説明

内視鏡の送水ノズル

【課題】出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素があっても、噴出水が水流引き寄せ要素の反対側に十分に広がるようにすることができる内視鏡の送水ノズルを提供すること。
【解決手段】挿入部1内を通って送られてきた加圧水を挿入部1の先端部分の表面に沿って噴出させるための出口流路12が形成された内視鏡の送水ノズルにおいて、出口流路12の出口開口10を、その出口開口10からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素Xに対向する方向とは逆方向に、出口流路12の向きに対して斜め向きに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の送水ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の送水ノズルには一般に、挿入部内を通って送られてきた加圧水を挿入部先端の先端部本体に配置された観察窓の表面等に沿って噴出させるための出口流路が形成されている。
【0003】
そのような内視鏡の送水ノズルは、旧来は先端部本体に固定的に設けられていたが、内視鏡使用後の出口流路内等のブラッシング洗浄の必要性等を考慮して、近年は、先端部本体に対して被脱自在な先端キャップと先端部本体との境界面部分に形成されるようになってきている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3406709
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、送水ノズルの出口流路が先端キャップと先端部本体との境界面部分に形成されていると、その境界面の出口流路以外の部分に僅かな隙間が存在する場合(又は存在するようになった場合)に、その隙間から漏洩水が微量ではあるが糸を引くように流出する場合がある。
【0005】
すると、ノズルからの噴出水がその側方の漏洩水に引き寄せられて曲げられてしまい、漏洩水のない側への噴出水の広がりが不十分になって、観察窓の表面に洗浄されない領域ができてしまう等の不具合が発生する。
【0006】
なお、出口流路の周囲の隙間からの漏洩水だけでなく、ノズルからの噴出水の流路の傍らに形成された凹凸や重力方向等も、噴出水を側方に引き寄せる水流引き寄せ要素になって同様の不具合発生の原因になる場合がある。
【0007】
本発明は、出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素があっても、噴出水が水流引き寄せ要素の反対側に十分に広がるようにすることができる内視鏡の送水ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の送水ノズルは、挿入部内を通って送られてきた加圧水を挿入部の先端部分の表面に沿って噴出させるための出口流路が形成された内視鏡の送水ノズルにおいて、出口流路の出口開口を、その出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素に対向する方向とは逆方向に、出口流路の向きに対して斜め向きに形成したものである。
【0009】
なお、挿入部の先端部分には、表面に観察窓等が配置された先端部本体と、先端部本体に対して被脱自在な先端キャップとが設けられて、先端部本体とそこに被着された先端キャップとの境界面部分に出口流路が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、出口流路の出口開口を、その出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素に対向する方向とは逆方向に、出口流路の向きに対して斜め向きに形成したことにより、水流引き寄せ要素があってもノズルからの噴出水が水流引き寄せ要素の反対側に十分に広がるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
挿入部内を通って送られてきた加圧水を挿入部の先端部分の表面に沿って噴出させるための出口流路が形成された内視鏡の送水ノズルにおいて、出口流路の出口開口を、その出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素に対向する方向とは逆方向に、出口流路の向きに対して斜め向きに形成する。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡の挿入部1の先端部分の斜視図、図3は平面部分断面図であり、ステンレス鋼又は硬質プラスチック等により形成されて挿入部1の先端に連結された先端部本体2に、弾力性のある電気絶縁性のプラスチック又はゴム材等からなる先端キャップ3が被脱自在に被せられて、その被覆状態が弾力性のあるキャップ固定ピン4等で固定されている。
【0013】
キャップ固定ピン4は取り外し自在であり、キャップ固定ピン4を取り外すことにより、図4に示されるように、先端部本体2を先端キャップ3内から抜き出して先端キャップ3と分離することができる。
【0014】
先端部本体2の側面の表面には、観察窓5と照明窓6が前後に並んで配置されていて、それと並んで形成された溝内に、処置具起上台7が遠隔操作によって揺動させることができるように配置されている。
【0015】
8と9は、挿入部1内に全長にわたって挿通配置された送気管と送水管であり、挿入部1の基端に連結された図示されていない操作部からの操作により、加圧空気又は加圧水が送気管8又は送水管9内に選択的に送られてきて、ノズルの出口開口10から観察窓5の表面に向かって噴出される。
【0016】
送気管8と送水管9の先端は、先端部本体2と先端キャップ3との境界面部分に形成された合流路11に並んで接続されている。図4に示されるように、送気管8及び送水管9の方向と直交する横向きに細長く形成された合流路11は、先端部本体2に前側部分が開放された形状に形成されている。
【0017】
図3に示されるように、合流路11の前側開放部分は先端キャップ3で塞がれた状態になっている。したがって、先端キャップ3を先端部本体2から取り外せば、図4に示されるように合流路11が露出して、合流路11内と送気管8内及び送水管9内を容易にブラッシング清掃することができる。
【0018】
また、合流路11の一端側から出口開口10に真っ直ぐ前方に向かう出口流路12が先端部本体2と先端キャップ3との境界面部分に形成されて、その出口流路12の出口が出口開口10になっている。
【0019】
そのような出口開口10と出口流路12は、図2に示されるように、先端部本体2と先端キャップ3との境界面部分に先端キャップ3側に溝を掘った状態に形成されている。したがって、先端キャップ3を先端部本体2から取り外せば、出口流路12内を容易にブラッシング清掃することができる。
【0020】
先端部本体2と先端キャップ3は出口流路12の周囲で境界面どうしが密着するように形成され、送水管9を通って送られてきた加圧水が合流路11内から出口流路12内を通って出口開口10から観察窓5の表面に噴出され、出口開口10以外の部分からは漏水しないように想定されている。ただし現実には、部品製造上の公差や経時的な変形等によって、出口流路12の周囲で先端部本体2と先端キャップ3との境界面に極めて僅かではあるが隙間ができてしまう。
【0021】
この実施例において、出口流路12は前述のように真っ直ぐ前方に向かって形成されている。しかし、出口開口10は、出口流路12の向きに対して斜め向き(この実施例では外方向き)に形成されている。
【0022】
図1は、この実施例における送水状態を示しており、送水管9を通って送られてきた加圧水が合流路11から出口流路12を通ってその出口開口10から観察窓5の表面に向けて噴出している。
【0023】
また、出口流路12以外の部分で先端部本体2と先端キャップ3との境界面にできた隙間を通る漏水Xが、出口開口10からの噴出水の流路の傍らを糸状に前方に流れ、その漏水Xは、出口開口10からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する「水流引き寄せ要素」になる。
【0024】
すると、出口開口10から噴出した水流を漏水X側に引き寄せる力が作用するのであるが、出口開口10が出口流路12の向きに対して漏水X(水流引き寄せ要素)に対向する方向とは逆方向(即ち、外向き)の斜め向きに形成されていることにより、出口開口10から噴出した水流は、噴出後次第に漏水Xから遠ざかるほうに曲がって噴出する。
【0025】
これは、出口開口10の外端縁部10a付近から噴出した水流Yの方が、内端縁部10b付近から噴出した水流より先に大気中に開放されて失速し、水流に速度差ができることにより発生する現象であり、出口開口10から噴出する水流が、広がりながら全体として漏水Xから遠ざかる外方に向かって進み、漏水X側に偏って広がる現象が発生しない。その結果、送水動作時に漏水Xの発生があっても、観察窓5の表面全体を流水で確実に洗浄することができる。
【0026】
また、出口開口10を斜め向きに削り取った状態に形成することによりその分だけ出口流路12が短くなれば、合流路11から出口流路12に曲がる流路内での渦の発生が少なくなることにより、漏水X自体が少なくなると同時に、出口流路12を通過する加圧水の流速が早まって、観察窓5を洗浄する効果が増すメリットもある。
【0027】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、上記実施例は側方視型内視鏡に本発明を適用したものであるが、前方視型や斜視型の内視鏡に適用することもできる。
【0028】
また、先端キャップ3が先端部本体2に被着されたものに限らず、送水ノズルから噴出する噴出水の流路の傍らにおいて噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素を有する内視鏡に本発明を適用すれば、上記実施例と同様の効果が得られる。
【0029】
また、出口流路12の向きが周囲の構造との関係で制約される場合に、出口開口10からの水の噴出方向を制御する際等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の送水ノズルからの送水状態を示す内視鏡挿入部先端の平面部分断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡挿入部先端の斜視図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡挿入部先端の平面部分断面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡挿入部先端から先端キャップが取り外された残りの部分の平面部分断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 挿入部
2 先端部本体
3 先端キャップ
5 観察窓
9 送水管
10 出口開口
10a 外端縁部
10b 内端縁部
11 合流路
12 出口流路
X 漏水(水流引き寄せ要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部内を通って送られてきた加圧水を上記挿入部の先端部分の表面に沿って噴出させるための出口流路が形成された内視鏡の送水ノズルにおいて、
上記出口流路の出口開口を、その出口開口からの噴出水を側方に引き寄せるように作用する水流引き寄せ要素に対向する方向とは逆方向に、上記出口流路の向きに対して斜め向きに形成したことを特徴とする内視鏡の送水ノズル。
【請求項2】
上記挿入部の先端部分には、表面に観察窓等が配置された先端部本体と、上記先端部本体に対して被脱自在な先端キャップとが設けられて、上記先端部本体とそこに被着された上記先端キャップとの境界面部分に上記出口流路が形成されている請求項1記載の内視鏡の送水ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−86649(P2008−86649A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273078(P2006−273078)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】