説明

内視鏡の操作弁

【課題】ピストンの進退操作が軽く行われて作動性がよく、Oリングが切れる事故が発生し難くて耐久性の優れた内視鏡の操作弁を提供すること。
【解決手段】シリンダ11(21)内に軸線X方向に進退自在に嵌挿配置されたピストン12(22)の外周面に円周溝14が形成されて、シリンダ11(21)の内周面とピストン12(22)の外周面との間の隙間をシールするために円周溝14内に装着された弾力性を有する材料からなるOリング15が、シリンダ11(21)の内周面に当接して押し潰された状態になっている内視鏡の操作弁において、円周溝14の底面14aを、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の操作弁に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の操作部には、送気送水操作用や吸引操作用等の切換弁が配置されている。そして、そのような内視鏡の操作弁においては一般に、図9に示されるように、シリンダ91内に軸線X方向に進退自在に嵌挿配置されたピストン92の外周面に円周溝93,93が形成されて、Oリング94,95がその円周溝93,93内に装着されている。96は、流体が通される管路である。
【0003】
Oリング94,95は弾力性を有する材料で形成されていて、シリンダ91の内周面に当接して押し潰された状態になり(図9には潰される前の形状が図示されている)、それによって、シリンダ91の内周面とピストン92の外周面との間の隙間がシールされている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−252215
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダ91の内周面とピストン92の外周面との間の隙間は、Oリング94が押し潰された状態になっていることにより、確実にシールされる。しかし、その状態でピストン92が軸線方向に移動操作されると、図10に示されるように、Oリング94が円周溝93の一端側に寄せられて強く圧縮され、それによってシリンダ91の内周面との間に大きな摩擦抵抗が発生するためピストン92の作動性が悪くなってしまう場合がある。
【0005】
また、シリンダ91の内周面に開口する管路96の開口部をOリング95が通過する際には、元の形状に膨らもうとする大きな力が働いているOリング95が開口部の縁部Aに強く引っ掛かって切れてしまう場合がある。
【0006】
Oリング95が切れれば、シリンダ91の内周面とピストン92の外周面との間の隙間のシールが不完全になって、流路の切り換えが正常に行われなくなるだけでなく、流体の噴出や流体の混合等のような非常に好ましくない現象が発生する。
【0007】
本発明は、ピストンの進退操作が軽く行われて作動性がよく、Oリングが切れる事故が発生し難くて耐久性の優れた内視鏡の操作弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の操作弁は、シリンダ内に軸線方向に進退自在に嵌挿配置されたピストンの外周面に円周溝が形成されて、シリンダの内周面とピストンの外周面との間の隙間をシールするために円周溝内に装着された弾力性を有する材料からなるOリングが、シリンダの内周面に当接して押し潰された状態になっている内視鏡の操作弁において、円周溝の底面を、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成したものである。
【0009】
なお、ピストンの軸線を含む断面における円周溝の底面の断面形状が、溝幅の中心位置付近を頂点とする円弧状に形成されていてもよく、或いは、溝幅の中心位置付近を上辺とする台形状に形成されていてもよい。
【0010】
また、円周溝が、Oリングを一個だけ嵌め込める溝幅に形成されていてもよく、或いは、Oリングを三個嵌め込める溝幅に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、円周溝の底面を、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成したことにより、ピストンが進退動作する際にはOリングが溝深さの深い方に寄せられて圧縮度が小さくなるので、ピストンの進退操作が軽く行われて作動性がよく、Oリングが切れる事故が発生し難くて優れた耐久性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
シリンダ内に軸線方向に進退自在に嵌挿配置されたピストンの外周面に円周溝が形成されて、シリンダの内周面とピストンの外周面との間の隙間をシールするために円周溝内に装着された弾力性を有する材料からなるOリングが、シリンダの内周面に当接して押し潰された状態になっている内視鏡の操作弁において、円周溝の底面を、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成する。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡の配管状態を示しており、挿入部1の先端に連結された先端部本体2には図示されていない観察窓等が配置され、挿入部1の基端に連結された操作部3には各種操作部材が配置されている。
【0014】
4、5は、先端部本体2に配置されたノズルから噴出させる水と空気を通すための送水管路と送気管路、6は、先端部本体2に配置された吸引口から吸引される体内汚液等を通すための吸引管路である。
【0015】
操作部3には、送気送水操作を行うための送気送水操作弁10と吸引操作を行うための吸引操作弁20等が配置されていて、送気送水操作弁10のシリンダ11に送水管路4と送気管路5が接続され、吸引操作弁20のシリンダ21に吸引管路6が接続されている。
【0016】
円筒状に形成されたシリンダ11,21内には、ピストン12,22が軸線方向に進退自在に嵌挿配置されていて、操作釦13,23でピストン12,22を進退操作することにより、送気送水又は吸引を任意に行うことができる。
【0017】
図3は、そのようなシリンダ11(21)とピストン12(22)との嵌合部を略示しており、シリンダ11(21)の内周面には、管路4(5,6)が開口している。また、ピストン12(22)の外周面にはその全周にわたる円周溝14が複数形成されて、各円周溝14内にOリング15が装着されている。
【0018】
Oリング15は、弾力性を有するシリコンゴムなどを材料として断面形状が円形の素線を継ぎ目のない環状に形成したものであり、シリンダ11(21)の内周面に当接して押し潰された状態に弾性変形し、それによってシリンダ11(21)の内周面とピストン12(22)の外周面との間の隙間がシールされている。なお図3には、Oリング15が潰される前の形状が図示されている。
【0019】
図1は、Oリング15が装着された円周溝14付近を拡大して示しており、円周溝14の底面14aは、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成されている。より具体的に、この実施例においては、ピストン12(22)の軸線Xを含む断面における円周溝14の底面14aの断面形状が、溝幅の中心位置付近を頂点とする円弧状に形成されて、両土手の側壁と滑らかなアール面でつながっている。
【0020】
Oリング15は、そのような断面形状に形成された円周溝14内で、シリンダ11(21)の内周面とピストン12(22)の外周面との間の隙間をシールするのに適した状態に押し潰されている。
【0021】
このように構成された実施例の内視鏡の操作弁においてピストン12(22)が軸線X方向に移動操作されると、図4に示されるように、Oリング15が円周溝14内でピストン12(22)の移動方向と反対側の土手側に寄せられて、その土手壁に押し付けられた状態になる。
【0022】
すると、円周溝14の底面14aの中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成されていて、土手側部分の底面14aの深さが中心位置付近より深くなっている(したがって、空間の断面積が大きい)ことにより、Oリング15はその底面14aの深さが深い部分に緩く押し込まれた状態になって、全体として強く圧縮された状態にならない。したがって、ピストン12(22)の作動が重くなって作動性が悪くなるようなことにならない。
【0023】
そして、ピストン12(22)の移動操作時にOリング15が強く圧縮された状態にならないので、図5に示されるように、シリンダ11(21)の内周面に開口する管路4(5,6)の開口部をOリング15が通過する際には、Oリング15が開口部の縁部Aに強く引っ掛かる状態にならず、Oリング15の切れが発生しない。
【0024】
図6は、本発明の第2の実施例の円周溝14付近を示しており、円周溝14が、Oリング15を三個嵌め込める溝幅に形成されて、ピストン12(22)が静止している状態では真ん中の一個のOリング15だけがシール性を十分に発揮する状態に潰されている。
【0025】
このように構成しても、図7に示されるように、ピストン12(22)が軸線X方向に移動操作されると、真ん中のOリング15が円周溝14内でピストン12(22)の移動方向と反対側に位置するOリング15を押し潰しながらそちら側に寄せられるので、前述の第1の実施例と同様の作用効果がある。
【0026】
図8は、本発明の第3の実施例の円周溝14付近を示しており、ピストン12(22)の軸線Xを含む断面における円周溝14の底面14aの断面形状が、溝幅の中心位置付近を上辺とする台形状に形成されている。このように構成しても第1の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば本発明は、送気送水操作弁10や吸引操作弁20に限らず、Oリングが装着されたピストンがシリンダ内で軸線方向に進退操作される全ての操作弁に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の操作弁の部分拡大断面図である。
【図2】本発明が適用される内視鏡の配管図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の操作弁の略示断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の操作弁の移動操作時の状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の内視鏡の操作弁の移動操作時の状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の内視鏡の操作弁の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例の内視鏡の操作弁の移動操作時の状態を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例の内視鏡の操作弁の部分拡大断面図である。
【図9】従来の内視鏡の操作弁の略示断面図である。
【図10】従来の内視鏡の操作弁の移動操作時の状態を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,20 操作弁
11,21 シリンダ
12,22 ピストン
14 円周溝
14a 底面
15 Oリング
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に軸線方向に進退自在に嵌挿配置されたピストンの外周面に円周溝が形成されて、上記シリンダの内周面と上記ピストンの外周面との間の隙間をシールするために上記円周溝内に装着された弾力性を有する材料からなるOリングが、上記シリンダの内周面に当接して押し潰された状態になっている内視鏡の操作弁において、
上記円周溝の底面を、溝幅の中心位置付近が土手側付近より盛り上がった形状に形成したことを特徴とする内視鏡の操作弁。
【請求項2】
上記ピストンの軸線を含む断面における上記円周溝の底面の断面形状が、溝幅の中心位置付近を頂点とする円弧状に形成されている請求項1記載の内視鏡の操作弁。
【請求項3】
上記ピストンの軸線を含む断面における上記円周溝の底面の断面形状が、溝幅の中心位置付近を上辺とする台形状に形成されている請求項1記載の内視鏡の操作弁。
【請求項4】
上記円周溝が、上記Oリングを一個だけ嵌め込める溝幅に形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の操作弁。
【請求項5】
上記円周溝が、上記Oリングを三個嵌め込める溝幅に形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の操作弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−142212(P2008−142212A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331357(P2006−331357)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】