説明

内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置とそれを用いた家畜排せつ物のガス化分解処理方法

【課題】熱効率を大幅に向上させることができ、コストが低減でき、小型で運転が容易な内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置とそれを用いた家畜排せつ物のガス化分解処理方法を提供する。
【解決手段】ガス化炉14a内に敷設された流動床13の熱媒体13aがその下側を通じて循環可能となるように下端部が流動床内に埋設された仕切り隔壁17と、仕切り隔壁17によって燃焼室4から仕切られたバイオマス原料のガス化室12と、ガス化室12から流動床内を通じて移動したバイオマス原料のガス分解残渣を燃焼する燃焼室4とを備えており、ガス化室12内に、バイオマス原料のガス化による生成ガス中の重質ガスの分解または改質を促進する触媒が充填された重質ガス分解装置7が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置とそれを用いた家畜排せつ物のガス化分解処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
間伐材、剪定枝などの木質系や活性汚泥、製紙スラッジなどのバイオマスを熱処理やガス化分解することにより、そのエネルギーを再利用する試みが従来行われてきたが、一般にガス化の効率が悪くコストアップとなり、小型で低価格の装置による安定運転の例はほとんど見られない。
【0003】
ガス化の効率を上げてコストを低減するための手段としては、装置を大規模なものとして熱効率を上げることが考えられるが、このような大規模な装置は、狭い地域に小規模畜産農家が多数分散している形態を取ることが多い日本では、たとえば家畜排せつ物処理装置の場合においては極めて不向きである。したがって、小型かつ低価格であり、さらに運転も容易であるガス分解装置の開発が待たれているのが実情である。
【0004】
従来、木質材バイオマスのガス分解装置としては、小型のものが提案されている(特許文献1)。この装置はロータリーキルン型のガス化構造を備えており、一次ガス化炉で発生した熱分解残渣を外置きの熱分解残渣燃焼炉に搬送する構造を有し、そして熱分解残渣燃焼炉からの熱風を一次ガス化炉へ導入し熱効率の改善を図っている。また、一次ガス化炉で発生した生成ガスを改質炉に導き、生成ガスに含まれるタール分や有害ガス等の熱分解処理を行っている。
【0005】
また、特許文献2では、各種廃棄物や石炭などを原料とする内部循環型流動床式ガス化炉が提案されている。この装置は流動媒体の循環量を簡易かつ精密に制御し、ガス化室と燃焼室の間で熱分解残渣と熱の移動を容易かつ安定的に行うことができる流動床式ガス化炉である。
【特許文献1】特開2004−352960号公報
【特許文献2】特開2007−24492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、生成ガスに含まれる重質ガス分や有害ガスを除去するために900℃から1000℃以上の高温処理が必須であり、熱効率の低下を招き結果的にコストアップとなるという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2の装置においても、当該装置の運転温度は実質的に800℃から1000℃となり、熱効率の低下を招き結果的にコストアップとなるため、必然的に大規模な装置にならざるを得ないという問題点があった。
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、熱効率を大幅に向上させることができ、タール状発生物が少なく設備の劣化を抑制することができ、メンテナンス費用や洗浄費用などのコスト低減も可能であり、しかも小型で運転が容易な、家畜排せつ物等のバイオマス原料をガス化するための内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置とそれを用いた家畜排せつ物のガス化分解処理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
第1に、本発明の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置は、バイオマス原料をガス化分解処理するための内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置であって、ガス化炉内に敷設された流動可能な熱媒体からなる流動床と、熱媒体がその下側を通じて循環可能となるように下端部が流動床内に埋設された仕切り隔壁と、仕切り隔壁によって仕切られた一方の室であり、ガス化剤の存在下においてバイオマス原料がガス化されるガス化室と、仕切り隔壁によって仕切られた他方の室であり、酸化剤の存在下において、ガス化室から流動床内を通じて移動したバイオマス原料のガス分解残渣を燃焼する燃焼室とを備えており、ガス化室内に、バイオマス原料のガス化による生成ガス中の重質ガスの分解または改質を促進する触媒が充填された重質ガス分解装置が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2に、上記第1の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置において、ガス化室底部の流動床にガス化剤を供給するガス化剤供給口と、燃焼室底部の流動床に酸化剤を供給する酸化剤供給口とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3に、上記第1または第2の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置において、熱媒体がその下側を通じて循環可能となるように下端部が流動床内に埋設された、熱媒体の循環移動を調整するための少なくとも1つの隔壁と、熱媒体がその上側を通じて循環可能となるように流動床底面から立設された、熱媒体の循環移動を調整するための少なくとも1つの隔壁とのいずれか一方または両方を備えることを特徴とする。
【0013】
第4に、上記第1から第3のいずれかの内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置において、重質ガス分解装置に充填された触媒は、ニッケル担持褐炭およびニッケル担持アルミナを含むニッケル系触媒、あるいは、リモナイトを含む鉄系触媒などの第VIII属の金属系触媒であることを特徴とする。
【0014】
第5に、本発明の家畜排せつ物のガス化分解処理方法は、上記第1から第4のいずれかの内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置に、バイオマス原料として家畜排せつ物を供給し、ガス化室において家畜排せつ物をガス化し、ガス化による生成ガスを重質ガス分解装置に導入して生成ガス中の重質ガスを分解または改質することを特徴とする。
【0015】
第6に、上記第5の家畜排せつ物のガス化分解処理方法において、ガス化室における家畜排せつ物のガス化温度および重質ガス分解装置における重質ガスの分解または改質温度が500〜700℃の範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、下端部を流動床内に埋設した仕切り隔壁によって、バイオマス原料をガス化するガス化室と燃焼室とを仕切ると共に、触媒を充填した重質ガス分解装置をガス化室内に設けたので、ガス化室から流動床内を通じて移動したバイオマス原料のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱を利用して、重質ガス分解が十分に促進される熱が燃焼室よりガス化室内の重質ガス分解装置に供給される。
【0017】
そのため、重質ガス分解装置を外部に設置した場合に加熱のために必要とされる外部からの熱エネルギーの供給を、バイオマス原料のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱により賄うことができるため、熱効率が大幅に向上する。そして、熱効率が大幅に向上することができるので、装置の小型化が可能となる。
【0018】
上記第2の発明によれば、ガス化剤供給口からのガス化剤と、酸化剤供給口からの酸化剤とを流量を制御して流動床に供給することにより、ガス化室と燃焼室との間で熱媒体を適切に循環させることができる。これにより、ガス化室およびガス化室内の重質ガス分解装置に供給する熱エネルギーを、バイオマス原料のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱により適切に賄うことができるため、熱効率が大幅に向上する。
【0019】
上記第3の発明によれば、熱媒体の循環移動を調整するために隔壁を設けることにより、ガス化室と燃焼室との間で熱媒体を適切に循環させることができる。これにより、ガス化室内の重質ガス分解装置に供給する熱エネルギーを、バイオマス原料のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱により適切に賄うことができるため、熱効率が大幅に向上する。
【0020】
上記第4の発明によれば、重質ガス分解装置に充填する触媒として、ニッケル担持褐炭およびニッケル担持アルミナを含むニッケル系触媒、あるいは、リモナイトを含む鉄系触媒などの第VIII属の金属系触媒を用いているので、従来の装置に比較して大幅に低い運転温度、たとえば500〜700℃でバイオマス原料のガス化および重質ガス分解装置における重質ガスの分解または改質を実施することができる。そのため、大幅な省エネルギー化を達成することができ、しかもニッケル担持褐炭触媒はガス分解用の一般の触媒に比較して極めて安価であるため、装置の小型化と低コスト化を達成することができ、装置の運転も容易なものとすることができる。
【0021】
上記第5および第6の発明によれば、家畜排せつ物は木質系廃棄物などに比較して重質ガスの発生量が少なく、負荷が少ない運転が可能となる。そして、家畜排せつ物のガス化による生成ガス中の重質ガスをたとえば500〜700℃の低温でも効果的に分解除去することができることから、重質ガスに起因するタール状発生物による設備や配管の劣化に伴って生ずるメンテナンス費用や洗浄費用を削減することができ、その結果として装置の運転コストの大幅な低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における内部循環型流動床式低温接触ガス化試験炉の構成を示す模式図である。同図に示す内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置14は、家畜排せつ物、特に家畜糞などのバイオマス原料8をガス化分解処理するためのものであり、小型の、たとえば炉長約1.2m、炉幅約40cmのガス化炉14aを備えている。
【0024】
ガス化炉14a内には、たとえば鋳物砂などの流動可能な熱媒体13aからなる流動床13が敷設されている。
【0025】
ガス化炉14a内は、仕切り隔壁17によってガス化室12と燃焼室4とに仕切られている。仕切り隔壁17は、その上端部が炉壁などに固定されており、その下端部は、熱媒体13aがその下側を通じてガス化室12と燃焼室4との間を循環可能となるようにガス化炉14a底面から浮いた状態で流動床13内に埋設されている。
【0026】
ガス化室12の下方には、ガス化領域9を構成する流動床13内にガス化剤を供給するガス化剤供給口10が配設されている。一方、燃焼室4の下方には、酸化領域5を構成する流動床13内に酸化剤を供給する複数の酸化剤供給口11a〜11eが循環方向に沿って配設されている。
【0027】
そして燃焼室4内には、熱媒体13aの循環移動を調整するための隔壁15,16が配設されている。これらのうち仕切り隔壁17側の隔壁16は、熱媒体13aがその上側をオーバーフローして循環可能となるように流動床底面に固定されて立設されおり、隔壁16の仕切り隔壁17とは反対側に配設された隔壁15は、熱媒体13aがその下側を通じて循環可能となるように炉壁などに固定され、ガス化炉14a底面から浮いた状態で流動床13内に埋設されている。
【0028】
ガス化剤供給口10から流動床13内に、精密に制御された流量の水蒸気、一酸化炭素などのガス化剤を供給し、酸化剤供給口11a〜11eから流動床13内に、精密に制御された流量の酸素、空気などの酸化剤を供給することにより、流動床13の熱媒体13aが、仕切り隔壁17の下側を通過し、隔壁16をオーバーフローし、そして隔壁15の下側を通過することでガス化炉14a内の全体を循環するように設計されている。
【0029】
たとえば、ガス化剤供給口10からのガス化剤の流量と、酸化剤供給口11a〜11eからの酸化剤の流量を個別に精密に制御することで(図1では模式的に流量の多い供給口と少ない供給口とを矢印線の太さで示している。)、それに応じた熱媒体13aの流動が生じることになる。
【0030】
仕切り隔壁17によって仕切られた一方の室であるガス化室12には、適度に乾燥された家畜糞などのバイオマス原料8が供給される。乾燥の程度は、好ましくは水分含有量40質量%以下、より好ましくは水分含有量15質量%以下である。水分含有量が40質量%を超えるものを使用すると熱効率が低下する場合がある。
【0031】
本実施形態の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置14によるガス化分解処理に好適なバイオマス原料8としては、堆肥化の進んだ家畜糞を挙げることができる。堆肥化の進んだ家畜糞は水分含有量が低下しており、さらに、重質ガスに起因するタール状発生物が木質系廃棄物などに比較して少ないので重質ガス分解装置7における触媒の負荷も少ない。
【0032】
ガス化室12内へのバイオマス原料8の供給は、ホッパーからの直接供給やスクリュー式押出機により行うことができるが、中でも臭気や内圧の影響を低減でき、かつ安定な供給が可能なスクリュー式押出機が好適である。
【0033】
ガス化室12内に供給されたバイオマス原料8は、ガス化領域9において分解されてガス化する。このとき、ガス化室12内の底部にはガス分解残渣が生じるが、このガス分解残渣は熱媒体13aに付随して燃焼室4内に導かれ、燃焼室4内において酸化剤の存在下で完全に燃焼され、燃焼ガス3としてガス化炉14a外に排出される。
【0034】
一方、ガス化室12内でのバイオマス原料8のガス化による生成ガスは、ガス化室12内の上部に設けられた重質ガス分解装置7を通過した後、外部に取り出される。重質ガス分解装置7は、図2に示すように、触媒23を充填した容器7a〜7gを備えている。触媒23の具体例としては、ニッケル担持褐炭およびニッケル担持アルミナを含むニッケル系触媒、あるいは、リモナイトを含む鉄系触媒などの第VIII属の金属系触媒を挙げることができる。
【0035】
ニッケル担持褐炭としては、たとえば、平均粒子径0.5〜3mm、ニッケル担持量3〜20重量%のものを用いることができる。褐炭としては、たとえば、水分13%、固定炭素34%、揮発分51%、灰分2%のものを用いることができる。
【0036】
Ni担持アルミナとしては、たとえば、上記と同程度の平均粒子径とニッケル担持量を有するものを用いることができる。
【0037】
リモナイトは、沼地や浅い海などの鉄分を多く含む水が空気に触れて沈殿した黄土で、「褐鉄鉱」、「沼鉄鉱」とも称されるものであり、吸着剤等として市販されているもの、熟成したもの等を用いることができる。
【0038】
重質ガス分解装置7は、触媒23が充填された直方体の容器7a〜7gが横一列に配置されており、各容器7a〜7gの下面部には生成ガス導入路18を経由した生成ガスが導入される生成ガス導入口20が設けられている。一方、各容器7a〜7gの上面部には生成ガス排出口21が設けられており、生成ガス排出口21から排出された生成ガスは、生成ガス排出路19を通り外部に排出されるようになっている。
【0039】
各容器7a〜7gには、その上面部または下面部、あるいはその両方に着脱用レール22が設けられており、そして図示はしないが、ガス化室12内の重質ガス分解装置7側にはこの着脱用レール22が嵌め込まれる溝が形成されており、当該溝に対して着脱用レール22をスライドさせることで、個々の容器7a〜7gを必要に応じて容易に着脱できるようになっている。なお、同図では2個の容器7d,7eの上面部にのみ着脱用レール22が設けられているが、実際にはすべての容器7a〜7gに設けられる。
【0040】
以上の構成を備えた容器7a〜7gを有する重質ガス分解装置7を使用する際には、触媒23が分解反応時間と共に劣化することが避けられないため、たとえば容器7a〜7gのうち一つの容器を触媒23が劣化するまで使用した後に別の容器を使用する態様、すなわち容器7a〜7gに順次生成ガスを導く態様とするか、あるいは、一定時間の経過ごとに順に隣の容器へ生成ガスを導く態様とすることが好ましい。
【0041】
使用により劣化した触媒23は、容器7a〜7gに充填したまま再生した後、再び運転中のガス化炉14a内に組み込んで使用できる。従って、触媒23の効果を最大限に利用でき、長時間の低温運転が可能となる。
【0042】
重質ガス分解装置7を通過することにより、生成ガス中にはベンゼンやナフタレンなどの重質ガス分はほとんど存在しなくなる。そのため、生成ガスを有効に利用できると共に、ガス配管や設備へのタール状物質の付着が生じることがなく、設備メンテナンスが容易で洗浄の煩雑さもなく、コスト低減にも極めて効果的となる。
【0043】
そして、本実施形態では重質ガス分解装置7をガス化室12内に設けたので、ガス化室12から流動床13内を通じて移動したバイオマス原料8のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱を利用して、重質ガスの分解または改質を十分に促進する熱エネルギーが燃焼室4よりガス化室12内の重質ガス分解装置7に供給される。
【0044】
そのため、バイオマス原料8のガス分解残渣の燃焼による内部燃焼熱により重質ガスの分解または改質に必要な熱エネルギーを賄うことができ、熱効率が大幅に向上し、その結果として装置の小型化が可能となる。
【0045】
特に、バイオマス原料8としての家畜排せつ物は重質ガスの発生量が少なく、負荷が少ない運転が可能となる。そして、触媒23として上記したものを用いることで、家畜排せつ物のガス化による生成ガス中の重質ガスをたとえば500〜700℃の低温でも効果的に分解除去することができるので、大幅な省エネルギー化が可能となる。
【0046】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。たとえば、ガス化剤および酸化剤の種類や流量、あるいは熱媒体の循環移動を調整するための隔壁の形成態様などは、目的とする熱媒体の循環設計などに応じて適宜に変更すればよい。
【0047】
また、重質ガス分解装置7は、図2に示す構造に限定されるものではなく、たとえば容器の数は任意の数であってよい。また、容器7a〜7gの生成ガス導入口20と生成ガス排出口21の形状は、同図のような楕円形に限らず、たとえば生成ガスの流量や、触媒23の充填量などに応じて適宜に変更すればよい。
【0048】
また、流動床13の熱媒体13aからの回収熱2を付加燃料1のために利用するようにしてもよい。
【0049】
本発明の装置は、バイオマス原料である間伐材、稲・麦わら、剪定枝、廃棄農産物、屑海藻、畜産廃棄物などの農林水産系廃棄物、家庭生ごみや下水汚泥などの生活系廃棄物、活性汚泥や製紙スラッジ、コーヒー粕などの工業系廃棄物などのガス化分解によるバイオマス資源化のために用いることができ、特に、タール発生量が比較的他の廃棄物に比べて少ない家畜排せつ物などの畜産廃棄物に適している。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
バイオマス原料として、水分含有量25質量%の堆肥化された豚糞を、試料ホッパーから試料供給フィーダーを通して1kg/hrの供給量で内部循環型流動床式低温接触ガス化炉内のガス化室に供給した。
【0051】
同じくガス化室内に、水供給タンクから水供給ポンプを通し供給された一定量の水を、過熱水蒸気発生装置により水蒸気とし、これをガス化剤として、9.3g/minの供給量で導入した。
【0052】
また、燃焼室に、空気圧縮機ユニットからバッファータンクを通し、空気予熱器により加熱された空気を酸化剤として23l/minの供給量で導入した。
【0053】
一方、内部循環型流動床式低温接触ガス化炉内全体に流動媒体ホッパーから流動媒体フィーダーを通して、一定量の鋳物砂を熱媒体として充填させ、熱分解温度を約650℃に制御して連続運転を行った。
【0054】
燃焼室から排出された燃焼ガスはサイクロンを通し、さらに水凝縮器により凝縮水を取り除いてガスメーターを通過させて排出した。
【0055】
ガス化室で発生したガスはガス化室内に設置された褐炭ニッケル系触媒が充填された重質ガス分解装置を通して生成ガスとして炉外に排出し、水凝縮器で凝縮水を取り除き、ガスメーターを通過させ、一定量をサンプリングラインに導きガスバッグに採取してガス組成分析に供するとともに、サンプリング用以外の生成ガスは燃焼装置で燃焼させたあと外に排気した。
【0056】
また運転状況のすべては制御盤に連結したコンピューターによりモニターできるようにした。
【0057】
炉の大きさは炉長1,250mm、炉幅412mmであり、極めてコンパクトなものを使用した。なお付加燃料の使用、熱の回収は本実施例では行わなかった。
【0058】
以上の結果、上述した条件において180分の連続運転が可能であった。また生成ガス組成は水素31〜36%、一酸化炭素5〜12%、メタン1〜4%、二酸化炭素17〜21%であり、有効な生成ガスが発生したことが確認された。
【0059】
また、炉はコンパクトなものでありながら1kg/hrの堆肥化された豚糞処理が可能であることが判明した。さらには、炉内および配管類のタール発生も少ないことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態における内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置の構成を示す模式図である。
【図2】重質ガス分解装置の要部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 付加燃料
2 回収熱
3 燃焼ガス
4 燃焼室
5 酸化領域
6 生成ガス
7 重質ガス分解装置
7a〜7g 容器
8 バイオマス原料
9 ガス化領域
10 ガス化剤供給口
11a〜11e 酸化剤供給口
12 ガス化室
13 流動床
13a 熱媒体
14 内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置
14a ガス化炉
15 隔壁
16 隔壁
17 仕切り隔壁
18 生成ガス導入路
19 生成ガス排出路
20 生成ガス導入口
21 生成ガス排出口
22 着脱用レール
23 触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料をガス化分解処理するための内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置であって、ガス化炉内に敷設された流動可能な熱媒体からなる流動床と、熱媒体がその下側を通じて循環可能となるように下端部が流動床内に埋設された仕切り隔壁と、仕切り隔壁によって仕切られた一方の室であり、ガス化剤の存在下においてバイオマス原料がガス化されるガス化室と、仕切り隔壁によって仕切られた他方の室であり、酸化剤の存在下において、ガス化室から流動床内を通じて移動したバイオマス原料のガス分解残渣を燃焼する燃焼室とを備えており、ガス化室内に、バイオマス原料のガス化による生成ガス中の重質ガスの分解または改質を促進する触媒が充填された重質ガス分解装置が設けられていることを特徴とする内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置。
【請求項2】
ガス化室底部の流動床にガス化剤を供給するガス化剤供給口と、燃焼室底部の流動床に酸化剤を供給する酸化剤供給口とを備えることを特徴とする請求項1に記載の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置。
【請求項3】
熱媒体がその下側を通じて循環可能となるように下端部が流動床内に埋設された、熱媒体の循環移動を調整するための少なくとも1つの隔壁と、熱媒体がその上側を通じて循環可能となるように流動床底面から立設された、熱媒体の循環移動を調整するための少なくとも1つの隔壁とのいずれか一方または両方を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置。
【請求項4】
重質ガス分解装置に充填された触媒は、ニッケル担持褐炭およびニッケル担持アルミナを含むニッケル系触媒、あるいは、リモナイトを含む鉄系触媒などの第VIII属の金属系触媒であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の内部循環型流動床式低温接触ガス化炉装置に、バイオマス原料として家畜排せつ物を供給し、ガス化室において家畜排せつ物をガス化し、ガス化による生成ガスを重質ガス分解装置に導入して生成ガス中の重質ガスを分解または改質することを特徴とする家畜排せつ物のガス化分解処理方法。
【請求項6】
ガス化室における家畜排せつ物のガス化温度および重質ガス分解装置における重質ガスの分解または改質温度が500〜700℃の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の家畜排せつ物のガス化分解処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−138107(P2009−138107A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316402(P2007−316402)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】