説明

内視鏡システム、プロセッサ装置及び画像補正方法

【課題】励起光と蛍光の配光分布の違いによって生じる観察画像内の色むらを低減する。
【解決手段】照射部は、青色のレーザ光を発光するレーザ光源と、レーザ光によって励起されて、緑色〜赤色の蛍光を発光する蛍光体とからなり、蛍光と蛍光体を透過する青色レーザ光の一部の混色により白色の照明光を照射する。レーザ光は指向性が高く、蛍光は拡散性が高いため、両者の配光分布には違いが生じる。観察画像に対して画像処理を施すことにより、両者の配光分布の違いによって観察画像に生じる色むらを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を観察するための内視鏡システム、及びそれに用いられるプロセッサ装置、画像補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、内視鏡を用いた被検体内の診断が広く行われている。内視鏡は、被検体に挿入される挿入部を備えており、挿入部の先端部には、被検体内の観察部位に向けて照明光を照射する照明窓と、観察部位を撮影するための観察窓とが設けられている。観察窓の奥には、CCDやCMOSなどの撮像素子が設けられており、撮像素子によって、照明された観察部位が撮像されて、観察画像を表す画像信号が出力される。観察画像はモニタに表示される。
【0003】
照明光の光源としては、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプなどの白色光源が用いられることが多いが、特許文献1及び2に示すように、LEDやレーザ光源などの半導体光源も用いられるようになってきている。
【0004】
特許文献1には、B(青)、G(緑)、R(赤)の三色のLEDを組み合わせて、三色の光の混合により白色光を生成する内視鏡システムが開示されており、特許文献2には、青色の励起光を発光するLEDと、青色の励起光の一部を吸収して黄色の蛍光を励起発光し、残りの励起光を透過する蛍光体とを組み合わせて、補色関係にある青色と黄色の光の混合により白色光を生成する内視鏡システムが開示されている。
【0005】
半導体光源は、キセノンランプ等の白色光源と比較して、小型であること、消費電力が小さいこと、発光量の制御がしやすいことなどのメリットがあるが、特許文献1に記載されているように改善すべき問題もある。具体的には、キセノンランプ等の白色光の色分布は、青色から赤色の全域に渡って光強度が比較的フラットな色分布であるのに対して、三色のLEDで生成される白色光の色分布は、B、G、Rのそれぞれの波長域に光強度のピークを持つ偏りのある色分布となる。こうした色分布の違いは、観察画像の全域において一様な色調の変化として現れる。特許文献1の内視鏡システムでは、三色のLEDによる白色光の偏りのある色分布を、キセノンランプ等のフラットな色分布に近付けるように、観察画像を画像処理によって補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−45615号公報
【特許文献2】特開平10−216085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、特許文献2に記載されているような、励起光を発光する半導体光源と蛍光体の組み合わせによって白色光を生成する内視鏡システムを開発している。開発の過程において、特許文献1で指摘された半導体光源の問題に加えて、励起光と蛍光の配光分布(空間的な光強度の分布)の違いによって観察画像内に色むらが生じるという新たな問題があることが明らかになってきた。
【0008】
図5に示すように、励起光(青色レーザ光)N1の配光分布と蛍光FLの配光分布は、ともに、配光角が0°の照射エリアの照射中心OIで光強度が最大となり、配光角の絶対値が大きな周辺に向かうにつれて光強度が低下する山形の配光分布となる。図5において、両者の配光分布は、照射中心OIにおける両者の光強度を一致させて規格化した相対強度で表されている。両者の光強度の差ΔIは、照射中心OIから周辺まで一定ではなく、周辺に向かうにつれて大きくなる。
【0009】
励起光と蛍光の配光分布が変化する原因は、励起光と蛍光の波長域が異なるため、照明窓などの光学部材において屈折率差が生じることに加えて、励起光が、蛍光体を透過する指向性(拡散せずに直進する)の高い光であるのに対して、蛍光は、蛍光体が励起発光する拡散性の高い光であることが原因と考えられるが、特に、励起光と蛍光の拡散性の違いによる影響が大きい。
【0010】
励起光と蛍光の配光分布の違いは、観察画像においては、領域によって色調が変化する色むらとして現れる。診断においては、観察画像の微妙な色味の変化をもとに、病変部か否かの判別が行われるため、観察画像内の領域によって色調が変化することは好ましくない。
【0011】
また、このような色むらの防止策としては、照明光学系の改良によって、両者の配光分布を一致させることが考えられるが、照明光学系を改良するとなると、光学部材などの部品構成が複雑化する懸念がある。
【0012】
上記問題及びその解決策については、特許文献1及び2のいずれにも明示も示唆もない。特許文献1では、キセノンランプ等の白色光の色分布との対比において、半導体光源の白色光の色分布の偏りによって生じ、観察画像の全域における一様な色調変化を問題にしているが、これは、励起光と蛍光の配光分布の違いによって生じ、観察画像において領域によって色調が変化する色むらの問題とは明らかに異なる。
【0013】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、励起光と蛍光によって白色光を生成する場合において、照明光学系の構成を複雑化することなく、励起光と蛍光の配光分布の違いによって生じる観察画像内の色むらを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡システムは、被検体に挿入される挿入部を有し、前記挿入部の先端部に前記被検体内の観察部位に対して照明光を照射する照明窓と、前記観察部位を撮影するための観察窓とを有する内視鏡と、励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、前記照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を前記照明光として照射する照射手段と、前記観察窓を通じて前記観察部位で反射した前記照明光を受光して前記観察部位の観察画像を撮像する撮像手段と、前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる、前記観察画像内の色むらを補正するための補正データを記憶する記憶手段と、前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
前記第1の半導体光源は、例えばレーザ光源である。
【0016】
前記照明窓は2つ設けられており、前記色むら補正手段は、前記2つの照明窓のそれぞれの照射エリアの重なり方に応じて前記色むらを補正することが好ましい。
【0017】
前記先端部と前記観察部位までの距離である観察距離を測定する観察距離測定手段を備えており、前記色むら補正手段は、測定された前記観察距離に基づいて、2つの前記照射エリアの重なり方を求めることが好ましい。
【0018】
前記補正データは、前記照射エリアのうち一部の領域の配光分布に対応する部分データであり、前記色むら補正部は、前記部分データに基づいて、前記照射エリアの全域の配光分布に対応する全域データを生成することが好ましい。
【0019】
例えば、前記励起光及び前記蛍光は、それぞれの照射エリアがほぼ円形であり、かつ、それぞれの配光分布における光強度の差は、照射中心からの径方向の距離により異なり、前記部分データは、前記照射中心から径方向に延びる一次元方向の配光分布に対応する一次元データであり、前記色むら補正手段は、前記一次元データを円周方向に展開することにより、前記全域データを生成する。
【0020】
前記記憶手段は、前記内視鏡に設けられていることが好ましい。
【0021】
前記励起光は青色光で、前記蛍光は緑色から赤色光であり、前記励起光及び前記蛍光が混合されることにより白色の前記照明光が生成されることが好ましい。
【0022】
前記照射手段は、前記励起光とは波長域が異なる光を発する第2の半導体光源を有しており、前記第2の半導体光源が発する光を、前記蛍光体を透過させて前記照明窓から照射してもよい。
【0023】
前記補正データは、前記励起光及び前記蛍光のみを照射する場合の第1補正データと、前記励起光及び前記蛍光に加えて、前記第2の半導体光源からの光を照射する場合の第2補正データの2種類の補正データを有しており、前記色むら補正手段は、前記第2の半導体光源からの光の照射の有無に応じて前記第1及び第2補正データのいずれかを選択することが好ましい。
【0024】
前記第1の半導体光源は、例えば、中心波長が445nmの狭帯域光を発し、前記第2の半導体光源は、例えば、中心波長が405nmの狭帯域光を発する。
【0025】
本発明のプロセッサ装置は、励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、内視鏡の照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を照明光として照射する照射手段を有する内視鏡システムに用いられるプロセッサ装置において、前記内視鏡によって撮影された観察画像において、前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる色むらを補正するための補正データを記憶手段から読み出す手段と、前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正手段とを備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明の画像補正方法は、励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、内視鏡の照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を照明光として照射する照射手段を有する内視鏡システムに用いられる画像補正方法において、前記内視鏡によって撮影された観察画像において、前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる色むらを補正するための補正データを記憶手段から読み出すステップと、前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正ステップとを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】内視鏡システムに示す図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
【図3】電子内視鏡の先端部の断面を示す図である。
【図4】投光ユニットの分光スペクトルを示すグラフである。
【図5】投光ユニットの配光分布を示すグラフである。
【図6】照射エリアと撮影エリアの関係を示す説明図である。
【図7A】観察距離が長い場合の照射エリアと撮影エリアの重なり方の様子を示す説明図である。
【図7B】観察距離が短い場合の照射エリアと撮影エリアの重なり方の様子を示す説明図である。
【図8】内視鏡システムの電気構成の概略を示すブロック図である。
【図9】画像処理部の構成図である。
【図10】色むら補正手順を示すフローチャートである。
【図11】レーザ光源を2つ有する投光ユニットの構成図である。
【図12】図11の投光ユニットの分光スペクトルを示すグラフである。
【図13】図11の投光ユニットの配光分布を示すグラフである。
【図14】一次元補正データの展開処理の説明図である。
【図15】電子内視鏡に補正データ記憶部を設けた例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム2は、被検体内に挿入される挿入部20を有し、被検体内の観察部位を撮影する電子内視鏡10と、電子内視鏡10が撮影した観察画像を表す撮像信号に対して画像処理を施すプロセッサ装置12と、プロセッサ装置12内に設けられ、観察部位に対して照明光を照射するための光源装置13と、観察画像を表示するモニタ14と、被検体内に送り込む水を貯留する送水タンク16とを備えている。
【0029】
電子内視鏡10は、患者の体腔内に挿入される挿入部20と、挿入部20の基端部分に連設され、医師や技師などの術者が操作を行なう操作部22と、操作部22から延びるユニバーサルコード24とからなる。挿入部20は、先端から順に、先端部26、湾曲部27、及び可撓管部28で構成されている。先端部26は、硬質な樹脂材料で形成されている。可撓管部28は、可撓性を有する長尺な管状部材であり、操作部22と湾曲部27とを接続する。
【0030】
操作部22には、挿入部20に挿通された操作ワイヤを押し引きして湾曲部27を上下左右方向に湾曲させることにより先端部26の向きを変えるためのアングルノブ30や、送気・送水ノズル44(図2参照)からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタン31の他、観察画像を静止画記録するためのレリーズボタンといった操作部材が設けられている。
【0031】
また、操作部22の先端側には、電気メス等の処置具が挿通される鉗子口32が設けられている。鉗子口は、挿入部20内の鉗子チャンネルを通して、先端部26に設けられた鉗子出口43(図2参照)に連通している。
【0032】
ユニバーサルコード24には、光ファイバからなるライトガイド24a、及び電子内視鏡10とプロセッサ装置12間で電気信号を伝送する信号ケーブルが内蔵されている。ユニバーサルコード24の一端には、プロセッサ装置12と着脱自在に接続するためのコネクタ36が設けられている。ライトガイド24a及び信号ケーブルの一端は、操作部22及び挿入部20内を挿通されて先端部26まで延びている。
【0033】
プロセッサ装置12は、内視鏡システム2の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置12は、信号ケーブルを介して電子内視鏡10に給電を行い、先端部26に搭載された撮像素子66(図8参照)の駆動を制御する。また、プロセッサ装置12は、信号ケーブルを介して撮像素子66から出力された撮像信号を受信し、受信した撮像信号に各種処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置12で生成された画像データは、プロセッサ装置12にケーブル接続されたモニタ14に出力されて、モニタ14に観察画像として表示される。
【0034】
光源装置13は、中心波長が445nmの青色レーザ光を発するレーザ光源15を備えている。青色レーザ光は、レーザ光源15からライドガイド24aに入射して、ライトガイド24aによって、電子内視鏡の先端部26まで導光される。青色レーザ光は、先端部26に設けられた蛍光体50を励起発光させる励起光であり、蛍光体50(図2参照)が発する黄色の蛍光との混合により白色光を生成する。白色光は、照明光として観察部位に照射される。本例のようにレーザ光源15と蛍光体50を組み合わせて白色光を照射する照射装置は、マイクロホワイト(登録商標)などの名称で製品化されている。なお、本例において、光源装置13をプロセッサ装置12に内蔵した例で説明しているが、光源装置13とプロセッサ装置12は別体で構成されてもよい。
【0035】
図2において、先端部26の先端面26aには、観察窓41、2つの照明窓42、鉗子出口43、および送気・送水ノズル44が設けられている。観察窓41は、先端面26aの左右方向においてほぼ中央に位置し、上下方向においては中心よりも若干上方よりに配置されている。2つの照明窓42は、観察窓41を挟んで左右対称な位置に配されている。
【0036】
図3に示すように、観察窓41の奥には、観察部位を撮像する撮像ユニット46が配置されている。撮像ユニット46は、対物光学系67(図8参照)と、対物光学系67によって結像された像光を撮像する撮像素子66からなる(図8参照)。対物光学系67は、例えば、2mmから10cm程度の観察距離の範囲で撮影が可能な固定焦点式のレンズ群と、プリズムとからなる。プリズムはレンズ群が収容される鏡筒の後端に固着され、観察部位の像を90°屈折させて撮像素子66の撮像面に導く。
【0037】
各照明窓42の奥には、照明窓42とともに投光ユニット47を構成する、蛍光体50及びライトガイド24aの先端部が配置されている。投光ユニット47とレーザ光源15によって照射手段が構成される。蛍光体50は、ライトガイド24aによって導光されるレーザ光源15からの青色レーザ光の一部を吸収して、残りの吸収されない青色レーザ光を透過する。蛍光体50は、無機ガラスなどの基材内に、青色レーザ光で励起されて緑色から赤色の蛍光を発する蛍光物質を含有したものであり、全体として黄色の蛍光を発光する。図4において、投光ユニット47の分光スペクトルを示すように、青色レーザ光N1と、補色関係にある黄色(緑色〜赤色)の蛍光FLとの混合により、白色光の照明光が生成される。
【0038】
また、レーザ光は、一般に、単色性が高く(スペクトル幅が非常に狭い狭帯域光である)、かつ、指向性が高い(拡散せずに直進する)という特徴を持っており、青色レーザ光N1もこうした特徴を有している。青色レーザ光N1は指向性が高いため、蛍光体50内には、蛍光物質で吸収されない青色レーザ光N1を拡散させるフィラーが混入されている。さらに、照明窓42は、凹レンズで構成されており、蛍光体50から出射される照明光の配光角を拡大する。照明光は、照明窓42から円錐状に広がって観察部位に照射される。
【0039】
投光ユニット47は、フェルール55とスリーブ60とを有している。フェルール55は、蛍光体50とライトガイド24aを、互いに光学的に接続した状態で保持する。フェルール55には、軸方向に延びた細径の貫通孔55aと、貫通孔55aの先端と連通し、貫通孔55aよりも大径の先端格納部55bが形成されている。貫通孔55aにはライトガイド24aが挿通され、先端格納部55b内には蛍光体50が収容される。蛍光体50は接着剤56によって先端格納部55bに固定され、ライトガイド24aは、先端が蛍光体50の後端と接触する位置で固定される。
【0040】
スリーブ60は、フェルール55よりも一回り大径の円筒部材であり、先端において照明窓42を保持し、照明窓42の後方に蛍光体50が位置するように、フェルール55を保持する。
【0041】
図5に示すように、1つの照明窓42から照射される照明光(青色レーザ光と蛍光)の配光分布は、配光角が「0」の照明光軸に対応する照射中心OIにおいて光強度が最大となり、配光角が広がるほど(照射中心OIから離れるほど)、光強度が低下する山形形状である。照明光の照射エリアAIにおいては、照射中心OIが最も明るく、周辺に向かうほど暗くなる。
【0042】
図5において、青色レーザ光N1と蛍光FLの光強度は、照射中心OIにおける両者の光強度を一致させて規格化した相対強度で表されている。青色レーザ光N1の配光分布と、蛍光FLの配光分布は、完全に一致せず、両者を比較すると、青色レーザ光N1の配光分布の方が、照射中心OIから周辺に向かって光強度が減少する減少率が大きい。そのため、照射中心OIからの径方向の距離が順に大きくなるP1、P2、P3の各位置における両者の光強度の差ΔI1、ΔI、ΔI3も、その順に大きくなる。そして、P3の位置よりも外側の領域では、青色レーザ光N1の光強度はほぼ0に近くなり、蛍光FLのみが照射される領域となる。
【0043】
こうした配光分布の違いによって、照射エリアAI内において、青色レーザ光N1と蛍光FLの光の割合である混合率が照射中心OIから周辺に向かって変化し、照明光の色むらが生じる。照明光の色むらは、観察画像においても領域によって色調が変化する色むらとして現れる。
【0044】
青色レーザ光N1と蛍光FLの各配光分布に違いが生じる原因は、青色レーザ光N1と蛍光FLは波長域が異なるため、凹レンズで構成される照明窓42において屈折率差が生じること、さらに、青色レーザ光N1が、指向性の高い光であるのに対して、蛍光FLは、蛍光体が励起発光する拡散性の高い光であることが原因と考えられている。
【0045】
図6に示すように、左右の各照明窓42から照射される照明光は、照明窓42を基点として円錐状に広がる。そのため、観察部位Sと、先端部26の先端面との間の観察距離Lが変化すると、左右の照明窓42の照射エリアAIの重なり方も変化する。図7にも示すように、具体的には、観察距離LがL1のときには、撮影エリアAPはAP1となり、左右の照明窓42の照射エリアAIはAI1となる。符号OPは、撮影光軸PAに対応する撮影エリアAPの中心を示す。一方、観察距離LがL1よりも短いL2となると、撮影エリアAPは、AP1よりも小さいAP2となり、左右の照明窓42の照射エリアAIも、AI1よりも小さいAI2となる。
【0046】
図7において、各照射エリアAI内の点線で示す円は、図5に示すP1、P2、P3の各位置に対応している。上述のとおり、1つの照射エリアAIにおいては、照射中心OIに近いP1から周辺位置のP3に向かって、青色レーザ光と蛍光の混合率が変化するので照明むらが生じる。そして、照明光は円錐状に広がるため、観察距離Lの変化により、照射エリアAIの大きさが変化すると、その比率に応じて、P1、P2、P3に対応する円の大きさも変化する。
【0047】
撮影エリアAPの大半は、左右の2つの照射エリアAIが重なった領域となるため、観察画像に生じる色むらは、各照射エリアAIの照明むらが合成されたものになる。観察距離LがL1のときの撮影エリアAP1内の各照射エリアAIの重なり方の様子を示す図7Aと、観察距離がL1よりも短いL2のときの撮影エリアAP2内の各照射エリアAIの重なり方の様子を示す図7Bから明らかなように、観察距離Lが変化すると、各照射エリアAIの重なり方が変化するため、撮影エリアAPに対応する観察画像に現れる色むらの態様も、観察距離Lによって変化する。
【0048】
図8おいて、撮像素子66は、観察窓41、対物光学系67を経由した被検体内の観察部位の像が撮像面に入射するように配置されている。撮像面には複数の色セグメントからなるカラーフイルタ、例えばベイヤー配列の原色(RGB)カラーフイルタが形成されている。撮像素子66は回路基板に電気的に接続されており、伝送ケーブルを介して撮像信号が後段の処理回路に向けて送信される。
【0049】
電子内視鏡10には、例えば操作部22内に、アナログ信号処理回路(以下、AFEと略す)76、駆動回路77、およびCPU78が設けられている。AFE76は、相関二重サンプリング回路(以下、CDSと略す)、自動ゲイン制御回路(以下、AGCと略す)、およびアナログ/デジタル変換器(以下、A/Dと略す)から構成されている。CDSは、撮像素子66から出力される撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、撮像素子66で生じるリセット雑音およびアンプ雑音の除去を行う。AGCは、CDSによりノイズ除去が行われた撮像信号を、プロセッサ装置12から指定されるゲイン(増幅率)で増幅する。A/Dは、AGCにより増幅された撮像信号を所定のビット数のデジタル信号に変換する。A/Dでデジタル化された撮像信号は、伝送ケーブルを介してプロセッサ装置12の画像処理部84に入力される。
【0050】
駆動回路77は、撮像素子66の駆動パルス(垂直/水平走査パルス、電子シャッタパルス、読み出しパルス、リセットパルス等)とAFE76用の同期パルスとを発生する。撮像素子66は、駆動回路77からの駆動パルスに応じて撮像動作を行い、撮像信号を出力する。AFE76の各部は、駆動回路77からの同期パルスに基づいて動作する。
【0051】
CPU78は、電子内視鏡10とプロセッサ装置12とが接続された後、プロセッサ装置12のCPU80からの動作開始指示に基づいて、駆動回路77を駆動させるとともに、駆動回路77を介してAFE76のAGCのゲインを調整する。
【0052】
CPU80は、プロセッサ装置12全体の動作を統括的に制御する。CPU80は、図示しないデータバスやアドレスバス、制御線を介して各部と接続している。ROM81には、プロセッサ装置12の動作を制御するための各種プログラム(OS、アプリケーションプログラム等)やデータ(グラフィックデータ等)が記憶されている。CPU80は、ROM81から必要なプログラムやデータを読み出して、作業用メモリであるRAM82に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、CPU80は、検査日時、患者や術者の情報等の文字情報といった検査毎に変わる情報を、プロセッサ装置12の操作パネルやLAN(Local Area Network)等のネットワークより得て、RAM82に記憶する。
【0053】
操作部83は、プロセッサ装置12の筐体に設けられる操作パネル、あるいは、マウスやキーボード等の周知の入力デバイスである。CPU80は、操作部83、および電子内視鏡10の操作部22にあるレリーズボタン等からの操作信号に応じて、各部を動作させる。
【0054】
画像処理部84は、電子内視鏡10から入力された撮像信号に対して、色補間、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、画像強調、画像用ノイズリダクション、色変換等の各種画像処理を施して観察画像を生成する。また、後述するように、画像処理部84は、観察画像に対して画像処理を施すことにより、青色レーザ光と蛍光の配光分布の違いによって生じる色むらを補正する。
【0055】
表示制御部85は、CPU80からROM81およびRAM82のグラフィックデータを受け取る。グラフィックデータには、観察画像の無効画素領域を隠して有効画素領域のみを表示させる表示用マスク、検査日時、あるいは患者や術者、現在選択されている観察モード等の文字情報、グラフィカルユーザインターフェース(GUI;Graphical User Interface)等がある。表示制御部85は、画像処理部84からの画像に対して、表示用マスク、文字情報、GUIの重畳処理、モニタ14の表示画面への描画処理等の各種表示制御処理を施す。
【0056】
表示制御部85は、画像処理部84からの画像を一時的に格納するフレームメモリを有する。表示制御部85は、フレームメモリから画像を読み出し、読み出した画像をモニタ14の表示形式に応じたビデオ信号(コンポーネント信号、コンポジット信号等)に変換する。これにより、モニタ14に観察画像が表示される。
【0057】
プロセッサ装置12には、上記の他にも、画像に所定の圧縮形式(例えばJPEG形式)で画像圧縮を施す圧縮処理回路や、圧縮された画像をCFカード、光磁気ディスク(MO)、CD−R等のリムーバブルメディアに記録するメディアI/F、LAN等のネットワークとの間で各種データの伝送制御を行うネットワークI/F等が設けられている。これらはデータバス等を介してCPU80と接続されている。
【0058】
光源装置13は、レーザ光源15の他、レーザ光源15を駆動する光源ドライバ92、集光レンズ93、CPU96を備えている。光源ドライバ92は、レーザ光源15の点灯及び光量を制御する。集光レンズ93は、レーザ光源15から発せられた各光を集光して、ライトガイド24aの入射端に導光する。CPU96は、プロセッサ装置12のCPU80と通信し、光源ドライバ92の動作制御を行う。
【0059】
図9に示すように、画像処理部84には、観察距離測定部84a、色むら補正部84b、補正データ記憶部84cが設けられている。観察距離測定部84aは、撮像信号に基づいて生成される観察画像のデータに基づいて、観察距離Lを測定する。具体的には、観察画像の画素値から平均露光量を求めて、平均露光量から観察距離Lを算出する。照明光の光量を一定とすれば、観察距離Lが長いと、観察部位からの反射光量は少なく、観察距離Lが短いと多くなるので、観察距離Lが変化すると、撮像素子66が受光する平均露光量も変化する。
【0060】
観察距離測定部84aは、こうした観察距離Lと平均露光量との相関関係を利用して、平均露光量に応じて観察距離Lを測定する。なお、平均露光量は、観察画像の全画素の平均値でもよいし、中央付近の画素の平均値でもよい。
【0061】
補正データ記憶部84cは、例えばROMで構成されており、青色レーザ光N1と蛍光FLの配光分布の違い(図5参照)によって生じる色むらを補正するための補正データを記憶する。上述のとおり、青色レーザ光N1と蛍光FLの光強度の差ΔIは、照射エリアAIの照射中心OIからの径方向の距離に応じて変化する。本例においては、光強度の差ΔIは、照射中心OIから周辺に向かって徐々に大きくなっている。
【0062】
補正データは、照射エリアAIの径方向における複数の位置の光強度の差ΔIに応じた色むらを補正するための複数の補正係数の集まりである。補正係数は、例えば、観察画像の画素値において青色レーザ光N1に対応する青色成分を補正する係数である。この場合には、図5に示す位置P1よりも位置P2の方が、差ΔIは大きいので、位置P1に対応する補正係数の値よりも位置P2に対応する補正係数の値が大きくなる。
【0063】
補正データは、左右の照射エリアAI毎に用意されている。補正データは、製造時やメインテナンス時に測定された、左右の照明窓42の照明光の配光分布に基づいて作成される。補正データは、LUT(ルックアップテーブル)の形態でもよいし、関数の形態でもよい。
【0064】
図10のフローチャートに示すように、観察距離測定部84aが観察距離Lを算出すると(ステップ(S)101)、観察距離Lが色むら補正部84bに入力される。そして、色むら補正部84bは、入力された観察距離Lに基づいて、左右の照射エリアAIの重なり方を求める(S102)。具体的には、まず、図7に示す撮影エリアAPに対応する観察画像内における、左右の照射エリアAIのそれぞれの照射中心OIの位置を求める。そして、算出した観察距離Lにおける、左右の照射エリアAI及び撮影エリアAPの大きさに基づいて、各照射エリアAIの位置P1、P2、P3(図5参照)など、照射エリアAIの径方向の各位置が、観察画像内のどの画素に対応しているかを求める。
【0065】
左右の照射エリアAIの重なり方を決定するパラメータは、観察距離Lを除いて、観察窓41、照明窓42の相対的な位置関係、及びそれらの視野角や配光角など電子内視鏡10に固有の値として予め決まっている。これらのパラメータは、色むら補正部84b内のメモリやROM81内などに予め格納されている。
【0066】
そして、色むら補正部84bは、左右の照射エリアAIの重なり方に応じて観察画像の色むらを補正する(S103)。具体的には、色むら補正部84bは、補正データ記憶部84cから補正データを読み出し、位置毎に用意されている補正係数に基づいて、観察画像内の対応する画素の画素値を補正する。補正データは、左右の照射エリアAI毎に用意されているので、色むら補正部84bは、左右の補正データに基づいて、観察画像の画素値を補正する。
【0067】
こうした色むら補正を実行するタイミングとしては、内視鏡システム2を起動して電子内視鏡10で観察を行っている間、常時行ってもよいし、常時行わずに、マニュアル操作によって指示されたときにのみ行ってもよい。マニュアルの操作指示は、電子内視鏡10の操作部22やプロセッサ装置12の操作部83などに色むら補正ボタンなどの操作ボタンを設けて、操作ボタンの押下操作によりプロセッサ装置12のCPU80が入力を受け付ける。CPU80は、操作指示の入力を受け付けたときに色むら補正を実行する。
【0068】
青色レーザ光N1と蛍光FLの配光分布の違いによって生じる色むらは、観察距離Lを長くとり、管道(食道、胃、腸など)内の観察部位の全体的な様子を遠景から観察する場合においては、それほど目立たないため、問題とならないが、観察距離Lを短くして、管道の内壁など観察部位の性状を子細に観察する場合に問題となる場合が多い。そのため、マニュアル操作によって指示されたときにのみ色むら補正を行っても実用上支障はない。画像処理部84における処理の負荷という観点で言えば、指示されたときにのみ色むら補正が行われるため、常時色むら補正を行っている場合と比較して、負荷軽減にもなる。
【0069】
本発明は、観察画像に対して画像処理を施すことにより、青色レーザ光N1と蛍光FLの配光分布の違いによって生じる観察画像内の色むらを補正するので、色むらを低減することができる。また、画像処理によって色むらの補正を行うため、青色レーザ光N1と蛍光FLの配光分布が一致するように照明光学系を改良する必要もないため、構造が複雑化することもない。
【0070】
上記実施形態では、観察距離測定部84aによって観察距離Lを測定して、観察距離Lに応じて2つの照射エリアAIの重なり方を求めているが、観察距離Lが一定である場合には、観察距離測定部84aを設けなくてもよい。観察距離Lを一定にする方法としては、挿入部20の先端部26に着脱自在な円筒状のフードを使用する方法がある。フードの先端を観察部位と接触させた状態にして観察を行えば、観察距離Lはフードの長さに固定される。上述のとおり、色むらが特に問題となるのは近景観察の場合であるので、フードによって観察距離Lを固定する方法も有効である。
【0071】
この場合には、画像処理部84内のメモリには、フードの長さに対応する観察距離Lが予め記憶される。色むら補正部84bは、その観察距離Lに応じて2つの照射エリアAIの重なり方を求めて、色むらを補正する。
【0072】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の内視鏡システム2では、1つのレーザ光源と蛍光体によって白色の照明光のみを照射する例で説明したが、白色以外の特殊光を照射可能な内視鏡システムに本発明を適用してもよい。内視鏡診断においては、白色光の下で観察部位を観察する通常観察に加えて、特殊光を用いる特殊光観察が行われている。特殊光観察には、例えば、波長帯域が狭い狭帯域光を使用して、粘膜表層の血管を強調表示する狭帯域光観察などがある。
【0073】
狭帯域光観察を行う場合の内視鏡システムの1例としては、図11及び図12に示すように、第1実施形態の青色レーザ光N1を発するレーザ光源15に加えて、中心波長が405nmであり、青色レーザ光N1よりも短波長の青色レーザ光N2を発するレーザ光源98を設ける。血液中のヘモグロビンは、波長が405nm付近の青色光に対して高い吸光度を示すため、青色レーザ光N2を照射することにより、表層血管のコントラストが向上して、観察画像において表層血管が強調表示される。第2実施形態と第1実施形態の違いは、レーザ光源98の有無のみであり、他の構成は同様である。共通部分については説明を省略して、以下相違点のみ説明する。
【0074】
レーザ光源98が発する青色レーザ光N2は、青色レーザ光N1と同様に、ライトガイド24aによって投光ユニット47に導光されて、照射窓42から照射される。青色レーザ光N2も蛍光体50を励起発光させるが、青色レーザ光N1と比べると、励起効率は低く(蛍光体50に吸収される割合が少ない)、青色レーザ光N2のほとんどは蛍光体50を透過する。青色レーザ光N2は、通常観察のときには照射されず、狭帯域光観察を行う場合にのみ、青色レーザ光N1に加えて照射される。
【0075】
図13に示すように、青色レーザ光N2が照射されると、照射窓42から照射される照明光には、青色レーザ光N1、青色レーザ光N2及び蛍光FLの3つの波長域の光が含まれる。青色レーザ光N2の配光分布は、青色レーザ光N1と同様の理由から、蛍光FLの配光分布との間に違いを生じる。また、青色レーザ光N1とも波長が異なるため、青色レーザ光N1の配光分布とも異なる。このように、青色レーザ光N1、N2、蛍光FLの3つの配光分布がそれぞれ異なるため、観察画像においては、各配光分布の違いによって色むらが生じる。
【0076】
2つのレーザ光源15、98を使用する本例においては、補正データ記憶部84cには、青色レーザ光N2を照射しないで観察を行う通常観察用と、青色レーザ光N2を照射して観察を行う狭帯域光観察用の2種類の補正データが格納される。通常観察用の補正データは、第1実施形態と同様であり、狭帯域光観察用の補正データは、通常観察用の補正データをベースに、青色レーザ光N2の配光分布を考慮した修正が施されたものが使用される。色むら補正部84bは、レーザ光源98の照射の有無に応じて、通常観察用の補正データと、狭帯域光観察用の補正データのいずれかを選択する。
【0077】
なお、本例は、2つのレーザ光源を使用した例であるが、レーザ光源の数を3つ以上にしてもよい。また、特殊光観察として、血管を強調表示する狭帯域光観察を例示したが、生体内の蛍光物質や薬剤として投与された蛍光物質に対して励起光を照射して蛍光を観察する蛍光観察など他の特殊光観察でもよい。
【0078】
さらに、本発明に係る内視鏡システムは、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0079】
上記実施形態では、2つの照射エリアの重なり方に応じた色むら補正を行う例で説明したが、さらに、電子内視鏡に、変倍が可能なズームレンズが設けられる場合には、ズーム倍率に応じた色むら補正を行うことが好ましい。観察距離Lが一定であれば、2つの照射エリアAIの重なり方に変化は生じないが、ズーム倍率が変化した場合には、照射エリアAI内における撮影エリアAPの大きさが変化するため、観察画像内の色むらの態様も変化する。そのため、ズーム倍率に応じた色むら補正が必要になる。
【0080】
上記実施形態では、半導体光源としてレーザ光源を例に説明しているが、半導体光源はLED光源でもよい。ただし、レーザ光源が発光するレーザ光は、一般に、LED光源が発光するLED光と比較して、指向性が高いため、配光分布の違いが生じやすい。というのは、上述のとおり、配光分布の違いが生じる主要な原因は、蛍光体が発する蛍光と蛍光体を透過する励起光との拡散性の違いにある。レーザ光はLED光と比較して指向性が高く、蛍光との間で拡散性の違いが大きいため、励起光をLED光とする場合と比較して、色むらも顕著になるからである。したがって、本発明は、LED光源と比較して、レーザ光源を使用する場合により効果を発揮する。
【0081】
色むらを補正するための補正データとしては、照射エリアAIの全域の配光分布に対応する補正データ(全域データ)を、補正データ記憶部84cに記憶しておかなくてもよく、照射エリアAIの一部の領域に対応する補正データ(部分データ)を記憶しておけばよい。部分データとしては、例えば、図14に示すように、照射エリアAIにおいて照射中心OIから周辺に向かって径方向に延びる一次元方向の配光分布に対応する一次元データDである。
【0082】
照射エリアAIはほぼ円形であり、配光分布は、照射中心OIから周辺に向かって同心円状に変化する。そのため、一次元データDを補正データ記憶部84cに記憶しておけば、色むら補正部84bが、一次元データDを円周方向に展開して、照射エリアAIの全域の配光分布に対応する全域データを生成することができる。一次元データDは、全域データよりもデータサイズが小さいので、補正データ記憶部84cのメモリ容量を小さくできる。
【0083】
なお、一次元データの代わりに、照射エリアAIの半円領域の部分データや、1/4円領域の部分データでもよい。こうしても、照射エリアAIの全域データよりはデータサイズが小さいので、補正データ記憶部99のメモリ容量を抑える効果はある。
【0084】
特に、図15に示すように、電子内視鏡10にROMなどの補正データ記憶部99を設けた場合には、電子内視鏡10の配置スペースの制約などの理由からROMの容量を大きくできない場合がある。補正データを、部分データとして記憶することは、こうした場合に有効である。
【0085】
また、補正データは、電子内視鏡10の機種や個体差によって変化するので、電子内視鏡10の補正データ記憶部99に、機種や個体差に応じた補正データを記憶させ、プロセッサ装置12が、接続された電子内視鏡10から補正データを取得するようにしてもよい。
【0086】
また、プロセッサ装置内の補正データ記憶部に、複数種類の電子内視鏡10に応じた複数種類の補正データを記憶して、プロセッサ装置のCPUが、接続された電子内視鏡10の機種に応じて補正データを選択してもよい。このようにプロセッサ装置に補正データ記憶部を設ける場合でも、補正データ記憶部には、複数種類の補正データを記憶する必要があり、メモリ容量の削減は必要になる。そのため、補正データを部分データとして記憶することは、プロセッサ装置に補正データ記憶部を設ける場合でも有効である。また、プロセッサ装置とネットワーク経由で接続される外部のデータサーバに補正データ記憶部を設けて、プロセッサ装置がネットワーク経由で補正データを読み出してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、2つの照明窓が設けられた2灯式の電子内視鏡を例に説明したが、照明窓の数は2灯式に限定されない。観察窓の左右に照明窓を2つずつ設けた4灯式や、照明窓が1つだけ設けられた1灯式などの電子内視鏡に本発明を適用してもよい。
【0088】
また、本発明は、撮像素子と超音波トランスデューサが先端部に内蔵された超音波内視鏡等、他の形態の内視鏡にも適用することができる。また、医療用だけでなく、工業分野で利用される内視鏡に適用してもよい。ただし、色むらは、観察部位の性状に関して精緻な診断が必要な医療分野においてより問題となるので、本発明は医療用の内視鏡システムにおいてより必要性が高い。
【符号の説明】
【0089】
2 内視鏡システム
10 電子内視鏡
12 プロセッサ装置
13 光源装置
15、98 レーザ光源
26 先端部
41 観察窓
42 照明窓
46 撮像ユニット
47 投光ユニット
50 蛍光体
84 画像処理部
84a 観察距離測定部
84b 色むら補正部
84c、99 補正データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入される挿入部を有し、前記挿入部の先端部に前記被検体内の観察部位に対して照明光を照射する照明窓と、前記観察部位を撮影するための観察窓とを有する内視鏡と、
励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、前記照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を前記照明光として照射する照射手段と、
前記観察窓を通じて前記観察部位で反射した前記照明光を受光して前記観察部位の観察画像を撮像する撮像手段と、
前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる、前記観察画像内の色むらを補正するための補正データを記憶する記憶手段と、
前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正手段とを備えていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記第1の半導体光源は、レーザ光源であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記照明窓は2つ設けられており、
前記色むら補正手段は、前記2つの照明窓のそれぞれの照射エリアの重なり方に応じて前記色むらを補正することを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記先端部と前記観察部位までの距離である観察距離を測定する観察距離測定手段を備えており、
前記色むら補正手段は、測定された前記観察距離に基づいて、2つの前記照射エリアの重なり方を求めることを特徴とする請求項3記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記補正データは、前記照射エリアのうち一部の領域の配光分布に対応する部分データであり、前記色むら補正部は、前記部分データに基づいて、前記照射エリアの全域の配光分布に対応する全域データを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記励起光及び前記蛍光は、それぞれの照射エリアがほぼ円形であり、かつ、それぞれの配光分布における光強度の差は、照射中心からの径方向の距離により異なり、
前記部分データは、前記照射中心から径方向に延びる一次元方向の配光分布に対応する一次元データであり、
前記色むら補正手段は、前記一次元データを円周方向に展開することにより、前記全域データを生成することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記内視鏡に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記励起光は青色光で、前記蛍光は緑色から赤色光であり、前記励起光及び前記蛍光が混合されることにより白色の前記照明光が生成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記照射手段は、前記励起光とは波長域が異なる光を発する第2の半導体光源を有しており、前記第2の半導体光源が発する光を、前記蛍光体を透過させて前記照明窓から照射することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記補正データは、前記励起光及び前記蛍光のみを照射する場合の第1補正データと、前記励起光及び前記蛍光に加えて、前記第2の半導体光源からの光を照射する場合の第2補正データの2種類の補正データを有しており、
前記色むら補正手段は、前記第2の半導体光源からの光の照射の有無に応じて前記第1及び第2補正データのいずれかを選択することを特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記第1の半導体光源は、中心波長が445nmの狭帯域光を発し、前記第2の半導体光源は、中心波長が405nmの狭帯域光を発することを特徴とする請求項9又は10に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、内視鏡の照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を照明光として照射する照射手段を有する内視鏡システムに用いられるプロセッサ装置において、
前記内視鏡によって撮影された観察画像において、前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる色むらを補正するための補正データを記憶手段から読み出す手段と、
前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正手段とを備えていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項13】
励起光を発する第1の半導体光源と、前記励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを有しており、内視鏡の照明窓から、前記蛍光体を透過する前記励起光の一部と前記蛍光とを混合した光を照明光として照射する照射手段を有する内視鏡システムに用いられる画像補正方法において、
前記内視鏡によって撮影された観察画像において、前記励起光と前記蛍光の配光分布の違いによって生じる色むらを補正するための補正データを記憶手段から読み出すステップと、
前記補正データに基づいて、前記観察画像に対して画像処理を施して前記色むらを補正する色むら補正ステップとを備えていることを特徴とする画像補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−175(P2013−175A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131392(P2011−131392)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】