説明

内視鏡下手術用鉗子

【課題】処置部を閉じる際にも容易に操作できる内視鏡下手術用鉗子を提供する。
【解決手段】内視鏡下手術用鉗子1は、互いに交差して軸支され軸3に対して回動自在の1対の腕状部材4a,4bと、カムロッド5とを備える。腕状部材4a,4bは先端部に設けられた処置部6a,6bと、後端部に設けられた外面カム部7a,7bと、内面カム部8a,8bとを備える。カムロッド5は、外面カム部7a,7bに当接される第1ピン9と、内面カム部8a,8bに当接される第2ピン10とを備える。内面カム部8a,8bは、管状部材2の軸方向Cと交差する直線Lに対し、外面カム部7a,7b側に膨出する湾曲面11からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下手術用鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡下手術において、体外からトロカー等のバイパス経路を介して腹腔内に挿入され、組織の切断、把持、剥離等に用いられる内視鏡下手術用鉗子が知られている。
【0003】
前記内視鏡下手術用鉗子として、例えば、管状部材からなる鉗子の先端部に互いに交差して軸支され軸に対して回動自在に設けられた1対の腕状部材と、該管状部材内に進退自在に設けられ該腕状部材を回動させるカムロッドとを備えるものがある。前記内視鏡下手術用鉗子は、前記腕状部材の先端部に互いに対向して設けられ、組織の切断、把持、剥離等に用いられる処置部を備え、該腕状部材の後端部の該処置部と反対側には外面カム部が設けられると共に、該腕状部材の後端部の該処置部側には長穴状の内面カム部が設けられている。
【0004】
また、前記カムロッドの先端部には該カムロッドの前進に伴って前記外面カム部に当接される第1ピンと、該カムロッドの後退に伴って前記内面カム部に当接される第2ピンとが設けられている。そして、前記第2ピンが当接される前記内面カム部は、前記管状部材の軸方向と交差する直線状となっている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
前記内視鏡下手術用鉗子では、前記カムロッドを前記処置部方向に前進させると、前記第1ピンが前記外面カム部に押圧され、前記1対の腕状部材の交差角度を大にすることにより、前記処置部が開かれる。また、前記カムロッドを前記処置部と反対方向に後退させると、前記第2ピンが前記内面カム部に押圧され、前記1対の腕状部材の交差角度を小にすることにより、前記処置部が閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4614965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の内視鏡下手術用鉗子では、前記第2ピンが当接される前記内面カム部が、前記管状部材の軸方向と交差する直線状となっている。そこで、前記カムロッドを前記処置部と反対方向に後退させ、前記第2ピンを前記内面カム部に押圧して前記処置部を閉じようとするときに比較的大きな力を必要とし、操作が困難になることがあるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、処置部を閉じる際にも容易に操作をすることができる内視鏡下手術用鉗子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、管状部材の先端部に互いに交差して軸支され軸に対して回動自在に設けられた1対の腕状部材と、該管状部材内に進退自在に設けられ該腕状部材を回動させるカムロッドと、該腕状部材の先端部に互いに対向して設けられた処置部と、該腕状部材の後端部の該処置部と反対側に設けられた外面カム部と、該腕状部材の後端部の該処置部側に設けられた内面カム部と、該カムロッドの先端部に設けられ該カムロッドの前進に伴って該外面カム部に当接される第1ピンと、該カムロッドの先端部に設けられ該カムロッドの後退に伴って該内面カム部に当接される第2ピンとを備える内視鏡下手術用鉗子において、該内面カム部は、該管状部材の軸方向と交差する直線に対し、該外面カム部側に膨出する湾曲面からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の内視鏡下手術用鉗子は、前記処置部により組織の切断、把持、剥離等を行うことができる。本発明の内視鏡下手術用鉗子によれば、まず、前記処置部を開くときには、前記カムロッドを前進させ、前記第1ピンを前記外面カム部に当接させ、さらに先端部方向に押圧する。このようにすると、前記第1ピンにより前記1対の腕状部材の各後端部が互いに離間する方向に押圧力が作用する。この結果、各腕状部材が前記軸に対して回動し、各処置部が互いに離間する方向に移動し、両処置部が開かれる。
【0011】
次に、前記処置部を閉じるときには、前記カムロッドを後退させ、前記第2ピンを前記内面カム部に当接させ、さらに後端部方向に押圧する。このようにすると、前記第2ピンにより前記1対の腕状部材の各後端部が互いに近接する方向に押圧力が作用する。
【0012】
このとき、本発明の内視鏡下手術用鉗子では、前記内面カム部が前記管状部材の軸方向と交差する直線に対し、前記外面カム部側に膨出する湾曲面からなる。そこで、前記カムロッドの後退に伴い、前記第2ピンは前記内面カム部の前記湾曲面に案内され、円滑に後端部方向に移動することができる。この結果、前記処置部を閉じるときの初期動作を小さな力で行うことができる。
【0013】
また、前記処置部により組織等を切断する場合には、前記処置部を完全に閉じる必要がある。このとき、本発明の内視鏡下手術用鉗子では、前記内面カム部が前記管状部材の軸方向と交差する直線に対し、前記外面カム部側に膨出する湾曲面からなるので、該内面カム部は後端部側ほど長さ方向に対する互いに近接する割合が大きくなっている。この結果、前記処置部を閉じる操作を完了させる際に、前記第2ピンは少ない移動量で該処置部を確実に閉じることができる。
【0014】
従って、本発明の内視鏡下手術用鉗子によれば、前記処置部を閉じる際にも容易に操作をすることができる。
【0015】
また、内視鏡下手術用鉗子において、前記腕状部材は前記内面カム部の前記湾曲面に対向する部分が開放されていることが好ましい。本発明の内視鏡下手術用鉗子は、前記腕状部材の前記湾曲面に対向する部分が開放されているので、前記カムロッドを前進させ、前記各腕状部材を前記軸に対して回動させたときに、該各腕状部材の後端部が前記管状部材の側面から外方に突出することがない。
【0016】
従って、前記構成を備える本発明の内視鏡下手術用鉗子は、腹腔内等において他の器具の操作の障害となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一構成例としての内視鏡下手術用鉗子の一部を切り欠いて示す平面図。
【図2】図1に示す内視鏡下手術用鉗子の腕状部材を拡大して示す平面図。
【図3】図1に示す内視鏡下手術用鉗子の作動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡下手術用鉗子1は、管状部材2の先端部に互いに交差して軸支され軸3に対して回動自在に設けられた1対の腕状部材4a,4bと、管状部材2内に進退自在に設けられたカムロッド5とを備えている。腕状部材4a,4bは、同一形状であり、互いに表裏となるように組み合わされて軸3に軸支されている。
【0020】
腕状部材4a,4bの先端部には、組織の切断、把持、剥離等を行う処置部6a,6bが互いに対向して設けられている。また、腕状部材4a,4bは、その後端部に、処置部6a,6bと反対側に設けられた外面カム部7a,7bと、処置部6a,6b側に設けられた内面カム部8a,8bとを備えている。
【0021】
また、カムロッド5の先端部には、カムロッド5の前進に伴って外面カム部7a,7bに当接される第1ピン9と、カムロッド5の後退に伴って内面カム部8a,8bに当接される第2ピン10とが設けられている。
【0022】
内面カム部8a,8bは、図2に腕状部材4aを例として示すように、管状部材2の中心軸Cと交差する直線Lに対し、外面カム部7a側に膨出する湾曲面11を備えると共に、湾曲面11に対向する部分が開放部12となっている。
【0023】
次に、本実施形態の内視鏡下手術用鉗子1の作動について説明する。まず、処置部6a,6bを開くときには、図1においてカムロッド5を前進させ、第1ピン9を外面カム部7a,7bに当接させ、さらに先端部方向に押圧する。外面カム部7a,7bは、図1に示すように互いに交差されており、第1ピン9は外面カム部7a,7bの交差されている部分に押圧される。
【0024】
そこで、前記のようにすると、第1ピン9により1対の腕状部材4a,4bの各後端部が互いに離間する方向に押圧力が作用する。この結果、各腕状部材4a,4bが軸3に対して回動し、各処置部6a,6bが互いに離間する方向に移動して、両処置部6a,6bが図3に示すように開かれる。
【0025】
このとき、腕状部材4a,4bの各後端部では、内面カム部8a,8bの湾曲面11に対向する部分が開放部12となっているので、各後端部が管状部材2の側面から外方に突出することがない。尚、管状部材2の側面部近傍には図示しないストッパーが設けられており、腕状部材4a,4bの各後端部が必要以上に離間しないように規制されている。
【0026】
次に、処置部6a,6bを閉じるときには、図3においてカムロッド5を後退させ、第2ピン10を内面カム部8a,8bに当接させる。このとき、内面カム部8a,8bは図2に示すように、管状部材2の中心軸Cと交差する直線Lに対し、外面カム部7a側に膨出する湾曲面11を備えている。湾曲面11は、内面カム部8a,8bが直線Lに対応する面からなる場合に比較して、内面カム部8a,8bに当接された第2ピン10を後端部方向に移動させる際の「逃げ」となっている。
【0027】
この結果、本実施形態の内視鏡下手術用鉗子1では、カムロッド5の後退に伴い、第2ピン10が湾曲面11に案内され円滑に後端部方向に移動することができるので、処置部6a,6bを閉じるときの初期動作を小さな力で行うことができる。
【0028】
また、処置部6a,6bにより組織等を切断する場合には、処置部6a,6bを完全に閉じる必要がある。このとき、本実施形態の内視鏡下手術用鉗子1では、内面カム部8a,8bが湾曲面11を備えており、湾曲面11は後端部側ほど管状部材2の長さ方向に対する互いに近接する割合が大きくなっている。この結果、処置部6a,6bを閉じる操作を完了させる際に、第2ピン10は、内面カム部8a,8bが直線Lに対応する面からなる場合に比較して、少ない移動量で処置部6a,6bを確実に閉じることができる。
【0029】
従って、本実施形態の内視鏡下手術用鉗子1によれば、処置部6a,6bを閉じる際にも容易に操作をすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…内視鏡下手術用鉗子、 2…管状部材、 3…軸、 4a,4b…腕状部材、 5…カムロッド、 6a,6b…処置部、 7a,7b…外面カム部、 8a,8b…内面カム部、 9…第1ピン、 10…第2ピン、 11…湾曲面、 12…開放部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材の先端部に互いに交差して軸支され軸に対して回動自在に設けられた1対の腕状部材と、該管状部材内に進退自在に設けられ該腕状部材を回動させるカムロッドと、
該腕状部材の先端部に互いに対向して設けられた処置部と、該腕状部材の後端部の該処置部と反対側に設けられた外面カム部と、該腕状部材の後端部の該処置部側に設けられた内面カム部と、
該カムロッドの先端部に設けられ該カムロッドの前進に伴って該外面カム部に当接される第1ピンと、該カムロッドの先端部に設けられ該カムロッドの後退に伴って該内面カム部に当接される第2ピンとを備える内視鏡下手術用鉗子において、
該内面カム部は、該管状部材の軸方向と交差する直線に対し、該外面カム部側に膨出する湾曲面からなることを特徴とする内視鏡下手術用鉗子。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡下手術用鉗子において、前記腕状部材は前記内面カム部の前記湾曲面に対向する部分が開放されていることを特徴とする内視鏡下手術用鉗子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111256(P2013−111256A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260073(P2011−260073)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【出願人】(511289415)
【Fターム(参考)】