説明

内装材の製造方法

【課題】本発明の課題は、表面の外観がムラのない内装材を提供することにある。
【解決手段】多孔質材料からなる表皮材4と、多孔質材料からなる基材5とを重ねてホットプレスによって所定形状に成形して内装材7を製造する方法において、表皮材4裏面および/または基材5に難燃剤を塗布するかあるいは基材内部に難燃剤を含浸または混合せしめ、ホットプレスの際には表皮材4を下側にし基材5を上側にして重ねてプレス成形装置1にセットする。このようにすればホットプレスの際に表皮材4や基材5から発生する揮発分は基材側から蒸発するから、該揮発分の蒸発に伴なう難燃剤が表皮材4表面に移行蓄積してムラになることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や建築物に使用される内装材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の内装材としては、難燃性を付与することが要求されている。上記内装材に難燃性を与えるには、上記内装材を構成する表皮材および/または基材に難燃剤を塗布または含浸せしめる(例えば特許文献1,2,3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−348766号公報
【特許文献2】特開平10−226952号公報
【特許文献3】特開平10−168756号公報
【0004】
従来、この種の内装材を製造するには、難燃剤を塗布または含浸した表皮材と基材とを基材を下にしてプレス成形装置にセットし、ホットプレスを行なっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮材を上側にし基材を下側にしてプレス成形型においてホットプレスを行なうと、表皮材あるいは基材に含まれる水分、溶剤、その他の揮発成分が表皮材側から蒸発し、この際上記揮発成分に同伴する難燃剤が表皮材の表面に移行して蓄積し、特に成形量(圧縮量)が大きい部分に該難燃剤が移行蓄積して表皮材表面がムラになり、外観が悪化すると云う問題点がある
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決して表面にムラがない好ましい外観を有する内装材7を提供することを目的とするものであり、多孔質材料からなる表皮材4と、多孔質材料からなる基材5とを重ねてホットプレスによって所定形状に成形して内装材7を製造する方法において、表皮材4裏面および/または基材5に難燃剤を塗布するかあるいは基材内部に難燃剤を含浸または混合せしめ、ホットプレスの際には表皮材4を下側にし基材を上側にして重ねてプレス成形装置1にセットする内装材7の製造方法を骨子とするものである。
通常、上記表皮材4および/または上記基材5は繊維シートからなる。また上記表皮材4および/または上記基材5には合成樹脂が含浸されていることが好ましく、この場合、上記合成樹脂はフェノール系樹脂であることが好ましく、そして上記フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されていること好ましい。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕
表皮材4裏面および/または基材5に難燃剤を塗布するかあるいは基材内部に難燃剤を含浸または混合せしめ、表皮材4を下側にし基材5を上側にしてプレス成形装置1にセットしてホットプレスを行なうと、基材5や表皮材4に含まれている水分、溶剤、その他の揮発成分が基材側から揮発するので、表皮材4表面に難燃剤が移行蓄積しない。
上記表皮材4や基材5に合成樹脂が含浸されていると、得られる内装材7の強度や成形形状安定性が向上する。
合成樹脂としては、フェノール樹脂が難燃性、強度や成形形状安定性、更に表皮材4や基材5に対して防腐性を付与する点で望ましいが、取扱いを容易にするためには該フェノール樹脂は水溶液として提供することが望ましい。そこで該フェノール樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化すると、広いpH範囲で安定な水溶液を形成する。
【0008】
〔効果〕
本発明の内装材7は表面にムラのない優れた外観を有するものになる。
本発明を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔多孔質材料〕
本発明に使用する多孔質材料としては、繊維シートまたはマット、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂の発泡体シートまたはマットがある。
【0010】
〔繊維〕
上記繊維シートまたはマットに使用される繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ、蚕糸、キワタ、ガマ繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、デンプン系、ポリ乳酸系等の生分解性繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、これらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維等である。これらの繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。
【0011】
更に上記繊維としては、融点が180℃以下である低融点繊維を使用してもよい。該低融点繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。
該低融点繊維の繊度は、0.1dtex〜60dtexの範囲である。
上記低融点繊維は通常上記繊維に1〜50質量%混合される。
【0012】
〔難燃剤〕
本発明に使用される難燃剤としては、燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系年々剤、アミノ樹脂系難燃剤等が例示される。
本発明においては特に不溶の粉末状の固体難燃剤が使用されることが望ましい。水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤は該繊維シートまたはマットに耐水性、耐久性に優れた難燃性を付与する。特に本発明の繊維シートまたはマットは粗構造を有しているから、上記粉末状の固体難燃剤が内部にまで円滑に浸透して高度な難燃性ないし不燃性を付与する。
【0013】
上記難燃剤のうち望ましい難燃剤としては、メラミンあるいは尿素等で被覆されたカプセル型ポリリン酸アンモニウム等があるが、価格等の面から最も望ましい難燃剤としては、重合度が10〜40のポリリン酸アンモニウムがある。上記重合度のポリリン酸アンモニウムは水に難溶または不溶であり、高温で分解して難燃性ガスを発生するが、該難燃性ガスは人畜に対しての毒性は低い。
ここにポリリン酸アンモニウムの重合度nとは、下記の式から算出されたものである。
【数1】

ここにPmol とはポリリン酸アンモニウムに含まれるリンのモル数、Nmol とは窒素のモル数であり、Pmol およびNmol は次式から算出される。
【数2】

【数3】

P含有量の分析は、例えばICP発光分光分析法、N含有量の分析は、例えばCHN計法によって行われる。
重合度が10以上であれば、ポリリン酸アンモニウムは殆ど水に不溶となる。しかし重合度が40を超えるとポリリン酸アンモニウムを水あるいは水性分散媒に分散させた時に分散液の粘度が異常に増大するので、繊維シート等に塗布あるいは含浸させる場合に均一な塗布あるいは含浸が困難となり、塗布量あるいは含浸量にムラが出来、結果として充分な難燃性が得られなくなる。
【0014】
〔膨張黒鉛〕
本発明は上記難燃剤と共に膨張黒鉛を併用してもよい。上記膨張黒鉛は、天然黒鉛を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸に浸漬し、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の酸化剤を添加して処理することによって得られるものであり、膨張開始温度が250℃〜300℃程度である。該膨張黒鉛の膨張容積は30〜300ml/g程度であり、粒径は300〜30メッシュ程度である。
【0015】
〔熱膨張性粒体〕
本発明においては、繊維シートまたはマットに熱膨張性粒体を添加してもよい。該熱膨張性粒体としては、例えば低軟化点を有する熱可塑性樹脂と低沸点溶剤とからなる。低軟化点を有する熱可塑性樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の脂肪族または環式アクリレートおよび/またはメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等のジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アトロパ酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアルコール等の水酸基含有単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノ基含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル等のエポキシ基含有単量体、その他ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の水溶性単量体、また上記γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、P−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩等のような加水分解性シリル基含有ビニル単量体等の一種または二種以上の重合体または上記重合体をジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジアクリレート等の多価アクリレートまたはメタクリレート、ジアリルフタレート、アリルグリシジルエーテル等の架橋剤で架橋させた重合体、低軟化点ポリアミド、低軟化点ポリエステル等の望ましくは180℃以下の軟化点を有する熱可塑性樹脂であり、低沸点溶剤としては、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ガソリン、エチルエーテル、アセトン、ベンゼン等の沸点150℃以下の有機溶剤がある。そして熱膨張性粒体は上記熱可塑性樹脂粒体に上記低沸点溶剤を含浸させた発泡性ビーズ、上記低軟化点熱可塑性樹脂のシェル中に上記低沸点溶剤を充填したマイクロカプセル等からなる。該粒体の径は通常0.5〜1000μmである。
更に本発明に使用する熱膨張性粒体としては、ひる石、パーライト、シラスバルーンのような熱膨張性無機粒体がある。
【0016】
〔合成樹脂〕
本発明の多孔質材料には強度、成形性、成形形状安定性を付与するために合成樹脂が塗布あるいは含浸されることが望ましいが、上記合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性合成樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等のような熱硬化性合成樹脂等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体が使用されてもよい。上記合成樹脂は単独あるいは二種以上併用されてもよく、通常粉末、エマルジョン、ラテックス、水溶液、有機溶剤溶液等として使用される。
【0017】
上記合成樹脂が水溶液である場合、該水溶液には水溶性樹脂を溶解させておくことが望ましい。上記水溶性樹脂としては例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース等が例示されるが、更にアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸との共重合体あるいは該共重合体の微架橋物等のアルカリ可溶性樹脂が使用されてもよい。上記共重合体や微架橋共重合体は通常エマルジョンとして提供される。
【0018】
上記合成樹脂水溶液に上記水溶性樹脂を添加溶解させておくと、その増粘効果あるいは分散効果によって該水溶液に分散させた難燃剤粉末や膨張黒鉛が沈降しにくゝなり、均一な含浸液が得られる。更に該水溶性樹脂は難燃剤粉末や膨張黒鉛の多孔質材料に対する付着力を高め、該多孔質材料から該難燃剤粉末や膨張黒鉛が離脱するのを有効に防止する。
上記水溶性樹脂は通常上記水溶液中に固形分として0.1〜20質量%程度使用される。
【0019】
本発明で使用される合成樹脂として望ましいのは、難燃性を有するフェノール系樹脂である。以下、本発明で使用するフェノール系樹脂について説明する。
フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0020】
〔フェノール系化合物〕
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0021】
〔一価フェノール〕
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0022】
〔多価フェノール〕
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0023】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
【0024】
〔ホルムアルデヒド供与体〕
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0025】
〔フェノール系樹脂の製造〕
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常初期縮合物の水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常初期縮合物の粉末で提供される。
上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0026】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。 上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0027】
例えば、上記(a) 一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0028】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0029】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0030】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0031】
〔フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0032】
〔スルホメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0033】
〔スルフィメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0034】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0035】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0036】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0037】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0038】
更に上記フェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液には、所望により、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、トリメチルノニルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アビエチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の上記グリコール類のエステル類やその誘導体、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジエチルセロルブ、ジエチルカルビトール、エチルラクテート、イソプロピルラクテート、ジグリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド等の水溶性有機溶剤が添加されてもよい。
【0039】
〔その他の添加剤〕
本発明の多孔質材料には、更に上記難燃剤、膨張黒鉛、熱膨張性粒体、合成樹脂以外の添加剤が塗布または含浸されてもよい。上記添加剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタール酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等が例示される。
上記添加剤は通常上記合成樹脂の粉末、溶液、エマルジョン、あるいはラテックスに混合して上記多孔質材料に混合、塗布または含浸される。
【0040】
〔表皮材および基材の製造方法〕
表皮材4や基材5が繊維シートまたはマットの場合には、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法、あるいは繊維のウェブのシートあるいはマットに低融点繊維や合成樹脂を含浸あるいは混合して結着するか、あるいは繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で合成樹脂の粉末、溶液、エマルジョン、ラテックスを混合、塗布あるいは含浸して結着する方法、繊維を編織する方法等によって製造される。
【0041】
上記難燃剤、膨張黒鉛または熱膨張性粒体は、通常繊維をシートまたはマット化する前に繊維に混合されるか、あるいは上記シートまたはマットに合成樹脂を含浸、あるいは塗布、あるいは繊維に混合する場合には、該合成樹脂バインダーに混合しておいてもよい。混合比率は任意でよいが、通常繊維に対して該難燃剤は0.5〜50質量%、該膨張黒鉛を使用する場合には0.5〜50質量%、該熱膨張性粒体を使用する場合には該粒体を0.1〜50質量%添加する。
【0042】
上記多孔質材料に合成樹脂を含浸するには、通常、合成樹脂溶液、エマルジョンあるいはラテックスに該多孔質材料を浸漬するか、あるいは該合成樹脂溶液、エマルジョンあるいはラテックスを該多孔質材料にスプレーするか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
合成樹脂を含浸または塗布した多孔質材料中の合成樹脂量を調節するには、合成樹脂含浸または混合後、多孔質材料を絞りロールやプレス盤を使用して絞る。
【0043】
上記難燃剤、膨張黒鉛あるいは熱膨張性粒体を上記多孔質材料に添加するには、上記合成樹脂の粉末、溶液、エマルジョンあるいはラテックスに上記難燃剤、膨張黒鉛、あるいは熱膨張性粒体を混合、分散せしめて上記多孔質材料に塗布または含浸、あるいは上記多孔質材料が繊維シートまたはマットの場合にはシート化またはマット化する前の繊維に混合しておくが、該合成樹脂とは別にポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性樹脂の水溶液や、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸との共重合体あるいは該共重合体の微架橋物等のアルカリ可溶性樹脂等のエマルジョンに該難燃剤粉末や該膨張黒鉛あるいは該熱膨張性粒体を分散させた分散液を調製し、これらを上記多孔質材料へ塗布、含浸しても良い。
【0044】
該多孔質材料に合成樹脂溶液、エマルジョンあるいはラテックスを含浸あるいは塗布した後、該多孔質材料は乾燥する。該多孔質材料に含浸あるいは塗布される合成樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、該樹脂をB状態にすると長期保存が可能になり、かつ低温短時間の成形が可能になる。
【0045】
上記多孔質材料が表皮材4として使用される場合には、一般に厚みは0.1mm〜5mmに設定され、基材5として使用される場合には、一般に厚みは3mm〜60mmに設定される。そして特に表皮材として使用される場合には裏面に難燃剤塗布層6を形成しておく。
【0046】
〔内装材の製造〕
本発明の内装材7を製造するには、図1に示すような上型2と下型3とからなるプレス成形装置1に裏面に難燃剤塗布層6を形成した表皮材4を下側にし基材5を上側にして重ねてセットしてホットプレスを行なう。あるいは難燃剤を基材5に塗布するか、あるいは含浸せしめるか、あるいは混合してもよい。
この場合表皮材4および/または基材5に合成樹脂が塗布または含浸されている場合には、含浸されている合成樹脂が表皮材4と基材5との間の接着面に滲出して接着剤として機能するが、それとは別に表皮材4および/または基材5の接着面に接着剤を塗布してもよい。またホットメルト接着剤粉末を使用する場合には、上記表皮材4および/または基材5の接着面に該粉末を撒布してもよく、また合成樹脂の溶液、エマルジョンあるいはラテックス、あるいは上記難燃剤粉末や膨張黒鉛あるいは熱膨張性粒体を分散させた分散液を上記表皮材4および/または基材5の接着面に塗布する場合には、上記合成樹脂の溶液、エマルジョンあるいはラテックス、あるいは上記分散液に該ホットメルト接着剤粉末を分散しておいてもよい。
【0047】
該ホットメルト接着剤粉末は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂の変性物を含む)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体等の1種または2種以上の混合物等の低融点樹脂を材料とする。
【0048】
本発明の内装材7は平板状あるいは図3に示すように所定形状に成形されるが、成形にはホットプレス成形が適用され、上記多孔質材料に膨張黒鉛が付着されている場合には、ホットプレス温度は該膨張黒鉛の膨張開始温度以下に設定され、また該多孔質材料が繊維シートまたはマットであって熱膨張性粒体が付着されている場合には、該熱膨張性粒体の加熱膨張は上記プレス成形時に該繊維シートまたはマットの厚みを規制しつゝ行われる。該繊維シートまたはマットを厚みを規制しつゝ含有する該熱膨張性粒体の膨張温度以上に加熱すると、該熱膨張性粒体が膨張する。該繊維シートまたはマットは上記したように厚みを規制されているから、該粒体の膨張によって周りの繊維は圧縮され、繊維部分の密度は高くなって剛性が向上する。しかし繊維シートまたはマット全体としては、空隙率は変わらず、したがって重量も変わらない。
【0049】
本発明の内装材7は、例えば、自動車の天井材、ドアトリム、インストールパネル、ダッシュサイレンサ、フードサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、フロアマット、ダッシュボード、ドアトリアム等の内装材、あるいは吸音材、断熱材、建築材料等として有用である。
【0050】
上記ホットプレスによって、表皮材4や基材5に含まれている水分、溶剤、あるいは合成樹脂から発生する揮発性成分等は上側にある基材5側から外部に蒸発するから、表皮材4の表面に上記揮発成分の蒸発に伴なう難燃剤が移行蓄積することはない。
以下、本発明を実施例によって説明する。なお本発明は以下に示される実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
ポリエステル繊維からなるスパンボンド法による不織布である繊維シート(目付量:30g/m2、厚さ:0.2mm)に、フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分50%水溶液)40質量部、フッ素系撥水撥油剤(固形分20%水溶液)5質量部、カーボンブラック(固形分50%水分散溶液)2質量部、水53質量部からなる混合溶液を、該繊維シートに対し30%の塗布量になるように含浸塗布した後、難燃剤としてメラミン樹脂で被覆されたポリリン酸アンモニウム(粒子径:15〜25μm)20質量部、ホットメルト接着剤粉末としてポリアミド粒子(粒子径:40〜60μm)10質量部、ポリビニルアルコール(固形分5%水溶液)20質量部、水50質量部からなる水溶液を該繊維シートの裏面に20g/m2の塗布量になるようにスプレー塗布した後、140℃で3分間乾燥し、プレキュアーさせた表皮材4Aを得た。また基材5として、レゾール型フェノール樹脂が塗布された未硬化ガラスウール原綿(目付量:800g/m2)を用いた。該表皮材4Aの裏面に該未硬化ガラスウール原綿を重合させ、プレス成形装置1で、該表皮材4A面に組み合わされる型を下部に配置して下型3とし、該基材側に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、200℃で60秒間熱圧プレス成形し、成形物M1を得た。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1において、該表皮材4A面に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、該基材5側に組み合わされる型を下部に配置して下型3とした以外は実施例1と同様にして、200℃で60秒間熱圧プレス成形させ、成形物M2を得た。
【0053】
〔実施例2〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による不織布である繊維シート(目付量:90g/m2、厚さ:3.0mm)に、スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分50%水溶液)35質量部、フッ素系撥水撥油剤(固形分20%水溶液)2質量部、ワックス系内部離型剤(固形分25%水溶液)3質量部、カーボンブラック(固形分50%水分散溶液)2質量部、水58質量部からなる混合溶液を、該繊維シートに対し40%の塗布量になるように含浸塗布した後、難燃剤として、平均重合度n=30のポリリン酸アンモニウム(粒子径:40〜50μm)20質量部、ホットメルト接着剤粉末としてポリエステル粒子(粒子径:40〜60μm)10質量部、アクリル共重合エマルション(固形分45%水溶液)15質量部、水55質量部からなる水溶液を、該繊維シートの裏面に100g/m2の塗布量になるようにスプレー塗布し、140℃で3分間乾燥し、プレキュアーさせた表皮材4Bを得た。また基材5として、ポリエステルや綿からなる繊維再生屑を開繊機にて綿状にした反毛綿に、ヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:20〜30μm)65質量部、平均重合度n=40のポリリン酸アンモニウム(粒子径:40〜50μm)30質量部、膨張黒鉛(粒子径:70〜80μm、膨張開始温度:300℃)5質量部との混合物を該反毛綿の30質量%になるように添加し、更に該反毛綿をミキシングしてフリースを形成した後、150℃の熱風で該フリースをプレキュアーし厚さ20mm、目付量:1000g/m2の難燃性繊維シート基材を得た。該表皮材4Bの裏面に該難燃性繊維シートを重合させ、プレス成形装置1で、該表皮材4B面に組み合わされる型を下部に配置して下型3とし、該基材側に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、200℃で60秒間熱圧プレス成形し、成形物M3を得た。
【0054】
〔比較例2〕
実施例2において、該表皮材4B面に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、該基材5側に組み合わされる型を下部に配置して下型3とした以外は実施例2と同様にして、200℃で60秒間熱圧プレス成形させ、成形物M4を得た。
【0055】
〔実施例3〕
ポリエステル長繊維からなるスパンボンド法による不織布である繊維シート(目付量:50g/m2、厚さ:0.5mm)に、スルフィメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分50%水溶液)40質量部、フッ素系撥水撥油剤(固形分20%水溶液)2質量部、ワックス系内部離型剤(固形分25%水溶液)1質量部、カーボンブラック(固形分50%水分散溶液)2質量部、水55質量部からなる混合溶液を、該繊維シートに対し40%の塗布量になるように含浸塗布した後、難燃剤として平均重合度n=15のポリリン酸アンモニウム(粒子径:40〜50μm)25質量部、ホットメルト接着剤粉末としてポリエステル共重合体粒子(粒子径:40〜60μm)10質量部、アクリル共重合エマルション(固形分45%水溶液)15質量部、水50質量部からなる水溶液を、該繊維シートの裏面に100g/m2の塗布量になるようにスプレー塗布し、140℃で3分間乾燥し、プレキュアーさせた表皮材4Cを得た。また基材5として、ポリエステル繊維(繊度:12.0dtex、繊維長:55mm)60質量部と低融点ポリエステル繊維(軟化点:120℃、繊度:15dtex、繊維長:50mm)10質量部、および竹繊維(繊維長:55mm)30質量部を開繊機にて綿状にした反毛綿に、平均重合度n=40のポリリン酸アンモニウム(粒子径:40〜50μm)30質量部、ヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:20〜30μm)70質量部からなる混合物を該反毛綿の30質量%になるように添加し、更に該反毛綿をミキシングしフリースを形成した後、150℃の熱風で該フリースをプレキュアーし厚さ25mm、目付量:1500g/m2の難燃性繊維シート基材を得た。該表皮材4Cの裏面に該難燃性繊維シート基材を重合させ、プレス成形装置1で、該表皮材4C面に組み合わされる型を下部に配置して下型3とし、該基材側に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、220℃で90秒間熱圧プレス成形し、成形物M5を得た。
【0056】
〔比較例3〕
実施例3において、該表皮材4C面に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、該基材5側に組み合わされる型を下部に配置して下型3とした以外は実施例3と同様にして、220℃で90秒間熱圧プレス成形させ、成形物M6を得た。
【0057】
〔実施例4〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による不織布である繊維シート(目付量:80g/m2)の裏面に、20%燐酸アンモニウム水溶液を該繊維シートの30%の塗布量になるようにスプレー塗布後、120℃で2分間乾燥し表皮材4Dを得た。また基材5として、レゾール型フェノール樹脂が塗布された未硬化ガラスウール原綿(目付量:1000g/m2)を用いた。該表皮材4Dの裏面にホットメルト接着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点:75℃)からなる厚さ0.01mmのフィルムを重ね、更に該未硬化ガラスウール原綿を重合させ、プレス成形装置1で、該表皮材4D面に組み合わされる型を下部に配置して下型3とし、該基材側に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、200℃で90秒間熱圧プレス成形し、成形物M7を得た。
【0058】
〔比較例4〕
実施例4において、該表皮材4D面に組み合わされる型を上部に配置して上型2とし、該基材5側に組み合わされる型を下部に配置して下型3とした以外は実施例3と同様にして、200℃で90秒間熱圧プレス成形させ、成形物M8を得た。
【0059】
〔試験〕
上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた成形物M1〜M8を、それぞれ室温放置数日〜6ヶ月させ、表皮材表面の外観状態を観察した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1を参照すると、プレス成形の際基材側を上にして成形した本発明の実施例1〜4は表皮材表面に殆んど異常はなかったが、表皮材側を上にして成形した比較例1〜4は何れも表皮材表面に白色状の粒子の析出がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の内装材は表面にムラがなく優れた外観を有するので、自動車の天井材、ドアト リム、インストルーメントパネル等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ホットプレス工程の説明図
【符号の説明】
【0064】
1 プレス成形装置
2 上型
3 下型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料からなる表皮材と、多孔質材料からなる基材とを重ねてホットプレスによって所定形状に成形して内装材を製造する方法において、表皮材裏面および/または基材に難燃剤を塗布するかあるいは基材内部に難燃剤を含浸または混合せしめ、ホットプレスの際には表皮材を下側にし基材を上側にして重ねてプレス成形装置にセットすることを特徴とする内装材の製造方法。
【請求項2】
上記表皮材および/または上記基材は繊維シートからなる請求項1に記載の内装材の製造方法。
【請求項3】
上記表皮材および/または上記基材には合成樹脂が含浸されている請求項1または2に記載の内装材の製造方法。
【請求項4】
上記合成樹脂はフェノール系樹脂である請求項3に記載の内装材の製造方法。
【請求項5】
上記フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されている請求項4に記載の内装材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−87430(P2008−87430A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273588(P2006−273588)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】