説明

内部凹凸を有する化粧シート

【課題】製造適性、加工適性、曲面への施工性などを有し、表面硬度、表面の耐傷付き性を有し、表面の平滑性や奥行きのある意匠性に優れた内部凹凸を有する化粧シートを提供する。
【解決手段】表面に凹凸を有する着色樹脂シート1の上に表面を平面とした透明樹脂層3を設けてなる内部凹凸を有する化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の上に透明2軸延伸ポリエステルシート4を積層し、かつ前記透明2軸延伸ポリエステルシートの表面に透明電離放射線硬化型樹脂層5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、オフィス等の家具、建具、什器など用いられる化粧シートに関し、特には表面に凹凸を有する着色樹脂シートの表面に透明な樹脂層を有することで、内部に凹凸表現を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着色樹脂シートの表面に凹凸を設け、その表面に透明な樹脂層を設けて、シート内部に凹凸表現を有することで独特の意匠感を創出した化粧シートが知られている。具体的な製造方法の一例としては、透明樹脂層の樹脂を溶融押出により成形と同時に着色樹脂シート上に押出ラミネートとする方法があげられる。
【0003】
しかしながら、層厚をある程度薄くしないと、生産速度の効果が薄いものであった。層厚が薄いと内部エンボスの立体感に乏しいものとなる。また、化粧シートを化粧材の基材に貼り合せる際に、接着剤のダクをひろってしまい、化粧シート表面に本来の意匠からはずれた凹凸が発生してしまい、本来の意匠感が得られなくなってしまう。逆に層厚を厚くすると、シート全体の加工が困難なものとなり、基材の曲面部分などへの貼り合わせが困難なものとなる。
【0004】
さらに、表面強度がそれほど得られないことから、耐傷付き性に問題があり、表面に傷が残ると内部の凹凸の意匠感が薄れてしまうという問題点があった。
【特許文献1】特許第3194403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、製造適性、加工適性、曲面への施工性などを有し、表面硬度、表面の耐傷付き性を有し、表面の平滑性や奥行きのある意匠性に優れた内部凹凸を有する化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は 表面に凹凸を有する着色樹脂シートの上に表面を平面とした透明樹脂層を設けてなる内部凹凸を有する化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の上に透明2軸延伸ポリエステルシートを積層し、かつ前記透明2軸延伸ポリエステルシートの表面に透明電離放射線硬化型樹脂層を設けてなることを特徴とする内部凹凸を有する化粧シートである。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、前記透明2軸延伸ポリエステルシートの層厚が25〜200μmであり、前記透明電離放射線硬化型樹脂層の厚みが5〜6μmであることを特徴とする請求項1に記載の内部凹凸を有する化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はその請求項1記載の発明により、透明2軸延伸ポリエステル樹脂シートと透明電離放射線硬化型樹脂層とを積層することで、表面の表面硬度、表面の耐傷付き性に優れた内部凹凸を有する化粧シートを得ることが可能となる。
【0009】
またその請求項2記載の発明により、透明2軸延伸ポリエステル樹脂シートと、透明電離放射線硬化型樹脂層の厚みを限定することで、表面の表面硬度、表面の耐傷付き性に優れつつ、さらに、表面の平滑性や奥行きのある意匠性を好適な範囲とし、化粧シートとしての製造適性、加工適性、曲面への施工性などを好適な範囲とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の内部凹凸を有する化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。
表面に凹凸を有する着色樹脂シート1、適宜設ける絵柄模様層2、表面を平面とした透明樹脂層3、透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート4、電離放射線硬化型樹脂層5、をこの順に積層してなる。
【0011】
本発明における表面に凹凸を有する着色樹脂シート1としては、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。着色樹脂シート1の厚みは、ハンドリング性、凹凸付与後の裏抜けのし難さ、諸物性、巻き取り安さなどを考慮すると、50〜200μmが望ましい。
【0012】
着色樹脂シート1の表面に凹凸を設ける方法としては、熱圧エンボスなど従来公知の方法により可能であり、特に限定するものではない。
【0013】
適宜設ける絵柄模様層2としては、公知の不透明な無機、有機顔料からなる2液のウレタン系樹脂バインダー、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂共重合体等からなるグラビアインキが使用可能であり、これを通常のグラビア印刷等により設けることができる。
【0014】
なお、絵柄模様層2を設ける場合は、着色樹脂シート1の表面が平滑な上体で絵が模様層をグラビア印刷等で設けてから、任意のエンボス版(図示しない)を用いて熱や圧力を加えることで設けることができる。エンボス版の加熱温度は着色樹脂シート1の樹脂など構成材料にもよるが、130℃程度とするのが好適である。これにより化粧シートが50〜100℃程度に熱せられた状態となる。
【0015】
なお、絵柄模様層2と表面を平面とした透明樹脂層3とのあいだには接着剤層(図示せず)を設けてもよい。具体的には公知の2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。乾燥後の塗布量は1〜10g/m程度が望ましい。
【0016】
本発明における表面を平面とした透明樹脂層3としては、前記熱可塑性樹脂基材シート1と同様に、ポリ塩化ビニル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが用いられる。透明熱可塑性樹脂層4の厚みは、耐候性、耐熱性、巻取りのしやすさや、耐傷性等などを考慮すると70〜200μmが望ましい。
【0017】
本発明における透明2軸延伸ポリエステルシート4としては、層厚が25〜200μm程度のポリエチレンテレフタレートが好適に用いられる。最適なものとしては100μmであるが、特にこれに限定されるものではなく、他の層の層厚、着色樹脂シート1の表面の凹凸の深さなどにより適宜調整可能である。積層方法としては表面に適宜コロナ処理を施した上でドライラミネートすることで積層可能である。
【0018】
本発明における電離放射線硬化型樹脂層5としては、電子線、紫外線その他各種エネルギー線の照射により硬化する樹脂からなる層であり、前記透明2軸延伸ポリエステルシート4上に塗布後硬化させて表面保護層として設けるものである。前記電離放射線硬化型樹脂としては公知の紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン樹脂が使用可能であり、これらに適宜ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ガラスビーズなどを適宜添加する。厚みは、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮すると、硬化後で5〜6μm程度が好適であるが、特にこれに限定されるものではなく、他の層の構成材料、他の層の層厚、などにより適宜調整可能である。
【実施例1】
【0019】
着色樹脂シート1として、厚み70μmのホモポリプロピレン樹脂着色シート(リケンテクノス(株)製「リベストTPO」)を用い、これに絵柄模様層2としてグラビア印刷機にて2液ウレタン樹脂バインダーインキを用いた木目柄印刷を行なった。
【0020】
最大深度50μmのエンボス版を用いて、ヒーター温度110℃、余熱ロール80℃、スライダックヒーター110℃/160℃/170℃となるようなエンボスロール装置を用い、エンボスロールを温水加熱で30℃としてライン速度11m/min、の上に前記絵柄模様層2を付与した着色樹脂シート1を繰り出しながら、絵柄模様層2面上にエンボス加工を施した。
【0021】
この絵柄模様層2上に接着剤層として、ポリエステルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)を13重量部混合したものを用い、乾燥後の重量が1g/mとなるように塗工した。そして、この上に透明樹脂層3として透明のランダムポリプロピレン樹脂を厚み70μmとなるように押出ラミネートし、その表面側を平滑ロールにより平面とした。
【0022】
前記透明樹脂層3の上に、透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート4として、予めその表面にコロナ処理を施した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製「ルミラーT60」)を用い、これをドライラミネートした。
【0023】
この透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート4上に、電離放射線硬化型樹脂層5として、紫外線硬化型樹脂(東洋インキ製造(株)「フルシェード」)を希釈溶剤で適度な粘度に希釈した後、ダイレクトリーバースグラビア方式(周速比100%)により塗工により、乾燥後の塗布厚が5.5g/mとなるように塗布した後、高照度高圧水銀ランプにより紫外線を照射して硬化させ、化粧シートを得た。
【0024】
<比較例1>
電離放射線硬化型樹脂層5を設けなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0025】
<比較例2>
前記透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート4を設けずに、前記透明樹脂層3の上に電離放射線硬化型樹脂層5を設けた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0026】
<比較試験>
評価試験として、JIS K 5400準拠の鉛筆硬度試験と、スチールウール5往復による表面傷付き性のチェックを行なった。以下に試験結果を表にて示す。
2軸延伸透明ポリエステルシートを貼り合わせる事で高荷重の傷つき性に強くなり、表面保護層を設けることで軽荷重の傷つき性に強くなっている。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、住宅、店舗、オフィス等の家具、建具、什器など用いられる化粧シート、特には内部に凹凸表現を有する意匠性に優れた化粧シートとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の、内部にエンボス凹部を有する化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…着色樹脂シート
2…絵柄模様層
3…透明樹脂層
4…透明2軸延伸ポリエステル樹脂シート
5…電離放射線硬化型樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する着色樹脂シートの上に表面を平面とした透明樹脂層を設けてなる内部凹凸を有する化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の上に透明2軸延伸ポリエステルシートを積層し、かつ前記透明2軸延伸ポリエステルシートの表面に透明電離放射線硬化型樹脂層を設けてなることを特徴とする内部凹凸を有する化粧シート。
【請求項2】
前記透明2軸延伸ポリエステルシートの層厚が25〜200μmであり、前記透明電離放射線硬化型樹脂層の厚みが5〜6μmであることを特徴とする請求項1に記載の内部凹凸を有する化粧シート。





【図1】
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【公開番号】特開2009−291960(P2009−291960A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145046(P2008−145046)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】