説明

内部電極用導電性ペースト組成物及びそれを含む積層セラミック電子部品

【課題】内部電極層用導電性ペースト組成物及びそれを含む積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】本発明による内部電極層用導電性ペースト組成物は、金属粉末と、上記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末と、を含むことができる。本発明による内部電極用導電性ペースト組成物は、内部電極の焼成収縮温度を高め、内部電極の連結性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電極用導電性ペースト組成物及びそれを含む積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは、金属粉末の焼結収縮を制御できる内部電極用導電性ペースト組成物及びそれを含む積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンデンサ、インダクタ、圧電素子、バリスタ、またはサーミスタ等のセラミック材料を使用する電子部品は、セラミック材料からなるセラミック素体、素体の内部に形成された内部電極層及び上記内部電極層と接続されるようにセラミック本体の表面に設けられた外部電極とを備える。
【0003】
セラミック電子部品の中、積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体層と、一誘電体層を挟んで対向配置される内部電極層と、上記内部電極層に電気的に接続された外部電極とを含む。
【0004】
積層セラミックコンデンサは、小型ながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所によりコンピュータ、PDA、携帯電話等の移動通信装置の部品として広く使用されている。
【0005】
最近では、電気・電子機器産業における高性能化及び軽薄短小化に伴い、電子部品においても小型、高性能及び低コスト化が求められている。特に、CPUの高速化、機器の小型軽量化、デジタル化及び高機能化が進んでおり、積層セラミックコンデンサ(Multi Layer Ceramic Capacitor,以下、「MLCC」)も小型化、薄層化、高容量化、高周波領域における低インピーダンス化等の特性を具現するための研究が活発に行われている。
【0006】
積層セラミックコンデンサは、内部電極用導電性ペーストとセラミックグリーンシートをシート法や印刷法等を用いて積層し、同時焼成することによって製造されることができる。しかし、誘電体層を形成するために、セラミックグリーンシートは約1100℃以上の高温で焼成され、導電性ペーストはより低温で焼結収縮する。これによって、セラミックグリーンシートの焼成時に内部電極層の過焼成を引き起こし、内部電極層が凝集したり途切れ、内部電極層の連結性が低下する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属粉末の焼結収縮を制御できる内部電極用導電性ペースト組成物及びそれを含む積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、金属粉末と、上記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末と、を含む積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物が提供される。
【0009】
上記高融点金属酸化物粉末は、WO、Ta、Nb及びMoOからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0010】
上記高融点金属酸化物粉末は、WO及びNbのうち1種以上を含み、上記高融点金属酸化物粉末の含量は、上記金属粉末100重量部に対して3〜10重量部であることができる。
【0011】
上記高融点金属酸化物粉末はTaを含み、上記高融点金属酸化物粉末の含量は、上記金属粉末100重量部に対して5〜12重量部であることができる。
【0012】
上記高融点金属酸化物粉末はMoOを含み、上記高融点金属酸化物粉末の含量は、上記金属粉末100重量部に対して2〜7重量部であることができる。
【0013】
上記金属粉末は、Ni、Mn、Cr、Co、Al及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0014】
上記金属粉末は、平均粒径が50nm〜400nmであることができる。
【0015】
上記高融点金属酸化物粉末は、平均粒径が10nm〜100nmであることができる。
【0016】
本発明によると、セラミック素体と、上記セラミック素体の内部に形成される内部電極層と、を含み、上記内部電極層の内部には、上記内部電極層を形成する金属粒子よりも融点が高い高融点金属酸化物粉末がトラップされた積層セラミック電子部品が提供される。
【0017】
上記高融点金属酸化物粉末は、内部電極層を形成する金属粒子の界面にトラップされ得る。
【0018】
上記内部電極層の一表面には、上記高融点金属酸化物粉末の一部が還元された高融点金属酸化物層が形成されることができる。
【0019】
上記内部電極層は、金属粉末、及び上記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末を含む導電性ペーストによって形成されることができる。
【0020】
上記内部電極層は、Ni、Mn、Cr、Co、Al及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上の金属を含むことができる。
【0021】
上記高融点金属酸化物粉末は、平均粒径が10nm〜100nmであることができる。
【0022】
上記高融点金属酸化物粉末は、WO、Ta、Nb及びMoOからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0023】
上記セラミック素体及び上記内部電極層は、同時焼成によって形成されることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による内部電極用導電性ペースト組成物は、金属粉末と、上記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末とを含むことができる。
【0025】
本発明による内部電極用導電性ペースト組成物は、内部電極の焼成収縮温度を高め、内部電極の連結性を向上させることができる。
【0026】
本発明による内部電極用導電性ペースト組成物は、金属粉末内に高融点金属酸化物粉末が均一に分散され、約1000℃以上まで金属粉末の焼結が抑制されるようになる。
【0027】
本発明によると、焼成過程の昇温速度を調節すると、内部電極用導電性ペースト組成物における高融点金属酸化物粉末は、金属粉末から離脱せず、金属粉末の粒子境界(grain boundary)にトラップされ得る。これによって、内部電極の凝集現象が抑制され、内部電極の連結性を増加させることができる。
【0028】
また、セラミック電子部品の誘電体層と内部電極層との界面の一領域には一部還元された高融点金属酸化物層が形成されることができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層は、高融点金属酸化物が還元された金属を含むことができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層は、導電体として作用することができる。
【0029】
また、本発明によると、内部電極用導電性ペーストに高融点金属酸化物粉末を含むため、内部電極層内に高融点金属酸化物粉末がトラップされることで内部電極の連結性を向上させ、より薄層化された内部電極層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す概略的な斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿って切断した積層セラミックコンデンサを示す概略的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による内部電極層を概略的に示す一部拡大図である。
【図4a】本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示す模式図である。
【図4b】本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照し、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当該技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさ等は明確な説明のために誇張されることもあり、図面上の同一の符号で表示される要素は同一の要素である。
【0032】
本発明の一実施形態は、セラミック電子部品に関するもので、セラミック材料を使用する電子部品は、コンデンサ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタ等があり、以下では、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す概略的な斜視図であり、図2は、図1のA−A’線に沿って切断した積層セラミックコンデンサを示す概略的な断面図である。
【0034】
図1及び図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックコンデンサは、セラミック素体110、上記セラミック素体の内部に形成された内部電極層121、122、上記セラミック素体110の外表面に形成される外部電極131、132を含むことができる。
【0035】
上記セラミック素体110の形状には特に制限はないが、一般的に直方体形状であることができる。また、そのサイズも特に制限されないが、例えば、0.6mm×0.3mmのサイズにしてもよく、2.2μF以上の高積層及び高容量の積層セラミックコンデンサであってもよい。
【0036】
上記セラミック素体110は、複数の誘電体層111が積層されて形成されることができる。上記セラミック素体110を構成する複数の誘電体層111は焼結された状態であるため、隣接する誘電体層間の境界が視認できない程度に一体化されていてもよい。
【0037】
上記誘電体層111は、セラミック粉末を含むセラミックグリーンシートの焼結によって形成されることができる。
【0038】
上記セラミック粉末は、当業界で通常的に使用されるものであれば特に制限はない。これに制限されるものではないが、例えば、BaTiO系セラミック粉末を含んでもよい。上記BaTiO系セラミック粉末は、これに制限されないが、例えば、BaTiO にCa、Zr等が一部固溶した(Ba1−xCa)TiO、Ba(Ti1−yCa)O、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)OまたはBa(Ti1−yZr)O等が挙げられる。上記セラミック粉末の平均粒径は、これに制限されないが、例えば、1.0μm以下であってもよい。
【0039】
また、上記セラミックグリーンシートは、上記セラミック粉末とともに遷移金属、希土類元素、またはMg、Al等を含んでもよい。
【0040】
上記一誘電体層111の厚さは、積層セラミックコンデンサの容量設計に合わせて適切に変更できる。これに制限されるものではないが、例えば、焼成後、隣接する内部電極層121、122の間に形成された誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよい。
【0041】
上記セラミック素体110の内部には内部電極層121、122が形成されることができる。上記内部電極層121、122は一誘電体層上に形成されて積層され、焼結によって一誘電体層を挟んで上記セラミック素体110の内部に形成されることができる。
【0042】
上記内部電極層は互いに異なる極性を有する第1内部電極層121及び第2内部電極層122を一対にし、誘電体層の積層方向に沿って対向配置されることができる。上記第1及び第2内部電極層121、122の末端は、セラミック素体110の一面に交互に露出されることができる。
【0043】
上記各内部電極層121、122の厚さは用途等によって適切に決定でき、例えば、1.0μm以下であってもよく、または、0.1〜1.0μmの範囲内で選択されてもよい。
【0044】
上記内部電極層121、122は、本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペーストで形成されることができる。本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペーストは、金属粉末と、高融点金属酸化物粉末を含むことができる。これに関するより具体的な事項については後述する。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態による内部電極層121を概略的に示す一部拡大図である。図3を参照すると、本発明の一実施形態による内部電極層121は内部電極層内にトラップ(trap)された高融点金属酸化物粉末22を含むことができる。上記高融点金属酸化物粉末22は内部電極層をなす金属粒子(grain)の界面、即ち、粒界(grain boundary)にトラップされ得る。上記高融点金属酸化物粉末22は内部電極層を形成する金属粉末よりも融点が高いため、金属粉末の焼結過程で金属粒子の界面にトラップされ得る。
【0046】
また、上記内部電極層121の一表面の一領域、即ち、誘電体層111と内部電極層121との界面の一領域には、一部還元された高融点金属酸化物層22aが形成されることができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層22aは高融点金属酸化物が還元された金属を含むことができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層22aによって内部電極層と誘電体層の結合力が強化されるようになる。
【0047】
上記一部還元された高融点金属酸化物層22aは導電体として作用できるため、積層セラミックコンデンサの容量の低下はほとんど起こらない。
【0048】
これは、後述する内部電極用導電性ペースト組成物及び内部電極層の形成過程によってさらに明確になる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、セラミック素体110の外表面には外部電極131、132が形成され、上記外部電極131、132は内部電極層121、122と電気的に接続されることができる。より具体的には、上記セラミック素体110の一面に露出した第1内部電極層121と電気的に接続された第1外部電極131と、上記セラミック素体110の他面に露出した第2内部電極層122と電気的に接続された第2外部電極132で構成されることができる。
【0050】
また、図示されてはいないが、第1及び第2内部電極層はセラミック素体のうち少なくとも1つ以上の面に露出することができる。また、第1及び第2内部電極層はセラミック本体の同一面に露出することができる。
【0051】
上記外部電極131、132は導電材を含む導電性ペーストで形成されることができる。上記導電性ペーストに含まれる導電材は、特に制限されないが、例えば、Ni、Cu、またはこれらの合金を使用することができる。上記外部電極131、132の厚さは用途等によって適切に決定でき、例えば、約10〜50μmであってよい。
【0052】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物について説明する。
【0053】
図4a及び図4bは、本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示す模式図であり、これを参照して説明する。
【0054】
本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペースト組成物は金属粉末21と、上記金属粉末よりも融点が高い高融点金属酸化物粉末22を含むことができる。
【0055】
本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペースト組成物は、内部電極の焼成収縮温度を高め、内部電極の連結性を向上させることができる。
【0056】
上記導電性ペースト組成物に含まれる金属粉末21の種類は、特に制限されないが、例えば、卑金属(base metal)を使用することができる。これに制限されるものではないが、例えば、Ni、Mn、Cr、Co、Alまたはこれらの合金が挙げられ、これらの1種以上を含むことができる。
【0057】
また、上記金属粉末21の平均粒径は特に制限されないが、例えば、400nm以下であってもよい。より具体的に上記金属粉末21の平均粒径は50nm〜400nmであってもよい。
【0058】
上記導電性ペースト組成物に含まれる高融点金属酸化物粉末22としては、上記金属粉末21よりも融点が高いものを使用することができる。これに制限されるものではないが、例えば、上記高融点金属酸化物粉末22は、WO、Ta、Nb,またはMoOであってもよく、これらの1種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
上記高融点金属酸化物粉末22は上記金属粉末21より小さい平均粒径を有してもよい。これに制限されるものではないが、例えば、上記高融点金属酸化物粉末22は平均粒径が10nm〜100nmであってもよい。上記高融点金属酸化物粉末22の上記金属粉末21より平均粒径が小さいものを使用し、上記金属粉末21の間に分布されることができる。
【0060】
上記高融点金属酸化物粉末22は金属粉末21の焼結収縮開始温度を遅らせ、金属粉末22の焼結収縮を抑制することができる。より具体的には、上記高融点金属酸化物粉末22は金属粉末の焼結収縮時における金属粉末との接触を防止することで金属粉末の粒成長を抑制することができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、上記高融点金属酸化物粉末22の含量は上記金属粉末21の100重量部に対して2〜12重量部であることができる。より具体的には、上記高融点金属酸化物粉末22がWOまたはNbを含む場合、上記高融点金属酸化物粉末22の含量は上記金属粉末21の100重量部に対して3〜10重量部であることができる。上記高融点金属酸化物粉末22がTaを含む場合、上記高融点金属酸化物粉末22の含量は上記金属粉末21の100重量部に対して5〜12重量部であることができる。上記高融点金属酸化物粉末22がMoOを含む場合、上記高融点金属酸化物粉末22の含量は上記金属粉末21の100重量部に対して2〜7重量部であることができる。
【0062】
上記高融点金属酸化物粉末22の添加量が極めて少ない場合は、電極の連結性が低下する恐れがあり、上記高融点金属酸化物粉末22の添加量が極めて多い場合は、内部電極層と誘電体層との界面に存在する金属酸化物の量が増え、静電容量を低下させる恐れがある。
【0063】
本発明の一実施形態による内部電極用導電性ペースト組成物は、さらに分散剤、バインダー、溶剤等を含むことができる。
【0064】
上記バインダーは、これに制限されるものではないが、ポリビニルブチラール、セルロース系樹脂等を使用することができる。上記ポリビニルブチラールは接着力が強いため、内部電極用導電性ペーストとセラミックグリーンシートの接着強度を向上させることができる。
【0065】
上記セルロース系樹脂は、椅子型構造を有し、変形が生じた場合でも弾性による回復が速いという特性を有する。セルロース樹脂を含むことにより平坦な印刷面の確保が可能となる。
【0066】
上記溶剤は、特に制限されないが、例えば、ブチルカルビトール、ケロシンまたはテルピネオール系溶剤を使用することができる。上記テルピネオール系溶剤の具体的な種類としては、これに制限されないが、ジヒドロテルピネオール(dihydro terpineol)、ジヒドロテルピニルアセテート等を使用することができる。
【0067】
一般的に、内部電極層用ペースト組成物は、セラミックグリーンシートに印刷され、積層等の過程を経た後、セラミックグリーンシートと同時に焼成されることができる。
【0068】
また、内部電極層として卑金属を使用する場合、大気中で焼成を行うと、内部電極層が酸化されることができる。そのため、セラミックグリーンシートと内部電極層の同時焼成は還元性雰囲気で行われることができる。
【0069】
積層セラミックコンデンサの誘電体層は約1100℃以上の高温でセラミックグリーンシートを焼成することで形成されることができる。内部電極層としてNi等の卑金属を使用する場合は、低温の400℃から酸化が始まり焼結収縮が起こり、1000℃以上で急激に焼成されることができる。内部電極層が急激に焼成されると、内部電極層の過焼成によって電極が凝集したり途切れ、内部電極層の連結性及び容量が低下する恐れがある。また、焼成後、クラックのような積層セラミックコンデンサの内部構造の欠陥が発生する恐れがある。
【0070】
そのため、400〜500℃の比較的低温で焼結が始まる金属粉末の焼結開始温度を最大限に遅らせ、誘電体との収縮率の差を最小限に抑える必要がある。
【0071】
図4a及び図4bは、本発明の一実施形態による内部電極層用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示す模式図である。図4aは、焼成工程の初期を示すもので、金属粉末21の焼結収縮の開始前であり、図4bは、温度上昇により金属粉末21の焼結収縮が進んでいる状態を概略的に示したものである。
【0072】
図4a及び図4bにおいて、セラミック粉末11は焼結過程を経て図2に示す誘電体層111を形成することができる。
【0073】
図4a及び図4bを参照すると、焼成工程の初期段階で金属粉末21が収縮し、高融点金属酸化物粉末22が金属粉末から離脱してセラミック粉末11側に移動するようになる。
【0074】
一般的に、セラミック粉末11が収縮する前に金属粉末が焼結されて内部電極層を形成し、セラミック粉末が収縮する過程において内部電極層が凝集し、内部電極の連結性が低下する恐れがある。
【0075】
しかし、本発明の一実施形態に従い、焼成温度が金属粉末21より高い微粒の高融点金属酸化物22を金属粉末21内に均一に分散させると、約1000℃以上まで金属粉末21の焼結が抑制されるようになる。約1000℃まで金属粉末21の焼結が最大限に抑制され、セラミック粉末11の焼結が始まるようになる。
【0076】
セラミック粉末11の緻密化が進むと、内部電極層も緻密化が始まり、急速に焼結が行われる。このとき、昇温速度を調節すると、高融点金属酸化物粉末22が金属粉末から離脱せず、図3に示したように、金属粉末21の粒子境界(grain boundary)にトラップされて金属粉末21の粒成長を妨げることができる。これにより、内部電極の凝集現象が抑制され、内部電極の連結性を増加させることができる。
【0077】
また、高融点金属酸化物粉末22の一部は内部電極層の表面に押し出され、誘電体層111と内部電極層121との界面に少量分布することがある。しかし、その頻度が少ないため誘電特性を低下させないことができる。また、高融点金属酸化物が誘電体層111と内部電極層121との界面に存在するようになっても、電極連結性に優れているため、有効電極面積がかえって増加することがある。
【0078】
また、還元雰囲気で焼成する場合、還元雰囲気を調節することによって、界面に存在する高融点金属酸化物粉末22の一部は金属に還元され、一部還元された高融点金属酸化物層22aを形成することができる。上記高融点金属酸化物粉末22の金属に還元された形態は、W、Nb、Ta、またはMo等の金属であってもよい。上記一部還元された高融点金属酸化物層22aは、W、Nb、Ta、またはMo等の金属を含んでもよい。
【0079】
一部還元された高融点金属酸化物層22aは上記金属の含量比によって導電体として作用でき、高融点金属酸化物粉末の含量を調節すると、積層セラミックコンデンサの容量の低下はほとんど起こらない。
【0080】
近年、積層セラミックコンデンサの小型化及び軽量化により、内部電極層の薄層化も一層進んできている。薄層の内部電極層を形成するために、さらに微粒の金属粉末を使用できるが、このような場合、金属粉末の焼結収縮を制御しにくく、内部電極の連結性を確保することが困難である。しかし、本発明の一実施形態によると、上述したように、内部電極用導電性ペーストに高融点金属酸化物粉末を含むため、内部電極を形成する金属粉末の焼結収縮の抑制効果を得ることができる。また、上記高融点金属酸化物粉末は、内部電極層内にトラップされることで内部電極の連結性を向上させ、より薄層化された内部電極層を形成することができる。
【0081】
以下、本発明の一実施例による積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
【0082】
本発明の一実施例に従い、複数のセラミックグリーンシートを準備することができる。上記セラミックグリーンシートはセラミック粉末、バインダー、溶剤等を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法を用いて数μmの厚さを有するシート(sheet)型に製作することができる。上記セラミックグリーンシートはその後焼結され、図2に示したように、一誘電体層111を形成することができる。
【0083】
その次に、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成することができる。上記内部電極パターンはスクリーン印刷法またはグラビア印刷法により形成されることができる。
【0084】
上記内部電極用導電性ペースト組成物は、本発明の一実施形態によるものを使用することができ、具体的な成分及び含量は、上述した通りである。
【0085】
その後、上記複数のセラミックグリーンシートを積層し、積層方向から加圧することで、積層されたセラミックグリーンシートと内部電極層ペーストを互いに圧着させることができる。このようにして、セラミックグリーンシートと内部電極層ペーストが交互に積層されたセラミック積層体を製造することができる。
【0086】
その次に、セラミック積層体を1つのコンデンサに対応する領域毎に切断してチップ化することができる。このとき、内部電極パターンの一端が側面に交互に露出するように切断することができる。その後、チップ化した積層体を焼成してセラミック素体を製造することができる。上述したように、上記焼成工程は還元雰囲気で行われることができる。また、昇温速度を調節することで上記焼成工程を行うことができる。これに制限されないが、上記昇温速度は30℃/60s〜50℃/60sであってもよい。
【0087】
次いで、セラミック素体の側面を覆い、セラミック素体の側面に露出した内部電極層と電気的に接続されるように外部電極を形成することができる。その後、外部電極の表面にニッケル、錫などのメッキ処理を行うことができる。
【0088】
上述したように、内部電極層121の粒子境界(grain boundary)に高融点金属酸化物粉末22がトラップされ、これによって、内部電極層の連結性が向上するようになる。
【0089】
また、誘電体層111と内部電極層121との界面の一領域には、一部還元された高融点金属酸化物層22aが形成されることができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層22aは高融点金属酸化物が金属に還元された形態を含むことができる。上記一部還元された高融点金属酸化物層22aは導電体として作用できるため、積層セラミックコンデンサの容量の低下はほとんど起こらない。
【0090】
本発明の一実施例によって内部電極用導電性ペースト組成物を製造し、これを用いて積層セラミックコンデンサを製造した。上記導電性ペースト組成物は金属粉末としてニッケル粉末を用い、高融点金属酸化物の具体的な種類及びその含量は下記の表1のようにした。
【0091】
[評価]
積層セラミックコンデンサの電極連結性は、内部電極層の一断面において内部電極の全長に対して空隙を除いた内部電極の長さの比を計算した値であり、下記の基準に評価し、下記の表1に示した。
◎:非常に良好(電極連結性が85%以上)
○:良好(電極連結性が75%以上〜85%未満)
×:不良(電極連結性が75%未満)
【0092】
積層セラミックコンデンサの電気的特性として、目標とする容量、DFとBDV、IR、加速寿命等の耐電圧特性が具現されるか否かを評価した。電気的特性は100個のチップに対して測定し、基準に適合するチップの数によって下記の基準に評価し、下記の表1に示した。
◎:非常に良好(基準に適合するチップ数:85個以上)
○:良好(基準に適合するチップ数:75個以上〜85個未満)
×:不良(基準に適合するチップ数:75個未満)
【0093】
【表1】

【0094】
上記表1を参照すると、高融点金属酸化物粉末の種類によって含量を調節したものであり、上記高融点金属酸化物粉末がWOまたはNbの場合、その含量は、金属粉末100重量部に対して3〜10重量部であると、75%以上の電極連結性が得られ、電気的特性に優れていることが確認できた。また、高融点金属酸化物粉末がTaの場合、その含量は、金属粉末100重量部に対して5〜12重量部であると、75%以上の電極連結性が得られ、電気的特性に優れていることが確認できた。上記高融点金属酸化物粉末がMoOの場合、その含量は、上記金属粉末100重量部に対して2〜7重量部であると、75%以上の電極連結性が得られ、電気的特性に優れていることが確認できた。
【0095】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付の請求範囲によって限定しようとするものである。従って、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で、当該技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0096】
110:セラミック素体
111:誘電体層
121、122:内部電極層
131、132:外部電極
11:セラミック粉末
21:金属粉末
22:高融点金属酸化物粉末
22a:一部還元された高融点金属酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と、
前記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末と、
を含む積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記高融点金属酸化物粉末は、WO、Ta、Nb及びMoOからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記高融点金属酸化物粉末は、WO及びNbのうち1種以上を含み、前記高融点金属酸化物粉末の含量は、前記金属粉末100重量部に対して3〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記高融点金属酸化物粉末はTaを含み、前記高融点金属酸化物粉末の含量は、前記金属粉末100重量部に対して5〜12重量部であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記高融点金属酸化物粉末はMoOを含み、前記高融点金属酸化物粉末の含量は、前記金属粉末100重量部に対して2〜7重量部であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記金属粉末は、Ni、Mn、Cr、Co、Al及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項7】
前記金属粉末は、平均粒径が50nm〜400nmであることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項8】
前記高融点金属酸化物粉末は、平均粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の内部電極用導電性ペースト組成物。
【請求項9】
セラミック素体と、
前記セラミック素体の内部に形成される内部電極層と、を含み、
前記内部電極層の内部には、前記内部電極層を形成する金属粒子よりも融点が高い高融点金属酸化物粉末がトラップされた積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記高融点金属酸化物粉末は、内部電極層を形成する金属粒子の界面にトラップされたことを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記内部電極層の一表面には、前記高融点金属酸化物粉末の一部が還元された高融点金属酸化物層が形成された請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記内部電極層は、金属粉末、及び前記金属粉末よりも平均粒径が小さく、融点が高い高融点金属酸化物粉末を含む導電性ペーストによって形成されることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記内部電極層は、Ni、Mn、Cr、Co、Al及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上の金属を含むことを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記高融点金属酸化物粉末は、平均粒径が10nm〜100nmであることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
前記高融点金属酸化物粉末は、WO、Ta、Nb及びMoOからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記セラミック素体及び前記内部電極層は、同時焼成によって形成されることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2013−16454(P2013−16454A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244173(P2011−244173)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】