説明

内視鏡プロセッサ、自家蛍光画像表示プログラム、及び内視鏡システム

【課題】蛍光内視鏡システムにおいて病変部位と出血部位を判別可能な画像を作成する。
【解決手段】前段信号処理回路41は参照光画像信号および蛍光画像信号を交互に受信する。マトリックス回路45は画像信号をR信号成分、G信号成分、およびB信号成分に分解する。RGB信号成分をDRAM43に格納する。参照光画像信号を分解したRGB信号成分を比率産出回路46に送る。比率算出回路46はRGB信号成分に基づいてG/RとB/Rとを算出する。判別回路47はG/RとB/Rとが出血判別領域に含まれるか否かを判別する。判別回路47による判別に基づいて、擬似カラー画像演算回路48は出血推定領域において擬似カラー画像を作成する。また、擬似カラー画像演算回路48は非出血領域において参照光画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自家蛍光を利用した電子内視鏡システムにおいて、病変部の特定に寄与する画像を作成する内視鏡プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の特定の波長の光(励起光)を生体組織に照射することにより、生体組織が蛍光を発する自家蛍光が知られている。また、がん細胞等の病変部位においてはこの蛍光の光量が低いことが知られている。この性質を利用した電子内視鏡システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この電子内視鏡システムでは、白色光等の参照光を照射した時の参照光画像と励起光を照射した時の自家蛍光画像を比較して、自家蛍光画像では暗く、参照光画像では明るい画素を抽出する信号処理を行い、この画素を着色した擬似カラー画像を表示することにより、病変部位の特定を可能としていた。
【0004】
自家蛍光画像では病変部位以外にも管腔の奥や凹部などが暗く表示されるため病変部位との区別が難しく、病変部位の特定が困難であった。そこで、前述のような画素の抽出を行なって着色した擬似カラー画像の表示により、病変部位と推定される領域の特定が容易となった。
【0005】
ところで、ヘモグロビンは励起光および自家蛍光を強く吸収するため、病変部位と関係のない出血部位も病変部位と同様に自家蛍光画像では暗く表示され、参照光画像では明るく表示される。それゆえ、擬似カラー画像ではこのような出血部位も着色されるため、病変部位と出血部位とを判別することが困難であった。
【特許文献1】特開2005−40181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明では、擬似カラー画像のように自家蛍光画像に基づいて病変部位を特定させるための画像を、出血部位を表示する領域以外の領域において作成する内視鏡プロセッサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡プロセッサは、生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光または参照光が異なるタイミングで照射されるそれぞれの被写体の光学像に基づいたそれぞれの画像信号を生成する撮像素子から、参照光が照射される時に生成される画像信号である参照光画像信号と励起光が照射される時に生成される画像信号である蛍光画像信号とを受信する受信部と、参照光画像信号を形成する色信号成分に基づいて出血部位と推定される出血推定領域を撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、出血推定領域以外の撮影領域である非出血領域のみにおいて蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部とを備えることを特徴としている。
【0008】
なお、色信号はR信号成分、G信号成分、およびB信号成分であり、色判別部はR信号成分に対するG信号成分およびB信号成分の信号強度の比であるG/R、B/Rを算出しG/Rが第1の範囲内であってB/Rが第2の範囲内である領域を前記出血推定領域に特定することが好ましい。
【0009】
また、色判別部による出血推定領域の特定は蛍光画像信号に相当する蛍光画像において閾値より輝度が低い領域に対して行なわれることが好ましい。
【0010】
また、病変部推定画像は参照光画像信号に基づいて作成されることが好ましい。
【0011】
また、画像処理部は出血推定領域を所定の色に着色することが好ましい。または、画像処理部は出血推定領域に所定の形態の網掛けをすることが好ましい。
【0012】
本発明の擬似カラー画像作成プログラムは、生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光または参照光が異なるタイミングで照射されるそれぞれの被写体の光学像に基づいたそれぞれの画像信号を生成する撮像素子から参照光が照射される時に生成される画像信号である参照光画像信号と励起光が照射される時に生成される画像信号である蛍光画像信号とを受信部に受信させる駆動部と、参照光画像信号を形成する色信号に基づいて出血部位と推定される出血推定領域を撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、出血推定領域以外の撮影領域である非出血領域のみにおいて蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部として内視鏡プロセッサを機能させることを特徴としている。
【0013】
本発明の内視鏡システムは、参照光と生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光とを出射する光源ユニットと、励起光と参照光とを異なるタイミングで出射させる光源制御部と、励起光が被写体に照射されるときの被写体の光学像を受光して蛍光画像信号を生成し参照光が被写体に照射されるときの被写体の光学像を受光して参照光画像信号を生成する撮像素子と、参照光画像信号を形成する色信号に基づいて出血部位と推定される出血推定領域を撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、出血推定領域以外の撮影領域である非出血領域のみにおいて蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部と、画像処理部に作成された病変部推定画像を表示するモニタとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出血推定領域以外の非出血領域のみにおいて蛍光画像信号に基づく病変部位を推定するための病変部推定画像の作成が可能となる。したがって、出血部位と病変部位の判別が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した内視鏡プロセッサを有する内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0016】
内視鏡システム10は、内視鏡プロセッサ20、電子内視鏡50、およびモニタ60によって構成される。内視鏡プロセッサ20は、電子内視鏡50、及びモニタ60に接続される。
【0017】
内視鏡プロセッサ20から被写体を照明するための照明光が供給される。照明された被写体が電子内視鏡50により撮影される。電子内視鏡50の撮影により生成する画像信号が内視鏡プロセッサ20に送られる。
【0018】
内視鏡プロセッサ20では、電子内視鏡50から得られた画像信号に対して所定の信号処理が施される。所定の信号処理を施した画像信号はビデオ信号としてモニタ60に送られ、送られたビデオ信号に相当する画像がモニタ60に表示される。
【0019】
内視鏡プロセッサ20には、光源ユニット30、画像処理ユニット40、システムコントローラ21、及びタイミングコントローラ22等が設けられる。後述するように、光源ユニット30は被写体を照明するための照明光を発光する。また、後述するように、画像処理ユニット40では画像信号に対して所定の信号処理が施される。
【0020】
システムコントローラ21により内視鏡プロセッサ20全体の動作が制御される。タイミングコントローラ22により内視鏡プロセッサ20の各部位における動作のタイミングが調整される。
【0021】
内視鏡プロセッサ20と電子内視鏡50とを接続すると、光源ユニット30と電子内視鏡50に設けられるライトガイド51とが光学的に接続される。また、内視鏡プロセッサ20と電子内視鏡50とを接続すると、画像処理ユニット40と電子内視鏡50に設けられる撮像素子52とが、撮像素子駆動回路23を介してタイミングコントローラ22と撮像素子52とが電気的に接続され、更にシステムコントローラ21と電子内視鏡50に設けられる操作入力部53とが電気的に接続される。
【0022】
光源ユニット30は、白色光を発する光源31、集光レンズ32、光源フィルタ33、光源フィルタ駆動機構34、およびモータ35によって構成される。光源31から照射される光をライトガイド51の入射端に導くための光路中に集光レンズ32が設けられる。集光レンズ32により光源31が発する光が集光され、ライトガイド51の入射端に入射される。
【0023】
光源フィルタ33は光源フィルタ駆動機構34に支持され、光源31の光路中に挿入および離脱可能である。光源フィルタ33の光源31の光路への挿入および離脱は、モータ35を駆動することにより実行される。モータ35の駆動は、システムコントローラ21によって制御される。
【0024】
なお、光源フィルタ駆動機構34には位置検出センサ36が設けられ、光源フィルタ33の位置が位置検出センサ36によって検出される。また、位置検出センサ36によって検出される光源フィルタ33の位置がシステムコントローラ21に送られる。光源フィルタ33の位置に基づいて、システムコントローラ21によって前述のようにモータ35の駆動が制御される。
【0025】
なお、光源フィルタ33は、照射される光の中の赤色光成分を吸収し、青色および緑色の光成分を透過する部材によって形成される。したがって、光源フィルタ33を光源31の光路中に挿入すると、白色光のうちの青色および緑色の一部光成分または紫外成分である励起光がライトガイド51の入射端に入射される。一方、光源フィルタ33を光源31の光路から離脱させると、白色光がライトガイド51の入射端に入射される。
【0026】
なお、光源フィルタ33の光路への挿入または離脱は、電子内視鏡50に設けられる操作入力部53を操作することにより実行される。操作入力部53への入力に基づいて、システムコントローラ21がモータ35を制御して、光源フィルタ33の挿入または離脱が行なわれる。
【0027】
なお、内視鏡システム10には、参照光画像表示モード、自家蛍光画像表示モード、および擬似カラー画像表示モードが設けられる。参照光画像表示モードでは、光源フィルタ33が光路から離脱する。自家蛍光画像表示モードでは、光源フィルタ33が光路に挿入される。また、擬似カラー画像表示モードでは、光源フィルタ33の光路への挿入と離脱が連続するフィールドに同期して交互に繰返される。
【0028】
次に電子内視鏡50の構成について詳細に説明する。電子内視鏡50には、ライトガイド51、撮像素子52、操作入力部53、及び励起光カットフィルタ54等が設けられる。ライトガイド51は、内視鏡プロセッサ20との接続部分から電子内視鏡50の挿入管55の先端まで延設される。
【0029】
前述のように光源ユニット30から出射される参照光または励起光がライトガイド51の入射端に入射される。入射端に入射された光は、出射端まで伝達される。ライトガイド51の出射端から出射する光が、配光レンズ56を介して挿入管55先端付近に照射される。
【0030】
撮像素子52は、参照光が連続して照射される間、或いは励起光が連続して照射される間に少なくとも1フィールドずつの被写体像を撮像するように、撮像素子駆動回路23によって駆動される。なお、撮像素子駆動回路23の動作はタイミングコントローラ22によって制御される。
【0031】
参照光が照射されたときの被写体の反射光による光学像及び励起光が照射されたときの被写体の蛍光による光学像が、対物レンズ57によって撮像素子52の受光面に結像させられる。
【0032】
なお、励起光照射時は、励起光カットフィルタ54により対物レンズ57を介して入射した光から被写体で反射された励起光成分が除去される。励起光成分が除去されることにより、被写体である生体組織が発する蛍光成分のみが、撮像素子52により撮像される。
【0033】
撮像動作の実行により、撮像素子52は画像信号を生成する。したがって、参照光が照射されたときには、被写体の反射光による光学像に相当する参照光画像信号が生成される。また、励起光が照射されたときには、生体組織の蛍光による光学像に相当する蛍光画像信号が生成される。参照光画像信号および蛍光画像信号は画像処理ユニット40に送られる。
【0034】
なお、撮像素子52の受光面には、複数の画素(図示せず)が設けられる。撮像素子52の撮像動作の実行により各画素における受光量に応じた画素信号が生成される。画像信号は、これら複数の画素において生成される画素信号によって構成される。
【0035】
各画素は、Rフィルタ、Gフィルタ、Bフィルタ(図示せず)のいずれかのカラーフィルタにより覆われる。各カラーフィルタはベイヤー方式にしたがって配置される。
【0036】
各カラーフィルタに覆われた画素において生成される画素信号は、それぞれのカラーフィルタが透過する光成分の受光量に応じた画素信号である。すなわち、Rフィルタによって覆われた画素からは赤色光成分の受光量に応じたR信号成分が、Gフィルタによって覆われた画素からは緑色光成分の受光量に応じたG信号成分が、Bフィルタによって覆われた画素からは青色光成分の受光量に応じたB信号成分が生成され、画像処理ユニット40に送られる。
【0037】
次に画像処理ユニット40の構成について説明する。画像処理ユニット40は、前段信号処理回路41、画像処理部42、DRAM43、および後段信号処理回路44などによって構成される。
【0038】
前述のR信号成分、G信号成分、およびB信号成分によって構成される画像信号は、前段信号処理回路41に送られる。前段信号処理回路41において画像信号は、アナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0039】
さらに、前段信号処理回路41において、色補間処理やホワイトバランスなどの所定の信号処理が施される。各画素に対応する画素信号はR信号成分、G信号成分、およびB信号成分のいずれかであるが、色補間処理により各画素に対応するR信号成分、G信号成分、およびB信号成分が生成される。
【0040】
所定の信号処理の施された画像信号は、画像処理部42に送られる。画像処理部42に送られた画像信号はDRAM43に送られ、格納される。参照光画像表示モードまたは自家蛍光画像表示モードにおいて、DRAM43に格納された画像信号が画像処理部42を介して後段信号処理回路44に送られる。一方、擬似カラー画像表示モードにおいて、DRAM43に格納された画像信号に対して、後述するように擬似カラー画像を作成するための擬似カラー画像処理が施される。擬似カラー画像処理の施された画像信号が後段信号処理回路44に送られる。
【0041】
後段信号処理回路44に送られた画像信号に対して、クランプ、ブランキング処理等の所定の信号処理が施され、またこれらの画像信号はデジタル信号からアナログ信号に変換される。アナログ信号に変換された画像信号は、モニタ60に送られる。送られた画像信号に相当する画像がモニタ60に表示される。
【0042】
次に、画像処理部42の構成および擬似カラー画像表示モードにおいて画像処理部42によって行なわれる擬似カラー画像処理について図2を用いて説明する。図2は、画像処理部42の内部構成を示すブロック図である。
【0043】
画像処理部42は、マトリックス回路45、比率算出回路46、判別回路47、擬似カラー画像演算回路48、およびROM49によって構成される。
【0044】
画像処理部42に送られた画像信号は、マトリックス回路45に入力される。マトリックス回路45において画像信号はR信号成分、G信号成分、およびB信号成分に分解される。分解されたR信号成分、G信号成分、およびB信号成分はDRAM43に送られ、格納される。なお、擬似カラー画像表示モードであって、分解された画像信号が参照光画像信号であるときには、R信号成分、G信号成分、およびB信号が比率算出部46にも送られる。
【0045】
なお、DRAM43には、参照光画像格納領域と蛍光画像格納領域が設けられ、参照光画像信号を分解した参照光R信号成分、参照光G信号成分、および参照光B信号成分は参照光画像格納領域に格納され、蛍光画像信号を分解した蛍光R信号成分、蛍光G信号成分、および蛍光B信号成分は蛍光画像格納領域に格納される。
【0046】
比率算出回路46において、同一の画素の参照光G信号成分および参照光B信号成分が参照光R信号成分によって除算され、G/RおよびB/Rが算出される。算出されたG/RおよびB/Rは判別回路47に送られる。
【0047】
判別回路47において、G/RおよびB/Rに基づいて各画素が受光した光学像が出血推定領域であるか否かの判別が行なわれる。なお、出血推定領域とは、被写体像を撮像した撮像領域全体の中で被写体の出血部位を撮像したと考えられる領域である。
【0048】
図3に示すように、G/Rを横軸、B/Rを縦軸とするグラフ上において、g1<G/R<g2とする第1の範囲、b1<B/R<b2とする第2の範囲に囲まれる領域が出血判別領域として定められている。
【0049】
出血部位の光学像に相当する画素信号では、R信号成分に対するG信号成分およびB信号成分の信号強度は相対的に低い。したがって、出血部位におけるG/R、B/Rは1より低い所定の範囲に含まれることが観測される。このように測定結果により前述のg1、g2、b1、b2の値が定められ、ROM49に記憶されている。
【0050】
各画素のG/R、B/Rが、それぞれ第1、第2の範囲に含まれるか否かが確認される。G/Rが第1の範囲に含まれ、かつB/Rが第2の範囲に含まれるときの画素は、出血推定領域の画素であると判別される。それ以外の画素、すなわちG/RおよびB/Rの少なくとも一方が第1、第2の範囲外である画素は非出血領域の画素であると判別される。
【0051】
出血推定領域の画素または非出血領域の画素であると判別した結果が判別信号として擬似カラー画像演算回路48に送られる。また、擬似カラー画像演算回路48には、DRAM43から画像信号が送られる。なお、DRAM43からは、参照光R信号成分、参照光G信号成分、および参照光B信号成分と、蛍光R信号成分、蛍光G信号成分、および蛍光B信号成分とが送られる。
【0052】
判別回路47が出血推定領域の画素であると判別した場合は、蛍光R信号成分、蛍光G信号成分、および蛍光B信号成分は破棄される。一方、参照光R信号成分、参照光G信号成分、および参照光B信号成分が後段信号処理回路44に送られる。すなわち、出血推定領域の画素であると判別された場合は、参照光画像信号を形成する画素信号が後段信号処理回路44に送られる。
【0053】
判別回路47が非出血領域の画素であると判別した場合は、参照光R信号成分、参照光G信号成分、および参照光B信号成分と、蛍光R信号成分、蛍光G信号成分、および蛍光B信号成分とに基づいて擬似カラー画像(病変部推定画像)が作成される。
【0054】
なお、擬似カラー画像とは、蛍光画像信号に相当する画像である蛍光画像において暗く表示される領域であって、参照光画像信号に相当する参照光画像において明るく表示される領域のみを所定の色で着色した画像である。
【0055】
擬似カラー画像は、例えば以下のような処理を行うことにより作成される。先ず、1フィールドの参照光画像信号を形成する画素信号であって、非出血領域のすべての画素の画素信号の輝度が算出される。さらに、求められた輝度の平均値が算出される。
【0056】
同様に1フィールドの蛍光画像信号を形成する画素信号であって、非出血領域のすべての画素の画素信号の輝度および輝度の平均値が算出される。両者の平均値を一致させるように、蛍光画像信号を形成する画素信号の正規化が行なわれる。
【0057】
正規化が行なわれた画素信号の輝度信号成分を、参照光画像信号を形成する画素信号の輝度信号成分によって除すことにより輝度比が算出される。輝度比が所定の閾値と比較され、所定の閾値より輝度比の小さい画素には、青色などの擬似カラーによって着色した画素信号が生成され、後段信号処理回路44に送られる。一方、所定の閾値より輝度比の大きな画素は参照光画像信号を形成する画素信号が後段信号処理回路44に送られる。
【0058】
後段信号処理回路44には、出血推定領域の画素の画素信号と非出血領域の画素の画素信号によって1フレームの画像信号が送られる。このように、出血推定領域の画素の画素信号と非出血領域の画素の画素信号とによって形成される画像信号は、病変部と推定される領域のみ擬似カラーによって着色された参照光画像に相当する。
【0059】
図4に示すような病変部位DP、病変部の周りの健常部、および出血部位BPを有する被写体を撮影した場合に、出血推定領域BA(図5参照)において擬似カラー画像は作成されず、参照光画像が作成される。一方、病変部位BPおよび健常部の撮影領域(図5における非出血領域NBA参照)においては、擬似カラー画像が作成される。その結果、図6に示すように病変部位DPのみが擬似カラーで着色され、他の領域は通常の参照光画像となる全体画像が作成される。
【0060】
次に擬似カラー表示モードに設定されているときの画像処理ユニット40において行なわれる擬似カラー画像処理について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
擬似カラー画像表示モードに切替えられることにより、本実施形態における擬似カラー画像処理が開始される。まず、ステップS100において、電子内視鏡50の生成した画像信号が受信される。次のステップS101では、前段信号処理回路41における所定の信号処理が画像信号に対して施される。
【0062】
所定の信号処理を施すとステップS102に進み、画像信号はR信号成分、G信号成分、およびB信号成分に分解される。R信号成分、G信号成分、およびB信号成分に分解されると、ステップS103に進む。
【0063】
ステップS103では、画素毎のG/RおよびB/Rが算出される。次のステップS104において、G/RおよびB/Rが出血判別領域(図3参照)の範囲内であるか否かの判別が行なわれる。すなわち、g1<G/R<g2かつb1<B/R<b2であるか否かの判別が行なわれる。
【0064】
ステップS104でG/RおよびB/Rが出血判別領域の範囲外にあるときはステップS105に進む。ステップS105では、G/RおよびB/Rが出血判別領域の範囲外にある画素において擬似カラー画像が作成される。
【0065】
ステップS104でG/RおよびB/Rが出血判別領域の範囲内にあるときはステップS106に進む。ステップS106では、G/RおよびB/Rが出血判別領域の範囲内にある画素において参照光画像が作成される。
【0066】
全画素に対してステップS105またはステップS106の処理の終了後、画像処理ユニット40により行なわれる擬似カラー画像処理は終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態の内視鏡プロセッサ20によれば、出血推定領域に関しては擬似カラー画像が作成されず、非出血領域のみに対して擬似カラー画像が作成されるので、病変部と推定される領域をより確実に明示することが可能になる。
【0068】
なお、本実施形態において、出血推定領域にある画素では参照光画像信号が生成される構成であるが、擬似カラーと異なる色によって着色される構成であってもよい。または、出血推定領域にある画素には所定の形態の網掛けによって覆われる構成であってもよい。
【0069】
なお、前述のように出血推定領域にある画素を着色、または網掛けを行なう場合には、撮像領域全体に対して一旦擬似カラー画像を作成してもよい。全体の擬似カラー画像を作成後に着色または網掛けを行なうのであれば、出血推定領域には蛍光画像信号に関わらない画像が表示されるので、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0070】
また、本実施形態において、非出血領域における擬似カラー画像を作成したが、病変部位を推定し得るいかなる画像を作成してもよい。例えば、自家蛍光画像そのものを表示しても、出血部位と区別して病変部位の特定が可能である。ただし、自家蛍光画像では、管腔部位などと病変部位との区別が困難であるため、本実施形態のように病変部位を他の部位と区別可能に表示する画像が作成されることが好ましい。
【0071】
病変部位を推定し得る画像として、本実施形態では一例の擬似カラー画像が作成されるが、参照光画像において明るく表示され、蛍光画像において暗く表示される画素を着色する擬似カラー画像が作成されれば、別の方法により作成される擬似カラー画像であってもよい。さらには、病変部位と推定される領域が擬似カラーにより着色されなくてもよい。例えば、病変部位と健常部位との境界が明示される構成であってもよい。
【0072】
また、本実施形態において、G/RおよびB/Rが第1、第2の範囲に含まれるか否かによって、出血推定領域と非出血領域を判別する構成であるが、他のいかなる方法によって判別しても本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0073】
また、本実施形態において、全画素に対して出血推定領域であるか非出血領域であるかの判別が行なわれる構成であるが、蛍光画像信号を形成する画素信号の輝度信号成分が閾値を下回る画素に対して出血推定領域であるか否かの判断が行なわれればよい。このように、一部の画素に対して出血推定領域であるか否かの判別を行なう構成によれば、出血推定領域であるか否かの判別のための演算量を減らすことが可能である。
【0074】
また、本実施形態を適用した内視鏡プロセッサ20は、光源ユニットを内蔵する汎用の内視鏡プロセッサ、または外部の光源ユニットに接続可能な汎用の内視鏡プロセッサに擬似カラー画像作成プログラムを読込ませて構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態を適用した内視鏡プロセッサを有する内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】画像処理部の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】出血判別領域を示すグラフである。
【図4】出血部位と病変部位を含む生体組織の画像を示す。
【図5】図4の生体組織の画像において、参照光画像が作成される領域と擬似カラー画像が作成される領域を説明するための図である。
【図6】擬似カラー画像処理を施すことにより作成される画像を示す。
【図7】画像処理ユニットにより行なわれる擬似カラー画像処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
10 内視鏡システム
20 内視鏡プロセッサ
21 システムコントローラ
22 タイミングコントローラ
23 撮像素子駆動回路
30 光源ユニット
31 光源
32 集光レンズ
33 光源フィルタ
34 光源フィルタ駆動機構
35 モータ
36 位置検出センサ
40 画像処理ユニット
41 前段信号処理回路
42 画像処理部
43 DRAM
44 後段信号処理回路
45 マトリックス回路
46 比率算出回路
47 判別回路
48 擬似カラー画像演算回路
49 ROM
50 電子内視鏡
51 ライトガイド
52 撮像素子
53 操作入力部
54 励起光カットフィルタ
55 挿入管
56 配光レンズ
57 対物レンズ
60 モニタ
BA 出血推定領域
BP 出血部位
DP 病変部位
NBA 非出血領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光または参照光が異なるタイミングで照射されるそれぞれの被写体の光学像に基づいたそれぞれの画像信号を生成する撮像素子から、前記参照光が照射される時に生成される前記画像信号である参照光画像信号と前記励起光が照射される時に生成される前記画像信号である蛍光画像信号とを受信する受信部と、
前記参照光画像信号を形成する色信号成分に基づいて、出血部位と推定される出血推定領域を、前記撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、
前記出血推定領域以外の前記撮影領域である非出血領域のみにおいて、前記蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項2】
前記色信号はR信号成分、G信号成分、およびB信号成分であり、
前記色判別部は、R信号成分に対するG信号成分およびB信号成分の信号強度の比であるG/R、B/Rを算出し、G/Rが第1の範囲内であって、B/Rが第2の範囲内である領域を前記出血推定領域に特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項3】
前記色判別部による前記出血推定領域の特定は、前記蛍光画像信号に相当する蛍光画像において閾値より輝度が低い領域に対して行なわれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項4】
前記病変部推定画像は、前記参照光画像信号に基づいて作成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記出血推定領域を所定の色に着色することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記出血推定領域に所定の形態の網掛けをすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項7】
生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光または参照光が異なるタイミングで照射されるそれぞれの被写体の光学像に基づいたそれぞれの画像信号を生成する撮像素子から、前記参照光が照射される時に生成される前記画像信号である参照光画像信号と前記励起光が照射される時に生成される前記画像信号である蛍光画像信号とを受信部に受信させる駆動部と、
前記参照光画像信号を形成する色信号に基づいて、出血部位と推定される出血推定領域を、前記撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、
前記出血推定領域以外の前記撮影領域である非出血領域のみにおいて、前記蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部として内視鏡プロセッサを機能させる
ことを特徴とする自家蛍光画像表示プログラム。
【請求項8】
参照光と生体組織に照射すると蛍光を発光させる励起光とを出射する光源ユニットと、
前記励起光と前記参照光とを異なるタイミングで出射させる光源制御部と、
前記励起光が被写体に照射されるときの前記被写体の光学像を受光して蛍光画像信号を生成し、前記参照光が被写体に照射されるときの前記被写体の光学像を受光して参照光画像信号を生成する撮像素子と、
前記参照光画像信号を形成する色信号に基づいて、出血部位と推定される出血推定領域を、前記撮像素子に撮影された領域である撮像領域内部において特定する色判別部と、
前記出血推定領域以外の前記撮影領域である非出血領域のみにおいて、前記蛍光画像信号に基づく病変部推定画像を作成する画像処理部と、
前記画像処理部に作成された前記病変部含有画像を表示するモニタとを備える
ことを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−86605(P2008−86605A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272098(P2006−272098)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】