説明

内視鏡装置

【課題】体内に挿入され、その体内の被観察部に特殊光を照射する挿入部を備えた内視鏡装置において、特殊光に対する被観察部の安全性を確保するとともに、白色光の照射による可視画像についても十分な明るさの画像を取得する。
【解決手段】体内に挿入され、その体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部30Yに対して着脱可能なオーバーシース35を設け、そのオーバーシース35に、挿入部30Yから射出された特殊光を拡散する拡散部36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入される挿入部を備え、その挿入部によって体内の被観察部に特殊光を照射する内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、このような内視鏡システムの1つとして、たとえば、脂肪下の血管走行および血流、リンパ管、リンパ流、胆管走行、胆汁流など通常画像上には現れないものを観察するため、予め被観察部にICG(インドシアニングリーン)を投入し、被観察部に近赤外光の励起光を照射することによってICGの蛍光画像を取得する内視鏡システムが提案されている。
【0004】
ここで、上述したような近赤外域の蛍光観察を行う内視鏡システムにおいては、近赤外レーザ光を広い範囲に照射するため、かつ被観察部における照射面での近赤外レーザ光の集中を避けるため、通常コヒーレントなレーザ光を拡散させて使用することが多い。
【0005】
一方、たとえば、特許文献1および特許文献2においては、照射光の照射範囲を広げる目的で、内視鏡の先端部に接着固定される先端カバーなどに光を拡散させる拡散部を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−237790号公報
【特許文献2】特開平4−244130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、たとえば、上述したような蛍光画像の撮像とともに、白色光の照射による可視画像の撮像も行う内視鏡システムにおいて、励起光を拡散するために特許文献1や特許文献2のように内視鏡自体の先端部に拡散部を設けるようにした場合、励起光だけでなく、可視画像の撮像の際に照射される白色光までも拡散部によって拡散されることになり、この拡散効果によって照度が低減して可視画像の明るさが不足する場合がある。特に、手術などで内視鏡システムを用いる場合には、十分な明るさの可視画像が必要となる。
【0008】
また、励起光の光源として高出力のレーザ光源を用いる場合、内視鏡自体に拡散部を設けるようにしたのでは、その拡散部の面積に制約があるため、レーザ光の十分な輝度分散を行うことが困難であり、高出力なレーザ光の照射に対する安全性を確保することができない。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、上述した励起光のような特殊光に対する被観察部の安全性を確保することができるとともに、白色光の照射による可視画像についても十分な明るさの画像を撮像することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内視鏡装置は、体内に挿入され、その体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、挿入部に着脱可能に設けられたオーバーシースとを備え、オーバーシースが、挿入部から射出された特殊光を拡散する拡散部を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の内視鏡装置においては、オーバーシースの先端に洗浄液または気体を吐出する洗浄機構を設けることができる。
【0012】
また、拡散部の周囲に水密部材を設けることができる。
【0013】
また、オーバーシースを、挿入部が嵌入される円筒形状で形成するとともに、その円筒形状の円周方向に回転しないように構成することができる。
【0014】
また、拡散部を、オーバーシースの先端面に同心円状に設けることができる。
【0015】
また、挿入部を、白色光源から射出された白色光を被観察部に照射するものとするとともに、その白色光の照射によって被観察部から発せられた光を受光するものとし、オーバーシースが挿入部に装着されたことを検出する装着検出部と、装着検出部によってオーバーシースが挿入部に装着されたことが検出された際、白色光源から射出される白色光の光量を大きくする白色光量制御部とを設けることができる。
【0016】
また、オーバーシースが挿入部に装着されたことを検出する装着検出部と、装着検出部によってオーバーシースが挿入部に装着されたことが検出されている間は挿入部から特殊光を射出させ、オーバーシースが挿入部に装着されたことが検出されていない間は挿入部から特殊光を射出させないように制御する特殊光射出制御部とを設けることができる。
【0017】
また、拡散部を、樹脂から形成することができる。
【0018】
また、拡散部としてレンズ拡散板を用いることができる。
【0019】
また、特殊光として近赤外光を用いることができる。
【0020】
また、挿入部を、特殊光と白色光とを両方を導光する導光部材を備えたものとできる。
【0021】
また、挿入部を、特殊光を導光する特殊光用導光部材と、白色光を導光する白色光用導光部材とを備えたものとできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の内視鏡装置によれば、体内に挿入され、体内の被観察部に特殊光を照射する挿入部に対して着脱可能なオーバーシースを設けるとともに、そのオーバーシースに対して挿入部から射出された特殊光を拡散する拡散部を設けるようにしたので、特殊光の照射による画像の撮像を行う際には、オーバーシースを装着して撮像することによって高出力な特殊光に対する安全性を確保することができるとともに、十分な近赤外光の照射範囲の蛍光画像を取得することができ、明るい可視画像の撮像が必要な場合には、オーバーシースを取り外して撮像することによって十分な明るさの可視画像を取得することができる。
【0023】
また、挿入部自体に拡散部を設ける場合と比較すると、面積の大きい拡散部を用いることができるので、高効率な輝度分散が可能となり、特殊光に対する安全性を十分に確保することができる。
【0024】
また、挿入部自体に拡散部を設ける場合、新たに特別な内視鏡を設計して作製する必要があるが、本発明のように拡散部が設けられたオーバーシースを用いるようにすれば、拡散部を備えていない汎用的な内視鏡、特に硬性鏡を用いることができる。
【0025】
また、上記本発明の内視鏡装置において、オーバーシースの先端に洗浄液または気体を吐出する洗浄機構を設けるようにした場合には、拡散部の表面に汚れが付着したとしても、これを洗浄することができる。
【0026】
また、拡散部の周囲に水密部材を設けるようにした場合には、拡散部の拡散面に洗浄液などが付着して拡散効果が低減してしまうのを防止することができる。
【0027】
また、オーバーシースを、挿入部に対して回転しないように構成した場合には、挿入部の特殊光の出射端の位置と拡散部の位置とが回転によってずれてしまうのを防止することができる。
【0028】
また、拡散部を、オーバーシースの先端面に同心円状に設けるようにした場合には、たとえ、挿入部に対してオーバーシースが回転したとしても、挿入部の特殊光の出射端と拡散部との位置ずれを生じることがないので、特殊光を適切に拡散することができる。
【0029】
また、オーバーシースが挿入部に装着されたことを装着検出部によって検出し、オーバーシースが挿入部に装着されたことが検出された場合には、白色光源から射出される白色光の光量を大きくするようにした場合には、オーバーシースを挿入部から取り外すことなく、十分な明るさの可視画像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】体腔挿入部の概略構成図
【図3】体腔挿入部の先端部の概略構成図
【図4】図3の4−4’線断面図
【図5】オーバーシースの先端部の構成を示す図
【図6】図5に示すオーバーシースの6−6’線断面図
【図7】撮像ユニットの概略構成を示す図
【図8】プロセッサおよび光源装置の概略構成を示す図
【図9】体腔挿入部に対してオーバーシースが回転しないようにした構成の一例を示す図
【図10】オーバーシースに対して同心円状の拡散部を設けた一例を示す図
【図11】オーバーシースの着脱に応じて白色光の光量を変更する構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。本実施形態は、被観察部に対して特殊光を照射するための構成に特徴を有するものであるが、まずは、そのシステム全体の構成から説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0032】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、通常光と励起光である近赤外光を射出する光源装置2と、光源装置2から射出された通常光および近赤外光を被観察部に照射するとともに、その通常光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく可視画像と近赤外光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光画像とを撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された可視画像および蛍光画像を表す画像信号に所定の処理を施すとともに、光源装置2に制御信号を出力するプロセッサ3と、プロセッサ3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の可視画像および蛍光画像を表示するモニタ4と、プロセッサ3からの制御信号に応じて、後述するオーバーシース35に生理食塩水および炭酸ガスを供給する送気送水装置6とを備えている。
【0033】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、腹腔や胸腔などの体内に挿入される体腔挿入部30と、体腔挿入部30によって導光された被観察部の可視画像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0034】
そして、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、体腔挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、体腔挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、およびケーブル接続口30cを備えている。
【0035】
接続部材30aは、体腔挿入部30(挿入部材30b)の一端部30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と体腔挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0036】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するための後述するリレーレンズが収容されており、先端部30Yから入射された被観察部の可視像はそのリレーレンズを介して一端部30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0037】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0038】
また、挿入部材30bの先端部30Yの先端面には、図2および図3に示すように、その中央に被観察部を反射した可視像を結像する撮像レンズ30dが設けられ、その撮像レンズ30dを挟んで略対称に通常光および近赤外光を照射する照射窓30e,30fが設けられている。この照射窓30e,30fは、後述するバンドルされた光ファイバの先端を研磨することによって形成されたものである。
【0039】
図4は、図3に示される挿入部材30bの先端部30Yの4-4’線断面図を示すものである。図4に示すように、挿入部材30b内には、その中心に撮像レンズ30dに入射した可視像を撮像ユニット20まで導光するためのリレーレンズ32が設けられており、そのリレーレンズ32に対して略対称な位置に、多数のマルチモード光ファイバ31をバンドルした2本のライトガイドLG1,LG2がそれぞれ延設されている。このライトガイドLG1,LG2は、その先端面が図2および図3に示すような三日月形状の照射窓30e,30fを形成するようにバンドルされたものである。
【0040】
そして、挿入部材30bの先端部近傍には、図1に示すように、挿入部材30bの先端部が嵌入される円筒形状に形成されたオーバーシース35が設けられている。このオーバーシース35は、たとえば樹脂などから形成されるものである。
【0041】
図5は、オーバーシース35の先端部の構成を示すものである。オーバーシース35の先端部には、図5に示すように、挿入部材30bの先端の照射窓30eおよび照射窓30fから射出された通常光および近赤外光を拡散して被観察部に照射する拡散部36がそれぞれ設けられている。拡散部36としては、たとえば、レンズ拡散板(LSD:Light shaping Diffusers)、拡散フィルム、拡散シート、拡散フィルタなどを用いることができ、要するに入射される光を拡散して透過するものであれば如何なるものでもよい。ただし、オーバーシース35をディスポーザブルなものとする場合には、樹脂から形成されたものであることが望ましい。拡散部36は、オーバーシース35に対してインサート形成するようにしてもよいし、接着剤などで接着するようにしてもよい。
【0042】
さらに、挿入部材30bの先端には、送気送水装置6から供給された生理食塩水などの洗浄液や気体を射出する洗浄ノズル37が設けられている。洗浄ノズル37の開口部37aは、撮像レンズ30dおよび拡散部36に向けられており、その開口部37aから撮像レンズ30dおよび拡散部36に向けて洗浄液や気体が射出されるように構成されている。なお、オーバーシース35内には、送気送水装置6から射出された洗浄液や気体を洗浄ノズル37まで導くための管が形成されているものとする。また、上記気体は、汚れもしくは洗浄液噴出後の水滴除去のために用いられ、たとえば炭酸ガスや空気を用いることができる。
【0043】
そして、上述したように洗浄ノズル37は拡散部36の表面も洗浄するものであるため、拡散部36としてたとえばレンズ拡散板を用いる場合には、そのサーフェス・レリーフ・ホログラムパターンが形成された拡散面が内側となるように、すなわち挿入部材30bの照射窓30e,30f側となるように設置し、拡散面に液体が付着して拡散効果が低減するのを抑制する。さらに洗浄ノズル37から射出された液体が、拡散部36の外側面から拡散面側に回り込んでくるのを防止するため、拡散部36の周囲に水密部材36aを設けるようにしている。水密部材36aの材料としては、たとえば水中眼鏡に用いられるようにゴム部材を用いることができる。
【0044】
図6は、図5に示すオーバーシース35および挿入部材30bの先端部30Yの6−6’線断面図である。図6に示すように、水密部材36aは、拡散部36の周囲から拡散面36b側に少しだけ回り込むように形成されており、このように形成された水密部材36aと挿入部材30bの先端面とを密着させることによって、拡散部36の拡散面36bと照射窓30e,30fとの間に密閉空間を形成することができ、拡散部36の拡散面36b側に液体が回り込むのを防止することができる。
【0045】
図7は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、体腔挿入部30内のリレーレンズ32により結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、体腔挿入部30内のリレーレンズ32により結像された被観察部の可視像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、可視像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0046】
第1の撮像系は、被観察部において反射し、ダイクロイックプリズム21を透過した励起光の波長以下の光をカットするとともに、後述する蛍光波長域照明光を透過する励起光カットフィルタ22と、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した蛍光像L4を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0047】
高感度撮像素子24は、蛍光像L4の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24としては、たとえばモノクロの撮像素子を用いることができる。
【0048】
第2の撮像系は、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した可視像L3を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された可視像L3を撮像する撮像素子26を備えている。
【0049】
撮像素子26は、可視像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)、またはシアン(C)、マゼンダ(M)およびイエロー(Y)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0050】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号と撮像素子26から出力された通常画像信号とに対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介してプロセッサ3に出力するものである。
【0051】
図8は、光源装置2およびプロセッサ3の概略構成を示す図である。プロセッサ3は、図8に示すように、通常画像入力コントローラ41、蛍光画像入力コントローラ42、画像処理部43、メモリ44、ビデオ出力部45、操作部46、TG(タイミングジェネレータ)47およびCPU48を備えている。
【0052】
通常画像入力コントローラ41および蛍光画像入力コントローラ42は、所定容量のラインバッファを備えており、通常画像入力コントローラ41は、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号を一時的に記憶するものであり、蛍光画像入力コントローラ42は、蛍光画像信号を一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ41に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ42に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ44に格納される。
【0053】
画像処理部43は、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0054】
ビデオ出力部45は、画像処理部43から出力された通常画像信号および蛍光画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0055】
操作部46は、送気・送水指示を含む種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG47は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ55を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。また、CPU48は装置全体を制御するものである。
【0056】
光源装置2は、約400〜700nmの広帯域の波長からなる通常光L1を射出する通常光源50と、通常光源50から射出された通常光L1を集光する集光レンズ52と、集光レンズ52によって集光された通常光L1を透過するとともに、近赤外光L2を反射し、通常光L1および近赤外光L2を光ファイバスプリッタ59に入射させるダイクロイックミラー53とを備えている。なお、通常光源50としては、たとえばキセノンランプが用いられる。また、通常光源50と集光レンズ52との間には、絞り51が設けられており、ALC(Automatic light control)58からの制御信号に基づいてその絞り量が制御される。
【0057】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光L2を励起光として射出する近赤外LD光源54と、近赤外LD光源54を駆動するLDドライバ55と、近赤外LD光源54から射出された近赤外光L2を集光する集光レンズ56と、集光レンズ56によって集光された近赤外光L2をダイクロイックミラー53に向けて反射するミラー57とを備えている。
【0058】
なお、励起光としては、広帯域の波長からなる通常光よりも狭帯域の波長が用いられる。そして、励起光の波長は、上記波長域の光に限定されず、蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定されるものである。
【0059】
光ファイバスプリッタ59は、ダイクロイックミラー53によって入射された通常光L1および近赤外光L2を第1の光ケーブルLC1と第2の光ケーブルLC2との両方に同時に入射するものである。なお、図8に示す第1の光ケーブルLC1と第2の光ケーブルLC2とを合わせたものが図1に示す光ケーブルLCである。
【0060】
そして、第1の光ケーブルLC1はケーブル接続口30cを介して挿入部材30b内のライトガイドLG1に光学的に接続され、第2の光ケーブルLC2はケーブル接続口30cを介して挿入部材30b内のライトガイドLG2に光学的に接続されるものである。
【0061】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0062】
まず、上述した近赤外光の照射によるICGの蛍光画像と通常光の照射による可視画像との両方を撮像する場合について説明する。ICGの蛍光画像を取得する際には、上述したオーバーシース35が体腔挿入部30の挿入部材30bに装着される。そして、オーバーシース35の装着された体腔挿入部30が被検者の体腔内に挿入され、体腔挿入部30の先端が被観察部(病変部)の近傍に設置される。
【0063】
そして、光源装置2の通常光源50から射出された通常光L1および近赤外LD光源54から射出された近赤外光L2が、光源装置2に接続された第1の光ケーブルLC1および第2の光ケーブルLC2によって導光されて体腔挿入部30内に延設されたライトガイドLG1,LG2のそれぞれに両方の光が入射される。
【0064】
そして、挿入部材30b内のライトガイドLG1,LG2によって導光された通常光L1および近赤外光L2は、挿入部材30bの先端部30Yに設けられた照射窓30e,30fから射出され、オーバーシース35の先端に設けられた拡散部36によって拡散された後、被観察部に照射される。この拡散部36による拡散によって輝度分散することができるので、高出力の近赤外光L2に対する安全性を確保することができる。また、この拡散部36による拡散によって近赤外光L2の照射範囲を十分に確保することができる。
【0065】
次いで、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく可視像が撮像されるとともに、近赤外光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像が撮像される。なお、被観察部には、予めICGが投与されており、このICGから発せられる蛍光を撮像するものとする。
【0066】
具体的には、可視像の撮像の際には、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく可視像L3が挿入部材30bの先端部30Yから入射し、挿入部材30b内のリレーレンズ32により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0067】
撮像ユニット20に入射された可視像L3は、ダイクロイックプリズム21により撮像素子26に向けて直角方向に反射され、第2結像光学系25により撮像素子26の撮像面上に結像され、撮像素子26によって所定のフレームレートで順次撮像される。
【0068】
撮像素子26から順次出力された通常画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に順次出力される。
【0069】
そして、プロセッサ3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ41において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部43において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0070】
そして、ビデオ出力部45は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0071】
一方、蛍光像の撮像の際には、近赤外光の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像L4が挿入部材30bの先端部30Yから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0072】
撮像ユニット20に入射された蛍光像L4は、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を通過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって所定のフレームレートで撮像される。
【0073】
高感度撮像素子24から順次出力された蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に順次出力される。
【0074】
そして、プロセッサ3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ42において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部43において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0075】
そして、ビデオ出力部45は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。
【0076】
また、上述したように蛍光画像および可視画像を撮像している間に撮像レンズ30dや拡散部36の表面に汚れがついた場合には、操作者によって操作部46を用いて送気または送水指示が入力される。
【0077】
プロセッサ3のCPU48は、入力された送気または送水指示に応じて送気送水装置6に制御信号を出力し、送気または送水を行わせる。これによりオーバーシース35の洗浄ノズル37から撮像レンズ30dおよび拡散部36に向けて生理食塩水や炭酸ガスが吐出されて洗浄が行われる。
【0078】
ここで、上述したようにオーバーシース35を体腔挿入部30に装着し、通常光と近赤外光との両方を拡散部36を透過させて被観察部に照射し、蛍光画像と通常画像との両方を撮像した場合、蛍光画像の撮像については上述したように拡散部36による近赤外光の拡散効果により十分な照射範囲を確保することができとともに、近赤外光に対する安全性を確保することができるが、可視画像の撮像については、拡散部36の拡散機能の弊害として通常光の照度が低減し、明るさが不足する場合がある。特に、手術などで硬性鏡システムを用いる場合には、十分な明るさの可視画像が必要となる。
【0079】
したがって、このような場合には、オーバーシース35を体腔挿入部30から取り外した状態で可視画像の撮像を行うようにすればよい。可視画像の撮像の作用については、上記と同様である。
【0080】
本実施形態によれば、近赤外光を拡散する拡散部36をオーバーシース35に設けるようにしたので、蛍光画像を撮像する際には、オーバーシース35を装着して撮像することによって高出力な近赤外光に対する安全性を確保することができるとともに、十分な近赤外光の照射範囲の蛍光画像を取得することができ、明るい可視画像の撮像が必要な場合には、オーバーシース35を取り外して撮像することによって十分な明るさの可視画像を取得することができる。
【0081】
また、上記実施形態の硬性鏡システムにおいては、体腔挿入部30内の2本のライトガイドLG1,LG2のそれぞれに通常光と近赤外光との両方を入射するようにしたが、これに限らず、たとえば、ライトガイドLG1に通常光を入射し、ライトガイドLG2に近赤外光を入射する構成としてもよい。このような構成の場合、近赤外光が入射されるライトガイドLG2の照射窓30fに対応する拡散部36のみをオーバーシース35に設ければよく、通常光が入射されるライトガイドLG1の照射窓30eに対応する拡散部36は設けないようにしてもよい。これによりオーバーシース35を装着した状態でも、十分な明るさの可視画像を取得することができる。
【0082】
また、上記実施形態の硬性鏡システムにおいては、挿入部材30bの先端の照射窓30eと照射窓30fとに対応した位置に拡散部36を設けるようにしたが、たとえば、挿入部材30bに対してオーバーシース35が回転してしまった場合には、照射窓30e,30fと拡散部36との位置関係がずれてしまい、通常光と近赤外光とを適切に照射することができなくなるおそれがある。
【0083】
そこで、挿入部材30bの円周方向に対してオーバーシース35が回転しないような構成としてもよい。具体的には、たとえば、図9に示すように、オーバーシース35の内周面に凸部35aを形成するとともに、挿入部材30bの外周面に上記凸部35aに嵌合するような溝30gを形成し、これらを嵌合させてオーバーシース35を装着することによってオーバーシース35が挿入部材30bに対して回転しないような構成としてもよい。なお、オーバーシース35が回転しない構成としてはこれに限らず、その他の構成を採用するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態の硬性鏡システムにおいては、拡散部36として矩形状のものを2つ設けるようにしたが、これに限らず、たとえば、図10に示すように、挿入部材30bの円筒軸を中心とした同心円状に拡散部38を形成するようにしてもよい。このように同心円状に形成することによって、上述したように挿入部材30bの円周方向に対してオーバーシース35が回転したとしても、通常光と近赤外光を適切に照射することができる。なお、ここでいう同心円状とは、必ずしも完全な円状でなくてもよく、円の一部が欠けたような馬蹄形状や楕円形状も含むものとする。
【0085】
また、上述したようにオーバーシース35を体腔挿入部30に装着し、通常光と近赤外光との両方を拡散部36を透過させて被観察部に照射し、蛍光画像および可視画像の両方を撮像するようにした場合には、可視画像の明るさが不足する場合がある。
【0086】
そこで、たとえば、図11に示すように、体腔挿入部30にオーバーシース35が装着されているか否かを検出する装着検出部39を設け、この装着検出部39によってオーバーシース35の装着が検出されている場合には、オーバーシース35が装着されていないときよりも通常光の光量を大きくするようにしてもよい。具体的には、装着検出部39における検出信号に応じてプロセッサ3のCPU48が光源装置2のALC58に制御信号を出力し、ALC58が絞り51の絞り量を小さくして通常光の光量を大きくするようにしてもよい。
【0087】
装着検出部39としては、たとえば、オーバーシース35または体腔挿入部30に光学的なセンサを設けるようにしてもよいし、体腔挿入部30に圧電素子などを設けてオーバーシース35の装着を電気的に検出するようにしてもよい。
【0088】
また、上記説明では、装着検出部39における検出信号に基づいて通常光の光量を制御するようにしたが、これに限らず、装着検出部39の検出信号に基づいて、CPU48からLDドライバ55に制御信号を出力し、LDドライバ55によって近赤外LD光源54からの近赤外光の射出を制御することによってインターロックとして機能させるようにしてもよい。すなわち、装着検出部39によってオーバーシース35の装着が検出されている間は近赤外LD光源54から近赤外光を射出させ、装着検出部39によってオーバーシース35の装着が検出されていない間は近赤外LD光源54から近赤外光を射出させないようにしてもよい。また、上述したように近赤外LD光源54からの近赤外光の射出を制御するのではなく、たとえば近赤外LD光源54から射出された近赤外光の光路上にシャッターなどを設け、装着検出部39の検出信号に基づいてシャッターを開閉することによって体腔挿入部30からの近赤外光の射出を制御するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態の硬性鏡システムにおいては、体腔挿入部30内に、三日月形状のライトガイドを2本設けるようにしたが、これに限らず、三日月形状のライトガイドを3本以上設けるようにしてもよい。そして、拡散部36については、近赤外光が入射されるライトガイドに対してそれぞれ設けるようにすればよい。
【0090】
なお、上記実施形態においては、第1の撮像系により蛍光画像を撮像するようにしたが、これに限らず、被観察部への特殊光の照射による被観察部の吸光特性に基づく画像を撮像するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態は、本発明の内視鏡装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡を有する内視鏡システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 プロセッサ
4 モニタ
6 送気送水装置
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
30 体腔挿入部
30d 撮像レンズ
30e,30f 照射窓
31 マルチモード光ファイバ
32 リレーレンズ
35 オーバーシース
36 拡散部
36a 水密部材
36b 拡散面
37 洗浄ノズル
37a 開口部
39 装着検出部
50 通常光源
54 近赤外LD光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入され、該体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、該特殊光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、
該挿入部に着脱可能に設けられたオーバーシースとを備え、
該オーバーシースが、前記挿入部から射出された特殊光を拡散する拡散部を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記オーバーシースの先端に洗浄液または気体を吐出する洗浄機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記拡散部の周囲に水密部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記オーバーシースが、前記挿入部が嵌入される円筒形状で形成されたものであるとともに、該円筒形状の円周方向に回転しないように構成されたものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記拡散部が、前記オーバーシースの先端面に同心円状に設けられていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記挿入部が、白色光源から射出された白色光を前記被観察部に照射するものであるとともに、該白色光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光するものであり、
前記オーバーシースが前記挿入部に装着されたことを検出する装着検出部と、
該装着検出部によって前記オーバーシースが前記挿入部に装着されたことが検出された際、前記白色光源から射出される白色光の光量を大きくする白色光量制御部とを備えたことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記オーバーシースが前記挿入部に装着されたことを検出する装着検出部と、
該装着検出部によって前記オーバーシースが前記挿入部に装着されたことが検出されている間は前記挿入部から前記特殊光を射出させ、前記オーバーシースが前記挿入部に装着されたことが検出されていない間は前記挿入部から前記特殊光を射出させないように制御する特殊光射出制御部とを備えたことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記拡散部が、樹脂から形成されたものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記拡散部が、レンズ拡散板であることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記特殊光が、近赤外光であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記挿入部が、前記特殊光と白色光とを両方を導光する導光部材を備えたものであることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項12】
前記挿入部が、前記特殊光を導光する特殊光用導光部材と、白色光を導光する白色光用導光部材とを備えたものであることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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