説明

内視鏡装置

【課題】観察窓に付着する汚れ除去用の振動子の過剰な発熱を抑えて、この振動子の損傷、特性劣化などを防止する内視鏡装置の提供。
【解決手段】内視鏡装置は、内視鏡の挿入部先端に撮像用光学系34に対向して設けられた透明部材32と、透明部材32の一方の面に設けられた振動子37と、振動子37からの超音波振動fが伝わる箇所に設けられ、温度変化に伴い物性値が変化する弾性部材38と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察窓表面に付着する汚れを容易に除去することで、観察性を向上させた内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年低侵襲医療を目的として内視鏡を用いた外科手術が普及している。このような内視鏡下の手術においては、内視鏡先端部に配設された観察窓に対して、汚れの付着、曇りの発生による観察環境の低下を防止することが課題となっている。
【0003】
外科用の内視鏡では、付着する汚れが手術によって飛散した血液や脂肪などである場合があり、単純な送水のみでは汚れを除去できないケースがあり、この問題に対する対策としては、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。
【0004】
内視鏡装置は、内視鏡の挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材の観察窓と、この観察窓の内表面に貼着された振動子と、観察窓の外表面に設けられ、振動子からの超音波振動の伝播方向を変更する偏向部と、を具備している。
【0005】
内視鏡の観察窓の外表面には、偏向部としての回折格子形状の溝が形成されており、この回折格子形状の溝に入射する超音波振動を観察窓の外表面を伝搬する表面弾性波にモード変換することができる技術が開示されている。そして、表面弾性波は、その振動を観察窓の表面に集中させて伝搬するので、観察窓の外表面に付着した汚れに効率的に振動を伝えて、観察視野内に付着した汚れが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−254571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のような観察窓の汚れを除去する従来の技術は、観察窓の内表面に貼着された振動子に高電力を印加して強力な超音波を発生させている。そして、高電力が印加された振動子は発熱する。そのため、振動子の過剰な発熱を抑えて、振動子の損傷、特性劣化などを防止する必要がある。しかしながら、特許文献1のような従来の技術では、振動子の過剰な発熱を抑えるための工夫がされていない。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、観察窓に付着する汚れ除去用の振動子の過剰な発熱を抑えて、この振動子の損傷、特性劣化などを防止する内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における一態様の内視鏡装置は、内視鏡の挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材と、該透明部材の一方の面に設けられた振動子と、上記振動子からの超音波振動が伝わる箇所に設けられ、温度変化に伴い物性値が変化する弾性部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、観察窓に付着する汚れ除去用の振動子の過剰な発熱を抑えて、この振動子の損傷、特性劣化などを防止する内視鏡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システムの全体構成図
【図2】同、内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図
【図3】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図
【図4】同、図3のIV−IV線断面図
【図5】同、送水シースの先端部分の構成を示す断面図
【図6】同、図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図
【図7】同、硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図
【図8】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図
【図9】同、振動子ユニットの構成を示す部分断面図
【図10】同、弾性部材の温度と弾性率を示すグラフ
【図11】同、第1の変形例の振動子ユニットの構成を示す部分断面図
【図12】同、第2の変形例の振動子ユニットの構成を示す部分断面図
【図13】同、圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図
【図14】同、変形例の圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図
【図16】同、変形例の圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明である内視鏡装置について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
先ず、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、例えば、腹腔鏡下外科手術を行う硬性内視鏡を例示する。また、本発明は、硬性内視鏡に限らず、生体管腔内に挿通する各種内視鏡に適用可能な構成である。
【0014】
また、図1から図14は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は内視鏡システムの全体構成図、図2は内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図、図3は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は送水シースの先端部分の構成を示す断面図、図6は図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図、図7は硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図、図8は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図、図9は振動子ユニットの構成を示す部分断面図、図10は弾性部材の温度と弾性率を示すグラフ、図11は第1の変形例の振動子ユニットの構成を示す部分断面図、図12は第2の変形例の振動子ユニットの構成を示す部分断面図、図13は圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図、図14は変形例の圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施の形態の内視鏡装置である内視鏡システム1は、硬性内視鏡(以下、単に内視鏡という)2と、この内視鏡2の挿入部11が内部に挿通配置される洗浄液供給手段を構成する送水シース3と、カメラコントロールユニット(CCU)5と、光源装置4と、モニタ(装置)6と、によって、主に構成されている。なお、CCU5、光源装置4およびモニタ6は、体外装置を構成している。
【0016】
内視鏡2は、硬質な挿入部11に連設された操作部12と、この操作部12に設けられたスイッチ類13と、操作部12から延出する複合ケーブルであるユニバーサルケーブル14と、このユニバーサルケーブル14の延出端に配設された光源コネクタ15と、この光源コネクタ15の側部から延出する電気ケーブル16と、この電気ケーブル16の延出端に配設された電気コネクタ17と、を有して構成されている。なお、光源コネクタ15は、光源装置4に着脱自在に接続される。また、電気コネクタ17は、CCU5に着脱自在に接続されている。
【0017】
CCU5は、光源装置4およびモニタ6に電気的に接続されている。このCCU5は、内視鏡2が撮像した画像データを映像信号化して、モニタ6に表示させる。さらに、CCU5は、内視鏡2の操作部12に配設されたスイッチ類13の操作信号が入力され、これら信号に基づいて、光源装置4を制御したり、生理的食塩水などの洗浄水が貯留された送水装置である送水タンク24にCCU5からエアーを送り、この送水タンク24内の洗浄水を送水シース3に送液制御したりするための制御手段である制御装置を構成している。なお、送水タンク24は、CCU5に着脱自在な送気コネクタ26が端部に設けられた送気チューブ25が接続されている。
【0018】
次に、内視鏡システム1の主に電気的な構成について、図2に基づいて、以下に説明する。
図2に示すように、ビデオプロセッサ5は、CPUである制御部51と、電源/映像信号処理回路52と、圧電振動子加振回路53と、ポンプ制御回路54と、コンプレッサであるポンプ55と、を有して構成されている。制御部51は、電源/映像信号処理回路52、圧電振動子加振回路53およびポンプ制御回路54と電気的に接続されており、各回路を制御する。また、電源/映像信号処理回路52は、モニタ6とも電気的に接続され、モニタ6へ内視鏡画像信号を出力する。
【0019】
圧電振動子加振回路53は、内視鏡2の圧電振動子37を振動させる機能を有し、制御部51の制御により、圧電振動子37の振動強度を出力する電力量により可変制御する。ポンプ制御回路54は、ポンプ55と電気的に接続され、制御部51の制御により、ポンプ55を駆動制御する電気信号を出力する。光源装置4は、ハロゲンランプ等の光源56と、この光源56を駆動する光源制御回路57と、を有して構成されている。光源制御回路57は、ビデオプロセッサ5の制御部51と電気的に接続されて、この制御部51により制御される。
【0020】
次に、内視鏡2の挿入部11の先端部分の構成について、図3に基づいて、以下に説明する。
内視鏡2の挿入部11は、図3に示すように、挿入部外装を構成する金属製の管状部材31の先端に、観察窓であるここでは略円盤状のガラス板の透明部材32が接着剤を介して接合されている。
【0021】
管状部材31の内部には、撮像用光学系を含む上述した撮像ユニット34と、ここでは2本の照明用のライトガイド33が配置されている。撮像ユニット34の内部には、詳細には図示しないが、結像用光学系、固体撮像素子およびそのドライバチップが組み込まれており、通信ケーブル35が根元方向へ引き出されている。
【0022】
また、透明部材32の一方の面である内表面(裏面)には、観察視野を妨げない位置、つまり対向配置された撮像ユニット34の外方(ここでは外周一部から所定距離だけ離間した方向)の一領域側に、振動子ユニット30(図8、図9参照)における、例えば、PZTからなる矩形状の圧電振動子37が貼着されている。圧電振動子37には、配線36が接続され、電気的に駆動されるようになっている。つまり、圧電振動子37には、加振のための電圧を供給する配線36が内視鏡2の根元方向に引き出されている。また、圧電振動子37の透明部材32への固定は、接着剤による固定に限定することなく、半田などを用いてもよい。さらに、管状部材31と透明部材32の固定にも半田などを用いても良い。この圧電振動子37は、その共振周波数または共振周波数近傍で駆動され、超音波振動fを透明部材32内に発生させる(図8参照)。
【0023】
透明部材32は、図3(図8)に示すように、内表面(裏面)に貼着された圧電振動子37に対向した外表面の位置に、超音波振動fを回折して表面弾性波Φに変換(偏向)する偏向部の回折格子40が設けられている。ここでの回折格子40は、透明部材32の外表面に形成された断面矩形状の複数の凹凸、ここでは5つの溝部40aである(図8参照)。これら溝部40aは、透明部材32の外表面に等間隔で並列形成され、それぞれが平行な直線凹部状の溝である。
【0024】
上述の圧電振動子37から発生された超音波振動は、主として圧電振動子37の貼着面(透明部材32の内表面)に垂直な方向に伝播し、圧電振動子37に対向した透明部材32の回折格子40に入射する。この回折格子40に入射した超音波振動fは、回折格子40により透明部材32の外表面を伝播する表面弾性波Φに変換(偏向)される(図8参照)。
【0025】
また、内視鏡2の構成部品は、管状部材31と、接合された透明部材32によって封止されており、高圧蒸気による滅菌処理に耐え得る構造となっている。
また、本実施の形態のライトガイド33は、ユニバーサルケーブル14へ延設され、ライトガイド33が光源コネクタ15で終端されている。そして、通信ケーブル35および配線36が電気ケーブル16を介して、電気コネクタ17に接続されている。
【0026】
つまり、内視鏡2は、ユニバーサルケーブル14および電気ケーブル16を介して、ライトガイド33が光源制御回路を含む光源装置4の光源に、撮像ユニット34から引き出された通信ケーブル35および圧電振動子37から引き出された配線36がCCU5に夫々接続される構成となっている。
【0027】
次に、送水シース3について図1、図5、図6および図7に基づいて、以下に説明する。
送水シース3は、先端部材を備えた被覆チューブ21と、この被覆チューブ21の基端に連設された接続部22と、この接続部22の側部から延出する送水チューブ23と、を有して構成されている。なお、送水チューブ23の延出端は、送水タンク24に接続されている。この送水タンク24には、CCU5の送気コネクタ26に一端が接続された送気チューブ25の他端が接続されている。
【0028】
送水シース3の被覆チューブ21は、チューブ本体41と、このチューブ本体41の先端に嵌着された略円筒形状の先端部材42と、を有して構成されている。チューブ本体41の肉厚部分の一部には、送水用の断面円形状の送水路43が1つ形成されている。この送水路43は、接続部22まで配設され、この接続部22を介して送水チューブ23と連通している。
先端部材42は、チューブ本体41の送水路43に対向する位置の開口端面に沿った板体である、ひさし部44を有している。
【0029】
このように構成された送水シース3は、送水路43が送水タンク24と送水チューブ23を介して連通するように接続される。そして、送水タンク24内の洗浄水である生理食塩水などは、ポンプ制御回路によって制御されるポンプからのエアーにより送水タンク24内の圧力が上昇されることで、送水路43中に送液されて内視鏡先端部へ流れるようになっている。
【0030】
そして、内視鏡システム1は、図7に示すように、内視鏡2の挿入部11が送水シース3の被覆チューブ21に挿通配置され、例えば、腹腔鏡下外科手術に用いられる。
【0031】
ここで、本実施の形態の圧電振動子37を含む振動子ユニット30の構成について、図8および図9に基づいて、以下に説明する。
振動子ユニット30は、図8から図10に示すように、ガラス板である透明部材32の一方の面に接着剤39を介して貼着された圧電振動子37における透明部材32の貼着面とは反対側の面に所定温度で物性値である弾性率が変化するガラス転移点Tgを有するブロック状の弾性部材38が設けられている。なお、弾性部材38の設ける位置は、圧電振動子37からの超音波振動fが伝わる箇所であればどこでも良い。
【0032】
この弾性部材38は、接着剤39介して圧電振動子37に接着されており、圧電振動子37の機械的な負荷部材(抵抗部材)となっている。なお、接着剤39は、そのガラス転移点Tgが弾性部材38のガラス転移点Tgよりも高いものが選択され、接着剤39による影響をできるだけ受けないように圧電振動子37の電気インピーダンスが弾性部材38の温度特性と相関するようになっている。弾性部材38の弾性率の温度特性は、図10に示すように、ガラス転移点Tgまで略弾性率が変化せず、ガラス転移点Tg近傍において、急峻に弾性率が大きく変わる材料を用いることが望ましい。
【0033】
このような具体的な弾性部材38を形成する材料の一例として、ビスフェノール系エポキシ樹脂などがある。ビスフェノール系エポキシ樹脂のような温度変化に応じた弾性率の変化特性は、上述したようにガラス転移点Tgまで略弾性率が変化せず、ガラス転移点Tg近傍において、急峻に弾性率が大きく変わる(低下する)ため、圧電振動子37にかかる抵抗の変化に基づいて、圧電振動子37の温度が弾性部材38のガラス転移点Tg以上になったことを検出し易くなる。このような弾性部材38のガラス転移点Tgは、圧電振動子37が高温となって損傷、特性劣化などが生じない温度となる。このような構成では、弾性部材38を接着剤39で着けるため、材料の選択範囲が広いという利点もある。
【0034】
また、図11に示すように、透明部材32の一方の面に接着剤39を介して貼着された圧電振動子37における透明部材32への貼着面とは反対側の面上に、所定温度のガラス転移点Tgを有する弾性部材としての機械的な負荷部材(抵抗部材)となるように所定の厚さにエポキシ系樹脂接着剤を用いて接着剤ブロック39aを形成しても良い。
【0035】
つまり、所定の厚さに形成した接着剤ブロック39aは、ガラス転移点Tgを有する、ここでの弾性部材として、この接着剤ブロック39aの温度による弾性率の変化に応じて圧電振動子37への抵抗を変化させる。
【0036】
なお、接着剤ブロック39aを形成する接着剤は、圧電振動子37を透明部材32に接着する接着剤39に対して、ガラス転移点Tgが低いものが用いられる。
【0037】
ここでの振動子ユニット30は、上記構成とすることで、上述した弾性部材38を有する振動子ユニット30の構成と比較して、別途弾性部材38を設ける必要がなくなるため、構成の簡素化がなされる。
【0038】
さらに、図12に示すように、圧電振動子37と透明部材32とを接着する接着剤層39bを所定温度のガラス転移点Tgを有する弾性部材としても良い。ここでの振動子ユニット30では、圧電振動子37と透明部材32を接着する接着剤層39bを、ガラス転移点Tgを有する弾性部材として用い、必要最低限の構成に新たに部材を設けることがなく、構成の簡素化を行なえる。
【0039】
以上に説明した振動子ユニット30を備えた本実施の形態の内視鏡システム1は、振動子ユニット30の圧電振動子37の高温化を防止するために、圧電振動子37の電気インピーダンスの変化を検出し、その検出結果に基づいて、CCU5が圧電振動子37の駆動制御を行う。そのため、振動子ユニット30の圧電振動子37の電気インピーダンスの変化を検出する構成として、CCU5に設けられた圧電振動子加振回路53は、図13に示す構成を備えている。
【0040】
具体的には、図13に示すように圧電振動子加振回路53は、発振器62と、この発振器62からの信号を増幅するアンプ63と、入射電力と反射電力を各々分離して取り出す方向性結合器64と、整合回路65と、検波器66と、を有している。つまり、ここでの圧電振動子加振回路53は、発振器62からの信号をアンプ63で増幅し、入射電力と反射電力を各々分離して取り出す方向性結合器64、整合回路65を介して、圧電振動子37に電力が供給される。なお、整合回路65は、圧電振動子37の発熱がない状態で反射電力が小さくなるように調整されている。
【0041】
つまり、圧電振動子37が駆動することで高温となり、その熱が伝熱されて、ガラス転移点Tgの温度に達した弾性部材38の弾性特性がより大きく変化すると、圧電振動子37の電気インピーダンスも大きく変化する。この電気インピーダンスの大きな変化に応じて圧電振動子37からの反射電力が変化する。
【0042】
反射電力は、方向性結合器64で分離されて検波器66に入力される。そして、検波器66は、反射電力の大きさに比例したDC信号に変換する。そのDC信号は、CCU5の制御部51に出力される。
【0043】
このDC信号が入力された制御部51は、そのDC信号の大きさに応じて、アンプ63の出力をON/OFFしたり、アンプ63のゲインを調整したりして、圧電振動子37への入力電力を制御する。こうして、圧電振動子37の過剰な発熱を防止することができる。なお、制御部51は、アナログ回路もしくはロジック回路により構成される。
【0044】
なお、弾性部材38の特性が大きく変化し、圧電振動子37の発熱時に、反射電力が大きくなって、実質的に圧電振動子37への入射電力が小さくなる場合には、図14に示すように制御部51によるアンプ63の制御が行なわれない構成としても良い。
【0045】
このように、本実施の形態では、内視鏡2の透明部材32の内表面に貼着された圧電振動子37に温度により弾性特性が変化する弾性部材38を設けて、この弾性部材38が所定の温度以上となると弾性特性が急峻に変化して、弾性率が大きい状態から小さい状態に大きく変化する。
【0046】
そして、弾性部材38による圧電振動子37への機械的負荷(抵抗)の大きな変化に応じて、圧電振動子37の電気インピーダンスも大きく変化した場合、圧電振動子37の温度が高温となっている状態であることを検出している。換言すると、圧電振動子37の電気的インピーダンスは、圧電振動子37への機械的負荷によって変動する。
【0047】
つまり、圧電振動子37に設けられた弾性部材38の弾性率が温度により大きく変化することで、圧電振動子37の電気インピーダンスも温度により大きく変化するようになり、圧電振動子37の温度変化を電気的に検出することが可能となる。そして、検出された温度変化に基づいて、圧電振動子37を駆動する振動子駆動信号を制御することが可能となる。
【0048】
本実施の形態の内視鏡システム1は、以上のような構成とすることで、別途センサを設けたり、新たに配線をしたりすることなく、必要最低限の構成(配線、部品など)の増加、すなわち圧電振動子37に弾性部材38を設けて、CCU5の電気的な構成から圧電振動子37の温度変化を検出することができる。これにより、圧電振動子37の過剰な発熱を抑えて、この圧電振動子37が損傷、特性劣化などすることを防止することができる。
【0049】
さらに、内視鏡2の先端部においては、内部空間に余裕がないため、配線、部品などをできるだけ増加させることなく、制約された省スペースで圧電振動子37の温度を検出する手段を設けることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。図15および図16は本発明の第2の実施の形態に係り、図15は圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図、図16は変形例の圧電振動子を駆動する圧電振動子回路の構成を示すブロック図である。
【0051】
ここでの内視鏡システム1は、第1の実施の形態のCCU5の圧電振動子加振回路53の構成とは異なり、圧電振動子加振回路53が圧電振動子37の共振周波数を追尾して、圧電振動子37を駆動する振動子駆動信号を制御する構成となっている。
具体的には、ここでの圧電振動子加振回路53は、図15に示すように、位相比較器(PSD)68と、電圧制御発振器(VCO)69と、アンプ63と、整合回路65と、を有している。
【0052】
PSD68は、圧電振動子37に印加される電圧に比例した電圧検出信号、および圧電振動子37に流れる電流に比例した電流検出信号を、両者の位相差に比例した信号を出力がフィードバックされる。そして、電圧検出信号と電流検出信号の位相差に比例したPSD68の出力がVCO制御信号としてVCO69に入力される。
【0053】
VCO69は、制御信号を受けて、その発振周波数が制御され、ある一定範囲内の特定周波数で発振する。これらの構成により、VCO69の発振周波数は、圧電振動子37の共振周波数で発振する自励振系となる。そして、弾性部材38による圧電振動子37への負荷の変化により、圧電振動子37の共振周波数が変化するので、その変化はPSD68が出力するVCO制御信号に現れる。つまり、共振周波数の変化とは、初期状態の範囲を超えることである。このVCO制御信号が同時に制御部51に入力され、そのVOC制御信号に基づいて、アンプ63の出力をON/OFFしたり、アンプ63のゲインを調整したりして、圧電振動子37への入力電力を制御する。こうして、圧電振動子37の過剰な発熱を防止することができる。
【0054】
なお、本実施の形態においても、弾性部材38の特性が大きく変化し、圧電振動子37の発熱時に、反射電力が大きくなって、実質的に圧電振動子37への入射電力が小さくなる場合には、図16に示すように制御部51によるアンプ63の制御が行なわれない構成としても良い。
【0055】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0056】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0057】
1…内視鏡システム
2…内視鏡
3…送水シース
4…光源装置
5…ビデオプロセッサ
6…モニタ
11…挿入部
12…操作部
30…振動子ユニット
34…撮像ユニット
37…圧電振動子
38…弾性部材
39…接着剤
39a…接着剤ブロック
39b…接着剤層
40…回折格子
40a…溝部
51…制御部
52…映像信号処理回路
53…圧電振動子加振回路
54…ポンプ制御回路
55…ポンプ
56…光源
57…光源制御回路
62…発振器
63…アンプ
64…方向性結合器
65…整合回路
66…検波器
f…超音波振動
Tg…ガラス転移点
f…超音波振動
Φ…表面弾性波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材と、
該透明部材の一方の面に設けられた振動子と、
上記振動子からの超音波振動が伝わる箇所に設けられ、温度変化に伴い物性値が変化する弾性部材と、
を具備することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
上記弾性部材は、上記所定の物性値が変化して、上記振動子の電気インピーダンスが変化する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、所定の温度のガラス転移点を有し、該ガラス転移点に達すると弾性率が変化して上記振動子の駆動負荷が変化することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記弾性部材が、前記振動子における前記透明部材との接着面の反対面に接着剤を介して着けられた部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記振動子における前記透明部材との接着面の反対面に接着剤で形成された接着剤ブロックであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記透明部材と前記振動子を接着する接着剤層であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
上記弾性部材の上記物性値の変化に基づき、振動子加振回路を制御して上記振動子を駆動制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
上記制御手段は、上記振動子からの反射電力に基づき、上記振動加振回路を制御することを特徴とする請求項7に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
上記制御手段は、上記振動子の共振周波数に基づき、上記振動加振回路を制御することを特徴とする請求項7に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−27625(P2013−27625A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167098(P2011−167098)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】