説明

内視鏡用クリップ装置

【課題】内視鏡の湾曲部が小さな曲率半径で大きな角度に屈曲操作されても、可撓性シースの先端近傍内に配置されたクリップが湾曲部内で折損しない内視鏡用クリップ装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シース1の先端近傍内に配置されたクリップ10の長手方向の途中の部分に、支軸14を中心に屈曲自在な屈曲自在部Aを設け、可撓性シース1内においてクリップ10が屈曲自在部Aで自由に屈曲することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体内において止血やマーキング等を行うために内視鏡の処置具挿通チャンネルに通して使用される内視鏡用クリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用クリップ装置は一般に、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シースの先端内にクリップが窄まった状態で配置され、可撓性シース内に軸線方向に進退自在に配置された操作ワイヤでクリップを可撓性シースの先端から押し出す構成になっている。
【0003】
クリップは、可撓性シースの先端から押し出されると嘴状に開き、その後の操作により強制的に閉じた状態にされて生体粘膜に食い付き、体内に留置される。いわゆる内視鏡的クリッピング処置は、そのような一連の操作により行われる。
【0004】
そして、クリッピング処置を一回行う度に、クリップ装置を内視鏡の処置具挿通チャンネルから引き出してクリップを装填し直すのでは操作が面倒な場合が少なくないので、可撓性シースの先端内に複数のクリップを直列に配置して、クリップ装置を処置具挿通チャンネルに挿入したまま、複数のクリッピング処置を連続して行うことができるようにしたものもある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−87537
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡の挿入部先端の近傍には、遠隔操作により任意の角度に屈曲させることができる湾曲部が設けられていて、クリップ装置が挿入される処置具挿通チャンネル等が、その湾曲部内を通過する状態に配置されている。
【0006】
そのため、クリップ装置が処置具挿通チャンネルに挿脱される際や、クリップ装置が処置具挿通チャンネルに通されて使用されている最中等に、湾曲部が小さな曲率半径で大きな角度まで屈曲した状態にされると、湾曲部内に位置する部分でクリップ装置が厳しい状態に屈曲される。
【0007】
すると、例えば図9に示されるように、可撓性シース91の先端近傍内に配置されている各クリップ92が弾性変形できる限界を越えて、内視鏡の湾曲部内に位置する部分で折損して壊れてしまう場合がある。
【0008】
本発明は、内視鏡の湾曲部が小さな曲率半径で大きな角度に屈曲操作されても、可撓性シースの先端近傍内に配置されたクリップが湾曲部内で折損しない内視鏡用クリップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用クリップ装置は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シースの先端近傍内にクリップが窄まった状態で配置されて、可撓性シース内に軸線方向に進退自在に配置された操作ワイヤにより、クリップを可撓性シースの先端から押し出してクリップを嘴状に一旦開かせた後に閉じさせることができるように構成された内視鏡用クリップ装置において、クリップの長手方向の途中の部分に、支軸を中心に屈曲自在な屈曲自在部を設け、可撓性シース内において、クリップが屈曲自在部で自由に屈曲することができるようにしたものである。
【0010】
なお、クリップの各部のうち、支軸より前方に位置する部分が支軸を中心に嘴状に開閉自在な開閉アームになっていて、支軸より後方に位置して支軸により開閉アームと屈曲自在に連結された部分が、操作ワイヤとの連結を司る連結用尾部になっていてもよい。
【0011】
また、可撓性シースの先端近傍内にクリップが複数直列に配置されていて、可撓性シース内においては、前後に連なって位置する二つのクリップのうち前側に位置するクリップの連結用尾部と、後側に位置するクリップの開閉アームの最先端部分とが連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリップの長手方向の途中の部分に、支軸を中心に屈曲自在な屈曲自在部を設け、可撓性シース内においてクリップが屈曲自在部で自由に屈曲することができるようにしたので、内視鏡の湾曲部が小さな曲率半径で大きな角度に屈曲操作されても、可撓性シースの先端近傍内に配置されたクリップが湾曲部内で折損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シースの先端近傍内にクリップが窄まった状態で配置されて、可撓性シース内に軸線方向に進退自在に配置された操作ワイヤにより、クリップを可撓性シースの先端から押し出してクリップを嘴状に一旦開かせた後に閉じさせることができるように構成された内視鏡用クリップ装置において、クリップの長手方向の途中の部分に、支軸を中心に屈曲自在な屈曲自在部を設け、可撓性シース内において、クリップが屈曲自在部で自由に屈曲することができるようにする。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡用クリップ装置を示しており、1は、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等のような可撓性チューブからなる可撓性シースであり、図示されていない内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿脱自在である。
【0015】
可撓性シース1の先端には、バネ性のある金属材からなる先端口金2が固定的に取り付けられている。先端口金2は、可撓性シース1の内径と略同じ大きさの内径寸法を有する略円筒形状であり、その最先端部分だけは内径が僅かに小さく形成されている。
【0016】
また先端口金2には、先端側から軸線と平行方向に複数の(例えば、3〜4個の)スリット3が形成されている。その結果、先端口金2の最先端部分付近は押し広げる状態に弾性変形させることができる。
【0017】
可撓性シース1内には、可撓性シース1の基端側に連結された操作部(図示せず)から任意に進退操作することができる操作ワイヤ4が挿通配置されていて、その先端に接続管6を介して連結環5が固着連結されている。7は、操作ワイヤ4に外装された被覆チューブである。
【0018】
可撓性シース1の先端近傍内には複数の(例えば2〜4個の)クリップ10が直列に配置されている。クリップ10は、単体の状態とそれを分解して示す図3及び図1に示されるように、個別に独立して形成された一対の開閉アーム11を有していて、各開閉アーム11の先端に形成された先端爪部12は内方に向かってあい対向する状態に曲げられている。
【0019】
一対の開閉アーム11の後端付近には各々軸孔13が形成されていて、そこに通された支軸14を中心にして、一対の開閉アーム11が前方に向かって嘴状に自由に開閉することができる。図3には、開閉アーム11が開いた状態が二点鎖線で図示されている。
【0020】
15は、操作ワイヤ4との連結を司る環状の連結環15aが後端部に形成された連結用尾部であり、開閉アーム11の後端部付近を緩く挟み込む形状の一対の平行板部分に、支軸14が通される支持孔16が形成されている。なお、連結用尾部15は、操作ワイヤ4に直接連結されるのではなく、後方のクリップ10や後述する連結クリップ20等を介して操作ワイヤ4と連結される。
【0021】
18は、一対の開閉アーム11を強制的に閉じるための締め環であり、開閉アーム11を強制的に閉じる時以外は、図3に示されるように開閉アーム11の基部付近に緩く被嵌された状態になっている。
【0022】
そして、図4に示されるように、締め環18が前方に移動すると、開閉アーム11が強制的に閉じた状態になる。逆に、締め環18を開閉アーム11に対して相対的に後方に移動させると、開閉アーム11の後端に形成された駆動板11aに締め環18がぶつかって、開閉アーム11が開いた状態にされる。
【0023】
このような構成により、支軸14を中心に屈曲自在な屈曲自在部Aがクリップ10の長手方向の途中の部分に形成されていて、クリップ10の各部のうち、支軸14より前方に位置する部分が、支軸14を中心に嘴状に開閉自在な一対の開閉アーム11になっていて、支軸14より後方に位置する部分が、操作ワイヤ4との連結を司る連結用尾部15になっている。
【0024】
このようにして、開閉アーム11と連結用尾部15とが屈曲自在部Aにおいて屈曲自在に連結されたクリップ10は、図5に示されるように、長手方向の途中の部分である屈曲自在部Aにおいて自由に屈曲することができる。
【0025】
図2に戻って、可撓性シース1の先端近傍内においては、前後に連なって位置する二つのクリップ10,10のうち前側に位置するクリップ10の連結用尾部15と、後側に位置するクリップ10の開閉アーム11とが連結されている。具体的には、前側のクリップ10の後端に位置する連結環15a内に、閉じた状態の後側のクリップ10の開閉アーム11の先端爪部12が差し込まれた状態に係合している。
【0026】
20は、連結環5に分離できないように連結された連結クリップである。連結クリップ20は、締め環18がない以外はクリップ10と全く同じ構成であり、その開閉アーム11の先端爪部12が複数のクリップ10の中の後端のクリップ10の連結用尾部15と連結されている。
【0027】
このようにして連結された全てのクリップ10が可撓性シース1内では閉じていて、クリップ10はこの状態で内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱され、処置具挿通チャンネルが屈曲していればそれに沿って可撓性シース1が屈曲する。
【0028】
そして、内視鏡の湾曲部が小さな曲率半径で大きな角度に屈曲した状態の時は、図6に示されるように、湾曲部内において可撓性シース1が厳しい曲がり方になる。しかし、可撓性シース1の内部に配置された各クリップ10の長手方向の途中の位置に屈曲自在部Aが形成されていて、各クリップ10が互いの連結部だけでなく途中の屈曲自在部Aでも自由に屈曲することができるので、クリップ10が折損せず、引き続いてそのままクリッピング処置を行うことができる。
【0029】
クリッピング処置は、まず図7に示されるように、操作ワイヤ4を先端方向に押し込み操作して、最先端のクリップ10の開閉アーム11と締め環18を先端口金2の前方に押し出す。すると、先端口金2は締め環18が通過する際に弾性変形してスリット3が広げられるが、締め環18が前方に押し出されると元の形状に戻って締め環18が可撓性シース1内に戻れなくなり、一対の開閉アーム11が先端口金2の外で前方に向かって開いた状態になる。
【0030】
そこで操作ワイヤ4を後方に牽引操作すると、一対の開閉アーム11が後端側から締め環18内に引き込まれて次第に開閉アーム11が閉じる。そこで、図8に示されるように、一対の開閉アーム11が生体組織を挟み付けて締め環18で強制的に閉じた状態にされたところで、操作ワイヤ4を前方に向かって押し込み操作することにより、二番目のクリップ10が先端口金2から押し出されて開き、一番目のクリップ10が他から外れた留置状態になる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば本発明を、可撓性シース1の先端近傍内にクリップ10が一個だけ配置された内視鏡用クリップ装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例のクリップの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡用クリップ装置の側面断面図である。
【図3】本発明の実施例のクリップの側面断面図である。
【図4】本発明の実施例のクリップの強制的閉状態の側面断面図である。
【図5】本発明の実施例のクリップの屈曲自在部での屈曲状態を示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡用クリップ装置が内視鏡の湾曲部内で屈曲された状態の略示断面図である。
【図7】本発明の実施例の内視鏡用クリップ装置によるクリッピング動作の前半部分を示す略示断面図である。
【図8】本発明の実施例の内視鏡用クリップ装置によるクリッピング動作の後半部分を示す略示断面図である。
【図9】従来の内視鏡用クリップ装置が内視鏡の湾曲部内で屈曲された状態の略示断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 可撓性シース
4 操作ワイヤ
10 クリップ
11 開閉アーム
12 先端爪部
13 軸孔
14 支軸
15 連結用尾部
15a 連結環
16 支持孔
18 締め環
20 連結クリップ
A 屈曲自在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シースの先端近傍内にクリップが窄まった状態で配置されて、上記可撓性シース内に軸線方向に進退自在に配置された操作ワイヤにより、上記クリップを上記可撓性シースの先端から押し出して上記クリップを嘴状に一旦開かせた後に閉じさせることができるように構成された内視鏡用クリップ装置において、
上記クリップの長手方向の途中の部分に、支軸を中心に屈曲自在な屈曲自在部を設け、上記可撓性シース内において、上記クリップが上記屈曲自在部で自由に屈曲することができるようにしたことを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
【請求項2】
上記クリップの各部のうち、上記支軸より前方に位置する部分が上記支軸を中心に嘴状に開閉自在な開閉アームになっていて、上記支軸より後方に位置して上記支軸により上記開閉アームと屈曲自在に連結された部分が、上記操作ワイヤとの連結を司る連結用尾部になっている請求項1記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項3】
上記可撓性シースの先端近傍内に上記クリップが複数直列に配置されていて、上記可撓性シース内においては、前後に連なって位置する二つのクリップのうち前側に位置するクリップの連結用尾部と、後側に位置するクリップの開閉アームの最先端部分とが連結されている請求項2記載の内視鏡用クリップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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