説明

円形状機械部品の測定装置および測定方法

【課題】 測定精度の悪化を防止し、測定対象を正確に拘束し固定することなく簡易に測定できると共に、部品交換に要する工数等の低減を図ることができる円形状機械部品の測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】 円形状機械部品Wにおける円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計2を用い、支持された円形状機械部品Wの形状測定対象に対してレーザ変位計2を対向させて、このレーザ変位計2に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる。演算手段4は、レーザ変位計2で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、軸受のころ等の端面や周面に円形状部分を持つ円形状機械部品の測定装置および測定方法に関し、円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置等を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、軸受用ころの形状を計測するために、画像処理装置に計測対象となる形状部分を映し出し解析する手法(特許文献1)や、対象物を回転テーブルで回転させプローブや変位計でその変化を測定し算出する手法(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−184806号公報
【特許文献2】特開平7−83652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記画像処理装置を用いた従来技術で軸受用ころの直径、中心位置を測定する場合、ころにクーラント等が付着することで測定精度が悪化する。また、測定対象を正確に拘束できる固定装置等が必要になる。
特許文献2の従来技術では、接触式のプローブや変位計で測定対象の形状を測定するが、プローブ等を長期間使用することで、接点が摩耗する。これにより、測定精度の悪化、部品交換工数が問題となる。
【0005】
この発明の目的は、測定精度の悪化を防止し、測定対象を正確に拘束し固定することなく簡易に測定できると共に、部品交換に要する工数等の低減を図ることができる円形状機械部品の測定装置および測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の円形状機械部品の測定装置は、端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定装置であって、前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計と、前記被測定物支持手段に支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる複数箇所測定手段と、この複数箇所測定手段により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によると、被測定物支持手段に支持された円形状機械部品の形状測定対象に対してレーザ変位計を対向させる。複数箇所測定手段は、前記レーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる。次に、演算手段は、測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換する。演算手段は、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する。この場合において、円の一般式から最小二乗法を用いて、前記円形状部分の直径および中心位置を算出する。
このように2箇所以上の幅寸法を測定し、近似円を求めて算出するため、円形状機械部品の円形状部分の直径および中心位置を算出することができる。円形状機械部品にクーラント等が付着した場合であっても、レーザ変位計のレーザの透過性を活かし、測定精度が悪化することなくより安定した測定を行える。また、複数箇所測定手段は、レーザ変位計に任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる。このため、円形状機械部品を正確に拘束、固定する必要がなく簡易に測定できる。さらに、非接触のレーザ変位計を用いるため、測定部品の接点等の摩耗を未然に防止し、部品交換に要する工数低減を図ることができる。
【0008】
前記複数箇所測定手段は、レーザ変位計を、被測定物支持手段に支持された円形状機械部品に対して相対的に移動させる移動機構であっても良い。この場合、移動機構によりレーザ変位計を位置決め制御することで、前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を容易に測定することができる。また、測定箇所を任意に増やすことが可能となり、これにより、算出する円形状部分の直径および中心位置の精度を高めることができる。
【0009】
前記複数箇所測定手段は、前記弦となる各箇所をそれぞれ測定可能なように、複数のレーザ変位計を固定設置した手段であっても良い。この場合、レーザ変位計を円形状機械部品に対して相対的に移動させる機構が不要となり、その分、装置全体の小形化を図ることができる。レーザ変位計を位置決め制御する必要がないため、制御系を簡単化でき、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0010】
前記レーザ変位計は、帯状に広げられたレーザ光、または帯状に走査されるレーザ光を前記円形状機械部品の前記形状測定対象に照射するラインレーザ変位計であっても良い。この場合、帯状に広げられたレーザ光または帯状に走査されるレーザ光が、形状測定対象の表面で反射する。この反射光をラインレーザ変位計の検出素子上で検出し、演算手段により前記円形状部分の直径および中心位置を算出する。
【0011】
前記円形状機械部品は軸受用ころであり、前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの端面の前記円形状部分を成す円形凹部からなるヌスミの弦となる箇所の幅寸法を測定するものであっても良い。
前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの両端面のうち、いずれか一方の端面または両端面の前記円形状部分を成すヌスミの弦となる箇所の幅寸法を測定するものであっても良い。
前記円形状機械部品は軸受用ころであり、前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの転走面の前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定するものであっても良い。
【0012】
この発明の円形状機械部品の測定方法は、端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定方法であって、前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する支持過程と、前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計を用い、前記支持過程で支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる測定過程と、この測定過程により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算過程とを有することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、円形状機械部品にクーラント等が付着した場合であっても、レーザ変位計のレーザの透過性を活かし、測定精度が悪化することなくより安定した測定を行える。測定過程では、レーザ変位計に任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させるため、円形状機械部品を正確に拘束、固定する必要がなく簡易に測定できる。非接触のレーザ変位計を用いるため、測定部品の接点等の摩耗を未然に防止し、部品交換に要する工数低減を図れる。
【0014】
前記測定過程は、レーザ変位計を、支持過程で支持された円形状機械部品に対して相対的に移動させる移動過程を含むものであっても良い。この場合、1個のレーザ変位計で前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の円形状機械部品の測定装置は、端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定装置であって、前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計と、前記被測定物支持手段に支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる複数箇所測定手段と、この複数箇所測定手段により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算手段とを有するため、測定精度の悪化を防止し、測定対象を正確に拘束し固定することなく簡易に測定できると共に、部品交換に要する工数等の低減を図ることができる。
【0016】
この発明の円形状機械部品の測定方法は、端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定方法であって、前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する支持過程と、前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計を用い、前記支持過程で支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる測定過程と、この測定過程により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算過程とを有するため、測定精度の悪化を防止し、測定対象を正確に拘束し固定することなく簡易に測定できると共に、部品交換に要する工数等の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係る円形状機械部品の測定装置の正面図、(B)は同測定装置の側面図である。
【図2】同測定装置のレーザ変位計を、軸受用ころの一端面に対向させるように任意の測定位置に配置した測定装置の要部の拡大正面図である。
【図3】(A)は軸受用ころのヌスミの幅寸法を測定する状態を表す同ころの側面図、(B)は図3(A)のA−A線断面図である。
【図4】同レーザ変位計を次の任意の測定位置に移動させた測定装置の要部の拡大正面図である。
【図5】(A)は軸受用ころのヌスミの2箇所目の幅寸法を測定する状態を表す同ころの側面図、(B)は2つの幅寸法を、直交座標系に変換した状態を説明する図である。
【図6】円の一般式を説明する図である。
【図7】データ点の座標系への変換を示す説明図である。
【図8】測定No.とヌスミ径との関係を、通常状態とクーラント付着状態とで比較して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この発明の実施形態に係る円形状機械部品として、例えば、軸受用ころが適用される。図1〜図6の例では、前記軸受用ころの端面におけるヌスミの直径および中心位置を測定する測定装置について説明する。ただし、円形状機械部品は、軸受用ころに限定されるものではなく、端面または外周面に円形状部分を持つ、内外輪、保持器、軸、ピン等、種々の機械部品を適用しても良い。以下の説明は、円形状機械部品の測定方法の説明をも含む。
【0019】
図1に示すように、円形状機械部品の測定装置は、被測定物支持手段1と、レーザ変位計2と、複数箇所測定手段3と、演算手段4及び制御手段5を含む制御装置5Aとを備えている。これらのうち被測定物支持手段1は、円形状機械部品Wを所定の位置および姿勢に支持するものであり、V溝ブロックによって実現される。同V溝ブロックは後述の移動機構の支持フレーム6に固定され、円形状機械部品Wの外周面Waが、前記V溝ブロックのV面に載置支持可能である。
前記レーザ変位計2は、円形状機械部品Wにおける前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能な変位計である。この例のレーザ変位計2は、帯状に広げられたレーザ光、または帯状に走査されるレーザ光を円形状機械部品Wの形状測定対象に照射し、反射光によって測定対象の形状変化部間の幅寸法を測定可能なラインレーザ変位計であり、2次元レーザ変位計とも呼ばれる。
【0020】
前記複数箇所測定手段3は、被測定物支持手段1に支持された円形状機械部品Wの形状測定対象に対してレーザ変位計2を対向させて、このレーザ変位計2に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法、図5の例では2箇所の幅寸法W1,W2を測定させる。図1の例では、複数箇所測定手段3は、レーザ変位計2を、非測定物支持手段1に支持された円形状機械部品Wに対して相対的に移動させる移動機構により実現される。
【0021】
この移動機構は、上下方向に伸び固定される支持フレーム6と、この支持フレーム6の一側面にスライド機構を介して、矢符A1にて示す上下方向に移動可能なスライド部材7とを有する。
制御装置5Aは、制御手段5と、演算手段4と、記憶手段Maとを有する。制御装置5Aは、例えばマイクロコンピュータとその制御プログラム、および電子回路などにより構成される。制御手段5は、前記移動機構を駆動制御する移動機構制御部5aと、レーザ変位計2から形状測定対象にレーザ光を照射して測定するタイミングを制御する変位計制御部5bとを有する。移動機構制御部5aが図示外の駆動回路を介して駆動源を駆動制御することで、スライド部材7が支持フレーム6に対して上下方向に移動し位置決めされる。このスライド部材7にレーザ変位計2が取付けられ、移動機構制御部5aの駆動制御により、被測定物支持手段1に支持された円形状機械部品Wの一端面にレーザ変位計2を対向させるようになっている。
【0022】
前記変位計制御部5bは、例えば、前記駆動源からの信号に基づいてレーザ変位計2が所定の測定位置にあるか否かを判断し、測定位置にあるとの判断でレーザ光を照射させ測定を行う。記憶手段Maには、レーザ変位計2のX−Y座標におけるY方向の位置と対応して、レーザ変位計2による各位置の測定値が記憶される。前記Y方向はレーザ変位計2の移動方向である。X−Y座標のX方向は前記移動方向およびころ軸方向にそれぞれ直交する方向である。
前記制御手段5および駆動源を省略し、スライド部材7を手動により上下方向に移動して位置決めすると共に、レーザ変位計2を手動操作しても良い。
【0023】
前記演算手段4は入出力インターフェース等を介して制御手段5に電気的に接続される。この演算手段4は、複数箇所測定手段3によりレーザ変位計2で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換する。なお、レーザ変位計2で幅寸法を測定するときに、その幅の中央位置は定まっているため、幅寸法から両端2点の座標点に変換可能である。演算手段4は、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する(後述する)。具体的にこの例では、前記円形状部分は、軸受用ころの端面のヌスミの弦となる箇所である。レーザ変位計2で測定された各箇所の幅寸法は、記憶手段Maに各箇所のY方向位置と関連付けられて一時的に記憶され、演算手段4による演算時に読み出される。演算手段4により算出された前記円形状部分の直径および中心位置は、図示外の入出力インターフェース、駆動回路等を介してプリンタやディスプレイ等の出力手段に出力される。
【0024】
円形状機械部品Wの計測順序について説明する。
(1)図2に示すように、前記移動機構により、レーザ変位計2を、軸受用ころの一端面Wbに対向させるように任意の測定位置Ps1に配置する。
(2)図3に示すように、前記測定位置Ps1に配置したレーザ変位計2により、ヌスミNSの弦となる箇所の幅寸法W2を測定する。
(3)図4に示すように、移動機構により、レーザ変位計2を次の任意の測定位置P2に移動させる。
(4)図5(A)に示すように、前記測定位置Ps2にセットしたレーザ変位計2により、ヌスミの弦となる箇所の幅寸法W1を測定する。
(5)図5(B)に示すように、2つの幅寸法W1,W2を、直交座標系いわゆるX−Y座標系における各両端2点の座標点P0〜P3に変換する。
(6)その後、円の最小二乗法を用い、形状測定対象となる円形状部分の直径および中心位置を求める。
なお、測定箇所が2箇所以上の場合は、上記(3)、(4)を繰返し行う。
【0025】
前記円形状部分の直径および中心位置を算出する算出方法について説明する。
【数1】









このように、2箇所以上の幅寸法を測定し、近似円を求めて算出するため、円形状機械部品の円形状部分の直径および中心位置を算出することができる。
【0026】
下表1および図8は、軸受用ころの端面が乾燥した通常状態と、端面等にクーラントを付着させたクーラント付着状態とで、それぞれ30回繰返して幅寸法を測定した測定結果である。この測定試験で用いた軸受用ころは、評価基準として、ヌスミ直径の狙い径を18.75mm、上限公差を0.5mm、下限公差を−0.5mmとした。またヌスミ深さを0.347mmとした。レーザ変位計2の基準側測定位置Ps1から前進側測定位置Ps2までのY方向のセンサシフト量を5mmとした。
【0027】
ここで、下表1の簡易式、論理式について図7と共に説明する。
図7は、データ点の座標系への変換を示す説明図である。
【数2】


【数3】

【0028】
【表1】



【0029】
図8の丸印で表記した測定箇所は通常状態での測定結果であり、同図8の四角印で表記した測定箇所はクーラント付着状態での測定結果である。各回の測定に際し、基準側測定位置Ps1および前進側測定位置Ps2それぞれの位置での幅寸法を測定する。なお、この測定試験のクーラントとして、ダイカトール GIA(粘度12)を用いた。また、前進側測定位置Ps2を、ころの軸中心より約9mm離れた位置とした。
従来の画像処理装置を使用した手法では、円形状機械部品にクーラントが付着した場合に測定精度が悪化するが、この発明の測定試験によると、表1および図8に示すように、前記通常状態とクーラント付着状態とで差異0.05mm以下での測定が可能である。
【0030】
以上説明した円形状機械部品の測定装置によると、円形状機械部品Wにクーラント等が付着した場合であっても、レーザ変位計2のレーザの透過性を活かし、測定精度が悪化することなくより安定した測定を行える。
この測定装置によると、両端面のヌスミ直径が異なる非対称ころの軸受への組込み方向を自動的に選別できる。これにより軸受用ころの組込み不良を未然に防止し、工数低減を図ることが可能となる。また、複数箇所測定手段3は、レーザ変位計2に任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる。このため、円形状機械部品Wを正確に拘束、固定する必要がなく簡易に測定できる。さらに、非接触のレーザ変位計2を用いるため、測定部品の摩耗を未然に防止し、部品交換に要する工数低減を図ることができる。
【0031】
前記複数箇所測定手段3は、レーザ変位計2を、被測定物支持手段1に支持された円形状機械部品Wに対して相対的に移動させる移動機構であるため、この移動機構によりレーザ変位計2を位置決め制御することで、弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を容易に測定することができる。また、測定箇所を任意に増やすことが可能となり、これにより、算出する円形状部分の直径および中心位置の精度を高めることができる。
【0032】
移動機構は、固定されたレーザ変位計2に対して、被測定物支持手段1に支持された円形状機械部品Wを移動させる機構であっても良い。この場合、レーザ変位計2のケーブル類の干渉、屈曲等を考慮する必要がなくこのケーブル類を固定させて容易に取回すことができる。
図1の測定装置のうち前記移動機構および駆動源を省略し、複数箇所測定手段3として、前記弦となる各箇所をそれぞれ測定可能なように、複数のレーザ変位計2を固定設置した手段であっても良い。この場合、レーザ変位計2を移動させる移動機構が不要となる分、装置全体の小形化を図ることができる。レーザ変位計2を位置決め制御する必要がないため、制御系を簡単化でき、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
前記ラインレーザ変位計の代わりに、発光素子と光位置検出素子とを組み合わせた一般的なレーザ変位計を用いても良い。この場合、弦となる箇所の幅寸法をこのレーザ変位計で測定するため、この弦となる箇所の幅方向つまりX方向に移動させる機構を追加する必要がある。
【0034】
図1の例では、軸受用ころの一方の端面のみ幅寸法を測定しているが、軸受用ころの両端面の幅寸法を測定しても良い。他の例として、レーザ変位計は、軸受用ころの転走面の前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定するものであっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1…被測定物支持手段
2…レーザ変位計
3…複数箇所測定手段
4…演算手段
W…円形状機械部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定装置であって、
前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、
前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計と、
前記被測定物支持手段に支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる複数箇所測定手段と、
この複数箇所測定手段により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする円形状機械部品の測定装置。
【請求項2】
請求項1において、前記複数箇所測定手段は、レーザ変位計を、被測定物支持手段に支持された円形状機械部品に対して相対的に移動させる移動機構である円形状機械部品の測定装置。
【請求項3】
請求項1において、前記複数箇所測定手段は、前記弦となる各箇所をそれぞれ測定可能なように、複数のレーザ変位計を固定設置した手段である円形状機械部品の測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記レーザ変位計は、帯状に広げられたレーザ光、または帯状に走査されるレーザ光を前記円形状機械部品の前記形状測定対象に照射するラインレーザ変位計である円形状機械部品の測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記円形状機械部品は軸受用ころであり、前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの端面の前記円形状部分を成す円形凹部からなるヌスミの弦となる箇所の幅寸法を測定する円形状機械部品の測定装置。
【請求項6】
請求項5において、前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの両端面のうち、いずれか一方の端面または両端面の前記円形状部分を成すヌスミの弦となる箇所の幅寸法を測定する円形状機械部品の測定装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記円形状機械部品は軸受用ころであり、前記レーザ変位計は、前記軸受用ころの転走面の前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定する円形状機械部品の測定装置。
【請求項8】
端面または外周面に円形状部分を持つ円形状機械部品における形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を測定する測定方法であって、
前記円形状機械部品を所定の位置および姿勢に支持する支持過程と、
前記円形状機械部品における前記円形状部分を成す円の弦となる箇所の幅寸法を測定可能なレーザ変位計を用い、前記支持過程で支持された前記円形状機械部品の前記形状測定対象に対して前記レーザ変位計を対向させて、このレーザ変位計に、それぞれ前記弦となる任意の2箇所以上の箇所の幅寸法を測定させる測定過程と、
この測定過程により前記レーザ変位計で測定された前記任意の2箇所以上の各箇所の幅寸法を、直交座標系における各両端2点の座標点に変換し、これら各座標点から算出される近似円から、形状測定対象となる前記円形状部分の直径および中心位置を算出する演算過程と、
を有することを特徴とする円形状機械部品の測定方法。
【請求項9】
請求項8において、前記測定過程は、レーザ変位計を、支持過程で支持された円形状機械部品に対して相対的に移動させる移動過程を含む円形状機械部品の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−83248(P2012−83248A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230362(P2010−230362)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】