説明

内視鏡滅菌用トレイ

【課題】内視鏡の可撓管に巻き付けられた緊縛糸を被覆する接着剤が滅菌装置内で損傷するおそれがなく、オートクレーブ滅菌等を行っても緊縛糸のほつれや緩みに起因する可撓管の水漏れ故障が発生しない内視鏡滅菌用トレイを提供すること。
【解決手段】可撓管1の外周に巻き付けられた緊縛糸の外面に接着剤7が被覆された構成を有する内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための内視鏡滅菌用トレイであって、内視鏡の可撓管1が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝11が設けられたものにおいて、可撓管1を可撓管収容溝11の溝壁に触れないように保持するための可撓管保持突起16,17が、可撓管収容溝11の溝壁から溝内に向かって、緊縛糸の外面に被覆された接着剤7に触れない位置のみに突出形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための内視鏡滅菌用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡滅菌用トレイには一般に、内視鏡の可撓管が滅菌装置内で安定した形状を保つように、可撓管が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝が設けられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−17824
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内視鏡の挿入部可撓管の先端近傍には、手元側からの遠隔操作によって任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる湾曲部が形成され、その部分は柔軟な湾曲ゴムチューブで外装されている。
【0004】
そのような湾曲ゴムチューブの端部においては、一般に、緊縛糸がきつく巻き付けられて湾曲ゴムチューブを緊縛固定しており、緊縛糸がほつれたり緩んだりしないように、緊縛糸の外面には接着剤が塗布されて硬化した状態に被覆されている。
【0005】
しかし、緊縛糸を被覆する接着剤がオートクレーブ滅菌装置内等のように高温高圧の環境下で擦られると、接着剤の表面に傷が付いて割れが発生し、その結果、緊縛糸のほつれや緩みを防止することができなくなって、可撓管内に水や蒸気等が浸入するいわゆる水漏れ故障の原因になる場合があった。
【0006】
本発明は、内視鏡の可撓管に巻き付けられた緊縛糸を被覆する接着剤が滅菌装置内で損傷するおそれがなく、オートクレーブ滅菌等を行っても緊縛糸のほつれや緩みに起因する可撓管の水漏れ故障が発生しない内視鏡滅菌用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡滅菌用トレイは、可撓管の外周に巻き付けられた緊縛糸の外面に接着剤が被覆された構成を有する内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための内視鏡滅菌用トレイであって、内視鏡の可撓管が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝が設けられたものにおいて、可撓管を可撓管収容溝の溝壁に触れないように保持するための可撓管保持突起が、可撓管収容溝の溝壁から溝内に向かって、緊縛糸の外面に被覆された接着剤に触れない位置のみに突出形成されているものである。
【0008】
なお、可撓管保持突起が、可撓管収容溝の底面と側面から突出形成されていてもよく、そのような可撓管保持突起が、可撓管の表面に線状に接触するリブ状又は点状に接触するロッド状に形成されていてもよい。また、可撓管保持突起の突端がアール面状に形成されていてもよく、可撓管保持突起が内視鏡滅菌用トレイ全体と一体成形されていてもよい。
【0009】
なお、緊縛糸が、遠隔操作によって屈曲するように内視鏡の挿入部可撓管の先端近傍に形成された湾曲部を外装する湾曲ゴムチューブの端部を固定するためのものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可撓管を可撓管収容溝の溝壁に触れないように保持するための可撓管保持突起が、可撓管収容溝の溝壁から溝内に向かって、可撓管側の緊縛糸の外面に被覆された接着剤に触れない位置のみに突出形成されているので、緊縛糸を被覆する接着剤が滅菌装置内で損傷するおそれがなく、オートクレーブ滅菌等を行っても緊縛糸のほつれや緩みに起因する可撓管の水漏れ故障が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
可撓管の外周に巻き付けられた緊縛糸の外面に接着剤が被覆された構成を有する内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための内視鏡滅菌用トレイであって、内視鏡の可撓管が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝が設けられたものにおいて、可撓管を可撓管収容溝の溝壁に触れないように保持するための可撓管保持突起が、可撓管収容溝の溝壁から溝内に向かって、緊縛糸の外面に被覆された接着剤に触れない位置のみに突出形成されている。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図4は、内視鏡がトレイ10に載置された状態の平面図である。
内視鏡は、挿入部可撓管1の先端近傍に形成された湾曲部1aを、挿入部可撓管1の基端に連結された操作部3からの遠隔操作で、任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができるように構成されている。
【0013】
なお本発明において、湾曲部1aは挿入部可撓管1の一部であって挿入部可撓管1に含まれる概念であり、大きな抵抗なく屈曲させることができるように柔軟な湾曲ゴムチューブで外装されている。
【0014】
湾曲部1aの先端には、観察窓等が配置された先端部本体4が連結され、操作部3から延出する接続可撓管5の端部には、図示されていない光源装置に接続されるコネクタ部6が連結されている。
【0015】
トレイ10には、内視鏡の挿入部可撓管1が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝11の他、操作部3、接続可撓管5及びコネクタ部6が収容される操作部収容溝12、接続可撓管収容溝13及びコネクタ収容溝14が連続して形成されている。なお図4においては、トレイ10の表面平坦面10aに斜線を付して見易くしてある。
【0016】
図1は、挿入部可撓管1の先端付近が可撓管収容溝11内に緩く嵌め込まれた部分の平面図、図2はそのII−II断面図、図3はIII−III断面図である。内視鏡の湾曲部1aを外装する湾曲部ゴムチューブの前後両端部は緊縛糸がきつく巻き付けられることにより固定され、その緊縛糸がほつれたり緩んだりしないように、緊縛糸の外面は、塗布されて硬化した接着剤7で被覆されている。接着剤7としては、例えばエポキシ系接着剤等が用いられている。
【0017】
可撓管収容溝11内には、挿入部可撓管1を可撓管収容溝11の溝壁に直接触れないように保持するための可撓管保持突起16,17が、溝壁から溝内に向かって突出形成されている。
【0018】
可撓管保持突起16,17には、可撓管収容溝11の底面から突出形成された突起16と側面から突出形成された突起17とがあり、その何れもが、挿入部可撓管1の接着剤7に触れない位置に配置されている。
【0019】
なお、挿入部可撓管1が可撓管収容溝11内に収容された時には、その時々の位置ズレや内視鏡個体毎の若干の寸法の相違等によって、可撓管収容溝11内における接着剤7の位置にバラツキが生じる。
【0020】
そこで、全ての可撓管保持突起16,17は、可撓管収容溝11内での接着剤7の基準位置(設計上の位置)から例えば少なくとも1cm程度離れるように配置されると共に、可撓管収容溝11内で先端部本体4等が大きく振らついてはいけないので、接着剤7の基準位置から例えば5cm程度以上は離れていない位置に配置されている。
【0021】
各可撓管保持突起16,17は、挿入部可撓管1の表面に線状に接触するリブ状に形成されている。そのうちの可撓管収容溝11の底面から突出形成された突起16は可撓管収容溝11の長手方向に沿って形成され、可撓管収容溝11の側面から突出形成された突起17は可撓管収容溝11の半周方向に沿って形成されている。ただし、可撓管保持突起16,17が挿入部可撓管1の表面に点状に接触するロッド状等に形成されていてもよい。
【0022】
また、各可撓管保持突起16,17は突端がアール面状に形成されて、そこに触れる相手部材に傷等が付かないようになっている。なお、全ての可撓管保持突起16,17は、可撓管収容溝11等と共にトレイ10全体と一体成形されており、可撓管保持突起16,17を形成するための製造コストはほとんどかからない。
【0023】
このように構成された実施例の内視鏡滅菌用トレイにおいては、内視鏡をトレイ10に載置したとき、挿入部可撓管1が可撓管収容溝11内において可撓管保持突起16,17で保持されて可撓管収容溝11の溝壁に直接触れないので、滅菌ガスに触れる挿入部可撓管1の表面積が広くて優れた滅菌能を得ることができる。
【0024】
そして、可撓管保持突起16,17が、湾曲部1aの端部に巻き付けられた緊縛糸を被覆する接着剤7に触れないので接着剤7が損傷せず、接着剤7の内側に位置する緊縛糸のほつれや緩みに起因する挿入部可撓管1の水漏れ故障が発生しない。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、内視鏡の湾曲部1aに限らず、可撓管の外周に緊縛糸が巻き付けられてその外面に接着剤が被覆された部分が内視鏡にあれば、その部分の接着剤に可撓管保持突起16,17が触れないように構成することが本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例の可撓管収容溝に内視鏡の挿入部可撓管が嵌め込まれた状態の平面図である。
【図2】本発明の実施例の図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の実施例の図1におけるIII−III断面図である。
【図4】本発明の実施例のトレイに内視鏡が載置された状態の平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 挿入部可撓管
1a 湾曲部
7 接着剤
10 トレイ
11 可撓管収容溝
16,17 可撓管保持突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓管の外周に巻き付けられた緊縛糸の外面に接着剤が被覆された構成を有する内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための内視鏡滅菌用トレイであって、上記内視鏡の可撓管が緩く嵌め込まれる可撓管収容溝が設けられたものにおいて、
上記可撓管を上記可撓管収容溝の溝壁に触れないように保持するための可撓管保持突起が、上記可撓管収容溝の溝壁から溝内に向かって、上記緊縛糸の外面に被覆された接着剤に触れない位置のみに突出形成されていることを特徴とする内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項2】
上記可撓管保持突起が、上記可撓管収容溝の底面と側面から突出形成されている請求項1記載の内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項3】
上記可撓管保持突起が、上記可撓管の表面に線状に接触するリブ状又は点状に接触するロッド状に形成されている請求項1又は2記載の内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項4】
上記可撓管保持突起の突端がアール面状に形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項5】
上記可撓管保持突起が上記内視鏡滅菌用トレイ全体と一体成形されている請求項1、2、3又は4記載の内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項6】
上記緊縛糸が、遠隔操作によって屈曲するように上記内視鏡の挿入部可撓管の先端近傍に形成された湾曲部を外装する湾曲ゴムチューブの端部を固定するためのものである請求項1、2、3、4又は5記載の内視鏡滅菌用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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