説明

内視鏡システム

【課題】 内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減する内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】 内視鏡2および内視鏡2を保持する内視鏡保持台3を有する内視鏡システム1であって、内視鏡2は、被検体に挿入される挿入部12に連設された操作部13および操作部13の上部に設けられ、撮像された被検体の被検部位の映像を表示する映像表示部31が回動自在に起伏する映像表示装置14を有し、内視鏡保持台3は、映像表示部31の裏面に接触して、映像表示部31を倒れた状態から所定の角度に起上させる内視鏡保持部40を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段によって撮像された内視鏡画像が表示されるモニタを有する表示装置が操作部に設けられた携帯型の内視鏡と、この内視鏡を検査室内で保持する内視鏡保持台と、を備えた内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡装置を簡略化するため、モニタが操作部に配設された構成とした携帯型の内視鏡が提案されている。このような携帯型の内視鏡は、例えば、特許文献1に開示され、撮像素子により得た被写体の像を映像化して表示するモニタを有する表示装置本体を備え、操作部に対して表示装置本体が回動可能に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−236648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような携帯型の内視鏡の場合、検査中または検査後にユーザが常に操作部を把持して持っていなければならずユーザへの負担となっていた。また、ユーザは、所望の角度に表示装置本体を維持したままボタン操作を行い、録画、再生、停止など内視鏡画像に関する各種操作を行なう必要がある。このとき、ユーザは、押圧力で表示装置本体が操作部側に倒れてしまう可能性がありボタン操作が行い難く、また表示装置本体が倒れてしまうと、再度、モニタが正対する所望の角度に表示装置本体の傾きを戻さなければならないという問題があった。
【0005】
さらに、上述のように表示装置本体のモニタが正対する方向に傾けられるようになっているため、術者は、撮影した内視鏡画像での説明時に常に操作部を把持しながら被検者、医療スタッフなどに内視鏡画像が見えるようにして、供覧しなければならず非常に負担となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減する内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の内視鏡システムは、内視鏡および前記内視鏡を保持する内視鏡保持台を有する内視鏡システムであって、前記内視鏡は、被検体に挿入される挿入部に連設された操作部および前記操作部の上部に設けられ、撮像された前記被検体の被検部位の映像を表示する映像表示部が回動自在に起伏する映像表示装置を有し、前記内視鏡保持台は、前記映像表示部の裏面に接触して、前記映像表示部を倒れた状態から所定の角度に起上させる内視鏡保持部を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減する内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係り、内視鏡システムの構成を示す斜視図
【図2】同、図2は内視鏡を内視鏡保持台へ保持するときの状態を説明する側面図
【図3】同、図3は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する側面図
【図4】同、図4は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの内視鏡システムの斜視図
【図5】本発明の第2の実施の形態に係り、内視鏡を内視鏡保持台へ保持するときの状態を説明する側面図
【図6】同、内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する側面図
【図7】本発明の第3の実施の形態に係り、内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図
【図8】同、内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する斜視図
【図9】同、第1の変形例の内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図
【図10】同、第2の変形例の内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図
【図11】同、第3の変形例のワークトローリに固定した内視鏡保持部の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明である内視鏡システムについて説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
(第1の実施の形態)
先ず、図1から図4の図面に基づいて本発明の第1の形態を説明する。図1は、内視鏡システムの構成を示す斜視図、図2は内視鏡を内視鏡保持台へ保持するときの状態を説明する側面図、図3は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する側面図、図4は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの内視鏡システムの斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の内視鏡システム1は、携帯型の内視鏡2と、この内視鏡2を保持する内視鏡保持台3と、を有して構成されている。
先ず、内視鏡2について以下に説明する。内視鏡2は、被検体となる体腔内の被検部位に挿入される挿入部12と、この挿入部12の基端側に連設された操作部13と、この操作部13の上端に配設された表示装置である映像表示装置14と、を有して主要部が構成されている。
【0013】
挿入部12は、可撓性を有する細長な形状に形成されており、先端側に位置する硬質な先端部15と、この先端部15の基端側に連設された湾曲部16と、この湾曲部16の基端側に連設された可撓部17とにより主要部が構成されている。操作部13は、術者により把持される把持部18と、この把持部18の上方に連設された操作部本体19と、を有して主要部が構成されている。
【0014】
把持部18は、内視鏡2の内部に配設される処置具チャンネル(不図示)に鉗子などの処置具を体腔内に対して挿抜するための処置具挿通口20が設けられている。この把持部18内には、被検体を照射する照明光を供給する照明手段であり照明部である、例えば白色の発光ダイオード(LED)が配設されている。このLEDが発光した光(照明用光)は、挿入部12に挿通された光ファイバにより伝送され、先端部15に設けられた照明窓から被検部位に向けて照射される(何れも不図示)。
【0015】
操作部本体19内には、被検部位を撮像する撮像手段であり撮像部であるCCD、CMOSなどから構成された撮像素子(不図示)が配設されている。なお、この撮像素子は、撮像手段である撮像部を構成している。また、操作部本体19には、体腔内から体液、痰などの液体を吸引する際用いられる吸引口金21が設けられている。吸引口金21には、図示しないチューブを介して吸引装置が接続自在である。
【0016】
さらに、操作部本体19には、内視鏡2の漏水検査の際に、挿入部12、操作部13、及び映像表示装置14内に空気を送気するために用いられる通気口金22が設けられている。通気口金22には、図示しないチューブを介して給気装置が接続自在である。術者は、給気装置を作動させ、水中にて通気口金22から内視鏡2内に空気を送り込むことにより、内視鏡2の漏水検査を行うことができる。
【0017】
また、操作部本体19には、挿入部12の内部に挿通する湾曲操作ワイヤ(不図示)を介して、湾曲部16を例えば、上下の方向に湾曲させるための湾曲操作レバー23が設けられている。この湾曲操作レバー23は、把持部8を握った術者の、例えば、左手の親指によって操作できるよう、ユーザの手前側であって、把持部18に対し近接する位置に設けられている。なお、湾曲操作レバー23は、ユーザが操作時に指を掛ける指掛部23aと、この指掛部23aに連設された腕部23bとを有したL字型形状に構成されている。
【0018】
映像表示装置14は、操作部本体19の上部に設けられた円柱状の首部30を介して連結されている。この映像表示装置14は、箱型である略直方体形状をした映像表示本体31と、この映像表示本体31に対して所定の摩擦力を有して回動自在に配設された板状の映像表示部32と、を有して主要部が構成されている。
【0019】
映像表示本体31には、取り出し可能なバッテリ、映像処理制御基板、記憶媒体が装着自在な防水構造にされたメモリソケットなどが配設されている。映像表示部32は、上面にモニタ33と、このモニタ33の側方に電源ON/OFF、静止画記録、動画記録などを操作する各種スイッチ類34が設けられている。なお、映像表示部32は、映像表示本体31に対して回動して起伏可動する構成部の水密が保たれた構造となっている。
【0020】
また、映像表示部32は、ユーザが例えば、左手で湾曲操作レバー23の指掛部23aが手前側となるように操作部13を把持した状態において、ユーザ側へ正対する方向に起上されるように映像表示本体31に対して回動される。
【0021】
次に内視鏡保持台3について以下に説明する。内視鏡保持台3は、内視鏡2を保持する内視鏡用スタンドであって、上部に配設される内視鏡保持部40と、この内視鏡保持部40から下方へ延設されたスタンドバー41と、このスタンドバー41の下端に接続された脚部42と、を有して主要部が構成されている。なお、内視鏡保持部40は、スタンドバー41の長さが少なくとも内視鏡2の全長よりも長い。また、スタンドバー41は、長さを調整できるように伸縮自在な構成としても良い。さらに、脚部42にキャスタを設けても良い。
【0022】
内視鏡保持部40は、内視鏡2の映像表示装置14が載置されて保持する保持台である載置台51と、この載置台51の上面一側部から上方へ延設されたレール52と、を有している。
載置台51は、ここでは円板形状の前方側に2つの腕部53が延設されている。これら腕部53の間に延出する根元部分が内視鏡2の首部30に合わせて円弧状に形成され、この首部30が進入される溝部53aが形成されている。また、2つの腕部53のそれぞれの延出端、ここでは前方となる端部に上方へ突起して映像表示装置14の映像表示本体31に当接して係止して、載置台51からの内視鏡2の脱落を防止するストッパ54が形成されている。
【0023】
レール52は、円弧状の細長な板体であって、長手方向に沿って中央に円弧状のレール溝56が形成されている。このレール溝56には、レール52に沿って移動する移動軸体61が配設されている。この移動軸体61は、スライド軸61aと、起上軸61bと、から構成された2つのアーム構造となっている。
【0024】
スライド軸61aは、スライドアーム57の一端と接続されている。このスライトアーム57の他端は、映像表示装置14の映像表示本体31の一側面、ここではユーザが内視鏡2の操作部13を把持した状態における後方となる奥側の一面に突き当てられる板状の突当部58に回動自在に接続されている。また、起上軸61bは、映像表示部32を映像表示本体31に対して起上させる棒状の起上アーム59に接続されている。
【0025】
これらスライド軸61aおよび起上軸61bは、同一の中心軸を有し、互いが中心軸回りに回動自在に設定されている。なお、スライドアーム57および起上アーム59は、初期状態、つまり、内視鏡2が内視鏡保持台3に保持されていない状態において、互いのなす角が所定の角度θ1(図2参照)となるようにスライド軸61aおよび起上軸61bの内部に回動を規制するストッパ(不図示)が設けられている。
【0026】
具体的に説明すると、図2に示すように、映像表示本体31に対して映像表示部32が倒れている略閉成した状態における映像表示本体31と映像表示部32との境界に起上アーム59の先端が位置して、スライドアーム57と起上アーム59とのなす角が所定の角度θ1となるように設定されている。なお、起上アーム59の先端部は、上部側が削り取られたテーパ60が形成されており、映像表示本体31と映像表示部32の境界に進入し易くなっている。
【0027】
以上のように構成された本実施の形態の内視鏡システム1において、内視鏡2が内視鏡保持台3に保持されるときの動作について以下に説明する。
内視鏡2を内視鏡保持台3に保持するとき、図2に示すように映像表示装置14の映像表示本体31の一面に突当部58が当接され、さらに後方側となる載置台51側へと内視鏡2が押し込まれて、図3に示すように載置台51上に映像表示本体31が載置される。なお、内視鏡2は、その首部30が載置台51から延設する2つの腕部53の間に形成された溝部53aに進入するように押し込まれる。
【0028】
つまり、内視鏡2は、内視鏡保持台3に保持する過程において、上述したように、映像表示装置14の映像表示本体31のここではユーザが内視鏡2の操作部13を把持した状態における後方側となる奥側の一面に突当部58の前面が突き当てられた後、さらに載置台51へと後方に向けて押し込まれる。すると、突当部58に回動自在に接続されたスライドアーム57に内視鏡2の進入方向へ押圧力が加わり、このスライドアーム57に接続された移動軸体61が湾曲したレール52のレール溝56に沿って上方側へ移動される。
【0029】
このとき、起上アーム59の先端が映像表示本体31と映像表示部32との境界に進入して、映像表示本体31の上面に当接したまま、内視鏡2の押し込み量(距離)に応じて映像表示本体31の上面が起上アーム59の先端に対してスライドする。そして、スライドアーム57と起上アーム59とのなす角が拡がり、映像表示部32の下面(裏面)が起上アーム59に当接(接触)して、映像表示部32が水平方向から垂直方向へと映像表示本体31に対して回動してユーザの手前側に起き上がる。
【0030】
なお、内視鏡2は、2つの腕部53のストッパ54が映像表示本体31に当接して係止する位置まで内視鏡保持台3の載置台51側となる後方へ押し込まれる。これにより、内視鏡2は、内視鏡保持台3からの脱落が防止される。なお、このときのスライドアーム57と起上アーム59とのなす角が所定の角度θ2(図3参照)となるようにスライドアーム57と起上アーム59とが拡がる。このように内視鏡2が内視鏡保持台3に保持されたときに、起上アーム59によって迫り上げられた映像表示部32は、モニタ33が設けられた上面である表面とは反対側の下面である裏面が起上アーム59に当接(接触)した状態となる。なお、このときの起上アーム59の先端は、映像表示本体31の上面に当接した状態となる。
【0031】
以上に説明したように、本実施の形態の内視鏡システム1は、図3および図4に示すように、内視鏡保持部40の載置台51上に映像表示装置14の映像表示本体31が載置されて、内視鏡2が内視鏡保持台3に保持されると映像表示部32が映像表示本体31に対して水平方向から垂直方向へ所定の角度で起き上がった状態となる。そのため、内視鏡2のユーザである術者は、検査中または検査後において、撮影した内視鏡画像を被検者、医療スタッフなどに説明するときに、内視鏡保持台3に内視鏡2を保持させることで内視鏡画像を供覧し易くすることができる。このときに、術者は、内視鏡2を把持し続ける必要もないため負担が軽減される。なお、術者は、被検者へ挿入部12を挿入している検査中においても、内視鏡保持台3に内視鏡2を保持させれば、湾曲操作以外では内視鏡2を把持する必要もなく検査、治療などが行えるため負担も軽減される。
【0032】
さらに、内視鏡2が内視鏡保持台3に保持されていれば、映像表示装置14の映像表示部32が起上アーム59に当接(接触)した状態で起上されているため、術者は、電源ON/OFF、静止画記録、動画記録などを操作する各種スイッチ類34を押し込み操作するときに、その押圧力量(図3中の矢印F方向の応力量)で映像表示部32が操作部13側、つまり映像表示本体31側に垂直方向から水平方向へ倒れてしまうことがなく、確実に各種スイッチ類34操作を行なえる。さらに、映像表示部32が倒れないため、再度、所望の角度に映像表示部32の傾きを戻さなくても良くなる。つまり、ここでの起上アーム59は、各種スイッチ類34を押し込み操作するときに映像表示部32が所定の角度を維持して倒れないように支持するための押圧力量反力部を構成している。
【0033】
以上の説明により、本実施の形態の内視鏡システム1は、内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減することができる構成となる。
【0034】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図5および図6を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその構成要素の詳しい説明は省略する。図5は、内視鏡を内視鏡保持台へ保持するときの状態を説明する側面図、図6は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する側面図である。
【0035】
本実施の形態の内視鏡システム1は、図5および図6に示すように、内視鏡保持台3の構成が第1の実施の形態と異なる。具体的には、内視鏡保持台3の内視鏡保持部40は、載置台51の上面一側部から直線状に上方へ延設されたレール62と、このレール62に形成された直線状のレール溝63に沿って上下に移動する移動軸体64と、この移動軸体64に一端に接続されたスライドアーム57の他端と回動自在に接続された内視鏡2の映像表示装置14が載置されて前後にスライド移動される内視鏡保持体となる内視鏡保持ブロック70と、を有している。なお、移動軸体64に接続される起上アーム59は、第1の実施の形態と異なり、回動することなく常に水平方向に固定されている。
【0036】
ここでの内視鏡保持ブロック70は、前後の端部が上方へ突起して映像表示装置14の映像表示本体31に当接して係止して、載置台51からの内視鏡2の脱落を防止するストッパ71が形成されている。なお、図示していないが、内視鏡保持ブロック70には、内視鏡2の首部30に合わせて円弧状に形成されて、この首部30が挿入される溝部が前方中央部から後方中途まで形成されている。
【0037】
また、腕部53の上面および内視鏡保持ブロック70の下面のそれぞれには、互いに係合する凹凸72,73が形成されて所謂ラチェット機構が構成されている。これにより、内視鏡保持ブロック70の載置台51上での前後のスライド移動位置を所望に規定して固定することができる。なお、その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0038】
以上のように構成された内視鏡システム1の内視鏡保持台3に内視鏡2が保持されるときの動作について以下に説明する。
先ず、内視鏡保持ブロック70に内視鏡2の映像表示装置14が載置され、さらに載置台51側へと内視鏡2が押し込まれる。つまり、内視鏡2は、内視鏡保持台3に保持する過程において、映像表示装置14の映像表示本体31の前後が内視鏡保持ブロック70のストッパ71に当接して保持され、さらにここでの後方側となる載置台51側へと押し込まれる。すると、内視鏡保持ブロック70に回動自在に接続されたスライドアーム57に後方への押圧力が加わることで、このスライドアーム57に接続された移動軸体64がレール62のレール溝63に沿って上方へ直進移動する。
【0039】
このとき、起上アーム59の先端は、映像表示本体31と映像表示部32との境界に進入して、テーパ60が映像表示部32の下面(裏面)に当接する。この起上アーム59のテーパ60は、内視鏡2が後方側となる内視鏡保持台3の載置台51側へ押し込まれると、起上アーム59の上方への移動に伴って、映像表示部32の裏面をスライドする。そして、水平方向から垂直方向へと映像表示部32が迫り上げられるように映像表示本体31に対して回動してユーザの手前側に起き上げられる。つまり、ここでの起上アーム59も、各種スイッチ類34を押し込み操作するときの押圧力量(図6中の矢印F方向の応力量)に抗して、映像表示部32が所定の角度を維持して倒れないように支持するための押圧力量反力部を構成している。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態の内視鏡システム1でも、第1の実施の形態と同様に、内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減することができる構成となる。
【0041】
さらに、内視鏡システム1は、腕部53の上面および内視鏡保持ブロック70の下面のそれぞれには、互いに係合する凹凸72,73が形成されて所謂ラチェット機構を設けることで、ユーザが内視鏡保持台3に対する内視鏡2の押し込み量を調整してモニタ33を見易いように映像表示部32の任意の角度を決めることができる。
【0042】
なお、上述の内視鏡保持ブロック70を設けて、ラチェット機構とした構成は、第1の実施の形態の内視鏡保持台3にも適用でき、同様にして、ユーザが内視鏡保持台3に対する内視鏡2の押し込み量を調整してモニタ33を見易いように映像表示部32の任意の角度を決めることができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態について図7から図11を参照して説明する。なお、ここでも第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその構成要素の詳しい説明は省略する。図7は、内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図、図8は内視鏡が内視鏡保持台へ保持されたときの状態を説明する斜視図、図9は第1の変形例の内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図、図10は第2の変形例の内視鏡保持台の内視鏡保持部の構成を示す斜視図、図11は第3の変形例のワークトローリに固定した内視鏡保持部の構成を示す斜視図である。
【0044】
本実施の形態の内視鏡システム1は、図7に示すように、内視鏡保持台3の内視鏡保持部40の構成が上述の第1、第2の実施の形態と異なる。具体的には、内視鏡保持部40は、例えば、樹脂により形成された断面がコの字状に形成されたブロック体の内視鏡保持体81を有している。この内視鏡保持体81は、前方側の上方に傾斜部82が形成され、前方から後方側に向けて直方体形状に切り欠かれた映像表示装置14の映像表示本体31を収容する凹部83を有している。また、内視鏡保持体81は、凹部83を形成する一面、詳しくは凹部83の下面部を形成し、中途部分にある平面部に弾性を有するラバー、スポンジなどから形成された板状の圧接保持部材85が設けられている。
【0045】
なお、内視鏡保持体81は、中途にある上記平面部および圧接保持部材85に内視鏡2の首部30に合わせて円弧状に形成され、この首部30が進入される溝部84,86が形成されている。
【0046】
以上のように構成された内視鏡システム1は、内視鏡保持台3に内視鏡2が保持されるとき、図8に示すように、映像表示装置14の映像表示本体31が内視鏡保持部40の凹部83に嵌め込まれる。すると、映像表示装置14の映像表示部32は、裏面が内視鏡保持部40の傾斜部82に接触して、スライドしながら水平方向から垂直方向へと迫り上げられるように映像表示本体31に対して回動してユーザの手前側に起き上げられる。
【0047】
この状態において、映像表示装置14の映像表示本体31の裏面が圧接保持部材85の上面に押え付けられ、所定の摩擦力により保持される。また、内視鏡保持台3は、内視鏡保持部40の傾斜部82が内視鏡2の映像表示部32に設けられた各種スイッチ類34を押し込み操作するときに生じる押圧力量に抗して、映像表示部32の裏面と接触して映像表示部32が所定の角度を維持して倒れないように支持する押圧力量反力部を構成して、さらに、押圧力を受ける映像表示装置14に傾斜部82によって生じる前方への応力に抗して圧接保持部材85が映像表示本体31を押え付けて内視鏡2の内視鏡保持台3からの脱落を防止する構成となっている。
【0048】
以上のように構成された本実施の形態の内視鏡システム1でも、第1、および第2の実施の形態と同様に、内視鏡画像に関する各種操作性が向上すると共に、被検者、医療スタッフなどと内視鏡画像を供覧するときの術者への負担を軽減することができる構成となる。
【0049】
(第1の変形例)
なお、図9に示すように、内視鏡保持部40の凹部83を形成する垂直方向の一面に内視鏡2の映像表示装置14の映像表示本体31が嵌め込まれたときに接続される例えば雄型コネクタである電気的接点部90を設けても良い。勿論、映像表示本体31は、この電気的接点部90に電気的に接続される雌型コネクタを有しているものである。
【0050】
このような構成とすることで、内視鏡2を内視鏡保持台3に保持させたときに、内視鏡2に設けられるバッテリ充電のための電力供給、内視鏡2が撮影した画像データの外部機器への転送などを行なえるようになる。なお、この構成は、第1および第2の実施の形態の内視鏡保持部40にも適用できるものである。
【0051】
(第2の変形例)
また、図10に示すように、内視鏡保持台3は、内視鏡保持部40に接続されたL字状のアーム91と、このアーム91の端部にボルトにより壁面取り付け用のプレート92を有した構成としても良い。この内視鏡保持台3は、検査室、手術室の壁面に直接固定するような構成としても本願における上述した各作用効果を奏する。なお、この構成は、第1および第2の実施の形態の内視鏡保持部40にも適用できるものである。
【0052】
(第3の変形例)
さらに、図11に示すように、内視鏡保持部40を内視鏡用のワークトローリ100に直接取り付けても良い。なお、この構成も、第1および第2の実施の形態の内視鏡保持部40にも適用できるものである。
【0053】
なお、上述の各実施の形態では、電源ON/OFF、静止画記録、動画記録などの操作をする各種スイッチ類34を例示したが、これに限定されることなく、例えばモニタ33の画面をタッチパネル構成としても良く、上記各押圧力量反力部の構成によりタッチパネルを操作する押圧力量で映像表示本体31側に垂直方向から水平方向へ倒れてしまうことも防止される。を構成している。
【0054】
以上の各実施の形態に記載した発明は、それぞれの実施の形態および変形例に記載した内容に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、前記各実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0055】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0056】
1…内視鏡システム
2…内視鏡
3…内視鏡保持台
8…把持部
12…挿入部
13…操作部
14…映像表示装置
15…先端部
16…湾曲部
17…可撓部
18…把持部
19…操作部本体
20…処置具挿通口
21…吸引口金
22…通気口金
23…湾曲操作レバー
23a…指掛部
23b…腕部
30…首部
31…映像装置本体
32…映像表示部
33…モニタ
34…各種スイッチ類
40…内視鏡保持部
41…スタンドバー
42…脚部
51…載置台
52…レール
53…腕部
53a…溝部
54…ストッパ
56…レール溝
57…スライドアーム
58…突当部
59…起上アーム
60…テーパ
61…移動軸体
61a…スライド軸
61b…起上軸
62…レール
63…レール溝
64…移動軸体
70…内視鏡保持ブロック
71…ストッパ
72,73…凹凸
81…内視鏡保持体
82…傾斜部
83…凹部
84,86…溝部
85…圧接保持部材
90…電気的接点部
91…アーム
92…プレート
100…ワークトローリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡および前記内視鏡を保持する内視鏡保持台を有する内視鏡システムであって、
前記内視鏡は、被検体に挿入される挿入部に連設された操作部および前記操作部の上部に設けられ、撮像された前記被検体の被検部位の映像を表示する映像表示部が回動自在に起伏する映像表示装置を有し、
前記内視鏡保持台は、前記映像表示部に接触して、前記映像表示部を倒れた状態から所定の角度に起上させる内視鏡保持部を具備することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記内視鏡保持台により前記内視鏡を保持した状態において、
前記内視鏡保持部が前記映像表示部を倒れないように支持する反力部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記映像表示部の表面にスイッチが設けられ、
前記反力部が前記映像表示部に生じる前記スイッチの押下操作に伴う押圧力量により、前記映像表示部を倒れないように支持することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記反力部は、前記内視鏡保持部が前記内視鏡を保持する過程において、角度が可変して前記映像表示部を倒れた状態から所定の角度に起上させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記反力部は、前記内視鏡保持部が前記内視鏡を保持する過程において、上方に移動して前記映像表示部を倒れた状態から所定の角度に起上させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記内視鏡保持台は、前記内視鏡の前記映像表示装置を載置して保持し、保持台上で前後にスライド自在な保持体を有し、
前記保持台の上面と前記保持体の下面に互いが係合する複数の凹凸を形成したラチェット機構を設けて、前記保持台における前記保持体の前後の位置に応じて前記映像表示部の起上角度を可変することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記反力部は、前記内視鏡保持部が前記内視鏡を保持する過程において、前記映像表示部を倒れた状態から所定の角度に起上させる傾斜部であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記内視鏡保持部は、前記映像表示装置と電気的に接続される電気接点を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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