説明

内視鏡およびトレイ

【課題】簡単な構成で、内視鏡の各部の温度、特に冷却し難い挿入部可撓管の温度を把握できる内視鏡およびトレイを提供すること。
【解決手段】本発明の内視鏡1は、体腔内に挿入される挿入部可撓管2と、挿入部可撓管2に接続された操作部6と、操作部6に接続されたコネクタ部8とを備える内視鏡1であって、温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部5が、操作部6よりも熱伝導率が低い部分に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡およびトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の分野で、検査や診断に内視鏡が使用されている。
内視鏡検査では、内視鏡の挿入部を、例えば、胃、十二指腸、小腸あるいは大腸といった体腔の深部まで挿入する必要がある。
【0003】
このような内視鏡は、体腔内に挿入される挿入部と、この挿入部の基端側に設置され、挿入部の先端部を湾曲操作する操作部と、光源装置に接続される光源差込部(コネクタ部)とを有している。このうち、挿入部は、曲がった体腔内に挿入され、これに追従できるよう、可撓性を有する可撓管(内視鏡用可撓管)と、この可撓管の先端側において湾曲操作される湾曲部とを有している。
【0004】
ところで、このような医療用の内視鏡は、体腔内に挿入して使用された後、洗浄、消毒、滅菌処理等が施される。この内視鏡の洗浄、消毒、滅菌処理等には、一般に高温の薬液や高温高圧水蒸気等(オートクレーブ)を用いて行われている。そのため、洗浄、消毒、滅菌等の処理後、内視鏡が常温であることを確認してから使用されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、このような内視鏡では、温度自体の表示がないため、内視鏡を使用する際に内視鏡が常温であるのか否か直ちに判断することができない。また、内視鏡が常温まで下がる前に操作部を把持した場合、操作部を構成する材料が変形するおそれがある。さらに、内視鏡が常温まで下がった後に操作部を把持したとしても、挿入部可撓管が未だ高温状態である場合もある。
【0006】
このように、従来の内視鏡は一見して温度を把握することができないため、内視鏡をどの段階で把持、使用していいのか把握できないという問題を有している。
【0007】
【特許文献1】特開2002−34891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で、内視鏡の各部の温度、特に冷却し難い挿入部可撓管の温度を把握できる内視鏡およびトレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、前記操作部よりも熱伝導率が低い部分に設けられていることを特徴とする内視鏡。
【0010】
これにより、操作部よりも冷却され難い部分の温度を視覚的に簡単に把握することができる。また、熱伝導率の低い部分が十分に冷却されていると認識された場合、操作部の温度はその温度と同等以下の温度と推定できるため、術者に対する安全性が高い。
【0011】
(2) 体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、前記挿入部可撓管に設けられていることを特徴とする内視鏡。
【0012】
これにより、生体に接触する挿入部可撓管の温度を視覚的に、簡単かつ確実に把握することができるため、患者(被検査者)に対する安全性が高く、また、術者も安心して内視鏡を使用できる。
【0013】
(3) 体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、熱伝導率が異なる少なくとも2ヶ所にそれぞれ設けられていることを特徴とする内視鏡。
【0014】
これにより、熱伝導率の異なる部分のそれぞれの温度を把握できるので、術者および患者に対する安全性が高い。
【0015】
(4) 前記表示部は、前記挿入部可撓管と、前記操作部とに設けられている上記(3)に記載の内視鏡。
【0016】
これにより、熱伝導率の高い操作部と熱伝導率の低い挿入部可撓管のそれぞれの温度を把握できるので、術者および患者に対する安全性がより高い。
【0017】
(5) 前記各表示部は、色彩が変化する少なくとも1つの変色点(温度)を有し、前記表示部同士の変色点が異なっている上記(3)または(4)に記載の内視鏡。
【0018】
これにより、複数の表示部において、互いに異なる変色温度で色彩が変化するので、広い温度範囲で各部の温度を把握できる。
【0019】
(6) 前記表示部は、前記挿入部可撓管の先端部に設けられている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の内視鏡。
【0020】
これにより、患者の口腔内に最初に挿入される先端部の温度を把握できるので、より安全性が高く、患者に対する負担がない。
【0021】
(7) 前記表示部は、温度変化によって色彩が3段階以上に変化する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の内視鏡。
【0022】
これにより、温度の大小の把握がし易く、また、内視鏡の各部の温度変化を経時的に把握することもできる。
【0023】
(8) 前記表示部は、透明な保護層で覆われている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の内視鏡。
【0024】
これにより、洗浄、消毒、滅菌などの処理を施した場合でも、表示部の損傷、剥離を防ぐことができる。
【0025】
(9) 前記表示部は、塗布法により形成される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の内視鏡。
【0026】
これにより、示温材料として表示特性が優れているので、最適な表示部を構成することができる。
【0027】
(10) 前記示温材料は、テトラハロゲノ錯体、エチレンジアミン錯体誘導体、含窒素配位子錯体、縮合芳香環置換エチレン誘導体、コレステリック液晶またはメタモカラーからなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の内視鏡。
【0028】
これにより、連続的に塗膜を形成でき、塗布の回数や塗布量に応じて自由に塗布範囲を設定できる。
【0029】
(11) 体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡を収納するトレイであって、
前記内視鏡を支持するための支持部を有し、
前記支持部の前記内視鏡と接触する部位に、温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が設けられていることを特徴とするトレイ。
【0030】
これにより、内視鏡の構成を変えることなく、内視鏡の所定部位の温度を把握することができる。
【0031】
(12) 体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡を収納するトレイであって、
前記内視鏡を支持するための支持部と、
前記内視鏡の前記挿入部可撓管の先端部を収納する収納部とを有し、
前記収納部に、温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が設けられていることを特徴とするトレイ。
【0032】
これにより、内視鏡の構成を変えることなく、内視鏡の所定部位の温度を把握することができる。また、内視鏡の湾曲部における先端部のより正確な温度を把握することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、内視鏡の所定部位の温度を一見して把握することができる。そのため、術者は、例えば、洗浄、消毒、滅菌等の処理を行った後に十分に冷却されてから内視鏡を把持して次の動作(例えば、患者への使用など)に移行でき、術者および患者(被検査者)に対する安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の内視鏡を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の内視鏡の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1に示す内視鏡が備える挿入部可撓管の先端部の拡大縦断面図である。
【0035】
なお、以下では、説明の都合上、図1中の上端を「基端」、下端を「先端」という。また、図2では、図2中の下側が先端方向、上側が基端方向となっている。
【0036】
まず、本発明の内視鏡について説明する。
図1に示す内視鏡1は、可撓性(柔軟性)を有する長尺物の挿入部可撓管2と、挿入部可撓管2の基端側に接続される操作部6と、操作部6に接続された接続部可撓管7と、接続部可撓管7を介して操作部6に接続されたコネクタ部8とを有している。
【0037】
挿入部可撓管2は、体腔内に挿入して使用される。図1に示すように、挿入部可撓管2は、基端側から可撓管部20と、可撓管部20の先端部に設けられ、湾曲可能な湾曲部21とを有している。そして、図2に示すように、湾曲部21は、被写体に照明光を照射する照明手段4と、被写体の画像を撮影する撮像手段3とを有している。
【0038】
図2に示す照明手段4は、挿入部可撓管2(および接続部可撓管7)の長手方向に沿って配設された一対の光ファイバー束(ライトガイド)41と、この光ファイバー束の先端部に配置された平凹レンズ(観察部位に臨む部分に設けられた光透過部材)42とを備えている。
【0039】
この平凹レンズ(対物レンズ)42は、それぞれ、光ファイバー束41側に、凹面421を有し、その反対側の面は、観察部位に臨む。
【0040】
湾曲部21の先端部211には、先端側に開口する孔部212が備えられている。そして、この孔部212の開口部を封止するように平凹レンズ42が設けられ、この平凹レンズ42と、先端部211を含む挿入部可撓管2とにより、気密空間が画成されている。
【0041】
光ファイバー束41は、複数の光ファイバー(光学部品)を束ね、光ファイバー同士が、接着剤を介して接着・固定されることにより形成されている。
【0042】
このような光ファイバー束41の先端部近傍は、口金45に設けられた貫通孔(図示しない)内に挿入され、接着剤を介して貫通孔の内壁面に接着・固定されている。これにより、光ファイバー束41の先端から口金45の長さ分の領域は、その側面が接着剤で被覆されることとなる。
【0043】
そして、口金45は、光ファイバー束41とともに気密空間内の孔部212に挿入され、平凹レンズ42近傍に配置されている。
【0044】
また、一対の光ファイバー束41が、撮像手段3を中心に、対称に配置されている。これにより、観察部位をムラ無く照明することができ、良好な画質の画像を撮像することができる。
【0045】
撮像手段3は、対物レンズ系32と、かかる対物レンズ系32の基端側に設置された撮像素子(CCDイメージセンサ)31とを有し、これらは、湾曲部21の先端部211に形成された孔部33内に設置されている。また、撮像素子31は、挿入部可撓管2内、操作部6内および接続部可撓管7内に連続して配設された信号線311により、コネクタ部8に設けられたスコープコネクタ82に接続されている。
【0046】
そして、光ファイバー束41や対物レンズ系32を保護するように、光ファイバー束41の外周に外皮22が覆われている。その外皮22には、後述する表示部5の示温材料部51を収容する凹部221が全周にわたって環状に形成されている。本実施形態では、撮像素子31より基端側の位置に形成されている。
【0047】
操作部6は、術者(医療従事者)が把持して、内視鏡1全体を操作する部分である。そして、操作部6には、第1操作ノブ61、第2操作ノブ62、第1ロックレバー63および第2ロックレバー64が、それぞれ独立に回動自在に設けられている。
【0048】
各操作ノブ61、62を回転操作すると、挿入部可撓管2内に配設されたワイヤ(図示せず)が牽引されて、湾曲部21が4方向に湾曲し、湾曲部21の方向を変えることができる。
【0049】
また、各ロックレバー63、64を反時計回りに回転操作すると、それぞれ、湾曲部21の湾曲状態(上下方向および左右方向への湾曲状態)を固定(保持)することができ、一方、時計回りに回転操作すると、湾曲した状態で固定された湾曲部21の固定を解除することができる。
【0050】
接続部可撓管7内には、光ファイバー束41および信号線311が配設され、コネクタ部8に接続されている。
【0051】
コネクタ部8の先端側には、ライトガイドコネクタ(以下、単に、「ライトコネクタ」という)81と、スコープコネクタ82とが突出して併設されている。
【0052】
ライトコネクタ81は、図示しない光源装置からの照明光(光)を内視鏡1の湾曲部21まで導光するライトガイドのコネクタとなる部位、すなわち、光学的に接続される部位である。
【0053】
ライトコネクタ81は、その内部に、内視鏡1のライトガイド(LCB:ライトケーブルバンドル)の一端部が挿入されている(図示せず)。ライトガイドは、例えば、複数本の光ファイバーを束ねて形成されており(光ファイバー束41)、コネクタ部8内、接続部可撓管7内、操作部6内、挿入部可撓管2内および湾曲部21内に順次連続して配設されている。
【0054】
なお、ライトコネクタ81の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、真鍮等の各種金属材料を用いることができる。これにより、ライトコネクタ81における放熱性を向上させることができる。
【0055】
スコープコネクタ82は、図示しない光源装置との電気的に接続される部位である。
スコープコネクタ82には、挿入部可撓管2内、操作部6内および接続部可撓管7内に順次連続して設けられた(配設された)ケーブル(図示せず)が接続されている。このケーブルは、撮像素子31と画像信号用コネクタとを接続する図示しない画像信号ケーブルを介して、内視鏡1のCCDイメージセンサ(撮像素子31)、撮像素子31用ドライバ、EEPROM等の所定の回路に電気的に接続されている。
【0056】
このような内視鏡1は、各部位によってそれぞれ材料が異なる。そのため、それぞれの部位で熱伝導率が異なる。一般的には、コネクタ部8−操作部6−接続部可撓管7および挿入部可撓管2の順で、熱伝導率が小さくなる。そのため、例えば、オートクレーブを用いて内視鏡1の消毒、滅菌を行った場合、熱伝導率の高い部分が早く冷え、熱伝導率の低い部位はゆっくり冷える。すなわち、滅菌終了時に80℃程度であった場合、コネクタ部8が最初に常温(20〜25℃)に戻り、次に操作部6が常温に戻る。そして、最後に接続部可撓管7および挿入部可撓管2が常温に戻る。このように、熱伝導率が小さい部位(接続部可撓管7および挿入部可撓管2)は、常温に戻るまでにより長い時間を必要とする。
【0057】
さて、以上のように説明した内視鏡1は、温度の相対的な大小を色の変化によって表示する表示部5を有している。
【0058】
本実施形態では、表示部5は挿入部可撓管2に設けられている。これは、次の2つの理由による。すなわち、熱伝導率が低い部分は冷却されにくい部分であるので、挿入部可撓管2の温度が十分に下がっていれば、他の部位もそれ以上に冷却されていると推定でき、内視鏡1の主要な各部位の温度状態を把握できるからである。また、挿入部可撓管2は生体内に挿入される部位であるので、挿入部可撓管2の温度が十分に下がっていれば、患者に対して安全に使用できることがわかるからである。
【0059】
挿入部可撓管2は、通常、その全長にわたって熱伝導率が略等しいので、オートクレーブ滅菌後、長手方向の各部は同じ割合で温度が低下することが想定される。そのため、表示部5は、挿入部可撓管2の全長のいずれの部分に設けてもよく、この表示部5での温度表示は、挿入部可撓管2の全体の温度を代表して表示することとなる。本実施形態では、図2に示すように、表示部5は、湾曲部21の先端部211の外周に全周にわたって環状に設けられている。このように、表示部5が先端部211に設けられているのは、先端部211は最初に生体内に挿入される部分であるので、先端部211の温度が十分に下がっていれば、その後に挿入される挿入部可撓管2の中間部や基端部も同様であり、患者に対して安全に使用できることがわかるからである。
【0060】
表示部5は、内視鏡1の温度変化に対し色彩が変化する示温材料部51と、該示温材料部51を保護する保護層52とを有している。
【0061】
示温材料部51は、先端部211の外皮22の凹部221に設けられている。そして、図2に示すように、示温材料部51は、その外周面と、外皮22の外周面とが連続面となるように形成されている。これにより、先端部211の外径が均一となるので、生体組織などを必要以上に傷つけることがなく、患者(被検査者)に対する負担が少ない。
【0062】
示温材料部51は、例えば、温度の上昇・下降に対して可逆性を有する示温材料を用いることができる。内視鏡1は、洗浄、消毒、滅菌などの処理に複数回繰り返し使用されることが多いので、前述したように、示温材料部51が温度の上昇・下降に対して可逆性を有することにより、内視鏡1の洗浄、消毒、滅菌などの処理の度に、それに応じた変色をするので、それに応じた温度を示すことができる。
【0063】
このような示温材料は、温度変化によってその色彩が可逆的に変化する材料であれば特に限定されないが、例えば、テトラハロゲノ錯体、エチレンジアミン錯体誘導体、含窒素配位子錯体、縮合芳香環置換エチレン誘導体、コレステリック液晶またはメタモカラーなどの材料が挙げられる。このような材料は、温度変化に対する色彩の変化の度合いが大きく、また、色再現性、色彩の安定性にも優れるものであるので、術者は明確かつ確実に色彩を把握することができる。
【0064】
上記材料の具体例としては、テトラハロゲノ錯体として、例えば、[(i−Pr)NH[CuCl]、[(Et)NH[CuCl]、[(PhC)MeNH[CuCl]、[HN(CHCHNH[CuCl]Cl、[HN(CHCHNH[CuBr]Brなどのテトラハロゲノ銅錯体、[(Et)NH][NiCl]、[(Me)NH][NiCl]、[(PhCl)MeNH[NiCl]、[(Et)NH[NiCl]、[(Me)NH[NiCl]、[(i−Pr)NH[NiCl]、[(n−Pr)NH[NiCl]、[EtNH[NiCl]、[MeNH[NiCl]などの[RNH4−n[NiCl](Rはアルキル基を示し、nは1〜3を示す。)で表されるテトラハロゲノニッケル錯体、Ag[HgI]、Cu[HgI]、Pb[HgI]、Hg[HgI]、Tl[HgI]などのM[HgI]で表されるテトラハロゲノ水銀錯体などが挙げられる。
【0065】
エチレンジアミン錯体誘導体として、例えば、[NiL(1,2−butanediamine)]Cl、[NiL(1,2−butanediamine)]Br、[NiL(dmbn)](NO、[NiL(phenen)](NO、[NiL(dl−2,3−butanediamine)]Cl、[NiL(dl−2,3−butanediamine)]Br、[NiL(dl−stien)]Cl、[NiL(dl−stien)]Br、[NiL(dl−stien)](NO、[NiL(dl−chxn)]Cl、[NiL(dl−chxn)]Br、[Ni(iso−butanediamine)]Cl、[Ni(m−2,3−butanediamine)](NO、[NiL(m−chxn)](NO(LはHO、dmbnは3,3−dimethyl−1,2−butanediamine、phenenは1−phenyl−1,2−ethanediamine、dl-stienはdl-1,2−diphenyl−1,2−ethanediamine、chxnは1,2−cyclohexanediamineを示す。)などのC−置換エチレンジアミン類ニッケル錯体、[CuL](ClO、[CuL](BF、[CuL](NO、[NiL](ClO、[NiL](BF(LはNN−ジエチルエチレンジアミンを示す。)などのNN−ジエチルエチレンジアミン錯体などが挙げられる。
【0066】
含窒素配位子錯体として、例えば、[CuX(NO2−n(NH](Xはハロゲン原子、nは1〜2を示す。)で表される錯体、[Ni(trans−2−(2’−quinolyl)−methylene−3−quinuclidinone)Clまたは[Ni(bis−(3,5−dimethylpyrazolyl)methane)Clで表される錯体、[CoI(daco)]I・EtOH、[Cu(daco)](NO(dacoは1,4−ジアザシクロオクタンを示す。)などで表される1,4−ジアザシクロオクタン錯体などが挙げられる。
【0067】
縮合芳香環置換エチレン誘導体として、例えば、ジ−α,β−ナフトイソスピロピラン、ベンゾ−β−ナフトイソスピロピラン、3−アルキル−ジ−β−ナフトスピロピランなどのスピロピラン化合物、ビアントロン、ジキサンチレン、キサンチリジェンアンスロンなどが挙げられる。
【0068】
コレステリック液晶としては、例えば、ジコレステリル−10,12−ドコサジインジオネートなどのコレステリンの誘導体などが挙げられる。
【0069】
メタモカラーは、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、極性有機化合物とを含む材料である。
【0070】
ここで、電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、3,6−ジメトキシフルオラン(黄)、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン(橙)、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン(朱)、3−ジエチルアミノベンツフルオラン(桃)、ローダミンBラクタム(赤)、クリスタルバイオレットラクトン(青)、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン(緑)、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(黒)などが挙げられる。
【0071】
電子受容性化合物としては、没食子酸プロピルエステルなどが挙げられる。
極性有機化合物としては、炭素数1〜20のアルコール、エステル、ケトン、エーテル、チオエーテル、酸アミドなどの化合物が挙げられる。
【0072】
これら電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、極性有機化合物とは、それぞれ2種以上の化合物を用いることができる。また、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、極性有機化合物とのそれぞれの化合物を任意に組み合わせることで、変色温度を任意に設定することができる。
【0073】
例えば、電子供与性呈色性有機化合物を2種以上用いると、混色を得ることができる。また、極性有機化合物の種類を変えれば、異なった変色温度を得ることができる。
以上のような示温材料は、変色温度や色を考慮して、最適な材料が選択される。
【0074】
ところで、内視鏡1の消毒、滅菌等の処理(オートクレーブ処理)は約120℃で行われ、当該処理終了後、処理装置の表示温度は約80℃になっている。本発明では、内視鏡1の各部の温度がこのような温度からどの程度の温度にまで下降したのか、その温度を視認できるように構成されている。
【0075】
そのような視認できる温度としては、20〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。
【0076】
20〜50℃を認識できれば、内視鏡1が安全な温度にまで下がっているため、術者が当該内視鏡1を安心して把持できる。したがって、術者に対する安全性が高い。
【0077】
20〜40℃を認識できれば、内視鏡1を使用できる安全な温度にまで下がっているため、内視鏡1を患者に対して使用することができる。したがって、患者に対する安全性が高い。
【0078】
このような温度に用いられる示温材料としては、前述した温度範囲で変色する材料であれば特に限定されないが、前述した示温材料のうち、テトラハロゲノ銅錯体の[(Et)NH[CuCl]、テトラハロゲノ水銀錯体のAg[HgI]、C−置換エチレンジアミン類ニッケル錯体の[NiL(dmbn)](NO、NN−ジエチレンジアミン錯体の[CuL](ClO、含窒素配位子錯体の[Cu(NO(NH]が好ましい。これにより、内視鏡1の降温時に50℃以下で示温材料部51が変色するため、術者等は安心して内視鏡1を把持できる。また、温度変化に対する色彩の変化の度合いがより大きく、色再現性、色彩安定性にも優れるので、術者はより明確かつ確実に色彩を把握することができる。
【0079】
これらの材料の中でも、[CuL](ClO(降温時、35℃で青紫色から赤色)、[Cu(NO(NH](降温時、28℃で緑色から紫色)がより好ましい。これにより、内視鏡1の降温時に40℃以下で変色するため、患者に対して安全に内視鏡1を使用することができる。また、温度変化に対する色彩の変化(青紫色から赤色、緑色から紫色)の度合いがより大きいため、より明確に先端部211の温度を把握できる。さらに、色再現性、色彩安定性に特に優れるので、術者に対する信頼性が高い。
【0080】
前述した示温材料は、1種類の材料でその色彩が2段階に変化(2色に変化)するものでもよいが、3段階以上に変化するものが好ましい。これにより、温度の大小の把握がし易く、また、広い温度範囲で内視鏡1の各部の温度を把握することができる。
【0081】
なお、示温材料の色彩が変化する点(温度)を変色点(変色温度)という。例えば、示温材料の色彩が2段階に変化する場合、変色点は1つである。また、示温材料の色彩が3段階に変化する場合、変色点は2つである。
【0082】
また、前述した示温材料は、2種以上の示温材料を組み合わせて(混合して)用いることができる。示温材料はその種類によって変色温度、変色する色が異なるので、所望の温度で所望の色に変色する任意の示温材料部51を作成することができる。
【0083】
この場合も、示温材料部51は3段階以上の色彩に変化するように構成することができる。これにより、前記と同様に、温度の大小の把握をより明確に行うことができ、また、より広い温度範囲で内視鏡1の各部の温度を把握することができる。
【0084】
混合される示温材料としては、特に限定されないが、変色温度、混色を考慮して適宜設定される。例えば、前述した示温材料のうち、[(Et)NH[CuCl]と[CuL](ClO、[NiL(dmbn)](NOと[CuL](ClO、[(Et)NH[CuCl]と[Cu(NO(NH]、[NiL(dmbn)](NOと[Cu(NO(NH]の組合せが好ましい。
【0085】
このような示温材料の組合せの具体的な変色温度、混色は以下のとおりである。
[(Et)NH[CuCl]と[CuL](ClOを混合した場合、常温から昇温していくと、表示部5は35℃で赤色から青紫色に変化し、43℃で青紫色から黄色に変化する。そして、オートクレーブ処理終了後降温すると、逆に43℃で黄色から青紫色に変化し、35℃で青紫色から赤色に変化する。
【0086】
また、[NiL(dmbn)](NOと[CuL](ClOを混合した場合、常温から昇温していくと、表示部5は35℃で赤色から青紫色に変化し、45℃で青紫色から黄色に変化する。そして、オートクレーブ処理終了後降温すると、逆に45℃で黄色から青紫色に変化し、35℃で青紫色から赤色に変化する。
【0087】
また、[(Et)NH[CuCl]と[Cu(NO(NH]を混合した場合、常温から昇温していくと、表示部5は31〜32℃で紫色から緑色に変化し、43℃で緑色から黄色に変化する。そして、オートクレーブ処理終了後降温すると、43℃で黄色から緑色に変化し、24〜26℃で緑色から紫色に変化する。
【0088】
また、[NiL(dmbn)](NOと[Cu(NO(NH]を混合した場合、常温から昇温していくと、表示部5は31〜32℃で紫色から緑紫色に変化し、45℃で緑紫色から黄色に変化する。そして、オートクレーブ処理終了後降温すると、45℃で黄色から緑紫色に変化し、24〜26℃で緑紫色から紫色に変化する。
【0089】
このような示温材料の組合せにより、降温時において、40〜50℃で1回、40℃以下で1回の合計2回変色するので、内視鏡1を把持できる時期、内視鏡1を使用できる時期を、より明確、確実に把握することができる。
【0090】
以上のような示温材料部51を保護する保護層52は、先端部211の外皮22の外周面と、示温材料部51の外周面とに、それらを覆うように全周にわたって設けられている。
【0091】
これにより、示温材料部51が水蒸気、温度、生体組織などから保護されるので、内視鏡1の洗浄、消毒、滅菌等の処理を繰り返し行っても、示温材料部51が損傷、剥離することがない。また、内視鏡1を繰り返し使用し、湾曲部21により表示部5が湾曲しても、示温材料部51が損傷、剥離することがない。
【0092】
保護層52の構成材料としては、例えば、フィルムなどの各種樹脂材料や熱によって収縮するチューブなどが挙げられる。これらのうち、透明な材料が好ましい。これにより、保護層52に覆われている示温材料部51を外部から視認できるので、示温材料部51の色の変化を確実に把握することができる。
【0093】
このように、内視鏡1の温度を把握する方法としては、他に電気的な温度センサを内視鏡1に設ける方法もある。しかし、このような電気センサを、例えば挿入部可撓管2に設けると、センサ自体やリード線などの影響で挿入部可撓管2の外径が増大し、内視鏡1を使用できない場合がある。これに対して、本発明の表示部5は塗膜により構成されているため、挿入部可撓管2の外径や大きさをほとんど変えることがない。
【0094】
以上説明した表示部5は、例えば、次のようにして作成することができる。
図2に示す表示部5は、先端部211の外皮22に凹部221を有する内視鏡1に、示温材料部51を形成する工程[A1]と、先端部211の外皮22および示温材料部51上に保護層52を形成する工程[A2]とを有している。
【0095】
[A1]示温材料部51形成工程
まず、先端部211の外皮22に凹部221を有する内視鏡1に示温材料部51を形成する。
【0096】
これは、例えば、示温材料の塗布液を調製し、ディップコート法、ロールコート法、はけ塗り、インクジェット法、スクリーン法、真空蒸着法などの各種塗布法等により塗膜を形成することができる。
【0097】
このように塗布法を用いることで、連続的に塗膜を形成でき、塗布の回数や塗布量を調整することにより、示温材料部51の領域や塗膜の厚さを自由に設定することができるという利点がある。
【0098】
[A2]保護層52形成工程
次に、先端部221の外皮22および示温材料部51上に、保護層52を形成する。
【0099】
これは、例えば、前述した各種樹脂材料を、ディップコート法、ロールコート法、はけ塗り、インクジェット法、スクリーン法、真空蒸着法などの塗布法等、熱収縮チューブを先端部211の外皮22および示温材料部51を覆うようにはめ込み、加熱して当該チューブを収縮させる方法等により行うことができる。
【0100】
保護層52を塗布法で形成することにより、連続的に塗膜を形成でき、塗布の回数や塗布量を調整することにより、保護層52の領域や塗膜の厚さを自由に設定することができるという利点がある。
【0101】
なお、前述した温度センサの場合には、リード線や電源などが必要となるため、配線や構成、製造方法が複雑になる。これに対して、本発明では、表示部5を塗布により作成できるので、簡易な構成で、簡単に、薄く表示部5を設けることができる。
【0102】
以上説明した内視鏡1は、挿入部可撓管2の先端部211に表示部5を設けていたが、表示部5は挿入部可撓管2のいずれの部分に設けられていてもよい。例えば、表示部5は、先端部211の代わりに、挿入部可撓管2の長手方向基端部や中間部にあってもよい。 また、表示部5は、挿入部可撓管2に複数箇所、すなわち、先端部211の他に挿入部可撓管2の長手方向基端部や中間部にあってもよい。
【0103】
次に、内視鏡1の消毒、滅菌処理、例えば、オートクレーブ処理を行ったときの表示部5の作用(動作)について説明する。
【0104】
本発明の内視鏡1を患者に対して使用した後、消毒、滅菌処理を行うために内視鏡1をオートクレーブ装置に入れる。そして、120℃、2気圧で20分処理を施す。このとき、表示部5の色は示温材料の種類によって種々の色に変化している。
【0105】
例えば、前述した好ましい材料として[(Et)NH[CuCl]を用いた場合は黄色、Ag[HgI]を用いた場合はオレンジ色、[NiL(dmbn)](NOを用いた場合は黄色、[CuL](ClOを用いた場合は青紫色、[Cu(NO(NH]を用いた場合は緑色に、表示部5が変化している。
【0106】
消毒、滅菌処理が終了した後、内視鏡1をオートクレーブ装置から取り出し、自然放冷により内視鏡1の温度を下げる。
【0107】
このとき、示温材料として、例えば、[(Et)NH[CuCl]を用いた場合、先端部211の温度が43℃になった時点で、表示部5は黄色から緑色に変化する。
【0108】
また、示温材料として、例えば、Ag[HgI]を用いた場合、先端部211の温度が30℃になった時点で、表示部5はオレンジ色から黄色に変化する。
【0109】
また、示温材料として、例えば、[NiL(dmbn)](NOを用いた場合、先端部211の温度が45℃になった時点で、表示部5は黄色から紫色に変化する。
【0110】
また、示温材料として、例えば、[CuL](ClOを用いた場合、先端部211の温度が35℃になった時点で、表示部5は青紫色から赤色に変化する。
【0111】
また、示温材料として、例えば、[Cu(NO(NH]を用いた場合、先端部211の温度が24〜26℃で、表示部5は緑色から紫色に変化する。
【0112】
このように、表示部5の色が変化すれば、術者はその時点での先端部211の温度は例えば上記のような温度であると把握することができる。そのため、術者は、安心して先端部211を患者の体腔内に挿入できると認識することができる。
【0113】
そして、前述したように、先端部211の熱伝導率は操作部6やコネクタ部8の熱伝導率よりも低い(より冷え易い)ため、術者が先端部211を患者の体腔内に挿入できると把握したときは、その他の部分(操作部6、コネクタ部8)も当然に使用、把持できる温度にまで低下したと推定できる。これにより、術者は、内視鏡1を把持して検査の準備を始めることができ、操作部6を操作して検査を開始することができる。
【0114】
そして、患者への使用が終了した後は、再度、洗浄、消毒、滅菌処理が施され、上記のような動作によって、繰り返し内視鏡1が使用される。
【0115】
<第2実施形態>
図3は、本発明の内視鏡の第2実施形態を示す平面図である。なお、以下では、図3中の上端を「基端」、下端を「先端」という。
【0116】
以下、この図を参照して本発明の内視鏡の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0117】
本実施形態は、先端部211の他に、操作部6にも表示部5が設けられている点で第1実施形態と相違する。
【0118】
すなわち、図3に示すように、操作部6の第1操作ノブ61、第2操作ノブ62、第1ロックレバー63および第2ロックレバー64が形成される面側であって、それらの先端側に表示部5が設けられている。
【0119】
このような構成により、操作部6と先端部211の2ヶ所の温度、例えば、操作部6を把持できる温度と、先端部211を患者に挿入できる温度とを各々把握することができるため、術者および患者に対する安全性が極めて高い。
【0120】
また、前述したように、操作部6は先端部211よりも熱伝導率が高いため、操作部6の温度が早く常温に戻る。そのため、操作部6と先端部211のそれぞれの温度が常温に戻るのを待たなくとも、操作部6をいち早く把持し、検査の準備を進めておくことができる。
【0121】
ここで、操作部6と先端部211とのそれぞれの表示部5に用いられる示温材料は、同一の材料を用いても、それぞれ異なる材料を用いてもよい。以下、同一の材料と異なる材料を用いた場合について詳細に説明する。
【0122】
(1)同一の示温材料を用いた場合
操作部6と先端部211とのそれぞれの表示部5に同一の示温材料を用いた場合、変色点の数にかかわらず、前述したとおりの効果、すなわち、操作部6をいち早く把持し、検査の準備を進めておくことができる。
【0123】
(2)異なる示温材料を用いた場合
(2-1)変色点を1つ有する示温材料を用いた場合
操作部6の表示部5と先端部211の表示部5とに異なる示温材料を用いた場合、それぞれの表示部5には、変色点を1つ有し、変色点が互いに異なる示温材料を用いることができる。変色点が互いに異なる示温材料を用いることにより、それぞれの表示部5において、互いに異なる変色点で色彩が変化するので、より広い温度範囲で内視鏡1の各部の温度を把握することができる。
【0124】
変色点が互いに異なる示温材料を用いる場合、先端部211の表示部5の変色点に比べて操作部6の表示部5の変色点が高いことが好ましい。これにより、内視鏡1の降温時において、先端部211の表示部5よりも早く操作部6の表示部5の色彩が変化するので、先端部211より早く操作部6の温度を把握することがきる。
【0125】
このような操作部6の表示部5と先端部211の表示部5とに用いられる示温材料としては、例えば、次のような示温材料の組合せが挙げられる。
【0126】
(a)[(Et)NH[CuCl]と[CuL](ClOとの組合せ
[(Et)NH[CuCl]を操作部6の表示部5に、[CuL](ClOを先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は43℃(変色点)で黄色から緑色に、先端部211の表示部5は35℃で青紫色から赤色に変化する。
【0127】
(b)[NiL(dmbn)](NOと[CuL](ClOとの組合せ
[NiL(dmbn)](NOを操作部6の表示部5に、[CuL](ClOを先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は45℃で黄色から紫色に、先端部211の表示部5は35℃で青紫色から赤色に変化する。
【0128】
(c)[(Et)NH[CuCl]と[Cu(NO(NH]との組合せ
[(Et)NH[CuCl]を操作部6の表示部5に、[Cu(NO(NH]を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は43℃で黄色から緑色に、先端部211の表示部5は24〜26℃で緑色から紫色に変化する。
【0129】
(d)[NiL(dmbn)](NOと[Cu(NO(NH]との組合せ
[NiL(dmbn)](NOを操作部6の表示部5に、[Cu(NO(NH]を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は45℃で黄色から紫色に、先端部211の表示部5は24〜26℃で緑色から紫色に変化する。
【0130】
これらの組合せのうち、上記(b)の組合せが好ましい。この組合せにより、それぞれの表示部5の変色点における色彩の変化を黄色から紫色、青紫色から赤色と明確に識別できるため、操作部6および先端部211の温度を確実に把握することができる。
【0131】
(2-2)変色点を2つ有する示温材料を少なくとも1つ用いた場合
前述した変色点を1つ有する場合において、操作部6の表示部5と先端部211の表示部5との少なくとも一方に、変色点が2つある示温材料を用いてもよい。
【0132】
この場合、それぞれの表示部5には、変色点が互いに異なる示温材料を用いることができる。これにより、それぞれの表示部5において、互いに異なる変色点で色彩が変化するので、より一層広い温度範囲で内視鏡1の各部の温度を把握できる。また、それぞれの変色点が異なるため、表示する温度範囲が拡大するとともに、当該範囲内における温度表示が細分化され、内視鏡1の各部のより正確な温度を把握することができる。
【0133】
変色点が互いに異なる示温材料を表示部5に用いる場合、先端部211の表示部5に比べて操作部6の表示部5の変色点(最も高温での変色点)が高いことが好ましい。これにより、内視鏡1の降温時において、先端部211の表示部5よりも早く操作部6の表示部5の色彩が変化するので、先端部211より早く操作部6の温度を把握することがきる。
【0134】
このような操作部6の表示部5と先端部211の表示部5とに用いられる示温材料としては、例えば、次のような示温材料の組合せが挙げられる。
【0135】
(a)変色点を1つ有する示温材料と変色点を2つ有する示温材料との組合せ
例えば、50℃に変色点を有する示温材料を操作部6の表示部5に、40℃と25℃とに変色点を有する示温材料を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は50℃で色彩が変化し、先端部211の表示部5は40℃と25℃とでそれぞれ色彩が変化する。
【0136】
また、例えば、50℃と30℃とに変色点を有する示温材料を操作部6の表示部5に、40℃に変色点を有する示温材料を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は50℃と30とでそれぞれ色彩が変化し、先端部211の表示部5は40℃で色彩が変化する。
【0137】
(b)変色点を2つ有する示温材料同士の組合せ
50℃と30℃とに変色点を有する示温材料を操作部6の表示部5に、40℃(操作部6の変色点である50℃と30℃との範囲内の温度)と25℃とに変色点を有する示温材料を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は50℃と30とでそれぞれ色彩が変化し、先端部211の表示部5は40℃と25℃とでそれぞれ色彩が変化する。
【0138】
(c)変色点を1つ有する示温材料と当該示温材料を2種類混合した材料との組合せ
例えば、50℃に変色点を有する示温材料を操作部6の表示部5に、40℃に変色点を有する示温材料と25℃に変色点を有する示温材料とを混合した材料を先端部211の表示部5に用いた場合、降温時において、操作部6の表示部5は50℃で色彩が変化し、先端部211の表示部5は40℃と25℃とでそれぞれ色彩が変化する。
【0139】
これらの組合せのうち、上記(b)の組合せが好ましい。この組合せにより、50℃、40℃、30℃、25℃と4回色彩が変化するため、変色点を2つ有する示温材料で、実質的に変色点を4つ有する示温材料を用いたのと同等の色彩変化を認識することができる。
【0140】
以上のように、操作部6の表示部5と先端部211の表示部5との少なくとも一方に、変色点が2つある示温材料を用いると、色彩が3段階以上に変化するので、それに対応する温度変化を経時的に把握することができる。
【0141】
<第3実施形態>
図4は、本発明のトレイの実施形態を示す平面図、図5は、図4中のA−A線断面図である。なお、以下では、図4中の上端を「基端」、下端を「先端」という。
【0142】
以下、この図を参照して本発明のトレイの実施形態について説明するが、前述した各実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0143】
本実施形態は、内視鏡1(操作部6および/または挿入部可撓管2)が表示部5を備えていない点、内視鏡1がトレイ9に収容されている点で、前述した各実施形態と相違する。
【0144】
図4に示すトレイ9は、内視鏡1を収容するトレイ本体91と、内視鏡1を支持する支持部92とを備えている。
【0145】
トレイ本体91には、内視鏡の各部(挿入部可撓管2、操作部6、接続部可撓管7、コネクタ部8)を支持する複数の支持部92が設けられている。そして、その支持部92は、内視鏡1をトレイ本体91に収容したときに、各部に対応する位置に所定の間隔を置いて設けられている。本実施形態では、各部に対応する位置に2つずつ、合計8個の支持部92が設けられている。具体的には、内視鏡1をトレイ本体91に収容したときに、挿入部可撓管2の湾曲部21の先端部211を支持する位置に支持部92aが、可撓管部20の基端部を支持する位置に支持部92bが、操作部6の先端部を支持する位置に支持部92cが、操作部6の基端部を支持する位置に支持部92dが、接続部可撓管7の操作部6側の端部を支持する位置に支持部92eが、接続部可撓管7のコネクタ部8側の端部を支持する位置に支持部92fが、コネクタ部8の基端部を支持する位置に支持部92gが、コネクタ部8の先端部を支持する位置に支持部92hが設けられている。
【0146】
支持部92の形状は、内視鏡1を支持できれば特に限定されないが、例えば、その縦断面形状がY字状、U字状、T字状等であるものが挙げられる。本実施形態では、図5に示すように、支持部92の縦断面形状はU字状の形状をなしている。
【0147】
これにより、支持部92の傾斜面921の略全面が支持部92によって支持される内視鏡1の各部の表面と密着(接触)するため、内視鏡1の各部を確実に支持、固定することができる。また、トレイ9の運搬時における内視鏡1のずれ、支持部92からの脱落などを防ぐことができる。
【0148】
トレイ本体91の構成材料は、特に限定されないが、オートクレーブの条件(例えば、120℃、2気圧)に耐え得るような材料が好ましい。例えば、ステンレスなどの金属、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン樹脂、ポリサルフォン、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、などの耐熱性を有する各種樹脂材料、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。
【0149】
さて、本実施形態では、このようなトレイ9の支持部92のうち、支持部92aと、支持部92cとに表示部5が設けられている。
【0150】
なお、支持部92aと支持部92cは同じ構成であるため、以下、支持部92aを代表して説明する。
【0151】
図5に示すように、本実施形態では、支持部92aの傾斜面921の略全面に示温材料部51が形成されている。そして、示温材料部51を覆うように保護層52が形成されている。このように、支持部92に表示部5が設けられていることにより、内視鏡1の構成を変更することなく、内視鏡1の各部の温度をより簡単に把握することができる。
なお、支持部92cも支持部92aと同様の作用、効果を有する。
【0152】
また、支持部92aおよび92cは、それぞれ内視鏡1における熱伝導率が低い部分と熱伝導率が高い部分に相当する。そのため、支持部92aおよび92cのそれぞれの機能、メリットは第2実施形態と同様である。
【0153】
支持部92の構成材料は、特に限定されないが、前記トレイ本体91の構成材料と同様の材料が挙げられる。このうち、ガラスや透明な樹脂材料など透明な材料であることが好ましい。これにより、表示部5の全体を外部から明確に視認することができるため、表示部5の色をより正確に、容易に識別することができる。
【0154】
なお、表示部5は、支持部92aおよび92cの代わりに、92b、92d〜92hのいずれの部分に設けられていてもよく、支持部92aおよび92cの他に、92b、92d〜92hのいずれの部分に設けられていてもよい。
【0155】
また、2つの表示部5における変色点および変色点の数は、第2実施形態と同様である。
【0156】
以上のように、内視鏡1がトレイ9に収容されていることにより、内視鏡1をトレイ9に収容したままで滅菌処理やオートクレーブからの取り出しを行えるため、滅菌後の内視鏡1を把持することによる内視鏡1の汚染や内視鏡1の落下を防ぐことができ、安全性が高い。
【0157】
<第4実施形態>
図6は、本発明のトレイの実施形態を示す平面図、図7は、図6中のB−B線断面図である。なお、以下では、図6中の上端を「基端」、下端を「先端」という。
【0158】
以下、この図を参照して本発明のトレイの実施形態について、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0159】
本実施形態は、トレイ9の支持部92aの代わりに収容部93を備えている点以外は、第3実施形態と同様である。
【0160】
すなわち、図6に示すように、支持部92aの位置に、先端部211を収容する収容部93が設けられている。
【0161】
収容部93は、先端部211を支持する収容部本体931と、先端部211を収容する側孔部932が設けられている。
【0162】
側孔部932は、収容部本体931の側面に形成されている。本実施形態では、収容部本体931の基端部側面に形成されている。そして、収容部本体931を貫通しないように、収容部本体931の基端部側面の反対側の面(先端部側面)側まで側孔が延在している。
【0163】
側孔部932の形状は、特に限定されないが、その縦断面形状は、例えば、円形状、方形状、半楕円形状などが挙げられる。本実施形態では、側孔部932の縦断面形状は、先端部211と対応した形状、すなわち、円形状に形成されている。
【0164】
なお、側孔部932は、その内周面に表示部5を備え、先端部211を収容するため、その縦断面の大きさは、先端部211の断面の大きさよりも大きく設定される。これにより、先端部211の着脱が容易になる。
【0165】
さて、本実施形態では、図7に示すように、側孔部932の内周面の全面にわたって示温材料部51が形成されている。そして、示温材料部51を覆うように保護層52が形成されている。
【0166】
これにより、先端部211の外周の全周が表示部5と密着するため、表示部5と先端部211との接触面積が大きくなり、第3実施形態の場合よりも熱伝導性がよく、先端部211の温度をより正確に把握することができる。
【0167】
また、収容部93および支持部92cは、それぞれ内視鏡1における熱伝導率が低い部分と熱伝導率が高い部分に相当する。そのため、収容部93および支持部92cのそれぞれの機能、メリットは、第2実施形態の支持部92aおよび支持部92cのそれぞれと同様である。
【0168】
収容部本体931の構成材料は、特に限定されないが、前述したトレイ本体91の構成材料と同様の材料が挙げられる。このうち、ガラスや透明な樹脂材料など透明な材料であることが好ましい。これにより、表示部5の全体を外部から正確に視認することができるため、表示部5の色をより正確に、容易に識別することができる。
【0169】
また、2つの表示部5における変色点および変色点の数は、第2実施形態と同様である。
【0170】
なお、表示部5は、収容部93と、支持部92bまたは92d〜92hのいずれの部分とに設けられていてもよく、また、収容部93と、支持部92cと、支持部92bまたは92d〜92hのいずれの部分とに設けられていてもよい。
【0171】
以上、本発明の内視鏡およびトレイを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0172】
また、本発明の内視鏡およびトレイは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。例えば、第1実施形態と第3実施形態との構成を組み合わせたもの、第2実施形態と第4実施形態との構成を組み合わせたもの等であってもよい。
【0173】
また、示温材料部は、湾曲部の先端部の外皮の外周に全周にわたって形成されていてもよい。
【0174】
また、表示部は、熱伝導率が異なる少なくとも2ヶ所にそれぞれ設けられていればよいため、操作部と接続部可撓管や、挿入部可撓管、操作部、接続部可撓管およびコネクタ部の全て、内視鏡の全表面に設けられていてもよい。
また、表示部は、トレイの全ての支持部に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の内視鏡の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す内視鏡が備える湾曲部先端部の構成を示す拡大縦断面図である。
【図3】本発明の内視鏡の第2実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明のトレイに内視鏡が収容された状態を示す平面図である。
【図5】図4中のA−A線断面図である。
【図6】本発明のトレイに内視鏡が収容された状態を示す平面図である。
【図7】図6中のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0176】
1 内視鏡
2 挿入部可撓管
20 可撓管部
21 湾曲部
211 先端部
212 孔部
22 外皮
221 凹部
3 撮像手段
31 撮像素子
311 信号線
32 対物レンズ系
33 孔部
4 照明手段
41 光ファイバー束
42 平凹レンズ
421 凹面
45 口金
5 表示部
51 示温材料部
52 保護層
6 操作部
61 第1操作ノブ
62 第2操作ノブ
63 第1ロックレバー
64 第2ロックレバー
7 接続部可撓管
8 コネクタ部
81 ライトガイドコネクタ
82 スコープコネクタ
9 トレイ
91 トレイ本体
92 支持部
921 傾斜面
93 収容部
931 収容部本体
932 側孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、前記操作部よりも熱伝導率が低い部分に設けられていることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、前記挿入部可撓管に設けられていることを特徴とする内視鏡。
【請求項3】
体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡であって、
温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が、熱伝導率が異なる少なくとも2ヶ所にそれぞれ設けられていることを特徴とする内視鏡。
【請求項4】
前記表示部は、前記挿入部可撓管と、前記操作部とに設けられている請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記各表示部は、色彩が変化する少なくとも1つの変色点(温度)を有し、前記表示部同士の変色点が異なっている請求項3または4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記表示部は、前記挿入部可撓管の先端部に設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項7】
前記表示部は、温度変化によって色彩が3段階以上に変化する請求項1ないし6のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項8】
前記表示部は、透明な保護層で覆われている請求項1ないし7のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項9】
前記表示部は、塗布法により形成される請求項1ないし8のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項10】
前記示温材料は、テトラハロゲノ錯体、エチレンジアミン錯体誘導体、含窒素配位子錯体、縮合芳香環置換エチレン誘導体、コレステリック液晶またはメタモカラーからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1ないし9のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項11】
体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡を収納するトレイであって、
前記内視鏡を支持するための支持部を有し、
前記支持部の前記内視鏡と接触する部位に、温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が設けられていることを特徴とするトレイ。
【請求項12】
体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管に接続された操作部と、該操作部に接続されたコネクタ部とを備える内視鏡を収納するトレイであって、
前記内視鏡を支持するための支持部と、
前記内視鏡の前記挿入部可撓管の先端部を収納する収納部とを有し、
前記収納部に、温度の上昇・下降に対して可逆性を有し、温度変化に対し色彩が変化する示温材料で構成された表示部が設けられていることを特徴とするトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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