説明

内部洗浄装置

【課題】内部空間を有する被洗浄物の内部を3次元的に洗浄することが可能であり、その洗浄作用を向上して、隅々まで的確な洗浄効果が得られるように改良した内部洗浄装置を提供する。
【解決手段】液体流通路17を有し軸回転可能に設けられた回転軸15と、液体流通路17に接続する液体流通路34を有し、回転軸15に略直交する方向に設けられ、回転軸15を中心とする旋回及び軸回転可能に設置された旋回回転軸28と、旋回回転軸28の先端部に設けられたノズル29とを備え、被洗浄物の内部空間内にノズル29を挿入して洗浄を行う内部洗浄装置において、回転軸15に設けた気体流入口36から回転軸15及び旋回回転軸28の液体流通路17,34に沿って気体流通路18,35を設け、被洗浄物の外部から供給された気体をノズル29から噴射される液体と混合して気液混合流として噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクや煙突などの内部空間を有する被洗浄物の内部を洗浄するための内部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内部洗浄装置の従来技術として、洗浄液供給管を中心に旋回可能で、かつ軸回転可能に構成された旋回回転軸に洗浄用のノズルを付設し、そのノズルの部分を被洗浄物の内部空間に挿入して、ノズルを旋回回転軸を中心に旋回させながら前記洗浄液供給管の周りを公転させることにより3次元的に洗浄液を吹付けて洗浄を行う内部洗浄装置が広く知られている(特許文献1、特許文献2)。また、液体と気体とを混合して噴射する気液混合流を用いて洗浄作用を高めた洗浄装置も開発されている(特許文献3)。
【特許文献1】実公昭63−2145号公報
【特許文献2】特公平6−94128号公報
【特許文献3】特開2004−223409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、内部空間を有する被洗浄物の内部を3次元的に洗浄することが可能であり、その洗浄作用を向上して、隅々まで的確な洗浄効果が得られるように改良した内部洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明では、液体流通路を有し軸回転可能に設けられた回転軸と、前記液体流通路に接続する液体流通路を有し、前記回転軸に略直交する方向に設けられ、該回転軸を中心とする旋回及び軸回転可能に設置された旋回回転軸と、該旋回回転軸の先端部に設けられ、該旋回回転軸を中心に旋回しながら該旋回回転軸の液体流通路から供給される液体を噴射するノズルとを備え、被洗浄物の内部空間内に前記ノズルを挿入して被洗浄物の内部を洗浄する内部洗浄装置において、前記回転軸に設けた気体流入口から該回転軸及び前記旋回回転軸の液体流通路に沿って気体流通路を設け、被洗浄物の外部から供給された気体をノズルから噴射される液体と混合して気液混合流を噴射するように構成するという技術手段を採用した。 前記ノズルを被洗浄物の内部空間内に進入退避可能に設け、ノズルをその内部空間内に進入したときに蓋により被洗浄物の開口部を閉塞するように構成してもよい(請求項2)。前記ノズルが回転停止時に被洗浄物の開口部の方向を指向するように構成してもよい(請求項3)。前記ノズルとして前記旋回回転軸に平行な方向に偏平な平ノズルを採用してもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)被洗浄物の内部空間に対して3次元的な吹付け作用が可能である。
(2)洗浄媒体として気液混合流を採用したことから洗浄作用が大幅に向上し、しかもノズルからの吹付け範囲を広くとれるので、被洗浄物の内部空間の隅々まで洗浄作用が的確に行き渡る。
(3)気液混合流を形成する空気等の気体は外部から供給されるので、洗浄滓等の異物が混入することなく良好な洗浄効果が得られるとともに、異物による装置の損傷が回避され、より安定的な洗浄作用が得られる。
(4)ノズルを被洗浄物の内部空間内に進入したときに蓋により被洗浄物の開口部を閉塞するように構成すれば、外部への影響を簡便に遮断することができる。
(5)ノズルとして前記旋回回転軸に平行な方向に偏平な平ノズルを採用すれば、とりわけ効率のよい洗浄作用が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、タンクや煙突などの内部空間を有する被洗浄物の内部洗浄装置として広く適用するができる。洗浄用の液体としては、普通の水や温水のほか、適宜の洗剤を添加したものや、頑固な汚れの場合には研掃材などの粉粒体を混入したものの使用も可能である。また、その洗浄用の液体に混合して気液混合流を形成する気体としては、空気のほか、目的に応じて適宜の気体の使用が可能である。因みに、その気体の供給の仕方に関しては、ノズルから噴射される液体のエジェクタ作用によって気体を吸引するように構成してもよいし、外部から気体を圧送するように構成してもよいし、それらを組合わせたものでもよい。気液混合流を噴射するノズルに関しても、被洗浄物の内部空間に適合し得るものであれば、それ以上の特段の制約はないが、前記旋回回転軸に平行な方向に偏平な平ノズルを採用すれば、効率のよい洗浄作用が得られる。
【実施例】
【0007】
図1及び図2は本発明の一実施例を示したもので、図1は全体構成図、図2は要部拡大図である。図中1は内部洗浄装置であり、支持台2上に配設されている。この支持台2の内部の所定位置にはタンク等の被洗浄物3がコンベヤ4を介して搬入され、所期の内部洗浄が施された後、搬出されるように構成されている。内部洗浄装置1は、支持台2上に設置された支持用フレーム5の筒状案内部6によって摺動可能に案内され、駆動シリンダ7を介して昇降されるように構成されている。駆動シリンダ7の出力軸8の先端部には昇降台9が設置され、この昇降台9に内部洗浄装置1を支持することにより、昇降し得るように構成している。なお、図中10は内部洗浄装置1の昇降動作の円滑化を図るために設置した案内ロッドで、支持用フレーム5の上板11に形成した挿通孔12に挿通した状態で昇降することにより、内部洗浄装置1と駆動シリンダ7との位置関係の変動を防ぐようにしている。
【0008】
内部洗浄装置1は、上端部が固定具13を介して昇降台9に固定された外管14と、その外管14の内部に軸回転可能、すなわち軸線周りに回転可能に支持された回転軸15を有する。図3の部分拡大図に示したように、回転軸15の内部には更に内管16が配設され、この内管16により回転軸15の内部を二分し、内部に洗浄液を供給する液体流通路17を形成するとともに、外部に気体流通路18を形成している。図1及び図2に示したように、回転軸15の上部は固定具13を貫通して上方に延びており、その途中にモータ19から回転力が付与されるように構成されているとともに、その回転状態がプーリ20及びベルト21を介してエンコーダ22に伝えられ、回転角を検出してノズルの停止位置を制御し得るように構成されている。さらに、回転軸15の上端部には、図1に示したようにロータリジョイント23を経由してポンプ24及び洗浄液タンク25が接続されており、前記内管16内の液体流通路17を介して洗浄液が供給されるように構成されている。また、図2に示したように、外管14の上方部には、空気等の気体の流入口26が形成されている。さらに、外管14の下方部には、該外管14が下降した際に前記被洗浄物3の開口部を閉塞する蓋27が付設されている。なお、蓋27を外管14に固定することなく、例えば外管14の下方部に係止部を設置して、その係止部に蓋27を相対移動可能に載置するように構成したり、外管14とは別の支持部材によって蓋27を上下移動可能に支持するように構成したりすることも可能である。そして、それらの場合には、外管14を下降してノズル部分を被洗浄物3の内部空間内へ進入する際に、その過程で蓋27が被洗浄物3の開口部の周辺等に当接して該開口部を閉塞した後においても、更に外管14を下降してノズルの高さを変更したり、ノズルを昇降させながら洗浄したりすることも可能となる。さらに、それらの場合に、蓋27の上方にスプリング等の付勢手段を設けるようにすれば、蓋27の被洗浄物3の開口部に対する閉塞状態をより的確に保持することが可能となる。
【0009】
図3に示したように、回転軸15の下方の先端部には、その回転軸15に略直交する方向に、該回転軸15を中心に旋回し得るとともに軸回転可能な状態に中空状の旋回回転軸28が設けられ、その先端部にノズル29が設けられている。旋回回転軸28の外周部は、回転軸15の先端部に一体的に付設された略箱状の連結支持部材30に設置されたメタル軸受31によって軸回転可能に支持されている。また、旋回回転軸28の内周部は、回転軸15の先端部に一体的に付設された筒状の連結部材32に外嵌して軸回転可能に接続されている。さらに、旋回回転軸28の内部には前記内管16に接続した内管33が配設され、この内管33の内部に液体流通路34、外部に気体流通路35を形成している。そして、本実施例では、外部から供給される空気等の気体は、図2に示した流入口26を介して外管14と回転軸15との間隙に流入し、さらに図3に示したように回転軸15の下方に形成した気体流入口36を介して回転軸15と内管16との間の気体流通路18内に流入して、内管33と連結部材32ないし旋回回転軸28との間の気体流通路35を経由してノズル29へ供給されることになる。なお、気体流入口36の形成位置は回転軸15のどの位置に変更してもよい。また、旋回回転軸28の内側端部にはベベルギヤ37が設けられ、外管14側に設置されたベベルギヤ38と歯合状態にあり、旋回回転軸28が回転軸15を中心として旋回すると、それに伴って旋回回転軸28が軸回転するように構成されている。さらに、外管14の下方の先端部に、前記連結支持部材30との間に若干の間隔を設けて、ベベルギヤ38を被うように張出し部材39を付設し、それらの連結支持部材30と張出し部材39とによってほぼ閉じられた略箱状の空間部を形成して、内部のベベルギヤ37,38の歯合状態を保護するようにしている。因みに、ベベルギヤ37,38の歯車比は、回転軸15の1回転によりノズルの指向方向が少しずつずれるように設定される。また、以上のベベルギヤ37,38の代りにモータによる駆動方式の採用も可能である。なお、図中40はメタル軸受であり、上方の同様のメタル軸受と共に、回転軸15を外管14に対して軸回転すなわちその軸線周りの回転を可能に支持している。
【0010】
上述のように、旋回回転軸28の先端部にはノズル29が設けられており、図3に示したように、本実施例におけるノズル29は、旋回回転軸28の先端部に固着され、内部には前記内管33の内外に形成された液体流通路34と気体流通路35にそれぞれ連通する液体流通路41と気体流通路42を形成している。液体流通路41の先端部には噴射チップ43が設けられ、この噴射チップ43から空間部44へ洗浄液を扁平状に噴射する。図4はノズル29の部分を図3に直交する断面で示した拡大断面図であり、この図4に示したように前記空間部44は連通路45を介して前記気体流通路42に連通しており、噴射チップ43からの洗浄液の噴射に基づくエジェクタ作用も加わって気体が流入し、噴射チップ43からの洗浄液の噴射流の外周部に気体層を形成するとともに気液の混合が徐々に進行されることになる。空間部44を通過した噴射流は、その下流側に形成された流路断面積が2段に徐々に縮小された絞り部46及び更に下流側の扁平状の噴射流路47を経て気液の混合が更に促進され、噴射口48から扁平状の気液混合流としてノズル外へ噴射されることになる。本実施例の場合には、さらに絞り部46の中間部に対しても、前記気体流通路42に連通した連通路49を介して気体を吸引し得る気体供給路50が接続されている。この気体供給路50は、噴射流内の液滴が通路の内壁面に接触するのを防止するためのものであり、絞り部46を通過する噴射流の外周部に空気層が補充され、噴射流の減衰も抑制されることになる。そして、本実施例におけるノズル29では、前記旋回回転軸28に平行な方向に扁平状の噴射流路47を有する平ノズルを採用したので、ノズル29の回転方向に対して幅広い気液混合流が形成されることから、きわめて効率のよい洗浄作用が得られる。
【0011】
しかして、図1に示したように、前記支持台2の内部の所定位置にタンク等の被洗浄物3がコンベヤ4を介して搬入された場合には、先ず駆動シリンダ7を駆動して外管14ごと内部洗浄装置1全体を下降させて、ノズル29の部分を被洗浄物3の内部空間51内へ進入させる。因みに、ノズル29の停止位置を該ノズル29が上方を向いた位置、すなわち被洗浄物3の内部空間51内において開口部の方向を指向するように設定しておけば、ノズル29が被洗浄物3の搬入の邪魔となることもないし、被洗浄物3の内部空間内へ挿入に際してもよりスムーズな挿入が可能である。そして、ノズル29の部分が被洗浄物3の内部空間51に挿入されたら、前記モータ19を駆動して回転軸15を回転するとともに、途中のバルブを開きポンプ24を介して洗浄液タンク25からの洗浄液の高圧供給を開始する。これにより、回転軸15の回転に伴って、旋回回転軸28が回転軸15を中心に旋回を開始するとともに、ベベルギヤ37,38の歯合により旋回回転軸28が軸回転を開始する。したがって、ノズル29は、回転軸15を中心とする公転と旋回回転軸28を中心とする旋回を開始し、液体流通路17,34,41を経て圧送される洗浄液が噴射チップ43から噴射するとともに、その洗浄液の噴射流に対して、気体流入口36から気体流通路18,35,42を経て外部から供給される気体が混合して、扁平状の前記噴射流路47の噴射口48から扁平状の気液混合流が噴射され、被洗浄物3の内部空間51の内面に3次元的に満遍なく吹付けられて、隅々まで的確で効率のよい洗浄が行われることになる。なお、その洗浄の際の洗浄液などは、本実施例では被洗浄物3の下部に形成された排水口52から外部へ流出される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示した全体構成図である。
【図2】同実施例の要部拡大図である。
【図3】同実施例の部分拡大図である。
【図4】ノズル部分を示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1…内部洗浄装置、2…支持台、3…被洗浄物、4…コンベヤ、5…支持用フレーム、6…筒状案内部、7…駆動シリンダ、8…出力軸、9…昇降台、10…案内ロッド、11…上板、12…挿通孔、13…固定具、14…外管、15…回転軸、16…内管、17…液体流通路、18…気体流通路、19…モータ、20…プーリ、21…ベルト、22…エンコーダ、23…ロータリジョイント、24…ポンプ、25…洗浄タンク、26…流入口、27…蓋、28…旋回回転軸、29…ノズル、30…連結支持部材、31…メタル軸受、32…連結部材、33…内管、34…液体流通路、35…気体流通路、36…気体流入口、37,38…ベベルギヤ、39…張出し部材、40…メタル軸受、41…液体流通路、42…気体流通路、43…噴射チップ、44…空間部、45…連通路、46…絞り部、47…噴射流路、48…噴射口、49…連通路、50…気体供給路、51…内部空間、52…排水口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流通路を有し軸回転可能に設けられた回転軸と、前記液体流通路に接続する液体流通路を有し、前記回転軸に略直交する方向に設けられ、該回転軸を中心とする旋回及び軸回転可能に設置された旋回回転軸と、該旋回回転軸の先端部に設けられ、該旋回回転軸を中心に旋回しながら該旋回回転軸の液体流通路から供給される液体を噴射するノズルとを備え、被洗浄物の内部空間内に前記ノズルを挿入して被洗浄物の内部を洗浄する内部洗浄装置において、前記回転軸に設けた気体流入口から該回転軸及び前記旋回回転軸の液体流通路に沿って気体流通路を設け、被洗浄物の外部から供給された気体をノズルから噴射される液体と混合して気液混合流を噴射するように構成したことを特徴とする内部洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルが被洗浄物の内部空間内に進入退避可能に設けられ、ノズルをその内部空間内に進入したときに被洗浄物の開口部を閉塞する蓋を備えた請求項1に記載の内部洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルが回転停止時に被洗浄物の開口部の方向を指向するようにした請求項1又は2に記載の内部洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズルが前記旋回回転軸に平行な方向に偏平な平ノズルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の内部洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−14877(P2007−14877A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198630(P2005−198630)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【Fターム(参考)】