】
本発明の方法は、他の内皮を基盤とする疾患、例えば、種々の血管形成(angiogenesis)及び/又は増殖関連性腫瘍性疾患及び増殖関連性非腫瘍性疾患、例えば、鎌状赤血球疾患、眼の血管新生疾患(糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症のような)、腎臓若しくは肺における内皮増殖及び乾癬における治療的役割又は予防的役割を提供することを包含する。治療の影響を受けやすい非腫瘍性状態としては、関節リウマチ、乾癬、粥状動脈硬化、糖尿病及び未熟児網膜症を含む他の増殖性網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、加齢性黄斑変性症、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜及び他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水症、心膜液貯留(心膜炎と関連するような)及び胸水貯留が挙げられる。例えば、鎌状赤血球疾患においてモルヒネが増殖性網膜症を引き起こすことが明らかとなった(Gupta et al., 私信)。オピオイドアンタゴニストでの治療が、網膜症、とりわけ、積極的なオピオイド治療状態にあり、数週間、数ヶ月又は数年間の慢性的な治療であってもよい長期間オピオイドを受ける鎌状赤血球患者におけるオピオイド誘導性網膜症を著しく阻害することが見込まれる。
【0085】
本発明の方法はまた、他の治療法(therapeutic modalities)での治療後、例えば、外科的介入後の悪性腫瘍又は新生物(neoplasm)の再発リスクを低減することに価値を有することも考えられる。例えば、本発明は、手術後の癌の再発リスクを低減するための方法を提供する。癌は例えば乳癌又は前立腺癌であってもよく、低減されるリスクは、当該癌を患う患者へ有効量のオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを提供することによって達成されてもよい。例えば、上述のとおり、乳癌外科手術を受けている患者は、当該患者が局所麻酔又は全身麻酔のどちらを受けているか(彼らの最初の外科手術中、モルヒネで)に応じて、2年間〜4年間での再発率における著しい差(4倍の)を有していた。本発明に従うオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストの外科的治療との共投与は、癌の再発率を低減するのに価値を有していてもよい。
【0086】
本発明がまた、作用される細胞又は患者へVEGF誘導性血管形成(angiogenesis)を阻害するのに十分な条件下で有効量のオピオイドアンタゴニストを提供することによるVEGF活性の阻害方法を提供することも熟慮される。言い換えれば、本発明の化合物は、VEGF阻害性活性又はアンタゴニスト活性を有する。
【0087】
下記の実施例においても示されるとおり、末梢性オピオイドアンタゴニストであるMNTXがVEGF誘導性の内皮細胞遊走だけでなく、血小板由来増殖因子(PDGF)又はスフィンゴシン一リン酸(S1P)のような他の遊走促進性因子/増殖促進性因子による内皮細胞遊走及び/又は内皮細胞増殖の誘導をも減弱することもさらに明らかとなった。当該減弱は、約 10 % 〜 約 60 % の範囲にあり、また、本発明の方法が遊走促進性因子、血管形成促進因子(pro-angiogenic factors)を阻害する価値を有することの更なる証拠を提供する。
【0088】
本発明はまた、患者、例えば、オピオイドアゴニストでの治療を受けている癌患者を治療することも包含する。オピオイドアゴニストとしては、モルヒネ、メサドン、コデイン、メペリジン、フェンチジン(fentidine)、フェンタニル(fentanil)、スフェンタニル、アルフェンタニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。上述のとおり、オピオイドアゴニストは、ある型のレセプターに1桁の大きさで他のものよりもより効果的にアゴナイズするそれらの能力によって分類される。例えば、μレセプターに関するモルヒネの相対的親和性はκレセプターに関してよりも200倍大きく、従って、μオピオイドアゴニストとして分類される。いくつかのオピオイドアゴニストはあるレセプターに関してアゴニストとして機能し、他のレセプターに関してアンタゴニストとして機能し、アゴニスト/アンタゴニストとして分類される(混合性アゴニスト(mixed agonist)又は部分的アゴニストとしても知られる)。“アゴニスト/アンタゴニスト”、“部分的アゴニスト”及び“混合性アゴニスト(mixed agonist)”は、本明細書において互換的に用いられる。これらのオピオイドとしては、ペンタゾシン、ブトルファノール、ナロルフィン、ナルブフィン(nalbufine)、ブプレノルフィン、ブレマゾシン及びベンゾカイン(benzocine)が挙げられるが、これらに限定されない。オピオイドのアゴニスト/アンタゴニストグループの多くは、κレセプターにおいてアゴニストであり、μレセプターにおいてアンタゴニストである。さらに、オピオイドアゴニストの活性代謝産物もまた血管形成誘導因子(angiogenesis inducers)として活性を有していてもよいことが考えられる。例えば、モルヒネの代謝産物であるモルヒネ3-グルクロニド(M3G)及びモルヒネ6-グルクロニド(M6G)は、活性を有する血管形成促進性因子(proangiogenic factors)であってもよい。
【0089】
概して、本発明に従った末梢性オピオイドアンタゴニストは、当該末梢性オピオイドアンタゴニストの患者の血漿レベルが 10-6 M 〜 10-9 M の範囲であるような有効量で投与されてもよい。患者の薬剤血漿レベルは、当業者に知られるありふれたHPLC法を用いて測定されてもよい。
【0090】
下記の実施例で記載されるとおり、エンケファリンアナログであるDAMGOは内皮遊走を誘導する。従って、本発明の方法は、血管形成関連性(angiogenic-related)疾患又は過剰増殖性疾患、オピオイドアゴニストでの治療はさておき、例えば、癌を患う患者へ価値を有していてもよい。
【0091】
選択されるオピオイドアンタゴニスト投与の特定の様式は言うまでもなく、選択される薬剤の特定の組み合わせ、癌患者における治療されている腫瘍増殖の重症度、当該患者の一般的な健康状態及び治療的有効性のために要求される投与量によって決まる。本発明の方法は、概括して言えば、医学的に許容されるいずれの投与様式、例えば、臨床的に容認できない副作用を起こすことなく有効レベルの活性化合物を生成するいずれの様式を用いて実施されてもよい。投与の当該様式としては、経口的に、直腸に、局所的に(粉末(powder)、軟膏剤、ドロップ(drops)、経皮貼布又はイオン導入手段(iontophoretic device)によるような)、経皮に、舌下に、筋肉内に、注入(infusion)、静脈内に、肺に(pulmonary)、筋肉内に、膣内に(intracavity)、エアロゾルとして、耳に(例えば、点耳剤によって)、鼻腔内に、吸入、眼内に又は皮下に、が挙げられる。直接的な注入もまた、局所送達のために用いることができる。経口投与又は皮下投与は、服薬スケジュールだけでなく患者の利便性に起因して予防的治療又は長期間の治療に適していてもよい。眼疾患に関しては、眼の配合物が直接的に注入又は滴下されてもよい。
【0092】
さらに、オピオイドアンタゴニストは、腸溶コートされる錠剤又は腸溶コートされるカプセル剤として投与されてもよい。いくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、ゆっくりとした注入法(slow infusion method)によって又は徐放性法若しくは放出制御法によって又は凍結乾燥した粉末として投与される。
【0093】
投与される際に、本発明の化合物は、医薬的に許容される量で与えられ、さらに医薬的に許容される組成物又は製剤で与えられる。当該製剤は、通常どおり、塩、緩衝剤、保存料及び他の治療成分を含んでいてもよい。医薬中に用いられる際には、当該塩は、医薬的に許容されるものであるべきであるが、医薬的に許容されない塩は、その医薬的に許容される塩を調製するために都合良く用いられてもよく、本発明の範囲から除外されない。当該薬理学的及び医薬的に許容される塩としては、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、パモ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、及びベンゼンスルホン酸。適切な緩衝剤としては、酢酸及びその塩(1% 〜 2% WN);クエン酸及びその塩(1% 〜 3% WN);ボロン酸及びその塩(0.5 % 〜 2.5 % WN)、並びにリン酸及びその塩(0.8 % 〜 2% WN)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
適切な保存料としては、塩化ベンザルコニウム(0.003 % 〜 0.03 % WN);クロロブタノール(0.3 % 〜 0.9 % W/N);パラベン(0.01 % 〜 0.25 % WN)及びチメロサール(0.004 % 〜 0.02 % WN)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
投与を容易にするために、末梢性オピオイドアンタゴニストの医薬組成物はまた、潤滑剤、希釈剤、結合剤、キャリア及び錠剤分解物質のような1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。他の助剤(auxiliary agents)は例えば、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、着色剤、香味料及び/又は芳香活性を有する化合物(aromatic active compounds)であってもよい。
【0096】
医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤は、無毒性固体の、無毒性半固体の若しくは無毒性液体のいずれの型の補助的な注入剤(filler)、希釈剤、被包材料又は配合物について言及する。例えば、適切な医薬的に許容されるキャリア、希釈剤、溶剤(solvents)又はビークルとしては、水、塩(バッファー)、溶液、アルコール、アラビアゴム、ミネラルオイル、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトースのような炭水化物、アミロース若しくはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠性パラフィン、植物油、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な流動性が例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用によって、分散する際に要求される粒子サイズの維持によって及び界面活性剤の使用によって維持されてもよい。微生物の活動の阻止が、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などのような種々の抗菌剤及び抗真菌剤の封入によって確保されてもよい。医薬的に許容される固体キャリアが用いられる場合には、当該アナログの剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、坐剤又はトローチ剤であってもよい。液体キャリアが用いられる場合には、剤形は、ソフトゼラチンカプセル剤、経皮貼布剤、エアロゾルスプレー、局所用クリーム(topical cream)、シロップ懸濁剤、液体懸濁剤、エマルション又は液剤(solutions)であってもよい。
【0097】
経口(parental)適用のために、分散剤、懸濁剤、エマルション又は坐剤であってもよい植込錠(implants)だけでなく、注射可能な無菌溶液、好ましくは、非水溶液又は水溶液がとりわけ適切である。アンプルは多くの場合使いやすい単位投与量である。注射可能デポー形態もまた適切であってもよく、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)のような生分解性ポリマー中で薬剤のマイクロカプセル被包マトリクスを形成することによって作られてもよい。ポリマーに対する薬剤の割合及び採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬剤放出の速度を制御することができる。
【0098】
デポー注射可能配合物はまた、体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルション中に薬剤を捕捉することによっても調製される。当該注射可能な配合物は例えば、細菌保持性フィルター(bacterial-retaining filter)を通す濾過によって又は使用の直前に滅菌水若しくは他の無菌の注射可能溶剤中に溶解することができる若しくは分散させることができる無菌の固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌されてもよい。
【0099】
腸内適用のために、錠剤、糖衣錠、液体剤(liquids)、ドロップ(drops)、坐剤又はソフトゼラチンカプセル剤のようなカプセル剤がとりわけ適切である。シロップ剤、エリキシル剤などを使用することができ、その中に甘みのあるビークルが採用される。
【0100】
述べられるとおり、他の送達システムとしては、持続放出型送達システム、遅延放出型送達システム又は徐放性送達システムが挙げられる。当該システムは本発明の化合物の頻回の投与を回避することができ、患者及び医師への利便性を上昇させ、さらに、化合物の持続する血漿レベルを維持することができる。多くの型の放出制御性送達システムが当業者に利用可能であり、当業者に知られている。徐放性組成物又は放出制御性組成物は、例えば、リポソームとして又は中で活性化合物がマイクロカプセル封入によるような差次的分解性コーティング(differentially degradable coatings)、複数コーティングなどで保護されるものとして処方することができる。
【0101】
例えば、本発明の化合物は、治療用組成物を形成するために、生分解性ポリマーのような医薬的に許容される徐放性マトリクスと組み合わされてもよい。本明細書で用いられるとおり、徐放性マトリクスは、物質、通常、酵素加水分解若しくは酸塩基加水分解によって又は溶解によって分解できるポリマーでできたマトリクスである。体内に挿入されるとすぐに、当該マトリクスは酵素及び体液によって影響を受ける。徐放性マトリクスは、リポソームのような生体適合性材料、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドco-グリコリド(乳酸及びグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリサッカライド、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチンスルファート、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンのようなポリマー基盤型システム;カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、アミノ酸、ステロールのような脂質といった非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチド基盤型システム;植込剤(implants)などから好ましく選択されてもよい。具体的な例としては、(a)米国特許 Nos. 4,452,775, 4,675,189 及び 5,736,152 で見出される(参照によって本明細書に完全に取り込まれる)ポリサッカライドがマトリクスの内部の形式で含まれる浸食システム(erosional system)及び(b)活性成分が制御された速度で米国特許 Nos. 3,854,480, 5,133,974 及び 5,407,686(参照によって本明細書に完全に取り込まれる)に記載されるようなポリマーから広がる拡散システム、が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポンプ基盤型ハードワイヤード(pump-based hard-wired)送達システムを使用することができ、そのいくつかは植込(implantation)に適合される。適切な腸溶コーティングは、共に参照により本明細書に取り込まれるPCT公開 No. WO 98/25613 及び米国特許 No. 6,274,591 に記載される。
【0102】
長期間徐放性植込剤の使用は、慢性状態の治療にとりわけ適切であってもよい。“長期間”放出は、本明細書で使用されるとおり、当該植込錠が治療的レベルの活性成分を少なくとも7日間、さらに、適切に30日間〜60日間送達するために構築され配置されることを意味する。長期間徐放性植込剤は当業者によく知られ、上記に記載される放出システムのいくつかであってもよい。
【0103】
局所適用のために、スプレーできない(nonsprayable)形態として採用されるものとして、局所適用に適合性のキャリアを含み、好ましくは水よりも高い動的粘度を有する粘稠性の半固体形態又は固体形態がある。適切な配合物としては、液剤(solutions)、懸濁剤、エマルション、クリーム、軟膏剤、散剤、リニメント剤、軟膏、エアロゾルなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、滅菌され又は例えば保存料などの助剤(auxiliary agents)と混合されてもよい。
末梢性オピオイドアンタゴニストの医薬組成物の経皮的送達又はイオン導入送達もまた可能である。
【0104】
特にMNTXに関して、水溶性配合物は、キレート剤、緩衝剤、抗酸化剤及び等張剤を含んでいてもよく、好ましくはpHは 3.0 〜 3.5 に調整される。高圧蒸気殺菌法及び長期間貯蔵に安定な好ましい当該配合物は、出願シリアル no. 10/821811、20040266806 として現在公開され、発明の名称“Pharmaceutical Formulation”に記載される。
【0105】
ある実施態様において、本発明の化合物は、患者へ当該化合物の連続的な投薬レジメンを提供する投薬レジメン、例えば、オピオイドアンタゴニストの最小血漿レベルを維持し、さらに、好ましくは、従来のレジメンに伴う薬剤レベルのスパイク値及びトラフ値を排除するレジメンで投与される。ある実施態様において、当該持続的投薬は、患者への持続的注入を用いて又はゆっくり時間をかけて当該化合物の放出を促進する機構、例えば、経皮貼布若しくは徐放性配合物によって達成されてもよい。適切に、本発明の化合物は、オピオイド誘導性血管形成(angiogenesis)を阻害する若しくは低減するのに有効な又は癌患者において腫瘍の増殖を低減するのに有効な当該患者の血漿中の化合物濃度を維持するのに十分な量で当該患者へ持続的に放出される。本発明に従った化合物は、単独で提供されようと他の治療薬と組み合わせて提供されようと、抗血管形成的に(antiangiogenic)有効な量で提供される。しかしながら、当然のことながら、本発明の化合物及び組成物の総一日使用量は妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定することができる。いずれの特定の患者に関する特定の治療的に有効な投与量レベルも、治療される疾患及び当該疾患の重症度;採用される特定の化合物の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食習慣;投与の時間;投与の経路;採用される特定の化合物の排出速度;治療の持続時間;採用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に用いられる薬剤並びに医術界でよく知られるような因子を含む種々の因子によって決まる。例えば、好ましい治療効果を達成するために要求されるものよりも低いレベルで化合物の投薬を開始し、当該好ましい効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは十分に当業者のレベルの範囲内にある。
【0106】
必要であれば、当該有効な1日の投与量を、投与の目的のために複数の投与量に分割してもよい。従って、1回投与量組成物は、一日投与量を作り出すような量又はその約数を含んでいてもよい。述べられるとおり、当業者は、優れた医療行為及び個々の患者の臨床状態によって決定されるとおり、容易に有効投与量及び共投与レジメン(本明細書に記載されるとおり)を最適化することができる。
【0107】
概して、オピオイドアンタゴニスト、とりわけ末梢性アンタゴニストの経口投与量は、1日につき体重1kgあたり、約 0.01 mg 〜 約 80 mg の範囲である。体重1kgあたり 1 mg/kg 〜 20 mg/kg の範囲の経口投与量は好ましい結果をもたらすと予想される。概して、静脈内投与及び皮下投与を含む非経口投与は、体重1kgあたり約 0.001 mg 〜 約 5 mg の範囲である。体重1kgあたり 0.05 mg 〜 0.5 mg の範囲の投与量は好ましい結果をもたらすと期待される。投与量は、投与の様式に応じて好ましい薬剤レベル、局所性又は全身性を達成するために適切に調整されてもよい。例えば、腸溶コートされた配合物のオピオイドアンタゴニストの経口投与用投与量は、非コートの経口投与量の 10 % 〜 30 % であることが予想される。患者における反応が当該投与量で不十分な場合には、より高い投与量(又は異なるより限局的な送達経路による有効な30投与量)でさえ、当該患者の耐容性が容認できる限りにおいて採用されてもよい。1日につき複数の投与量が、化合物の適切な全身レベルを達成するために熟慮される。適切な全身レベルは例えば、当業者に知られありふれたHPLC法を用いて当該薬剤の患者の血漿レベルを測定することによって決定することができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストはオピオイドと共に共投与される。“共投与”という用語は、2つ以上の薬剤が患者又は患者へ投与されるいずれの投与経路による併用治療について言及することが意図される。薬剤の共投与はまた、併用治療又は併用療法として言及されてもよい。当該薬剤は、同じ製剤配合物中又は別々の配合物中に存在していてもよい。活性薬剤が別々の製剤配合物中に存在する1つを超える当該活性薬剤での併用療法のために、当該活性薬剤は同時に投与することができ又はそれらを各々別々にずらした時点で投与することができる。当該活性薬剤が、両方の薬剤が体内における有効濃度を達成することを可能にするのに十分な様式で与えられる限り、当該活性薬剤は同時に投与することができ又はそれらを各々別々にずらした時点で投与することができる(例えば、1つの薬剤がもう一方の薬剤の投与に直ちに続いてもよい又は当該複数の薬剤を偶発的に与えてもよい、例えば、1つの薬剤をある時点で与えて引き続き、後の時点で、例えば1週間以内に、もう一方の薬剤を与えることができる)。当該薬剤は、種々の経路によって投与されてもよい、例えば、第二の薬剤が筋肉内に、静脈内に又は経口的に投与される一方で、第一の薬剤が静脈内に投与されてもよい。言い換えれば、本発明に従うオピオイドアンタゴニスト化合物のオピオイドとの共投与は適切に、オピオイドアンタゴニスト薬剤及びオピオイド薬剤を含む混合性医薬品であると考えられ、当該医薬品は毎日基盤(a daily basis)又は断続性基盤(intermittent basis)での末梢性オピオイドアンタゴニストの投与及び毎日基盤又は断続性基盤のオピオイドの投与に適合される。従って、オピオイドアンタゴニストは、オピオイドの投与前に、オピオイドの投与と同時に又はオピオイドの投与後に投与されてもよい。共投与可能な薬剤はまた、混合剤として、例えば、単一の配合物又は単一の錠剤中に処方されてもよい。これらの配合物は、例えば、各々が参照によって本明細書に取り込まれる 米国特許 Nos. 6,277,384; 6,261,599; 5,958,452 及び PCT公開 No. WO 98/25613 に記載される配合物のような非経口的又は経口的なものであってもよい。
【0109】
本発明の方法を、上記に記載される種々の状態と関連する内皮細胞の増殖又は遊走を制御するために、単独で又は他の治療と共に用いることができることがさらに熟慮される。末梢性オピオイドアンタゴニストは、オピオイド又はオピオイドアンタゴニストでない他の治療薬と共に共投与されてもよい。適切な当該治療薬としては、抗癌剤、例えば、化学療法剤、放射線治療又はスラミンのような他の抗血管形成剤(antiangiogenic agents)、抗VEGFモノクローナル抗体(mab)、エンドスタチン又は他の放射線治療が挙げられる。本発明に従うオピオイドアンタゴニストは、VEGF活性を阻害する薬剤、例えば、抗VEGFmabと共に共投与される際にとりわけ価値を有することが考えられる。当該抗VEGF抗体は、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、母斑症(phakomatoses)、浮腫(脳腫瘍及びメイグス症候群に関連するような)に関連する異常な血管増殖を含む種々の腫瘍性疾患、非腫瘍性疾患及び疾病の治療に有用である。抗VEGFmabの1つの例は、本明細書に完全に取り込まれる 米国特許 No 6,884,879 及び WO94/10202 に記載されるベバシズマブ(アバスチン、Genentech)である。本発明のある特定の実施態様において、MNTXはアバスチンと共に共投与される。
【0110】
言い換えれば、本発明の化合物はまた、上記で記載されるとおり、単独で用いられる際又は1つ以上の他の抗癌剤、例えば、放射線治療及び/又は抗血管形成剤(antiangiogenic)を含む他の化学療法剤、癌の治療のために患者へ慣習的に適用される処置、と組み合わせて用いられる際のどちらにおいても患者の癌の治療に有用であってもよい。当該薬剤の主要なカテゴリー及び例は本明細書に列記され、メタロプロテアーゼ阻害剤、内皮細胞の増殖/遊走の阻害剤、血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)のアンタゴニスト、インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤及び銅のキレート剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は、抗癌剤の既知の組み合わせと組み合わせることができる。本発明の化合物は、抗血管形成剤(anti-angiogenic agent)及び化学療法剤と組み合わせることができ、癌患者へ投与することができる。例えば、MNTXは、アバスチン及び5−フルオロウラシルと組み合わせて癌患者へ投与することができる。
【0112】
種々の抗癌剤、放射線治療又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drugs)とのオピオイドアンタゴニストの共投与が癌細胞への著しく促進された抗増殖性効果を引き起こすことができ、従って増大した治療効果を提供することができ、例えば、いくつかの腫瘍への末梢性オピオイドアンタゴニストの採用は他の治療レジメンへのそれらの反応を強化することができることが予想される。特に、著しく増大した抗血管形成効果(antiangiogenic effect)又は抗過剰増殖効果は、薬剤又は放射線が単独で用いられる治療レジメンと比較してより低い濃度の抗癌剤、より低い線量の放射線又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drugs)を利用する場合であっても上記に開示される共投与される組み合わせにより得られる。従って、抗癌剤又は他の抗血管形成薬剤(antiantiogenic drugs)又は放射線治療に伴う副作用が、高い投与量で単独で用いられる当該抗癌剤又は他の血管形成薬剤(antiantiogenic drugs)又は放射線治療に関連して通常観察されるよりも相当に低減される治療を提供する可能性が存在する。例えば、抗VEGF剤、例えば、抗VEGFmabとの本発明に従うオピオイドアンタゴニストの共投与は、抗VEGF剤の投与量を低減してもよく又は効力若しくは有効性若しくはその両方を増加させてもよい。さらに、本明細書に詳述されるとおり、他の抗癌療法(anticancer modalities)との本発明に従うオピオイドアンタゴニストとの共投与は、予防的価値を有していてもよい。
【0113】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、例えば、マリマスタット(Marimastat)、合成マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI), British Biotech; Bay 12-9566、合成MMPIと腫瘍増殖阻害剤, Bayer; AG3340、合成MMPI, Agouron/Warner-Lambert; CGS 27023A、合成MMPI, Novartis; CGS 27023A、合成MMPI; COL-3、合成MMPI, テトラサイクリン誘導体, Collagenex; AE-941 (Neovastat)、自然発生のMMPI, AEterna, BMS-275291、合成MMPI, Bristol-Myers Squibb; ペニシラミン(Penicillamine)、ウロキナーゼ阻害剤, NCI-NABTTのようなメタロプロテアーゼ阻害剤と共に共投与されてもよい。
【0114】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、内皮細胞増殖を阻害するTNP-470(フマギリン誘導体), TAP Pharmaceuticals;ナトリウム−水素交換体を阻害するスクアラミン, NIHE3, Magainin;増殖する内皮細胞にアポトーシスを誘導するコンブレタスタチン, Oxigene;内皮細胞を阻害するエンドスタチン, EntreMed;内皮細胞の遊走及び増殖をブロックするペニシラミン, NCI-NABTT;内皮細胞の遊走及び増殖をブロックするファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI), NCI - NABTT, -L-778,123 Merck, -SCH66336 Schering-Plough, -R115777 Janssen のような内皮細胞増殖/遊走の直接的な阻害剤と共に共投与されてもよい。
【0115】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、VEGFを不活性化するモノクローナル抗体である抗VEGF抗体, Genentech;血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)(bFGF、VEGF、TNF−α)の活性をブロックするサリドマイド, Celgene;VEGFレセプター(Flk−1/KDR)シグナル伝達(チロシンキナーゼ)をブロックするSU5416, Sugen-NCI;VEGFレセプターのmRNAを減弱するリボザイム(Angiozyme), Ribozyme Pharmaceuticals, Inc;VEGFレセプターシグナル伝達、bFGFレセプターシグナル伝達及びPDGFレセプターシグナル伝達をブロックするSU6668, Sugen;VEGFレセプターシグナル伝達をブロックするPTK787/ZK22584, Novartis;bFGF産生及びVEGF産生を阻害するインターフェロンα;増殖因子のそのレセプターへの結合をブロックするスラミン, NCI-NABTT のような血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)のアンタゴニストと共に共投与されてもよい。
【0116】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、内皮細胞表面に存在するαvβ3インテグリンに対する抗体であるVitaxin, Ixsys;内皮細胞表面に存在するインテグリンの小分子遮蔽剤であるEMD121974, Merck KGaA のような内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達を阻害する薬剤と共に共投与されてもよい。
【0117】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、スルフヒドリル基が銅に結合し、尿中排泄により銅を取り除くペニシラミン, NCI-NABTTT;チオール基が銅に堅固に結合し、腫瘍が利用できる銅を不活性化するテトラチオモリブダート, University of Michigan Cancer Center;銅及び亜鉛をキレート化し、さらに、MMP及びアンジオテンシン変換酵素の阻害剤でもあるカプトプリル, Northwestern University のような銅のキレート剤と共に共投与されてもよい。
【0118】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、カルシウム流入の阻害剤であるCAI, NCI;エンドセリンレセプターアンタゴニストであるABT-627, Abbott/NCI;レセプター(CM201)との相互作用によって増殖性内皮を選択的に破壊するB群連鎖球菌毒素であるCM101/ZDO101, CarboMed/Zeneca;インターフェロンγを誘導し、IL−10を下方制御し、IP−10を誘導するインターロイキン12, M.D. Anderson Cancer Center/Temple University, Temple University, Genetics Institute, Hoffman LaRoche;VEGF及びbFGFの産生をブロックするIM862;IL−12阻害剤の産生を増加させるCytran;Tatタンパクによって誘導される血管形成(angiogenesis)をブロックするPNU-145156E, Pharmacia and Upjohn のような異なる機構を有する血管形成(angiogenesis)アンタゴニストと共に共投与されてもよい。
【0119】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、例えば、インターフェロンα、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサート及びプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びデキサメタゾン)、PRO-MACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(w/leucovinレスキュー)、ドキソルビシン;シクロホスファミド、パクリタキセル(paclitaxol)、ドセタキセル(docetaxol)、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンジオインヒビン(angioinhibins)、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンジオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、Techgalan、サリドマイド、SP-PGなどのような化学療法剤と共に共投与されてもよい。
【0120】
本発明の化合物と共に共投与されてもよい抗癌剤はまた適切に、代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル、メトトレキサート及びフルダラビン)、微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びパクリタキセル、ドセタキセルのようなタキサン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、ビオコロエチルニトロソ尿素(biochoroethylnitrosourea)、ヒドロキシウレア)、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン(mechloethamine)、メルファン(melphan)、クロラムブシル、シクロホスファミド及びイホスファミド);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン及びストレプトゾシン)、プラチナ剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM-216、C1-973)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗生物質(例えば、マイトマイシン、イダルビシン、アドリアマイシン、ダウノマイシン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、カンプトテシン)、ブスルファンを含むアルキルスルホナート;トリアジン(例えば、ダカルバジン);エチレンイミン(例えば、チオテパ及びヘキサメチルメラミン);葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート);ピリミジンアナログ(例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド);プリンアナログ(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン);抗腫瘍性抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシンC及びミトラマイシン(methramycin);ホルモン及びホルモンアンタゴニスト(例えば、タモキシフェン、副腎皮質ステロイド)並びにいずれの他の細胞障害性薬剤(例えば、リン酸エストラムスチンナトリウム、プレドニムスチン)であってもよい。
【0121】
血管形成(angiogenesis)及び/又は癌の阻害、治療又は予防のために本発明の化合物と組み合わせることができる薬剤が上記に列挙されるものに限定されるのではなく、原則として、オピオイド誘導性血管形成疾患(angiogenic diseases)及び腫瘍増殖の治療に有用ないずれの薬剤であってもよいことが理解される。
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これは本発明の範囲を限定する目的で解釈されるべきではない。
【実施例】
【0122】
実施例1:内皮細胞遊走アッセイ
本発明に従った末梢性オピオイドアンタゴニストの抗血管形成活性(anti-angiogenic activity)を、改良型ボイデンチャンバーを用いる微小血管内皮細胞の遊走を阻害する又は調節するアンタゴニストの能力を検証する実験で評価した。
内皮細胞遊走アッセイを、その開示が参照によって取り込まれる Lingen, M.W., Methods in Molecular Medicine, 78: 337-347 (2003) によって記載されるとおりに行った。手短に言えば、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)(Cell Systems, Kirkland, WA.)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する内皮増殖培地(EGM)中で一晩血清飢餓状態にした。細胞を次に、トリプシン処理し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に 1×106 cells/mL の濃度で再懸濁した。細胞を48ウェル改良型ボイデンチャンバー(NeuroPore Corporation, Pleasanton, CA.)の底面に加えた。当該チャンバーを組み立てて反転させ、細胞を、0.1 % ゼラチン中に一晩浸して乾燥しておいたポリカルボナートケモタキシス膜(5μmの細孔サイズ)(NeuroProbe)へ 37 ℃ で2時間接着させた。当該チャンバーを次に再反転して、当該化合物を4倍で濃度を変化させて試験し、血管内皮増殖因子(VEGF)(ポジティブコントロールとして)又はビークルを上側のチャンバーのウェルへ加えた(50 mL の総体積になるまで)。;当該器具を次に、37 ℃ で4時間インキュベートした。膜を回収し、固定して染色し(DiffQuick, Fisher Scientific, Pittsburgh, Pa.)、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数をカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の物質を、各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。VEGF(R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。上記に記載されたとおりに試験した化合物は、モルヒネ、ナロキソン、メチルナルトレキソン及びメチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせであった。試験した物質の各々の濃度は、0.001 μM 〜 10.0 μM の範囲であった。モルヒネの濃度は、0.1 μM で一定であった。結果を図1に示す。
【0123】
図1は、モルヒネが濃度依存的に遊走を増加させたことを示す。しかしながら、メチルナルトレキソンとモルヒネの共添加は、濃度依存的に遊走を減少させた。メチルナルトレキソン又はナロキソンのどちらも単独では遊走に影響しなかった。
【0124】
実施例2:内皮細胞遊走アッセイ
他のセットの実験を、実施例1に記載される手順に従って実施した。当該セットの実験において、メチルナルトレキソン及びメチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせを、内皮細胞遊走を阻害する能力に関して再び試験した。単独で試験される際のメチルナルトレキソン濃度を、0.001 μM 〜 10.0 μM で変えた。組み合わせにおいては、モルヒネ濃度を実施例1で記載されるとおり 0.1 μM で一定のままにしておいた一方で、メチルナルトレキソンの濃度を 0.001 μM 〜 10.0 μM で変えた。結果を、図2に示す。
【0125】
図2は、メチルナルトレキソン単独が遊走に影響しなかった一方で、メチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせが濃度依存的に遊走を減少させたことを示す。
【0126】
実施例3:DAMGOによって誘導される内皮細胞遊走
本試験で用いた薬剤は、[D-Ala 2, N-McPhe4, Gly5-ol]エンケファリン又はDAMGO(Sigma, St. Louis, MO);ナロキソン(Sigma, St. Louis, MO);N-メチルナルトレキソンブロミド又はメチルナルトレキソン(Mallinckrodt Specialty Chemicals, Phillipsburg, NJ)であった。内皮細胞遊走アッセイを、既に記載されるとおり(9)に行った。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地中で一晩飢餓状態にし、回収し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に再懸濁して、改良型ボイデンチャンバー(Nucleopore Corporation, Pleasanton, CA)中の半多孔質ゼラチン化膜上に蒔いた。試験物質を次に、上側チャンバーのウェルへ加え、細胞を 37 ℃ で4時間遊走させた。
【0127】
膜を回収し、固定して染色し、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数を盲検観察者がカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。DAMGOの濃度は1μMであり、VEGF(R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。
【0128】
結果を図3に示すが、メチルナルトレキソン及びDAMGOが濃度依存的に遊走を減少させたことを示す。図4は、ナロキソン及びDAMGOでの同様の結果を明らかにする。μレセプターに作用することが知られるM6Gが血管形成(angiogenesis)に濃度依存的効果を示した一方で、不活性モルヒネ代謝産物M3Gは、血管形成活性(angiogenic activity)を全く発揮しなかった(図5)。
【0129】
実施例4:メチルナルトレキソンでのヒト患者及び哺乳類患者の治療
第1のセットの実験において、トランスフォーメーション、同系繁殖(inbreeding)又は腫瘍細胞の移植によってマウスに腫瘍の発達を誘導した。各々が少なくとも 60 mm3 の体積の腫瘍を有する36匹のマウスを、無作為に3つの群に分けた。第1の群には、オピオイドもオピオイドアンタゴニストのどちらも含まないコントロール物質を与えた。第2の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネを与えた。第3の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを与えた。
【0130】
当該化合物を、毎日8週間投与した。各々の群間の腫瘍の増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及びマウスの死亡率における差を記録した。当該結果は、コントロール又はモルヒネ単独と比較して腫瘍増殖の減少及び血管形成(angiogenesis)の減少を明らかにした。
【0131】
第2のセットの実験において、ヒト癌患者を本試験に登録した。本試験の登録者を、年齢、疾患のステージ、治療の型、遺伝因子及び家族性因子に関して制御した。参加者を、彼らがオピオイド、例えば、モルヒネを受けているかどうかに従って2つの群に分けた。オピオイドを受けている群を、さらに無作為に2つのサブ群に分けた。オピオイドを受けている当該2つのサブ群の1つに、末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、5mg/kg/日の投与量で8週間経口投与されるメチルナルトレキソンを与えた。当該2つのサブ群のもう一方に、同じ期間プラセボを与えた。各々の群の参加者の腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。
【0132】
実施例5:アルビモパンでのヒト患者及び哺乳類患者の治療
腫瘍の発達を誘導しておいたマウスに、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例3に記載されるとおりのプロトコールを受けさせた。結果は、コントロール又はオピオイド単独と比較して腫瘍増殖の減少及び血管形成(angiogenesis)の減少を明らかにした。
ヒト癌患者を、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例4に記載されるとおりに実施される試験に登録した。
【0133】
実施例6:末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン及び第2の治療薬の共投与を含む治療
第1のセットの実験において、トランスフォーメーション、同系繁殖(inbreeding)又は腫瘍細胞の移植によってマウスに腫瘍の発達を誘導した。各々が少なくとも 60 mm3 の体積の腫瘍を有する48匹のマウスを、無作為に6つの群に分けた。第1の群には、オピオイド、オピオイドアンタゴニスト又は抗癌剤を含まないコントロール物質を与えた。第2の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネを与えた。第3の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを与えた。第4の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを抗癌剤、例えば、5mg/kgの投与量で14日毎のベバシズマブ(アバスチン)と共に与えた。第6の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量のモルヒネ及び抗癌治療薬、例えば、5mg/kgの投与量で14日毎のベバシズマブ(アバスチン)を与えた。
【0134】
当該化合物を、毎日8週間投与した。各々の群のマウスの腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0135】
第2のセットの実験において、オピオイド、例えば、モルヒネ、抗癌治療薬、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)又は両方を受けているヒト癌患者を試験に登録した。本試験の登録者を、年齢、疾患のステージ、治療の型、遺伝因子及び家族性因子に関して制御した。オピオイドを受けている参加者を、無作為に第1の群及び第2の群に分け;抗癌治療薬、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)を受けている参加者を、無作為に第3の群及び第4の群に分け;オピオイド+抗癌治療的抗癌剤、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)を受けている参加者を、無作為に第5の群及び第6の群に分けた。第1の群、第3の群及び第5の群に各々、末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、5mg/kg/日の投与量で8週間経口投与されるメチルナルトレキソンを与えた。第2の群、第4の群及び第6の群に、同じ期間プラセボを与えた。各々の群の参加者の腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0136】
実施例7:末梢性オピオイドアンタゴニストであるアルビモパン及び第2の治療薬の共投与を含む治療
腫瘍の発達を誘導しておいたマウスに、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例5に記載されるとおりのプロトコールを受けさせた。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0137】
ヒト癌患者を、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例6に記載されるとおりに実施される試験に登録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0138】
実施例8:内皮細胞の遊走/増殖へのオピオイドアンタゴニストの効果
細胞培養及び試薬−ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)及びヒト肺微小血管内皮細胞(Clonetics, Walkersville, MD)を、既に記載されるとおりに、EBM−2完全培地(Clonetics)中、37 ℃ で5% CO2、95 % 空気の加湿雰囲気中において、実験方法のために使用される6継代〜10継代培養した(Garcia et al. 2001)。特に明記しない限り、試薬は、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。SDS−PAGE電気泳動用試薬はBio-Rad(Richmond, CA)から購入し、イモビロン-P 転写膜はMillipore(Millipore Corp., Bedford, MA)から購入した。本試験で用いた薬剤は、[D-Ala2, N-MePhe4, Gly5-ol]エンケファリン又はDAMGO(Sigma, St. Louis, MO);ナロキソン、モルヒネ-3-グルクロニド(M3G)及びモルヒネ-6-グルクロニド(M6G)(Sigma, St. Louis, MO);N-メチルナルトレキソンブロミド又はメチルナルトレキソン(Mallinckrodt Specialty Chemicals, Phillipsburg, NJ)、モルヒネ(Baxter, Deerfield, Illinois)であった。VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤は、Calbiochem(San Diego, CA)から購入した。マウス抗RhoA抗体、マウス抗リン酸化チロシン抗体及びrho結合領域(RBD)抱合型ビーズは、Upstate Biotechnology(Lake Placid, NY)から購入した。ウサギ抗VEGFレセプター1(Flt−1)抗体及び抗VEGFレセプター2(Flk−1)抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入した。マウス抗βアクチン抗体は、Sigma(St. Louis, MO)から購入した。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体は、Amersham Biosciences(Piscataway, NJ)から購入した。
【0139】
免疫沈降及び免疫ブロット−細胞性材料を、IPバッファー(50 mM HEPES(pH 7.5)、150 mM NaCl、20 mM MgCl2、1 % Triton X-100、0.1 % SDS、0.4 mM Na3VO4、40 mM NaF、50 μM オカダ酸、0.2 mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1:250 希釈のCalbiochemプロテアーゼ阻害剤混合物3)と共にインキュベートした。当該サンプルを次に、抗VEGFレセプター1IgG又は抗VEGFレセプター2IgGで免疫沈降した後、4% 〜 15 % のポリアクリルアミドゲルでSDS−PAGEし、イモビロンTM膜上へ転写して、特異的一次抗体及び二次抗体で現像した(developed)。免疫反応性バンドの視覚化を、高感度ケミルミネッセンス(Amersham Biosciences)で実現した。
【0140】
VEGFレセプター1及びVEGFレセプター2のチロシンリン酸化の定量−IPバッファー(上記を参照)中の可溶化タンパクを、ウサギ抗VEGFレセプター1又は抗VEGFレセプター2のどちらかで免疫沈降した後、4% 〜 15 % のポリアクリルアミドゲルでSDS−PAGEして、イモビロンTM膜(Millipore Corp., Bedford, MA)上へ転写した。5% ウシ血清アルブミンで非特異的部位をブロッキングした後に、当該ブロット物を、ウサギ抗VEGFレセプター1抗体、ウサギ抗VEGFレセプター2抗体又はマウス抗リン酸化チロシン抗体のどれかと共にインキュベートした後、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗ウサギ(goat anti-rabbit)IgG又はヤギ抗マウス(goat anti-mouse)IgGと共にインキュベーションした。免疫反応性バンドの視覚化を、高感度ケミルミネッセンス(Amersham Biosciences)を用いて実現した。
【0141】
RhoAに対するsiRNAの構築及びトランスフェクション−RhoAに対するヒトを標的にしたsiRNA配列を、Genbank(登録商標)(gi:33876092)からのmRNA配列を用いて作成した。各々のmRNAに関して(又はスクランブル)、2つの標的を特定した。とりわけ、RhoA標的配列1(5'-AAGAAACTGGTGATTGTTGGT-3')(配列番号1)、RhoA標的配列2(5'-AAAGACATGCTTGCTCATAGT-3')(配列番号2)、スクランブル配列1(5'-AAGAGAAATCGAAACCGAAAA-3')(配列番号3)及びスクランブル配列2(5'-AAGAACCCAATTAAGCGCAAG-3')(配列番号4)を利用した。センスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)から購入した。siRNAの構築のために、Ambionからの転写基盤型キット(transcription-based kit)(Silencer(登録商標)siRNA 構築キット)を用いた。ヒト肺微小血管ECに次に、Ambionによって提供されるプロトコールに従って、トランスフェクション試薬としてsiPORTamineTM(Ambion, TX)を用いてsiRNAをトランスフェクトした。細胞(〜40 % 集密)を、1時間血清飢餓状態にした後、3μM(1.5 μM の各々のsiRNA)の標的siRNA(又はスクランブルsiRNA又はsiRNAなし)と共に6時間血清なしの培地中でインキュベートした。血清含有培地を次に加えて(1% 血清の最終濃度)42時間後に、生物化学的な実験及び/又は機能的アッセイを行った。
【0142】
RhoA活性化アッセイ−アゴニスト処理及び/又は阻害剤処理の後、ECを可溶化バッファー中で可溶化して、rho結合領域(RBD)抱合型ビーズと共に4℃で30分間インキュベートした。上清を除去し、結合されるGTP結合型RhoAと一体のRBDビーズをよく洗浄した。当該RBDビーズをSDS−PAGEサンプルバッファー中でボイルし、結合されるRhoA物質をSDS−PAGE上でランさせて、イモビロンTMへ転写し、抗RhoA抗体で免疫ブロットした(Garcia et al 2001)。
【0143】
ヒト皮膚微小血管ECの遊走アッセイ−当該内皮細胞の遊走アッセイを、既に記載されるとおりに(Lingen 2002)行った。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地中で一晩飢餓状態にし、回収し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に再懸濁して、改良型ボイデンチャンバー(Nucleopore Corporation, Pleasanton, CA)中の半多孔質ゼラチン化膜上に蒔いた。試験物質を次に、上側チャンバーのウェルへ加え、細胞を 37 ℃ で4時間遊走させた。膜を回収し、固定して染色し、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数を盲検観察者がカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の物質を、各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。血管内増殖因子(VEGF, R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。
【0144】
ヒト肺微小血管ECの遊走アッセイ−8M細孔サイズを有する24Transwell(登録商標)ユニットを、インビトロでの細胞遊走のモニタリング用に用いた。HPMVEC(〜1×104 cells/ウェル)を、上側チャンバーへ種々の処理(100 nM MNTX、10 μM VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤又はsiRNA)と共に蒔き、種々のアゴニストを下型チャンバーへ加えた(100 nM MS、DAMGO又はVEGF)。細胞を、18時間遊走させた。上側チャンバーからの細胞及び下側チャンバーからの細胞を、CellTiter96(登録商標)MTSアッセイ(Promega, San Luis Obispo, CA)を用いて定量化し、492 nm で測定した。%遊走を、上側チャンバーと下側チャンバーの両方の細胞数に対する下側チャンバーの細胞数%として定義した。各々のアッセイを三つ組で組み立て、少なくとも5回繰り返して、スチューデントt-検定によって統計学的に解析した(P<0.05 と評価される統計学的有意性を有する)。
【0145】
ヒト肺微小血管ECの増殖アッセイ−細胞増殖を測定するために、HPMVEC[種々の薬剤(100 nM MNTX、10 μM VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤又はsiRNA)で前処理した 5×103 cells/ウェル]を、種々のアゴニスト(100 nM MS、DAMGO又はVEGF)を含有する0.2 mL の血清を含まない培地と共に、96ウェル培養プレート中で37℃、5% CO2/95 % 空気で、24時間インキュベートした。インビトロでの細胞増殖アッセイを、CellTiter96(登録商標)MTSアッセイ(Promega, San Luis Obispo, CA)を用いて細胞数の増加を測定することによって解析し、492 nm で測定した。各々のアッセイを三つ組で組み立て、少なくとも5回繰り返して、スチューデントt-検定によって統計学的に解析した(P<0.05 と評価される統計学的有意性を有する)。
【0146】
内皮細胞の遊走アッセイを用いることにより、MSが内皮の遊走の濃度依存的な上昇を引き起こしたことが判明した。ナロキソンとMNTXは単独で、幅広い濃度域に渡って内皮細胞の遊走へ全く影響を及ぼさなかった。これは、代表的な顕微鏡写真及び定量的に実証される(それぞれ、図6及び図1)。モルヒネの臨床的に関連する濃度において、当該効果の大きさは、VEGFによって達成される効果の約 70 % であった。内皮細胞の遊走は、10-7 M 程の低い濃度のモルヒネによって遊走された(図2)。モルヒネを基盤とする内皮細胞遊走は、μオピオイドアンタゴニストであるナロキソン及びMNTX(10-8 M 程の低い用量で)によって濃度依存的様式で減弱されたが、これは内皮細胞遊走がμオピオイドレセプター(MOR)へのモルヒネの作用によって介在されることを強く示唆する。当該効果が他のオピオイドレセプターというよりもむしろMORによるものであるということを、高選択性の合成エンケファリンμアゴニストであるDAMGOもまた濃度依存的様式で遊走を誘導したという我々の知見により確認した。DAMGOの効果もまた、MNTXによってブロックされた(図3)。μレセプターに作用することが知られるM6Gが血管形成(angiogenesis)への濃度依存的効果を示した一方で、不活性なモルヒネ代謝産物M3Gが血管形成活性(angiogenic activity)を全く発揮しなかったことは、内皮へのモルヒネの効果がμレセプターによって介在されるという我々の仮説(McQuay et al. 1997)を確固たるものにした(図5)。
【0147】
血管形成(angiogenesis)へのオピオイド誘導性効果及びMNTX誘導性効果の機構を評価するために、特徴がはっきりしたEC細胞株であるヒト肺微小血管内細胞(HPMVEC)を用いた。ヒト皮膚微小血管ECと一致して、MS、DAMGO及びVEGFがHPMVECの遊走を誘導し、これがMNTXによって阻害されることが観察された(図7B)。MS、DAMGO及びVEGFはまたHPMVECの増殖を促し、これがMNTXによって減弱されることが明らかとなった(図7A)。
【0148】
μオピオイドレセプターアンタゴニストであるMNTXのVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走への当該阻害効果を考慮して、VEGFレセプタートランス活性化へのオピオイドの役割を調査した。図8Aは、MS及びDAMGOがVEGFレセプター1(Flt−1)及びVEGFレセプター2(Flk−1)の両方のチロシンリン酸化を誘導し、これがMNTXによってブロックされたことを示す。さらに、MNTXは、VEGFによって誘導されるVEGFレセプター1及びVEGFレセプター2のチロシンリン酸化を減弱した。これらの結果は、オピオイドがVEGFレセプタートランス活性化を誘導することを示唆する。
【0149】
VEGFレセプターチロシンキナーゼ活性がオピオイド誘導性血管形成(angiogenesis)のために必要とされるか否かに取り組むために、ECをVEGFレセプター1及び2のチロシンキナーゼ阻害剤で前処理し、オピオイド誘導性のEC増殖及びEC遊走を測定した(図8B)。結果は、VEGFレセプターのチロシンキナーゼ活性がオピオイド誘導性のECの血管形成機能(angiogenic functions)に重要であることを示唆する。
【0150】
血管形成(angiogenesis)に関与するある重要なシグナル伝達分子は、低分子量GタンパクであるRhoAである(Aepfelbacher et al. 1997; Cascone et al. 2003; Hoang et al. 2004; Liu and Senger 2004)。MS、DAMG及びVEGFがRhoA活性化を刺激し、これがMNTXによって阻害されることが観察された(図9A)。さらに、VEGFレセプタートランス活性化は、オピオイド誘導性のRhoA活性化に重要である(図9B)。RhoA発現を静めることは、オピオイド誘導性及びVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走をブロックした(図10)。これらの結果は、RhoA活性化のアゴニスト誘導性のEC血管形成活性(angiogenic activity)への極めて重要な役割を示唆する。
【0151】
全体としてみると、これらの発見は、末梢性μオピオイドレセプターアンタゴニストであるMNTXがオピオイド誘導性及びVEGF誘導性のVEGFレセプター活性化及びRhoA活性化を減弱するモデルを提案する。当該減弱は、オピオイド介在性及びVEGF介在性の血管形成(angiogenesis)へのMNTXの阻害性の役割にとって重要である(図11)。
【0152】
実施例9:メチルナルトレキソンは、S1P誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性の血管形成を阻害する:レセプタートランス活性化の役割
実施例1〜実施例3に記載されるのと同様の手順に従ってアッセイを行った。S1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGOがECの増殖(図12)(比色分析のCellTiter(登録商標)(Promega)MTSアッセイによって測定した)及び遊走(図13)(Transwell(登録商標)(Costar)透過性膜フィルターアッセイ(permeable membrane filter assay)(8μm の細孔直径)によって測定した)を誘導し、これがMNTXでの前処理(0.1 μM、1時間)によって阻害されることが観察された。μオピオイドレセプター発現を静めること(siRNA)は、S1P誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性のEC増殖(図14)及び遊走(図15)も著しく阻害する一方で、モルヒネ誘導性及びDAMGO誘導性のEC増殖(図14)及び遊走(図15)をブロックした。免疫沈降後の免疫ブロット分析は、ECのS1P、VEGF及びPDGF処理がμオピオイドレセプターのセリン/スレオニンのリン酸化(図16)(レセプタートランス活性化を示唆する)及び細胞骨格調節性低分子量GタンパクであるRhoAの活性化(図17)を誘導したことを示唆する。さらに、ECのモルヒネ処理及びDAMGO処理は、RhoA活性化と共にVEGFレセプターのチロシンリン酸化(図18)、PDGFレセプターのチロシンリン酸化(図18)及びS1P3レセプターのチロシンリン酸化(図19)を誘導した。ECのMNTX前処理は、モルヒネ誘導性、DAMGO誘導性、SIP誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性のレセプターリン酸化イベント及びRhoA活性化を減弱した。最終的に、RhoA発現を静めること(siRNA)は、アゴニスト誘導性のEC増殖(図20)及びEC遊走(図21)をブロックした。総合すれば、これらの結果は、MNTXがレセプターリン酸化/トランス活性化の阻害及びそれに引き続くRhoA活性化の阻害を介してアゴニスト誘導性のEC増殖及びEC遊走を阻害することを示唆する(図22)。これらの結果は、血管形成(angiogenesis)のMNTXによる阻害が癌治療のための有用な治療介入になり得ることを示唆する。
【0153】
実施例10:メチルナルトレキソン及び抗増殖性化合物は、VEGF−誘導性の増殖及び遊走を相乗的に阻害する
実施例1〜実施例3に記載されるのと同様の手順に従ってアッセイを行った。メチルナルトレキソン及び5−FUが内皮細胞のVEGF誘導性増殖を相乗的に阻害することが観察された(図23)。同様に、メチルナルトレキソン及びベバシズマブが内皮細胞のVEGF誘導性遊走を相乗的に阻害することが観察された(図24)。
【0154】
実施例11:種々の癌株化細胞へのMNTXの効果
メチルナルトレキソン単独及び他の抗癌剤と組み合わせたメチルナルトレキソンの抗増殖性効果を評価した。概して、ヒト癌細胞は当業界において知られる適切な条件下で増殖させることができた。該細胞を次に、MNTX及び/又は5−フルオロウラシル(5−FU)若しくはビークル(vehicle)で、2〜3日間処理し、該細胞をカウントした。ビークル処理した細胞をコントロールとして、それ自体の細胞数を100%増殖とした。処理群の細胞数をパーセントコントロールとして計算した。
ヒト結腸直腸癌株化細胞SW480へのMNTXの効果を評価した。図25に示されるとおり、MNTX自身がSW480細胞における抗増殖性活性を保有することが観察された(**、コントロールと比べてp<0.01)。さらに、MNTXは5−FUの殺腫瘍性効果を増強した(*、ほぼこの細胞株に関してのIC50である5−FU 10μM単独と比べてp<0.05)。それぞれ図26、27及び28に示されるとおり、同様の結果が、ヒト結腸直腸癌株化細胞HCT116、ヒト乳癌細胞MCF−7及び非小細胞肺癌細胞(NSLCC)株で得られた。
【0155】
要約すれば、本発明は、それを必要とする患者の組織又は器官における血管形成(angiogenesis)に関連する内皮細胞遊走及び/又は内皮細胞増殖を減弱する方法、及び/又は内皮細胞関門機能(barrier function)を向上させる方法を提供し、当該方法は1つ以上のオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを、当該患者へ当該遊走及び/又は当該増殖及び当該血管形成(angiogenesis)を阻害するための有効量、及び/又は関門機能(barrier function)を向上させるための有効量で投与することによる。本発明の方法はまた、オピオイド治療を受けている患者へ末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することであってもよい。末梢性μオピオイドアンタゴニストが、とりわけ適切であってもよい。本発明はまた、それを必要とする患者へオピオイド及び末梢性オピオイドアンタゴニストを共投与する方法をも提供する。末梢性オピオイドアンタゴニストはまた、オピオイド及び末梢性オピオイドアンタゴニストの組み合わせが抗癌剤と共に共投与されてもよいように、抗癌剤と共に共投与されてもよい。
【0156】
本発明がここにある限定性を伴って記載され例示されてきた一方で、当業者は、記載されてきたことの中から構成されてもよいバリエーション、追加、省略を含む種々の変更を十分に理解することができる。従って、これらの変更がまた本発明によって包含されるべきであり、さらに、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲に適法に許容することのできる最も広い解釈によってのみ限定されるべきであることが意図される。
【0157】
本明細書で引用する全ての特許、出版物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に取り込まれる。本開示と取り込まれる特許、出版物及び参考文献との間に矛盾がある場合には、本開示が支配するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、実施例1の結果を描いたヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図2】図2は、実施例2の結果を描いたヒト微小血管内皮細胞遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図3】図3は、MNTX及びMNTX+DAMGOを用いたHMVEC遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図4】図4は、ナロキソン及びナロキソン+DAMGOを用いたHMVEC遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図5】図5は、HMVEC遊走におけるM3G及びM6Gの濃度依存的効果の棒グラフである。
【図6】図6は、MNTX存在下及び非存在下でのモルヒネ誘導性内皮細胞遊走を示す顕微鏡写真である。パネルA=コントロール、パネルB=MS(硫酸モルヒネ)、パネルC=MNTX、及びパネルD=MS+MNTX である。パネルAにおいて示される矢印は、首尾良く膜を越えて遊走したいくつかの細胞を強調するためのものである。
【図7】図7は、MNTXあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖(A)及びパーセント遊走(B)の棒グラフである。
【図8】図8は、MNTXあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞における免疫沈降されたVEGFR.1(Flt−1)又はVEGFR.2(Flk−1)及び抗リン酸化チロシンを用いた抗VEGFR.1及び抗VEGFR.2のチロシンリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネル(A)並びにVEGFR.阻害剤あり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGOの存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖及びパーセント遊走の棒グラフ(B)である。
【図9】図9は、MNTX(A)あり若しくはなし、又はVEGFR.阻害剤(B)あり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞における抗RhoAを用いたRhoAの活性化を示す免疫ブロットのパネルである。
【図10】図10は、スクランブルsiRNA(何らの既知のヒトmRNA配列も標的としない)又はRhoA siRNA存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の抗RhoAの免疫ブロットのパネル(A)並びにスクランブルsiRNA(何らの既知のヒトmRNA配列も標的としない)若しくはRhoA siRNAあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖(B)及びパーセント遊走(C)の棒グラフである。
【図11】図11は、血管形成へのMNTX効果の機構を要約する模式図である。
【図12】図12は、MNTXあり若しくはなしのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図13】図13は、MNTXあり若しくはなしのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図14】図14は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはμオピオイドレセプターsiRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図15】図15は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはμオピオイドレセプターsiRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図16】図16は、免疫沈降されたμオピオイドレセプター及び抗リン酸化セリン(A、C)、抗リン酸化スレオニン(B、D)を用いたMNTXあり(C、D)若しくはMNTXなし(A、B)のモルヒネ、DAMGO、S1P、VEGF、PDGF存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のμオピオイドレセプターのリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネルである。
【図17】図17は、MNTXあり(B)及びMNTXなし(A)のモルヒネ、DAMGO、S1P、VEGF、PDGF存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の活性化型RhoA(A、B)及び総RhoA(C)の抗RhoA免疫ブロットである。
【図18】図18は、MNTXあり(各々のパネル中のB)若しくはMNTXなし(各々のパネル中のA)のモルヒネ、DAMGO、VEGF(上のパネル)又はPDGF(下のパネル)の存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の上のパネル:抗リン酸化チロシン(A、B)、抗VEGFR(C)並びに下のパネル:抗リン酸化チロシン(A、B)、抗PDGFR(C)の免疫ブロットのパネルである。
【図19】図19は、免疫沈降されたS1P3レセプター及び抗リン酸化チロシン(A、B)、抗S1P3 Rを用いたMNTXあり(B)若しくはMNTXなし(A)のモルヒネ、DAMGO及びS1P存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のS1P3レセプターのチロシンリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネルである。
【図20】図20は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはRhoA siRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図21】図21は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはRhoA siRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図22】図22は、RhoA活性化及び血管形成へのMNTX効果の機構を要約する模式図である。
【図23】図23は、MNTXとVEGFの存在下、5−FUとVEGFの存在下、並びにMNTX及び5−FUの組合せとVEGFの存在下での微小血管内皮細胞のコントロールを越える増殖パーセントのグラフである。
【図24】図24は、MNTXとVEGFの存在下、ベバシズマブとVEGFの存在下、並びにMNTX及びベバシズマブの組合せとVEGFの存在下での微小血管内皮細胞のコントロールを越える遊走パーセントのグラフである。
【図25】図25は、ヒト結腸直腸癌株化細胞SW480へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図26】図26は、ヒト結腸直腸癌株化細胞HCT116へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図27】図27は、ヒト乳癌株化細胞MCF−7へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図28】図28は、非小細胞肺癌細胞(NSLCC)株へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は内皮細胞の遊走及び/又は内皮細胞の増殖、とりわけ腫瘍に関連する内皮細胞の遊走及び/又は内皮細胞の増殖のオピオイドアンタゴニストを利用する減弱方法と関連する。
【背景技術】
【0002】
(連邦政府支援研究又は連邦政府支援開発に関する陳述)
本発明は国立保健研究所助成:DE12322;DE00470;及びDE015830によって一部分支援された。米国政府は本発明におけるいくらかの権利を有する。
【0003】
(緒言)
細胞増殖は全ての生命体における正常な持続的過程であり、規則正しい細胞周期を維持するために繊細にバランスを保たれる非常に多くの因子及びシグナルを含んでいる。哺乳類細胞が増殖する及び分裂するのかどうかは、様々なフィードバック調節機構によって決定され、これには細胞が増殖することができるスペースの利用可能性並びに周辺環境における特異的な刺激性及び阻害性の因子の分泌が含まれる。
【0004】
血管形成(Angiogenesis)及び血管形成関連性疾患(angiogenesis-related diseases)は、細胞増殖に影響される。血管形成(angiogensis)の過程は結果として、新たな血管の形成をもたらす。正常な生理的条件下で、ヒトを含む動物は極めて特定の限られた状況においてのみ血管形成(angiogensis)を経験する。例えば、血管形成(angiogensis)は創傷治癒、胎児及び胚の発生並びに黄体、子宮内膜及び胎盤の形成において正常に観察される。
血管形成(angiogensis)の過程の間、既存の血管の一部として静止状態で正常に存在する内皮細胞は、遊走性増殖性状態に入る。当該内皮細胞の遊走性増殖性状態は、当該細胞が機能的な新たな血管の一部として静止状態に戻る際に最終的に解消される。新たな毛細血管の生成は、空間的様式及び時間的様式の両方で起こる多くの細胞イベント及び分子イベントを必要とする複雑な過程を含む。これらの活動のいくつかには、元の血管の周囲の基底膜の分解、結合組織間質を通る内皮細胞の遊走、細胞増殖、チューブ様構造の形成及びこれらの内皮細胞に裏打ちされるチューブの新たな血管への成熟が含まれる(Cliff, 1963; Schoefl, 1963; Ausprunck and Folkman, 1977)。いくつかの重要な血管形成因子(angiogenic factors)には、塩基性繊維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、サイトカイン、細胞外マトリクスタンパク及びマトリクスメタロプロテアーゼが含まれる。これらの因子は、間質細胞によって及び当該領域へ補充される活性化型白血球によって局所的に産生される(Risau, W. (1997) Nature 386(6626):671-674; Risau and Flamme (1995) Ann. Rev. Cell Dev. Biol. 11:73-91)。他の血管形成因子(angiogenic factors)とは違って、VEGFは、血管形成(angiogensis)の間の内皮細胞特異的な分裂促進因子としての役割を果たす(Terman et al., 1992 及び Ferrara, 1993)。
【0005】
いくつかの新生物(例えば、腫瘍)は、血管形成(angiogensis)を刺激して利用することができ、これにより栄養分の取り込みを上昇させることができる。血管形成(angiogensis)は直径2mm〜3mmを超える固形腫瘍の増殖に関して及び腫瘍転移に関して必須のものであることが分かった(Folkman, 1995; reviewed in Bouck et al., 1996)。吻合及び毛細血管成熟をもたらす正常な血管形成(angiogensis)とは対照的に、新生組織形成に関連する血管形成(angiogensis)は持続的過程である。内皮細胞は近傍の新生細胞によって活性化されて血管形成(angiogensis)を刺激するVEGFのみならず周囲の細胞外マトリクスを分解するマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)をも分泌する。次に当該内皮細胞は細胞外マトリクスに浸潤し、そこで遊走し、増殖し、組織化して新たな血管を形成し、これにより新生物増殖及び新生物生存が支持される。
【0006】
新たに血管新生化された新生物は、増殖し続けてさらなる栄養分欠乏及び慢性的な血管形成促進性シグナル伝達をもたらす。新生物の脈管構造は、くぼみの存在及び低い割合の吻合を特徴とする。この部分的な機能障害性脈管構造は、血管形成(angiogensis)に関する永続的な要求を増幅させる。さらに、この不完全な脈管構造は、新生細胞を体循環へ流すことを可能にする。従って、新生物の血管形成能(angiogenic potential)は、転移能と関連する(Weidner et al. (1991) N. Engl. J. Med. 324(1):1-8; Folkman and Shing (1992) J. Biol. Chem. 267(16):10931-10934)。
【0007】
新生物の重要な割合は持続的な血管形成(angiogensis)に依存するので、血管形成(angiogensis)の阻害は新生物増殖をブロックし、多くの場合当該新生物の完全なネクローシスをもたらす(Weidner et al. (1991) N. Engl. J. Med. 324(1):1-8; Folkman and Shing (1992) J. Biol. Chem. 267(16):10931-10934)。
【0008】
血管形成(angiogensis)に関わる当該過程のいずれかの抑制及び/又は当該過程のいずれかの因子の抑制は新たな血管の形成を阻害することができ、従って、腫瘍増殖及び腫瘍転移の発生に作用を及ぼすことができる。実際に、1つの内皮細胞の排除が100個の腫瘍細胞の増殖を阻害することができることが見積もられた(Thorpe et al.m 1995)。血管形成因子(angiogenic factor)VEGFに対して生み出された抗体がインビボで腫瘍増殖を抑制することを示すことも分かった(Kim et al., 1993)。
【0009】
癌及び多くの医学的な状態を有する患者を治療すること及び管理することの一部として、モルヒネのようなオピオイドアゴニストが関連する疼痛のために広く使用されている。例えば、モルヒネは、米国で毎年癌で亡くなる患者の約半数の末期の看護において使用されている。モルヒネのようなオピオイドアゴニストには、生物系中のμレセプター、κレセプター及びδレセプターのような内因性オピオイドレセプターのシリーズに作用する化合物の群が含まれる。通常、これらの内因性レセプターは、内因性オピオイドに結合する。内因性オピオイドは、哺乳類細胞によって自然的に産生される。内因性オピオイドには、βエンドルフィン、エンケファリン及びダイノルフィンが含まれる。βエンドルフィンはμレセプターへの優先性を示し、エンケファリンはδレセプターへの優先性を示し、さらにダイノルフィンはκレセプターへの優先性を示す。オピオイドアゴニストは、それらの内因性オピオイドレセプターへの優先的効果によって分類される。概して、μレセプターは、疼痛緩和及び化学的依存性(例えば、薬物依存及びアルコール依存)に関連する。例えばモルヒネは、μオピオイドアゴニストである。オピオイドレセプターは、脳及び中枢神経系(CNS)、例えば、中枢性レセプター(central receptor)に限定されない。末梢性オピオイドレセプターは、全身の他の組織、例えば胃腸組織で検出されうる。
【0010】
疼痛管理における広範な使用にもかかわらず、モルヒネ及び他のオピオイド医薬は、末梢性レセプターの活性化によって引き起こされるかもしれない深刻な副作用を起こしうる。当該副作用は管理しがたく、結果としてオピオイド基盤の疼痛管理の患者による拒絶をもたらしうる。オピオイド治療の副作用には、悪心、便秘、消化管運動の阻害、呼吸抑制及び免疫抑制が含まれる。さらに、モルヒネ及び他のオピオイドレセプターアゴニストは、標準的なモルヒネの血中濃度又はモルヒネと等価な血中濃度でインビトロ及びインビボにおけるヒト微小血管内皮細胞増殖及び血管形成(angiogensis)を刺激することができる。オピオイドアゴニストのこの血管形成促進性活性(pro-angiogensis activity)は、オピオイドアゴニストが疼痛に関する緩和剤である一方で、腫瘍増殖を加速するかもしれない。
【0011】
オピオイドアンタゴニストも同様に、オピオイドレセプターへのそれらの効果によって、例えば、あるレセプターに他のレセプターよりもより効果的に拮抗するというそれらの能力によって分類される。例えば、オピオイドアンタゴニストのナロキソンは全てのオピオイドレセプターで競合的アンタゴニストとして機能するが、κレセプターでよりもμレセプターで約10倍より有効であり、従って、μオピオイドアンタゴニストとして分類される。オピオイドアンタゴニストは、中枢性レセプター(central receptor)、末梢性レセプター又はその両方に拮抗するかもしれない。オピオイドアンタゴニスト及びとりわけ末梢性オピオイドアンタゴニストは、過剰の内因性オピオイドの好ましくない効果を減らすためだけでなく外因的に投与されるオピオイドの副作用を減らすために使用されてきた。オピオイドアンタゴニストはまた、米国特許No. 6,384,044 及び 6,136,780 並びに化学論文 Gupta et al. Cancer Research, 62: 4491-98 (2002) に記載されるとおり、特定の型の癌に関する抗癌剤としてのそれらの潜在的用途に関しても検討されてきた。オピオイドアンタゴニストの抗癌効果は賛否両論あり十分に理解されていないが、オピオイドアンタゴニストの抗癌効果は、それらが少しでも示される限りは、血管形成(angiogensis)とは無関係であることが維持される(Poonawala T, et al., Wound Repair Regen. 2005 Mar-Apr;13(2):165-74; Popov I., Acta Chir Iugosl. 2004;51(2):117-21; Blebea J, et al., J Vasc Surg. 2002 Mar;35(3):532-8; Balasubramanian S, et al., J Mol Cell Cardiol. 2001 Dec;33(12):2179-87; Zagon IS, et al., Int J Oncol. 2000 Nov;17(5):1053-61; Blebea J et al., J Vasc Surg. 2000 Aug;32(2):364-73; Pasi A, et al., Gen Pharmacol. (991;22(6):1077-9.))。実際に、マウスの異種移植腫瘍モデルにおいて、オピオイドアンタゴニストのナロキソンがモルヒネ誘導性血管形成(angiogensis)に有意な効果を発揮しなかったことが報告されている(Gupta et al. Cancer Research, 62: 4491-98 (2002))。従って、オピオイドアンタゴニストが血管形成(angiogensis)に関連する内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を阻害することができることがここに発見されることは驚くべきことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な説明)
本発明は、末梢限局的アンタゴニストであってもよいがこれに限定されないオピオイドアンタゴニストを用いた細胞増殖及び細胞遊走、とりわけ血管形成(angiogensis)に関連するものであってもよい内皮細胞増殖及び内皮細胞遊走を減弱する、例えば、阻害する又は低減する方法を提供する。
【0013】
本発明のある側面に従って、治療方法が提供される。当該方法は、内皮細胞の好ましくない遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。当該治療は、遊走及び増殖の1つ又は両方を阻害してもよい。当該好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖は、好ましくない血管新生(neovascularization)又は血管形成(angiogenesis)であってもよいがこれらに限定されない好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖であってもよい。好ましくない血管新生の例としては、癌の血管新生及び目の血管新生に関連する血管新生が挙げられるが、これらに限定されない。疾患は、好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とするいずれの疾患であってもよい。重要な当該疾患は、癌、鎌状赤血球貧血、血管損傷(vascular wounds)、増殖性網膜症並びに腎臓及び肺での好ましくない内皮細胞増殖である。
【0014】
重要な実施態様において、当該オピオイドアンタゴニストは、末梢性オピオイドアンタゴニストである。末梢性オピオイドアンタゴニストとしては、第四級の若しくは第三級のモルフィナン誘導体、ピペリジン-N-アルキルカルボキシラート及び第四級のベンゾモルファンが挙げられるが、これらに限定されない。ある重要な当該末梢性オピオイドアンタゴニストは、メチルナルトレキソンである。他のオピオイドアンタゴニストは、アルビモパンである。重要な実施態様において、有効量は、患者が持続的に少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、好ましくは少なくとも4週間前記オピオイドアンタゴニストの有効な循環血の血漿レベルを有するような量である。
【0015】
本発明はまた、オピオイドアンタゴニストではないがそれにもかかわらず内皮細胞の好ましくない遊走又は増殖を特徴とする疾患の治療に有用な薬剤とのオピオイドアンタゴニストの共投与であってもよい。当該薬剤の例としては、抗癌剤、抗血管新生剤(例えば、抗VEGFモノクローナル抗体)、抗糖尿病剤、抗鎌状赤血球剤、創傷治癒剤及び抗内皮細胞増殖剤が挙げられる。
【0016】
患者が患者の有する特定の疾患、当該疾患の重症度及び患者が疼痛管理に関して有する要求に応じて併用のオピオイド治療を受けていてもよいし又は受けていなくてもよいことが理解される。いくつかの実施態様において、患者は併用のオピオイド治療を受けている。いくつかの実施態様において、患者は併用のオピオイド治療を受けていない。いくつかの実施態様において、患者は慢性的オピオイド治療の併用を受けている。いくつかの実施態様において、患者は慢性的オピオイド治療の併用を受けていない。
【0017】
本発明の他の側面に従って、内皮細胞におけるVEGF活性の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
本発明の他の側面に従って、内皮細胞における外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
【0018】
本発明の他の側面に従って、内皮細胞におけるRhoA活性化の阻害方法が提供される。当該方法は、当該細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。
上述のいずれの実施態様に従っても、当該オピオイドアンタゴニストは、好ましくは末梢性オピオイドアンタゴニストであり、さらにより好ましくはメチルナルトレキソンである。
【0019】
本発明は腫瘍又は癌の内皮細胞の遊走及び/又は増殖を減弱する方法を提供し、当該方法は当該細胞を抗遊走性量又は抗増殖性量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む。他の側面において、本発明は、癌に関連する血管形成(angiogensis)を減弱する方法を提供する。従って、本発明は、ヒト癌患者を治療すること、例えば、当該患者の癌組織へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む当該患者の癌性組織における血管形成(angiogensis)を減弱する方法によってヒト癌患者を治療することを熟慮する。
【0020】
本発明はまた、当該治療を必要とする患者へ血管の形成を阻害するのに有効な量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む異常な血管新生の治療方法を提供する。
本発明にはまた、腫瘍細胞又は腫瘍組織を増殖を阻害する量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む動物組織における腫瘍進行(tumor progression)及び腫瘍転移を減弱する方法、及び患者へ少なくとも1つのオピオイドアンタゴニストを過剰増殖細胞の増殖を減弱するのに有効な量で投与することを含む当該患者における過剰増殖細胞の増殖を減弱する方法が含まれる。
【0021】
ある実施態様において、当該方法は、癌の発生(development)又は再発を治療若しくは阻害するために、末梢性オピオイドアンタゴニスト、特にノルオキシモルフォンの第四級誘導体を癌の患者へ投与することを含み、癌は血管形成(angiogenesis)を伴うか又は伴わない。血管形成(angiogenesis)を伴わない癌には、新脈管構造(neovasculature)によって栄養を供給される固形癌の形成を含まないものを含む。ある種の血液細胞癌、例えば、白血病(白血球細胞又は白血球の癌)、リンパ腫(リンパ節又はリンパ球細胞で発生する)、及び骨髄成分の癌のいくつかは、このカテゴリーに分類される。従って、本発明のある側面において、治療方法が提供される。該方法は、細胞の異常増殖を特徴とする疾患を伴う患者へ有効量の末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。ある実施態様においては、該細胞は癌細胞である。該癌細胞は、血管形成(angiogenesis)を伴う又は血管形成(angiogenesis)を伴わない癌細胞であってもよい。ある実施態様においては、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。
【0022】
さらなる実施態様において、本発明は、末梢性オピオイドアンタゴニストと、オピオイド若しくはオピオイドアンタゴニストではない少なくとも一つの他の治療剤とを患者へ共投与する、癌の治療方法を提供する。適した治療剤としては、抗癌剤(化学療法剤及び抗悪性腫瘍剤を含む)、並びに他の抗血管形成剤(antiangiogensis agent)が挙げられる。オピオイドアンタゴニストの種々の抗癌剤、放射線療法又は他の抗血管形成剤(antiangiogensis agent)との共投与が癌性細胞への著しく増強された抗増殖性効果を生じさせることができ、従って、増大した治療効果をもたらすことが見出され、例えば、ある種の腫瘍へ末梢性オピオイドアンタゴニストを用いることによって、他の治療レジメンへのそれらの応答を増強することができる。特に、著しく増大した抗血管形成効果(antiangiogenic effect)であってもよいがこれに限定されない、著しく増大した抗増殖性効果は、以下により詳細に記載される共投与される組合せで得られる。既存のレジメンを増強することができるだけではなく、新たなレジメンも可能であり、従って、例えば、薬剤又は放射線を単独で用いる治療レジメンと比較して、抗癌化合物のより低い濃度、放射線のより低い線量、又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drug)のより低い濃度がもたらされる。従って、抗癌剤、他の抗血管形成剤(antiangiogenic drug)又は放射線療法に伴う有害副作用が、抗癌剤、他の抗血管形成剤(antiangiogenic drug)又は放射線療法を単独で用いる際に通常観察されるよりも、かなり低減した治療を提供する潜在性が存在する。従って、本発明のある側面において、治療方法が提供される。該方法は、細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ、有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤(antiangiogenic agent)を投与することを含む。ある実施態様においては、該細胞は癌細胞である。ある実施態様においては、該オピオイドアンタゴニストは末梢性オピオイドアンタゴニストである。ある実施態様においては、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。本発明の他の側面において、医療介入後の患者における癌の再発リスクを低減する方法が提供される。該方法は、該医療介入前(before)、間(during)又は後(after)に、該患者へ、有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤(antiangiogenic agent)を投与することを含む。ある実施態様において、該オピオイドアンタゴニストは末梢性オピオイドアンタゴニストである。ある実施態様において、該末梢性オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンである。
【0023】
ある実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、隣接作用的に(peri-operatively)使用される。“隣接作用的に(peri-operatively)”とは、外科手術又は外科的若しくは内視鏡的な方法、例えば、大腸内視鏡、胃腹腔鏡及びとりわけ腫瘍の除去を含む外科手術又は外科的方法の直前(例えば、これらに備えて)、それらの間及び/又はそれらの直後であることを意味する。オピオイドアンタゴニストは、腫瘍の再発及び/又は腫瘍の転移、とりわけそれらに関連する血管形成(angiogensis)に起因する腫瘍の再発及び/又は腫瘍の転移を減弱するように作用する。
【0024】
オピオイドアンタゴニストが好ましくは持続的な投薬レジメン、例えば、最小血中レベルを維持する、さらにより好ましくは比較的一定の血中レベルを維持するレジメンで与えられることが見込まれる。本発明の方法が異常な血管形成(angiogensis)に関連する特定の疾患における予防的有用性を有していてもよいことが熟慮される。従って、本発明は哺乳類における疾患の出現又は再出現を抑制する方法を提供し、当該疾患は異常な血管形成(angiogensis)であってもよい好ましくない内皮細胞遊走又は内皮細胞増殖を特徴とし、当該方法は当該治療を必要とする哺乳類へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含み、当該疾患は癌、鎌状赤血球貧血、眼の血管新生疾患(ocular neovascular disease)、糖尿病、眼の網膜症(ocular retinopathy)又は腎臓、眼若しくは肺における他の好ましくない内皮細胞増殖である。従って本明細書で使用されるとおり、好ましくない内皮細胞増殖又は内皮細胞遊走を特徴とする疾患を有する患者を治療することには、当該疾患を阻害又は治療するために活動性疾患を有する患者を治療すること及び疾患の再発生を阻害するために患者を治療することが含まれる。例えば、患者は固形腫瘍を除去されてもよく、さらに患者は当該腫瘍が再発生するのを阻害するために治療を受けてもよい。
【0025】
細胞増殖を減弱することで、本発明は哺乳類において血管内皮増殖因子(VEGF)を発現する細胞の異常な細胞増殖の治療のための方法を提供し、当該方法は当該哺乳類へ治療的有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。本発明にはまた、組織又は内皮細胞の集団を少なくとも1つのオピオイドアンタゴニストのVEGF誘導性血管形成(angiogensis)を阻害するのに有効な条件下の量及び血管形成疾患(angiogenic disease)を治療するのに有効な条件下の量を含む組成物に接触させることを含む血管形成疾患の治療方法だけでなく、癌性組織におけるVEGF産生を阻害するのに十分な量のオピオイドアンタゴニストを患者へ投与することを含む当該患者における癌性組織の治療方法も含まれる。
【0026】
他の側面において、本発明は血管形成(angiogensis)、とりわけオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)(例えば、腫瘍細胞の)を阻害する又は低減する方法を提供し、当該方法は、オピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを血管形成(angiogensis)を経験する細胞へ投与すること又は提供することによる。さらなる側面において、本発明は、オピオイド治療を受けている患者における又は血管形成(angiogensis)が内因性オピオイドによって誘導される患者におけるオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)の治療方法を提供する。前者のグループは概して、オピオイド基盤の疼痛管理中の癌患者である。当該方法は、オピオイドアンタゴニストを抗血管形成量(antiangiogenic amount)で、例えば、オピオイド誘導性血管形成(angiogensis)を阻害する又は低減するのに十分な量で患者へ投与することを含む。オピオイド治療を受けている患者において、当該オピオイドと末梢性オピオイドアンタゴニストは共投与されてもよい。従って、末梢性オピオイドアンタゴニストは腫瘍細胞でのオピオイドの血管形成効果(angiogenic effects)を阻害する又は低減するため及び腫瘍の増殖を減弱するために用いることができる。適切なオピオイドアンタゴニストは概して、種々の異なる部類の化合物に属する複素環式アミン化合物であってもよい。例えば、ある部類は適切にモルフィナンの第三級誘導体、及びとりわけ、ノルオキシモルフォンの第三級誘導体である。ある実施態様において、当該ノルオキシモルフォンの第三級誘導体は、例えば、ナロキソン又はナルトレキソンである。
【0027】
適切な末梢性オピオイドアンタゴニストはまた概して、種々の異なる部類の化合物に属してもよい複素環式アミン化合物である。例えば、ある部類は適切にモルフィナンの第四級誘導体、及びとりわけノルオキシモルフォンの第四級誘導体である。ある実施態様において、当該ノルオキシモルフォンの第四級誘導体は、例えば、N-メチルナルトレキソン(又は、簡単にメチルナルトレキソン)である。他の部類は、N置換型ピペリジンである。ある実施態様において、当該N-ピペリジンは、ピペリジン-N-アルキルカルボニラート、例えば、アルビモパンのようなものである。本発明の方法に有用であってもよい他の部類の化合物は、ベンゾモルファンの第四級誘導体である。
【0028】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストはμオピオイドアンタゴニストであってもよい。他の実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、κオピオイドアンタゴニストであってもよい。本発明はまた、μアンタゴニストの組み合わせ、κアンタゴニストの組み合わせ及びμアンタゴニストとκアンタゴニストの組み合わせ、例えば、メチルナルトレキソンとアルビモパンの組み合わせ又はナルトレキソンとメチルナルトレキソンの組み合わせを含む1つを超えるオピオイドアンタゴニストの投与をも包含する。
【0029】
さらなる実施態様において、本発明は、オピオイドを受けている患者におけるオピオイド誘導性血管形成(angiogensis)の治療方法を提供し、末梢性オピオイドアンタゴニスト及びオピオイド若しくはオピオイドアンタゴニストではない少なくとも1つの他の治療薬が当該患者へ共投与される。適切な治療薬としては、他の抗血管形成剤(anti-angiogensis agents)だけでなく抗癌剤(化学療法剤及び抗悪性腫瘍剤を含む)が挙げられる。
【0030】
さらに他の側面において、本発明は、医療介入(当該介入は、外科手術、例えば、肺の外科手術、外科的及び内視鏡的方法、例えば、大腸内視鏡、胃腹腔鏡、化学療法などであってもよいが、これらに限定されない)後の癌又は腫瘍の再発リスクを低減する方法を提供し、当該方法は、癌患者へオピオイドアンタゴニストを共投与することを含む。従って、本発明は例えば、手術後の再発、例えば患者における乳癌の再発を最小限にする方法を熟慮し、当該方法は、当該患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む。本発明に従う末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、MNTXはまた、内皮細胞におけるVEGF、血小板由来増殖因子(PDGF)又はスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の刺激性若しくは誘導性細胞増殖を阻害することもできる。
【0031】
本発明は、添付の図面と共に本明細書に提示される詳細な説明及び特定の実施態様を参照することによってよりよく理解され、十分に理解されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、内皮細胞の異常な若しくは好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱する方法を提供する。従って、本発明は、オピオイドアンタゴニストを使用することによる患者の組織又は器官における血管形成(angiogensis)を減弱する方法並びに哺乳類における血管形成に関連する(angiogenic related)疾患及び他の過剰増殖性疾患を治療するための新たなアプローチを提供する。例えば、上述のとおり、固形腫瘍は、当該腫瘍の内部の細胞へ栄養分を届けるための新たな血管の生成に依存する。血管形成(angiogensis)に関して要求される増殖因子は当該腫瘍細胞によって生成することができるか又はその代わりとしてオピオイドのような外因性因子が新たな血管増殖を刺激することができる。本発明はオピオイドアンタゴニストを使用することによって、当該腫瘍細胞自身ではなくむしろ当該腫瘍の内部での新たな血管の生成が標的である当該腫瘍の治療への新たな治療的アプローチを提供する。当該治療は、抵抗性腫瘍細胞の発生をそう簡単にもたらさない。
【0033】
本明細書に記載されるオピオイドアンタゴニストは、内因性若しくは外因性のオピオイド及びVEGF、PDGF、S1Pなどのような増殖因子によって誘導される増殖及び遊走を阻害する。末梢性オピオイドアンタゴニストはとりわけ、オピオイド誘導性及び増殖因子誘導性の内皮細胞の増殖及び遊走を阻害するかなりの有効性を示した。末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン(MNTX)は、濃度依存的にオピオイド誘導性及び増殖因子誘導性の増殖及び遊走の両方を阻害した。さらに、ナロキソンはまた、オピオイド誘導性の内皮遊走を阻害した。しかしながら、注目すべきは、DAMGO誘導性の内皮細胞の遊走のナロキソン阻害が比較的高いマイクロモル濃度のナロキソンで起きたことである。さらに、オピオイドアンタゴニスト及びとりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストであるMNTXが、レセプターリン酸化の阻害及び/又はトランス活性化の阻害及びそれに続くRhoA活性化の阻害によってアゴニスト誘導性の内皮細胞(EC)増殖及び遊走を阻害することがここに発見された。当該アゴニストは、内因性及び/又は外医院性のオピオイド、血管形成因子(angiogenic factors)(VEGF)及び他の増殖刺激性因子及び/又は遊走刺激性因子(PDGF、S1P、S1P3レセプター、RhoAなど)であってもよい。これらの結果は、オピオイドアンタゴニストによる血管形成(angiogensis)の阻害が他の疾患のうちで癌に関して有用な治療介入となり得ることを示唆する。
【0034】
本発明はまた、癌細胞それ自身の異常な若しくは好ましくない増殖を減弱する方法も提供する。本発明のこの側面は、血管形成活性(angiogenic activity)の存在又は非存在を伴う状態に有用である。血管形成活性(angiogenic activity)の非存在は、以下の特徴の一つ以上によって証明される:非固形腫瘍又は既存の血管の反発(repulsion)が存在する及び/又は腫瘍中に微小血管が存在しない腫瘍、限定的な増殖、例えば、インビボで約1mmまでの直径(その時点でさらなる拡大(expansion)が停止される)、血管形成性フェノタイプ(angiogenic phenotype)へ切り替わるまで宿主へ無害である等。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)は、完全に無血管性であってもよいし又は赤血球なしで空の管腔を含みうる。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)と血管形成性腫瘍(angiogenic tumor)との間の全体としての違いは(つまり、白腫瘍(white tumor)対赤腫瘍(red tumor))、血管形成性転換(angiogenic switch)が既に低酸素の腫瘍で達成された後の血流の発生(onset)に付随する反応性充血に起因する可能性が最も高い。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)系列の例としては、乳腺癌、骨肉腫、神経膠芽腫、胚腎臓腫瘍(embryonic kidney tumor)等が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍の休眠に関与することのできる多くの因子が存在し、非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)の腫瘍拡大(tumor expansion)に関する律速段階は、血管形成(angiogenesis)及び/又は分化プログラム、腫瘍細胞生存、宿主への応答等の欠如により制御されうる。非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)のいくらかは血管形成性フェノタイプ(angiogenic phenotype)へ転換することはないが、多くは血管形成性(angiogenic)かつ有害なフェノタイプへの自然形質転換を経験する。従って、非血管形成性腫瘍(nonangiogenic tumor)の治療は、治療上重要である。
【0035】
血管形成(angiogenesis)を伴わない癌は、新脈管構造によって栄養を供給される固形癌の形成を含まないものを含む。ある種の血液細胞癌、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及び有毛細胞白血病を含む白血病;ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、中枢神経系原発リンパ腫を含むリンパ腫(リンパ節又はリンパ細胞で生じる);並びにユーイング肉腫及び骨肉腫を含む骨髄成分の癌のいくつか等は、このカテゴリーに分類することができる。
【0036】
本発明のいずれの実施態様が明らかにされる前に、本発明が以下の記載で示される又は添付される図面の描画で明らかにされる本発明の構造及び機能の当該詳細へのその適用に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施態様であってもよく、種々の様式で実施することができ又は実行することができる。また、本明細書で用いられる表現及び専門用語が記述の目的であり、限定するものとみなされるべきでないことも理解されるべきである。本明細書における“含む(including)”、“含む(comprising)”又は“有する(having)”のような用語及びそれらのバリエーションの使用は、付加的な事項だけでなくその後に記載される事項及びそられの対応する言葉を包含することを意図する。
【0037】
特に断りのない限り、技術用語は慣例的用法に従って使用される。しかしながら、本明細書で使用されるとおり、以下の定義が本発明の理解をする際に技術を有する実施者を助けるのに有用であってもよい。
【0038】
“患者”は、ヒト、イヌ、ネコ及びウマについて言及する。
“慢性的オピオイド使用”は、当業界で周知のとおり、事前のオピオイド使用の結果として治療効果を実現するのに十分に高いレベルのオピオイドに関する必要性について言及し、またこれにより特徴付けられる。本明細書で使用されるとおりの慢性的オピオイド使用は、1週間以上の毎日のオピオイド治療又は少なくとも2週間の断続的オピオイド使用であってもよい。
【0039】
“アルキル”は、飽和され、当該鎖中に1個〜約10個の炭素原子を有する直鎖、分鎖又は環状であってもよい脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。
“低アルキル”は、1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基について言及する。
【0040】
“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、当該鎖中に2個〜約10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルケニル基の例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基が挙げられる。
【0041】
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、当該鎖中に2個〜約10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。アルキニル基の例としては、エチニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基が挙げられる。
【0042】
“アルキレン”は、1個〜約6個の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の鎖のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該アルキレン基は、直鎖、分鎖又は環状であってもよい。当該アルキレン基の間に1個以上の酸素原子、硫黄原子又は置換されていてもよい窒素原子が挿入されていてもよく、当該窒素置換基は既に記載されたとおりのアルキルである。
【0043】
“アルケニレン”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むアルキレン基について言及する。アルケニレン基の例としては、エテニレン(-CH=CH-)及びプロペニレン(CH=CHCH2-)が挙げられる。
【0044】
“シクロアルキル”は、約3個〜約10個の炭素を有するいずれの安定的な単環式又は二環式の環、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該シクロアルキル基は、1つ以上のシクロアルキル基置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0045】
“シクロアルキル置換型アルキル”は、末端炭素がシクロアルキル基で、好ましくは、C3−C8シクロアルキル基で置換される直鎖アルキル基、好ましくは低アルキル基について言及する。シクロアルキル置換型アルキル基の例としては、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロプロピルメチルなどが挙げられる。
【0046】
“シクロアルケニル”は、約4個〜約10個の炭素を有するオレフィン的に(olefinically)不飽和な脂環式基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。
“アルコキシ”は、アルキル-O-基について言及し、アルキルは上述のとおりである。アルコキシ基の例としては例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びヘプトキシが挙げられる。
“アルコキシ-アルキル”は、アルキル-O-アルキル基について言及し、アルキルは上述のとおりである。
【0047】
“アシル”は、アルキル-CO基を意味し、アルキルは上述のとおりである。アシル基の例としては、アセチル、プロパノイル、2-メチルプロパノイル、ブタノイル及びパルミトイルが挙げられる。
“アリール”は、約6個〜約10個の炭素を含む芳香族炭素環式遊離基、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該アリール基は、1つ又は2つ又はそれ以上のアリール基置換基で置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0048】
“アリール置換型アルキル”は、末端炭素が、置換されていてもよいアリール基で、好ましくは、置換されていてもよいフェニル環で置換される直鎖アルキル基、好ましくは、低アルキル基について言及する。アリール置換型アルキル基の例としては例えば、フェニルメチル、フェニルエチル及び3-(4-メチルフェニル)プロピルが挙げられる。
【0049】
“複素環”は、約4員〜約10員を含む単環式環系炭素環式遊離基又は多環式環系炭素環式遊離基であって、当該環の1つ以上の員が炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素又は硫黄であるもの、及びあらゆる組み合わせ及びその中の環のあらゆるサブの組み合わせについて言及する。当該複素環基は、芳香族又は非芳香族であってもよい。複素環基の例としては例えば、ピロール及びピペリジン基が挙げられる。
【0050】
“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードについて言及する。
“末梢性”とは、オピオイドアンタゴニストに関して、主に生理系及び中枢神経系の外側の構成部分(component)で作用するオピオイドアンタゴニストを表し、例えば、オピオイドの主要な効果を阻害するのに有効な量で、それらは容易には血液脳関門を横断しない。言い換えれば、末梢性に投与される際に、末梢性オピオイドアンタゴニストはオピオイドの鎮痛効果を有効に阻害せず、例えば、それらはオピオイドの鎮痛効果を低減しない。例えば、本発明の方法で採用される末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、低減された中枢神経系(CNS)活性を発揮する又は実質的に何らの中枢神経系(CNS)活性を発揮しない一方で、胃腸組織に関して高レベルの活性を発揮する。本発明の方法で採用される末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、CNSにおいては約5% 〜 約15 % 未満しかそれらの薬理学的活性を適切に発揮せず、最も適切には約0%(例えば、CNS活性なし)である。末梢性オピオイドアンタゴニストの非中枢作用の特性は多くの場合、当該分子の電荷、極性及び/又はサイズに関連する。例えば、中枢作用性第四級アミンオピオイドアンタゴニストが中性分子である一方で、末梢性に作用する第四級アミンオピオイドアンタゴニストは、プラスに帯電される。本発明において有用な末梢性オピオイドアンタゴニストは概して、μオピオイドアンタゴニスト及び/又はκオピオイドアンタゴニストである。
【0051】
本明細書で用いられるとおり、“抗血管形成(antiangiogensis)”又は“抗血管形成性(antiangiogenic)”は、新たな血管の増殖を減弱する、例えば、阻害する、低減する又は調節する分子/化合物の能力、概して及び例えば、特定の増殖因子の存在する培養下のヒト微小血管内皮細胞の遊走及び増殖を低減する又は阻害する分子/化合物の能力について言及することを意図する。上述のとおり、内皮細胞による新たな血管の形成には、当該細胞の遊走、増殖及び分化が含まれる。
【0052】
本発明の方法の以下の記載において、特に定めのない限り、プロセス処置は室温及び大気圧で実行される。本明細書に列挙されるいずれの数値範囲もが下位値から上位値までの全ての値を含むことも明確に理解され、例えば、列挙される最低の値から最高の値までの間の数値のあらゆる可能な組み合わせも本出願に明示的に記載されていると考えられるべきである。例えば、濃度範囲又は有益な効果の範囲が1% 〜 50 % として記載される場合には、2% 〜 40 %、10 % 〜 30 % 又は1% 〜 3 % などのような値が本出願に明示的に列挙されることを意図する。これらは、具体的に表されるものの例にすぎない。
【0053】
ある側面において、本発明は、患者の組織若しくは器官における、異常な又は好ましくない細胞の、とりわけ、内皮細胞の遊走及び/又は増殖、並びに異常な又は好ましくない血管形成(angiogenesis)を減弱する方法に関する。当該方法は、1つ以上のオピオイドアンタゴニストを、内皮細胞の遊走及び増殖並びに血管形成(angiogenesis)を阻害するのに有効な量で、患者の組織又は器官の内皮細胞へ提供すること又は投与することを含む。当該血管形成(angiogenesis)は一つには、オピオイド治療、とりわけ癌患者における疼痛管理のためのオピオイド治療を受けること又は高レベルの内因性オピオイドを有することの結果であってもよい。
【0054】
モルヒネ及びμアゴニストであるエンケファリンDAMGO([D-Ala2, N-McPhe4, Gly5-ol]エンケファリン)が各々、例えば、ケモタキシスアッセイ(下記の実施例において詳述されるとおり)又は腫瘍血管形成(angiogenesis)における因子及び腫瘍血管形成に影響を及ぼす薬剤を同定するために用いられる他の同様のアッセイによって測定されるとおり、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と同様に内皮細胞の遊走を濃度依存的に上昇させることが観察された。モルヒネの臨床的に関連する濃度で、当該効果の大きさは、VEGFによって実現される大きさの約 70 % である。当該モルヒネを基盤とする内皮細胞の遊走は、μオピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン(MNTX)によって濃度依存的様式で低減される。例えば、モルヒネによって誘導される内皮細胞の遊走は、10-7M 程度の低い濃度において、10-7MのMNTXによって著しくブロックされる(図2)。当該減弱は、内皮細胞の遊走がμオピオイドレセプター(MOR)へのモルヒネの作用によって介在されることを強く示唆する。下記の実施例で記載されるとおり、他のオピオイドレセプターでなくてむしろMORによる当該効果は、選択性の高い合成エンケファリンμアゴニストであるDAMGOもまた遊走を誘導することを示す実験によって確認される。DAMGOによって誘導される当該遊走性効果もまた、MNTXによってブロックされる(図3)。
【0055】
ある総合的な概説(Neumann et al. Pain 1982;13:247-52)において、癌患者における鎮痛は、モルヒネの定常状態濃度の範囲及び 6 ng/mL 〜 364 ng/mL の範囲の血漿濃度と関連していた。十分に臨床投与量の範囲にある 100 ng/mL で内皮細胞の遊走を引き起こすモルヒネの効果が観察された。従って、本明細書において本発明者らは、MNTXの血漿レベルを約 25 ng/mL 〜 約 150 ng/mL の最低レベルの血漿MNTXに維持するMNTXの投与量が適切であると考えている。当該投与量は達成可能であり、また十分に許容される(Yuan et al., J Clin Pharmacol 2005;45:538-46)。
【0056】
経口で与えられる他の選択的な末梢性オピオイドアンタゴニストであるアルビモパンは、手術後のイレウスの予防及びオピオイド誘導性の便秘の管理に関して開発の後期にある(Moss et al., Pain relief without side effects: peripheral opioid antagonists. In Schwartz, A.J., editor. 33rd ASA Refresher Course in Anesthesiology. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins (in press))。膜を横断するアルビモパンのいくらかの透過性が存在し(J. Foss, et al., Clin. Pharm. & Ther. 2005, PII-90, p. 74)、従って、アルビモパンは経口的に与えられる際でさえ鎮痛に影響を及ぼすことなくいくつかのオピオイドの全身作用を戻す能力を保有しているかもしれない。
【0057】
いずれの特定の学説によって束縛されることなく、MNTXはナロキソンと違って生理的pHで荷電される分子であるので、内皮細胞の遊走へのμオピオイドの効果の機構は膜レベルで起こるのかもしれない。VEGFがレセプターチロシンキナーゼによって作用する一方で、モルヒネはGタンパク結合型レセプターを介して作用する。μアゴニスト及びVEGFの作用が独立したものであるかもしれない一方で、機構としてのレセプタートランス活性化の証拠が浮かびつつある。従前の研究は、百日咳毒素依存性GPCRがVEGFレセプター2/FLK1をトランス活性化することを明らかにした(Zeng, H. et al., J. Biol. Chem. 2003;278:20738-45)。当該様式によって、モルヒネはF11c−1をトランス活性化し、内皮細胞増殖及び腫瘍増殖が発生しうる環境を促進することができる。T241繊維肉腫細胞で感染させるMORノックアウトマウスの最近の研究は、コントロールに対するモルヒネ処理されたマウスにおける腫瘍増殖の発生頻度の著しい差及びF11c−1発現の10倍の上昇を明らかにし、モルヒネ処理されたKOマウスにおける上昇は全くなかった(K. Gupta、私信)。これは、モルヒネが、おそらくFLK1のリン酸化をトランス活性化することによって、内皮細胞増殖を刺激し、腫瘍細胞増殖を促進することのさらなる証拠を提供する。従って、本発明は、他の末梢性オピオイドと同様にMNTXをVEGFを標的にする現行の治療と共に使用する潜在的な臨床戦略を提供する。レセプタートランス活性化による直接的な効果も起こりうるが、腫瘍の増殖に関わる潜在的な付加的因子はおそらく、疼痛及び炎症のインテグレーターとしてのケモカインの役割であろう。この主題における最近の概説(White et al., Nature Rev. Drug Discovery 2005;4:834-44)もまた、オピオイドレセプターを活性化する際の白血球に関する見込まれる役割を示唆する。
【0058】
さらに、モルヒネ、DAMGO及びVEGFがRhoAを活性化し、これがMNTXのようなオピオイドアンタゴニストによって阻害されることが観察された。RhoAは、血管形成(angiogensis)に関わる重要なシグナル伝達分子である(Aepfelbacher et al., 1997; Cascone et al., 2003; Hoang et al., 2004; Liu and Sanger, 2004)。VEGFレセプターのトランス活性化は、オピエート誘導性のRhoA活性化のために重要である。RhoA発現を静めることはオピオイド誘導性及びVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走をブロックし、アゴニスト誘導性のEC血管形成活性(angiogenic activity)におけるRhoAの活性化に関する役割を明らかにした。MNTX介在性のRhoA活性化の減弱は、オピオイド誘導性血管形成(angiogensis)及びVEGF誘導性血管形成(angiogensis)におけるMNTXの阻害性の役割に重要であるかもしれない。
【0059】
モルヒネ及び他のオピオイドは臨床投与量で内皮細胞の遊走を促進するので、本発明は血管形成プロセス(angiogenic process)を頼りにする腫瘍を有するかなりの投与量のオピオイド及び持続性投与量のオピオイドを受ける患者のためのオピオイドアンタゴニスト治療において治療的価値を有していてもよい。さらに、本発明者らの臨床的な注目は外因的に投与されるモルヒネに集中されてきた一方で、ストレス若しくは疼痛によって放出される内因性オピオイドもまた、内皮細胞の遊走に影響を及ぼしてもよい。下記の実施例において詳述される内皮細胞の遊走実験に基づいて、MNTX及びオピオイドアンタゴニストは概して、外因性オピオイド投与がなくても抗血管形成治療(antiangiogenic therapy)として治療的価値を有する(本明細書に詳述されるとおり)。本発明の方法が、腫瘍の内部での及び腫瘍への血管の成長を阻害する又は低減することが考えられる。腫瘍の内部での血管の成長を阻害することは、栄養分及び酸素が特定のサイズを超える増殖を支持するために当該腫瘍へ供給されるのを妨げる。血管の数又は他の腫瘍の数を最小限にすることはまた、当該腫瘍が転移する確率を減少させる。
【0060】
本発明は、血管形成プロセス(angiogenic process)を頼りにする腫瘍を有する患者のためのオピオイドアンタゴニスト治療において治療的価値を有していてもよい。血管形成プロセス(angiogenic process)に頼る腫瘍は、固形腫瘍、白血病及び骨髄腫である。固形腫瘍としては、副腎皮質癌、膀胱の腫瘍:扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、尿路上皮癌;骨の腫瘍:アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢胞、軟骨芽細胞腫、軟骨種、軟骨粘液線維腫、軟骨肉腫、繊維性骨異形成症、巨細胞腫瘍、骨軟骨腫、骨肉腫;乳腺腫瘍:分泌腺管癌、脊索腫;結腸腫瘍:結腸直腸腺癌;眼腫瘍:後ブドウ膜黒色腫(posterior uveal melanoma)、骨繊維形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、頭部及び頚部の扁平上皮癌(squamous cell carcinoma);腎臓腫瘍:嫌色素細胞性腎癌、腎明細胞癌、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)、腎臓:乳頭状腎細胞癌、原発性腎臓ASPSCR1-TFE3腫瘍(primary renal ASPSCR1-TFE3 tumor)、腎細胞癌:肝腫瘍:肝芽腫、肝細胞癌;肺腫瘍:非小細胞癌、小細胞癌;軟部悪性黒色腫;神経系腫瘍:髄芽細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、アストロサイトの腫瘍、上衣腫、末梢神経鞘腫瘍、クロム親和性細胞腫;卵巣腫瘍:上皮腫瘍、胚細胞性腫瘍、性索間質腫瘍、周囲細胞腫(pericytoma);下垂体腺腫;ラブドイド腫瘍;皮膚腫瘍:皮膚性の良性線維性組織球腫;平滑筋腫瘍:静脈内平滑筋腫症;軟部組織腫瘍:脂肪肉腫、粘液性脂肪肉腫、低グレードの繊維粘液肉腫(low grade fibromyxoid sarcoma)、平滑筋肉腫、胞状軟部肉腫、血管腫様線維性組織球腫(AFH)、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、弾性線維腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液様軟骨肉腫(extraskeletal myxoid chondrosarcoma)、炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor)、脂肪芽細胞腫、脂肪腫/良性脂肪腫瘍(benign lipomatous tumors)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫瘍(malignant lipomatous tumors)、悪性筋上皮腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma);睾丸の腫瘍:生殖細胞腫瘍、精母細胞セミノーマ(spermatocytic seminoma):甲状腺腫瘍、未分化(未分化の)癌、膨大細胞腫瘍(oncocytic tumors)、乳頭癌;子宮腫瘍:子宮頚部癌、子宮内膜癌、平滑筋腫などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
本発明のある実施態様において、当該腫瘍は、前立腺癌、結腸癌のような胃腸腫瘍又は膵癌であり、本発明の化合物は、本明細書に記載されるとおりの他の抗癌剤と共に共投与される。
【0062】
本発明に従うオピオイドアンタゴニストには、中枢的に(centrally)作用するオピオイドアンタゴニスト及び末梢的に作用するオピオイドアンタゴニストの両方が含まれる。特に価値が高いそれらのアンタゴニストは適切に末梢性オピオイドアンタゴニストであることが熟慮される。μオピオイドアンタゴニストがとりわけ適切であってもよく、とりわけ、末梢性μオピオイドアンタゴニストが適切であってもよい。オピオイドアンタゴニストは、当該末梢性に制限される特性を維持しつつ構造を変化することができる化合物の種類を形成する。これらの化合物には、第三級モルフィナン及び第四級モルフィナン、とりわけ、ノルオキシモルフォン誘導体、N-置換型ピペリジン及びとりわけ、ピペリジン-N-アルキルカルボキラート及び20の第三級及び第四級のベンゾモルファン(20 tertiary and quaternary benzomorphans)が含まれる。末梢的に制限されるアンタゴニストは、構造が変化される間、概して極性を荷電され及び/又は高分子量であり、その各々は血液脳関門をそれらのアンタゴニストが横断するのを妨害する。
【0063】
血液脳関門を横断し、中枢的に(centrally)(及び、末梢的に)活性を有するオピオイドアンタゴニストの例としては例えば、ナロキソン、ナルトレキソン(それらの各々は、Baxter Pharmaceutical Products, Inc. から商業的に入手可能である)及びナルメフェン(例えば、DuPont Pharma から入手可能)が挙げられる。これらは、中枢神経系における血管形成(angiogenesis)を減弱するのに又は疼痛管理若しくは他のオピオイド治療に関して治療されていない患者における血管形成(angiogenesis)を減弱するのに価値を有していてもよい。
【0064】
本発明に有用な末梢性オピオイドアンタゴニストは、第四級モルフィナン誘導体である化合物、さらにとりわけ、式(I)の第四級ノルオキシモルフォンであってもよい。
【化1】
【0065】
(式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり、X-は、アニオン、とりわけ、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はメチルスルファートアニオンである。)式(I)のノルオキソモルフォン誘導体は例えば、参照によって本明細書に取り込まれる米国特許No. 4,176,186 の手順に従って調製することができる;さらに、米国特許Nos. 4,719,215; 4,861,781; 5,102,887; 5,972,954 及び 6,274,591, 米国特許出願 Nos. 2002/0028825 及び 2003/0022909; 並びに PCT公開 Nos. WO 99/22737 及び WO 98/25613 も参照のこと、これらの全ては、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0066】
特に価値のある式(I)の化合物は、式中Rがシクロプロピルメチルである式(II)で表されるとおりのN-メチルナルトレキソン(又は簡単に、メチルナルトレキソン)である。
【化2】
【0067】
(式中、X-は、上述のとおりである。)メチルナルトレキソンは、オピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。メチルナルトレキソンは塩として存在し、従って、本明細書において用いられる“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”は、塩を包含する。“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”は具体的に挙げると、メチルナルトレキソンの臭化物塩、塩化物塩、ヨウ化物塩、カルボナート塩及びスルファート塩であってもよいが、これらに限定されない。本文献においてMNTXの臭化物塩に関して用いられる名前としては、メチルナルトレキソンブロミド;N-メチルナルトレキソンブロミド;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド; SC-37359、MRZ-2663-BR 及び N-シクロプロピルメチルノロキシ-モルヒネ-メトブロミドが挙げられる。メチルナルトレキソンは例えば、Mallinckrodt Pharmaceuticals, St. Louis, Mo から商業的に入手可能である。メチルナルトレキソンは、水に溶けやすい白色結晶性粉末として、概して臭化物塩として提供される。当該化合物は、逆相HPLCにより提供されるとおり 99.4 % 純粋であり、同じ方法により 0.011 % 未満の四級化されていないナルトレキソンを含む。メチルナルトレキソンは、例えば、約5mg/mLの濃度の無菌溶液として調製することができる。
【0068】
他の適切な末梢性オピオイドアンタゴニストは、N-置換型ピペリジン、とりわけ、式(III)で表されるとおりのピペリジン-N-アルキルカルボキシラートであってもよい。
【化3】
【0069】
(式中、
R1は、水素又はアルキルであり;
R2は、水素、アルキル又はアルケニルであり;
R3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R4は、水素、アルキル又はアルケニルであり;
Aは、OR5又はNR6R7であり;
R5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R6は、水素又はアルキルであり;
R7は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル、アリール置換型アルキル又はアルキレン置換型Bであるか、又は結合される窒素原子と共にR6及びR7はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Bは、
【化4】
【0070】
であり;
R8は、水素又はアルキルであり;
R9は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR8及びR9はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Wは、OR10、NR11R12又はOEであり;
R10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルケニル又はアリール置換型アルキルであり;
R11は、水素又はアルキルであり;
R12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル、アリール置換型アルキル又はアルキレン置換型C(=O)Yであるか、又は結合される窒素原子と共にピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
Eは、
【化5】
アルキレン置換型(C=O)D又は-R13OC(=O)R14であり;
R13は、アルキル置換型アルキレンであり;
R14は、アルキルであり;
Dは、OR15又はNR16R17であり;
R15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換型アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル又はシクロアルケニル置換型アルキルであり;
R17は、水素又はアルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR16及びR17はピロール若しくはピペリジンからなる群より選択される複素環を形成し;
Yは、OR18又はNR19R20であり;
R18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであり;
R19は、水素又はアルキルであり;
R20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換型アルキル、シクロアルケニル置換型アルキル又はアリール置換型アルキルであるか、又は結合される窒素原子と共にR19及びR20はピロール及びピペリジンより選択される複素環を形成し;
R21は、水素又はアルキルであり;さらに、
nは、0〜4である。)
【0071】
価値を有していてもよい特定のピペリジン-N-アルキルカルボニラートは、下記の式(IV)として表されるアルビモパンのようなN-アルキルアミノ-3, 4, 4 置換型ピペリジンである。
【化6】
【0072】
適切なN-置換型ピペリジンは、米国特許 Nos. 5,270,328; 6,451,806; 6,469,030 に開示されるとおりに調製されてもよく、その全ては参照によって本明細書に取り込まれる。アルビモパンは、Adolor Corp., Exton, PA から入手可能である。当該化合物は、適度の高い分子量、両性イオン形態及び極性を有し、これらは血液脳関門への侵入を妨げる。
【0073】
さらに他の適切な末梢性オピオイドアンタゴニスト化合物は、第四級ベンゾモルファン化合物であってもよい。本発明の方法で採用される第四級ベンゾモルファン化合物は、低減されたアゴニスト活性しか発揮せず、好ましくは、実質的にアゴニスト活性を全く発揮しない一方で、高いレベルのモルヒネ拮抗作用を発揮する。
【0074】
本発明の方法で採用されてもよい第四級ベンゾモルファン化合物は、以下の式(V)を有する。
【化7】
【0075】
(式中、
R1は、水素、アシル又はアセトキシであり;
R2は、アルキル又はアルケニルであり;
Rは、アルキル、アルケニル又はアルキニルであり、さらに、
X-は、アニオン、とりわけ、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はメチルスルファートアニオンである。)
【0076】
本発明の方法で採用されてもよいベンゾモルファン化合物の特定の第四級誘導体は、式(V)の以下の化合物であってもよい:2'-ヒドロキシ5,9-ジメチル-2,2-ジアリル-6,7-ベンゾモルファニウム-ブロミド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2アリル-6,7-ベンゾモルファニウム-ブロミド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-プロパルギル-6,7ベンゾモルファニウム-ブロミド; 及び 2'-アセトキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-アリ)-6,7ベンゾモルファニウム-ブロミド。
【0077】
本発明の方法で採用されてもよい他の第四級ベンゾモルファン化合物は例えば、米国特許 No. 3,723,440 に記載されるものであり、その全ての開示は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0078】
本発明の方法で採用される化合物は、プロドラッグ形態で存在してもよい。本明細書で用いられるとおり、“プロドラッグ”には、当該プロドラッグが哺乳類患者へ投与される際に、式(I)〜式(V)又はインビボで本発明の方法で採用される他の式若しくは化合物に従う活性親薬剤を放出するいずれの共有結合的に結合されるキャリアも含まれることが意図される。プロドラッグは非常に多くの好ましい医薬品の特性(例えば、溶解性、生物学的利用率、製造など)を向上させることが知られるので、必要に応じて、本発明の方法で採用される化合物はプロドラッグ形態で送達されてもよい。従って、本発明は、プロドラッグを送達する方法を熟慮する。本発明で採用される化合物のプロドラッグは、修飾部(modifications)がありふれた操作又はインビボで切断されて当該親化合物になるような方法で、当該化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてもよい。
【0079】
従って、プロドラッグは例えば、当該化合物中のヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基がいずれの基に結合された本明細書に記載される化合物であって、当該プロドラッグが哺乳類患者へ投与される際に切断されてそれぞれ、遊離型ヒドロキシル、遊離型アミノ又はカルボン酸を形成する前記化合物であってもよい。
【0080】
例としては、アセタート、ホルマート並びにアルコール官能基及びアミン官能基のベンゾアート誘導体; 並びにメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソ-プロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステル、シクロプロピルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル及びフェネチルエステルなどのようなアルキルエステル、炭素環式エステル、アリールエステル及びアルキルアリールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
述べられるとおり、本発明の方法で採用される化合物は、当業者によく知られる多くの方法で調製されてもよい。本発明に関連して開示される全ての調製は、ミリグラムスケール、グラムスケール、マルチグラムスケール、キログラムスケール、マルチキログラムスケール又は医薬品市場向けスケールを含むいずれのスケールでも実施されることが熟慮される。
【0082】
本発明の方法で採用される化合物は1つ以上の非対称的に置換される炭素原子を含んでいてもよく、さらに、光学活性形態又はラセミ形態で単離されてもよい。従って、特定の立体化学形態又は異性体形態が具体的に示唆される場合を除いて、あらゆる鏡像異性体形態、ジアステレオマー形態、ラセミ形態、エピマー形態及び構造のあらゆる幾何異性体形態が意図される。当該光学活性形態の調製の仕方及び単離の仕方は、当業界でよく知られる。例えば、立体異性体の混合物は、ラセミ形態の分割、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、キラルクロマトグラフィー、優先晶出法(preferential salt formation)、再結晶などであってもよいがこれらに限定されない標準的な技術によって又はキラル出発物質からのキラル合成若しくは標的キラル中心の意図的な合成のどちらかによって分離されてもよい。
【0083】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、μオピオイドアンタゴニストであってもよい。他の実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、κオピオイドアンタゴニストであってもよい。本発明はまた、μアンタゴニストの組み合わせ、κアンタゴニストの組み合わせ及びμアンタゴニストとκアンタゴニストの組み合わせ、例えば、メチルナルトレキソンとアルビモパンの組み合わせであってもよい1つを超えるオピオイドアンタゴニストの投与をも包含する。
【0084】
本発明の方法は、他の内皮を基盤とする疾患、例えば、種々の血管形成(angiogenesis)及び/又は増殖関連性腫瘍性疾患及び増殖関連性非腫瘍性疾患、例えば、鎌状赤血球疾患、眼の血管新生疾患(糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症のような)、腎臓若しくは肺における内皮増殖及び乾癬における治療的役割又は予防的役割を提供することを包含する。治療の影響を受けやすい非腫瘍性状態としては、関節リウマチ、乾癬、粥状動脈硬化、糖尿病及び未熟児網膜症を含む他の増殖性網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、加齢性黄斑変性症、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜及び他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水症、心膜液貯留(心膜炎と関連するような)及び胸水貯留が挙げられる。例えば、鎌状赤血球疾患においてモルヒネが増殖性網膜症を引き起こすことが明らかとなった(Gupta et al., 私信)。オピオイドアンタゴニストでの治療が、網膜症、とりわけ、積極的なオピオイド治療状態にあり、数週間、数ヶ月又は数年間の慢性的な治療であってもよい長期間オピオイドを受ける鎌状赤血球患者におけるオピオイド誘導性網膜症を著しく阻害することが見込まれる。
【0085】
本発明の方法はまた、他の治療法(therapeutic modalities)での治療後、例えば、外科的介入後の悪性腫瘍又は新生物(neoplasm)の再発リスクを低減することに価値を有することも考えられる。例えば、本発明は、手術後の癌の再発リスクを低減するための方法を提供する。癌は例えば乳癌又は前立腺癌であってもよく、低減されるリスクは、当該癌を患う患者へ有効量のオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを提供することによって達成されてもよい。例えば、上述のとおり、乳癌外科手術を受けている患者は、当該患者が局所麻酔又は全身麻酔のどちらを受けているか(彼らの最初の外科手術中、モルヒネで)に応じて、2年間〜4年間での再発率における著しい差(4倍の)を有していた。本発明に従うオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストの外科的治療との共投与は、癌の再発率を低減するのに価値を有していてもよい。
【0086】
本発明がまた、作用される細胞又は患者へVEGF誘導性血管形成(angiogenesis)を阻害するのに十分な条件下で有効量のオピオイドアンタゴニストを提供することによるVEGF活性の阻害方法を提供することも熟慮される。言い換えれば、本発明の化合物は、VEGF阻害性活性又はアンタゴニスト活性を有する。
【0087】
下記の実施例においても示されるとおり、末梢性オピオイドアンタゴニストであるMNTXがVEGF誘導性の内皮細胞遊走だけでなく、血小板由来増殖因子(PDGF)又はスフィンゴシン一リン酸(S1P)のような他の遊走促進性因子/増殖促進性因子による内皮細胞遊走及び/又は内皮細胞増殖の誘導をも減弱することもさらに明らかとなった。当該減弱は、約 10 % 〜 約 60 % の範囲にあり、また、本発明の方法が遊走促進性因子、血管形成促進因子(pro-angiogenic factors)を阻害する価値を有することの更なる証拠を提供する。
【0088】
本発明はまた、患者、例えば、オピオイドアゴニストでの治療を受けている癌患者を治療することも包含する。オピオイドアゴニストとしては、モルヒネ、メサドン、コデイン、メペリジン、フェンチジン(fentidine)、フェンタニル(fentanil)、スフェンタニル、アルフェンタニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。上述のとおり、オピオイドアゴニストは、ある型のレセプターに1桁の大きさで他のものよりもより効果的にアゴナイズするそれらの能力によって分類される。例えば、μレセプターに関するモルヒネの相対的親和性はκレセプターに関してよりも200倍大きく、従って、μオピオイドアゴニストとして分類される。いくつかのオピオイドアゴニストはあるレセプターに関してアゴニストとして機能し、他のレセプターに関してアンタゴニストとして機能し、アゴニスト/アンタゴニストとして分類される(混合性アゴニスト(mixed agonist)又は部分的アゴニストとしても知られる)。“アゴニスト/アンタゴニスト”、“部分的アゴニスト”及び“混合性アゴニスト(mixed agonist)”は、本明細書において互換的に用いられる。これらのオピオイドとしては、ペンタゾシン、ブトルファノール、ナロルフィン、ナルブフィン(nalbufine)、ブプレノルフィン、ブレマゾシン及びベンゾカイン(benzocine)が挙げられるが、これらに限定されない。オピオイドのアゴニスト/アンタゴニストグループの多くは、κレセプターにおいてアゴニストであり、μレセプターにおいてアンタゴニストである。さらに、オピオイドアゴニストの活性代謝産物もまた血管形成誘導因子(angiogenesis inducers)として活性を有していてもよいことが考えられる。例えば、モルヒネの代謝産物であるモルヒネ3-グルクロニド(M3G)及びモルヒネ6-グルクロニド(M6G)は、活性を有する血管形成促進性因子(proangiogenic factors)であってもよい。
【0089】
概して、本発明に従った末梢性オピオイドアンタゴニストは、当該末梢性オピオイドアンタゴニストの患者の血漿レベルが 10-6 M 〜 10-9 M の範囲であるような有効量で投与されてもよい。患者の薬剤血漿レベルは、当業者に知られるありふれたHPLC法を用いて測定されてもよい。
【0090】
下記の実施例で記載されるとおり、エンケファリンアナログであるDAMGOは内皮遊走を誘導する。従って、本発明の方法は、血管形成関連性(angiogenic-related)疾患又は過剰増殖性疾患、オピオイドアゴニストでの治療はさておき、例えば、癌を患う患者へ価値を有していてもよい。
【0091】
選択されるオピオイドアンタゴニスト投与の特定の様式は言うまでもなく、選択される薬剤の特定の組み合わせ、癌患者における治療されている腫瘍増殖の重症度、当該患者の一般的な健康状態及び治療的有効性のために要求される投与量によって決まる。本発明の方法は、概括して言えば、医学的に許容されるいずれの投与様式、例えば、臨床的に容認できない副作用を起こすことなく有効レベルの活性化合物を生成するいずれの様式を用いて実施されてもよい。投与の当該様式としては、経口的に、直腸に、局所的に(粉末(powder)、軟膏剤、ドロップ(drops)、経皮貼布又はイオン導入手段(iontophoretic device)によるような)、経皮に、舌下に、筋肉内に、注入(infusion)、静脈内に、肺に(pulmonary)、筋肉内に、膣内に(intracavity)、エアロゾルとして、耳に(例えば、点耳剤によって)、鼻腔内に、吸入、眼内に又は皮下に、が挙げられる。直接的な注入もまた、局所送達のために用いることができる。経口投与又は皮下投与は、服薬スケジュールだけでなく患者の利便性に起因して予防的治療又は長期間の治療に適していてもよい。眼疾患に関しては、眼の配合物が直接的に注入又は滴下されてもよい。
【0092】
さらに、オピオイドアンタゴニストは、腸溶コートされる錠剤又は腸溶コートされるカプセル剤として投与されてもよい。いくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストは、ゆっくりとした注入法(slow infusion method)によって又は徐放性法若しくは放出制御法によって又は凍結乾燥した粉末として投与される。
【0093】
投与される際に、本発明の化合物は、医薬的に許容される量で与えられ、さらに医薬的に許容される組成物又は製剤で与えられる。当該製剤は、通常どおり、塩、緩衝剤、保存料及び他の治療成分を含んでいてもよい。医薬中に用いられる際には、当該塩は、医薬的に許容されるものであるべきであるが、医薬的に許容されない塩は、その医薬的に許容される塩を調製するために都合良く用いられてもよく、本発明の範囲から除外されない。当該薬理学的及び医薬的に許容される塩としては、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、パモ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、及びベンゼンスルホン酸。適切な緩衝剤としては、酢酸及びその塩(1% 〜 2% WN);クエン酸及びその塩(1% 〜 3% WN);ボロン酸及びその塩(0.5 % 〜 2.5 % WN)、並びにリン酸及びその塩(0.8 % 〜 2% WN)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
適切な保存料としては、塩化ベンザルコニウム(0.003 % 〜 0.03 % WN);クロロブタノール(0.3 % 〜 0.9 % W/N);パラベン(0.01 % 〜 0.25 % WN)及びチメロサール(0.004 % 〜 0.02 % WN)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
投与を容易にするために、末梢性オピオイドアンタゴニストの医薬組成物はまた、潤滑剤、希釈剤、結合剤、キャリア及び錠剤分解物質のような1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。他の助剤(auxiliary agents)は例えば、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、着色剤、香味料及び/又は芳香活性を有する化合物(aromatic active compounds)であってもよい。
【0096】
医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤は、無毒性固体の、無毒性半固体の若しくは無毒性液体のいずれの型の補助的な注入剤(filler)、希釈剤、被包材料又は配合物について言及する。例えば、適切な医薬的に許容されるキャリア、希釈剤、溶剤(solvents)又はビークルとしては、水、塩(バッファー)、溶液、アルコール、アラビアゴム、ミネラルオイル、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトースのような炭水化物、アミロース若しくはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠性パラフィン、植物油、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な流動性が例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用によって、分散する際に要求される粒子サイズの維持によって及び界面活性剤の使用によって維持されてもよい。微生物の活動の阻止が、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などのような種々の抗菌剤及び抗真菌剤の封入によって確保されてもよい。医薬的に許容される固体キャリアが用いられる場合には、当該アナログの剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、坐剤又はトローチ剤であってもよい。液体キャリアが用いられる場合には、剤形は、ソフトゼラチンカプセル剤、経皮貼布剤、エアロゾルスプレー、局所用クリーム(topical cream)、シロップ懸濁剤、液体懸濁剤、エマルション又は液剤(solutions)であってもよい。
【0097】
経口(parental)適用のために、分散剤、懸濁剤、エマルション又は坐剤であってもよい植込錠(implants)だけでなく、注射可能な無菌溶液、好ましくは、非水溶液又は水溶液がとりわけ適切である。アンプルは多くの場合使いやすい単位投与量である。注射可能デポー形態もまた適切であってもよく、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)のような生分解性ポリマー中で薬剤のマイクロカプセル被包マトリクスを形成することによって作られてもよい。ポリマーに対する薬剤の割合及び採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬剤放出の速度を制御することができる。
【0098】
デポー注射可能配合物はまた、体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルション中に薬剤を捕捉することによっても調製される。当該注射可能な配合物は例えば、細菌保持性フィルター(bacterial-retaining filter)を通す濾過によって又は使用の直前に滅菌水若しくは他の無菌の注射可能溶剤中に溶解することができる若しくは分散させることができる無菌の固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌されてもよい。
【0099】
腸内適用のために、錠剤、糖衣錠、液体剤(liquids)、ドロップ(drops)、坐剤又はソフトゼラチンカプセル剤のようなカプセル剤がとりわけ適切である。シロップ剤、エリキシル剤などを使用することができ、その中に甘みのあるビークルが採用される。
【0100】
述べられるとおり、他の送達システムとしては、持続放出型送達システム、遅延放出型送達システム又は徐放性送達システムが挙げられる。当該システムは本発明の化合物の頻回の投与を回避することができ、患者及び医師への利便性を上昇させ、さらに、化合物の持続する血漿レベルを維持することができる。多くの型の放出制御性送達システムが当業者に利用可能であり、当業者に知られている。徐放性組成物又は放出制御性組成物は、例えば、リポソームとして又は中で活性化合物がマイクロカプセル封入によるような差次的分解性コーティング(differentially degradable coatings)、複数コーティングなどで保護されるものとして処方することができる。
【0101】
例えば、本発明の化合物は、治療用組成物を形成するために、生分解性ポリマーのような医薬的に許容される徐放性マトリクスと組み合わされてもよい。本明細書で用いられるとおり、徐放性マトリクスは、物質、通常、酵素加水分解若しくは酸塩基加水分解によって又は溶解によって分解できるポリマーでできたマトリクスである。体内に挿入されるとすぐに、当該マトリクスは酵素及び体液によって影響を受ける。徐放性マトリクスは、リポソームのような生体適合性材料、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドco-グリコリド(乳酸及びグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリサッカライド、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチンスルファート、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンのようなポリマー基盤型システム;カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、アミノ酸、ステロールのような脂質といった非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチド基盤型システム;植込剤(implants)などから好ましく選択されてもよい。具体的な例としては、(a)米国特許 Nos. 4,452,775, 4,675,189 及び 5,736,152 で見出される(参照によって本明細書に完全に取り込まれる)ポリサッカライドがマトリクスの内部の形式で含まれる浸食システム(erosional system)及び(b)活性成分が制御された速度で米国特許 Nos. 3,854,480, 5,133,974 及び 5,407,686(参照によって本明細書に完全に取り込まれる)に記載されるようなポリマーから広がる拡散システム、が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポンプ基盤型ハードワイヤード(pump-based hard-wired)送達システムを使用することができ、そのいくつかは植込(implantation)に適合される。適切な腸溶コーティングは、共に参照により本明細書に取り込まれるPCT公開 No. WO 98/25613 及び米国特許 No. 6,274,591 に記載される。
【0102】
長期間徐放性植込剤の使用は、慢性状態の治療にとりわけ適切であってもよい。“長期間”放出は、本明細書で使用されるとおり、当該植込錠が治療的レベルの活性成分を少なくとも7日間、さらに、適切に30日間〜60日間送達するために構築され配置されることを意味する。長期間徐放性植込剤は当業者によく知られ、上記に記載される放出システムのいくつかであってもよい。
【0103】
局所適用のために、スプレーできない(nonsprayable)形態として採用されるものとして、局所適用に適合性のキャリアを含み、好ましくは水よりも高い動的粘度を有する粘稠性の半固体形態又は固体形態がある。適切な配合物としては、液剤(solutions)、懸濁剤、エマルション、クリーム、軟膏剤、散剤、リニメント剤、軟膏、エアロゾルなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、滅菌され又は例えば保存料などの助剤(auxiliary agents)と混合されてもよい。
末梢性オピオイドアンタゴニストの医薬組成物の経皮的送達又はイオン導入送達もまた可能である。
【0104】
特にMNTXに関して、水溶性配合物は、キレート剤、緩衝剤、抗酸化剤及び等張剤を含んでいてもよく、好ましくはpHは 3.0 〜 3.5 に調整される。高圧蒸気殺菌法及び長期間貯蔵に安定な好ましい当該配合物は、出願シリアル no. 10/821811、20040266806 として現在公開され、発明の名称“Pharmaceutical Formulation”に記載される。
【0105】
ある実施態様において、本発明の化合物は、患者へ当該化合物の連続的な投薬レジメンを提供する投薬レジメン、例えば、オピオイドアンタゴニストの最小血漿レベルを維持し、さらに、好ましくは、従来のレジメンに伴う薬剤レベルのスパイク値及びトラフ値を排除するレジメンで投与される。ある実施態様において、当該持続的投薬は、患者への持続的注入を用いて又はゆっくり時間をかけて当該化合物の放出を促進する機構、例えば、経皮貼布若しくは徐放性配合物によって達成されてもよい。適切に、本発明の化合物は、オピオイド誘導性血管形成(angiogenesis)を阻害する若しくは低減するのに有効な又は癌患者において腫瘍の増殖を低減するのに有効な当該患者の血漿中の化合物濃度を維持するのに十分な量で当該患者へ持続的に放出される。本発明に従った化合物は、単独で提供されようと他の治療薬と組み合わせて提供されようと、抗血管形成的に(antiangiogenic)有効な量で提供される。しかしながら、当然のことながら、本発明の化合物及び組成物の総一日使用量は妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定することができる。いずれの特定の患者に関する特定の治療的に有効な投与量レベルも、治療される疾患及び当該疾患の重症度;採用される特定の化合物の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食習慣;投与の時間;投与の経路;採用される特定の化合物の排出速度;治療の持続時間;採用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に用いられる薬剤並びに医術界でよく知られるような因子を含む種々の因子によって決まる。例えば、好ましい治療効果を達成するために要求されるものよりも低いレベルで化合物の投薬を開始し、当該好ましい効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは十分に当業者のレベルの範囲内にある。
【0106】
必要であれば、当該有効な1日の投与量を、投与の目的のために複数の投与量に分割してもよい。従って、1回投与量組成物は、一日投与量を作り出すような量又はその約数を含んでいてもよい。述べられるとおり、当業者は、優れた医療行為及び個々の患者の臨床状態によって決定されるとおり、容易に有効投与量及び共投与レジメン(本明細書に記載されるとおり)を最適化することができる。
【0107】
概して、オピオイドアンタゴニスト、とりわけ末梢性アンタゴニストの経口投与量は、1日につき体重1kgあたり、約 0.01 mg 〜 約 80 mg の範囲である。体重1kgあたり 1 mg/kg 〜 20 mg/kg の範囲の経口投与量は好ましい結果をもたらすと予想される。概して、静脈内投与及び皮下投与を含む非経口投与は、体重1kgあたり約 0.001 mg 〜 約 5 mg の範囲である。体重1kgあたり 0.05 mg 〜 0.5 mg の範囲の投与量は好ましい結果をもたらすと期待される。投与量は、投与の様式に応じて好ましい薬剤レベル、局所性又は全身性を達成するために適切に調整されてもよい。例えば、腸溶コートされた配合物のオピオイドアンタゴニストの経口投与用投与量は、非コートの経口投与量の 10 % 〜 30 % であることが予想される。患者における反応が当該投与量で不十分な場合には、より高い投与量(又は異なるより限局的な送達経路による有効な30投与量)でさえ、当該患者の耐容性が容認できる限りにおいて採用されてもよい。1日につき複数の投与量が、化合物の適切な全身レベルを達成するために熟慮される。適切な全身レベルは例えば、当業者に知られありふれたHPLC法を用いて当該薬剤の患者の血漿レベルを測定することによって決定することができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施態様において、オピオイドアンタゴニストはオピオイドと共に共投与される。“共投与”という用語は、2つ以上の薬剤が患者又は患者へ投与されるいずれの投与経路による併用治療について言及することが意図される。薬剤の共投与はまた、併用治療又は併用療法として言及されてもよい。当該薬剤は、同じ製剤配合物中又は別々の配合物中に存在していてもよい。活性薬剤が別々の製剤配合物中に存在する1つを超える当該活性薬剤での併用療法のために、当該活性薬剤は同時に投与することができ又はそれらを各々別々にずらした時点で投与することができる。当該活性薬剤が、両方の薬剤が体内における有効濃度を達成することを可能にするのに十分な様式で与えられる限り、当該活性薬剤は同時に投与することができ又はそれらを各々別々にずらした時点で投与することができる(例えば、1つの薬剤がもう一方の薬剤の投与に直ちに続いてもよい又は当該複数の薬剤を偶発的に与えてもよい、例えば、1つの薬剤をある時点で与えて引き続き、後の時点で、例えば1週間以内に、もう一方の薬剤を与えることができる)。当該薬剤は、種々の経路によって投与されてもよい、例えば、第二の薬剤が筋肉内に、静脈内に又は経口的に投与される一方で、第一の薬剤が静脈内に投与されてもよい。言い換えれば、本発明に従うオピオイドアンタゴニスト化合物のオピオイドとの共投与は適切に、オピオイドアンタゴニスト薬剤及びオピオイド薬剤を含む混合性医薬品であると考えられ、当該医薬品は毎日基盤(a daily basis)又は断続性基盤(intermittent basis)での末梢性オピオイドアンタゴニストの投与及び毎日基盤又は断続性基盤のオピオイドの投与に適合される。従って、オピオイドアンタゴニストは、オピオイドの投与前に、オピオイドの投与と同時に又はオピオイドの投与後に投与されてもよい。共投与可能な薬剤はまた、混合剤として、例えば、単一の配合物又は単一の錠剤中に処方されてもよい。これらの配合物は、例えば、各々が参照によって本明細書に取り込まれる 米国特許 Nos. 6,277,384; 6,261,599; 5,958,452 及び PCT公開 No. WO 98/25613 に記載される配合物のような非経口的又は経口的なものであってもよい。
【0109】
本発明の方法を、上記に記載される種々の状態と関連する内皮細胞の増殖又は遊走を制御するために、単独で又は他の治療と共に用いることができることがさらに熟慮される。末梢性オピオイドアンタゴニストは、オピオイド又はオピオイドアンタゴニストでない他の治療薬と共に共投与されてもよい。適切な当該治療薬としては、抗癌剤、例えば、化学療法剤、放射線治療又はスラミンのような他の抗血管形成剤(antiangiogenic agents)、抗VEGFモノクローナル抗体(mab)、エンドスタチン又は他の放射線治療が挙げられる。本発明に従うオピオイドアンタゴニストは、VEGF活性を阻害する薬剤、例えば、抗VEGFmabと共に共投与される際にとりわけ価値を有することが考えられる。当該抗VEGF抗体は、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、母斑症(phakomatoses)、浮腫(脳腫瘍及びメイグス症候群に関連するような)に関連する異常な血管増殖を含む種々の腫瘍性疾患、非腫瘍性疾患及び疾病の治療に有用である。抗VEGFmabの1つの例は、本明細書に完全に取り込まれる 米国特許 No 6,884,879 及び WO94/10202 に記載されるベバシズマブ(アバスチン、Genentech)である。本発明のある特定の実施態様において、MNTXはアバスチンと共に共投与される。
【0110】
言い換えれば、本発明の化合物はまた、上記で記載されるとおり、単独で用いられる際又は1つ以上の他の抗癌剤、例えば、放射線治療及び/又は抗血管形成剤(antiangiogenic)を含む他の化学療法剤、癌の治療のために患者へ慣習的に適用される処置、と組み合わせて用いられる際のどちらにおいても患者の癌の治療に有用であってもよい。当該薬剤の主要なカテゴリー及び例は本明細書に列記され、メタロプロテアーゼ阻害剤、内皮細胞の増殖/遊走の阻害剤、血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)のアンタゴニスト、インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤及び銅のキレート剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は、抗癌剤の既知の組み合わせと組み合わせることができる。本発明の化合物は、抗血管形成剤(anti-angiogenic agent)及び化学療法剤と組み合わせることができ、癌患者へ投与することができる。例えば、MNTXは、アバスチン及び5−フルオロウラシルと組み合わせて癌患者へ投与することができる。
【0112】
種々の抗癌剤、放射線治療又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drugs)とのオピオイドアンタゴニストの共投与が癌細胞への著しく促進された抗増殖性効果を引き起こすことができ、従って増大した治療効果を提供することができ、例えば、いくつかの腫瘍への末梢性オピオイドアンタゴニストの採用は他の治療レジメンへのそれらの反応を強化することができることが予想される。特に、著しく増大した抗血管形成効果(antiangiogenic effect)又は抗過剰増殖効果は、薬剤又は放射線が単独で用いられる治療レジメンと比較してより低い濃度の抗癌剤、より低い線量の放射線又は他の抗血管形成薬剤(antiangiogenic drugs)を利用する場合であっても上記に開示される共投与される組み合わせにより得られる。従って、抗癌剤又は他の抗血管形成薬剤(antiantiogenic drugs)又は放射線治療に伴う副作用が、高い投与量で単独で用いられる当該抗癌剤又は他の血管形成薬剤(antiantiogenic drugs)又は放射線治療に関連して通常観察されるよりも相当に低減される治療を提供する可能性が存在する。例えば、抗VEGF剤、例えば、抗VEGFmabとの本発明に従うオピオイドアンタゴニストの共投与は、抗VEGF剤の投与量を低減してもよく又は効力若しくは有効性若しくはその両方を増加させてもよい。さらに、本明細書に詳述されるとおり、他の抗癌療法(anticancer modalities)との本発明に従うオピオイドアンタゴニストとの共投与は、予防的価値を有していてもよい。
【0113】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、例えば、マリマスタット(Marimastat)、合成マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI), British Biotech; Bay 12-9566、合成MMPIと腫瘍増殖阻害剤, Bayer; AG3340、合成MMPI, Agouron/Warner-Lambert; CGS 27023A、合成MMPI, Novartis; CGS 27023A、合成MMPI; COL-3、合成MMPI, テトラサイクリン誘導体, Collagenex; AE-941 (Neovastat)、自然発生のMMPI, AEterna, BMS-275291、合成MMPI, Bristol-Myers Squibb; ペニシラミン(Penicillamine)、ウロキナーゼ阻害剤, NCI-NABTTのようなメタロプロテアーゼ阻害剤と共に共投与されてもよい。
【0114】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、内皮細胞増殖を阻害するTNP-470(フマギリン誘導体), TAP Pharmaceuticals;ナトリウム−水素交換体を阻害するスクアラミン, NIHE3, Magainin;増殖する内皮細胞にアポトーシスを誘導するコンブレタスタチン, Oxigene;内皮細胞を阻害するエンドスタチン, EntreMed;内皮細胞の遊走及び増殖をブロックするペニシラミン, NCI-NABTT;内皮細胞の遊走及び増殖をブロックするファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI), NCI - NABTT, -L-778,123 Merck, -SCH66336 Schering-Plough, -R115777 Janssen のような内皮細胞増殖/遊走の直接的な阻害剤と共に共投与されてもよい。
【0115】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、VEGFを不活性化するモノクローナル抗体である抗VEGF抗体, Genentech;血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)(bFGF、VEGF、TNF−α)の活性をブロックするサリドマイド, Celgene;VEGFレセプター(Flk−1/KDR)シグナル伝達(チロシンキナーゼ)をブロックするSU5416, Sugen-NCI;VEGFレセプターのmRNAを減弱するリボザイム(Angiozyme), Ribozyme Pharmaceuticals, Inc;VEGFレセプターシグナル伝達、bFGFレセプターシグナル伝達及びPDGFレセプターシグナル伝達をブロックするSU6668, Sugen;VEGFレセプターシグナル伝達をブロックするPTK787/ZK22584, Novartis;bFGF産生及びVEGF産生を阻害するインターフェロンα;増殖因子のそのレセプターへの結合をブロックするスラミン, NCI-NABTT のような血管形成増殖因子(angiogenic growth factors)のアンタゴニストと共に共投与されてもよい。
【0116】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、内皮細胞表面に存在するαvβ3インテグリンに対する抗体であるVitaxin, Ixsys;内皮細胞表面に存在するインテグリンの小分子遮蔽剤であるEMD121974, Merck KGaA のような内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達を阻害する薬剤と共に共投与されてもよい。
【0117】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、スルフヒドリル基が銅に結合し、尿中排泄により銅を取り除くペニシラミン, NCI-NABTTT;チオール基が銅に堅固に結合し、腫瘍が利用できる銅を不活性化するテトラチオモリブダート, University of Michigan Cancer Center;銅及び亜鉛をキレート化し、さらに、MMP及びアンジオテンシン変換酵素の阻害剤でもあるカプトプリル, Northwestern University のような銅のキレート剤と共に共投与されてもよい。
【0118】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、カルシウム流入の阻害剤であるCAI, NCI;エンドセリンレセプターアンタゴニストであるABT-627, Abbott/NCI;レセプター(CM201)との相互作用によって増殖性内皮を選択的に破壊するB群連鎖球菌毒素であるCM101/ZDO101, CarboMed/Zeneca;インターフェロンγを誘導し、IL−10を下方制御し、IP−10を誘導するインターロイキン12, M.D. Anderson Cancer Center/Temple University, Temple University, Genetics Institute, Hoffman LaRoche;VEGF及びbFGFの産生をブロックするIM862;IL−12阻害剤の産生を増加させるCytran;Tatタンパクによって誘導される血管形成(angiogenesis)をブロックするPNU-145156E, Pharmacia and Upjohn のような異なる機構を有する血管形成(angiogenesis)アンタゴニストと共に共投与されてもよい。
【0119】
過剰増殖性疾患の治療に用いられる際に、本発明の化合物は、例えば、インターフェロンα、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサート及びプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びデキサメタゾン)、PRO-MACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(w/leucovinレスキュー)、ドキソルビシン;シクロホスファミド、パクリタキセル(paclitaxol)、ドセタキセル(docetaxol)、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンジオインヒビン(angioinhibins)、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンジオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、Techgalan、サリドマイド、SP-PGなどのような化学療法剤と共に共投与されてもよい。
【0120】
本発明の化合物と共に共投与されてもよい抗癌剤はまた適切に、代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル、メトトレキサート及びフルダラビン)、微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びパクリタキセル、ドセタキセルのようなタキサン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、ビオコロエチルニトロソ尿素(biochoroethylnitrosourea)、ヒドロキシウレア)、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン(mechloethamine)、メルファン(melphan)、クロラムブシル、シクロホスファミド及びイホスファミド);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン及びストレプトゾシン)、プラチナ剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM-216、C1-973)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗生物質(例えば、マイトマイシン、イダルビシン、アドリアマイシン、ダウノマイシン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、カンプトテシン)、ブスルファンを含むアルキルスルホナート;トリアジン(例えば、ダカルバジン);エチレンイミン(例えば、チオテパ及びヘキサメチルメラミン);葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート);ピリミジンアナログ(例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド);プリンアナログ(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン);抗腫瘍性抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシンC及びミトラマイシン(methramycin);ホルモン及びホルモンアンタゴニスト(例えば、タモキシフェン、副腎皮質ステロイド)並びにいずれの他の細胞障害性薬剤(例えば、リン酸エストラムスチンナトリウム、プレドニムスチン)であってもよい。
【0121】
血管形成(angiogenesis)及び/又は癌の阻害、治療又は予防のために本発明の化合物と組み合わせることができる薬剤が上記に列挙されるものに限定されるのではなく、原則として、オピオイド誘導性血管形成疾患(angiogenic diseases)及び腫瘍増殖の治療に有用ないずれの薬剤であってもよいことが理解される。
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これは本発明の範囲を限定する目的で解釈されるべきではない。
【実施例】
【0122】
実施例1:内皮細胞遊走アッセイ
本発明に従った末梢性オピオイドアンタゴニストの抗血管形成活性(anti-angiogenic activity)を、改良型ボイデンチャンバーを用いる微小血管内皮細胞の遊走を阻害する又は調節するアンタゴニストの能力を検証する実験で評価した。
内皮細胞遊走アッセイを、その開示が参照によって取り込まれる Lingen, M.W., Methods in Molecular Medicine, 78: 337-347 (2003) によって記載されるとおりに行った。手短に言えば、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)(Cell Systems, Kirkland, WA.)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する内皮増殖培地(EGM)中で一晩血清飢餓状態にした。細胞を次に、トリプシン処理し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に 1×106 cells/mL の濃度で再懸濁した。細胞を48ウェル改良型ボイデンチャンバー(NeuroPore Corporation, Pleasanton, CA.)の底面に加えた。当該チャンバーを組み立てて反転させ、細胞を、0.1 % ゼラチン中に一晩浸して乾燥しておいたポリカルボナートケモタキシス膜(5μmの細孔サイズ)(NeuroProbe)へ 37 ℃ で2時間接着させた。当該チャンバーを次に再反転して、当該化合物を4倍で濃度を変化させて試験し、血管内皮増殖因子(VEGF)(ポジティブコントロールとして)又はビークルを上側のチャンバーのウェルへ加えた(50 mL の総体積になるまで)。;当該器具を次に、37 ℃ で4時間インキュベートした。膜を回収し、固定して染色し(DiffQuick, Fisher Scientific, Pittsburgh, Pa.)、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数をカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の物質を、各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。VEGF(R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。上記に記載されたとおりに試験した化合物は、モルヒネ、ナロキソン、メチルナルトレキソン及びメチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせであった。試験した物質の各々の濃度は、0.001 μM 〜 10.0 μM の範囲であった。モルヒネの濃度は、0.1 μM で一定であった。結果を図1に示す。
【0123】
図1は、モルヒネが濃度依存的に遊走を増加させたことを示す。しかしながら、メチルナルトレキソンとモルヒネの共添加は、濃度依存的に遊走を減少させた。メチルナルトレキソン又はナロキソンのどちらも単独では遊走に影響しなかった。
【0124】
実施例2:内皮細胞遊走アッセイ
他のセットの実験を、実施例1に記載される手順に従って実施した。当該セットの実験において、メチルナルトレキソン及びメチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせを、内皮細胞遊走を阻害する能力に関して再び試験した。単独で試験される際のメチルナルトレキソン濃度を、0.001 μM 〜 10.0 μM で変えた。組み合わせにおいては、モルヒネ濃度を実施例1で記載されるとおり 0.1 μM で一定のままにしておいた一方で、メチルナルトレキソンの濃度を 0.001 μM 〜 10.0 μM で変えた。結果を、図2に示す。
【0125】
図2は、メチルナルトレキソン単独が遊走に影響しなかった一方で、メチルナルトレキソンとモルヒネの組み合わせが濃度依存的に遊走を減少させたことを示す。
【0126】
実施例3:DAMGOによって誘導される内皮細胞遊走
本試験で用いた薬剤は、[D-Ala 2, N-McPhe4, Gly5-ol]エンケファリン又はDAMGO(Sigma, St. Louis, MO);ナロキソン(Sigma, St. Louis, MO);N-メチルナルトレキソンブロミド又はメチルナルトレキソン(Mallinckrodt Specialty Chemicals, Phillipsburg, NJ)であった。内皮細胞遊走アッセイを、既に記載されるとおり(9)に行った。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地中で一晩飢餓状態にし、回収し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に再懸濁して、改良型ボイデンチャンバー(Nucleopore Corporation, Pleasanton, CA)中の半多孔質ゼラチン化膜上に蒔いた。試験物質を次に、上側チャンバーのウェルへ加え、細胞を 37 ℃ で4時間遊走させた。
【0127】
膜を回収し、固定して染色し、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数を盲検観察者がカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。DAMGOの濃度は1μMであり、VEGF(R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。
【0128】
結果を図3に示すが、メチルナルトレキソン及びDAMGOが濃度依存的に遊走を減少させたことを示す。図4は、ナロキソン及びDAMGOでの同様の結果を明らかにする。μレセプターに作用することが知られるM6Gが血管形成(angiogenesis)に濃度依存的効果を示した一方で、不活性モルヒネ代謝産物M3Gは、血管形成活性(angiogenic activity)を全く発揮しなかった(図5)。
【0129】
実施例4:メチルナルトレキソンでのヒト患者及び哺乳類患者の治療
第1のセットの実験において、トランスフォーメーション、同系繁殖(inbreeding)又は腫瘍細胞の移植によってマウスに腫瘍の発達を誘導した。各々が少なくとも 60 mm3 の体積の腫瘍を有する36匹のマウスを、無作為に3つの群に分けた。第1の群には、オピオイドもオピオイドアンタゴニストのどちらも含まないコントロール物質を与えた。第2の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネを与えた。第3の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを与えた。
【0130】
当該化合物を、毎日8週間投与した。各々の群間の腫瘍の増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及びマウスの死亡率における差を記録した。当該結果は、コントロール又はモルヒネ単独と比較して腫瘍増殖の減少及び血管形成(angiogenesis)の減少を明らかにした。
【0131】
第2のセットの実験において、ヒト癌患者を本試験に登録した。本試験の登録者を、年齢、疾患のステージ、治療の型、遺伝因子及び家族性因子に関して制御した。参加者を、彼らがオピオイド、例えば、モルヒネを受けているかどうかに従って2つの群に分けた。オピオイドを受けている群を、さらに無作為に2つのサブ群に分けた。オピオイドを受けている当該2つのサブ群の1つに、末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、5mg/kg/日の投与量で8週間経口投与されるメチルナルトレキソンを与えた。当該2つのサブ群のもう一方に、同じ期間プラセボを与えた。各々の群の参加者の腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。
【0132】
実施例5:アルビモパンでのヒト患者及び哺乳類患者の治療
腫瘍の発達を誘導しておいたマウスに、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例3に記載されるとおりのプロトコールを受けさせた。結果は、コントロール又はオピオイド単独と比較して腫瘍増殖の減少及び血管形成(angiogenesis)の減少を明らかにした。
ヒト癌患者を、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例4に記載されるとおりに実施される試験に登録した。
【0133】
実施例6:末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソン及び第2の治療薬の共投与を含む治療
第1のセットの実験において、トランスフォーメーション、同系繁殖(inbreeding)又は腫瘍細胞の移植によってマウスに腫瘍の発達を誘導した。各々が少なくとも 60 mm3 の体積の腫瘍を有する48匹のマウスを、無作為に6つの群に分けた。第1の群には、オピオイド、オピオイドアンタゴニスト又は抗癌剤を含まないコントロール物質を与えた。第2の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネを与えた。第3の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを与えた。第4の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量で経口投与されるモルヒネ、及び5mg/kg/日の投与量で経口投与される末梢性オピオイドアンタゴニストであるメチルナルトレキソンを抗癌剤、例えば、5mg/kgの投与量で14日毎のベバシズマブ(アバスチン)と共に与えた。第6の群には、オピオイド、例えば、0.5 mg/kg/日の投与量のモルヒネ及び抗癌治療薬、例えば、5mg/kgの投与量で14日毎のベバシズマブ(アバスチン)を与えた。
【0134】
当該化合物を、毎日8週間投与した。各々の群のマウスの腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0135】
第2のセットの実験において、オピオイド、例えば、モルヒネ、抗癌治療薬、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)又は両方を受けているヒト癌患者を試験に登録した。本試験の登録者を、年齢、疾患のステージ、治療の型、遺伝因子及び家族性因子に関して制御した。オピオイドを受けている参加者を、無作為に第1の群及び第2の群に分け;抗癌治療薬、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)を受けている参加者を、無作為に第3の群及び第4の群に分け;オピオイド+抗癌治療的抗癌剤、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)を受けている参加者を、無作為に第5の群及び第6の群に分けた。第1の群、第3の群及び第5の群に各々、末梢性オピオイドアンタゴニスト、例えば、5mg/kg/日の投与量で8週間経口投与されるメチルナルトレキソンを与えた。第2の群、第4の群及び第6の群に、同じ期間プラセボを与えた。各々の群の参加者の腫瘍増殖速度における差、腫瘍サイズにおける差、腫瘍における血管形成(angiogenesis)の減少における差及び死亡率における差を記録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0136】
実施例7:末梢性オピオイドアンタゴニストであるアルビモパン及び第2の治療薬の共投与を含む治療
腫瘍の発達を誘導しておいたマウスに、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例5に記載されるとおりのプロトコールを受けさせた。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0137】
ヒト癌患者を、末梢性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンであることを除き実施例6に記載されるとおりに実施される試験に登録した。結果は、他の群に比べオピオイド、オピオイドアンタゴニスト及び抗癌剤の組み合わせを投与した群に関して向上した結果(例えば、血管形成(angiogenesis)の減少及び腫瘍増殖の減少)を明らかにした。
【0138】
実施例8:内皮細胞の遊走/増殖へのオピオイドアンタゴニストの効果
細胞培養及び試薬−ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)及びヒト肺微小血管内皮細胞(Clonetics, Walkersville, MD)を、既に記載されるとおりに、EBM−2完全培地(Clonetics)中、37 ℃ で5% CO2、95 % 空気の加湿雰囲気中において、実験方法のために使用される6継代〜10継代培養した(Garcia et al. 2001)。特に明記しない限り、試薬は、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。SDS−PAGE電気泳動用試薬はBio-Rad(Richmond, CA)から購入し、イモビロン-P 転写膜はMillipore(Millipore Corp., Bedford, MA)から購入した。本試験で用いた薬剤は、[D-Ala2, N-MePhe4, Gly5-ol]エンケファリン又はDAMGO(Sigma, St. Louis, MO);ナロキソン、モルヒネ-3-グルクロニド(M3G)及びモルヒネ-6-グルクロニド(M6G)(Sigma, St. Louis, MO);N-メチルナルトレキソンブロミド又はメチルナルトレキソン(Mallinckrodt Specialty Chemicals, Phillipsburg, NJ)、モルヒネ(Baxter, Deerfield, Illinois)であった。VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤は、Calbiochem(San Diego, CA)から購入した。マウス抗RhoA抗体、マウス抗リン酸化チロシン抗体及びrho結合領域(RBD)抱合型ビーズは、Upstate Biotechnology(Lake Placid, NY)から購入した。ウサギ抗VEGFレセプター1(Flt−1)抗体及び抗VEGFレセプター2(Flk−1)抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入した。マウス抗βアクチン抗体は、Sigma(St. Louis, MO)から購入した。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体は、Amersham Biosciences(Piscataway, NJ)から購入した。
【0139】
免疫沈降及び免疫ブロット−細胞性材料を、IPバッファー(50 mM HEPES(pH 7.5)、150 mM NaCl、20 mM MgCl2、1 % Triton X-100、0.1 % SDS、0.4 mM Na3VO4、40 mM NaF、50 μM オカダ酸、0.2 mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1:250 希釈のCalbiochemプロテアーゼ阻害剤混合物3)と共にインキュベートした。当該サンプルを次に、抗VEGFレセプター1IgG又は抗VEGFレセプター2IgGで免疫沈降した後、4% 〜 15 % のポリアクリルアミドゲルでSDS−PAGEし、イモビロンTM膜上へ転写して、特異的一次抗体及び二次抗体で現像した(developed)。免疫反応性バンドの視覚化を、高感度ケミルミネッセンス(Amersham Biosciences)で実現した。
【0140】
VEGFレセプター1及びVEGFレセプター2のチロシンリン酸化の定量−IPバッファー(上記を参照)中の可溶化タンパクを、ウサギ抗VEGFレセプター1又は抗VEGFレセプター2のどちらかで免疫沈降した後、4% 〜 15 % のポリアクリルアミドゲルでSDS−PAGEして、イモビロンTM膜(Millipore Corp., Bedford, MA)上へ転写した。5% ウシ血清アルブミンで非特異的部位をブロッキングした後に、当該ブロット物を、ウサギ抗VEGFレセプター1抗体、ウサギ抗VEGFレセプター2抗体又はマウス抗リン酸化チロシン抗体のどれかと共にインキュベートした後、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗ウサギ(goat anti-rabbit)IgG又はヤギ抗マウス(goat anti-mouse)IgGと共にインキュベーションした。免疫反応性バンドの視覚化を、高感度ケミルミネッセンス(Amersham Biosciences)を用いて実現した。
【0141】
RhoAに対するsiRNAの構築及びトランスフェクション−RhoAに対するヒトを標的にしたsiRNA配列を、Genbank(登録商標)(gi:33876092)からのmRNA配列を用いて作成した。各々のmRNAに関して(又はスクランブル)、2つの標的を特定した。とりわけ、RhoA標的配列1(5'-AAGAAACTGGTGATTGTTGGT-3')(配列番号1)、RhoA標的配列2(5'-AAAGACATGCTTGCTCATAGT-3')(配列番号2)、スクランブル配列1(5'-AAGAGAAATCGAAACCGAAAA-3')(配列番号3)及びスクランブル配列2(5'-AAGAACCCAATTAAGCGCAAG-3')(配列番号4)を利用した。センスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)から購入した。siRNAの構築のために、Ambionからの転写基盤型キット(transcription-based kit)(Silencer(登録商標)siRNA 構築キット)を用いた。ヒト肺微小血管ECに次に、Ambionによって提供されるプロトコールに従って、トランスフェクション試薬としてsiPORTamineTM(Ambion, TX)を用いてsiRNAをトランスフェクトした。細胞(〜40 % 集密)を、1時間血清飢餓状態にした後、3μM(1.5 μM の各々のsiRNA)の標的siRNA(又はスクランブルsiRNA又はsiRNAなし)と共に6時間血清なしの培地中でインキュベートした。血清含有培地を次に加えて(1% 血清の最終濃度)42時間後に、生物化学的な実験及び/又は機能的アッセイを行った。
【0142】
RhoA活性化アッセイ−アゴニスト処理及び/又は阻害剤処理の後、ECを可溶化バッファー中で可溶化して、rho結合領域(RBD)抱合型ビーズと共に4℃で30分間インキュベートした。上清を除去し、結合されるGTP結合型RhoAと一体のRBDビーズをよく洗浄した。当該RBDビーズをSDS−PAGEサンプルバッファー中でボイルし、結合されるRhoA物質をSDS−PAGE上でランさせて、イモビロンTMへ転写し、抗RhoA抗体で免疫ブロットした(Garcia et al 2001)。
【0143】
ヒト皮膚微小血管ECの遊走アッセイ−当該内皮細胞の遊走アッセイを、既に記載されるとおりに(Lingen 2002)行った。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems, Kirkland, WA)を、0.1 % ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地中で一晩飢餓状態にし、回収し、0.1 % BSAを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DME)中に再懸濁して、改良型ボイデンチャンバー(Nucleopore Corporation, Pleasanton, CA)中の半多孔質ゼラチン化膜上に蒔いた。試験物質を次に、上側チャンバーのウェルへ加え、細胞を 37 ℃ で4時間遊走させた。膜を回収し、固定して染色し、10高倍率視野(high power fileds)あたりの上側チャンバーへ遊走した細胞の数を盲検観察者がカウントした。DME + 0.1 % BSAに対するバックグラウンド遊走を減算して、データを10高倍率視野(400倍)あたりに遊走した細胞の数として記録した。各々の物質を、各々の実験において四つ組で試験し、さらに全ての実験を、少なくとも2回繰り返した。血管内増殖因子(VEGF, R&D System, Minneapolis, MN)を、200 pg/mL の濃度でポジティブコントロールとして用いた。VEGFに関する至適濃度は、用量反応実験(データは示さず)によってあらかじめ決定した。
【0144】
ヒト肺微小血管ECの遊走アッセイ−8M細孔サイズを有する24Transwell(登録商標)ユニットを、インビトロでの細胞遊走のモニタリング用に用いた。HPMVEC(〜1×104 cells/ウェル)を、上側チャンバーへ種々の処理(100 nM MNTX、10 μM VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤又はsiRNA)と共に蒔き、種々のアゴニストを下型チャンバーへ加えた(100 nM MS、DAMGO又はVEGF)。細胞を、18時間遊走させた。上側チャンバーからの細胞及び下側チャンバーからの細胞を、CellTiter96(登録商標)MTSアッセイ(Promega, San Luis Obispo, CA)を用いて定量化し、492 nm で測定した。%遊走を、上側チャンバーと下側チャンバーの両方の細胞数に対する下側チャンバーの細胞数%として定義した。各々のアッセイを三つ組で組み立て、少なくとも5回繰り返して、スチューデントt-検定によって統計学的に解析した(P<0.05 と評価される統計学的有意性を有する)。
【0145】
ヒト肺微小血管ECの増殖アッセイ−細胞増殖を測定するために、HPMVEC[種々の薬剤(100 nM MNTX、10 μM VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤又はsiRNA)で前処理した 5×103 cells/ウェル]を、種々のアゴニスト(100 nM MS、DAMGO又はVEGF)を含有する0.2 mL の血清を含まない培地と共に、96ウェル培養プレート中で37℃、5% CO2/95 % 空気で、24時間インキュベートした。インビトロでの細胞増殖アッセイを、CellTiter96(登録商標)MTSアッセイ(Promega, San Luis Obispo, CA)を用いて細胞数の増加を測定することによって解析し、492 nm で測定した。各々のアッセイを三つ組で組み立て、少なくとも5回繰り返して、スチューデントt-検定によって統計学的に解析した(P<0.05 と評価される統計学的有意性を有する)。
【0146】
内皮細胞の遊走アッセイを用いることにより、MSが内皮の遊走の濃度依存的な上昇を引き起こしたことが判明した。ナロキソンとMNTXは単独で、幅広い濃度域に渡って内皮細胞の遊走へ全く影響を及ぼさなかった。これは、代表的な顕微鏡写真及び定量的に実証される(それぞれ、図6及び図1)。モルヒネの臨床的に関連する濃度において、当該効果の大きさは、VEGFによって達成される効果の約 70 % であった。内皮細胞の遊走は、10-7 M 程の低い濃度のモルヒネによって遊走された(図2)。モルヒネを基盤とする内皮細胞遊走は、μオピオイドアンタゴニストであるナロキソン及びMNTX(10-8 M 程の低い用量で)によって濃度依存的様式で減弱されたが、これは内皮細胞遊走がμオピオイドレセプター(MOR)へのモルヒネの作用によって介在されることを強く示唆する。当該効果が他のオピオイドレセプターというよりもむしろMORによるものであるということを、高選択性の合成エンケファリンμアゴニストであるDAMGOもまた濃度依存的様式で遊走を誘導したという我々の知見により確認した。DAMGOの効果もまた、MNTXによってブロックされた(図3)。μレセプターに作用することが知られるM6Gが血管形成(angiogenesis)への濃度依存的効果を示した一方で、不活性なモルヒネ代謝産物M3Gが血管形成活性(angiogenic activity)を全く発揮しなかったことは、内皮へのモルヒネの効果がμレセプターによって介在されるという我々の仮説(McQuay et al. 1997)を確固たるものにした(図5)。
【0147】
血管形成(angiogenesis)へのオピオイド誘導性効果及びMNTX誘導性効果の機構を評価するために、特徴がはっきりしたEC細胞株であるヒト肺微小血管内細胞(HPMVEC)を用いた。ヒト皮膚微小血管ECと一致して、MS、DAMGO及びVEGFがHPMVECの遊走を誘導し、これがMNTXによって阻害されることが観察された(図7B)。MS、DAMGO及びVEGFはまたHPMVECの増殖を促し、これがMNTXによって減弱されることが明らかとなった(図7A)。
【0148】
μオピオイドレセプターアンタゴニストであるMNTXのVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走への当該阻害効果を考慮して、VEGFレセプタートランス活性化へのオピオイドの役割を調査した。図8Aは、MS及びDAMGOがVEGFレセプター1(Flt−1)及びVEGFレセプター2(Flk−1)の両方のチロシンリン酸化を誘導し、これがMNTXによってブロックされたことを示す。さらに、MNTXは、VEGFによって誘導されるVEGFレセプター1及びVEGFレセプター2のチロシンリン酸化を減弱した。これらの結果は、オピオイドがVEGFレセプタートランス活性化を誘導することを示唆する。
【0149】
VEGFレセプターチロシンキナーゼ活性がオピオイド誘導性血管形成(angiogenesis)のために必要とされるか否かに取り組むために、ECをVEGFレセプター1及び2のチロシンキナーゼ阻害剤で前処理し、オピオイド誘導性のEC増殖及びEC遊走を測定した(図8B)。結果は、VEGFレセプターのチロシンキナーゼ活性がオピオイド誘導性のECの血管形成機能(angiogenic functions)に重要であることを示唆する。
【0150】
血管形成(angiogenesis)に関与するある重要なシグナル伝達分子は、低分子量GタンパクであるRhoAである(Aepfelbacher et al. 1997; Cascone et al. 2003; Hoang et al. 2004; Liu and Senger 2004)。MS、DAMG及びVEGFがRhoA活性化を刺激し、これがMNTXによって阻害されることが観察された(図9A)。さらに、VEGFレセプタートランス活性化は、オピオイド誘導性のRhoA活性化に重要である(図9B)。RhoA発現を静めることは、オピオイド誘導性及びVEGF誘導性のEC増殖及びEC遊走をブロックした(図10)。これらの結果は、RhoA活性化のアゴニスト誘導性のEC血管形成活性(angiogenic activity)への極めて重要な役割を示唆する。
【0151】
全体としてみると、これらの発見は、末梢性μオピオイドレセプターアンタゴニストであるMNTXがオピオイド誘導性及びVEGF誘導性のVEGFレセプター活性化及びRhoA活性化を減弱するモデルを提案する。当該減弱は、オピオイド介在性及びVEGF介在性の血管形成(angiogenesis)へのMNTXの阻害性の役割にとって重要である(図11)。
【0152】
実施例9:メチルナルトレキソンは、S1P誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性の血管形成を阻害する:レセプタートランス活性化の役割
実施例1〜実施例3に記載されるのと同様の手順に従ってアッセイを行った。S1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGOがECの増殖(図12)(比色分析のCellTiter(登録商標)(Promega)MTSアッセイによって測定した)及び遊走(図13)(Transwell(登録商標)(Costar)透過性膜フィルターアッセイ(permeable membrane filter assay)(8μm の細孔直径)によって測定した)を誘導し、これがMNTXでの前処理(0.1 μM、1時間)によって阻害されることが観察された。μオピオイドレセプター発現を静めること(siRNA)は、S1P誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性のEC増殖(図14)及び遊走(図15)も著しく阻害する一方で、モルヒネ誘導性及びDAMGO誘導性のEC増殖(図14)及び遊走(図15)をブロックした。免疫沈降後の免疫ブロット分析は、ECのS1P、VEGF及びPDGF処理がμオピオイドレセプターのセリン/スレオニンのリン酸化(図16)(レセプタートランス活性化を示唆する)及び細胞骨格調節性低分子量GタンパクであるRhoAの活性化(図17)を誘導したことを示唆する。さらに、ECのモルヒネ処理及びDAMGO処理は、RhoA活性化と共にVEGFレセプターのチロシンリン酸化(図18)、PDGFレセプターのチロシンリン酸化(図18)及びS1P3レセプターのチロシンリン酸化(図19)を誘導した。ECのMNTX前処理は、モルヒネ誘導性、DAMGO誘導性、SIP誘導性、VEGF誘導性及びPDGF誘導性のレセプターリン酸化イベント及びRhoA活性化を減弱した。最終的に、RhoA発現を静めること(siRNA)は、アゴニスト誘導性のEC増殖(図20)及びEC遊走(図21)をブロックした。総合すれば、これらの結果は、MNTXがレセプターリン酸化/トランス活性化の阻害及びそれに引き続くRhoA活性化の阻害を介してアゴニスト誘導性のEC増殖及びEC遊走を阻害することを示唆する(図22)。これらの結果は、血管形成(angiogenesis)のMNTXによる阻害が癌治療のための有用な治療介入になり得ることを示唆する。
【0153】
実施例10:メチルナルトレキソン及び抗増殖性化合物は、VEGF−誘導性の増殖及び遊走を相乗的に阻害する
実施例1〜実施例3に記載されるのと同様の手順に従ってアッセイを行った。メチルナルトレキソン及び5−FUが内皮細胞のVEGF誘導性増殖を相乗的に阻害することが観察された(図23)。同様に、メチルナルトレキソン及びベバシズマブが内皮細胞のVEGF誘導性遊走を相乗的に阻害することが観察された(図24)。
【0154】
実施例11:種々の癌株化細胞へのMNTXの効果
メチルナルトレキソン単独及び他の抗癌剤と組み合わせたメチルナルトレキソンの抗増殖性効果を評価した。概して、ヒト癌細胞は当業界において知られる適切な条件下で増殖させることができた。該細胞を次に、MNTX及び/又は5−フルオロウラシル(5−FU)若しくはビークル(vehicle)で、2〜3日間処理し、該細胞をカウントした。ビークル処理した細胞をコントロールとして、それ自体の細胞数を100%増殖とした。処理群の細胞数をパーセントコントロールとして計算した。
ヒト結腸直腸癌株化細胞SW480へのMNTXの効果を評価した。図25に示されるとおり、MNTX自身がSW480細胞における抗増殖性活性を保有することが観察された(**、コントロールと比べてp<0.01)。さらに、MNTXは5−FUの殺腫瘍性効果を増強した(*、ほぼこの細胞株に関してのIC50である5−FU 10μM単独と比べてp<0.05)。それぞれ図26、27及び28に示されるとおり、同様の結果が、ヒト結腸直腸癌株化細胞HCT116、ヒト乳癌細胞MCF−7及び非小細胞肺癌細胞(NSLCC)株で得られた。
【0155】
要約すれば、本発明は、それを必要とする患者の組織又は器官における血管形成(angiogenesis)に関連する内皮細胞遊走及び/又は内皮細胞増殖を減弱する方法、及び/又は内皮細胞関門機能(barrier function)を向上させる方法を提供し、当該方法は1つ以上のオピオイドアンタゴニスト、とりわけ、末梢性オピオイドアンタゴニストを、当該患者へ当該遊走及び/又は当該増殖及び当該血管形成(angiogenesis)を阻害するための有効量、及び/又は関門機能(barrier function)を向上させるための有効量で投与することによる。本発明の方法はまた、オピオイド治療を受けている患者へ末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することであってもよい。末梢性μオピオイドアンタゴニストが、とりわけ適切であってもよい。本発明はまた、それを必要とする患者へオピオイド及び末梢性オピオイドアンタゴニストを共投与する方法をも提供する。末梢性オピオイドアンタゴニストはまた、オピオイド及び末梢性オピオイドアンタゴニストの組み合わせが抗癌剤と共に共投与されてもよいように、抗癌剤と共に共投与されてもよい。
【0156】
本発明がここにある限定性を伴って記載され例示されてきた一方で、当業者は、記載されてきたことの中から構成されてもよいバリエーション、追加、省略を含む種々の変更を十分に理解することができる。従って、これらの変更がまた本発明によって包含されるべきであり、さらに、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲に適法に許容することのできる最も広い解釈によってのみ限定されるべきであることが意図される。
【0157】
本明細書で引用する全ての特許、出版物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に取り込まれる。本開示と取り込まれる特許、出版物及び参考文献との間に矛盾がある場合には、本開示が支配するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、実施例1の結果を描いたヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図2】図2は、実施例2の結果を描いたヒト微小血管内皮細胞遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図3】図3は、MNTX及びMNTX+DAMGOを用いたHMVEC遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図4】図4は、ナロキソン及びナロキソン+DAMGOを用いたHMVEC遊走の濃度依存的阻害の棒グラフである。
【図5】図5は、HMVEC遊走におけるM3G及びM6Gの濃度依存的効果の棒グラフである。
【図6】図6は、MNTX存在下及び非存在下でのモルヒネ誘導性内皮細胞遊走を示す顕微鏡写真である。パネルA=コントロール、パネルB=MS(硫酸モルヒネ)、パネルC=MNTX、及びパネルD=MS+MNTX である。パネルAにおいて示される矢印は、首尾良く膜を越えて遊走したいくつかの細胞を強調するためのものである。
【図7】図7は、MNTXあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖(A)及びパーセント遊走(B)の棒グラフである。
【図8】図8は、MNTXあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞における免疫沈降されたVEGFR.1(Flt−1)又はVEGFR.2(Flk−1)及び抗リン酸化チロシンを用いた抗VEGFR.1及び抗VEGFR.2のチロシンリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネル(A)並びにVEGFR.阻害剤あり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGOの存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖及びパーセント遊走の棒グラフ(B)である。
【図9】図9は、MNTX(A)あり若しくはなし、又はVEGFR.阻害剤(B)あり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞における抗RhoAを用いたRhoAの活性化を示す免疫ブロットのパネルである。
【図10】図10は、スクランブルsiRNA(何らの既知のヒトmRNA配列も標的としない)又はRhoA siRNA存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の抗RhoAの免疫ブロットのパネル(A)並びにスクランブルsiRNA(何らの既知のヒトmRNA配列も標的としない)若しくはRhoA siRNAあり若しくはなしのVEGF、モルヒネ及びDAMGO存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のパーセント増殖(B)及びパーセント遊走(C)の棒グラフである。
【図11】図11は、血管形成へのMNTX効果の機構を要約する模式図である。
【図12】図12は、MNTXあり若しくはなしのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図13】図13は、MNTXあり若しくはなしのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図14】図14は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはμオピオイドレセプターsiRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図15】図15は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはμオピオイドレセプターsiRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図16】図16は、免疫沈降されたμオピオイドレセプター及び抗リン酸化セリン(A、C)、抗リン酸化スレオニン(B、D)を用いたMNTXあり(C、D)若しくはMNTXなし(A、B)のモルヒネ、DAMGO、S1P、VEGF、PDGF存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のμオピオイドレセプターのリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネルである。
【図17】図17は、MNTXあり(B)及びMNTXなし(A)のモルヒネ、DAMGO、S1P、VEGF、PDGF存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の活性化型RhoA(A、B)及び総RhoA(C)の抗RhoA免疫ブロットである。
【図18】図18は、MNTXあり(各々のパネル中のB)若しくはMNTXなし(各々のパネル中のA)のモルヒネ、DAMGO、VEGF(上のパネル)又はPDGF(下のパネル)の存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞の上のパネル:抗リン酸化チロシン(A、B)、抗VEGFR(C)並びに下のパネル:抗リン酸化チロシン(A、B)、抗PDGFR(C)の免疫ブロットのパネルである。
【図19】図19は、免疫沈降されたS1P3レセプター及び抗リン酸化チロシン(A、B)、抗S1P3 Rを用いたMNTXあり(B)若しくはMNTXなし(A)のモルヒネ、DAMGO及びS1P存在下でのヒト肺微小血管内皮細胞のS1P3レセプターのチロシンリン酸化(活性化)を示す免疫ブロットのパネルである。
【図20】図20は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはRhoA siRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント増殖の棒グラフである。
【図21】図21は、スクランブル(コントロール)siRNAあり若しくはRhoA siRNAありのS1P、VEGF、PDGF、モルヒネ及びDAMGO存在下での肺微小血管内皮細胞のコントロールを越えるパーセント遊走の棒グラフである。
【図22】図22は、RhoA活性化及び血管形成へのMNTX効果の機構を要約する模式図である。
【図23】図23は、MNTXとVEGFの存在下、5−FUとVEGFの存在下、並びにMNTX及び5−FUの組合せとVEGFの存在下での微小血管内皮細胞のコントロールを越える増殖パーセントのグラフである。
【図24】図24は、MNTXとVEGFの存在下、ベバシズマブとVEGFの存在下、並びにMNTX及びベバシズマブの組合せとVEGFの存在下での微小血管内皮細胞のコントロールを越える遊走パーセントのグラフである。
【図25】図25は、ヒト結腸直腸癌株化細胞SW480へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図26】図26は、ヒト結腸直腸癌株化細胞HCT116へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図27】図27は、ヒト乳癌株化細胞MCF−7へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【図28】図28は、非小細胞肺癌細胞(NSLCC)株へのMNTX、5−FU及びその両方の組合せの効果の棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む治療方法。
【請求項2】
前記の好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖が好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖が好ましくない血管形成である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量が、前記患者が持続的に少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、好ましくは少なくとも4週間前記オピオイドアンタゴニストの有効な循環血の血漿レベルを有するような量である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者へ有効量の抗癌剤を共投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記抗癌剤が抗血管新生剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗血管新生剤が抗VEGFモノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が糖尿病である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が鎌状赤血球貧血である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患が血管損傷である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が好ましくない眼の血管新生を特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が増殖性網膜症である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記患者がオピオイド治療の併用を受けている、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記患者がオピオイド治療の併用を受けていない、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が慢性的オピオイド治療の併用を受けている、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が慢性的オピオイド治療の併用を受けていない、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記オピオイドアンタゴニストが第四級の若しくは第三級のモルフィナン誘導体、ピペリジン-N-アルキルカルボキシラート及び第四級のベンゾモルファンからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記抹消性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抹消性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞におけるVEGF活性の阻害方法。
【請求項24】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞における外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖の阻害方法。
【請求項25】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞におけるRhoA活性化の阻害方法。
【請求項26】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞の好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱する方法。
【請求項27】
前記の好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱するのに有効な量のオピオイドアンタゴニストがヒト癌患者へ投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
医療介入の時点で癌患者へオピオイドアンタゴニストを共投与することを含む、前記医療介入後の癌又は腫瘍の再発リスクを低減する方法。
【請求項29】
細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤とを投与することを含む治療方法。
【請求項30】
前記細胞が癌細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量の末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することを含む治療方法。
【請求項34】
前記細胞が癌細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
医療介入の前、間、後で患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤とを投与することを含む、前記医療介入後の患者における癌の再発リスクを低減する方法。
【請求項37】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記癌細胞が非固形腫瘍細胞又は非血管形成癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記癌細胞が結腸直腸癌細胞、乳癌細胞又は非小細胞肺癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ相乗的有効量のメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシル又はベバシズマブから選択される抗癌剤とを投与することを含む治療方法。
【請求項42】
前記抗癌剤が5−フルオロウラシルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗癌剤がベバシズマブである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
内皮細胞を相乗的有効量のメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシル又はベバシズマブである抗癌剤に接触させることを含む内皮細胞におけるVEGF誘導性増殖の相乗的阻害方法。
【請求項45】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を阻害する方法であって、前記好ましくない遊走又は増殖を相乗的に阻害する量で、メチルナルトレキソンと5−フルオロウラシル又はベバシズマブである抗癌剤との組合せに接触させることを含む、前記方法。
【請求項46】
前記組合せが、前記好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を阻害するための相乗的有効量で、ヒト癌患者へ投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
所定量の内皮細胞遊走阻害剤と、代謝拮抗剤又は抗血管新生剤である所定量の抗癌剤とを含む医薬組成物であって、それを必要とする哺乳類において癌を治療するのに相乗的効果を達成する、前記組成物。
【請求項48】
前記内皮細胞遊走阻害剤がメチルナルトレキソンである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記抗癌剤が、5−フルオロウラシルである代謝拮抗剤である、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記抗癌剤が、ベバシズマブである抗血管新生剤である、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
癌細胞をメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシルである代謝拮抗増との組合せに接触させることを含む癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記癌細胞がヒト結腸直腸癌細胞、乳癌細胞及び非小細胞肺癌細胞から選択される、前記方法。
【請求項52】
前記癌細胞が、SW480又はHCT116であるヒト結腸直腸癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記癌細胞が、MCF7である乳癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記癌細胞が、非小細胞肺癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
癌細胞に、5−フルオロウラシルである抗癌剤と、メチルナルトレキソンであるオピオイドアンタゴニストとの組合せを接触させることを含む、抗癌剤の癌細胞の増殖を阻害する有効性を改善する方法。
【請求項56】
前記抗癌剤の有効性を改善するための有効量の前記抗癌剤及びオピオイドアンタゴニストが治療を必要とする患者に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む、内皮細胞において所定の効果を達成する方法であって、前記所定の効果が、内皮細胞において好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱すること、VEGF活性を阻害すること、内皮細胞において外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖を阻害すること、内皮細胞においてRhoA活性化を阻害すること又はこれらの組合せである、前記方法。
【請求項58】
好ましくない内皮細胞の遊走及び/又は増殖、内皮細胞の過剰増殖、異常な血管新生又はこれらの組合せを特徴とする疾患の治療のためのヒト用薬物の製造におけるオピオイドアンタゴニストの使用。
【請求項1】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストを投与することを含む治療方法。
【請求項2】
前記の好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖が好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の好ましくない血管内皮細胞の遊走又は増殖が好ましくない血管形成である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量が、前記患者が持続的に少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、好ましくは少なくとも4週間前記オピオイドアンタゴニストの有効な循環血の血漿レベルを有するような量である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者へ有効量の抗癌剤を共投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記抗癌剤が抗血管新生剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗血管新生剤が抗VEGFモノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患が糖尿病である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が鎌状赤血球貧血である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患が血管損傷である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が好ましくない眼の血管新生を特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が増殖性網膜症である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記患者がオピオイド治療の併用を受けている、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記患者がオピオイド治療の併用を受けていない、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が慢性的オピオイド治療の併用を受けている、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が慢性的オピオイド治療の併用を受けていない、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記オピオイドアンタゴニストが第四級の若しくは第三級のモルフィナン誘導体、ピペリジン-N-アルキルカルボキシラート及び第四級のベンゾモルファンからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記抹消性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抹消性オピオイドアンタゴニストがアルビモパンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞におけるVEGF活性の阻害方法。
【請求項24】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞における外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖の阻害方法。
【請求項25】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞におけるRhoA活性化の阻害方法。
【請求項26】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む内皮細胞の好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱する方法。
【請求項27】
前記の好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱するのに有効な量のオピオイドアンタゴニストがヒト癌患者へ投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
医療介入の時点で癌患者へオピオイドアンタゴニストを共投与することを含む、前記医療介入後の癌又は腫瘍の再発リスクを低減する方法。
【請求項29】
細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤とを投与することを含む治療方法。
【請求項30】
前記細胞が癌細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を有する患者へ有効量の末梢性オピオイドアンタゴニストを投与することを含む治療方法。
【請求項34】
前記細胞が癌細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
医療介入の前、間、後で患者へ有効量のオピオイドアンタゴニストと、抗癌剤、放射線又は抗血管形成剤とを投与することを含む、前記医療介入後の患者における癌の再発リスクを低減する方法。
【請求項37】
前記オピオイドアンタゴニストが末梢性オピオイドアンタゴニストである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記末梢性オピオイドアンタゴニストがメチルナルトレキソンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記癌細胞が非固形腫瘍細胞又は非血管形成癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記癌細胞が結腸直腸癌細胞、乳癌細胞又は非小細胞肺癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を特徴とする疾患を有する患者へ相乗的有効量のメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシル又はベバシズマブから選択される抗癌剤とを投与することを含む治療方法。
【請求項42】
前記抗癌剤が5−フルオロウラシルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗癌剤がベバシズマブである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
内皮細胞を相乗的有効量のメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシル又はベバシズマブである抗癌剤に接触させることを含む内皮細胞におけるVEGF誘導性増殖の相乗的阻害方法。
【請求項45】
好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を阻害する方法であって、前記好ましくない遊走又は増殖を相乗的に阻害する量で、メチルナルトレキソンと5−フルオロウラシル又はベバシズマブである抗癌剤との組合せに接触させることを含む、前記方法。
【請求項46】
前記組合せが、前記好ましくない内皮細胞の遊走又は増殖を阻害するための相乗的有効量で、ヒト癌患者へ投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
所定量の内皮細胞遊走阻害剤と、代謝拮抗剤又は抗血管新生剤である所定量の抗癌剤とを含む医薬組成物であって、それを必要とする哺乳類において癌を治療するのに相乗的効果を達成する、前記組成物。
【請求項48】
前記内皮細胞遊走阻害剤がメチルナルトレキソンである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記抗癌剤が、5−フルオロウラシルである代謝拮抗剤である、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記抗癌剤が、ベバシズマブである抗血管新生剤である、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
癌細胞をメチルナルトレキソンと、5−フルオロウラシルである代謝拮抗増との組合せに接触させることを含む癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記癌細胞がヒト結腸直腸癌細胞、乳癌細胞及び非小細胞肺癌細胞から選択される、前記方法。
【請求項52】
前記癌細胞が、SW480又はHCT116であるヒト結腸直腸癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記癌細胞が、MCF7である乳癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記癌細胞が、非小細胞肺癌細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
癌細胞に、5−フルオロウラシルである抗癌剤と、メチルナルトレキソンであるオピオイドアンタゴニストとの組合せを接触させることを含む、抗癌剤の癌細胞の増殖を阻害する有効性を改善する方法。
【請求項56】
前記抗癌剤の有効性を改善するための有効量の前記抗癌剤及びオピオイドアンタゴニストが治療を必要とする患者に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
内皮細胞を有効量のオピオイドアンタゴニストに接触させることを含む、内皮細胞において所定の効果を達成する方法であって、前記所定の効果が、内皮細胞において好ましくない遊走及び/又は増殖を減弱すること、VEGF活性を阻害すること、内皮細胞において外因性オピオイド誘導性の細胞遊走又は細胞増殖を阻害すること、内皮細胞においてRhoA活性化を阻害すること又はこれらの組合せである、前記方法。
【請求項58】
好ましくない内皮細胞の遊走及び/又は増殖、内皮細胞の過剰増殖、異常な血管新生又はこれらの組合せを特徴とする疾患の治療のためのヒト用薬物の製造におけるオピオイドアンタゴニストの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2009−533482(P2009−533482A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506726(P2009−506726)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066806
【国際公開番号】WO2007/121447
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(501242712)ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066806
【国際公開番号】WO2007/121447
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(501242712)ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]