説明

内部に空隙を有する微粒子の製造方法

【課題】内部に空隙を有する微粒子を簡単に製造できる方法を提供する。
【解決手段】 内部に空隙を有する微粒子を製造する方法であり,アニオン性基またはカチオン性基を有する開始剤を含む水中でモノマーを乳化重合させて,Mw4000〜100000のポリマーを含む微粒子を得る第1工程と,得られるポリマー微粒子を乾燥する第2工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば紙に添加される隠蔽材として使用される,内部に空隙を有する微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,紙の不透明度,白色度,光沢を向上させるために,内部に多数の孔を有する微粒子が隠蔽材として使用されている。
【0003】
例えば,特許文献1は,乳化重合により不飽和カルボン酸を共重合させてシード粒子を作製した後,この粒子表面をエチレン性不飽和モノマーを用いてカバー重合し,重合後に粒子をアンモニアのような揮発性アルカリを用いてカルボン酸をイオン化し粒子を膨潤させることにより内部に多数の孔が形成された微粒子を製造する方法を開示している。 しかし,この方法は,工程数が多く煩雑である。
【0004】
また,特許文献2は,アクリル酸のようなカルボキシル基含有モノマーと,スチレンような異種モノマーとを用いて乳化重合により共重合体微粒子を作製した後,カルボキシル基をアルカリでイオン化して水中で膨潤させた後,酸処理することにより,内部に多数の孔を有する微粒子を製造する方法を開示している。
【0005】
しかし,特許文献2の方法は,微粒子作製後に,アルカリ処理及び酸処理という2段階の後処理を必要とし,煩雑である。
【特許文献1】特開昭56−32513号公報
【特許文献2】特公平7−21011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,内部に空隙を有する微粒子を簡単に製造することができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね,以下の知見を得た。
【0008】
乳化重合によりポリマー微粒子を作製するに当たり,開始剤としてアニオン性基又はカチオン性基を有する開始剤を用い,かつ生成するポリマーの重量平均分子量(Mw)が4000〜100000程度と比較的短くなるように反応条件を制御すれば,ラジカル反応終了時のポリマー鎖においてアニオン基又はカチオン性基の占める割合が大きくなる。これらの官能基は微粒子内で集合し,集合した官能基群に水が付帯するようにして水が微粒子内に取り込まれる。次いで,この微粒子を乾燥すれば,内部に空隙を有するポリマー微粒子が得られる。
【0009】
本発明は,上記知見に基づき完成されたものであり,以下の内部に空隙を有する微粒子の製造方法を提供する。
項1. 内部に空隙を有する微粒子を製造する方法であり,
アニオン性基またはカチオン性基を有する開始剤を含む水中でモノマーを乳化重合させて,重量平均分子量4000〜100000のポリマーを含む微粒子を得る第1工程と、得られるポリマー微粒子を乾燥する第2工程とを含む方法。
【0010】
項2. 第1工程において、開始剤ラジカルの発生速度を3×10−7〜3×10−6mol/L/秒とする項1に記載の方法。
【0011】
項3. 開始剤が,強酸基又は塩基基を有する開始剤である項1又は2に記載の方法。
【0012】
項4. 第1工程と第2工程との間に,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする工程を含む項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0013】
項5. 反応系を加熱することにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする項4に記載の方法。
【0014】
項6. 微粒子材料に対する良溶媒を反応系に添加して微粒子に吸収させることにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする項4に記載の方法。
【0015】
項7. 上記モノマーを反応系に添加して微粒子に吸収させることにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする項4に記載の方法。
【0016】
項8. モノマーが単官能性ビニル系モノマーである項1〜7のいずれかに記載の方法。
【0017】
項9. 第1工程において,乳化剤を実質的に使用しない項1〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明方法によれば,特定の開始剤を使用し,かつ生成するポリマー鎖が比較的短くなるように反応条件を制御するという極めて簡単な方法で内部に空隙を有する微粒子を製造することができる。
【0019】
また従来の方法では,カルボキシル基を利用して微粒子内部に水を導入して空隙を形成するため,カルボキシル基を有する高価なモノマーを使用しなければならなかった。これに対して本発明方法では,開始剤の特性を利用して微粒子内部に水を導入するため,モノマーの種類が限定されない。従って,微粒子の具体的用途に応じてモノマーの種類を広範囲から選ぶことができる。また安価なモノマーを用いて微粒子を製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は内部に空隙を有する微粒子を製造する方法であり,
アニオン性基またはカチオン性基を有する開始剤を含む水中でモノマーを乳化重合させて,Mw4000〜100000程度のポリマーを含む微粒子を得る第1工程と,得られるポリマー微粒子を乾燥する第2工程とを含む方法である。
モノマー
モノマーとしては,単官能性モノマーを使用すればよく,公知の単官能性モノマーを制限なく使用できる。このような公知の単官能性モノマーとして,例えば,モノビニル芳香族単量体,アクリル系単量体,ビニルエステル系単量体,ビニルエーテル系単量体,モノオレフィン系単量体,ハロゲン化オレフィン系単量体,ジオレフィン等が挙げられる。中でもモノビニル芳香族系単量体が好ましい。
【0021】
上記モノビニル芳香族単量体としては,下記一般式(1)で表されるモノビニル芳香族炭化水素,低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されていてもよいビニルビフェニル,低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されていてもよいビニルナフタレン等が挙げられる。
【0022】
【化1】

[式中,Rは,水素原子,低級(炭素数1〜4)アルキル基又はハロゲン原子であり,Rは,水素原子,低級(炭素数1〜4)アルキル基,ハロゲン原子,−SONa基,低級(炭素数1〜4)アルコキシ基,アミノ基又はカルボキシル基を示す。]
上記一般式(1)において,Rは,水素原子,メチル基又は塩素原子が好ましく,Rは,水素原子,塩素原子,メチル基又は−SONa基であるのが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で示されるモノビニル芳香族炭化水素の具体例としては,スチレン,α−メチルスチレン,ビニルトルエン,α−クロロスチレン,o−クロロスチレン,m−クロロスチレン,p−クロロスチレン,スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
更に,低級アルキル基で置換されていてもよいビニルビフェニル,低級アルキル基で置換されていてもよいビニルナフタレンとしては,ビニルビフェニル,メチル基,エチル基等の低級アルキル基で置換されているビニルビフェニル,ビニルナフタレン,メチル基,エチル基等の低級アルキル基で置換されているビニルナフタレン等を例示できる。
【0025】
また,上記アクリル系単量体としては,下記の一般式(2)で表されるアクリル系単量体が挙げられる。
【0026】
【化2】

[式中,Rは,水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基を示し,Rは,水素原子,炭素数1〜12のアルキル基,フェニル基,炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基,低級(炭素数1〜4)アミノアルキル基又はジ(C-Cアルキル)アミノ−(C-C)アルキル基を示す。]
一般式(2)において,Rは,水素原子又はメチル基であるのが好ましく,Rは,水素原子,炭素数1〜8のアルキル基,フェニル基,低級(炭素数1〜4)ヒドロキシアルキル基,低級(炭素数1〜4)アミノアルキル基が好ましい。
【0027】
上記アクリル系単量体の具体例としては,アクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸シクロヘキシル,アクリル酸フェニル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ヘキシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸β−ヒドロキシエチル,アクリル酸γ−ヒドロキシブチル,アクリル酸δ−ヒドロキシブチル,メタクリル酸β−ヒドロキシエチル,アクリル酸γ−アミノプロピル,アクリル酸γ−N,N−ジエチルアミノプロピル等が挙げられる。
【0028】
上記ビニルエステル系単量体としては,下記の一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0029】
【化3】

[式中,Rは水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基を示す。]
上記ビニルエステル系単量体の具体例としては,ギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
上記ビニルエーテル系単量体としては,下記の一般式(4)で表されるビニルエーテル系単量体が挙げられる。
【0031】
【化4】

[Rは,炭素数1〜12のアルキル基,フェニル基又はシクロヘキシル基を示す。]
上記ビニルエーテル系単量体の具体例としては,ビニルメチルエーテル,ビニルエチルエーテル,ビニルn−ブチルエーテル,ビニルフェニルエーテル,ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記モノオレフィン系単量体としては,下記の一般式(5)で表されるものが挙げられる。
【0033】
【化5】

[式中,R及びRは,水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基であり,それぞれ異なっていても同一でもよい。]
上記モノオレフィン系単量体の具体例としては,エチレン,プロピレン,ブテン−1,ペンテン−1,4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
【0034】
上記ハロゲン化オレフィン系単量体としては,例えば,塩化ビニル,塩化ビニリデンを挙げることができる。
【0035】
さらに,ジオレフィン類である,ブタジエン,イソプレン,クロロプレン等も単官能性単量体に含めることができる。
【0036】
モノマーは,1種を単独で,又は2種以上を組み合わせて使用できる。
開始剤
乳化重合の開始剤としては,カチオン性官能基又はアニオン性官能基を有する水溶性開始剤を用いる。その種類は特に限定されないが,例えば,アゾ系化合物,過硫酸塩,過酸化物系化合物,過硫酸塩又は過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤などが挙げられる。
【0037】
より具体的には,例えば,2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)硫酸塩,2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウム,あるいはそれらの過酸化物と硫酸第一鉄,アスコルビン酸ナトリウム,還元スルホキシ化合物などの還元剤との組み合わせなどが挙げられる。
【0038】
特に,強酸基又は塩基基を有する開始剤は,水を付帯して微粒子内に呼び込む力が大きいため好ましい。
【0039】
強酸基としては,−SO,−SO,−PO2−などが挙げられる。このような強酸基を有する開始剤としては,α,α’-アゾビスメチルブチロニトリルースルホン酸ナトリウム,過硫酸カリウム,過硫酸ナトリウム,過硫酸アンモニウム,過リン酸カリウムなどが挙げられる。
【0040】
塩基基としては,アミニジウム基が挙げられる。このような塩基基を有する開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩,アゾビスーN,N’−ジメチレンイソブチロアミジン硝酸塩が挙げられる。
【0041】
中でも、強酸基が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムのような過硫酸塩がより好ましい。
【0042】
開始剤は1種を単独で,又は2種以上を混合して使用できる。
乳化剤
本発明方法は,乳化剤を使用しなくても、又は実質的に乳化剤を使用しなくても乳化重合が進行し,内部に空隙を有するポリマー微粒子が得られることも特徴の一つである。
【0043】
但し,乳化剤を使用しても,同様に,内部に空隙を有する微粒子が得られる。乳化剤としては,乳化重合に通常用いられるアニオン性界面活性剤,非イオン性界面活性剤などを制限なく使用できる。
【0044】
乳化重合に用いられる公知のアニオン性界面活性剤としては,ラウリン酸カリウム,オレイン酸ナトリウム,ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート,ラウリルサルフェート,ラウリルエーテルサルフェート,ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート,ドデシルベンゼンスルホネート,トリイソプロピルナフタレンスルホネート,ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物,モノオクチルスルホサクシネート,ジオクチルスルホサクシネート,ラウリン酸アミドスルホネート,オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート,イソプロピルホスフェート,ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;ジフェニルオキシドジスルホン酸塩類;アルキルベンゼンスルホン酸塩類;アルキルナフタレンスルホン酸塩類及び硫酸塩類等が挙げられる。
【0045】
また,乳化重合に用いられる公知の非イオン性界面活性剤としては,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエステル,ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキルエステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,ポリオキシエチレンアルキルアミドのようなポリオキシエチレン系界面活性剤;ポリエチレンイミン;ソルビタンアルキルエステル;グリセリン又はポリグリセリンと油脂,脂肪酸,樹脂酸,又はナフテン酸とのエステル,グリコールエステル,ペンタエリスリットエステル,サッカロースエステルのような多価アルコールと脂肪酸とのエステル;脂肪酸エタノールアミド,メチロールアミド,オキシメチルエタノールアミド,脂肪酸エタノールアミド誘導体のようなアミド型界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
乳化剤は1種を単独で,又は2種以上を混合して用いることができる。
連鎖移動剤
本発明方法ではMwが4000〜100000程度のポリマーを含む微粒子を作製することが求められる。連鎖移動剤を併用するときは、生成するポリマー鎖長が短くなる。
【0047】
連鎖移動剤としては、乳化重合に用いられる公知の連鎖移動剤を制限なく使用することができる。このような公知の連鎖移動剤としては、例えば,下記一般式(6)および一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
【0048】
HS−R−(COOR (6)
〔式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の炭化水素基を示す。また、RおよびRは、互いに同一であっても,異なっていてもよい。nは1又は2を示す。〕
式(6)中のRが有することのある置換基としては、硫酸基、スルホン酸基、又はカルボキシル基などが挙げられる。
【0049】
HS−R (7)
〔式中,Rは,置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。〕
式(7)中のRが有することのある置換基としては、硫酸基,スルホン酸基などが挙げられる。
【0050】
上記一般式(6)で示される化合物としては,例えばチオグリコール酸,3−メルカプトプロピオン酸,チオリンゴ酸及びそれらのエステル類を好ましいものとして挙げることができる。
【0051】
具体的にはチオグリコール酸エステル類として,チオグリコール酸エチル,チオグリコール酸n−ブチル,チオグリコール酸t−ブチル,チオグリコール酸2−エチルヘキシル,チオグリコール酸オクチル,チオグリコール酸イソオクチル,チオグリコール酸デシル,チオグリコール酸ドデシル,エチレングリコールのチオグリコール酸エステル,ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル,トリメチロールプロパンのチオグリコール酸エステル,ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル,ソルビトールのチオグリコール酸エステルなどを挙げることができる。3−メルカプトプロピオン酸エステル類としては,3−メルカプトプロピオン酸エチルエステル,3−メルカプトプロピオン酸オクチルエステル,3−メルカプトプロピオン酸デシルエステル,3−メルカプトプロピオン酸ドデシルエステル,3−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールテトラキスエステル,エチレングリコールの3−メルカプトプロピオン酸エステル,ネオペンチルグリコールの3−メルカプトプロピオン酸エステル,トリメチロールプロパンの3−メルカプトプロピオン酸エステル,ペンタエリスリトールの3−メルカプトプロピオン酸エステル,ソルビトールの3−メルカプトプロピオン酸エステルなどを挙げることができる。チオリンゴ酸エステル類としてはチオリンゴ酸ジエチルエステール,チオリンゴ酸βモノアミドなどを挙げることができる。
【0052】
また,上記(7)で示される化合物としては,例えば,エタンチオール,1−プロパンチオール,2−プロパンチオール,ブタンチオール,ペンタンチオール,ヘキサンチオール,ヘプタンチオール,オクタンチオール,ノナンチオール,デカンチオール,ドデカンチオール,2,2−ジメチル−プロパンチオール,3−メチル−ペンタンチオール,2−メチル−オクタンチオール,シクロヘキサンチオール,1,2−エタンジチオール,1,2−プロパンジチオール,1,3−プロパンジチオール,1,4−ブタンジチオール,1,5−ペンタンジチオール,1,6−ヘキサンジチオール,1,7−ヘプタンジチオール,1,8−オクタンジチオール,1,9−ノナンジチオール,1,10−デカンジチオール,1,12−ドデカンジチオール,2,2−ジメチル−1,3−プロパンジチオール,3−メチル−1,5−ペンタンジチオール,2−メチル−1,8−オクタンジチオール,1,4−シクロヘキサンジチオール,1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン,2−メルカプトエチルエーテル,2−メルカプトエチルスルフィド,2−メルカプトエチルジスルフィド,2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジオキサン,2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン,1,1,1−トリス(メルカプトメチル)エタン,2−エチル−2−メルカプトメチル−1,3−プロパンジチオール,テトラキス(メルカプトメチル)メタン,3,3’−チオビス(プロパン−1,2−ジチオール),2,2’−チオビス(プロパン−1,3−ジチオール),ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート),ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)等の脂肪族チオールや;ベンゼンチオール,ベンゼンジチオール,ベンゼントリチオール,1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン,1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン,1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン,1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン,トルエンチオール等の芳香族チオールが挙げられる。
【0053】
連鎖移動剤としては、式(6)の化合物が好ましく、中でもチオグリコール酸及びそのエステル類がが好ましい。
【0054】
連鎖移動剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
第1工程
第1工程においては,水(場合により乳化剤水溶液)に,モノマー及び上記開始剤を添加して,例えばホモジナイザー等を用いて攪拌することにより,水中でモノマーを乳化重合させる。
【0055】
このとき,モノマーの重合又は共重合により得られるポリマーのMwが4000〜100000程度,好ましくは5000〜80000程度、より好ましくは5000〜50000程度になるように重合条件を設定する。このようにポリマー鎖長を比較的短くすることにより,ポリマー鎖末端のアニオン性又はカチオン性官能基により微粒子内に水を呼び込むことができる。また,極端にポリマー鎖が短いとポリマー微粒子が柔らかくなりすぎてその形状を保持することが困難になるが,上記範囲であればこのような問題は生じない。
【0056】
本発明において,ポリマーのMwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した値であり,具体的には実施例に記載の方法で測定した値である。
【0057】
ポリマー鎖長は開始剤のラジカル発生速度に依存する。従って,開始剤のラジカル発生速度を,通常3×10−7〜3×10−6mol/L/秒程度,好ましくは5×10−7〜1.5×10−6mol/L/秒程度に制御する場合は、得られるポリマー鎖長を上記範囲にすることができる。ラジカル発生速度が小さいほどポリマー鎖長は長くなり,ラジカル発生速度が大きいほどポリマー鎖長は短くなる傾向が見られる。
【0058】
本発明において,開始剤の初期ラジカル発生速度はロバート・ギルバート著「Emulsion Polymerization: A Mechanistic Approach」(Academic Press社発行,1995年3月発行)28ページおよびポリマーハンドブック(第4版,John Wiley & Sons Inc 社発行)II/68ページに記載の分解速度定数を用い,開始剤濃度及び分解温度(重合温度)を当てはめて算出したものである。
【0059】
開始剤のラジカル発生速度は,開始剤の濃度と反応温度に依存する。開始剤は,水中の濃度が例えば5×10−3〜0.1mol/L程度,好ましくは8×10−3〜5×10−2mol/L程度になる量を使用すればよい。上記範囲であれば,ラジカル発生速度を上記範囲にすることができる。
【0060】
また,低温分解型開始剤は低温でも発生ラジカル数が多く,高温分解型開始剤は高温で発生ラジカル数が多くなるので,反応温度は開始剤の種類により異なる。例えば,強酸基−SOを有する開始剤の過硫酸カリウムでは,70〜85℃程度で重合を行えばよく,アミニジウム基を有する開始剤の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩)では,60〜75℃程度で重合を行えばよい。また,アゾ系の開始剤の場合には,光照射により室温程度においても上記のラジカル発生速度を確保することが出来る。
【0061】
また、モノマーの使用量は水に対して5〜65重量%程度、好ましくは10〜50重量%程度とすればよい。
【0062】
さらに、連鎖移動剤を使用する場合は、水に、モノマー、開始剤、及び連鎖移動剤を添加することにより乳化重合反応を開始すればよい。連鎖移動剤の使用量は、水中濃度が1×10−3〜2×10−4mol/L程度、好ましくは5×10−3〜1×10−4mol/L程度となるようにすればよい。連鎖移動剤の使用量が上記の範囲であれば、生成ポリマー分子量を適正範囲にするために開始剤の使用量が少なくて済み、かつ生成ポリマーの分子量が低くなりすぎない。なお,連鎖移動剤の水溶解性が上記の下限を下回る場合には,モノマー中に存在することになるが差し支えない。
【0063】
重合反応は,全てのモノマーがポリマーになれば終了する。微粒子中のポリマーの比率が高くなるのに伴い,微粒子材料のガラス転移温度(Tg)は高くなる。最終的に得られるポリマー微粒子のTg以上の温度で重合反応を行う場合,又は重合中に反応系の温度が最終的に得られるポリマー微粒子のTg以上の温度になるときがある場合は,微粒子を構成するポリマー鎖のアニオン性又はカチオン性官能基の部分に水が呼び込まれて,微小な水ドメインが多数形成される。又はこれらの官能基が集合して,その部分に水が呼び込まれて複数の水ドメインが形成される。さらに,これらの水ドメインが合一して大きな水ドメインになることもある。
【0064】
このようにして,内部に1又は複数の水ドメインを有する水吸蔵ポリスチレン粒子が得られる。
本発明において微粒子材料のガラス転移温度は,例えば断熱型熱補償示差走査熱量計(Nano-DSC,Calorimetry Sciences社)を用い,対象となる微粒子分散体をサンプルとして1℃/分の昇温温度で測定することができる(参考資料:Colloid Polymer Science誌,282巻,1150頁,2004年)。
【0065】
熟成工程
重合中の反応系の温度が,最終的に得られるポリマー微粒子のTg以上になるときがなければ,第1工程後に,反応系の温度をこのTg以上の温度にする熟成工程を行えばよい。これにより,ポリマー微粒子を構成するポリマー鎖のアニオン性又はカチオン性官能基が集まり,その部分に水が呼び込まれて,水吸蔵ポリマー微粒子が得られる。
反応系の温度を微粒子構成材料のTg以上にするためには,反応系の温度を上昇させればよい。
【0066】
また,反応系にモノマーを加えてポリマー微粒子に吸収させ,微粒子のTgを低下させることによっても,反応系の温度を微粒子構成材料のTg以上にすることができる。
【0067】
さらに,反応系に溶媒を加えて微粒子に吸収させ,ポリマー微粒子のTgを低下させることによっても,反応系の温度を微粒子構成材料のTg以上にすることができる。溶媒は,ポリマーに対する良溶媒を用いればよいが,水に対する溶解度が5%以下の溶媒であることが好ましい。このような溶媒は,分散液に添加すれば,微粒子中に効果的に吸収される。このような溶媒として,例えば,トルエン,キシレンなどが挙げられる。溶媒の使用量は,反応系の温度を微粒子構成材料のTg以上にすることができる量であればよいが,反応開始時のモノマーに対して重量比で3倍以下とすることが好ましい。上記の溶媒使用量であれば,重合反応時及び反応後,系が不安定になることを避けることができる。
【0068】
第2工程
第2工程においては,通常,ろ過などの方法で反応系から微粒子を分離した後,微粒子を乾燥させる。例えば,室温〜100℃程度,圧力10〜10Pa程度の条件で乾燥すればよい。また,自然蒸発,噴霧乾燥,減圧処理,やシリカゲルのような乾燥剤によって乾燥してもよい。
【0069】
これにより,微粒子内に導入された水が除去されて,そこに空隙が形成される。
【0070】
得られる微粒子は,表面には実質的に孔を有さず,内部に単一又は複数の空隙を有するものである。また微粒子の平均粒径は,概ね30nm〜5μm程度である。この平均粒径は,透過型電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡下で150個の粒子の粒径を実測しその平均値を求めたものである。
【0071】
また,微粒子の粒径分布は比較的狭く,平均粒径の変動係数(平均粒径の標準偏差を平均値で除した値)は通常15%以下である。
【0072】
また,微粒子の空隙率は,概ね5〜60%程度である。空隙率は,モノマーの種類,開始剤濃度,重合温度,熟成を行う場合はその温度などを調節することにより調整できる。
【0073】
実施例
以下,本発明を実施例を示してより詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例に限定されない。
<ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定>
作製したポリマーをテトラヒドロフランにおよそ0.2重量部溶解させ,フィルターを用いて,不溶物を取り除く。そのポリマー溶液100マイクロリッターをGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)装置(東ソー製,8020シリーズのGPC装置)に注入し,付属の解析ソフト及び標準ポリスチレンによる検量線から,重量平均分子量(Mw)を算出した。標準ポリスチレンは東ソー製の標準ポリスチレンを用いた。
<開始剤のラジカル発生速度の測定>
ロバート・ギルバート著「Emulsion Polymerization: A Mechanistic Approach」(Academic Press社発行,1995年3月発行)28ページおよびポリマーハンドブック(第4版,John Wiley & Sons Inc 社発行)II/68ページに記載の分解速度定数を用い,開始剤濃度及び分解温度(重合温度)を当てはめて算出した。
<微粒子材料のガラス転移温度の測定>
断熱型熱補償示差走査熱量計(Nano-DSC,Calorimetry Sciences社)を用い,対象となる部分重合体又は重合体の水分散体をサンプルとして1℃/分の昇温温度で測定した。
【0074】
実施例1
スチレン4g,過硫酸カリウム0.16g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,150サイクル/分で振とうしながら70℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は1x10−6mol/L/秒である。その後,生成したポリスチレンエマルションを120℃で30分加熱した。熱処理前後のポリスチレン粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ,図1(a)のように熱処理前の粒子は緻密粒子で,粒子内部のコントラストが均一であったのに対し,熱処理後の粒子は図1(b)のように粒子内部に中空部に起因すると考えられるコントラスト差が観察された。両粒子は走査型電子顕微鏡(SEM)観察では共に平滑な表面を有する真球状粒子であり,超薄切片のTEM観察より,後者の粒子内部に中空構造の存在を直接確認できた。
【0075】
なお,この粒子を形成するポリスチレンのMwをGPC法で測定したところ3.6×10であった。測定されたガラス転移温度(Tg)は97℃であった。
【0076】
比較例1(Mwが大きすぎる場合)
上記実施例1における無乳化剤乳化重合において,過硫酸カリウムを0.032g用い,その他は全く同様に作製した。この場合の初期のラジカル発生速度は2x10−7mol/L/秒である。
【0077】
生成ポリスチレン粒子は粒子径300〜500nmの緻密粒子で中空構造は観察されなかった。なお,この粒子を形成するポリスチレンのMwは1.13x10であった。このポリスチレンエマルションを120℃で30分間熱処理しても中空構造は形成されなかった。
【0078】
実施例2
スチレン4g,過硫酸カリウム0.16g,チオグリコール酸10mg,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,150サイクル/分で振とうしながら70℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は1x10−6mol/L/秒である。さらに,120℃で30分加熱した後,生成したポリスチレン粒子をTEMで観察したところ,粒子径200〜300nmの粒子内部に複数の中空部に由来するコントラスト差が観察された。この粒子を形成するポリスチレンのMwは4.8x10であった。
【0079】
比較例2(Mwが小さすぎる場合)
スチレン4g,過硫酸カリウム0.16g,チオリンゴ酸0.06g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,150サイクル/分で振とうしながら70℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は1x10−6mol/L/秒である。
【0080】
生成したポリスチレン粒子をTEMで観察したところ,表面にへこみを有する粒子径100〜130nmの緻密粒子が観察された。この粒子を形成するポリスチレンのMwは1.2x10であった。連鎖移動剤のチオリンゴ酸の使用量が多すぎるためにMwが小さくなりすぎて、その真球状を保持できなかったと考えられる。このポリスチレンエマルションを120℃で30分間熱処理したところ,粒子は真球状に変化したが,中空構造は観察されなかった。
【0081】
実施例3
スチレン4g,過硫酸カリウム0.1g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,150サイクル/分で振とうしながら80℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期のラジカル発生速度は2.2x10−6mol/L/秒である。
【0082】
生成ポリスチレン粒子をTEM観察したところ,粒径260〜330nm緻密粒子であった。そのポリスチレンエマルションを120℃で30分加熱したところ,TEM観察により粒子内部に複数の中空部が観察された。なお,この粒子を形成するポリスチレンのMwは1.7x10であった。
【0083】
実施例4
スチレン4g,過硫酸カリウム0.16g,エマルゲン911(花王社製)0.4g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,150サイクル/分で振とうをしながら70℃で24時間,乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は1x10−6mol/L/秒である。生成ポリスチレン粒子は粒子径250nmの比較的大きさの揃った緻密粒子であった。そのポリスチレンエマルションを120℃で30分加熱した後,TEMで観察したところ,粒子内部に複数の中空部が観察された。なお,この粒子を形成するポリスチレンのMwをGPC法で測定したところ2.5x10であった。
【0084】
実施例5
スチレン10g,過硫酸カリウム1.0g,イオン交換水140gを還流器を備えた三口のセパラブルフラスコに入れ,窒素ガス気流下120rpmで攪拌をしながら70℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は6.3x10−7mol/L/秒である。この粒子を形成するポリスチレンのMwは4.7x10であった。ポリスチレン粒子をTEMにて観察したところ,粒子径220〜380nmの緻密粒子であった。重合末期に,スチレン2gを加えて粒子中に十分に吸収させ,水10gに溶解させた過硫酸カリウム0.1gを加えて,70℃において重合を完結させた。ポリスチレン粒子は図1(b)と同様に中空構造を有した。
【0085】
実施例6
スチレン3.0g,アクリル酸ブチル1.0g,過硫酸カリウム0.1g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,サイクル/分で振とうをしながら80℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は2.2x10−6mol/L/秒である。粒子径210〜300nmの生成粒子は図1bと同様に中空構造を有した。なお,この粒子を形成するスチレンーアクリル酸ブチル共重合体のMwをGPC法で測定したところ1.9x10であった。Nano-DSCにより測定されたTgは47℃であった。
【0086】
実施例7
スチレン4g,過硫酸カリウム0.1g,トルエン1g,イオン交換水14gをガラス製の封管型反応容器に入れ,窒素ガス充填後,サイクル/分で振とうをしながら70℃で24時間,無乳化剤乳化重合を行った。この場合の初期ラジカル発生速度は6.3x10−7mol/L/秒である。トルエンを飛散させた後の粒子径250〜300nmの生成ポリスチレン粒子は図1(b)と同様に中空構造を有した。
【0087】
実施例8
上記実施例1における無乳化剤乳化重合と全く同様に作製したポリスチレンエマルションを加熱処理するのに代えて、ここにトルエン4gを添加し,生成ポリスチレン粒子に吸収させた後,開放系にて撹拌下,トルエンを除去した。トルエン添加前は図1(a)と同様に緻密な粒子であったが,トルエン添加/除去後の粒子は,図1(b)と同様に粒子内部に中空構造を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1で作製した熱処理前の緻密ポリスチレン粒子(a)と熱処理後の中空構造を有するポリスチレン粒子(b)の透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空隙を有する微粒子を製造する方法であり,
アニオン性基またはカチオン性基を有する開始剤を含む水中でモノマーを乳化重合させて,重量平均分子量4000〜100000のポリマーを含む微粒子を得る第1工程と、得られるポリマー微粒子を乾燥する第2工程とを含む方法。
【請求項2】
第1工程において、開始剤ラジカルの発生速度を3×10−7〜3×10−6mol/L/秒とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始剤が,強酸基又は塩基基を有する開始剤である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1工程と第2工程との間に,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応系を加熱することにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
微粒子材料に対する良溶媒を反応系に添加して微粒子に吸収させることにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記モノマーを反応系に添加して微粒子に吸収させることにより,反応系の温度を微粒子のガラス転移温度以上にする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
モノマーが単官能性ビニル系モノマーである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1工程において,乳化剤を実質的に使用しない請求項1〜8のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−270096(P2007−270096A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101084(P2006−101084)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】