説明

内皮細胞特異的抗体およびその使用

【課題】毒性を低減すると共に、効能を長期にわたり延長できるという疾患関連の血管形成を選択的にターゲッティングする血管形成阻害物質の提供。
【解決手段】腫瘍内皮マーカー(TEM)に特異的な抗体を投与することにより、内皮細胞増殖、遊走、及び細管形成を阻害する方法、又TEM特異的抗体と、このような方法に有用な抗体組成物とを投与することにより、血管形成及び腫瘍成長を阻害する方法であり、血管形成関連の疾患(癌、多発性嚢胞腎、糖尿病網膜症、慢性関節リウマチ、及び乾癬を含む)を治療する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する方法および組成物は、内皮細胞の増殖、遊走、および/または細管形成を阻害することから、脊椎動物における血管形成関連の障害および疾患(癌を含む)を治療する上で有用である。さらに具体的には、本発明の方法は、腫瘍内皮マーカー(TEM)に特異的な抗体を結合または非結合形態で投与することにより、血管形成または腫瘍成長を阻害すること、ならびに、これらの方法に有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成とは、組織または器官における新しい血管の形成を意味する。正常な生理学的条件下では、血管形成は、創傷の治癒、胎児発育、ならびに、黄体、子宮内膜および胎盤の形成など、非常に特殊な状況で起こる。血管形成の過程は、天然に存在する刺激因子の系により高度に制御されており、このような刺激物質として、例えば、アンギオポイエチン-1、IL-8、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、および腫瘍壊死因子−α(TNF-α)、ならびに、阻害物質(例:トロンボスポンジン、インターフェロン、およびメタロプロテイナーゼ阻害剤)が挙げられる。
【0003】
血管形成はまた、多数の疾患状態でも有意な因子として起こることがある。実際、制御されない血管形成は、様々な疾患に関連する病因性損傷に直接寄与する。この制御されない、すなわち過剰な血管形成は、血管形成因子と血管形成阻害物質の不均衡が起こる、例えば、過剰量の血管形成因子が産生されるとき、起こる。不十分な血管形成も特定の病状に寄与する。例えば、不十分な血管成長は、冠状動脈疾患、発作、および創傷治癒の遅延に関連する病状に寄与する。
【0004】
過剰な血管形成は、糖尿病性網膜症、加齢による黄斑変性、アテローム性動脈硬化のような疾患、ならびに、慢性関節リウマチおよび乾癬のような炎症状態に起こる。例えば、慢性関節リウマチの場合、関節の滑膜内膜中の血管が不適当な血管形成を被る。新しい血管網に加えて、内皮細胞は、パンヌス成長および軟骨破壊を招く因子および反応性酸素種を放出するため、慢性関節リウマチの慢性的な炎症状態に積極的に寄与し、その維持を助けると考えられる。例えば、Bodolay, E,ら、J. Cell Mol. Med. 6: 357-76(2002)を参照されたい。同様に、骨関節症では、血管形成関連因子による軟骨細胞の活性化が、関節の破壊に寄与すると考えられる。例えば、Walsh, D.A.ら、Anthritis Res. 3: 147-53(2001)を参照。
【0005】
血管形成は、癌の増殖および転移に決定的な役割を果たす。例えば、B.R. Zetter, Ann. Rev. Med. 49: 407-24(1998), J. Folkman, Sem. Oncol. 29: 15-18(2002)を参照。第1に、血管形成により、原発性腫瘍の血管新生が起こり、増殖する腫瘍細胞に必要な栄養を供給する。第2に、腫瘍の血管新生が増加して、血流に到達するため、腫瘍が転移する可能性が増大する。最後に、転移性腫瘍細胞が原発性腫瘍の部位から離れた後、血管形成が起こり、二次部位での転移細胞の増殖および拡大を支持することになる。
【0006】
正常および疾患関連の血管形成は同様に進行すると思われる。基底膜に囲まれた内皮細胞および周皮細胞は、毛細血管を形成する。疾患または損傷は、前駆血管形成因子の産生を誘発する。初め、これらの因子は、内皮細胞および白血球を活性化して、既存の血管の基底膜を侵食または溶解させる酵素を放出する。活性化した内皮細胞は、血管のルーメンの内側を覆い、その後、基底細胞膜から突き出す。次に、前駆血管形成刺激因子は、内皮細胞を誘導して、損傷した基底膜からこれを遊走させる。遊走細胞は、親血管から「芽」を形成し、そこで内皮細胞が増殖を始める。内皮の芽は、互いに合流して、接着因子を用いて毛細血管ループを形成し、新生血管が生じる。続いて、別の酵素(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ)が、芽を形成する血管の先端の組織を消化し、新生血管周辺の活発な組織再造形を可能にする。新生血管は周皮細胞(すなわち、分化した平滑筋細胞)により安定化される。いったん安定化すると、新生血管は血流を支持する。
【0007】
血管形成阻害物質として、多数の化合物が確認されている。そのような化合物の例を以下に挙げる:プロタミン(Taylorら、Nature 297:307(1982))ヘパリン、ステロイド(Folkmanら、Science 221:719(1983)および米国特許第5,001,116号および第4,994,443号)、タリドミド(R.J. D’Amatoら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:4082-85(1994))、TNP-470(Ingmerら、Nature 348:555-57(1990))、およびカルボキシアミドトリアゾール(CAI)(Kohnら、Cancer Res. 56:569-73(1996))。生体内で産生される阻害物質としては、インターフェロンα(IFN-α)(Whiteら、New England J. Med. 320:1197-1200(1989)、Sidkyら、Cancer Res. 47:5155-61(1987)、アンギオスタチン(O’Reillyら、Cell 79:315-28(1994))、およびエンドスタチン(O’Reillyら、Cell 88:1-20(1997))が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】Bodolay, E,ら、J. Cell Mol. Med. 6: 357-76(2002)
【特許文献2】Walsh, D.A.ら、Anthritis Res. 3: 147-53(2001)
【特許文献3】B.R. Zetter, Ann. Rev. Med. 49: 407-24(1998)
【特許文献4】J. Folkman, Sem. Oncol. 29: 15-18(2002)
【特許文献5】Taylorら、Nature 297:307(1982)
【特許文献6】Folkmanら、Science 221:719(1983)
【特許文献7】R.J. D’Amatoら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:4082-85(1994)
【特許文献8】Ingmerら、Nature 348:555-57(1990)
【特許文献9】Kohnら、Cancer Res. 56:569-73(1996)
【特許文献10】Whiteら、New England J. Med. 320:1197-1200(1989)
【特許文献11】Sidkyら、Cancer Res. 47:5155-61(1987)
【特許文献12】O’Reillyら、Cell 79:315-28(1994)
【特許文献13】O’Reillyら、Cell 88:1-20(1997)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】米国特許第5,001,116号
【非特許文献2】米国特許第4,994,443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら化合物の多くが、抗血管形成活性の一般的性質に問題を有する。換言すると、大部分の化合物は、正常な血管形成と、疾患に関連する血管形成とを識別する能力が欠如している。その結果、正常および疾患関連の血管形成の両方が阻害されるため、有意な毒性によって、確認された抗血管形成物質の多くの有用性が制限される。従って、疾患関連の血管形成を選択的にターゲッティングする血管形成阻害物質は、毒性を低減すると共に、効能を長期にわたり延長できるという有意な利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の概要
本発明は、細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍内皮マーカー(TEM)1およびTEM17からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量の抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が上記細胞の増殖を阻害する、上記方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、細胞の遊走を阻害する方法であって、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量の抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が細胞の遊走を阻害する、上記方法も提供する。
【0013】
本発明は、内皮細管の形成を阻害する方法であって、TEM1およびTEM17からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量の抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が内皮細管の形成を阻害する、上記方法を提供する。
【0014】
本発明が提供する方法の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。本発明の方法では、インタクトな抗体分子、単鎖可変領域、Fabフラグメント、もしくはF(ab’)2フラグメントを本発明の方法に用いることができる。抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、もしくはポリクローナル抗体でよい。トランスジェニックマウスで抗体を産生させることもできる。生物活性物質に結合した抗体も、本発明の方法において有用である。一実施形態では、抗体は、抗原の細胞外ドメインに特異的である。本発明の方法の抗体が媒介する阻害は、in vitroでの細胞、組織、もしくは被検者に起こりうる。
【0015】
さらに、本発明は、血管形成を阻害する方法であって、これを必要とする被検者に対し、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量の抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が血管形成を阻害する、上記方法も提供する。本発明の方法で治療する被検者は、目的とするTEMを発現する。血管形成は、新血管形成(neoangiogenesis)でもよい。本発明で有用な抗体には、抗血管形成薬または抗腫瘍薬と結合した抗体も含まれる。本発明の方法による治療を受ける被検者には、限定するものではないが、以下に挙げる疾患を有する被検者が含まれる:中枢神経系の新生物:多形グリア芽腫、星状細胞腫、希突起グリア腫、上衣および脈絡叢腫、松果体腫、ニューロン腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、髄膜肉腫;眼の新生物:基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫;内分泌腺の新生物:下垂体新生物、甲状腺の新生物、副腎皮質の新生物、神経内分泌系の新生物、胃腸膵臓内分泌系の新生物、性腺の新生物;頭部および頚部の新生物:脳腫瘍および頚部癌、口腔、咽頭、喉頭、歯牙形成腫瘍;胸部の新生物:大細胞肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸部の新生物、悪性中皮腫、胸腺腫、胸部の一次生殖細胞腫瘍;消化管の新生物:食道の新生物、胃の新生物、肝臓の新生物、胆嚢の新生物、外分泌膵臓の新生物、小腸、虫垂および腹膜の新生物、結腸および直腸の腺癌、肛門の新生物;尿生殖管の新生物:腎細胞癌、腎盤および尿管の新生物、膀胱の新生物、尿道の新生物、前立腺の新生物、陰茎の新生物、精巣の新生物;女性生殖器の新生物:外陰および膣の新生物、子宮頚の新生物、子宮体の腺癌、卵巣癌、女性生殖器肉腫;乳房の新生物;皮膚の新生物:基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫;悪性黒色腫;骨および軟組織の新生物:骨形成肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング腫、胎生型神経外胚芽性腫瘍、血管肉腫;造血系の新生物:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、HTLV-1、およびT細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病、毛髪細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、肥満細胞性白血病;小児の新生物:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎および肝腫瘍。これ以外にも、以下のものが挙げられる:多発性嚢胞腎;糖尿病網膜症;慢性関節リウマチ;乾癬;骨関節症;聴音神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫;黄斑変性;未熟児網膜症;角膜移植拒絶;新血管肉芽腫および後水晶体線維増殖症。血管形成に関連するその他の疾患として、以下のものが挙げられるが、これらに限定するわけではない:流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、アトピー性角膜炎、上辺縁角膜炎、翼状片角膜炎、乾燥症候群、シェーグレン症候群、フィレクテヌローシス(phylectenulosis)、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純疱疹感染、帯状疱疹感染、原生動物感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、全身性狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ウェーグナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンジョンソン病、ペリフィゴイド(periphigoid)放射状角膜切開、角膜移植拒絶、および慢性炎症性疾患。
【0016】
本発明は、腫瘍成長を阻害する方法であって、これを必要とする被検者に対し、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量の抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が腫瘍成長を阻害する、上記方法も提供する。本発明の方法により治療しようとする被検者は、目的とするTEMを発現する。本発明で有用な抗体には、抗血管形成薬または抗腫瘍薬と結合した抗体も含まれる。本発明の方法により治療しようとする被検者は、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、もしくは奇形癌(tetratocarcinoma)を有する被検者が含まれる。腫瘍には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、および子宮の癌がある。このような癌として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:中枢神経系の新生物:多形グリア芽腫、星状細胞腫、希突起グリア腫、上衣および脈絡叢腫、松果体腫、ニューロン腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、髄膜肉腫;眼の新生物:基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫;内分泌腺の新生物:下垂体新生物、甲状腺の新生物、副腎皮質の新生物、神経内分泌系の新生物、胃腸膵臓内分泌系の新生物、性腺の新生物;頭部および頚部の新生物:脳腫瘍および頚部癌、口腔、咽頭、喉頭、歯牙形成部腫瘍;胸部の新生物:大細胞肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸部の新生物、悪性中皮腫、胸腺腫、胸部の一次生殖細胞腫瘍;消化管の新生物:食道の新生物、胃の新生物、肝臓の新生物、胆嚢の新生物、外分泌膵臓の新生物、小腸、虫垂および腹膜の新生物、結腸および直腸の腺癌、肛門の新生物;尿生殖管の新生物:腎細胞癌、腎盤および尿管の新生物、膀胱の新生物、尿道の新生物、前立腺の新生物、陰茎の新生物、精巣の新生物;女性生殖器の新生物:外陰および膣の新生物、子宮頚の新生物、子宮体の腺癌、卵巣癌、女性生殖器肉腫;乳房の新生物;皮膚の新生物:基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫;悪性黒色腫;骨および軟組織の新生物:骨形成肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング腫、胎生型神経外胚芽性腫瘍、血管肉腫;造血系の新生物:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、HTLV-1、およびT細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病、毛髪細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、肥満細胞性白血病;小児の新生物:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎および肝腫瘍。
【0017】
さらに、本発明は、本発明の方法に有用な、生物活性薬(抗血管形成薬または抗腫瘍薬など)と結合した抗体の組成物も提供する。
【0018】
さらにまた、本発明は、TEM1をモジュレートする血管形成阻害剤分子を同定するための方法であって、腫瘍を担持するTEM1−トランスジェニックマウスを試験分子と接触させ、腫瘍成長の阻害を検出することを含み、その際、試験分子と接触したマウスの腫瘍成長が、試験分子と接触していないマウスの腫瘍成長と比較して低減していれば、この試験分子が、TEM1をモジュレートする血管形成阻害剤分子として同定される、上記方法も提供する。
【0019】
本発明は、TEM9をモジュレートする血管形成阻害剤分子を同定するための方法であって、腫瘍を担持するTEM9−トランスジェニックマウスを試験分子と接触させ、腫瘍成長の阻害を検出することを含み、その際、試験分子と接触したマウスの腫瘍成長が、試験分子と接触していないマウスの腫瘍成長と比較して低減していれば、この試験分子が、TEM9をモジュレートする血管形成阻害剤分子として同定される、上記方法も提供する。
【0020】
本発明は、TEM17をモジュレートする血管形成阻害剤分子を同定するための方法であって、腫瘍を担持するTEM17−トランスジェニックマウスを試験分子と接触させ、腫瘍成長の阻害を検出することを含み、その際、試験分子と接触したマウスの腫瘍成長が、試験分子と接触していないマウスの腫瘍成長と比較して低減していれば、この試験分子が、TEM17をモジュレートする血管形成阻害剤分子として同定される、上記方法も提供する。
【0021】
さらに本発明は、TEM1と特異的に結合する、モノクローナル抗体またはその生物学的に活性のフラグメントを提供するが、その際、この抗体はハイブリドーマから産生される。一実施形態では、ハイブリドーマはTEM1-70である。別の実施形態では、ハイブリドーマはTEM1-7である。さらに別の実施形態では、ハイブリドーマはTEM1-38である。また、本発明は、抗体が、TEM1に特異的な抗体の可変領域のアミノ酸と同じ配列を含む、モノクローナル抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントも提供する。一実施形態では、抗体はIgG抗体である。特定の実施形態では、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなるIgGサブクラスのメンバーから選択される。抗体の重鎖の少なくとも1個のアミノ酸は、欠失、付加、もしくは本来のアミノ酸とは異なるアミノ酸との置換により改変することができる。さらに、抗体を抗腫瘍薬または抗血管形成薬と結合させることも可能である。一実施形態では、抗体は血管形成を阻害する。具体的実施形態では、血管形成は、癌を促進したり、引き起こしたりする。具体的実施形態では、血管形成は、多発性嚢胞腎を促進したり、引き起こしたりする。具体的実施形態では、血管形成は、糖尿病網膜症を促進したり、引き起こしたりする。別の具体的実施形態では、血管形成は、慢性関節リウマチを促進したり、引き起こしたりする。さらに別の実施形態では、血管形成は、乾癬を促進したり、引き起こしたりする。一実施形態では、TEM1特異的抗体は腫瘍成長を阻害する。腫瘍には、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、もしくは奇形癌(tetracarcinoma)が含まれる。腫瘍としては、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、もしくは子宮の癌が挙げられる。
【0022】
本発明は、所定量の、TEM1に特異的なモノクローナル抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントと好適な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、抗体はTEM1-70である。別の実施形態では、抗体はTEM1-38である。さらに別の実施形態では、抗体はTEM1-7である。
【0023】
本発明は、ハイブリドーマ系統TEM1-70、ハイブリドーマ系統TEM1-7、およびハイブリドーマ系統TEM1-38を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
ここに開示する本発明の方法と組成物は、in vitroおよびin vivoでの内皮細胞の増殖および機能に関する。具体的には、これらの方法および組成物は、腫瘍内に存在する内皮細胞上に優先的に発現し、腫瘍内皮マーカー、すなわちTEMとして知られる、内皮細胞上の表面分子のサブセットに特異的な抗体を用いる。従って、これらの抗体は、疾患に関連する血管形成を優先的にターゲッティングする。TEMをターゲッティングする抗体分子は、少なくとも4つの異なる機構により、内皮細胞活性のモジュレーターとして(例えば、治療薬として)有用であると考えられる。第1に、抗体は、重要な巨大分子シグナル伝達経路をモジュレートまたは阻害することにより、その標的細胞に直接作用することができる。例えば、抗体は重要なリガンドまたはその受容体と結合して、必要な正の刺激を阻害するか、あるいは、負のシグナル(例えば、アポトーシスを誘発するもの)を誘導することができる。第2に、抗体は、その標的に単純に結合することにより、その標的細胞に間接的に作用し、生体活性薬(例えば、治療利益を有する放射性核種または強力な毒素)をそのコンジュゲートとして送達することができる。第3に、抗体は、免疫系の他の成分と連結して標的細胞に作用させることができる。例えば、抗体を用いて、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞分解(CDC)を誘発することができる。第4に、抗体は固有の細胞傷害性を有することである。
【0025】
腫瘍血管系内皮のターゲッティングには、いくつかの独特の利点がある。第1に、血管内皮の管腔表面と、静脈内に投与した薬剤との間に最小限の障壁しかないため、標的細胞への送達の効率が高まる。第2に、少数の内皮細胞の損傷が局在化することから、内皮の反応性膨潤の結果、血管閉塞が起こり、周囲の内皮細胞を損傷させるため、局在化した損傷によってさらに全体的な効果が達成される。第3に、内皮細胞は抗体に対する耐性を形成しないため、効果を全く低減することなく、この抗体を繰り返し投与することが可能である。
【0026】
本明細書に記載する方法および組成物における標的として、どの腫瘍内皮マーカーを用いてもよい。本明細書で用いる用語「腫瘍内皮マーカー(TEM)」とは、腫瘍内皮細胞上に優先的に発現した分子を意味する。TEMの発現は、正常(非腫瘍)血管系では存在しないか、腫瘍細胞より有意に低い。例えば、St. Croixら、Science 289: 1197-1202(2000)、米国特許出願番号09/918715(公開番号20030017157)を参照されたい。TEMには、その半減期の少なくとも一部分の間、内皮細胞の表面に発現される、あらゆるタイプの分子も含まれる。このような分子として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:TEM1、TEM2、TEM3、TEM4、TEM5、TEM6、TEM7、TEM8、TEM9、TEM10、TEM11、TEM12、TEM13、TEM14、TEM15、TEM16、TEM17、TEM18、TEM19、TEM20、TEM21、TEM22、TEM23、TEM24、TEM25、TEM26、TEM27、TEM28、TEM29、TEM30、TEM31、TEM32、TEM33、TEM34、TEM35、TEM36、TEM37、TEM38、TEM39、TEM40、TEM41、TEM42、TEM43、TEM44、TEM45、TEM46。
【0027】
一実施形態では、標的分子はTEM1である。エンドシアリン(endosialin)は165 kDaの糖タンパク質である。Rettingら、Proc. Nat’l Acad. Sci. U.S.A. 89:10832-36(1992), Christianら、J. Biol. Chem. 276: 7408-14(2001)。TEM1の配列は、St. Coixとその同僚によりScience 289: 1197-1202(2000)においてエンドシアリンタンパク質の配列であると同定された。TEM1は、C型レクチン様のI型膜タンパク質であり、シグナルリーダーペプチド、5つの球状細胞外ドメインに続いて、ムチン様領域、膜貫通セグメントおよび短い細胞質テールを有する。N末端は、トロンボモジュリン(血液凝固に関与する受容体)および補体受容体C1qRpとの相同性を示す。Websterら、J. Leuk, Biol. 67: 109-16(2000)。マウスおよびヒトTEM1は、77.5%のアミノ酸同一性を有し、膜貫通領域では100%の同一性を有する。Opavskyら、Biol. Chem. 276: 38795-807(2001)。TEM1は、アミノ酸1〜17にシグナル配列を有し、その膜貫通ドメインはアミノ酸686〜708にある。その細胞外ドメインは残基1〜685である。TEM1発現は、細胞密度(または細胞周期)に応じて変動する。Opavskyら、前掲(2001)。TEM1は、密集(G0)細胞、すなわちin vivoでの細胞周期の最も関連する段階で最大に発現する。TEM1のDNA配列は、米国特許出願番号09/918715(公開番号20030017157)に配列番号196として開示されている。
【0028】
別の実施形態では、標的分子はTEM17である。TEM17は、I型膜タンパク質であり、残基1〜18にシグナル配列、ナイドジェンのG1ドメインと類似したN末端領域、プレキシンと相同性を有する100アミノ酸領域、残基427〜445に膜貫通ドメイン、および短い細胞質テールを有する。その細胞外領域は、残基1〜426を含む。プレキシンファミリーは、細胞ガイダンスキュー(cell guidance cue)を媒介するが、これは、TEM17がこの能力に役割を果たすことを示唆している。マウスTEM17は、ヒトTEM17と81%の配列同一性を有する。TEM17のDNA配列は、米国特許出願番号09/918715(公開番号20030017157)に配列番号230として開示されている。
【0029】
さらに別の実施形態では、標的分子はTEM9である。TEM9は、セクレチンファミリーセブンスパン膜貫通Gタンパク質に結合した受容体である。Gタンパク質結合受容体相同体は、残基1〜26のシグナル配列と7回膜貫通ドメインの両方を有する。N末端細胞外ドメインは、ロイシンリッチリピート(LRR)領域、免疫グロブリンドメイン、ペプチドホルモン受容体ドメイン、およびGPCRタンパク質分解部位ドメインからなる。その細胞外領域は、アミノ酸1〜769に常在し、その膜貫通ドメインは、残基817〜829(TM2およびTM3)、残基899〜929(TM4およびTM5)、ならびに残基1034〜1040(TM6およびTM7)に存在する。膜貫通領域は、他のセクレチンファミリーセルペンチン受容体の膜貫通領域と相同である。細胞質領域の始めは、GPCR-パルミトイル化に典型的な2つの隣接するシステインを含む。従って、TEM9は、細胞接着タンパク質に特有の細胞外ドメインを有するGタンパク質結合受容体である。マウスオーソログは、残基1〜29に推定シグナルペプチドを有し、ヒトTEM9に対し87%の相同性を有する。TEM9のDNA配列は、米国特許出願番号09/918715(公開番号20030017157)に配列番号212として開示されている。
【0030】
本明細書に記載する方法および組成物ではどんな抗体を用いてもよい。本明細書で用いる用語「抗体」とは、軽鎖免疫グロブリン分子からの少なくとも1つの可変領域と、重鎖分子からの少なくとも1つの可変領域とを含み、これらが共同して、標的抗原に特異的な結合部位を形成するような分子を意味する。抗体は、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖可変領域、もしくはインタクトな抗体分子の形態であるものが有用である。インタクトな分子のフラグメントは、当分野でよく知られる方法を用いて作製することができ、このような方法として、酵素消化や組換え手段が挙げられる。本発明の方法に有用なフラグメントは、生物学的に活性のフラグメントである。本明細書で用いる用語「生物学的に活性の」とは、所望の抗原決定基と結合して、直接または間接的に生物学的作用を及ぼすことができる抗体または抗体フラグメントを意味する。直接的作用としては、限定するものではないが、成長シグナルの阻害、抗アポトーシスシグナルの阻害、アポトーシスまたは壊死シグナルの誘発、ADCCカスケードの開始、CDCカスケードの開始などが挙げられる。また、間接的作用としては、限定するものではないが、コンジュゲート(例:放射性核種、毒素、薬物、もしくはその他の生物活性物質)送達による毒性、二次因子(例:放射線など、さらに別の因子に暴露すると毒性となる因子の送達)に対する感作が挙げられる。本明細書で用いる用語「特異的な」とは、標的抗原決定基に対する抗体の選択的結合を意味する。一連の所定条件下で適切な抗原への結合と、無関係の抗原または抗原混合物への結合とを比較することにより、結合の特異性について抗原を試験することができる。抗体が、無関係の抗原または抗原混合物と比較して、適切な抗原に少なくとも2、5、7、および好ましくは10倍結合していれば、この抗体は特異的であるとみなす。一実施形態では、特異的抗体は、ヒトTEM抗原と結合するが、非ヒトTEM抗原、例えば、マウスTEM抗原とは結合しない。別の実施形態では、特異的抗体は、ヒトTEM抗原と結合するが、ヒトTEM抗原に対し70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%またはそれ以上のアミノ酸相同性を有する非ヒトTEM抗原とは結合しない。一実施形態では、抗体はIgG抗体である。例えば、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4抗体である。
【0031】
一実施形態では、抗体は、TEM1に特異的なクローン7であり、これは、ハイブリドーマTEM1-7により産生される。別の実施形態では、抗体は、TEM1に特異的なクローン70であり、これは、ハイブリドーマTEM1-70により産生される。別の実施形態では、抗体は、TEM1に特異的なクローン38であり、これは、ハイブリドーマTEM1-38により産生される。クローン7を産生するハイブリドーマ(TEM1-7)、クローン38を産生するハイブリドーマ(TEM1-38)、ならびに、クローン70を産生するハイブリドーマ(TEM1-70)は、ブダペスト条約の条項に従い、National Institute of Advanced Industrial Science and Technology、International Patent Organism Depositary(AIST Tsukuba Central 6, 1-1-1 Higashi、日本国茨城県つくば市、305-8566)に対し2003年5月15日国際寄託され、登録番号FERM BP-8380(TEM1-7)、FERM BP-8381(TEM1-38)、およびFERM BP-8382(TEM1-70)をそれぞれ有する。
【0032】
本発明の方法および組成物に有用な抗体は、細胞培養物、ファージ、もしくは様々な動物において作製することができ、このような動物として、限定するものではないが、ウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、ヒトニザルなどが挙げられる。従って、本発明の方法に有用な抗体は哺乳動物の抗体である。ファージ法を用いて、初期抗体を単離するか、または改変された特異性および結合特性を有する変異体を作製することができる。このような方法は常用されており、当分野では周知である。一実施形態では、当分野で周知の組換え手段により抗体を生産する。例えば、抗体をコードするDNA配列を含むベクターで宿主細胞をトランスフェクションすることにより、組換え抗体を生産することができる。1以上のベクターを用いて、宿主細胞に少なくとも1つのVLと1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクションすることができる。抗体産生および生産の組換え手段についての記載例として、以下のものが挙げられる:Delves, ANTIBODY PRODUCTION: ESSENTIAL TECHNIQUES(Wiley, 1997);Shephardら、MONOCLONAL ANTIBODIES(Oxford University Press, 2000);およびGoding, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE(Academic Press, 1993)。本発明の方法に有用な抗体を組換え手段により改変して、所望の機能を媒介する抗体の効能をさらに高めることができる。また、組換え手段を用いた置換により抗体を改変することも考えられる。典型的には、置換は保存的置換である。例えば、抗体の定常領域における少なくとも1個のアミノ酸を別の残基で置換することができる。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、特許出願番号WO9958572号;ならびにAngalら、Mol. Immunol. 30: 105-08(1993)を参照されたい。アミノ酸に関する改変としては、アミノ酸の欠失、付加および置換が挙げられる。場合によっては、このような改変を実施することにより、不要な活性、例えば、補体依存性細胞傷害性を軽減する。
【0033】
抗体はヒト化抗体でもよい。本明細書で用いる用語「ヒト化抗体」とは、抗体がその本来の抗原特異性は保持しながら、より一層ヒト抗体と類似するように非抗原結合領域におけるアミノ酸配列が改変されている、抗体を意味する。典型的には、可変領域は、1つの種、例えば、マウス由来のものであり、定常領域はヒトに由来する。抗体はキメラ抗体でもよい。本明細書で用いる用語「キメラ抗体」とは、抗体がその本来の抗原特異性は保持しながら、1種以上の哺乳動物由来の配列を含むようにアミノ酸配列が改変されている、抗体を意味する。本明細書で用いる用語「一本鎖可変フラグメント(ScFv)」とは、可変ペプチドリンカーにより互いに結合された免疫グロブリンの可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)からなる遺伝子工学的に作製された抗体を意味する。
【0034】
生物学的に活性の抗体を作製するのに十分であれば、どんな形態の抗原を用いて抗体を作製してもよい。従って、誘発抗原は、単一エピトープ、複数のエピトープ、もしくは全タンパク質だけ、または当分野では周知の1以上の免疫原性増強剤と組み合わせた全タンパク質のいずれでもよい。誘発抗原は、単離された全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例:抗原の少なくとも一部分でトランスフェクションした細胞による免疫化)、もしくは可溶性タンパク質(例:タンパク質の細胞外ドメイン部分だけによる免疫化)でよい。抗原は、遺伝子工学的に改変した細胞において生産することもできる。抗原をコードするDNAは、ゲノムまたは非ゲノム(例:cDNA)のいずれでもよく、細胞外ドメインの少なくとも一部をコードする。本明細書で用いる用語「部分」とは、目的とする抗原の免疫原性エピトープを構成する上で最小数のアミノ酸または核酸(場合に応じて)を意味する。目的とする細胞の形質転換に好適な任意の遺伝子ベクターを用いることができ、このようなベクターとして、限定するものではないが、アデノウイルスベクター、プラスミド、および非ウイルスベクター(カチオン脂質など)が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物の抗体は、目的とするTEMの細胞外ドメインの少なくとも一部分と特異的に結合する。
【0035】
本発明の方法および組成物の抗体はモノクローナルまたはポリクローナルのいずれでもよい。本明細書で用いる用語「モノクローナル抗体」とは、単一のB細胞により産生される単一の抗体を意味する。本明細書で用いる用語「ポリクローナル抗体」とは、同じ抗原特異性を有するモノクローナル抗体の混合物であるが、1以上のB細胞クローンにより産生される抗体を意味する。一実施形態では、ポリクローナル抗体は、複数の抗原エピトープを含む単一抗原内に様々なエピトープ特異性、親和力、もしくは結合力を有するモノクローナル抗体を含むものである。
【0036】
一実施形態では、本明細書に記載する抗体はヒト抗体である。本明細書で用いる用語「ヒト抗体」とは、主に、軽鎖および重鎖配列のほぼ全配列(相補性決定領域(CDR)を含む)が、ヒト遺伝子に由来する抗体を意味する。一実施形態では、トリオーマ方法、ヒトB細胞方法(例えば、Kozborら、Immunol. Today 4; 72(1983)を参照)、EBV形質転換方法(例えば、Coleら、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY 77-96(1985)を参照)により、もしくはファージ展示(例えば、Marksら、J. Mol. Biol. 222:581(1991)を参照)を用いて、ヒトモノクローナル抗体を作製する。具体的実施形態では、トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を産生させる。このような部分的から完全なヒト抗体までを作製する方法は当分野では周知であり、いずれの方法を用いてもよい。1つの特に好ましい実施形態によれば、ヒト重鎖および軽鎖抗体遺伝子を発現させるように作製したトランスジェニックマウスにおいて完全なヒト抗体を製造する。ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスの作製を記載した例として、PCT公開番号WO 02/43478がある。次に、所望の抗体を産生するトランスジェニックマウスからのB細胞を融合させることにより、抗体の連続的生産のためのハイブリドーマ細胞系を作製する。例えば、米国特許第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号;および第5,545,806号;ならびに、Jakobovits, Adv. Drug Del. Rev. 31: 33-42(1998);Greenら、J. Exp. Med. 188: 483-495(1998)を参照されたい。
【0037】
本発明の方法および組成物では、二重特異性抗体も有用である。本明細書で用いる用語「二重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる抗原エピトープに対する結合特異性を有する抗体、典型的には、モノクローナル抗体を意味する。一実施形態では、エピトープは同じ抗原に由来する。別の実施形態では、エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異性抗体を製造する方法は当分野では周知である。例えば、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現を組換えにより用いて、二重特異性抗体を製造することができる。例えば、Milsteinら、Nature 305: 537-39(1983)を参照。あるいは、化学的結合により二重特異性抗体を作製することもできる。例えば、Brennanら、Science 229: 81(1985)を参照。二重特異性抗体は二重特異性抗体フラグメントも含む。例えば、Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-48(1993), Gruberら、J. Immunol. 152: 5368(1994)を参照。
【0038】
本発明の方法および組成物では、ヘテロコンジュゲート抗体も有用である。本明細書で用いる用語「ヘテロコンジュゲート抗体」とは、2つの共有結合した抗体を意味する。このような抗体は、合成タンパク質化学で周知の方法(架橋剤を用いたものなど)により製造することができる。例えば、米国特許第4,676,980号を参照。
【0039】
本明細書に記載する抗体を生物活性物質と結合させてもよい。本明細書で用いる用語「生物活性物質」とは、所望の生物学的作用を増強または媒介する合成化合物または天然に存在する化合物を意味する。一実施形態では、所望の生物学的作用は静止または細胞死(例えば、アポトーシス)である。別の実施形態では、所望の生物学的作用は、抗体が、静止または細胞死を誘導する二次因子に標的細胞を感作することによって達成される。生物活性物質には、例えば、化学療法薬または毒素のような医薬剤がある。このようものとして、サイトカイン、リガンド、もしくは別の抗体がある。一実施形態では、この物質は抗腫瘍薬である。本明細書で用いられる用語「抗腫瘍薬」とは、免疫応答、静止、細胞死、もしくは壊死の誘導により、腫瘍成長を阻害する薬剤を意味する。一実施形態では、上記薬剤は抗血管形成薬である。本明細書で用いられる用語「抗血管形成薬」とは、免疫応答、静止、細胞死、もしくは壊死の誘導により、内皮細胞増殖、遊走、細管形成、もしくはこれらいずれかの組合せを阻害する薬剤を意味する。抗体と結合するのに好適な物質として、以下のものが挙げられる:サイトカイン、例えば、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF);光増感剤(光力学療法に用いる)、例えば、テトラスルホン酸アルミニウム(III)フタロシアニン、ヘマトポルフィリン、およびフタロシアニン;放射性核種、例えば、ヨウ素-131(131I)、イットリウム-90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、テクネチウム-99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、およびレニウム-188(188Re);抗生物質、例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルジノスタチン、およびカルボプラチン;細菌、植物、およびその他の毒素、例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、ブドウ球菌外毒素A、アブリン-A毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンAおよび天然のリシンA)、TGF-α毒素、チャイニーズコブラ(naja naja atra)からの細胞毒、およびゲロニン(植物毒素);植物由来のリボソーム不活性化タンパク質、細菌および真菌、例えば、レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクツス(Asperugillus restrictus)により産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サボンソウ由来のリボソーム不活性化タンパク質)、およびRNase;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);抗腫瘍薬(例:アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキセートなど)を含むリポソーム;ならびに、その他の抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab))。
【0040】
本明細書に記載する抗体は、本発明のTEMSの存在または発現を確定する方法に有用である。一実施形態では、TEMポリペプチドを検出する方法であって、サンプルをTEM特異的抗体と、複合体を形成するのに十分な時間、接触させてから、複合体を検出することを含み、その際、複合体が検出されれば、サンプル中にTEMが存在する、上記方法を提供する。このようなアッセイの例として、放射性免疫検定法、ELISA、免疫化学、免疫沈降、ならびに、その他周知の免疫検定法が挙げられ、これらは、例えば、USING ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL(Harlowら編、1999)に記載されている。サンプルとして、限定するものではないが、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、生体の体液、例えば、喀痰、血液、血清、血漿、もしくは尿、あるいはホルマリン固定または凍結組織切片のような生体サンプルが挙げられる。分析用のこのようなサンプルの調製方法は当分野では周知である。本明細書に開示した抗体を用いて分析するサンプルは、アッセイフォーマット、検出方法の種類、ならびに、アッセイしようとする組織、細胞、もしくは細胞の抽出物の種類に基づいて変わりうる。このような調製物およびそれらの変種は当分野では周知である。好適な検出系のいずれを用いてもよい。具体的実施形態では、本明細書に記載する検出方法を、診断、病期、もしくは疾患進行のモニタリング、または治療介入に対する応答性のモニタリングに用いることができる。
【0041】
別の実施形態では、本明細書に記載する方法のアッセイを実施するのに必要な試薬を含むキットを提供する。具体的には、1以上の容器を含むコンパートメントキットであって、その際、第1の容器が、TEMに特異的な1以上の抗体を含み、1以上の別の容器が、洗浄試薬、結合抗体の存在を検出できる試薬のうち1以上を含む、上記キットを提供する。これらの容器は、ガラス、プラスチック、もしくはプラスチックまたは紙のストリップのいずれでもよい。検出薬の種類としては、標識二次抗体、その他の標識二次結合物質、あるいは、一次抗体が標識されている場合には、標識抗体と反応することができる酵素試薬または抗体結合試薬が挙げられる。
【0042】
本発明は、細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍内皮マーカー(TEM)1およびTEM17からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量のヒト抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が上記細胞の増殖を阻害する、上記方法を提供する。細胞増殖を決定する好適な方法のいずれを用いてもよい。一実施形態では、細胞の増殖を阻害する方法は、内皮細胞をTEM特異的抗体またはその生物学的に活性のフラグメントに、所定時間接触させた後、抗体で処理していない細胞と比較して増殖を決定するステップを含む。
【0043】
抗体が、該抗体の非存在下、または非結合抗体の存在下での細胞の増殖と比較して、細胞の増殖を阻害していれば、その抗体は、増殖を阻害するものである。増殖の定量は、好適な方法のいずれを用いて実施してもよい。典型的にはDNAへの放射性標識ヌクレオチド(例えば、3H-チミジン)の組込みを評価することにより、増殖を決定する。一実施形態では、ATPルミネセンスにより増殖を決定する。具体的実施形態では、Promega製のCellTiter-Glo(商標)ルミネセンス細胞生存能アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)を用いて、増殖を決定する。細胞の増殖はまた、以下に記載するように、組織または被検者への抗体の投与により阻害することができる。
【0044】
腫瘍内皮細胞の増殖増大に関連するTEMの機能を阻止する抗体は、その悪性疾患により生じる内皮前駆細胞の循環が低レベルか、全くない(従って、その疾患の腫瘍血管系の大部分が、取り込まれた既存の血管上の内皮細胞の増殖に由来することを示す)被検者に最も有益である。腫瘍内皮細胞の増殖の阻害によって、治療に対して速度論的に低速の応答が起こるため、腫瘍内皮細胞の増殖に関連するTEMの機能の阻止は、腫瘍負荷が比較的低い被検者にも有益となりうる。
【0045】
本発明はまた、細胞の遊走を阻害する方法であって、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量のヒト抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が細胞の遊走を阻害する、上記方法を提供する。本発明と共に、細胞遊走を評価する好適な方法のいずれを用いてもよい。一実施形態では、細胞の遊走を阻害する方法は、前記のように、誘引物質のない1チャンバ内で、内皮細胞をTEM特異的抗体またはその生物学的に活性のフラグメントに接触させ、誘引物質を含む第2チャンバと多孔性膜で隔てられたチャンバ内で内皮細胞と抗体をインキュベートさせ、抗体の存在または非存在下で誘引物質を含むチャンバに進入した細胞の数を決定するステップを含み、その際、抗体の非存在下で遊走する細胞数が、抗体の存在下で遊走する数より大きければ、その抗体は、遊走を阻害するものである。
【0046】
抗体の存在下で遊走する細胞数が、該抗体の非存在下、もしくは非結合抗体またはその他無関係の抗体の存在下で遊走する細胞と比較して、少なければ、その抗体は遊走を阻害するものである。遊走の定量は、好適な方法のいずれを用いて実施してもよい。典型的には、元のチャンバに残る細胞数に対し、誘引物質を含むチャンバ内の細胞数を評価することにより決定する。一実施形態では、製造者の説明に従い、細胞をPKH67緑色色素で前標識する。別の実施形態では、カルセインAMで細胞を標識する。インキュベーション後、蛍光逆相顕微鏡を用いて、細胞数を計数する。また、以下に説明するように、抗体を組織または被検者に投与して、細胞の遊走を阻害することもできる。
【0047】
腫瘍内皮細胞の遊走増大に関連するTEMの機能を阻止する抗体は、悪性疾患の成長が比較的遅いか、不活性である被検者、および/または転移性疾患を経験した被検者に最も有益である。何故なら、このような被検者の患部での血管形成は、骨髄からの内皮前駆細胞、ならびに、疾患の正常組織部位からの内皮細胞に由来する可能性が極めて高く、従って、主要な機能として内皮細胞の遊走を必要とすると考えられるからである。
【0048】
本発明は、内皮細管(endothelial tube)の形成を阻害する方法であって、TEM1およびTEM17からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量のヒト抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が内皮細管の形成を阻害する、上記方法を提供する。本発明では、細管の形成を評価するのに好適な方法のいずれを用いてもよい。一実施形態では、細胞の内皮細管の形成を阻害する方法は、好適なマトリックスの存在下で、前記のように内皮細胞をTEM特異的抗体またはその生物学的に活性のフラグメントに接触させ、マトリックス内で内皮細胞と抗体をインキュベートし、細管形成を評価するステップを含み、その際、抗体の非存在下で形成された細管の数または細管の特性が、抗体の存在下で形成された細管の数または細管の特性と比較して大きいか、あるいは有意に変化している場合、この抗体は細管形成を阻害するものである、上記方法を提供する。
【0049】
抗体の存在下で形成された細管の数が、該抗体の非存在下、または非結合抗体の存在下で形成された細管の数と比較して、少なければ、この抗体は細管形成を阻害するものである。抗体の存在下で形成された細管の特性が、該抗体の非存在下、または非結合抗体の存在下で形成された細管の特性と比較して、変化していれば、その抗体は細管形成を阻害するものである。本明細書で用いる用語「細管の特性」とは、マトリックスに形成された細管網の頑健性および持続性を意味する。細管形成の定量は、好適な方法のいずれを用いて実施してもよい。典型的には、顕微鏡検査により細管形成を評価する。一実施形態では、製造者の説明に従い、細胞をPKH67緑色色素で前標識する。別の実施形態では、カルセインAMで細胞を標識する。マトリックス内で抗体と一緒にまたは抗体なしでインキュベーションした後、蛍光逆相顕微鏡を用いて、細管を調べる。また、以下に説明するように、抗体を組織または被検者に投与して、細管形成を阻害することもできる。
【0050】
腫瘍内皮細胞の細管形成増大に関連するTEMの機能を阻止する抗体は、その悪性疾患により生じる内皮前駆細胞の循環が高い(従って、その疾患の腫瘍血管系の大部分が、循環内皮前駆細胞により定着した血管の形成に由来することを示す)被検者に最も有益である。腫瘍内皮細胞の細管形成増大に関連するTEMの機能の阻止は、腫瘍成長が比較的速い被検者にも有益であり、この場合、血管形成の破壊または阻害によって腫瘍塊の連続的拡大を阻止する。
【0051】
血管形成、増殖、遊走および/または内皮細管形成を阻害する本発明の方法では、目的とするTEMを発現する任意の細胞を誘導して、目的のTEMを発現させることができ、また、非ヒトTEM相同体(例えば、マウス、ウシなど)を用いてもよい。一実施形態では、上記細胞は、目的のTEMを内部で発現する細胞系である。具体的実施形態では、この細胞系は、マウス2H11内皮細胞系(ATCC)である。別の実施形態では、細胞を誘導して、目的のTEMを発現させる。具体的実施形態では、この細胞は、AC133+/CD34+ヒト骨髄細胞であり、実施例1に記載するように、これを塩基性FGF(bFGF)、VEGF、およびヘパリンの存在下で培養することにより、内皮前駆細胞(EPC)を産生させる。さらに別の実施形態では、目的のTEMで細胞をトランスフェクションまたは形質導入する。具体的実施形態では、目的のTEMをコードするアデノウイルスベクターで、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞を形質転換する。別の具体的実施形態では、目的のTEMをコードするプラスミドでCOSまたは293細胞をトランスフェクションする。いくつかの実施形態では、他の細胞により馴化させた成長因子または培地にTEM発現細胞を接触させる。例えば、血清を含まない培地中で3日間成長させたヒトHCT116結腸癌細胞またはヒトHT29結腸癌細胞の密集培養物を用いて、結腸癌馴化培地を調製することができる。培地を補充するのに有用な物質としてVEGFおよびbFGFがある。一実施形態では、細胞はヒトまたは家畜被検者に由来するもの、もしくはこれら被検者の細胞である。
【0052】
TEM発現細胞と抗体との接触は、任意の適切な時間にわたって任意の適切な方法により実施してよい。インキュベーションまたは処理中、細胞を抗体と1回以上接触させることができる。典型的には、必要な用量は、約1μg/ml〜1,000μg/mlの範囲、さらに典型的には、約100μg/ml〜800μg/mlの範囲である。細胞のin vitro培養物から正確な用量を容易に決定し、この細胞を様々な量の抗体に暴露する。典型的には、細胞を抗体と接触させる時間は、1時間〜3日、さらに典型的には24時間である。好適なマトリックスのいずれを用いてもよい。一実施形態では、マトリックスは、再形成した基底膜マトリゲル(Matrigel)(商標)マトリックス(BD Science)である。
【0053】
本発明は、血管形成を阻害する方法であって、これを必要とする被検者に対し、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量のヒト抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が血管形成を阻害する、上記方法を提供する。本明細書で用いる用語「血管形成」とは、血管の形成を意味する。血管は、定着した血管または新たな血管のいずれでもよい。本明細書で用いる用語「新血管形成(neoangiogenesis)」とは、新たな血管の形成を意味する。
【0054】
さらに、本発明は、腫瘍成長を阻害する方法であって、これを必要とする被検者に対し、TEM1、TEM17およびTEM9からなる群より選択される抗原と特異的に結合する、有効量のヒト抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを投与することを含み、これにより、上記抗体が腫瘍成長を阻害する、上記方法を提供する。
【0055】
これらの方法により治療しようとする被検者は、目的のTEM抗原を発現する。患者サンプルのスクリーニングまたは診断分析を実施した後、TEM特異的治療薬を用いた治療を開始することができる。上記の診断分析は、任意のサンプルを用いて実施することができ、このようなサンプルとして、限定するものではないが、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、喀痰、血液、血清、血漿、もしくは尿のような体液、あるいは、本発明の抗体を用いたホルマリン固定または凍結組織切片のような生体サンプルが挙げられる。TEM発現の検出および分析に適したいずれの方法を用いてもよい。
【0056】
本明細書に記載する方法および組成物を用いて、どんな被検者も治療することができる。このような被検者は、血管形成関連の疾患または症状がある哺乳動物、好ましくはヒトである。一具体的実施形態では、被検者は癌を有する。また、開示された方法および組成物の獣医学での用途も考慮される。このような用途として、家庭のペット、家畜およびサラブレッドの馬における血管形成関連疾患および癌の治療が挙げられる。
【0057】
本明細書で用いる「阻害する」もしくは「治療する」または「治療」には、非制御の血管形成と関連する症状、すなわち、腫瘍成長の発生を遅らせたり、および/または、発生する、または発生が予想されるそのような症状の重症度を軽減したりすることが含まれる。これらの用語はさらに、非制御または不要な血管形成関連または腫瘍成長に関連する既存の症状の改善、別の症状の予防、および症状の根本的な代謝上の原因の改善および予防も包含する。従って、上記用語は、血管形成関連の疾患または症状、特に癌を有する、もしくはこのような疾患または症状を発症する可能性がある脊椎動物被検者に、有益な結果をもたらすことを示している。
【0058】
本明細書で用いる用語「治療に有効な量」または「有効量」とは、細胞、組織、もしくは被検者に、単独または別の治療薬と組み合わせて投与した際、血管形成および/または癌関連の疾患状態または該疾患の進行を予防または改善するのに有効な、抗TEM抗体の量を意味する。治療に有効な量はさらに、症状の改善、例えば、該当する医学的状態の治療、治癒、予防または改善、もしくはこのような状態の治療、治癒、予防または改善の速度増加をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。個々の活性成分を単独で投与する場合、治療に有効な量は、その成分だけの量を指す。組み合わせて用いる場合には、治療に有効な量は、順次もしくは同時のいずれで組合せ投与するかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の合計量を指す。
【0059】
本発明で有用な抗体(限定するものではないが、組換えおよび非組換え供給源など、どんな供給源に由来するものでも)は、それ自体で、または好適な担体または賦形剤と混合した医薬組成物として、様々な疾患を治療または改善する用量を、必要とする被検者に投与することができる。このような組成物は(タンパク質および担体以外に)また、希釈剤、充填剤、塩、バッファー、可溶化剤、および当分野で周知のその他の材料を含んでもよい。「薬学的に許容される」とは、活性成分の生物学的活性の効果を妨害しない無毒性材料を意味する。担体の特性は、投与経路に応じて異なる。本発明の医薬組成物は、別の抗血管形成および抗腫瘍薬、例えば、サイトカインまたは化学療法薬を含んでもよい。
【0060】
本発明が提供する治療方法または使用の実施に際し、治療に有効な量の本発明の抗体を、治療しようとする状態を有する哺乳動物に投与する。抗体は、本発明の方法に従い、単独で、または、他の療法、例えば、造血因子(例:サイトカイン)、化学療法薬、抗血管形成薬などを用いる治療法と組み合わせて投与することができる。1種以上の生物学的に活性の薬剤と共投与する場合には、生物学的に活性の薬剤と同時に、または順次のいずれで本発明の抗体を投与してもよい。順次投与する場合には、担当医が、生物学的に活性の薬剤と組み合わせて本発明のタンパク質を投与する適切な順序を決定する。このような化合物の毒性および治療効果は、細胞培養物または実験動物を用いた標準的な薬学的方法、例えば、LD50(集団の50%の致死用量)およびED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定する方法により公式化することができる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50とED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す抗体が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを用いて、人に用いる用量の範囲を決定することができる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。この用量は、使用する投与形態および投与経路に応じて、この範囲内を変動しうる。正確な配合、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が決定する。例えば、Finglら、THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS 1(1975)を参照。投与量および間隔を個別に調節することにより、所望の治療効果を維持するのに十分な活性成分の血漿レベル、すなわち最小有効濃度(MEC)を達成する。MECは、各化合物で変動するが、in vitroデータ(例えば、本明細書に記載するアッセイを用いて、遊走活性の50〜90%の阻害を達成するのに必要な濃度)から推定することができる。
【0061】
投与様式は特に重要ではない。一実施形態では、投与様式は静脈内ボーラスである。通常、処方する医師が本発明の抗体の用量を決定する。用量は、個々の患者の年齢、体重および応答に応じて変動する。
【0062】
本発明による方法の抗体の製剤および投与方法については、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Co., Easton, Paの最新版を参照されたい。好適な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、もしくは腸投与;非経口送達、例えば、筋内、皮下、骨髄内注射、ならびに、クモ膜下腔内、直接脳室内送達、静脈内、腹腔内、鼻内、もしくは眼内注射などが挙げられる。医薬組成物で用いられる、または本発明の方法を実施するのに用いられる抗体の投与は、通常の様々な方法、例えば、経口摂取、吸入、局部適用または皮膚、皮下、腹腔内、非経口、動脈内もしくは静脈内注射などで実施することができる。患者への静脈内投与が好ましい。
【0063】
あるいは、例えば、関節炎関節、線維症組織、もしくは腫瘍への抗体の直接注射により、往々にして貯留物または持続的放出製剤の形態で、全身ではなく局部的に抗体を投与してもよい。さらには、例えば、関節炎または線維症組織または腫瘍をターゲッティングする、標的薬剤送達系、例えば、組織特異的抗体でコーティングしたリポソームを用いて、抗体を投与してもよい。リポソームを患部組織にターゲッティングするか、これが患部組織により選択的に取り込まれるようにする。
【0064】
従って、本発明の方法に従い使用するための医薬組成物は、医薬品として用いることができる製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を用いて、通常の方法で製剤化することができる。これらの医薬組成物は、周知の方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣剤製造、磨砕、乳化、カプセル化、閉じ込め、もしくは凍結乾燥法を用いて製造することができる。適切な製剤化は、選択した投与経路に応じて異なる。液体形態で投与する場合には、水、石油、動物または植物由来の油、例えば、ラッカセイ油、鉱油、ダイズ油、またはゴマ油、もしくは合成油のような液体の担体を添加してもよい。液体形態の医薬製剤は、さらに生理食塩水、デキストロースまたはその他のサッカリド液、あるいは、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコールを含んでもよい。液体形態で投与する場合、医薬製剤は、約0.5〜90重量%の本発明のタンパク質、好ましくは、約1〜50重量%の本発明のタンパク質を含む。
【0065】
治療に有効な量の本発明の抗体を静脈内、皮膚または皮下注射により投与する場合、本発明のタンパク質は、発熱物質を含まず、非経口投与に許容される水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを十分考慮した、非経口投与に許容される溶液の調製は当業者には容易に可能である。静脈内、皮膚もしくは皮下注射に好ましい医薬組成物は、本発明のタンパク質のほかに、等張ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸添加リンゲル注射液、もしくは当分野で周知の他のビヒクルを含む必要がある。また本発明の医薬組成物に、安定剤、防腐剤、バッファー、酸化防止剤、もしくは当分野で周知の他の添加剤を含有させてもよい。注射の場合、本発明の薬剤は、水溶液、好ましくは、生理学的に適合性のバッファー、例えば、ハンク溶液、リンゲル溶液、もしくは生理食塩バッファー中に製剤化することができる。経粘膜投与の場合には、障壁を透過させるのに適した浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は一般に当分野で周知である。
【0066】
吸入による投与の場合には、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧の形態で、本発明に従い用いる抗体を好適に送達することができ、その際、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくはその他の好適なガスを用いる。加圧エアロゾルの場合には、計測した量を送達するような弁を設けることにより用量単位を決定することができる。吸入器または注入器に用いるカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチン製の)は、化合物と、好適な粉末基材(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含ませて製剤化する。化合物は、注射(例えば、ボーラス注射または連続的注入)による非経口投与のために製剤化することができる。注射用の製剤は、防腐剤を添加した単位用量形態(例えば、アンプルまたは複数用量容器)でよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液もしくはエマルションの形態でよく、これに懸濁、安定および/または分散剤のような製剤用の薬剤を含有させてもよい。
【0067】
非経口投与のための医薬製剤として、水溶性の形態をした活性化合物の水溶液がある。さらに、適切な油性注射懸濁液として活性組成物の懸濁液を調製することもできる。好適な親油性溶剤またはビヒクルとして、ゴマ油のような脂肪油、もしくは、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、もしくはデキストランなどを含んでもよい。随意に、懸濁液は、好適な安定剤、または、化合物の可溶性を高め、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば、発熱物質非含有の滅菌水で再形成するための粉末形態をしていてもよい。
【0068】
本発明の医薬組成物において、開示した方法に有用な抗体の量は、治療しようとする状態の種類および重症度、ならびに、患者が受けた以前の治療の種類に応じて変動する。最終的には、担当医が、個別の患者を治療するのに用いる本発明のタンパク質の量を決定する。担当医は、初め低用量の本方法の抗体を投与して、患者の応答を観察する。患者に最適の治療効果が得られるまで、本方法の抗体の投与量を増やしてゆき、最適の治療効果が得られた時点で用量をそれ以上増やさないようにする。本発明の方法を実施するのに用いる様々な医薬組成物は、体重1kg当たり約0.01μg〜約100 mg(好ましくは、約0.1μg〜約10 mg、さらに好ましくは、約0.1μg〜約1mg)の本発明の抗体を含む必要があると考えられる。投与の際、本発明で用いる治療組成物は、発熱物質を含まない、生理学的に許容される形態であることは言うまでもない。前述のように本発明の組成物に随意に含有させることができる、本発明の抗体以外の治療に有用な薬剤は、本発明の方法の組成物と一緒に同時または順次、代替的もしくは追加的に投与することができる。
【0069】
本明細書に記載する抗体は、単独で、または別の治療様式と組み合わせて投与することができる。例えば、本発明の治療方法は、抗体と接触させた細胞に電離放射線を投与するステップをさらに含んでもよい。電離放射線は、悪性の増殖細胞において有意な程度の細胞死滅(生存悪性細胞を測定するアッセイにより判断する)を誘導するのに十分な用量を投与する。誘導される細胞死滅の程度は、抗体だけまたは電離放射線だけのいずれかにより誘導されるものより実質的に大きい。電離放射線の典型的形態として、β線、γ線、α粒子、およびX線が挙げられる。これらは、X線機械またはγカメラのような外部線源から送達するか、あるいは、患者に投与する放射性核種から悪性組織に送達することができる。放射性核種の使用は当分野でよく理解されており、これ以上詳細に説明する必要はない。悪性疾患の治療における電離放射線の使用については、例えば、S. Hellman, Principles of Radiation Therapy, in CANCER: PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY 248(V. T. DeVita, Jr.ら編、第4版、1993)に記載されている。用いることができる用量の範囲は、約1〜500 cGy(すなわち、約1〜500ラド)である。
【0070】
本発明が提供する抗体は、本明細書に開示する方法を用いて、単独で、もしくは、内皮細胞増殖、遊走および/または細管形成の阻害物質として確定された別の抗体と組み合わせて投与することができる。共投与する抗体は、同じTEM、異なるTEM、もしくはTEMと別の血管形成阻害または抗腫瘍標的の様々なエピトープに特異的なものでよい。
【0071】
血管形成に関連するあらゆる疾患を本発明の方法で治療することができる。このような疾患として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:中枢神経系の新生物:多形グリア芽腫、星状細胞腫、希突起グリア腫、上衣および脈絡叢腫、松果体腫、ニューロン腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、髄膜肉腫;眼の新生物:基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫;内分泌腺の新生物:下垂体新生物、甲状腺の新生物、副腎皮質の新生物、神経内分泌系の新生物、胃腸膵臓内分泌系の新生物、性腺の新生物;頭部および頚部の新生物:脳腫瘍および頚部癌、口腔、咽頭、喉頭、歯牙形成腫瘍;胸部の新生物:大細胞肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸部の新生物、悪性中皮腫、胸腺腫、胸部の一次生殖細胞腫瘍;消化管の新生物:食道の新生物、胃の新生物、肝臓の新生物、胆嚢の新生物、外分泌膵臓の新生物、小腸、虫垂および腹膜の新生物、結腸および直腸の腺癌、肛門の新生物;尿生殖管の新生物:腎細胞癌、腎盤および尿管の新生物、膀胱の新生物、尿道の新生物、前立腺の新生物、陰茎の新生物、精巣の新生物;女性生殖器の新生物:外陰および膣の新生物、子宮頚の新生物、子宮体の腺癌、卵巣癌、女性生殖器肉腫;乳房の新生物;皮膚の新生物:基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫;悪性黒色腫;骨および軟組織の新生物:骨形成肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング腫、胎生型神経外胚芽性腫瘍、血管肉腫;造血系の新生物:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、HTLV-1、およびT細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病、毛髪細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、肥満細胞性白血病;小児の新生物:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎および肝腫瘍。これ以外にも、以下のものが挙げられる:多発性嚢胞腎;糖尿病網膜症;慢性関節リウマチ;乾癬;骨関節症;腺癌;白血病;リンパ腫;黒色腫;肉腫;奇形癌(tetratocarcinoma);聴音神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫;黄斑変性;未熟児網膜症;角膜移植拒絶;新血管肉芽腫および後水晶体線維増殖症。血管形成に関連するその他の疾患として、以下のものが挙げられるが、これらに限定するわけではない:流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、アトピー性角膜炎、上辺縁角膜炎、翼状片角膜炎、乾燥症候群、シェーグレン症候群、フィレクテヌローシス(phylectenulosis)、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純疱疹感染、帯状疱疹感染、原生動物感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、全身性狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ウェーグナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンジョンソン病、ペリフィゴイド(periphigoid)放射状角膜切開、角膜移植拒絶、および慢性炎症性疾患。
【0072】
本発明が提供する方法は、血行停止(angiostasis)および血管形成のバイオアッセイにおけるような、臨床以外の重要な用途も有する。血管形成のアッセイに正と負両方の対照を提供することにより、本発明の方法を用いて、抗血管形成分子候補の効果を試験および特性決定すると共に、正常な血管形成に対する有毒な作用の可能性を評価することができる。
【0073】
抗血管形成分子とは、血管形成を低減または排除する分子である。このような阻害は、TEMタンパク質の1以上の重要な結合残基の直接結合により、抗血管形成シグナル、立体障害、細胞表面発現の低下などをもたらすことによって、起こると考えられる。本明細書で用いる用語「抗血管形成分子」には、タンパク質および非タンパク質部分の両方が含まれる。一実施形態では、この物質は小分子である。別の実施形態では、この物質はタンパク質である。
【0074】
本明細書には、TEMタンパク質をモジュレートする血管形成阻害剤分子を同定するための方法であって、腫瘍を担持するTEM−トランスジェニックマウスを試験分子と接触させ;腫瘍成長の阻害を検出することを含み、その際、試験分子と接触したマウスの腫瘍成長が、試験分子と接触していないマウスの腫瘍成長と比較して低減していれば、この試験分子が、TEMタンパク質または活性をモジュレートする血管形成阻害剤分子として同定される、上記方法も記載する。一実施形態では、TEMはTEM1である。別の実施形態では、TEMはTEM9である。さらに別の実施形態では、TEMはTEM17である。
【0075】
通常のトランスジェニック方法を用いて、TEMトランスジェニックマウスを作製する。一実施形態では、トランスジーンとしてのRPCI11-867G23 BACクローン(GenBank登録番号AP001107 Invitrogen Corp.)にヒトTEM 1 cDNAを導入する。C57B1/6マウスからの胚への注射をYS New Technology Institute, Inc.により実施した。こうして得られたTEMトランスジェニックマウスをC57B1/6マウス(Japan SLC, Inc.)と雑種形成することにより、別のトランスジェニック子孫を作製する。
【0076】
任意の好適な方法により任意の好適な腫瘍を注射することにより、抗血管形成分子の試験のためのモデルを作製することができる。腫瘍を受容するマウスは任意の好適な系統のものでよい。腫瘍は、該腫瘍と同系、同種、もしくは異種のいずれでもよい。受容者は、1種以上の免疫関連機能において免疫適格性または免疫無防備状態のものでよく、限定するものではないが、nu/nu、scid、およびベージュマウスが含まれる。一実施形態では、受容者はトランスジェニックマウスである。一つの具体的実施形態では、トランスジェニックマウスは、ヒトTEM 1トランスジーンを含むC57B1/6マウスである。ヒトTEM 1トランスジーンは、RPCI11-867G23 BACクローン(GenBank登録番号AP001107 Invitrogen Corp.)におけるTEM 1のDNA配列を含む。次に、当分野で通常の方法を用いて、TEM 1トランスジーンをC57B1/6マウスの胚に注射する。それから、非トランスジェニックで、系統が同じマウスと、このTEMトランスジェニックマウスを雑種形成することにより、トランスジェニック子孫の数を増やすことができる。TEMトランスジェニックマウスには、同系腫瘍細胞、例えば、B16黒色腫(ATCC)を接種することができる。腫瘍成長に対する抗体投与の効果は、通常の方法を用いて、原発性または転移性腫瘍成長を定量することにより、確認することができる。抗体の用量は、少なくとも1回の投与につき、1μg/マウスから1mg/マウスの範囲である。抗体は、任意の好適な経路により投与することができる。一実施形態では、抗体の用量は、毎週2回100μg/マウスである。一つの具体的実施形態では、B16黒色腫の腫瘍を第0日に、C57B1/6ヒトTEM 1トランスジェニックマウスに皮下注射し、指定した時点で、カリパスを用いて原発性腫瘍の体積を測定する。任意の好適な対照抗体を用いることができる。一実施形態では、対照抗体は、ハプテン、ジニトロフェニルに対して産生された精製済IgG1イソタイプである。
【0077】
本明細書に記載する方法を用いて、多種の異なる試験抗血管形成分子を同定することができる。抗血管形成分子は、多数の化学クラスも包含する。特定の実施形態では、これらは、有機分子、好ましくは、分子量が約50以上で、約2,500ダルトン以下の小さい有機化合物である。抗血管形成分子は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、少なくとも、アミン、カルボニル、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基、官能化学基の少なくとも2つを含むことができる。抗血管形成分子は、1以上の前記官能基で置換された環状炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含んでもよい。抗血管形成分子はまた、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造的類似体もしくはそれらの組合せを含んでいてもよい。さらに、目的とする試験抗血管形成分子は、ペプチドおよびタンパク質薬剤、例えば、抗体またはその結合フラグメントもしくは模擬物(例:Fv、F(ab’)2およびFab)を含むこともできる。
【0078】
また、試験抗血管形成分子は、合成または天然化合物のライブラリーを含む非常に多様な供給源から取得することができる。例えば、非常に多様な有機化合物および生体分子のランダムおよび指定合成については、多数の手段が利用可能であり、例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現が挙げられる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態をした天然化合物のライブラリーも入手可能、もしくは容易に作製が可能である。加えて、天然の、または合成により作製したライブラリーおよび化合物を通常の化学、物理および生化学的手段により容易に改変し、これをコンビナトリアルライブラリーの作製に用いてもよい。周知の薬理学的物質を指定またはランダムな化学改変、例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などに供することにより、構造類似体を製造することもできる。
【0079】
試験抗血管形成分子は、それが、腫瘍の成長を少なくとも20%、往々にして30、40、50、60、70、80もしくは90%、時に100%特異的に阻害することができれば、阻害物質として確定される。成長阻害の定量は、任意の通常の測定方法を用いて実施することができる。例えば、原発性腫瘍成長の場合には、腫瘍塊から垂直測定値を取得することにより、腫瘍体積を算出する。転移性成長は、必要に応じて、顕微鏡または肉眼での分析により確認することができる。腫瘍は、トランスジェニック動物と同系、同種、もしくは異種のいずれでもよい。試験分子は、腫瘍接種と同時、原発性腫瘍の定着後、もしくは局部および/または遠位転移の定着後に投与することができる。試験分子の1回または複数回投与を任意の好適な投与様式により実施するが、このような投与様式として、限定するものではないが、静脈内、腹腔内、腫瘍内、皮下、および内皮が挙げられる。
【0080】
以下の実施例を例示するが、これらが本発明を制限するわけではない。
【実施例】
【0081】
実施例1
内皮前駆細胞(EPC)
内皮細胞系マーカーAC133およびCD34を発現させる骨髄細胞をフィブロネクチンまたはコラーゲン単層培地においてVEGF、bFGFおよびヘパリンで刺激することにより、内皮前駆細胞(EPC)と表記される表現型に分化させることができる。簡単に説明すると、骨髄細胞をEPCに分化させるために、通常の手段を用いて、AC133+/CD34+骨髄集団を単離する。懸濁培地において、15%FBSを補充したIMDM培地中の50 ng/ml のVEGF165、10〜15 ng/ml のbFGF、および50/mlのヘパリンで上記AC133+/CD34+細胞を刺激する。この細胞には、急速な増加および分化が起こる。こうして得られた付着細胞集団を、TEM機能を検査するin vitroアッセイで用いる。このEPCは、培地中で12世代以上にわたって増殖させることができ、骨髄からの幹細胞と完全に分化した内皮細胞との中間体であるようだ。これらEPCの特性決定から、これらが、HMVECおよびHUVECのような成熟内皮細胞と同じ特性の多くを有することがわかった。In vitroで、EPCは、マトリゲル(Matrigel)に細管を形成し、遊走および浸潤して、腫瘍微環境内の新血管の形成において重要な特性を有すると考えられる。EPCのSAGE分析を実施して、刺激あり(+VEGF)および刺激なし(−VEGF)の条件下で遺伝子発現を比較したところ、顕著な差が認められた。In vivoヒトEPCは、免疫不全マウスにおけるマトリゲルプラグに移植すると、細管を形成するため、マウスにおけるヒト内皮での血管形成のモデルが得られる。EPCは、フローサイトメトリーで分析すると、HUVECおよびHMVECのそれと同様のレベルで多くの内皮細胞表面マーカー(CD31、P1H12、およびCD105など)を発現することがわかっている。加えて、EPCは結腸内皮マーカー(TEM)を発現するが、これは、正常の結腸粘膜の内皮と比較して、結腸腫瘍の新鮮な手術検体から得た内皮細胞において高レベルに発現するものとして確認されるmRNAである。ヒトEPCで発現したTEM mRNAのレベルは、MHVECおよびHUVECで観察されたものより著しく高かった。実際、MHVECおよびHUVECには多くのTEMを検出できなかった。
【0082】
実施例2
TEM1抗体
TEM1に対するマウスポリクローナル抗体を作製するために、TEM1の全長ヒト遺伝子を含むpcDNA3.1ヒトTEM1(hTEM1)プラスミドで、C57B1/6マウスを筋内経路により免疫化した。3’および5’TEM1特異的プライマーを用いたRT-PCRにより、ヒトTEM1コード配列をヒト胎児脳RNAからクローン化した。5’末端プライマーを改変して、ATG開始コドンにCCACC5’の共通コザック配列を含むようにした。増幅した産物、すなわち、米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)(GenBank #NM_020404)の配列番号195のヌクレオチド(nt)6〜nt2279に対応する2273塩基対(bp)フラグメントを配列確認した後、pcDNA3.1ベクター(Invitrogen)にサブクローン化した。このベクターpCDNA3.1 hTEM1は、757アミノ酸の全長タンパク質をコードする。
【0083】
TEM1細胞外ドメインに特異的なポリクローナルを作製するために、5’末端に5’シグナル配列およびmyc-TAGを、また3’末端にGPI膜貫通アンカーモチーフを含む、フレーム内VV-1ベクター(Genovac AG, Freiburg、ドイツ国)に、TEM1の全長ヒト遺伝子のnt102〜nt1963をサブクローン化して、VV-1 TEM1を作製した。ベクターに含まれる細胞外部分は、米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)(GenBank #NM_020404)の配列番号196のアミノ酸33から684までのTEM1をコードする。VV-1 TEM1ベクターでウサギを免疫化した。次に、ウサギポリクローナルのIgG画分を通常の方法により精製した。
【0084】
細胞表面発現:TEM1が細胞の表面に存在するか否かを決定するために、COS細胞(ATCC)をプラスミドベクター、pCFA-TEM1で一時的にトランスフェクションした。全長ヒトTEM1をpCFAベクター主鎖(Yewら、Hum. Gene Ther. 10: 223-34(1999))にクローン化した。次に、細胞(透過性化されていない)をウサギ抗TEM1ポリクローナルで染色してから、CY3標識抗ウサギIg抗体で染色した。続いて、細胞を核染色(DAPI)で対比染色し、蛍光顕微鏡で検査する。蛍光染色はCOS細胞の細胞表面に限定されていたため、TEM1がトランスフェクションした細胞の表面に発現していることがわかった。
【0085】
2H11内皮細胞(2H11細胞は内部でマウスTEM1を発現する)上のマウスポリクローナル抗ヒトTEM1抗体と、VV-1 TEM1でトランスフェクションし、かつウサギポリクローナル抗ヒトTEM17抗体で処理したHek-293細胞とを用いて、フローサイトメトリー分析によりTEM1の細胞表面発現を確認した。両細胞とも、抗TEM1抗体による染色が陽性であった。これらの実験は、TEM1が細胞外および膜局在化タンパク質であることを初めて証明するものである。
【0086】
増殖アッセイ:実施例1に記載のように調製したヒト内皮前駆細胞(EPC)を用いて、Crouchら、J. Immunol. Meth. 160: 81(1993)およびKangasら、Med. Biol. 62: 338(1984)に記載されている方法により、増殖をアッセイした。2%ウシ胎児血清を補充した培地において、2×103細胞/ウェルを用いる96ウェルプレート系で増殖を評価した。ウサギポリクローナル抗ヒトTEM1に暴露したヒトEPCの成長阻害終点として、ATPルミネッセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)Luminescent Cell Viabilityキット、Promega)を用いた。48時間にわたって抗体の濃度を100〜800μg/mlまで増加させながら、細胞をインキュベートした。対照IgG抗体はSigmaから購入したウサギ血清IgG画分であった。抗体の非存在下で、3,662±354のETCを検出した。200、400および800μg/mlの抗体で、対照IgGの存在下で認めた細胞数は、それぞれ4,185±117、4,418±38および4,611±165であった。対照的に、200、400および800μg/mlの抗TEM1抗体の存在下で認めた細胞数は、それぞれ3,756±92、3,881±97、および3,773±127であり、抗TEM1抗体の抗増殖効果を示した。この抗増殖効果は、ウサギ抗TEM1ポリクローナル抗体で処理したマウス2H11内皮細胞でも認められた。抗体の非存在下では、2H11細胞は9,216±102の細胞を産生した。200、400および800μg/mlの対照IgGとインキュベートした2H11細胞は、10,672±292、10,846±475、および11,977±267の細胞をそれぞれ産生した。しかし、抗TEM1抗体の存在下において細胞数は、200、400および800μg/mlの存在下で10,205±113、10,269±114、および8,725±97へと減少した。
【0087】
遊走アッセイ:1チャンバ当たり5×104で、8ミクロン孔膜上の上部チャンバにおいて血清を含まない培地中に平板培養したヒトEPC(実施例1に記載のように作製)を用いて、Glaserら、Nature 288: 483-84(1983)およびAlessandriら、Cancer Res. 43: 1790-97(1983)に記載されているように遊走をアッセイした。0.5%ウシ胎児血清を補充した培地を誘引物質として下部チャンバに配置した。800μg/ml抗ヒトTEM1ウサギポリクローナル抗血清または対照ウサギIgG画分の存在および非存在下で、膜の下側から細胞を48時間遊走させた。実験ウェルの上部および下部チャンバの両方に抗体を配置した。膜を通過して遊走した細胞をカルセインで染色し、蛍光強度により定量した。48時間後、抗体の非存在下、または対照IgGの存在下でインキュベートした場合、遊走細胞は、それぞれ7000および7750 RFUを生成した。しかし、抗TEM1抗体の存在下では、RFUが4200に減少し、遊走細胞数の有意な減少を示した。
【0088】
内皮細管形成アッセイ:Souzaら、Biotechniques, 26:502-08(1999)に記載されているように、pAD(バンテージ)系を用いて、全長ヒトTEM1をコードする遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad2CMV-TEM1)を構築した。Ad2CMV-TEM1を用いて、300のMOIでヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を感染させた。ウイルス感染から72時間後、HMVECにトリプシン添加し、細管形成アッセイのためのマトリゲル(商標)上で平板培養した。アッセイは24ウェルプレートで24時間実施した。次に、37℃にてカルセインAM(Molecular Probes)で30〜60分細胞を染色してから、細管の蛍光イメージをとらえた。MetaMorphイメージ分析を用いて、細管が占める面積を定量した。250μlのマトリゲル(商標)を用いて、細胞を3×104細胞/ウェルの密度で細胞を平板培養した。抗体の非存在下で、非感染、エンプティーベクター(EV)感染、およびTEM1感染細胞の細管面積は、それぞれ90,000、61,000および110,000画素であった。対照抗体の存在下では、非感染、エンプティーベクター(EV)感染、およびTEM1感染細胞の細管面積は、それぞれ38,000、62,000、および61,000であった。800μg/mlの抗TEM1ウサギポリクローナル抗血清の存在下では、前免疫ウサギ血清に暴露した細胞と比較して、アデノTEM1感染HMVECに、細管形成の低減が認められた。非感染、エンプティーベクター(EV)感染、およびTEM1感染細胞の細管面積は、それぞれ38,000、80,000、および42,000であった。抗TEM1抗体で処理した細胞は、抗TEM1抗体に暴露していない細胞の細管面積と比較して63%の低減を示した。
【0089】
実施例3
TEM17抗体
TEM17細胞外ドメインに特異的なポリクローナルを作製するために、5’末端に5’シグナル配列およびmyc-タグを、また3’末端にGPI膜貫通アンカーモチーフを含む、フレーム内VV-1ベクター(Genovac AG, Freiburg、ドイツ国)に、TEM17の全長ヒト遺伝子のnt152〜nt1318をサブクローン化して、VV-1 TEM17を作製した。ベクターに含まれる細胞外部分は、米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)の配列番号230のアミノ酸24から412までのTEM17をコードする。VV-1 TEM17ベクターでウサギを免疫した。
【0090】
TEM17に対するマウスポリクローナル抗体を作製するために、TEM17の全長ヒト遺伝子を含むpcDNA3.1 hTEM17プラスミドで、C57B1/6マウスを筋内経路により免疫した。3’および5’TEM17特異的プライマーを用いたRT-PCRにより、ヒトTEM17コード配列をヒト胎児脳RNAからクローン化した。5’末端プライマーを改変して、ATG開始コドンにCCACC5’の共通コザック配列を含むようにした。1503 bpの増幅産物(米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)(GenBank #AF279144)の配列番号229のnt83〜nt1585に対応する)を配列確認した後、pcDNA3.1ベクター(Invitrogen)にサブクローン化した。従って、pcDNA3.1 hTEM17は、500アミノ酸の全長タンパク質をコードする。次に、ウサギおよびマウスポリクローナルのためのIgG画分を通常の方法により精製した。
【0091】
細胞表面発現:TEM17が細胞の表面に存在するか否かを決定するために、COS細胞(ATCC)をプラスミドベクター、pCFA-TEM17で一時的にトランスフェクションした。全長ヒトTEM17をpCFAベクター主鎖にクローン化した。pCFAベクター主鎖については、Yewら、Hum. Gene Ther. 10: 223-34(1999)に記載されている。次に、細胞(透過性化されていない)をウサギ抗TEM17ポリクローナルで染色してから、CY3標識抗ウサギIg抗体で染色する。続いて、細胞を核染色(DAPI)で対比染色し、蛍光顕微鏡で検査する。蛍光染色はCOS細胞の細胞表面に限定されていたため、TEM17がトランスフェクション細胞の表面に発現していることがわかった。
【0092】
2H11内皮細胞(2H11細胞は内部でマウスTEM17を発現する)上のマウスポリクローナル抗ヒトTEM17抗体と、VV-1 TEM17でトランスフェクションし、かつウサギポリクローナル抗ヒトTEM17抗体で処理したHek-293細胞とを用いて、フローサイトメトリー分析によりTEM17の細胞表面発現を確認した。両細胞とも、抗TEM1抗体を用いた染色が陽性であった。これらの実験は、TEM17が細胞外および膜局在化タンパク質であることを初めて証明するものである。
【0093】
増殖アッセイ:実施例1に記載のように調製したヒト内皮前駆細胞(EPC)を用いて、Crouchら、J. Immunol. Meth. 160: 81(1993)およびKangasら、Med. Biol. 62: 338(1984)に記載されている方法により、増殖をアッセイした。2%ウシ胎児血清を補充した培地において、2×103細胞/ウェルを用いる96ウェルプレート系で増殖を評価した。ウサギポリクローナル抗ヒトTEM17に暴露したヒトEPCの成長阻害終点として、ATPルミネッセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)Luminescent Cell Viabilityキット、Promega)を用いた。48時間にわたって抗体の濃度を100〜800μg/mlまで増加させながら、細胞をインキュベートした。対照IgG抗体はSigmaから購入したウサギ血清IgG画分であった。抗体の非存在下で、3,662±354のEPCを検出した。200、400および800μg/mlの抗体で、対照IgGの存在下で認めた細胞数は、それぞれ4,185±117、4,418±38および4,611±165であった。対照的に、200、400および800μg/mlの抗TEM17抗体の存在下で認めた細胞数は、それぞれ3,480±190、3,472±35、3,536±166であり、抗TEM17抗体の抗増殖効果を示している。この抗増殖効果は、ウサギ抗TEM17ポリクローナル抗体で処理したマウス2H11内皮細胞には認められなかった。
【0094】
遊走アッセイ:1チャンバ当たり5×104で、8ミクロン孔膜上の上部チャンバにおいて血清を含まない培地中に平板培養したヒトEPC(実施例1に記載のように作製)を用いて、Glaserら、Nature 288: 483-84(1983)およびAlessandriら、Cancer Res. 43: 1790-97(1983)に記載されているように遊走をアッセイした。0.5%ウシ胎児血清を補充した培地を誘引物質として下部チャンバに配置した。800μg/ml抗ヒトTEM1ウサギポリクローナル抗血清または対照ウサギIgG画分の存在および非存在下で、膜の下側から細胞を48時間遊走させた。実験ウェルの上部および下部チャンバの両方に抗体を配置した。膜を通過して遊走した細胞をカルセインで染色し、蛍光強度により定量した。48時間後、抗体の非存在下、または対照IgGの存在下でインキュベートした場合、遊走細胞は、それぞれ4,500および10,000 RFUを生成した。しかし、抗TEM17抗体の存在下では、RFUが3500まで減少し、対照抗体で処理した細胞と比較して、遊走細胞数の有意な減少を示した。
【0095】
内皮細管形成アッセイ:内皮細胞管形成に対する抗TEM17抗体の作用を試験するために、ウサギ抗TEM17ポリクローナル抗体の存在下でヒトEPC(実施例1に記載のように作製)を一晩前インキュベートした後、マトリゲル(商標)で前コーティングした48ウェル皿中2×104細胞/ウェルで、0.5%および2%ウシ胎児血清(FBS)を補充した基礎培地において平板培養した。24時間後、37℃にてカルセインAM(Molecular Probes)で30〜60分細胞を染色してから、細管の蛍光イメージをとらえた。MetaMorphイメージ分析を用いて、細管が占める面積を定量した。対照抗体の存在下で、EPCの細管面積は、0.5%および2%FBSの存在下でそれぞれ3,000および2,800画素であった。800μg/mlの抗TEM17ウサギポリクローナル抗血清が存在する場合、EPCの細管面積は、0.5%および2%FBSの存在下でそれぞれ2,200および600画素であり、抗TEM17抗体の強力な阻害効果を示している。同様に、ウサギポリクローナル抗TEM17の存在下でも、2H11内皮細胞による細管形成は阻害された。2H11細胞を800 mg/mlの抗体で前インキュベートしてから、5時間にわたりマトリゲル中で細管網状体(networks/tubes)を形成させた。対照IgGの存在下で、細管面積は6,000画素であったのに対し、抗TEM17抗体の存在下では、面積は2,300画素であり、抗TEM17抗体がヒトEPCおよび2H11内皮細胞の両方の細管形成に阻害効果をもたらすことを示している。
【0096】
実施例4
TEM9抗体
TEM9に対するマウスポリクローナル抗体を作製するために、TEM9の全長ヒト遺伝子を含むpcDNA3.1 hTEM9プラスミドで、C57B1/6マウスを筋内経路により免疫化した。pCMV Sport2におけるヒト胎児腎cDNAライブラリーのコロニーハイブリダイゼーションにより、ヒトTEM9 cDNAをクローン化した。TEM9配列をコードする1,100 bp PCRフラグメントを用いて、cDNAをスクリーニングし、陽性クローンを配列決定して完成させた。cDNAライブラリーは、cDNAの3’および5’末端にNot1およびSal1を付加することにより形成した。米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)(AF378755)の配列番号211のnt35〜nt4030と等しい3996 bpの全長TEM9 ORFを含むクローンpCMV Sport2-TEM9(クローン9-1)の1つを選択した。pCMV Sport2-TEM9からの全長配列をpCDNA3.1ベクター(Invitrogen)にサブクローン化することにより、pcDNA3.1 hTEM9を作製し、マウスの免疫に用いた。
【0097】
TEM9細胞外ドメイン、すなわち、TEM9のための全長ヒト遺伝子のnt127〜nt2290に特異的なポリクローナルを作製するために、5’末端に5’シグナル配列およびmyc-タグを、また3’末端にGPI膜貫通アンカーモチーフを含む、フレーム内VV-1ベクター(Genovac AG, Freiburg、ドイツ国)に、TEM9の全長ヒト遺伝子のnt127〜nt2290をサブクローン化して、VV-1 TEM9を作製した。ベクターに含まれる細胞外部分は、米国特許出願番号09/918715(公開番号:20030017157)の配列番号212のアミノ酸32から752までのTEM9をコードする。VV-1 TEM9ベクターでウサギを免疫した。次に、ウサギおよびマウスポリクローナルのIgG画分を通常の方法により精製した。
【0098】
細胞表面発現:TEM9が細胞の表面に存在するか否かを決定するために、COS細胞(ATCC)をプラスミドベクター、pCFA-TEM9で一時的にトランスフェクションした。全長ヒトTEM9をpCFAベクター主鎖にクローン化した。pCFAベクター主鎖については、Yewら、Hum. Gene Ther. 10: 223-34(1999)に記載されている。次に、細胞(透過性化されていない)をウサギ抗TEM9ポリクローナルで染色してから、CY3標識抗ウサギIg抗体で染色する。続いて、細胞を核染色(DAPI)で対比染色し、蛍光顕微鏡で検査する。蛍光染色はCOS細胞の細胞表面に限定されていたため、TEM9がトランスフェクション細胞の表面に発現していることがわかった。
【0099】
2H11内皮細胞(2H11細胞は内部でマウスTEM9を発現する)上のマウスポリクローナル抗ヒトTEM9抗体と、VV-1 TEM9でトランスフェクションし、かつウサギポリクローナル抗ヒトTEM9抗体で処理したHek-293細胞とを用いて、フローサイトメトリー分析によりTEM9の細胞表面発現を確認した。両細胞型とも、抗TEM9抗体を用いた染色が陽性であった。これらの実験は、TEM9が細胞外および膜局在化タンパク質であることを初めて証明するものである。
【0100】
増殖アッセイ:実施例1に記載のように調製したヒト内皮前駆細胞(EPC)を用いて、Crouchら、J. Immunol. Meth. 160: 81(1993)およびKangasら、Med. Biol. 62: 338(1984)に記載されている方法により、増殖をアッセイした。2%ウシ胎児血清を補充した培地において、2×103細胞/ウェルを用いる96ウェルプレート系で増殖を評価した。ウサギポリクローナル抗ヒトTEM9に暴露したヒトEPCの成長阻害終点として、ATPルミネッセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)Luminescent Cell Viabilityキット、Promega)を用いた。48時間にわたって抗体の濃度を100から800μg/mlまで増加させながら、細胞をインキュベートした。対照IgG抗体はSigmaから購入したウサギ血清IgG画分であった。ヒトEPCまたはマウス2H11細胞には増殖の阻害は認められなかった。
【0101】
遊走アッセイ:1チャンバ当たり5×104で、8ミクロン孔膜上の上部チャンバにおいて血清を含まない培地中に平板培養したヒトEPC(実施例1に記載のように作製)を用いて、Glaserら、Nature 288: 483-84(1983)およびAlessandriら、Cancer Res. 43: 1790-97(1983)に記載されているように遊走をアッセイした。平板培養する前に2H11細胞を抗体で30分間、前インキュベートした。0.5%ウシ胎児血清を補充した培地を化学誘引物質として下部チャンバに入れた。800μg/ml抗ヒトTEM9ウサギポリクローナル抗血清または対照ウサギIgG画分の存在および非存在下で、膜の下側から、EPCおよび2H11細胞をそれぞれ48時間および4時間にわたって遊走させた。実験ウェルの上部および下部チャンバの両方に抗体を入れた。膜を通過して遊走した細胞をカルセインで染色し、蛍光強度により定量した。対照血清だけとインキュベートした場合、遊走2H11細胞が1,000 RFUを生成したのに対し、抗TEM9抗体は相対蛍光を830 RFUに低減し、TEM抗体による遊走の阻害を示した。同様の阻害が、抗TEM9抗体の存在下のEPCにも認められた。以下に記載するように調製したアデノ-TEM9感染(Ad2CMV-TEM9)HMVECを用いて、抗TEM9抗体による遊走の阻害をさらに確認した。対照IgGの存在下で、遊走アデノ-TEM9感染EPCは、1,899の蛍光強度であった。抗TEM9抗体の存在下では、蛍光強度が1,254まで減少した。
【0102】
内皮細管形成アッセイ:Souzaら、Biotechniques, 26:502-08(1999)に記載されているように、pAD(バンテージ)系を用いて、全長ヒトTEM9をコードする遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad2CMV-TEM9)を構築した。Ad2CMV-TEM9を用いて、300のMOIでヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を感染させた。ウイルス感染から72時間後、HMVECにトリプシン添加し、細管形成アッセイのためにマトリゲル(商標)上で平板培養した。アッセイは24ウェルプレートで24時間実施した。次に、37℃にてカルセインAM(Molecular Probes)で30〜60分細胞を染色してから、細管の蛍光イメージをとらえた。MetaMorphイメージ分析を用いて、細管が占める面積を定量した。250μlのマトリゲル(商標)を用いて、細胞を3×104細胞/ウェルの密度で細胞を平板培養した。抗TEM9抗体に暴露していない細胞と比較して、抗TEM9処理細胞からの細管面積に増加はみられなかった。
【0103】
実施例5
ヒト抗TEM1抗体
TEM1発現FM3A細胞(FM3A/TEM1)またはTEM1発現L929細胞(L929/TEM1)を免疫化させることにより、TEM1に対するヒト抗体をKMマウス(商標)(WO02/043478)において産生させた。上記細胞は両方共に高レベルのヒトTEM1を安定して発現するが、これは、ヒトTEM1に対する試薬ウサギポリクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー(FACS)により決定される。FM3A/TEM1の定着のために、マウスFM3A乳癌細胞(ATCC)をエレクトロポレーションにより、ヒトTEM1 cDNAを含むプラスミドでトランスフェクションした。このプラスミドは、BstXI部位を用いて、pTracerEF-Bsd(Invitrogen)に、pcDNA3.1ヒトTEM1からのヒトTEM1 cDNAをサブクローニングすることにより構築した。L929/TEM1の定着のために、TransIT-LT1を用いたリポフェクションにより、同じプラスミドでマウスL929線維芽細胞(ATCC)をトランスフェクションした。次に、セルソーターのFACSVantage(BD Biosciences)を用いて、試薬ウサギポリクローナル抗体で染色したトランスフェクタントからTEM1発現細胞を回収した。10%ウシ胎児血清(FBS)と10μg/mlのブラスチシジンSを補充した改変イーグル培地にFM3A/TEM1を維持し、10%FBSと10μg/mlのブラスチシジンSを補充したダルベッコ改変イーグル培地にL929/TEM1を維持した。FM3A/TEM1の5×106細胞またはL929/TEM1の1×106細胞で、2週間おきに3回マウスを腹腔内経路で免疫化した。最後の免疫化の際、細胞融合の3日前、5μgのヒトインターロイキン-6を免疫化マウスに腹腔内注射した。融合パートナーとしてSP2/0-Ag14骨髄腫細胞(ATCC)を用いて、免疫化動物の脾臓からハイブリドーマを作製した。TEM1発現FM3A細胞を用いて、それらの上清のFACS分析により、ヒトTEM1に対する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。簡単に説明すると、TEM1発現FM3A細胞を上清と一緒に0℃で1時間インキュベートした。洗浄後、RPE結合抗ヒトκ鎖特異的抗体またはRPE結合抗ヒトγ鎖特異的抗体と一緒に、上記細胞を0℃で1時間インキュベートした。洗浄後、細胞をFACS分析に供した。選択したハイブリドーマを限界希釈方法によりクローン化した。
【0104】
抗体の精製:抗体の精製のために、1%Low IgG FBS(Hyclone)、5μg/mlのインスリン、5μg/mlのトランスフェリン、10μMのエタノールアミン、および25 nMのセレン化ナトリウムを補充したeRDF培地(Kyokuko Pharmacy)に、ハイブリドーマを馴化させた。抗体生産に一般に用いられる通常の方法を組み合わせて用いて、発酵ブロスからIgGの精製を実施した。精製スキームを開始する前に、培養回収物を洗浄して、細胞および細胞残屑を除去する。これは、回収物のろ過により達成した。洗浄の後、抗体を捕獲し、プロテインAマトリックス(MabSelect;Amersham Biosciences)上のアフィニティークロマトグラフィーを用いて、有意に精製した。抗体をプロテインAマトリックスに結合させ、マトリックスを洗浄した後、抗体をpHの低下により溶離させる。さらなる抗体の精製は、アニオン交換クロマトグラフィー(Q Sepharose Fast Flow;Amersham Biosciences)およびカチオン交換クロマトグラフィー(SP Sepharose Fast Flow;Amersham Biosciences)により達成する。不純物を除去すると同時に、このステップを用いてPBSへのバッファー交換を実施することもできる。
【0105】
増殖アッセイ:2%ウシ胎児血清を補充した培地において、2×103細胞/ウェルを用いる96ウェルプレート系でヒト内皮前駆細胞(EPC)増殖を評価した。ヒト抗体とインキュベートしたEPCの成長阻害終点として、ATPルミネッセンスアッセイ(CellTiter Glo(商標)Luminescent Cell Viabilityキット、Promega)を用いた。1μg/mlのヒト抗TEM1上清と一緒に細胞を48時間インキュベートした。抗体上清の数はEPC増殖を阻害するものであった。
【0106】
ヒトTEM1抗体による腫瘍成長の阻害:TEM1に対するヒトTEM1抗体のin vivo評価のために、トランスジーンとしてRPCI11-867G23 BACクローン(Invitrogen Corporation)を用いて、ヒトTEM1トランスジェニックマウスを作製した。C57B1/6胚へのトランスジーンの注射をYS New Technology Institute, Inc.により実施した。こうして得られたTEM1トランスジェニックマウスを非トランスジェニックC57B1/6マウス(Japan SLC, Inc.)と雑種形成することにより、トランスジェニック子孫を増やした。第0日に、B16黒色腫の1×106細胞(ATCC)を成体TEM 1トランスジェニックマウスに皮下注射し、指定した時点で、カリパスを用いて、各実験グループからの個々のマウスにおける腫瘍体積を測定した。クローン7、クローン38、およびクローン70からの精製TEM1抗体、ならびに、ハプテン(すなわち、ジニトロフェニル)に特異的な精製済IgG1イソタイプ対照抗体を100μg/マウスの用量で週2回投与するが、この投与は第1日から開始する。第6日に、対照IgG1抗体(n=6)、クローンTEM1-7抗体(n=6)、クローンTEM1-70抗体(n=4)、およびクローンTEM1-38抗体(n=6)を受けたマウスにおける腫瘍体積は、それぞれ4.88±3.629、6.12±6.12、3.56±3.56、36.83±15.15 mm3であった(値は平均値±SEMを示す)。第9日に、IgG1対照抗体を受けたマウスの腫瘍体積は、378.02±112.90 mm3であったのに対し、クローンTEM1-7、クローンTEM1-70、およびクローンTEM1-38の抗TEM1抗体を受けたマウスは、それぞれ221.82±54.12、130.08±25.14、および467.41±185.19 mm3であった。第13日には、抗TEM1抗体は、B16腫瘍成長をさらに劇的に阻害した。対照抗体だけを受けたマウスにおける腫瘍体積は、944.04±402.19 mm3まで増大したのに対し、抗TEM1抗体を受けたマウスの腫瘍体積は、TEM1-7、TEM1-70、およびTEM1-38抗体について、それぞれ204.88±31.56、128.67±62.46、および513.92±174.40 mm3まで減少した。
【0107】
本発明の基本的態様から逸脱することなく、以上の記載事項に変更を加えることができる。1以上の具体的実施形態に関して本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本明細書に具体的に記載した実施形態に変更を加えることができ、さらにこれらの変更および改善が、添付の特許請求の範囲に記載するように、本明細書の範囲および精神に含まれることを理解されるであろう。
【0108】
前記刊行物または文献の引用は、上述のいずれのものも関連する従来技術であるという承認を意図するものではなく、これらの刊行物または文献の内容または日付に関して何らの承認を形成するものでもない。本明細書で参照した米国特許およびその他の刊行物は本明細書に参照として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の増殖を阻害するための医薬組成物であって、ヒト腫瘍内皮マーカー(TEM)17の細胞外領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基1〜426)を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを有効量含む、上記医薬組成物。
【請求項2】
細胞の遊走を阻害するための医薬組成物であって、ヒトTEM17の細胞外領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基1〜426)を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを有効量含む、上記医薬組成物。
【請求項3】
内皮細管形成を阻害するための医薬組成物であって、ヒトTEM17の細胞外領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基1〜426)を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを有効量含む、上記医薬組成物。
【請求項4】
血管形成を阻害するための医薬組成物であって、ヒトTEM17の細胞外領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基1〜426)を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを有効量含む、上記医薬組成物。
【請求項5】
前記血管形成が新血管形成である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体を抗血管形成薬、抗腫瘍薬、または放射性核種と結合させる、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
腫瘍成長を阻害するための医薬組成物であって、ヒトTEM17の細胞外領域(配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基1〜426)を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体、またはその生物学的に活性のフラグメントを有効量含む、上記医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体を抗腫瘍薬または抗血管形成薬と結合させる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記腫瘍が、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、もしくは奇形癌である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記腫瘍が、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、もしくは子宮の癌である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体が、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体がIgG抗体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記IgG抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記生物学的に活性のフラグメントが、単鎖可変領域、Fabフラグメント、もしくはF(ab’)2フラグメントである、請求1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2011−52002(P2011−52002A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241323(P2010−241323)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【分割の表示】特願2006−509156(P2006−509156)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【出願人】(505087621)ゲンザイム コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】