説明

内部にエンボス凹部を有する化粧シート

【課題】押出しラミネートであっても層間強度に優れた内部にエンボス凹部を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】表面にエンボス凹部を設けた熱可塑性樹脂基材シート、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に設けてなる、内部にエンボス凹部を有する化粧シートにおいて、前記エンボス凹部は前記熱可塑性樹脂基材シート表面の面積の50%未満であり、かつ前記エンボス凹部の深さが40μm未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、オフィス等の家具、建具、什器など用いられる層間強度に優れた内部にエンボス凹部を有する化粧シートに関する。なお、内部にエンボス凹部を有するとは、化粧シートの表面でなく、シート層間に施すエンボス凹部(エンボス)を指す。
【背景技術】
【0002】
着色樹脂シートの表面にエンボス凹部を設け、表面に透明な樹脂層を設けて、シート内部にエンボス凹部を有することで独特の意匠感を創出した化粧シートが知られている。エンボス凹部を設けた上に透明樹脂層を積層する場合には、エンボス凹部を設けた熱可塑性樹脂シートと透明熱可塑性樹脂シートをドライラミネートにて貼り合わせる方法が良く用いられている。この場合、層間剥離力は17.6N/25.4mm以上という十分な層間強度が得られるものであった。
【0003】
しかしドライラミネートでの貼り合わせは生産速度が遅いことから、押出ラミネート法の適用が考えられるようになってきた。押出ラミネート法を適用すれば、生産速度は数m/分から数十m/分に速くなることが期待された。ところが、層間剥離力が17.6N/25.4mmを下回る場合があり、使用状態によっては層間剥離が発生するという問題点があった。
【特許文献1】特許第3194403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、押出しラミネートであっても層間強度に優れた内部にエンボス凹部を有する化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものであり、即ち請求項1記載の発明は、表面にエンボス凹部を設けた熱可塑性樹脂基材シート、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に設けてなる、内部にエンボス凹部を有する化粧シートにおいて、前記エンボス凹部は前記熱可塑性樹脂基材シート表面の面積の50%未満であり、かつ前記エンボス凹部の深さが40μm未満であることを特徴とする内部にエンボス凹部を有する化粧シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明はその請求項1に記載の発明により、前記エンボス凹部の凹部の面積が前記熱可塑性樹脂基材シート表面の50%未満であり、かつ前記エンボス凹部の深さが40μm未満であることで、押出しラミネートであっても十分な層間強度を有する化粧シートが得られるという効果を奏する。効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の内部にエンボス凹部を有する化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂基材シート1の表面には、適宜、絵柄模様層2を設けることができ、本発明の特徴となるエンボス凹部3を設ける。そして、接着剤層4、透明熱可塑性樹脂層5が積層される。さらに表面に適宜表面保護層6を設けてもよい。
【0008】
本発明における熱可塑性樹脂基材シート1としては、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。熱可塑性樹脂基材シート1の厚みは、ハンドリング性、凹凸付与後の裏抜けのし難さ、諸物性、巻き取り安さなどを考慮すると、50〜200μmが望ましい。
【0009】
絵柄模様層2としては、公知の不透明な無機、有機顔料からなる2液のウレタン系樹脂バインダー、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂共重合体等からなるグラビアインキが使用可能であり、これを通常のグラビア印刷等により設けることができる。
【0010】
本発明におけるエンボス凹部3は、熱可塑性樹脂基材シート1に絵柄模様層2を設けた後、エンボス版(図示無し)を用いて熱や圧力を加えることで設けることができる。エンボス版の加熱温度は130℃程度とするのが好適である。これにより化粧シートが50〜100℃程度に熱せられた状態となる。
【0011】
本発明におけるエンボス凹部3は、前記熱可塑性樹脂基材シート表面に対するエンボス凹部3の面積が50%未満とすることで層間剥離の発生は大きく抑えられる、50%以上になると層間剥離が頻発するようになる。また、エンボス凹部の深さが40μm未満であると層間剥離の発生は大きく抑えられるが、40μm以上になると層間剥離が頻発するようになる。本発明におけるエンボス凹部の面積と深さはこれらの値を上限としていれば良く、あとは求める意匠に応じて調整すれば良い。
【0012】
また、エンボス凹部3の凹部形状のそれぞれの角部(平面から凹部壁面への角と凹部壁面から凹部底面の角)の曲率は5.00〜20.00(曲率半径では0.05〜0.20mm)とするのが好適である。曲率が20.00以下とすることで接着剤層4に用いる接着剤がエンボス凹部に入り込み易くかつ充填しやすくなり、十分な層間強度を発現することが可能となる。また曲率が5.00以上とすることで、内部のエンボスの意匠感(きらきらとした輝度感)を損なうことがない。
【0013】
接着剤層4としては、公知の2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。乾燥後の塗布量は1〜10g/m程度が望ましい。
【0014】
透明熱可塑性樹脂層5としては、前記熱可塑性樹脂基材シート1と同様に、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。透明熱可塑性樹脂層4の厚みは、耐候性、耐熱性、巻取りのしやすさや、耐傷性等などを考慮すると70〜200μmが望ましい。
【0015】
表面保護層6としては、公知の紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン樹脂が使用可能であり、これらに適宜ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ガラスビーズなどを適宜添加する。表面保護層5の厚みは、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮すると、乾燥後の塗布量で6〜15g/m程度が好適である。
【実施例1】
【0016】
熱可塑性樹脂基材シート1として厚み70μmのホモポリプロピレン樹脂着色シート(リケンテクノス(株)製「リベストTPO」)を用い、これに絵柄模様層2としてグラビア印刷機にて2液ウレタン樹脂バインダーインキを用いた木目柄印刷を行なった。
【0017】
エンボス版(図示無し)としてエンボス凹部3の面積が33%となるような、最大深度50μmのエンボス版で、エンボス条件がヒーター温度110℃、余熱ロール80℃、スライダックヒーター110℃/160℃/170℃、となるようにし、エンボスロールを温水加熱で30℃としてライン速度11m/min、の上に前記絵柄模様層を付与した熱可塑性樹脂基材シート1を繰り出しながら、絵柄模様層2面上にエンボス加工を施した。出来上がったエンボス凹部の平均の深さは30μm、最大38μmであった。
なお、エンボス版の形状を調整し、エンボス凹部3の凹部形状のそれぞれの角部(平面から凹部壁面への角と凹部壁面から凹部底面の角)の曲率は平均で8.85、曲率半径は0.113となった。
【0018】
この絵柄模様層2上に接着剤層3として、ポリエステルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)を13重量部混合したものを用い、乾燥後の重量が1g/mとなるように塗工した。そして、この上に透明熱可塑性樹脂層4として透明のランダムポリプロピレン樹脂を厚み70μmとなるように押出ラミネートした。
【0019】
さらにこの表面に表面保護層5として、ウレタンアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl4858」)100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「PETA−K」)20部、ベンゾフェノン系光開始剤(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl BZO」)0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、ガラスビーズ2部を添加した紫外線硬化型樹脂を用い、これを厚さ5μmとなるように塗布し、メタルハライドランプによる紫外線照射により硬化させた。以上により内部にエンボス凹部を有する化粧シートを得た。
【0020】
<比較例1>
エンボス凹部3の面積が55%となるようなエンボス版を用いた以外は実施例1と同様にして内部にエンボス凹部を有する化粧シートを得た。
【0021】
<比較例2>
出来上がったエンボス凹部3の平均の深さが55μmとなるようなエンボス版を用いた以外は実施例1と同様にして、内部にエンボス凹部を有する化粧シートを得た。
【0022】
<比較試験>
以上のようにして得た化粧シートを、25.4mm幅に切り取り、熱可塑性樹脂基材シート1と透明熱可塑性樹脂層4との間を引っ張り試験機にて、クロスヘッドスピード50mm/分の条件で180℃剥離により測定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により得られる表面エンボスを有する化粧シートは、住宅、店舗、オフィス等の家具、建具、什器など用いられる層間強度に優れた内部にエンボス凹部を有する化粧シートとして使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の、内部にエンボス凹部を有する化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1…熱可塑性樹脂基材シート
2…絵柄模様層
3…エンボス凹部
4…接着剤層
5…透明熱可塑性樹脂層
6…表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にエンボス凹部を設けた熱可塑性樹脂基材シート、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に設けてなる、内部にエンボス凹部を有する化粧シートにおいて、前記エンボス凹部は前記熱可塑性樹脂基材シート表面の面積の50%未満であり、かつ前記エンボス凹部の深さが40μm未満であることを特徴とする内部にエンボス凹部を有する化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−101672(P2009−101672A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278239(P2007−278239)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】