説明

内視鏡診断装置

【課題】被写体の観察部位や病変の状態(進行度等)に依存して異なる蛍光特性を、事前の測光によって計測し、最適な観察条件に基づいて自家蛍光観察を行うことで、より診断能のよい撮像画像を得ることができる内視鏡診断装置を提供する。
【解決手段】中心波長の異なる2種以上の励起光を照射する光源部12と、自家蛍光画像を取得する撮像部と、撮像部によりプレ撮影で取得された自家蛍光画像に基づいてコントラストを算出するコントラスト算出手段69と、コントラストに基づいて本撮影用の撮像条件を決定する撮像条件決定手段71と、を備え、撮像部により複数回のプレ撮影を行って複数の自家蛍光画像を取得し、コントラスト算出手段69により、プレ撮影で取得された複数のコントラストを算出し、撮像条件決定手段71により、コントラストに基づいて本撮影用の撮像条件となる、同時に照射する励起光の種類及びその発光比率を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体(生体)の被観察領域に含まれる自家蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像して自家蛍光画像を取得する内視鏡診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置から発せられる通常光(白色光)を内視鏡先端部まで導光して被験者の被観察領域に照射し、その反射光を撮像して通常光画像(白色光画像)を取得し、通常光観察(白色光観察)を行う内視鏡が用いられている。これに対し、近年では通常光観察に加えて、自家蛍光観察用の励起光(特殊光)を被写体の被観察領域に照射し、自家蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像して自家蛍光の合成画像(自家蛍光画像、特殊光画像)を取得し、自家蛍光観察(特殊光観察)を行う内視鏡診断装置が活用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、自家蛍光観察を含む蛍光観察を行う内視鏡診断装置であって、通常光観察と蛍光観察(特殊光観察)とを切替て行うことのできる内視鏡診断装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、自家蛍光観察を行うことのできる内視鏡診断装置であって、複数の励起光源を有する内視鏡診断装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、自家蛍光観察を行うことのできる内視鏡診断装置であって、自家蛍光を利用して被写体の正常組織と異常組織とを識別するための内視鏡診断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−62408号公報
【特許文献2】特開2006−187598号公報
【特許文献3】特開2002−512067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3には、自家蛍光観察を行うことのできる内視鏡診断装置については記載されているものの、励起光源の波長帯域や、励起光源の強度比は被写体(観察部位)や観察条件によらずに固定化されており、観察部位や病変の状態によって、つまり、粘膜の厚みや血液量、自家蛍光物質の種類や量が異なるのに対して、最適な観察条件下において自家蛍光観察が行われていなかった。
【0008】
本発明の目的は、観察部位や病変の状態に対応した最適な観察条件によって自家蛍光観察を行うため、事前にプレ撮影(プレ測光)を行って最適な観察条件を計測し、計測された最適な観察条件に基づいて自家蛍光観察を行うことを特徴とする内視鏡診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、中心波長の異なる2種以上の励起光を照射する光源部と、前記光源部から励起光が生体組織に照射されることによって、該生体組織に含まれる自家蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像して自家蛍光画像を取得する撮像部と、前記撮像部によりプレ撮影で取得された自家蛍光画像に基づいて自家蛍光画像のコントラストを算出するコントラスト算出手段と、算出された自家蛍光画像のコントラストに基づいて本撮影用の撮像条件を決定する撮像条件決定手段と、を備え、前記光源部から同時に照射する励起光の種類及びその発光比率を変えて該励起光を照射し、前記撮像部により複数回のプレ撮影を行って複数の自家蛍光画像を取得し、前記コントラスト算出手段により、プレ撮影で取得された複数の自家蛍光画像のコントラストを算出し、前記撮像条件決定手段により、算出された複数の自家蛍光画像のコントラストに基づいて本撮影用の撮像条件となる、同時に照射する励起光の種類及びその発光比率を決定する内視鏡診断装置を提供する。
【0010】
また、前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(1)を計算することで算出されることが好ましい。
【数1】

【0011】
また、前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(2)を計算することで算出されることが好ましい。
【数2】

【0012】
また、コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(3)を計算することで算出されることが好ましい。
【数3】

【0013】
また、コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(4)を計算することで算出されることが好ましい。
【数4】

【0014】
また、コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(5)を計算することで算出されることが好ましい。
【数5】

【0015】
また、コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(6)を計算することで算出されることが好ましい。
【数6】

【0016】
また、前記低い画素値Lminは、前記ヒストグラムから高い値5%を除いた後のヒストグラムにおける低い値10%の平均値であり、前記高い画素値Lmaxは、前記ヒストグラムから高い値5%を除いた後のヒストグラムにおける高い値10%の平均値であることが好ましい。
【0017】
また、前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから高い値10%を除いた後のヒストグラムの高い値30%の平均値を前記コントラストとすることで算出されることが好ましい。
【0018】
また、前記コントラスト算出手段は、前記複数の励起光源の照射強度の比率を変えて複数のコントラストを算出し、前記撮像条件決定手段は、それらのコントラストを、最小二乗法を用いて2次曲線でフィッティングを行い、その最大ピークを与える励起光源の照射強度の比率を被写体の被対象領域の自家蛍光観察に最適な撮像条件として選出することが好ましい。
【0019】
また、前記コントラスト算出手段において前記コントラストの算出に用いられる自家蛍光画像は、前記撮像部において低解像度で出力された自家蛍光画像であることが好ましい。
【0020】
また、前記コントラスト算出手段において前記コントラストの算出に用いられる前記自家蛍光画像は、前記撮像部において前記撮像画像の中心領域のみが出力された前記自家蛍光画像であることが好ましい。
【0021】
また、前記自家蛍光画像は、前記撮像部において撮像される通常光の画像信号と自家蛍光の画像信号とに基づいて、画像処理部により生成される合成画像であることが好ましい。
【0022】
また、前記光源部は、第1の励起光源と第2の励起光源とを備え、前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を1:0とする第1撮像条件、前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を0.5:0.5とする第2撮像条件、及び前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を0:1とする第3撮像条件に基づいて撮像を行い、前記コントラスト算出手段は、前記第1撮像条件に対する第1のコントラストと、前記第2撮像条件に対する第2のコントラストと、前記第3撮像条件に対する第3のコントラストとをそれぞれ算出し、前記撮像条件決定手段は、前記第1のコントラスト、前記第2のコントラスト、及び第3のコントラストのうち、最もコントラストの大きい撮像条件を決定し、前記決定された撮像条件に基づいて、自家蛍光観察が行われることが好ましい。
【0023】
また、前記光源部は、中心波長405±10nmの第1の励起光源と、中心波長445±10nmの第2の励起光源と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被写体の観察部位や病変の状態(進行度等)に依存して異なる蛍光特性を、事前のプレ撮影(プレ測光)によって計測し、最適な観察条件に基づいて自家蛍光観察を行うことができるため、より診断能のよい撮像画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る内視鏡診断装置の全体構成の一実施形態を示す外観図である。
【図2】図1に示す内視鏡診断装置の内部構成を示す本実施形態のブロック図である。
【図3】図1に示す内視鏡診断装置の内視鏡挿入部の先端部を表す概念図である。
【図4】図1に示す内視鏡診断装置の撮像素子の手前に設けられる回転フィルタの概念図である。
【図5】図1に示す内視鏡診断装置のコントラスト算出手段におけるコントラスト算出の一例を説明する説明図である。
【図6】図1に示す内視鏡診断装置のコントラスト算出手段におけるコントラスト算出の他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る内視鏡診断装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る内視鏡診断装置の全体構成を表す一実施形態の外観図であり、図2は、その内部構成を表す本実施形態のブロック図である。
これらの図に示す内視鏡診断装置10は、通常光又は自家蛍光観察用の複数の励起光を発する光源装置12と、光源装置12から発せられる光を導光して被写体の被観察領域に照射し、被写体からの反射光又は自家蛍光を撮像する内視鏡本体14と、内視鏡本体14で撮像された画像を画像処理して内視鏡画像を出力するプロセッサ装置16と、プロセッサ装置16から出力される内視鏡画像を表示する表示装置18と、入力操作を受け付ける入力装置20とによって構成される。
【0028】
ここで、内視鏡診断装置10は、通常光(白色光)を被写体に照射し、その反射光を撮像して通常光画像(白色光画像)を表示(観察)する通常光観察モード(白色光観察モード)と、自家蛍光観察用の励起光(特殊光)を被写体に照射し、その励起光によって励起された自家蛍光を撮像して自家蛍光の合成画像(自家蛍光画像)を表示する自家蛍光観察モード(特殊光観察モード)とを備え、通常光観察モードから自家蛍光観察モードに切り替えられた際に、自家蛍光観察に最適な撮像条件(中心波長の異なる励起光の組合せ、励起光の照射強度及び照射時間等)を決定するプレ撮影(プレ測光)を行う。各モードは、内視鏡本体14の後述する切り替えスイッチ66や入力装置20から入力される指示に基づいて、適宜切り替えられる。
【0029】
なお、詳細については後述するが、本発明の内視鏡診断装置10は、プレ撮影に用いる複数の撮像条件をプロセッサ装置14の後述する記憶部72に予め備えており、自家蛍光観察モードに切り替えると、これら複数の撮像条件に基づいてプレ撮影がなされる。
【0030】
(光源装置)
光源装置12は、光源制御部22と、それぞれ中心波長の異なるレーザ光を発する2種類のレーザ光源LD1、LD2と、コンバイナ(合波器)24と、カプラ(分波器)26とによって構成されている。
【0031】
本実施形態において、レーザ光源LD1、LD2からは、それぞれ中心波長が405nm、445nmである、所定の波長範囲(例えば、中心波長±10nm)の狭帯域光が発せられる。レーザ光源LD1は、被写体の被観察領域に含まれる複数の自家蛍光物質、例えば、FAD(Flavin Adenin Dinucleotide)、ポルフィリン(Porphyrin)等から自家蛍光を同時に発光させるための励起光を照射する光源である。レーザ光源LD2は、上述のLD1と同じく、被写体の被観察領域に含まれる複数の自家蛍光物質等から自家蛍光を同時に発光させるための励起光を照射する光源としても働き、また、後述するように、蛍光体から白色光(疑似白色光)を発生させるための励起光を発生する光源としても働く。
【0032】
例えば、FADは、約330〜400nmの波長範囲に含まれる、所定の中心波長の励起光が照射された場合に、約450〜550nmの波長範囲の自家蛍光を発する。また、ポルフィリンは、約350〜550nmの波長範囲に含まれる、所定の中心波長の励起光が照射された場合に、約610〜640nmの自家蛍光を発する。
被写体の被観察領域に含まれるこれら自家蛍光物質の量は、観察部位によっても異なるし、その被観察領域が病変か否かによっても、病変の進行度合いによっても、そして、各個人によっても異なるため、励起光の中心波長や照射強度によって、観察される自家蛍光画像のコントラストは異なる。
【0033】
また、自家蛍光物質としては、ポルフィリン、FADを挙げたが、自家蛍光物質がこれらに限定されるわけではない。
例えば、他の自家蛍光物質として、NADHやコラーゲンがあり、それぞれ波長範囲が約250〜400nm、約200〜400nmの励起光を受けて、自家蛍光を発する。
【0034】
レーザ光源LD1、LD2は、後述するプロセッサ装置16の制御部70によって制御される光源制御部22によりそれぞれ個別にオンオフ制御、照射強度及び照射時間(つまり、撮像条件)に基づく光量制御が行われ、また、プレ撮影の場合には、前述のとおり、後述する記憶部72に記憶された複数の撮像条件を制御部70が読み出して、これら複数の撮像条件に基づいて、光源制御部22により光量制御がなされる。プレ撮影後の自家蛍光観察の場合には、プレ撮影に用いられた複数の撮像条件のうち、後述する撮像条件決定手段71によって、自家蛍光観察に最も適した撮像条件が決定され、その撮像条件に基づいて光源制御部22により光量制御がなされる。なお、後述する入力装置20を介して新規の撮像条件を追加することも可能である。
レーザ光源LD1、LD2としては、ブロード型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオード等を用いることもできる。
【0035】
なお、通常光観察モードにおいて通常光を発生するための通常光光源は、励起光及び蛍光体の組合せに限定されず、白色光を発するものであればよく、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、白色LED(発光ダイオード)などを利用することもできる。自家蛍光観察モード(プレ撮影時を含む)において励起光を発生するための励起光光源も、レーザ光源(半導体レーザ)に限定されず、自家蛍光物質を励起して自家蛍光を発光させることができる十分な強度の励起光を照射できる各種の光源、例えば、白色光光源と帯域制限フィルタとの組合せ等を利用することができる。
【0036】
また、通常光観察モードの励起光の波長(中心波長、狭帯域光の波長範囲)は、特に制限はなく、蛍光体から疑似白色光を発生させることができる波長の励起光が、全て利用可能である。自家蛍光観察モードの励起光の波長も、特に制限はなく、複数の自家蛍光物質を同時に励起して自家蛍光を発光させることができる波長の励起光が、全て利用可能であり、例えば、中心波長405±10nmの光、又は中心波長445nm±10nmの光を好適に利用することができる。
【0037】
また、1種類の中心波長の励起光を被写体に照射して、複数の自家蛍光物質から同時に自家蛍光を発光させることに限定されず、光源装置12から、複数の自家蛍光を同時に発光させるための、中心波長の異なる複数の励起光を同時に照射する構成としてもよい。また、本実施形態では、通常光光源と励起光光源とを共通の光源で構成しているが、通常光光源と励起光光源とを別々に設けることも可能である。
【0038】
光源制御部22は、通常光観察モードの場合、レーザ光源LD1を消灯、レーザ光源LD2を点灯し、コンバイナ24及びカプラ26を制御して、レーザ光源LD2からの狭帯域光が後述する蛍光体54A及び54Bを備える後述する光ファイバ48A及び48Bから照射されるように制御する。
また、光源制御部22は、自家蛍光観察モード(プレ撮影時を含む)の場合、予め決定された撮像条件の照射強度及び照射時間に基づいてレーザ光源LD1、LD2を点灯し、コンバイナ24及びカプラ26を制御して、これらレーザ光源LD1、LD2から照射された狭帯域光が合波され、後述する光ファイバ46A及び46Bから照射されるように制御する。
なお、プレ撮影の場合は、予め複数の撮像条件が設定されているため、光源制御部22は、複数の撮像条件に基づいて、順次、プレ撮影(自家蛍光の撮像)を行う。プレ撮影により得られた自家蛍光の画像データは、後述する画像処理部68において、通常光観察モードで撮影された通常光画像と合成されて自家蛍光画像とされ、後述するコントラスト算出手段において、自家蛍光画像(通常光画像との合成画像)のコントラストが算出される。
そして、算出されたコントラストに基づいて制御部70の後述する撮像条件決定手段71において、自家蛍光観察に最適な撮像条件が決定され、決定された撮像条件に基づいて光源制御部22において光量制御が行われる。
【0039】
各レーザ光源LD1、LD2から発せられるレーザ光は、集光レンズ(図示略)を介してそれぞれ対応する光ファイバに入力され、コンバイナ24により合波され、カプラ26により4系統の光に分波されてコネクタ部32Aに伝送される。コンバイナ24及びカプラ26は、ハーフミラー、反射ミラー等によって構成される。また、コンバイナ24及びカプラ26は、光源制御部22によって制御され、各レーザ光源LD1、LD2から発せられるレーザ光は、所望の光ファイバから照射されるように制御される。なお、これらに限らず、コンバイナ24及びカプラ26を用いずに、各レーザ光源LD1、LD2からのレーザ光を直接コネクタ部32Aに送出する構成としてもよい。
【0040】
(内視鏡本体)
続いて、内視鏡本体14は、被写体内に挿入される内視鏡挿入部28の先端から4系統(4灯)の光(通常光、ないし、自家蛍光観察用(プレ撮影用を含む)の励起光)を出射する照明光学系と、被観察領域の内視鏡画像を撮像する1系統(1眼)の撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。内視鏡本体14は、内視鏡挿入部28と、内視鏡挿入部28の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部30と、内視鏡本体14を光源装置12及びプロセッサ装置16に着脱自在に接続するコネクタ部32A、32Bとを備える。
【0041】
内視鏡挿入部28は、可撓性を持つ軟性部34と、湾曲部36と、先端部(以降、内視鏡先端部とも表記する)38とから構成されている。
【0042】
湾曲部36は、軟性部34と先端部38との間に設けられ、操作部30に配置されたアングルノブ40の回転操作により湾曲自在に構成されている。この湾曲部36は、内視鏡本体14が使用される被写体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部38を、所望の観察部位に向けることができる。
【0043】
なお、図示していないが、操作部30及び内視鏡挿入部28の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられている。
【0044】
内視鏡先端部38の先端面には、図3に示すように、被観察領域へ光を照射する2系統の照明窓42A、42B、被観察領域からの反射光ないし自家蛍光を撮像する1系統の観察窓44の他、鉗子口45等が配置されている。
【0045】
照明窓42Aの奥には、2系統の光ファイバ46A、48Aが収納されている。光ファイバ46A、48Aは、光源装置12からコネクタ部32Aを介してスコープ先端部38まで敷設されている。光ファイバ46Aの先端部(照明窓42A側)にはレンズ50A等の光学系が取り付けられている。一方、光ファイバ48Aの先端部には蛍光体54Aが配置され、さらに、蛍光体54Aの先にレンズ52A等の光学系が取り付けられている。
【0046】
同様に、照明窓42Bの奥には、先端部にレンズ50B等の光学系を有する光ファイバ46Bと、先端部に蛍光体54B及びレンズ52B等の光学系を有する光ファイバ48Bの、2系統の光ファイバが収納されている。
【0047】
蛍光体54A、54Bは、レーザ光源LD2からの青色レーザ光(例えば、中心波長445±10nm)の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光物質(例えば、YAG系蛍光物質、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質)を含んで構成される。通常光観察用の励起光が蛍光体54A、54Bに照射されると、蛍光体54A、54Bから発せられる緑色〜黄色の励起発光光(蛍光)と、蛍光体54A、54Bにより吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色光(疑似白色光)が生成される。
【0048】
照明窓42A側及び照明窓42B側の照明光学系は同等の構成及び作用のものであって、照明窓42A、42Bから同時に同等の照明光を照射させることで照明ムラを防止することができる。なお、照明窓42A、42Bからそれぞれ異なる照明光を照射させることもできる。また、4系統の照明光を出射する照明光学系でも同等の機能を実現することができる。
【0049】
一方、観察窓44の奥には、レンズ56等の光学系が取り付けられ、レンズ56の奥には、回転フィルタ74が設けられている。回転フィルタ74を透過した光は、その先に設けられた被観察領域の画像情報を取得するCCD(Carge1 Coupled Device)イメージ線やCMOS(Charge Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子58が取り付けられている。撮像素子58は、時間を分けてフレームごとで利用されるため、通常光観察にも自家蛍光観察(プレ撮影を含む)にも用いられる。なお、本発明における撮像部は、観察窓44、レンズ56、回転フィルタ74、撮像素子58、後述するスコープケーブル62、後述するA/D変換器64、及び後述する画像処理部68等により構成される。
【0050】
また、図4に示すように、回転フィルタ74は、通常光観察モードの際に設置され、被写体組織からの反射光をそのまま通す透過部76と、自家蛍光観察モード(プレ撮影時を含む)の際に設置され、被写体組織からの反射光である励起光をカットする励起光遮断部78とを備える。回転フィルタ74は、後述する入力装置20又は切り替えスイッチ66からの撮像モードの切り替え指示により、透過部76と励起光遮断部78とを切り替えて用いられ、また、自家蛍光観察モードにおいて、通常光観察と自家蛍光観察とを交互に行う場合には、通常光観察と自家蛍光観察との周期に併せて、図示しない回転手段により回転させて用いられる。
なお、励起光遮断部78は、例えば、450nm〜640nmまでの波長帯域の光を透過するバンドパスフィルタである。
【0051】
撮像素子58は、通常光(反射光)及び自家蛍光を受光面(撮像面)で受光し、受光した光を光電変換して撮像信号(アナログ信号)を出力するものであって、R画素、G画素、B画素の3色の画素を1組として、複数組の画素がマトリクス上に配列されている。撮像素子58の受光面には、R画素、G画素、B画素に対応して、それぞれ被観察領域からの可視光の370〜720nmの波長範囲の反射光を3つの波長領域に分割してそれぞれを透過する分光透過特性を有する、図示しないR色、G色、B色のカラーフィルタが設けられている。
【0052】
また、自家蛍光観察モードのプレ撮影時においては、撮像素子58は、ビニング処理を行って画素数を少なくした上で自家蛍光画像の撮像データを出力してもよく、また、撮像素子58の中央部分において取得された自家蛍光画像の撮像データのみを出力してもよい。
プレ撮影は、あくまで撮像条件の決定を目的とするものであって自家蛍光画像等を取得することを目的とするものではなく、また、出力する撮像データのデータ容量が小さくなれば、後述する画像処理部68のコントラスト算出手段69におけるコントラストの算出も迅速に行うことができるためである。
【0053】
なお、撮像素子58として、カラーの撮像素子を使用してR色、G色、B色の画像を同時に撮像することは必須ではなく、モノクロの撮像素子と、R色、G色、B色のカラーフィルタとを組み合わせて、R色、G色、B色の画像を面順次で撮像してもよい。
【0054】
光源装置12から光ファイバ46A、46B、及び48A、48Bによって、導光された光は、内視鏡先端部38から、被写体の被観察領域に向けて照射される。そして、光が照射された被観察領域からの反射光、もしくは、被観察領域の自家蛍光物質から発せされる自家蛍光がレンズ56により撮像素子58の受光面上に結像され、撮像素子58により光電変換されて撮像される。撮像素子58からは、撮像された被写体の被観察領域の撮像信号(アナログ信号)が出力される。
【0055】
通常光観察モードの場合、レーザ光源LD2から発せられた通常光観察用の励起光が光ファイバ48A、48Bによって導光されて蛍光体54A、54Bに照射され、蛍光体54A、54Bから発せられる白色光が、照明窓42A、42Bから被写体の被観察領域に照射される。そして、白色光が照射された被写体の被観察領域からの反射光がレンズ56により集光され、図示しないカラーフィルタにより分光されて、撮像素子58によって通常光が撮像される。
【0056】
一方、自家蛍光観察モード(プレ撮影時を含む)の場合、設定された撮像条件に基づいて、レーザ光源LD1、LD2から発せられた自家蛍光観察用の励起光が光ファイバ46A、46Bによって導光され、内視鏡先端部38から、被写体の被観察領域に向けて照射される。そして、励起光が照射された被写体の被観察領域に含まれる複数の自家蛍光物質から同時に発せられる自家蛍光の合成光がレンズ56により集光され、励起光遮断部78によって励起光成分(中心波長405±10nm、445±10nmの反射光)がカットされ、撮像素子58によって自家蛍光が撮像される。
【0057】
なお、プレ撮影時においては、予め記憶部72に記憶された全ての撮像条件に基づいて上述のとおり自家蛍光が撮像され、後述する画像処理部68のコントラスト算出手段69において自家蛍光画像のコントラストが算出され、算出されたコントラストに基づいて、制御部70の後述する撮像条件決定手段71において、被写体の被対象領域の自家蛍光観察に最適な撮像条件が決定される。
そして、プレ撮影終了後、決定された最適な撮像条件に基づいて光源制御部22によりレーザ光源LD1、LD2が制御され、最適な自家蛍光観察がなされる。
【0058】
なお、本実施形態における自家蛍光観察の励起光は、上述のとおり中心波長405±10nmのレーザ光(LD1)と中心波長445±10nmのレーザ光(LD2)との組合せであり、自家蛍光は、励起光遮断フィルタ78を通して、約460〜640nmの波長範囲の合成光を受光して撮像される。そのため、自家蛍光画像には、主にFAD及びポルフィリンの自家蛍光成分が含まれる。
【0059】
また、撮像素子58から出力される画像(通常光画像、自家蛍光画像)の撮像信号(アナログ信号)は、それぞれ、スコープケーブル62を通じてA/D変換器64に入力される。A/D変換器64は、撮像素子58からの撮像信号(アナログ信号)を画像信号(デジタル信号)に変換する。変換後の画像信号は、コネクタ部32Bを介してプロセッサ装置16の画像処理部68に入力される。
【0060】
(プロセッサ装置)
続いて、プロセッサ装置16は、画像処理部68と、制御部70と、記憶部72とを備え、画像処理部68はコントラスト算出手段69を、制御部70は撮像条件決定手段71を、それぞれ備える。制御部70には、表示装置18及び入力装置20が接続されており、入力装置20は、上述のとおり、撮像モード(通常光観察モード、及び自家蛍光観察モード)の切り替えはもちろん、入力装置20を介して新規な撮像条件を追加設定することもできる。
プロセッサ装置16は、内視鏡本体14の切り替えスイッチ66や入力装置20から入力される指示に基づき、光源装置12の光源制御部22を制御するとともに、内視鏡本体14から入力される画像信号を画像処理し、表示用画像を生成して、記憶部72に記憶し、また、表示装置18に出力する。
【0061】
画像処理部68は、通常光観察モードの場合においても、自家蛍光観察モードの場合においても、通常光画像、自家蛍光画像の画像種別に応じて、内視鏡本体14のA/D変換器64から供給される画像信号(画像データ)に対して、通常光画像及び自家蛍光画像のそれぞれに適した所定の画像処理を施し、通常光画像信号(通常光画像)及び自家蛍光画像信号(自家蛍光画像)を出力(生成)する。
なお、自家蛍光画像信号(自家蛍光画像)は、内視鏡本体より供給される上述の通常光の画像信号と自家蛍光の画像信号とを画像処理部68で合成することで生成される合成画像信号(合成画像)である。
【0062】
画像処理部68で処理された画像信号は、制御部70に送られる。制御部70では、観察モードに従って、通常光画像信号、自家蛍光画像信号に基づき、通常光画像、もしくは、自家蛍光画像が表示装置18に表示される。また、制御部70の制御により、通常光画像信号、自家蛍光画像信号は、必要に応じて、例えば、1枚(1フレーム)の画像を単位として、メモリやストレージ装置からなる記憶部72に記憶される。
【0063】
また、画像処理部68は、コントラスト算出手段69を備え、内視鏡診断装置10が自家蛍光観察モードに切り替えられ、プレ撮影を行う場合には、プレ撮影により取得される自家蛍光画像信号に基づいて、自家蛍光画像のコントラスを算出する。
【0064】
コントラスト算出手段69におけるコントラストの算出は、図5に示すように、自家蛍光画像信号(自家蛍光画像データ)から画素値と画素の数に対応するヒストグラムを作成し、まず、ヒストグラムの画素値の上位5%を切り捨て、残りの画像データ(図5の点線枠内のヒストグラム)から、上位10%の画素値の平均値(輝度値の平均値)Lmaxと、下位10%の画素値の平均値(輝度値の平均値)Lminとを算出する。
maxとLminとを算出した上で、これらの値を基に、Micalsonコントラストの式(1)を計算する。
【数7】

すると、自家蛍光画像のコントラストが求められる。
【0065】
画像処理部68で処理された画像信号及びコントラスト算出手段69で算出された自家蛍光画像のコントラストは、自家蛍光画像の撮像条件等と共に制御部70を通じて記憶部72に記憶される。
【0066】
また、コントラスト算出手段69におけるコントラストの算出は、図6に示すように、図5と同様、自家蛍光画像データから画素値と画素の数に対応するヒストグラムを作成し、上位10%を切り捨て、残りの画像データ(図6の点線枠内のヒストグラム)から、上位30%の画素値の平均値をとって、自家蛍光画像のコントラストとしてもよい。
前述と同様、算出された自家蛍光画像のコントラストは、自家蛍光画像データ及び自家蛍光画像の撮像条件等と共に制御部70を通じて記憶部72に記憶される。
【0067】
なお、コントラスト算出手段69におけるコントラストの算出は、上述の(1)式の他にも、LmaxとLminとの単純な差分をとって、
【数8】

としてもよく、また、(1)式の各Lに対して対数(常用対数、自然対数どちらでも可)をとって、
【数9】

としてもよく、また、同様に、(2)式の各Lに対して対数(常用対数、自然対数どちらでも可)をとって、
【数10】

としてもよい。
【0068】
また、(1)式の各Lをx(xは任意の数)の累乗として、
【数11】

としてもよい。
上述の他にも、LmaxとLminとの単純な比率(Lmax/Lmin)を
【数12】

としてもよく、また、Lmaxを、そのまま用いて、
【数13】

としてもよい。
また、前述の画素値と画素の数に対応するヒストグラムの全面積、つまり、自家蛍光画像の全画素数と、自家蛍光画像の全画素値の積算値とを用いて、画素値の平均値を算出し、その平均値を自家蛍光画像のコントラストとしてもよい。
【0069】
また、上述のコントラストの算出に用いる自家蛍光画像として、ビニング等の処理を行った(或いは、高解像度の撮像素子の他に、低解像度の撮像素子がある場合には、低解像度の撮像素子によって撮像された)低解像度の自家蛍光画像を用いても良く、また、撮像された自家蛍光画像のうち、中心領域のみを抜き出した自家蛍光画像を用いてもよい。コントラストの算出に用いる画素数が減るため処理を早く行うことができる。
また、コントラスト算出手段69におけるコントラストの算出方法の切り替えは、入力装置20を通じて行うことができる。
【0070】
なお、自家蛍光画像データに基づくコントラストの算出は、撮像された自家蛍光画像に基づいて、つまり、予め記憶された撮像条件の数だけ行われ、自家蛍光画像データと共に記憶部72に記憶される。
【0071】
制御部70は、内視鏡本体14の切り替えスイッチ66や入力装置20からの指示、例えば、観察モード等の指示(通常光観察モード、及び自家蛍光観察モード(プレ撮影を含む))に基づいて、画像処理部68及び光源装置12の光源制御部22の動作を制御する。
また、制御部70は、画像処理部68で画像処理され表示可能となった表示用画像を記憶部72に記憶し、また、入力装置20等の指示により必要に応じて表示装置18で表示する。
【0072】
そして、制御部70は、プレ撮影時において、予め記憶部72に記憶された複数の撮像条件に基づいて、プレ撮影(自家蛍光画像の撮像)を行い、画像処理部68及びコントラスト算出手段69において算出された撮像条件に対応する自家蛍光画像、及びそのコントラストを記憶部72で記憶し、撮像条件決定手段71において、最もコントラストの高い撮像条件を決定する。
制御部70が、決定された撮像条件に基づいて光源制御部22を制御することで、被写体の被観察領域の観察に最適な撮像条件で自家蛍光観察を行うことができる。
【0073】
また、コントラスト算出手段69は、励起光の強度比率(LD1とLD2との照射強度の比率。合計を1.0とする。)を変えて複数のコントラストを算出し、撮像条件決定手段71は、それらのコントラストを、最小二乗法を用いて2次曲線でフィッティングを行い、その最大ピークを与える励起光の強度比率を被写体の被対象領域の自家蛍光観察に最適な撮像条件として決定してもよい。
以上が、本発明の内視鏡診断装置10の構成である。
【0074】
次に、本発明の内視鏡診断装置10の動作を観察モード別に説明する。
【0075】
(通常光観察モード)
通常光観察モードの場合、光源制御部22の制御により、レーザ光源LD1が消灯され、レーザ光源LD2が点灯される。レーザ光源LD2から発せられた中心波長445±10nmのレーザ光は、蛍光体54A、54Bに照射され、蛍光体54A、54Bから白色光が発せられる。蛍光体54A、54Bから発せられた白色光は被写体に照射され、その反射光が撮像素子58で受光されて、R、G、Bチャンネルの画像信号を含む通常光画像が取得される。通常光画像は、そのR、G、Bチャンネルの画像信号に基づいてカラー表示される。
【0076】
(自家蛍光観察モード)
自家蛍光観察モードのプレ撮影の場合、例えば、記憶部72に予め3つの撮像条件が記憶されており、3つの撮像条件に基づいてプレ撮影がなされるとすると(例えば、第1撮像条件:LD1・405nm(励起光の発光強度1.0)、第2撮像条件:LD1・405nm(0.5)+LD2・445nm(0.5)、及び第3撮像条件:LD2・445(1.0))、撮像条件の数である3フレームを単位として、光源制御部22を通じてレーザ光源LD1及びLD2の発光、照射強度及び照射時間を制御して、第1撮像条件、第2撮像条件、及び第3撮像条件の順で撮像を行う。
【0077】
なお、上述の例では、プレ撮影において、第1撮像条件から第3撮像条件まで、全ての撮像条件を1度に撮像したが、例えば、通常光観察とプレ撮影とを1フレームごと交互に切り替えて、第1フレーム:通常光観察、第2フレーム:第1撮像条件での撮像、第3フレーム:通常光観察、第4フレーム:第2撮像条件での撮像、第5フレーム:通常光観察、第6フレーム:第3撮像条件での撮像、の順で撮像を行ってもよい。
【0078】
そして、画像処理部68において、記憶部72に記憶された通常光画像信号(通常光画像データ)と、FAD又はポルフィリンの自家蛍光の画像信号(画像データ)とが合成され、両者の合成画像(つまり、自家蛍光画像)が表示装置18に表示される。
例えば、ここで、自家蛍光の画像信号を合成画像のGチャンネル、通常光画像のRチャンネル及びBチャンネルの画像信号を、それぞれ、合成画像のRチャンネル及びBチャンネルに割り当てることによって、合成画像が疑似カラー表示される。
【0079】
なお、合成画像(自家蛍光画像)を疑似カラー表示する場合に、どの画像の画像信号を、合成画像のどの色のチャンネルに割り当てるのかは任意である。また、合成画像を疑似カラー表示することも必須ではない。
【0080】
以上のように、画像処理部68は、撮像条件に対応する自家蛍光画像を画像処理し、また、コントラスト算出手段69において自家蛍光画像のコントラストを算出して、制御部72を通じて、第1撮像条件から第3撮像条件に対応する自家蛍光画像及びそのコントラストを記憶部72に記憶する。
【0081】
第1撮像条件から第3撮像条件までに対応する自家蛍光画像のコントラストが記憶部72に記憶されると、制御部70は、記憶部72からそれらのコントラストを入手し、撮像条件決定手段71によって、最もコントラストの高い撮像条件を自家蛍光観察に最適な撮像条件として決定する。
以下の表1の場合では、第1撮像条件のコントラストが最も高いため、第1撮像条件が自家蛍光観察に最適な撮像条件として決定される。
【0082】
【表1】

【0083】
制御部70は、決定された撮像条件(表1の例では、第1撮像条件)に基づいて光源制御部22を通じてレーザ光源LD1及びLD2の照射強度及び照射時間を制御し、自家蛍光観察を行う。
【0084】
プレ撮影が行われた後の自家蛍光観察は、例えば、2フレームを単位として、撮像が繰り返し行われる。2フレームのうち、1フレーム目は通常光観察モードと同じ観察モードであり、2フレーム目が自家蛍光観察モードに固有の観察モードである。
【0085】
まず、1フレーム目の通常光観察モードでは、前述のように、白色光が被写体に照射され、R,G,Bチャンネルの画像信号を含む通常光画像が撮像される。そして、その通常光画像信号が、制御部70の制御により記憶部72に記憶される。
【0086】
続いて、2フレーム目の自家蛍光観察モードでは、光源制御部22の制御により、プレ撮影時において最もコントラストの高かった撮像条件(例えば、表1では第1撮像条件)に基づいてレーザ光源LD1及びLD2の発光、照射強度、及び照射時間が制御される。レーザ光源LD1及びLD2から発せられたレーザ光(励起光)が被写体の被観察領域に照射されることによって、被観察領域に含まれるFAD及びポルフィリンから同時に自家蛍光が発せられる。そして、両者の自家蛍光の合成光が撮像素子58で受光されて、自家蛍光が撮像される。
【0087】
自家蛍光の撮像データ(アナログデータ)は、A/D変換器58において画像データ(デジタルデータ)に変換され、画像処理部68に入力され、画像処理部68において画像処理され、また、通常光画像と合成されて、表示用画像に変換されて、制御部70を通じて、表示装置18及び記憶部72へ出力される。プレ撮影に基づいて決定された最適な撮像条件で撮像されたため、表示装置18において表示される自家蛍光画像は、コントラストの高く観察し易い自家蛍光画像である。
【0088】
以上、本発明の内視鏡診断装置10について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 内視鏡診断装置
12 光源装置
14 内視鏡本体
16 プロセッサ装置
18 表示装置
20 入力装置
22 光源制御部
24 コンバイナ(合波器)
26 カプラ(分波器)
28 内視鏡挿入部
30 操作部
32A、32B コネクタ部
34 軟性部
36 湾曲部
38 先端部(内視鏡先端部)
40 アングルノブ
42A、42B 照明窓
44 観察窓
45 鉗子口
46A、46B、48A、48B 光ファイバ
50A、50B、52A、52B、56 レンズ
54A、54B 蛍光体
58 撮像素子
62 スコープケーブル
64 A/D変換器
66 切り替えスイッチ
68 画像処理部
69 コントラスト算出手段
70 制御部
71 撮像条件決定手段
72 記憶部
74 回転フィルタ
76 透過部
78 励起光遮断部
LD1、LD2 レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心波長の異なる2種以上の励起光を照射する光源部と、
前記光源部から励起光が生体組織に照射されることによって、該生体組織に含まれる自家蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像して自家蛍光画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によりプレ撮影で取得された自家蛍光画像に基づいて自家蛍光画像のコントラストを算出するコントラスト算出手段と、
算出された自家蛍光画像のコントラストに基づいて本撮影用の撮像条件を決定する撮像条件決定手段と、を備え、
前記光源部から同時に照射する励起光の種類及びその発光比率を変えて該励起光を照射し、前記撮像部により複数回のプレ撮影を行って複数の自家蛍光画像を取得し、前記コントラスト算出手段により、プレ撮影で取得された複数の自家蛍光画像のコントラストを算出し、前記撮像条件決定手段により、算出された複数の自家蛍光画像のコントラストに基づいて本撮影用の撮像条件となる、同時に照射する励起光の種類及びその発光比率を決定する内視鏡診断装置。
【請求項2】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(1)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数1】

【請求項3】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(2)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数2】

【請求項4】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(3)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数3】

【請求項5】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(4)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数4】

【請求項6】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(5)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数5】

【請求項7】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムにおける高い画素値Lmaxと低い画素値Lminとから以下の式(6)を計算することで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【数6】

【請求項8】
前記低い画素値Lminは、前記ヒストグラムから高い値5%を除いた後のヒストグラムにおける低い値10%の平均値であり、前記高い画素値Lmaxは、前記ヒストグラムから高い値5%を除いた後のヒストグラムにおける高い値10%の平均値であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項9】
前記コントラスト算出手段における前記コントラストの算出は、前記自家蛍光画像の画素値からヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから高い値10%を除いた後のヒストグラムの高い値30%の平均値を前記コントラストとすることで算出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡診断装置。
【請求項10】
前記コントラスト算出手段は、前記複数の励起光源の照射強度の比率を変えて複数のコントラストを算出し、前記撮像条件決定手段は、それらのコントラストを、最小二乗法を用いて2次曲線でフィッティングを行い、その最大ピークを与える励起光源の照射強度の比率を被写体の被対象領域の自家蛍光観察に最適な撮像条件として選出することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項11】
前記コントラスト算出手段において前記コントラストの算出に用いられる自家蛍光画像は、前記撮像部において低解像度で出力された自家蛍光画像であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項12】
前記コントラスト算出手段において前記コントラストの算出に用いられる前記自家蛍光画像は、前記撮像部において前記撮像画像の中心領域のみが出力された前記自家蛍光画像であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項13】
前記自家蛍光画像は、前記撮像部において撮像される通常光の画像信号と自家蛍光の画像信号とに基づいて、画像処理部により生成される合成画像であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項14】
前記光源部は、第1の励起光源と第2の励起光源とを備え、
前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を1:0とする第1撮像条件、
前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を0.5:0.5とする第2撮像条件、及び
前記第1の励起光源と前記第2の励起光源との照射強度を0:1とする第3撮像条件に基づいて撮像を行い、
前記コントラスト算出手段は、前記第1撮像条件に対する第1のコントラストと、前記第2撮像条件に対する第2のコントラストと、前記第3撮像条件に対する第3のコントラストとをそれぞれ算出し、
前記撮像条件決定手段は、前記第1のコントラスト、前記第2のコントラスト、及び第3のコントラストのうち、最もコントラストの大きい撮像条件を決定し、前記決定された撮像条件に基づいて、自家蛍光観察が行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の内視鏡診断装置。
【請求項15】
前記光源部は、中心波長405±10nmの第1の励起光源と、中心波長445±10nmの第2の励起光源と、を備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の内視鏡診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102898(P2013−102898A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248077(P2011−248077)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】