説明

内部冷却されたストランド案内ロール

本発明は、連続鋳造施設に好適な、回転可能なセンターシャフト(1)及びこのセンターシャフト上に回転に対して固定して支持された少なくとも1つのロール外郭(4)を備えている内部冷却されたストランド案内ロールに関する。 ストランド案内ロールを機械的応力及び熱的応力に耐え得るようにし、大きな鋳造幅のストランドの生産に適していると共に、安価にメンテナンス作業を実行できるようにすることを保証するために、ロール外郭が、該ロール外郭内を通過している冷却液流路(22,22a,22b,22c)を備え、該冷却液流路を、ロール外郭の円筒状のロール外郭外周面から一定の距離で、ロール外郭内に配することが提案されている。 少なくとも1つの水ガイドリング(5)を、ロール外郭とセンターシャフトとの間に配することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造施設(continuous casting installation)に好適な、回転可能なセンターシャフト及びこのセンターシャフト上に回転に対して固定して支持された少なくとも1つのロール外郭(roll shell)を備えている内部冷却されたストランド案内ロール(internally cooled strand-guiding roll)に関する。
【背景技術】
【0002】
ストランド案内ロールは、鋳物ストランド(cast metal strand)がストランド案内スタンド内で永久鋳型から取り出された後に、前記鋳物ストランドを連続的に支持・案内するために、連続鋳造施設で使用されている。 ストランド案内ロールは、特に鋼ストランドの場合には、鋳物ストランドが1000℃を超える温度で鋳型から離脱するので、高い熱応力に曝されている。 特に板状(slab format)の比較的厚いストランドを生成する場合、ストランド内にはかなりの液状コアも依然として存在しており、その結果として、ストランド案内ロール上には溶鋼静力(ferrostatic forces)が加わっている。 更にストランド案内ロールは、ストランドの曲げにより生じる変形力にも耐え得るものでなければならない。 従って、ストランド案内ロールは通常、内部冷却構造を備えており、機械的な応力に適応できるようなロバスト設計が為されている。 鋳物ストランドのストランド幅が3mにまで大きくなると、複数のストランド案内ロールを取り付けることが必要となり、従って、ストランド案内ロールの支持構造の部品点数が多くなってしまう。
【0003】
ストランド案内ロールを内部冷却する構成については種々の解決策が提案されており、既に従来技術として公知となっているものもある。
【0004】
従来提案されている解決策の1つの群では、環状の冷却液流路若しくは複数の流路を環状に配したものが、ロール外郭とセンターシャフト若しくは車軸(axle)との間に設けられている。 この態様の一般的な欠点の1つは、ロール表面と冷却液流路との間にかなりの距離が生じてしまい、このため熱伝達の遅れを考慮に入れると、ロール外郭で表面温度が極端に高くなり、その結果、更なる外部冷却が必要となってしまうことにある。
【0005】
この群に属するストランド案内ロールは、例えば特許文献1から公知である。 これは複数取り付けられた連続的なシャフトを備えたストランド案内ロールであって、個々のロール外郭が溶接接合により回転に対して固定して設けられている。 環状空間がセンターシャフトと各々のロール外郭との間に冷却液流路として形成されており、この環状空間は中央の供給ラインに接続されている。 このような溶接構造では、ストランド案内ロールを取り外すことができず、それゆえに、高い熱応力及び高い機械的応力に曝されるロール外郭を交換することができない。 冷却液流路はシャフトとロール外郭との間に形成されているので、ロール外郭表面からはかなりの距離のところにあり、ロール外郭からの熱放散には好ましくない影響を及ぼす。 この場合、実際にはロール外郭は全体としてむしろ蓄熱器として作用してしまう。
【0006】
特許文献2の図1a及び図1bを参照すると、この特許文献2は、中央に複数取り付けられたシャフトと、このシャフト上に設けられた複数のロール外郭を備えたストランド案内ロールが開示されている。 各々のロール外郭の内周面全体は、シャフトの外周面を支持していると共にフェザー・キー(feather key)によってシャフトに取り付けられ、回転に対して固定されている。 このストランド案内ロールは、シャフト内の中央を通るように形成された冷却液ラインによって内部冷却されている。 この種のストランド案内ロールは、外郭表面から冷却液ラインまでの熱伝達経路が特に長いという根本的な欠点を有している。 組立てに関連するシャフトとロール外郭との間の環状空隙が熱を遮断するように作用し、ストランド案内ロールからの熱放散を更に妨げている。
【0007】
更に特許文献2は、複数取り付けられたシャフトと、このシャフトに嵌着されたロール外郭を備えたストランド案内ロールを開示しており、各々のロール外郭は、フェザー・キー(feather key)によってシャフト上で、回転に対して固定されるように設けられている。 高い熱伝導性を有する材料で充填された環状空隙が、ロール外郭の長手方向の小区域(subregion)に亘って、ロール外郭と軸との間に形成されている。 熱は、シャフトを貫通している中央の冷却液ラインを介して内部冷却によってストランド案内ロールから放散されている。 熱伝導性を有する充填材によって、ロール外郭とシャフトとの間の空隙の遮蔽作用を防ぐことはできるものの、熱応力が加わるロール外郭表面と冷却液ラインとの間の距離は、依然としてかなり大きい。
【0008】
また、単一のロール外郭と、該ロール外郭とロールコアとの間に種々の形状の冷却液流路を備えたストランド案内ロールも、特許文献3から公知である。
【0009】
従来提案されている解決策の更なる群によると、冷却液流路は実質的に単一部材から成るロール本体に直接的に一体化されており、これら冷却液流路は貫通孔によって形成されている。 このようにして、冷却液流路をロール表面に近接して配置することが可能となると共に、結果として短縮される熱伝達路によって冷却作用の増大を達成することができる。
【0010】
冷却液用の孔がロール表面に近接して均一に設けられたこの種のストランド案内ロールは、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6から既に公知である。 これらのストランド案内ロールは、両側でロール本体に隣接しているベアリングジャーナルを備えた単一部材から成るロール本体によって形成されている。 冷却液は、両端部側でベアリングジャーナルに隣接している回転型導出部(rotary leadthrough)と中央の供給孔を介して供給されており、該供給孔からは、半径方向の分岐ラインが、ロール周囲で設けられている冷却液孔に連通している。 多数の周囲冷却液孔には一の分岐ラインから冷却液が供給され、冷却液は、ストランド案内ロール内を流れの方向を変えながら流されている。 冷却液は、一連の冷却液孔を互いに接続している対応する迂回通路によって、ロール本体の端部側に取り付けられている環状フランジ内で迂回されている。 しかしながら、単一部材から成るストランド案内ロールは、900mm幅程度までの比較的幅の狭い板状ストランド、及びブルーム状(bloom)及びビレット状(billet)の断面を有するストランドを生産するための連続鋳造施設にしか使用することができない。 更に、ロール表面に損傷が生じた場合には、単一部材から成るロールにあっては、複雑な修理作業が必要となったり、ストランド案内ロール全体の交換が必要となったりする。
【0011】
同様に単一部材のロール本体を備えたストランド案内ロール、及びその使用上の制約については、特許文献7から公知である。 周囲に配置された冷却液孔への冷却液の分配のみが、ロール本体に設けられた冷却液容器から出発して、個々の冷却液孔を開閉する制御ディスクによって選択的に行われている。
【特許文献1】独国特許出願公開第2552969号明細書
【特許文献2】国際公開第02/38972号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,442,883号明細書
【特許文献4】国際公開第93/19874号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,279,535号明細書
【特許文献6】米国特許第4,506,727号明細書
【特許文献7】独国特許発明第3315376号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は従来技術の欠点を解消すると共に、ロール外郭が受ける熱量を速やかに放散する内部冷却構造を備え、ストランドによって生じる機械的応力及び熱的応力に一層耐え得るようなストランド案内ロールを提案するものである。 特に本発明は、ストランド案内ロールのメンテナンスを一層容易にし、安価にメンテナンス作業を実行できるようにすることを意図している。 本発明の更なる目的は、大きな鋳造幅のストランドの生産にも適しており、メンテナンス作業に際しては、摩耗しやすい部品を交換するだけで足りるように構成したストランド案内ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるストランド案内ロールにおいては、このような目的は、ロール外郭はその内部を貫通している冷却液流路を備え、該冷却液流路が、ロール外郭の円筒状のロール外郭外周面から一定距離でロール外郭内に設けられているという事実によって達成されている。 好適な実施例によれば、ロール外郭内部の冷却液流路は、ストランド案内ロールの回転軸に対して平行に配置されている。 しかしながら、冷却液流路を螺旋状(helically)、例えば、長手方向に関して、ストランド案内ロールの回転軸の周りの螺旋に沿って設けることもできる。 冷却液流路は、ロール外郭外周面近傍のロール周囲において、ロール外郭内部の中で均一に配されると共に貫通孔によって形成されており、その結果、ロール外郭を均一に冷却している。 冷却液流路とロール外郭外周面との間の距離は、10mm〜40mmとすることが好ましい。 それゆえ、中央の軸は、ロール外郭の熱的応力には極力影響されないように保たれている。 中央の軸の中の中央冷却液ラインからの冷却液を伴う冷却液流路の供給は、あらゆる所望の形状で達成される。
【0014】
ロール外郭内における冷却液流路の形成を容易にするために、ロール外郭は、互いに回転に対して固定して接続されている2つの環状スリーブと、これら2つの環状スリーブの接続側面で、これら接続側面の少なくとも1つに機械加工で形成されている冷却液流路とを備えている。 ロール外郭の2つの環状スリーブは、例えば締り嵌め若しくは側端溶接によって接続されている。
【0015】
別の好適な実施例によれば、ロール外郭が、ロール外郭外周面と環状側部と変位部材とを形成している少なくとも1つの外側スリーブを備えており、この変位部材は環状側部の間を延在しているロール外郭内のキャビティ内に挿入され、この変位部材が、外側スリーブの内壁と共に冷却液が通過するための冷却液流路を形成しているという事実によって、冷却液流路はロール外郭外周面にできるだけ接近させることが同様に可能となっている。 好ましくは樹脂から作製される変位部材は、あらゆる所望の形状及び経路に対応できる冷却液流路の形成を容易にしている。 冷却液流路の断面は、リングセグメント形状にも適応され得るし、若しくは単一の環状冷却液流路にまで低減され得る。
【0016】
本発明の好適な実施例によれば、少なくとも1つの水ガイドリング(water guide ring)が、ロール外郭とセンターシャフトとの間に配されている。 好適な実施例によれば、水ガイドリングは、ロール外郭とセンターシャフトとの間でロール外郭の長手方向の端部領域に配されている。 水ガイドリングを独立部材として設計すると共に各々のロール外郭の端部領域に配することによって、部材間の機能的な分離がもたらされる。 水ガイドリングは冷却液流路に冷却液を供給するためにのみ用いられ、水ガイドリングの内径及び外径は、ストランドからの反力及び水ガイドリング上に作用するロール駆動部からの駆動力が生じて水ガイドリングを介して伝達されることを可能な限り防止できるように設定されている。 同時に、水ガイドリングとの接触面でのシャフト径を適宜段階的とすることによって、保守作業のためのストランド案内ロールの組立て及び解体も容易となると共にロール外郭を交換することが可能となる。
【0017】
有利な構成は、ロール外郭内で冷却液流路が、実質的に半径方向の分岐ラインを介して、冷却液を供給及び吐出するためにセンターシャフト内に設けられた冷却液ラインに接続されているという事実に存しており、半径方向の分岐ラインは、水ガイドリング内を通過して形成されている。
【0018】
水ガイドリングがセンターシャフトとロール外郭との間に設けられている場合には、半径方向の分岐ラインは、水ガイドリングの長手方向に配されている。 水ガイドリングの長手方向に配された半径方向の分岐ラインは、水ガイドリングの少なくとも1つの分配器環状溝(distributor annular groove)に開口している。 このようにして、多数の周囲冷却液流路に、センターシャフト内に設けられた1つの冷却液ラインと、冷却液を供給及び吐出するための少なくとも1つの隣接する半径方向の分岐ラインとから、冷却液を均一に供給することが可能となっている。
【0019】
特に生産技術上の理由のため、ロール外郭内の分岐ラインは、略半月状のミル加工膨出部(half-moon-shaped milled-out portion)によって形成されており、各々の場合において、周囲冷却液流路の1つはミル加工膨出部のチーク部(cheek)内に開口している。
【0020】
冷却作用と冷却液流路の作製に伴う製造支出との実質的に最適な割合は、ロール外郭内で互いに隣接して平行に配された複数(好ましくは3つ)の冷却液流路が1つの連続的な冷却液流路を形成しており、隣接している冷却液流路の間で、接続流路が、ロール外郭内の側端部のミル加工切り込み形状部(milled-in formations)によって形成されている場合に達成される。
【0021】
ロール外郭上に作用する力をセンターシャフトに伝達するために、ロール外郭は長手方向の少なくとも副領域に亘ってセンターシャフト上に直接的に支持されている。
【0022】
ストランド案内ロールの個々の構成部品の間の冷却液ラインで洩れを避けるために、シール部材(好ましくは環状溝内に挿入されたシールリング)が、水ガイドリングとロール外郭との間、及び、水ガイドリングとセンターシャフトとの間に設けられている。
【0023】
センターシャフト上でのロール外郭の確実なロック接続(positively locking connection)は、好ましくは1以上のフェザー・キー若しくは同等の作用を有する他の部品による、少なくとも1つの回り止め部材(rotation preventer)によって為されている。
【0024】
ストランド案内ロールを通過する冷却液の流路の一の好適な形状は、センターシャフト内を通っている冷却液ラインが、センターシャフトの一側端部を出発し、センターシャフト内に設けられている冷却液を吐出するための冷却液ラインが、センターシャフトの反対側端部に開口していると共に、各々の冷却液ラインは回転型導出部に割り当てられているという事実に存している。
【0025】
ストランド案内ロールへの冷却液の供給が、施設の一方の側部若しくは連続鋳造施設のストランド案内装置の一方の側部に限定されることを許容する有利な実施例は、センターシャフトを通過している冷却液を供給及び吐出するための冷却液ラインが、センターシャフトの一側端部に開口しており、これら冷却液ラインが多条の回転型導出部(multi -start rotary leadthrough)に割り当てられているという事実に存している。 この実施例は好適には駆動ストランド案内ロール(driven strand-guiding rolls)に用いられるが、従動ストランド案内ロール(nondriven strand-guiding rolls)にも使用され得る。
【0026】
使用される冷却液は、一般に冷却水である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の更なる利点は、添付図面を参照しつつ、限定目的でない以下の記述によって明らかになるであろう。
【0028】
図中の記載は、本発明によるストランド案内ロールを図式的に描いたものであって、該ロールは、例えば板状若しくは薄板状の断面を有するからり幅の広い金属ストランドを生産するための連続鋳造施設のストランド案内システムに使用するのに適している。 異なる実施例において、同一若しくは同等の部品には同一の参照符号を付している。
【0029】
図1に示されるストランド案内ロールは、4つのベアリング2によって回動可能に支持されている連続的なセンターシャフト1を備えている。 ベアリング2及びベアリングを担持しているベアリングハウジング3は、連続鋳造施設の(図示しない)ストランド案内スタンドにおいて、それら部品を支持するためのものである。 使用されるベアリングは、通常、ころがり接触軸受である。 センターシャフト1は、3つのロール外郭4に割り当てられており、3つのロール外郭4の各々は、シャフト1上で直接的に支持されている。 連続鋳造施設の生産段階の際には、ロール外郭のロール外郭外周面4aは、鋳造スタンドと線接触状態となっており、鋳造スタンドからの熱を受ける。 更に、各ロール外郭は、2つの水ガイドリング5に割り当てられており、これら水ガイドリング5は、その長手方向の端部領域において、センターシャフト1とロール外郭4との間に位置決めされている。
【0030】
ベアリング2とベアリングを囲繞しているベアリングハウジング3とは、隣接しているロール外郭4の長手方向の外側に設けられている。 各々のロール外郭4の位置は、回り止め部材6によって、シャフト1に関して、回転に対して固定されている。 この回り止め部材6は、それぞれのロール外郭4の長手方向に関して中央で、センターシャフト1及びそれぞれのロール外郭4内で長手方向の溝8,9に取り付けて係合されているフェザー・キー7によって構成されており、これによって、確実なロック接続を形成していると共にロール上に作用するトルクを伝達している。
【0031】
ストランド案内ロールは内部冷却構造を備えている。 冷却液の流れの通路は、図1において矢印で示されている。 冷却液は、回転型導出部10を介してセンターシャフト1の一端側部で供給されており、回転型導出部10は、センターシャフト1内の一端側の凹部11内に嵌着されている。 冷却液は、更なる回転型導出部12を通じてセンターシャフト1の反対端側部で吐出されており、回転型導出部12は同様に、センターシャフト1内の一端側の凹部13内に嵌着されている。 軸方向にセンターシャフト1を通じている中央の冷却ライン15、この中央の冷却ライン15から分岐すると共に水ガイドリング5で第1の分配環状溝17に開口している半径方向の分岐ライン16、第1の分配環状溝17を水ガイドリング5で第2の分配環状溝19に接続している更なる半径方向の分岐ライン18、及び、半月状のミル加工膨出部21によって形成されたロール外郭4内の更なる半径方向の分岐ライン20を介して、冷却液は、冷却液流路22内に導入されている。 冷却液流路22は、これらミル加工膨出部21のチーク部内に開口し、ストランド案内ロールの回転軸25に対して平行に延在すると共に、ロール外郭表面から短い距離のところで、ロール外郭4の内部において均一に配されている。
【0032】
冷却液は、図2に示されているように、円周方向において互いに隣り合ってロール外郭4の周囲に設けられている3つの冷却液流路22a,22b,22cを通じて順次流れていく。 図2は、図1のA−A線視断面を表すものであって、この断面は、第2の分配環状溝19と入口側の半月状のミル加工膨出部21とを通って切り出したものである。 これらの冷却液流路22a,22b,22cは、ロール外郭4の端部側において、覆われた(covered)ミル加工切り込み形状部によって形成された接続流路26,27によって接続されている。 隣接している冷却液流路22a,22b及び冷却液流路22b,22cにおいて流れの方向が反転されることにより、ロール外郭4の長手方向に亘って均一な冷却作用が達成されている。 この場合、一のロール外郭における冷却液による熱の吸収は、冷却液がその後に流れるロール外郭内で吸収する熱の大きさと略同じオーダーであることを保証する範囲内に維持されるので、3つの隣接している冷却液流路22a,22b,22cの組み合わせが、最も効率的な実施例であることが立証された。
【0033】
図1に示される実施例においては、冷却液流路22は、ストランド案内ロールの回転軸25に対して平行に、ロール外郭外周面に近接して延在している貫通孔によって形成されている。 冷却液流路22とロール外郭外周面4aとの間の距離は約10mm〜40mmであり、これにより、集中的な冷却と熱の放散が可能となり、安定状態での鋳造工程において、約130℃〜180℃の低い表面温度が維持されている。
【0034】
図3は、図1のストランド案内ロールのB−B線視断面を示すものであって、この断面は、半径方向の分岐孔16,18を通って切り出したものである。 この図は、センターシャフト1内の中央冷却液ライン15と、該中央冷却液ラインから半径方向に延出していると共に第1の分配環状溝17に開口している4つの分岐ライン16と、更に前方に延在して第2の分配環状溝19に接続している4つの半径方向分岐ライン18とを示している。 接続流路(ここでは接続流路26のみが示されているが)を介して結合されている冷却液流路22a,22b,22cは、出口側での冷却液流路22cに隣接していると共に図3において細線で示されているミル加工膨出部21内に開口している。
【0035】
冷却液は、供給された方向に対して反転して周囲冷却液流路22から戻されている。 接続された冷却液流路22a,22b,22cは、ロール外郭4内のミル加工膨出部21によって形成され、水ガイドリング5内の第2の分配環状溝19への接続を為している分岐ライン20に開口している。 分岐ライン18は、第2の分配環状溝19を水ガイドリング5内の第1の分配環状溝17に接続しており、この地点から、更なる半径方向の分岐ライン16が冷却液を中央冷却液ライン15に戻し、この中央冷却液ライン15を通じて、冷却液は回転型導出部12を介して再びストランド案内ロールから出て行く。
【0036】
複数のロール外郭4に対応して複数の閉塞部材(blocking element)28が、中央冷却液ライン15内に挿入されており、冷却液が1パスでストランド案内ロールの個々のロール外郭を通過するように、連続的な中央冷却液ラインを遮断するために用いられている。
【0037】
しかしながら、二条の回転型導出部(two-start rotary leadthrough)を介してセンターシャフトの一端側のみで、冷却液が中央冷却液ラインを通じて供給及び吐出されるようにすることも可能であり、その結果、冷却液の供給はストランド案内構成の一方の側、従って連続鋳造施設の一方の側に制約されることになる。
【0038】
ストランド案内ロールへの冷却液の供給及びストランド案内ロールからの冷却液の吐出は、ストランド案内ロールを支持しているストランド案内スタンド及びベアリングのベアリング閉塞部材を介しても生じている。
【0039】
センターシャフト1と水ガイドリング5との間の接触面、及び/若しくは、ロール外郭4と水ガイドリング5との間の接触面で、冷却液が逃げてしまわないことを保証するために、シール部材19がこれらの領域に設けられている。 これらシール部材は、環状溝に嵌入されたシールリングによって構成されている。
【0040】
図4は、水ガイドリングを組み込んでいない本発明によるストランド案内ロールを図式的に描いたものである。 ロール外郭4はセンターシャフト1上に直接的に支持されていると共に、フェザー・キーによって構成された回り止め部材6によって回転止めされており、これによって、シャフトからロール外郭、及び、ロール外郭からシャフトへのトルク伝達を可能としている。 図1に示された実施例のように、複数のロール外郭を、連続的なセンターシャフトのためのベアリング位置の相互接続と共に設けることも可能である。
【0041】
冷却液は、回転型導出部10から出発し、次いで中央冷却液ライン15と分岐ライン30とを通過して軸方向の冷却液流路22に至り、冷却液流路22から分岐ライン30と中央冷却液ライン15とを通って更なる回転型導出部12に至ることによって、ストランド案内ロールを通過される。 シール部材29は、例えば分岐ライン30に関して横方向のロール外郭4の内郭面に嵌着され、環状溝内で、洩れ損失を防止している。 冷却液流路22はロール外郭4における貫通孔によって形成されている。
【0042】
図5において図式的に描かれているように、ストランド案内ロールの回転軸25の周りの螺旋に沿って螺旋状に延在している冷却液流路22が、ロール外郭4を貫通するように構成することも可能である。 ロール外郭4は、互いに回転に対して固定されるように接続されている2つの環状スリーブ31,32によって形成されており、この場合において、これらスリーブ31,32の接続側面31a,31bでは、螺旋状の冷却液流路22が、これら接続側面31a,31bの1つに向けて機械加工により形成されている。 回転に対して固定されるような2つのスリーブ31,32の接続は、溶接によって為されている。 しかしながら、当該接続は締り嵌めによって行っても構わない。 同様に、ロール外郭を、ストランド案内ロールの回転軸に対して平行に配置されたストレートな冷却液流路を構成して回転に対して固定されるように接続された2つのスリーブによって形成することもできる。 この場合において冷却液流路を、長手方向の衝撃(longitudinal impacting)によって、接続側面の内周側面若しくは外周側面に形成することができ、このような方法は、製造技術の観点からも容易である。
【0043】
本発明によるストランド案内ロールの別な実施例が図6に示されている。 外側スリーブ34と環状サイド部材35,36と変位部材37とにより形成されたロール外郭4が、回動可能なセンターシャフト1上で支持されている。 このロール外郭は回り止め部材6を用いてセンターシャフト1に固定されている。 水ガイドリング5は、ロール外郭4の長手方向端部領域において、ロール外郭4とセンターシャフト1との間に配されており、冷却液が、分岐ライン16及び接続ライン38を介してセンターシャフト内に設けられた冷却液ライン15から、少なくとも1つの冷却液流路22、好ましくはピッチ円周上に均一に分配された複数の冷却液流路22へ移動することを可能としている。 冷却液は上述した実施例と同様にして吐出されている。 ストランド案内ロールの回転軸25に対して平行に配置された冷却液流路22は、ロール外郭4の内壁4bと変位部材37の外周における凹部とから形成されている。 冷却液の流れの方向、冷却液流路の断面形状、及び冷却液流路のストレート若しくは螺旋配向は、これに関連して全体として所望のように構成され得る。
【0044】
本発明は、上述した典型的な実施例に限定されるものではない。 むしろ、このストランド案内ロールは、本発明の保護範囲内で多様な改変が為され得るのである。
【0045】
例として、ストランド案内ロールは、連続鋳造施設での当該施設に特有の鋳造幅に応じて特定の数のロール外郭を備えている。 具体的には、鋳物ストランドを支持及び案内するために、1つの連続的なセンターシャフト上に配された1つから4つのロール外郭が通常用いられる。 また各々の場合において、ロール外郭とセンターシャフトとの間に配された2つの水ガイドリングをスリーブ状の設計の1つの水ガイドリングに組み合わせることも可能であり、この場合、スリーブ状の水ガイドリングは、この水ガイドリングを貫通する回り止め部材を備えている。 更に、ロール外郭外周面は、その上に溶接を施すことによって、高レベルの摩耗から追加的に保護され得る。 しかしながら、本発明の保護範囲内で。追加的な耐摩耗スリーブをロール外郭に適用することも可能であり、例えば、このようなスリーブを締り嵌め若しくは側端溶接によって設け、摩耗した際には取り外し若しくは交換することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のストランド案内ロールの長手方向断面を図式的に描いたものである。
【図2】図1のストランド案内ロールのA−A線視断面を図式的に描いたものである。
【図3】図1のストランド案内ロールのB−B線視断面を図式的に描いたものである。
【図4】本発明のストランド案内ロールの別な実施例の長手方向断面を図式的に描いたものである。
【図5】螺旋状の冷却液流路を備えた二分割ロール外郭を図式的に描いたものである。
【図6】本発明のストランド案内ロールの別な実施例の長手方向断面を図式的に描いたものである。
【符号の説明】
【0047】
1 センターシャフト
2 ベアリング
3 ベアリングハウジング
4 ロール外郭
4a ロール外郭外周面
4b ロール外郭内壁
5 水ガイドリング
6 回り止め部材
7 フェザー・キー
8,9 溝
10,12 回転型導出部
11,13 凹部
15 冷却ライン
16,18,20 半径方向の分岐ライン
17 第1の分配環状溝
19 第2の分配環状溝
21 半月状のミル加工膨出部
22,22a,22b,22c 冷却液流路
25 ストランド案内ロールの回転軸
26,27 接続流路
29 シール部材
30 分岐ライン
31,32 環状スリーブ
31a,31b 接続側面
34 外側スリーブ
35,36 環状サイド部材
37 変位部材
38 接続ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なセンターシャフト(1)と、前記シャフト上に回転に対して固定して支持された少なくとも1つのロール外郭(4)とを備えている連続鋳造施設に好適な、内部冷却されたストランド案内ロールであって、
前記ロール外郭(4)が、該ロール外郭内を通過している冷却液流路(22,22a,22b,22c)を備えており、
該冷却液流路が、前記ロール外郭の円筒状のロール外郭外周面から一定の距離で、前記ロール外郭内に配されている、
ことを特徴とするストランド案内ロール。
【請求項2】
前記ロール外郭(4)内の前記冷却液流路(22,22a,22b,22c)が、ストランド案内ロールの回転軸(25)に対して平行に配されていることを特徴とする請求項1に記載のストランド案内ロール。
【請求項3】
前記ロール外郭(4)内の前記冷却液流路(22,22a,22b,22c)が、ストランド案内ロールの回転軸(25)の周りに螺旋状に配されていることを特徴とする請求項1に記載のストランド案内ロール。
【請求項4】
前記ロール外郭(4)が、互いに回転に対して固定して接続されている2つの環状スリーブ(31,32)と、該2つの環状スリーブの接続側面(31a,32a)で、該接続側面の少なくとも1つに機械加工で形成されている冷却液流路(22,22a,22b,22c)とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項5】
前記ロール外郭(4)が、ロール外郭外周面(4a)と環状側部(35,36)と変位部材(37)とを形成している少なくとも1つの外側スリーブ(34)を備えており、該変位部材は前記環状側部の間を延在している前記ロール外郭内のキャビティ内に挿入され、前記変位部材が、前記外側スリーブ(34)の内壁(4b)と共に冷却液が通過するための冷却液流路(22)を形成していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項6】
前記冷却液流路(22,22a,22b,22c)と前記ロール外郭外周面(4a)との間の距離は、10mm〜40mmとされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項7】
少なくとも1つの水ガイドリング(5)が、前記ロール外郭(4)と前記センターシャフト(1)との間に配されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項8】
前記水ガイドリング(5)は、前記ロール外郭(4)と前記センターシャフト(1)との間で前記ロール外郭(4)「の長手方向の端部領域に配されていることを特徴とする請求項7に記載のストランド案内ロール。
【請求項9】
前記ロール外郭(4)内で前記冷却液流路(22)が、実質的に半径方向の分岐ライン(16,18,20,30)を介して、冷却液を供給及び吐出するために前記センターシャフト内(1)に設けられた冷却液ライン(15)に接続されていると共に、前記半径方向の分岐ラインは、前記水ガイドリング(5)内を通過して形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項10】
前記水ガイドリング(5)の長手方向に配された前記半径方向の分岐ライン(16,18,20)は、前記水ガイドリングの少なくとも1つの分配器環状溝(17,19)に開口していることを特徴とする請求項9に記載のストランド案内ロール。
【請求項11】
前記ロール外郭(4)内の前記分岐ライン(20,30)は、略半月状のミル加工膨出部(21)によって形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載のストランド案内ロール。
【請求項12】
前記ロール外郭(4)内で互いに隣接して平行に配された複数、好ましくは3つの冷却液流路(22a,22b,22c)が1つの連続的な冷却液流路(22)を形成していると共に、隣接している冷却液流路の間で、接続流路(26,27)が好ましくは、前記ロール外郭内の側端部のミル加工切り込み形状部によって形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項13】
シール部材(2)、好ましくは環状溝内に挿入されたシールリングが、前記水ガイドリング(5)と前記ロール外郭(4)との間、及び、前記水ガイドリング(5)と前記センターシャフト(1)との間に設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項14】
前記ロール外郭(4)は長手方向の少なくとも副領域に亘って前記センターシャフト(1)上に直接的に支持されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項15】
前記ロール外郭(4)は、少なくとも1つの回り止め部材(6)、好ましくはフェザー・キー(7)によって前記シャフト(1)に関し、回転に対して固定されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項16】
前記センターシャフト(1)内を通っている冷却液を供給するための前記冷却液ライン(15)が、前記センターシャフトの一側端部を出発し、前記センターシャフト内に設けられている冷却液を吐出するための前記冷却液ラインが、前記センターシャフトの反対側端部に開口していると共に、各々の冷却液ラインは回転型導出部(10,12)に割り当てられていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。
【請求項17】
前記センターシャフトを通過している前記冷却液ラインが、前記センターシャフトの一側端部に開口しており、これら冷却液ラインが多条の回転型導出部に割り当てられていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のストランド案内ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−513356(P2009−513356A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519820(P2006−519820)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007399
【国際公開番号】WO2005/016578
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】