説明

内視鏡のリーク箇所検出方法

【課題】微小なリークでも容易に検出することができ、しかもそのリーク箇所を特定して確実な修理に結び付けることができる内視鏡のリーク箇所検出方法を提供すること。
【解決手段】ヘリウムリークディテクタ4を、外壁部が全て水密に構成された内視鏡1の内部に連通する状態に接続し、ヘリウムガスボンベ8に連通接続されたヘリウムガス吹き付けプローブ6により、位置を移動させながら内視鏡1の外面にヘリウムガスを吹き付けて、ヘリウムリークディテクタ4でヘリウムガスを検出し、又は、外壁部が全て水密に構成された内視鏡1の内部に連通する連通部3から内視鏡1の内部にヘリウムガスを封入し、ヘリウムリークディテクタ4に連通接続されたヘリウムガス吸い込みプローブ16の被検ガス吸い込み口16cを、内視鏡1の外面に沿って位置を移動させて、ヘリウムリークディテクタ4でヘリウムガスを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡のリーク箇所検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は一般に、使用後に行われる洗浄、消毒や滅菌処理等に耐えられるように、外壁部が全て水密に構成されている。ただし、滅菌処理等の際には、内視鏡が置かれた環境に合わせて内視鏡内の圧力を変える必要が生じるので、必要に応じて内視鏡の内部に連通させることができる連通部が外壁部のどこかに設けられ、その連通部は通常は逆止弁又はコック等で閉じられている。
【0003】
そのような内視鏡の外壁部の例えばゴムチューブで外装された部分等には、種々の要因によりピンホール等ができ易い。そして、外壁部にピンホール等ができた状態で洗浄、消毒や滅菌処理等を行うと、内視鏡内に水や薬液が浸入するいわゆる水漏れ事故が発生して、重修理が必要な事態になってしまう。
【0004】
そのような事故を未然に防止するため、内視鏡全体を水中に浸漬して泡の発生を観察することで内視鏡にピンホール等ができているかどうかを検出するいわゆる水没法が行われている。
【0005】
しかし、そのような水没法では微小な気泡の見逃しのおそれがあって、必ずしも確実なリーク検出を行えない。また、高温高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ)が行われると、水没法では検出できないような微細な孔からでも蒸気が浸入してしまう場合がある。
【0006】
そこで従来は、水没法に代えて、エアーポンプで内視鏡内に加圧空気を送り込んだ後に内視鏡内の圧力を計測して、その計測値からリーク検出を行っていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3732379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された発明等のように、内視鏡内の圧力を計測してリーク検出を行うのでは、リークが検出された場合でもそのリークが内視鏡の外装全体のどの位置で発生しているのか把握することができないので、修理すべき箇所を特定することができない問題がある。
【0008】
本発明は、微小なリークでも容易に検出することができ、しかもそのリーク箇所を特定して確実な修理に結び付けることができる内視鏡のリーク箇所検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本件の第1の発明の内視鏡のリーク箇所検出方法は、被検ガス吸引手段と被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタを、外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する状態に接続し、ヘリウムガスボンベに連通接続されたヘリウムガス吹き付けプローブにより、位置を移動させながら内視鏡の外面にヘリウムガスを吹き付けて、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出することにより、内視鏡の外壁部におけるリーク箇所を特定することができるようにしたものである。
【0010】
また、本件の第2の発明の内視鏡のリーク箇所検出方法は、外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する連通部から内視鏡の内部にヘリウムガスを封入し、被検ガス吸引手段と被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタに連通接続されたヘリウムガス吸い込みプローブの被検ガス吸い込み口を、内視鏡の外面に沿って位置を移動させて、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出することにより、内視鏡の外壁部におけるリーク箇所を特定することができるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分子の小さなヘリウムガスの検出により微小なリークでも容易に検出することができ、しかも内視鏡の外壁部のリーク箇所を特定して確実な修理に結び付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
被検ガス吸引手段と被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタを、外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する状態に接続し、ヘリウムガスボンベに連通接続されたヘリウムガス吹き付けプローブにより、位置を移動させながら内視鏡の外面にヘリウムガスを吹き付けて、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出する。
【0013】
又は、外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する連通部から内視鏡の内部にヘリウムガスを封入し、被検ガス吸引手段と被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタに連通接続されたヘリウムガス吸い込みプローブの被検ガス吸い込み口を、内視鏡の外面に沿って位置を移動させて、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出する。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の内視鏡のリーク箇所検出方法を略示しており、内視鏡1は全ての部分において外壁部が水密に構成されて内部空間が一つながりに連通している。そして、例えばコネクタ部2に設けられた逆止弁付きの栓部3だけが、通常は閉じていて特定の接続口金を接続することにより開かれるようになっている。
【0015】
4は、公知のヘリウムリークディテクタであり、被検ガスを吸引するための被検ガス吸引器4aと、その被検ガス吸引器4aにより吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出管4b等を有している。
【0016】
5は、ヘリウムリークディテクタ4から延出するチューブ4cの先端に設けられた接続口金であり、この接続口金5を内視鏡1の栓部3(連通部)に接続することにより、栓部3が開いて、ヘリウムリークディテクタ4が内視鏡1内と連通する状態になる。
【0017】
6は、ヘリウムガス送出チューブ7を介してヘリウムガスボンベ8に連通接続されたヘリウムガス吹き付けプローブであり、ヘリウムガスの流路を開閉するための弁6aを操作レバー6bで任意に開閉させることができ、操作レバー6bを指で引っ張って弁6aを開いた状態すると、先端のヘリウムガス吹き付け口6cからヘリウムガスが噴出する。
【0018】
このような構成により、ヘリウムガス吹き付けプローブ6のヘリウムガス吹き付け口6cから内視鏡1の外面にヘリウムガスを吹き付けると、内視鏡1の外壁にピンホール等がない場合はヘリウムリークディテクタ4においてヘリウムガスが検出されないが、内視鏡1の外壁にピンホール等があると、そのピンホール等から内視鏡1内に侵入したヘリウムガスがヘリウムリークディテクタ4において検出され、小さなピンホール等でも検出することができる。
【0019】
したがって、ヘリウムガス吹き付けプローブ6を持ってその位置を移動させながら内視鏡1の外面に沿ってヘリウムガスを吹き付けることにより、内視鏡1の外壁部におけるリーク箇所を特定することができ、修理の必要な部位を正確に把握して、適切な修理を確実に行うことができる。
【0020】
図2は、本発明の第2の実施例の内視鏡のリーク箇所検出方法を略示しており、第1の実施例と同様の構成の内視鏡1の栓部3に接続口金5が接続され、その接続口金5には、ヘリウムガスボンベ8と吸引器9とが第1の開閉弁11と第2の開閉弁12を介して並列に接続されている。そのような構成により、内視鏡1内の空気を吸引除去してヘリウムガスに置換することができる。
【0021】
第1の実施例と同様のヘリウムリークディテクタ4には、チューブ4cを介してヘリウムガス吸い込みプローブ16が接続されている。このヘリウムガス吸い込みプローブ16は、第1の実施例のヘリウムガス吹き付けプローブ6と構成は同じであるが、指で操作レバー16bを引っ張って弁16aを開くと、先端の被検ガス吸い込み口16cからその周辺のガスが吸い込まれる点で相違している。
【0022】
このような構成により、ヘリウムガス吸い込みプローブ16の被検ガス吸い込み口16cを内視鏡1の外面に沿わせてその部分のガスを吸い込むと、内視鏡1の外壁にピンホール等がない場合はヘリウムリークディテクタ4においてヘリウムガスが検出されないが、内視鏡1の外壁にピンホール等があると、そのピンホール等を通って内視鏡1から漏れ出したヘリウムガスがヘリウムリークディテクタ4において検出され、小さなピンホール等でも検出することができる。
【0023】
したがって、ヘリウムガス吸い込みプローブ16を持って被検ガス吸い込み口16cの位置を内視鏡1の外面に沿って移動させることにより、内視鏡1の外壁部におけるリーク箇所を特定することができ、修理の必要な部位を正確に把握して、適切な修理を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡のリーク箇所検出方法の略示図である。
【図2】本発明の第2の実施例の内視鏡のリーク箇所検出方法の略示図である。
【符号の説明】
【0025】
1 内視鏡
3 栓部(連通部)
4 ヘリウムリークディテクタ
4a 被検ガス吸引器(被検ガス吸引手段)
4b ヘリウムガス検出管(ヘリウムガス検出手段)
5 接続口金
6 ヘリウムガス吹き付けプローブ
6c ヘリウムガス吹き付け口
8 ヘリウムガスボンベ
16 ヘリウムガス吸い込みプローブ
16c 被検ガス吸い込み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検ガス吸引手段と上記被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタを、外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する状態に接続し、
ヘリウムガスボンベに連通接続されたヘリウムガス吹き付けプローブにより、位置を移動させながら上記内視鏡の外面にヘリウムガスを吹き付けて、
上記ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出することにより、上記内視鏡の外壁部におけるリーク箇所を特定することができるようにしたことを特徴とする内視鏡のリーク箇所検出方法。
【請求項2】
外壁部が全て水密に構成された内視鏡の内部に連通する連通部から上記内視鏡の内部にヘリウムガスを封入し、
被検ガス吸引手段と上記被検ガス吸引手段により吸引された被検ガス中に含まれるヘリウムガスを検出するためのヘリウムガス検出手段とを有するヘリウムリークディテクタに連通接続されたヘリウムガス吸い込みプローブの被検ガス吸い込み口を、上記内視鏡の外面に沿って位置を移動させて、
上記ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスを検出することにより、上記内視鏡の外壁部におけるリーク箇所を特定することができるようにしたことを特徴とする内視鏡のリーク箇所検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−101957(P2008−101957A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283222(P2006−283222)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】