説明

内部抵抗測定装置および内部抵抗測定方法

【課題】短時間で二次電池の内部抵抗を測定すること。
【解決手段】二次電池Bの内部抵抗を測定する内部抵抗測定装置1において、充放電停止後の二次電池の電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する推定手段1aと、二次電池に充電電流または放電電流を通じる通電手段1bと、通電手段によって二次電池に電流が通じている際の電圧と電流を検出する検出手段1cと、検出手段によって検出された電圧から推定手段によって推定された分極電圧の影響を除外して求めた二次電池の通電による電圧変化の値と、検出手段によって検出された電流の値とに基づいて二次電池の内部抵抗を算出する算出手段1dと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗測定装置および内部抵抗測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源のオフから連続経過期間が所定時間に達する毎に、バッテリに予め定められた交流電流を通じつつバッテリの端子電圧の降下量を測定し、測定した端子電圧の降下量と交流電流の電流値からバッテリの内部抵抗を求める技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、二次電池が所定の放電分極状態である場合に、二次電池の電圧および電流を測定してデータとして記憶し、記憶したデータが所定の個数を超えた場合にこれらのデータを用いて二次電池の内部抵抗を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168263号公報
【特許文献2】特開2004−31170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている技術では、電源オフから所定の時間が経過するまで内部抵抗を求めることができないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に開示されている技術では、二次電池が所定の放電分極状態になるとともに、さらに、所定の個数のデータが記憶されるまで内部抵抗を求めることができないという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は短時間で二次電池の内部抵抗を求めることができる内部抵抗測定装置および内部抵抗測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定装置において、充放電停止後の前記二次電池の電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する推定手段と、前記二次電池に充電電流または放電電流を通じる通電手段と、前記通電手段によって前記二次電池に電流が通じている際の電圧と電流を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された電圧から前記推定手段によって推定された前記分極電圧の影響を除外して求めた前記二次電池の通電による電圧変化の値と、前記検出手段によって検出された電流の値とに基づいて前記二次電池の内部抵抗を算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、短時間で二次電池の内部抵抗を求めることができる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記推定手段は、前記二次電池の温度が低い場合には測定時間を長くし、温度が高い場合には測定時間を短くすることを特徴とする。
このような構成によれば、温度に拘わらず内部抵抗を精度よく求めることが可能になる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記算出手段は、前記検出手段によって検出された通電前後における電圧変化の値から、前記推定手段によって推定された前記分極電圧の値を減じて得た値を、前記検出手段によって検出された電流の値によって除することによって前記二次電池の内部抵抗を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、分極の影響を減算によって除外し、正確な内部抵抗を求めることができる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記算出手段は、前記電圧検出手段によって検出された通電前後における電圧変化の値に、前記推定手段によって推定された前記分極電圧に対応する所定の係数を乗算して得た値を、前記検出手段によって検出された電流の値によって除することによって前記二次電池の内部抵抗を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、分極の影響を係数を乗算することによって除外し、正確な内部抵抗を求めることができる。
【0012】
また、本発明は、二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定方法において、充放電停止後の前記二次電池の電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する推定ステップと、前記二次電池に充電電流または放電電流を通じる通電ステップと、前記通電ステップによって前記二次電池に電流が通じている際の電圧と電流を検出する検出ステップと、前記検出ステップによって検出された電圧から前記推定ステップによって推定された前記分極電圧の影響を除外して求めた前記二次電池の通電による電圧変化の値と、前記検出ステップによって検出された電流の値とに基づいて前記二次電池の内部抵抗を算出する算出ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、短時間で二次電池の内部抵抗を求めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、短時間で二次電池の内部抵抗を求めることができる内部抵抗測定装置および内部抵抗測定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る内部抵抗測定装置の原理を説明するための図である。
【図2】充放電停止後の二次電池の電圧変化を示す図である。
【図3】図1に示す図の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る内部抵抗測定装置の詳細な構成例を示す図である。
【図5】図4に示す制御部の詳細な構成例を示す図である。
【図6】図4に示す実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6に示すパルス放電処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】充電分極による内部抵抗の時間的変化量を示す図である。
【図9】放電分極による内部抵抗の時間的変化量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(A)本発明の動作原理の説明
図1は、本発明の実施形態に係る内部抵抗測定装置の動作原理を説明するための図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る内部抵抗測定装置1は、推定手段1a、通電手段1b、検出手段1c、および、算出手段1dを有しており、二次電池Bの内部抵抗を測定する。ここで、推定手段1aは、充放電が停止された後の二次電池Bの電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する。通電手段1bは、二次電池Bに対して、充電電流または放電電流を通じる。検出手段1cは、通電手段1bによって二次電池Bに通電している際の電圧と電流を検出する。算出手段1dは、検出手段1cによって検出された電圧から、推定手段1aによって推定された分極電圧の影響を除外して求めた二次電池Bの通電による電圧変化の値と、検出手段1cによって検出された電流の値とに基づいて二次電池Bの内部抵抗を算出する。
【0017】
つぎに、図1に示す内部抵抗測定装置1の動作について説明する。図2は、二次電池Bの電圧の変化を示す図である。時刻T0において二次電池Bの充電が停止されると、二次電池Bの電圧は図2に実線で示すように時間の経過とともに徐々に減少し、破線で示す安定開回路電圧Vocに近付いていく。これは、分極(図2の例は主に充電分極)によって、二次電池Bの電圧が安定開回路電圧Vocよりも高い値にずれを生じており、時間の経過とともに分極が解消されるからである。
【0018】
二次電池Bの内部抵抗を測定する方法としては、例えば、二次電池Bに対して所定の周期のパルス状の充電電流または放電電流を所定の期間通じ、そのときに流れる電流Iと、通電の前後の電圧変化ΔVに基づいて内部抵抗RをR=ΔV/Iとして求める方法がある。しかしながら、図2に示すように、分極が存在する場合、電圧変化ΔVには、分極による電圧変化ΔVaも含まれる。分極は、みかけの電圧であることから、この分極による電圧変化ΔVaが含まれる場合、算出された内部抵抗は誤差を含むこととなる。そこで、本実施形態では、二次電池Bの電圧の推移から分極電圧を推定し、内部抵抗を求める際には、この分極による電圧変化ΔVaを、検出された電圧変化ΔVから除外し、得られた純粋な電圧変化ΔVbに基づいて内部抵抗を求める。
【0019】
つぎに、図1に示す実施形態の動作を、図3に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0020】
ステップS10では、二次電池Bに対する充放電が停止されたか否かを判定し、停止されたと判定した場合(ステップS10:Yes)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:No)には同じ処理を繰り返す。
【0021】
ステップS11では、推定手段1aは、二次電池Bの電圧推移を測定する。具体的には、図2に示す電圧の時間的な推移を一定期間(例えば、30分間)測定する。
【0022】
ステップS12では、推定手段1aは、ステップS11で測定した電圧の変化から、二次電池Bの分極電圧Vpを推定する。なお、分極電圧Vpとは、図2にΔVaで示す電圧(実線で示す電圧と安定開回路電圧との差)をいう。例えば、推定手段1aは、電圧の時間的変化を示す所定の関数f(t)のパラメータを複数の測定結果から求めることで、所定の時間tにおける分極電圧Vpを推定する。
【0023】
ステップS13では、通電手段1bは、二次電池Bに対して通電パルス(充電パルスまたは放電パルス)を印加する。
【0024】
ステップS14では、検出手段1cは、通電手段1bによる通電パルス印加前後の二次電池Bの電圧の変化ΔVを検出する。
【0025】
ステップS15では、検出手段1cは、通電手段1bによるパルス印加中に二次電池Bに流れる電流Iを検出する。
【0026】
ステップS16では、算出手段1dは、ステップS14において検出された電圧変化ΔVと、ステップS12で推定された分極電圧Vpと、ステップS15で検出した電流Iに基づいて、数式R=(ΔV−Vp)/Iにより、内部抵抗Rを算出する。なお、分極電圧Vpと補正係数γを対応付けしてテーブル等に格納しておき、分極電圧Vpに対応する補正係数γを電圧変化ΔVに乗算することによりΔVbを求めるようにしてもよい。この方法の場合、例えば、R=γ×ΔV/Iにより、内部抵抗Rを算出することができる。
【0027】
ステップS17では、ステップS16で算出した内部抵抗Rの値を出力する。
【0028】
一般的に、二次電池Bの分極が解消して安定開回路電圧と略同じになるまでには非常に長い時間(例えば、数〜数十時間)を要する。このため、本実施形態のように、分極を推定してその影響を除外して内部抵抗を求めることにより、前述した非常に長い時間を待たずに短時間で内部抵抗を得ることができる。また、このような方法により、分極の状態(例えば、分極の大小)によらず内部抵抗を正確に求めることができる。
【0029】
(B)実施形態の構成の説明
図4は、本発明の実施形態に係る内部抵抗測定装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、内部抵抗測定装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、および、放電回路15を主要な構成要素としており、二次電池14の内部抵抗を測定する。
【0030】
ここで、制御部10は、放電回路15を制御するとともに、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の状態を検出する。電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、二次電池14自体または周囲の環境温度を検出し、制御部10に通知する。放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチと抵抗素子等によって構成され、制御部10によって半導体スイッチがオン/オフ制御されることにより二次電池14を間欠的に放電させる。
【0031】
二次電池14は、例えば、正極(陽極板)に二酸化鉛、負極(陰極板)に海綿状の鉛、電解液として希硫酸を用いた鉛蓄電池によって構成され、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジン17を始動するとともに、負荷19に電力を供給する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。
【0032】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、ライト、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、二次電池14およびオルタネータ16からの電力によって動作する。
【0033】
図5は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、I/F(Interface)10d、バス10e、および、通信部10fを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10baを実行する際に生成されるパラメータ10caを格納する。I/F10dは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、放電回路15に駆動信号を供給してこれを制御する。バス10eは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、および、I/F10dを相互に電気的に接続し、これらの間で情報の授受を可能にするための信号線群である。通信部10fは、他の装置(例えば、図示しないECU(Engine Control Unit))等に通信線を介して接続され、他の装置との間で情報を授受する。
【0034】
(C)実施形態の動作の説明
つぎに、本実施形態の動作について説明する。図6は図4に示す制御部10において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理が実行されると、以下のステップが実行される。
【0035】
ステップS30では、CPU10aは、エンジン17が停止したか否かを判定し、停止したと判定した場合(ステップS30:Yes)にはステップS31に進み、それ以外の場合(ステップS30:No)には同様の処理を繰り返す。具体的には、CPU10aは、電流センサ12の出力を参照し、二次電池14に流れる電流が所定の閾値未満である場合には、エンジン17が停止したとしてステップS31に進む。なお、エンジン17の停止を判定するのは、エンジン17の停止が充放電の停止を意味するからである。
【0036】
ステップS31では、CPU10aは、温度センサ13の出力を参照し、二次電池14の温度を検出する。
【0037】
ステップS32では、CPU10aは、ステップS31で検出した二次電池14の温度が高温である場合にはステップS33に進み、常温である場合にはステップS34に進み、高温である場合にはステップS35に進む。具体的には、二次電池14の温度が45℃以上の場合には高温であるとしてステップS33に進み、10℃以上45℃未満の場合には常温であるとしてステップS34に進み、10℃未満である場合には低温であるとしてステップS35に進む。なお、前述した温度の判定基準は一例であって、これら以外の温度を判定基準としてもよい。
【0038】
ステップS33では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、30分間二次電池14の電圧の推移を測定する。
【0039】
ステップS34では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、60分間二次電池14の電圧の推移を測定する。
【0040】
ステップS35では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、90分間二次電池14の電圧の推移を測定する。
【0041】
なお、二次電池14の温度に応じて電圧変化の測定時間を変更するのは、二次電池14の温度によって分極の発生状態が異なるので、温度に応じた最適な測定を行うためである。図8は、充電分極が生じている場合に、20時間後に測定した内部抵抗値と、それぞれの時間における内部抵抗値との差分(変化量)を温度毎にプロットした図である。なお、このような差分が生じるのは、分極電圧に起因する誤差が存在するためである。図8の各温度のグラフの比較から、温度が高い場合には分極電圧の変化が大きい。つまり、温度が高い場合は低い場合に比較して分極の時間あたりの変化量が大きいので、短時間の測定でも比較的精度良く分極電圧を推定できるからである。一方、図9は、放電分極の場合と同様の図である。図9に示すように、放電分極の場合には温度による内部抵抗の変化量は少なく、また、30分程度経過すると温度によらず、変化量は±0.1mΩの範囲内に収まるので、放電電極については無視することができる。
【0042】
ステップS36では、CPU10aは、ステップS33〜S35で測定された電圧の推移に基づいて、二次電池14の開回路電圧を推定する。具体的には、ステップS33〜S35で測定された電圧の推移に基づいて、例えば、指数関数を含む所定の関数のパラメータをフィッティングすることで、開回路電圧を推定する。具体的には、安定開回路電圧をVoc、パラメータをα,β、エンジン17の停止からの経過時間をt、二次電池14の電圧をV、指数関数をexp()とし、これらの関係を示す数式をV=Voc+α×exp(−β×t)とする。そして、時間tの経過による電圧Vの変化に基づいて、Vocおよびパラメータα,βの値をフィッティングによって求めることで、安定開回路電圧Vocを推定することができる。なお、以上は一例であって、これ以外の方法によって、開回路電圧を求めるようにしてもよい。
【0043】
ステップS37では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、二次電池14の電圧Vを検出する。
【0044】
ステップS38では、CPU10aは、ステップS37で検出した二次電池14の電圧Vから、ステップS36で求めた安定開回路電圧Vocを減算することにより、分極電圧Vp(=V−Voc)を求める。
【0045】
ステップS39では、CPU10aは、二次電池14をパルス放電させ、その際の電圧および電流を測定するパルス放電処理を実行する。図7は、パルス放電処理の詳細を説明するフローチャートである。この図7に示すように、パルス放電処理では、ステップS50において、CPU10aは、放電回路15を制御し、二次電池14をパルス放電させる。具体的には、例えば、100Hz程度の周波数で、1/10秒程度の期間、パルス放電をさせる。ステップS51では、CPU10aは、電流センサ12の出力を参照し、パルス放電中に二次電池14に流れる電流Iを検出する。ステップS52では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、パルス放電前後の二次電池14の電圧変化ΔVを検出する。そして、図6の処理に復帰(リターン)する。
【0046】
ステップS40では、CPU10aは、ステップS39におけるパルス放電処理の結果に基づいて内部抵抗Rを算出する。具体的には、ステップS39において検出された電流Iと、電圧変化ΔVを数式R=ΔV/Iに代入し、内部抵抗Rを求める。
【0047】
ステップS41では、CPU10aは、内部抵抗Rの値を出力する。具体的には、CPU10aは、ステップS40において算出された内部抵抗Rの値を、例えば、通信部10fを介して図示しないECUに出力する。
【0048】
以上の実施形態によれば、二次電池14の電圧の時間的変化に基づいて、分極電圧を推定し、パルス放電後の電圧変化から当該分極電圧を除外した値に基づいて内部抵抗を求めるようにしたので、分極電圧が安定する前でも内部抵抗を求めることができることから、内部抵抗の測定を迅速に行うことができる。
【0049】
また、分極電圧の影響を受けずに内部抵抗を測定することができることから、内部抵抗を正確に求めることができる。
【0050】
また、温度に応じて電圧推移を観測する時間を調整するようにしたので、二次電池14の温度によらず内部抵抗を正確に求めることができる。
【0051】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、二次電池14に対して放電パルスを印加するようにしたが、放電パルスの代わりに充電パルスを印加して測定するようにしてもよい。また、充電または放電は、パルス波形に限定されるものではなく、パルス以外の波形(例えば、正弦波)によって充電または放電を行うようにしてもよい。
【0052】
また、以上の実施形態では、図2に示すように、電圧変化ΔVから分極電圧ΔVaを減算して得た値(=ΔVb)に基づいて、内部抵抗を算出するようにしたが、例えば、分極電圧ΔVaに対応した所定の補正係数γを電圧変化ΔVに乗算することによりΔVbを求めるようにしてもよい。具体的には、ΔVaに対応した所定の補正係数γを、例えば、テーブルに格納するか、これらの関係を示す関数を準備しておき、これらのテーブルまたは関数に基づいて補正係数γを取得し、数式ΔVb=γ×ΔVによってΔVbを求めるようにしてもよい。なお、内部抵抗Rについては、R=γ×ΔV/Iによって求めることができる。
【0053】
また、以上の実施形態では、図6に示すステップS36の処理では、指数関数を含む関数によってフィッティングを行い、開回路電圧を推定するようにしたが、これ以外の関数によってフィッティングを行うようにしてもよい。
【0054】
また、以上の実施形態では、低温、常温、高温の3つの温度範囲に分けて測定時間を変更するようにしたが、例えば、2つの温度範囲に分けたり、あるいは、4つ以上の温度範囲に分けたりするようにしてもよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、エンジン17がストップした場合に処理を開始するようにしたが、二次電池14が車両以外に搭載されている場合には、二次電池14に流れる電流が閾値よりも小さくなった場合に処理を開始するようにしてもよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、内部抵抗Rによっては計算によって求めた値をそのまま出力するようにしたが、例えば、二次電池14の温度等に基づいて補正を行い、補正後の内部抵抗の値を出力するようにしてもよい。また、エンジン17の停止後に一度、内部抵抗値を算出し、その後に、図8に示すフローチャートによって内部抵抗値を算出し、これらの内部抵抗値を比較することで、図8に示すフローチャートによって算出された内部抵抗値の妥当性を検証するようにしてもよい。具体的には、エンジン17の停止後に算出された内部抵抗値と、図8に示すフローチャートによって算出された内部抵抗値の差分が所定の範囲内に収まる場合には妥当であるとして、ステップS42で算出された内部抵抗値をステップS41で出力するようにしてもよい。また、妥当でないと判定された場合には、ステップS32に戻って内部抵抗値を再度計算するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 内部抵抗測定装置
10 制御部
10a CPU(推定手段、検出手段、算出手段)
10b ROM
10c RAM
10d 通信部
10e バス
10f I/F
11 電圧センサ
12 電流センサ
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路(通電手段)
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定装置において、
充放電停止後の前記二次電池の電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する推定手段と、
前記二次電池に充電電流または放電電流を通じる通電手段と、
前記通電手段によって前記二次電池に電流が通じている際の電圧と電流を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された電圧から前記推定手段によって推定された前記分極電圧の影響を除外して求めた前記二次電池の通電による電圧変化の値と、前記検出手段によって検出された電流の値とに基づいて前記二次電池の内部抵抗を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする内部抵抗測定装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記二次電池の温度が低い場合には測定時間を長くし、温度が高い場合には測定時間を短くすることを特徴とする請求項1に記載の内部抵抗測定装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記検出手段によって検出された通電前後における電圧変化の値から、前記推定手段によって推定された前記分極電圧の値を減じて得た値を、前記検出手段によって検出された電流の値によって除することによって前記二次電池の内部抵抗を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の内部抵抗測定装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記電圧検出手段によって検出された通電前後における電圧変化の値に、前記推定手段によって推定された前記分極電圧に対応する所定の係数を乗算して得た値を、前記検出手段によって検出された電流の値によって除することによって前記二次電池の内部抵抗を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の内部抵抗測定装置。
【請求項5】
二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定方法において、
充放電停止後の前記二次電池の電圧の時間的変化に基づいて分極電圧を推定する推定ステップと、
前記二次電池に充電電流または放電電流を通じる通電ステップと、
前記通電ステップによって前記二次電池に電流が通じている際の電圧と電流を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された電圧から前記推定ステップによって推定された前記分極電圧の影響を除外して求めた前記二次電池の通電による電圧変化の値と、前記検出ステップによって検出された電流の値とに基づいて前記二次電池の内部抵抗を算出する算出ステップと、
を有することを特徴とする内部抵抗測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101076(P2013−101076A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245624(P2011−245624)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】