説明

内視鏡用治具および内視鏡システム

【課題】照明光の光量等を確実に調整するための内視鏡用治具、および照明光の光量等を確実に調整可能な内視鏡システムを実現する。
【解決手段】治具50は、保持部50Hと反射カップ50Wとを含む。治具50に挿入されたスコープ先端部20Tは、保持部50Hによって所定の位置に保持される。挿入されたスコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離が、距離センサ58により検出され、この距離が距離目標値となるように、治具用モータ54により反射カップ50Wが移動される。反射カップ50Wの移動後にスコープ先端部20Tから出射された照明光は、反射カップ50Wにより反射され、反射光がCCD22に入射する。CPU32により検出される反射光の輝度および色度に基づいて、光源34の出射する照明光の光量およびホワイトバランスが調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用治具および内視鏡システムに関し、特に調光制御等のための内視鏡用治具、および調光制御等が可能な内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置のプロセッサには光源が設けられており、光源が出射する照明光はスコープを介して被写体である体内組織の照明に用いられる。光源が出射する照明光の光量は、一般に、内視鏡装置の製造時等において、プロセッサの筐体に輝度計を接触させること等により、所定のレベルにあることが確認されている。
【0003】
また、電子内視鏡装置において、ホワイトバランス補正に適した光量の照明光がスコープの先端から出射されるように、照明光の光量を調整することが知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−262922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源が出射する照明光の光量は、通常、長期間に渡る光源の使用等により低下する。このため、製造時において光源の出射する光量が確認された内視鏡装置においても、実際に光源が出射する照明光の光量は適当でない恐れがある。そこで、使用時間に応じた低下量を見込んで照明光の光量を一律に調整することが考えられるが、同じ機種の光源であっても、出射する照明光の光量の経時変化には個体差があること等により、必ずしも適当ではない。
【0005】
そして、光源が出射する光量が適当でない場合においては、スコープの先端から出射される照明光の光量を正確に調整することは困難である。
【0006】
本発明は、照明光の光量等を確実に調整するための内視鏡用治具および照明光の光量等を確実に調整可能な内視鏡システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡システムは、被写体を照明する照明光を出射する光源と、照明光を伝達し、その先端から射出するスコープと、スコープに入射する光の輝度および/または色度を検出する検出手段と、入射光の輝度および/または色度に基づいて、照明光の光量および/またはホワイトバランスを調整する調整手段とを備える。そして内視鏡システムにおいては、治具が、スコープの先端から出射された照明光を反射して入射光とする反射部材を備え、スコープの先端と反射部材との距離が所定の距離目標値となるように調整可能であることを特徴とする。
【0008】
治具は、距離を検出する距離検出手段と、距離を調整する距離調整手段とをさらに有することが好ましい。また、調整手段は、所定の光量目標値となるように照明光の光量を調整することが好ましい。
【0009】
内視鏡システムは、距離目標値を記憶する目標値記憶手段をさらに有することが好ましい。また、内視鏡システムにおいては、複数のスコープのいずれかが選択的に使用可能であり、距離目標値がスコープごとに定められていること、および使用されているスコープを識別する識別手段をさらに有することが好ましい。
【0010】
内視鏡システムは、例えば、スコープが取付けられるプロセッサをさらに有し、治具はプロセッサに設けられている。調整手段は、光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを含むことが好ましい。また、内視鏡システムは、調整手段に調整を指示する調整指示手段をさらに有し、調整指示手段が、単一の操作により光量の調整とホワイトバランスの調整とを指示可能であることが好ましい。
【0011】
本発明の内視鏡用治具は、光源から出射された照明光をスコープにより伝達し、スコープに入射する光の輝度および/または色度を検出することにより、入射光の輝度および/または色度に基づいて、照明光の光量および/またはホワイトバランスを調整可能な内視鏡装置に使用される。そして内視鏡用治具は、スコープが装着される装着部と、スコープの先端から出射された照明光を反射して入射光とする反射部材を備えており、スコープの先端と反射部材との距離が調整可能であることを特徴とする。
【0012】
治具は、例えば、スコープの先端と反射部材との距離を調整するために、装着部と反射部材の少なくとも一方を駆動する駆動手段をさらに有する。また、治具は、内視鏡装置が送信するスコープの先端と反射部材との距離の目標値を示す情報を受信する受信手段をさらに有することが好ましい。
【0013】
装着部と反射部材とのいずれか一方において、他方に対する相対的な位置を示す指標が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、照明光の光量等を確実に調整するための内視鏡用治具、および照明光の光量等を確実に調整可能な内視鏡システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態における内視鏡装置のブロック図である。
【0016】
内視鏡装置10(内視鏡視システム)は、スコープ20とプロセッサ30とを含む。スコープ20は、照明光を被写体に伝達し、被写体における反射光に基づき画像信号を生成する。プロセッサ30は、スコープ20から送られてくる画像信号を処理する。内視鏡装置10においては、スコープ20を含む複数のスコープのいずれかが選択され、プロセッサ30に着脱自在に接続、使用される。プロセッサ30には、ユーザが指示信号などを入力するためのキーボード、被写体像を表示するモニタ(いずれも図示せず)がそれぞれ接続される。
【0017】
プロセッサ30には、プロセッサ30全体を制御するCPU32、照明光を出射する光源34などが設けられている。プロセッサ30が起動すると、CPU32の制御の下で、光源34が照明光を出射する。照明光は、コリメートレンズ39により平行光とされ、フォーカスレンズ38および絞り40において光量が調整された後に、ロータリーシャッタ42を通過してライトガイド44に入射する。ライトガイド44を通った照明光は、スコープ20の先端部20Tから、被写体である体腔内に向けて出射される。
【0018】
被写体で反射された照明光の反射光は、スコープ先端部20Tの近傍に設けられたCCD22(検出手段)の受光面に到達し、CCD22によって画像信号が生成される。内視鏡装置10では、同時方式が採用されており、CCD22により生成された画像信号は、スコープ20内のプロセス回路(図示せず)によって1フレーム分ずつ順次読出され、画像処理部48に送信される。
【0019】
画像処理部48に送信された画像信号には、ホワイトバランス補正処理などの所定の処理が施される。そして、輝度信号および色差信号が生成され、これらの信号は、アナログ・デジタル変換などを経てプロセッサ側メモリ46に格納される。さらに、輝度信号と色差信号は、CPU32の制御の下でプロセッサ側メモリ46から読み出され、所定の処理を経てモニタに出力される。この結果、被写体の動画像がモニタの画面上にリアルタイムで表示される。
【0020】
スコープ20にはスコープ側メモリ24が設けられている。スコープ側メモリ24には、スコープ20を識別するための情報、ホワイトバランスデータ等のスコープ20の信号処理に関するデータがあらかじめ記憶されている。スコープ20がプロセッサ30に接続されると、CPU32によりスコープ20の識別情報が読み出される。このため、プロセッサ30とともに使用可能なスコープの中から選択され、使用されているスコープがスコープ20であると識別される。
【0021】
プロセッサ30には、スコープ20の先端部20Tが挿入される治具50が設けられている。治具50は、後述するように、光源34が出射する照明光の光量、およびホワイトバランスを正確に調整するために設けられている。
【0022】
治具50は、スコープ先端部20Tを保持する保持部50H(装着部)と、先端がほぼ球面状の反射カップ50Wとを含む。治具50の開口50Mに挿入されたスコープ先端部20Tは、適度な摩擦により保持部50Hによって所定の位置に装着され、保持される。反射カップ50W(反射部材)の内面は白色であり、微小な凹凸が設けられている。このため、スコープ先端部20Tから出射された照明光は、反射カップ50Wの内面により拡散反射される。このとき、開口50Мはスコープ先端部20Tにより閉じられているため、照明光以外の光が外部から治具50内に入射することは防止される。
【0023】
保持部50Hは、スコープ先端部20Tの外周面と当接する内筒50Hと、内筒50Hの外周側にあり、反射カップ50Wの内周面に当接する外筒50Hとを含み、内筒50Hと外筒50Hとは互いに固定され、一体化されている。外筒50Hにおける直径の短い小径部は、適度な摩擦が付与された状態で反射部材50Wの内周側に遊嵌されており、保持部50Hと反射カップ50Wとは互いに摺動可能である。
【0024】
治具50においては、所定の位置まで挿入されたスコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離を検出する距離センサ58(距離検出手段)と、反射カップ50Wを移動させるための治具用モータ54(距離調整手段)とが設けられている。そして、プロセッサ側メモリ46においては、挿入されたスコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離の目標値(距離目標値)が予め記憶されている。この距離目標値は、内視鏡装置10において使用可能なスコープごとに定められている。距離センサ58は、例えば、発光部と測距対象からの反射光を受光する受光部(いずれも図示せず)とから構成されており、スコープ先端部20Tからの反射光が受光部に入射する位置に基づいてスコープ先端部20Tとの距離を検出する。
【0025】
プロセッサ30の表面には、光量・ホワイトバランス調整スイッチ35が設けられている。そして光量・ホワイトバランス調整スイッチ35が押下され、オン状態になると、CPU32に調整を指示する信号が送信され、以下のように、照明光の光量およびホワイトバランスが調整される。
【0026】
まず、使用中のスコープがスコープ20であることは既に識別されているため、スコープ20の距離目標値がCPU32によりプロセッサ側メモリ46から読み出される。CPU32は、距離センサ58により検出される現在のスコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離が、読み出された距離目標値となるように、駆動回路45を制御する。この結果、治具用モータ54は、駆動回路45の制御の下で、矢印Aの示す方向、すなわちスコープ先端部20Tの挿入方向と平行な方向に反射カップ50Wを移動させる。
【0027】
このように、スコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離が調整された後にスコープ先端部20Tから照明光が出射され、反射カップ50Wにより反射された照明光の反射光がCCD22に入射する。反射光は反射カップ50Wにより拡散されるので、むらのない均一な明るさの白色光となってCCD22に入射する。この入射光により画像処理部48において生成される輝度信号および色差信号に基づいて、すなわち、CPU32により検出される入射光の輝度および色度に基づいて、照明光の光量およびホワイトバランスが調整される。
【0028】
被写体の照明に用いる照明光の光量の目標値(光量目標値)が、輝度信号値としてプロセッサ側メモリ46に予め記憶されており、距離目標値と同様に、識別されたスコープ20の光量目標値がCPU32により読み出される。そして、ライトガイド44に入射する照明光の光量が光量目標値と等しくない場合、CPU32は駆動回路45を制御し、駆動回路45によりレンズ用モータ37が駆動されてフォーカスレンズ38の光軸方向の位置が調整される。
【0029】
この結果、ライトガイド44に入射する照明光の光量は、後述するように、光量目標値と等しくなるように調整される。なお、この光量調整時においては、絞り40は予め全開となるように駆動回路45によって制御される。絞り40の開閉位置のずれによる光量調整時の誤差を生じさせないためであり、照明光の光量は、フォーカスレンズ38のみにより正確に調整される。
【0030】
図2は、内視鏡装置10における光量・ホワイトバランス調整ルーチンを示すフローチャートである。図3は、光量・ホワイトバランス調整ルーチンの一部である光量調整ルーチンスを示すフローチャートであり、図4は、光量・ホワイトバランス調整ルーチンの一部であるホワイトバランス調整ルーチンを示すフローチャートである。
【0031】
光量・ホワイトバランス調整ルーチンは、スコープ20がプロセッサ30に取り付けられ、スコープ先端部20Tが治具50の開口50Мに挿入されると開始する。ステップS11では、光量・ホワイトバランス調整スイッチ35が押下され、光量およびホワイトバランス調整が指示されたか否かが判断され、指示されたと判断されるとステップS12に進む。ステップS12では、内視鏡装置10において使用中であると識別されたスコープ20の距離目標値および光量目標値が読み出され、ステップS13に進む。
【0032】
ステップS13では、スコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離が距離センサ58により検出され、ステップS14に進む。ステップS14では、スコープ先端部20Tと反射カップ50Wとの距離が距離目標値となるように反射カップ50Wを移動すべく、治具用モータ54が駆動され、ステップS15に進む。ステップS15では、絞り40が全開となるよう制御され、ステップS16に進む。
【0033】
ステップS16では、照明光の光量が目標光量値であるか否か、すなわち照明光の反射光により生成された輝度信号の信号値が、目標値として設定されている目標輝度値と等しいか否かが判断される。そして、照明光の光量が目標光量値であると判断されるとステップS17に進み、照明光の光量が目標光量値と異なると判断されるとステップS18に進む。
【0034】
ステップS17では、次回の光量調整に有用なデータとして、フォーカスレンズ38の移動量がプロセッサ側メモリ46に記録され、ステップS19に進む。ステップS18では光量調整ルーチン(図3参照)が、ステップS19ではホワイトバランス調整ルーチン(図4参照)がそれぞれ実行される。
【0035】
光量調整ルーチンが開始されると、ステップS21(図3参照)において、照明光の反射光による輝度信号の信号値が得られ、取得された輝度値が第1の輝度値としてプロセッサ側メモリ46の輝度値メモリに記録され、ステップS22に進む。ステップS22では、フォーカスレンズ38を通過する照明光の光量を変化させるべくフォーカスレンズ38が前進駆動され、ステップS23に進む。
【0036】
ステップS23では、ステップS22におけるフォーカスレンズ38の前進駆動により得られた照明光の反射光の輝度信号値である第2の輝度値が、輝度値メモリに記録された第1の輝度値よりも大きいか否かが判断され、第1の輝度値よりも大きいと判断されるとステップS24に進み、第1の輝度値よりも小さい、もしくはこれと等しいと判断されるとステップS25に進む。
【0037】
ステップS24では、駆動後に得られた第2の輝度値が目標輝度値と等しいか否かが判断される。そして第2の輝度値が目標輝度値と等しいと判断されるとステップS26に進み、目標輝度値とは異なると判断されるとステップS22に戻る。
【0038】
ステップS26では、光量調整ルーチンの開始前におけるフォーカスレンズ38の位置から、駆動後の位置、すなわち目標輝度値と等しい第2の輝度値が得られた位置までの移動量が、次回の光量調整のために有効なデータとしてプロセッサ側メモリ46に記録され、光量調整ルーチンは終了し、光量・ホワイトバランス調整ルーチンのステップS19に進む。
【0039】
ステップS25では、フォーカスレンズ38が後退駆動され、ステップS27に進む。ステップS27では、フォーカスレンズ38の後退駆動により得られた反射光の輝度信号値である第3の輝度値が、目標輝度値と等しいか否かが判断される。そして第3の輝度値が目標輝度値と等しいと判断されるとステップS28に進み、目標輝度値とは異なると判断されるとステップS25に戻る。
【0040】
ステップS28では、ステップS26と同様に、光量調整ルーチンの開始前におけるフォーカスレンズ38の位置から駆動後の位置までの移動量がプロセッサ側メモリ46に記録され、光量調整ルーチンは終了する。そして光量・ホワイトバランス調整ルーチンのステップS19に進み、光量調整ルーチン(図4参照)が開始される。
【0041】
光量調整ルーチンでは、CPU32における演算により、以下のようにホワイトバランスが調整される。ここでは、G(緑色)を固定してR(赤色)、B(青色)のゲインを調整することによりホワイトバランスが調整される。ステップS31では、スコープ側メモリ24からR、Bの各ゲイン値が読み出され、さらにR、Bの各ゲインの変化値が所定の値に設定されてステップS32に進む。
【0042】
ステップS32では、治具50における白色の反射カップ50Wの内面で反射された照明光の反射光により、CCD22で生成された2フィールド分の画像信号に基づく色度のデータが検出され、ステップS33に進む。ステップS33では、検出された色度データに基づき、ホワイトバランスが予め設定されている適正な範囲内にあるか否かが判断される。そして、ホワイトバランスが適正な範囲内になく、ホワイトバランス調整が必要であると判断されるとステップS34に進み、ホワイトバランスが適正であり、調整が不要であると判断されるとステップS39に進む。
【0043】
ステップS34では、RおよびBの各ゲイン値がステップS31で設定された所定の変化値だけ調整され、ステップS35に進む。ステップS35では、変化されたRおよびBのゲイン値によるホワイトバランスが予め設定されている適正な範囲内にあるか否か、すなわち、さらなるホワイトバランス調整が必要であるか否かが判断される。そしてホワイトバランスが適正な範囲内になく、さらなるホワイトバランス調整が必要であると判断されるとステップS36に進み、ホワイトバランスが適正であり、さらなる調整が不要であると判断されるとステップS39に進む。
【0044】
ステップS36では、最後に設定されたR、Bの各ゲインの変化値、すなわちステップS31もしくは前回のステップS36において設定されたR、Bの各ゲインの変化値よりも絶対値が小さい変化値が新たに設定され、ステップS37に進む。ステップS37では、再度、ホワイトバランスが予め設定されている適正な範囲内にあるか否かが判断され、ホワイトバランスが適正な範囲内になく、さらなる調整が必要であると判断されるとステップS38に進み、ホワイトバランスが適正であって調整はもはや不要であると判断されるとステップS39に進む。
【0045】
ステップS38では、ステップS32〜S37までをこれまでに10回繰り返したか否かが判断される。そしてステップS32〜S37が10回反復されたと判断されると、もはやホワイトバランスはほぼ適正であることから、さらなる調整なしにステップS39に進む。一方、ステップS32〜S37が未だ10回反復されていないと判断されると、ステップS32に戻り、ホワイトバランスはさらに調整される。ステップS39では、次回のホワイトバランス調整において有用なデータとして、最終的に定められたR、Bのゲイン値がスコープ側メモリ24に記憶され、光量調整ルーチンは終了する。
【0046】
以上のように本実施形態によれば、例えば光源34の長期間に渡る使用等により照明光の光量が本来の量ではなくなっている場合においても、スコープごとに定められている目標値となるように調整することができる。そしてこの調整のために、治具50において常に同一の条件で照明光の反射光が得られることから、正確な光量調整が可能である。さらに、ホワイトバランス調整についても、ハレーションの発生を防止し、調整に適した輝度、色度の反射光が治具50により常に得られるため、確実な調整が可能である。
【0047】
以下、第2の実施形態につき、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図5は、本実施形態における内視鏡システムを示すブロック図である。図5においては、治具を除き、第1の実施形態と同一もしくは対応する構成要素には同一の符号が付されている。
【0048】
本実施形態の内視鏡装置10においては、プロセッサ30から独立した治具60が設けられており、治具60がプロセッサ30に着脱自在に取り付けられる点が第1の実施形態と異なる。治具60が内視鏡装置10に取り付けられるとき、治具側コネクタ66と内視鏡装置10に設けられた内視鏡側コネクタ36とが互いに接続される。
【0049】
治具60には、治具側CPU62が設けられている。治具側CPU62は、治具60全体を制御するとともに、内視鏡側および治具側コネクタ36、66を介して電気的に接続されているプロセッサ30側のCPU32と通信を行う。
【0050】
すなわち、CPU32により使用されているスコープがスコープ20であると識別され、スコープ20の距離目標値がCPU32によりプロセッサ側メモリ46から読み出されると、距離目標値を示す信号が、CPU32から内視鏡側および治具側コネクタ36、66を介して治具側CPU62に送信される。
【0051】
そして距離目標値を示す情報を受信した治具側CPU62(受信手段)は、距離センサ68(距離検出手段)により検出される、保持部60H(装着部)により保持されているスコープ先端部20Tと反射カップ60Wとの距離が距離目標値となるように、治具用モータ64(距離調整手段)を制御する。この結果、矢印Aの示す、スコープ先端部20Tの開口60Mに対する挿入方向と平行な方向に反射カップ60Wが移動される。その後、スコープ先端部20Tから照明光が出射され、反射カップ60W(反射部材)によって反射された反射光がCCD22に入射する。
【0052】
以後、第1の実施形態と同様に、CPU32の制御により照明光の光量が調整される。また、第1の実施形態と同様に、CPU32により検出される反射光の色度に基づいてホワイトバランスが調整される。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、治具が設けられていないプロセッサ30を有する汎用的な内視鏡装置10においても、スコープ20の距離目標値、光量目標値等の必要な情報をCPU32に記憶させることにより、治具60の使用が可能となる。その結果、簡便な操作により、照明光の光量およびホワイトバランスを正確に調整することができる。
【0054】
以下、第3の実施形態につき、これまでの実施形態との相違点を中心に説明する。図6は、本実施形態における内視鏡システムを示すブロック図である。図6においては、治具を除き、第1および第2の実施形態と同一もしくは対応する構成要素には同一の符号が付されている。
【0055】
本実施形態の内視鏡装置10においては、治具70はプロセッサ30に電気的に接続されず、自動的に制御される操作の一部をユーザが行う点が第2の実施形態と異なる。すなわち、治具70には、治具側CPU62、治具用モータ64、距離センサ68等は設けられておらず、後述するように、ユーザによるスコープ先端部20Tと反射カップ70Wとの距離調整のための指標72が表面に示されている。
【0056】
本実施形態の保持部70Hは、これまでの実施形態と同様に、スコープ先端部20Tの外周面と当接する内筒70Hと、内筒70Hの外周側でこれに固定された外筒70Hとを含み、外筒70Hと反射カップ70Wとは互いに摺動可能である。ただし、保持部70Hと反射カップ70Wとの摺動動作は、ユーザの操作によって行われる点がこれまでの実施形態と異なる。
【0057】
指標72は、図6に示すように、外筒70Hの外周面に設けられた目盛りである。この指標72により、ユーザは、互いに摺動する一方の部材である保持部70Hが反射カップ70Wからどれだけ離れた相対位置にあるか、すなわち保持部70Hの反射カップ70Wからの突出量を視認することができ、保持部70Hにおける内筒70Hと反射カップ70Wとの距離が容易に明らかになる。
【0058】
内筒70Hの端部側内周面には、突起70Pが設けられている。このため、開口70Мに挿入されたスコープ先端部20Tは、常に突起70Pに接触する位置において保持部70Hに装着される。従って、内筒70Hと反射カップ70Wとの距離はスコープ先端部20Tと反射カップ70Wとの距離に常に等しいため、スコープ先端部20Tの挿入動作による距離の測定誤差は発生しない。さらに、これまでの実施形態と異なり、スコープ先端部20Tと反射カップ70Wとの距離は自動的には調整されないものの、突起70Pが設けられているために、ユーザの誤った操作により、スコープ先端部20Tが反射カップ70Wに接する位置まで挿入され、反射カップ70W等が破損することが防止される。
【0059】
なお、指標72においては、等間隔の目盛りに加え、もしくは等間隔の目盛りに代えて、スコープ先端部20Tと反射カップ70Wとの距離が距離目標値となるときのスコープ20の挿入位置を示す目印が設けられていても良い。この場合、反射カップ70Wの端部に一致する位置まで保持部70Hを反射カップ70Wに対して摺動させることにより容易に距離が調整され、治具70の操作性が向上する。なお、この目印は、スコープ20を含む複数の使用可能なスコープの各々について設けられていることが好ましい。また、指標72は、治具70の外部から視認できる限り、反射カップ70W側に設けられても良い。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、汎用的な内視鏡装置10においても治具70を使用することができるとともに、プロセッサ30の構造を簡素化することができる。
【0061】
図7は、従来例の内視鏡装置80を示すブロック図である。従来例の内視鏡装置80においては、これまでの実施形態に示された治具50、60、70が設けられておらず、光源34の出射する照明光の光量の正確な調整は困難である。また、治具50、60、70以外の汎用的な治具を用いてホワイトバランスを調整する場合においても、調整に適した光量の照明光を用いることができず、過剰な照明光の反射光によるハレーションの発生等により、正確な調整が困難となるおそれがある。
【0062】
治具50、60、70を始めとする内視鏡装置10の構成は、本実施形態に限定されない。例えば、治具50、60、70において、太さの異なる複数のスコープを容易に使用可能とすべく、アダプタが使用されてもよい。また、単一の操作で光量とホワイトバランスとが調整できるように、光量・ホワイトバランス調整スイッチ35が設けられていることが好ましいが、光量調整用のスイッチとホワイトバランス調整スイッチとがそれぞれプロセッサ30に設けられていてもよい。
【0063】
使用するスコープを切り換えたとき、光源34を交換したときや累積使用時間が所定の時間よりも長くなった場合など、適当なタイミングで治具50、60、70を用いた光量調整の実行をユーザに促すメッセージ等がモニタに表示されてもよい。また、距離目標値等をキーボードなどにより、外部から入力、更新可能であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態における内視鏡装置のブロック図である。
【図2】光量・ホワイトバランス調整ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】光量調整ルーチンスを示すフローチャートである。
【図4】ホワイトバランス調整ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態における内視鏡装置のブロック図である。
【図6】第3の実施形態における内視鏡装置のブロック図である。
【図7】従来例の内視鏡装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
10 内視鏡装置(内視鏡システム)
20 スコープ
20T スコープ先端部(スコープの先端)
22 CCD(検出手段)
30 プロセッサ
32 CPU(検出手段・調整手段・識別手段)
34 光源
35 光量・ホワイトバランス調整スイッチ(調整指示手段)
38 フォーカスレンズ(調整手段)
40 絞り(調整手段)
46 プロセッサ側メモリ(目標値記憶手段)
50、60、70 治具(内視鏡用治具)
50H、60H、70H 保持部(装着部)
54、64 治具用モータ(距離調整手段・駆動手段)
58、68 距離センサ(距離検出手段)
62 治具側CPU(受信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を照明する照明光を出射する光源と、
前記照明光を伝達し、その先端から射出するスコープと、
前記スコープに入射する光の輝度および/または色度を検出する検出手段と、
前記入射光の輝度および/または色度に基づいて、前記照明光の光量および/またはホワイトバランスを調整する調整手段と、
前記スコープの先端が挿入される治具とを備え、
前記治具が、前記スコープの先端から出射された照明光を反射して前記入射光とする反射部材を備え、前記スコープの先端と前記反射部材との距離が所定の距離目標値となるように調整可能であることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記治具が、前記距離を検出する距離検出手段と、前記距離を調整する距離調整手段とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記調整手段が、所定の光量目標値となるように前記照明光の光量を調整することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記距離目標値を記憶する目標値記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
複数の前記スコープのいずれかが選択的に使用可能であり、使用されている前記スコープを識別する識別手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
複数の前記スコープのいずれかが選択的に使用可能であり、前記距離目標値が前記スコープごとに定められていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記内視鏡システムが、前記スコープが取付けられるプロセッサをさらに有し、前記治具が前記プロセッサに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記調整手段が、光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを含むことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記調整手段に調整を指示する調整指示手段をさらに有し、前記調整指示手段が、単一の操作により前記光量の調整と前記ホワイトバランスの調整とを指示可能であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
光源から出射された照明光をスコープにより被写体に伝達し、前記スコープに入射する光の輝度および/または色度を検出することにより、前記入射光の輝度および/または色度に基づいて、前記照明光の光量および/またはホワイトバランスを調整可能な内視鏡装置に使用される内視鏡用治具であって、
前記スコープが装着される装着部と、前記スコープの先端から出射された照明光を反射して前記入射光とする反射部材を備え、前記スコープの先端と前記反射部材との距離が調整可能であることを特徴とする内視鏡用治具。
【請求項11】
前記スコープの先端と前記反射部材との距離を調整するために、前記装着部と前記反射部材の少なくとも一方を駆動する駆動手段をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の内視鏡用治具。
【請求項12】
前記内視鏡装置が送信する前記スコープの先端と前記反射部材との距離の目標値を示す情報を受信する受信手段をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の内視鏡用治具。
【請求項13】
前記装着部と前記反射部材とのいずれか一方において、他方に対する相対的な位置を示す指標が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の内視鏡用治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−86697(P2008−86697A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274052(P2006−274052)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】