説明

円筒外表面の加工方法およびパターンシートの製造方法

【課題】本発明は、フォトレジストの膜厚を略均一にすることで、良好なパターン形状を円筒状の外表面に形成することができる円筒外表面の加工方法およびパターンシートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ワーク3の円筒状の外表面3aに凹凸パターンを形成する円筒外表面の加工方法であって、液槽2内の塗布液1中にワーク3を浸漬させる浸漬工程と、ワーク3を中心軸CA回りに回転させながら引き上げる取出工程と、ワーク3の外表面3aに塗布された塗布液1を乾燥させてフォトレジスト層5を形成する乾燥工程と、フォトレジスト層5に光を照射することで凹部パターンを形成する光照射工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の外表面に微細なパターンを形成するための円筒外表面の加工方法と、この方法で加工されたスタンパロールを用いたパターンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、1m幅以上の大面積のシート表面に微細なパターンを継ぎ目なく形成する方法として、所望のパターン形状が円筒状の外表面に形成されたスタンパロールを製作し、このスタンパロールにシートを巻き付けつつ走行させることにより、走行するシートにパターン形状を連続的に転写させる方法がある。そして、この方法に用いられるスタンパロールの外表面の加工方法としては、従来、スタンパロールの外表面に光吸収剤を混入したフォトレジストを塗布した後、YAGレーザ照射ヘッドからのレーザ光によりフォトレジストを除去し、その除去した部分にメッキ層を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、この技術では、スタンパロールを水平方向に沿った軸回りで回転させ、この回転させたスタンパロールの外表面に、スプレーガンによって光吸収剤を混入した樹脂溶剤を吹き付けて塗布している。
【0004】
また、特許文献2には、熱反応基材からなる円柱状の加工対象物に対してレーザ光を照射することで微細な凹凸を形成することが記載されているが、加工対象物にフォトレジストを塗布することについては記載されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−156492号公報
【特許文献2】特開2007−216263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す従来技術では、スタンパロールの外表面に塗布される樹脂溶剤がスプレーガンで吹き付けられた順に乾燥していくので、フォトレジストの膜厚にムラがでるといった問題があった。そして、この問題が発生すると、スタンパロールの外表面にパターン形状を良好に形成することができなくなる可能性があった。特に、サブミクロンオーダーの凹凸パターンを高精度に形成するには、フォトレジストの膜厚を非常に薄くしなければならず、このような薄いフォトレジストの膜厚にムラが生じると、パターン形状の乱れが顕著に生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、フォトレジスト層を略均一な厚さに形成することで、良好なパターン形状を円筒状の外表面に形成することができる円筒外表面の加工方法およびパターンシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明は、円筒状の外表面を有するワークの外表面に凹凸パターンを形成する円筒外表面の加工方法であって、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を構成する化合物を有する塗布液を入れた液槽に、前記ワークを中心軸が鉛直方向に沿うように入れて、塗布液中に浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程の後、ワークを中心軸回りに回転させながら引き上げる取出工程と、前記ワークの外表面に塗布された塗布液を乾燥させて前記フォトレジスト層を形成する乾燥工程と、前記フォトレジスト層に光を照射することで凹部パターンを形成する光照射工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、浸漬工程においてワークを液槽内の塗布液中に浸けることにより、ワークの外表面全体に塗布液が塗布される。そのため、取出工程においてワークを液槽から取り出した後は、ワークの外表面全体に塗布された塗布液を略同時に乾燥させることができるので、従来のように乾燥が部分的に順次行われていく方法に比べ、フォトレジスト層を略均一な厚さに形成することができる。さらに、取出工程においてワークを回転させながら引き上げることにより、液槽から取り出したワークの外表面を伝って流れ落ちようとする塗布液に遠心力がかかるので、この遠心力が抵抗となって塗布液が下方に流れ難くなる。そのため、重力の影響によって塗布液の厚さがワークの上部から下部に向けて徐々に厚くなってしまうことを抑えることができる。
【0010】
また、本発明では、前記乾燥工程において、前記取出工程に引き続いてワークを回転させることでワーク上の塗布液を乾燥させてもよい。
【0011】
これによれば、取出工程の後に引き続きワークを回転させることで塗布液を乾燥させるので、前述した重力の影響による塗布液の厚さのムラをより抑制することができるとともに、塗布液を迅速に乾燥させることができる。
【0012】
また、本発明では、前記塗布液が、前記フォトレジスト層を構成する化合物を有機溶剤に溶解してなるものであってもよい。これによれば、塗布液を早く乾燥させることができるので、重力による影響をより受け難くなり、乾燥中に塗布液が垂れてしまうことを抑制できる。なお、前記塗布液の粘度は、0.5〜20mPa・sの範囲内で設定することができる。
【0013】
また、本発明では、前記光照射工程において、前記ワークの外表面が露出するまで光を照射して前記フォトレジスト層を除去してもよい。
【0014】
また、本発明では、前記ワークの外表面と前記フォトレジスト層の外表面とに金属材料を成膜させてからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0015】
これによれば、金属によって、円筒状の外表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0016】
また、本発明では、前記ワークをメッキ槽に入れて、露出した前記ワークの外表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0017】
これによれば、メッキ膜によって、円筒状の外表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0018】
また、本発明では、前記ワークの外表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面にエッチングによる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0019】
これによれば、エッチングにより、円筒状の外表面に良好な凹凸パターンを形成することができる。
【0020】
また、本発明では、前記ワークの外表面と前記フォトレジスト層の外表面とに連続して金属材料を成膜することで、ワークの外表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに設けてもよい。
【0021】
これによれば、フォトレジスト層を残した状態のワークの外表面全体に金属材料を成膜させるだけで、円筒状の外表面に金属材料からなる凹凸パターンを良好に形成することができる。また、この方法では、金属材料の成膜後にフォトレジスト層を除去する必要がないので、フォトレジスト層を除去するための設備等が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0022】
また、本発明では、前記光照射工程において、前記ワークの中心軸回りにワークまたは光を回転させながら、前記中心軸に沿ってワークまたは光を移動させることで、ワークの外表面に螺旋状の凹部パターンを形成してもよい。これによれば、ワークの外表面全体に亘って凹部パターンを連続して形成できるので、ヘッドを断続的に軸方向へ動かすことでロール径1周分の加工を軸方向に繰り返し行う方法に比べ、ヘッド等を止める無駄を無くして、加工時間を短縮することができる。
【0023】
なお、本発明は、前記凹部パターンの幅が1μm以下である場合に特に有効である。すなわち、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層に光を照射することで形成される凹部パターンを利用することで、1μm以下、例えばサブミクロンオーダーの幅の凹部パターンを良好に形成することができる。
【0024】
また、前述した各加工方法により円筒状の外表面に凹凸パターンが形成されたスタンパロールを、パターンシートの製造方法に使用してもよい。すなわち、前述した各加工方法で凹凸パターンが形成されたスタンパロールに、走行するシートを巻き付けて型付けすることにより、走行するシートに凹凸パターンを連続的に形成してもよい。これによれば、スタンパロールの表面に形成された例えばサブミクロンオーダーの凹凸パターンをシートに転写させることができ、サブミクロンオーダーの凹凸パターンを有するパターンシートを良好かつ簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ワークを液槽に浸けた後回転させながら引き上げることで、ワーク上の塗布液が略同時に乾燥されるとともに遠心力によって略均一の厚さになるので、フォトレジストの膜厚を略均一に形成して良好なパターン形状を円筒状の外表面に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明に係る円筒外表面の加工方法およびパターンシートの製造方法の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は円筒外表面の加工方法に用いる設備を示す断面図であり、図2は浸漬工程を示す断面図(a)と、取出工程および乾燥工程を示す断面図(b)である。また、図3は、フォトレジスト層に光を照射して凹部パターンを形成し始める状態を示す断面図(a)と、凹部パターンの形成が終了した状態を示す断面図(b)である。さらに、図4は、フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の外表面とワークの外表面とにクロムを成膜した状態を示す断面図(b)と、ワークの外表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【0027】
最初に、円筒外表面の加工方法について説明する。
図1に示すように、まず、塗布液1を入れた液槽2を用意するとともに、円筒状のワーク3(被加工物)をその中心軸CA回りに回転可能に支持するチャック装置4を用意する。
【0028】
ここで、塗布液1は、後述するフォトレジスト層5(図3参照)を構成する化合物が有機溶剤に溶解されることで生成されている。例えば、塗布液1としては、下記化学式の色素材料を、有機溶剤であるTFP(テトラフルオロプロパノール)溶剤に2%(重量比)で溶解させたものを使用することができる。
【0029】
【化1】

【0030】
ワーク3の材料としては、例えば、ステンレス系の材料(もしくは加工しやすい金属材料)やAlなどが好ましい。また、ワーク3の外表面3aには、クロムメッキをしてもよい。このようにクロムメッキをすると、ワーク3の表面硬度や表面平滑性を上げることができる。なお、ワーク3の外表面3aに塗布液1を塗布する前においては、ワーク3を洗浄しておく。
【0031】
さらに、チャック装置4としては、図1に示すようなワーク3の外表面を支持する装置よりも、ワーク3の内周面を支持する装置を利用するのが望ましい。ワーク3の外表面を支持する装置では、ワーク3の上端部(チャック装置4で把持される部分)に塗布液1を塗布することができないが、ワーク3の内周面を支持する装置ではワーク3の外表面全体に塗布液1を塗布できるからである。そのため、ワーク3の内周面を支持する装置を利用した場合には、ワーク3を無駄に長く形成する必要がなくなり、材料の歩留まりを向上させることができる。
【0032】
そして、図2(a)に示すように、チャック装置4で把持した円筒状のワーク3を、その中心軸CAが鉛直方向に沿うような姿勢で液槽2内に入れて、液槽2内の塗布液1中に浸漬させる(浸漬工程)。その後は、図2(b)に示すように、ワーク3を中心軸CA回りに回転させながら所定位置まで引き上げていく(取出工程)。
【0033】
このようにワーク3を回転させることにより、液槽2から取り出したワーク3の外表面3aを伝って流れ落ちようとする塗布液1に遠心力がかかるので、塗布液1が下方に流れ難くなる。そのため、重力の影響によって塗布液1の厚さがワーク3の上部から下部に向けて徐々に厚くなってしまうことが抑えられる。また、液槽2の塗布液1中にワーク3を浸漬させるので、液槽2から取り出したワーク3の外表面3a全体に塗布された塗布液1は、略同時に乾燥するようになっている。
【0034】
そして、ワーク3を所定位置まで引き上げた後は、引き続きワーク3を回転させることでワーク3の外表面3aに塗布された塗布液1を乾燥させる(乾燥工程)。これにより、前述した重力の影響による塗布液1の厚さのムラの抑制が維持されつつ、ワーク3の外表面3aが迅速に乾燥する。そして、塗布液1の乾燥が完了すると、ワーク3の外表面3aに、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層5が所定の膜厚で形成されることとなる。
【0035】
ここで、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層5とは、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層であり、いわゆるヒートモード型のフォトレジスト材料の層である。なお、フォトレジスト層5の膜厚の上限値は、1μm以下が望ましく、0.5μm以下がさらに望ましく、0.3μm以下が特に望ましい。また、フォトレジスト層5の膜厚の下限値は、0.01μm以上が望ましく、0.03μm以上がさらに望ましく、0.05μm以上が特に望ましい。
【0036】
なお、フォトレジスト層5の膜厚を良好にコントロールするためには、塗布液1の粘度を0.5〜20mPa・s好ましくは0.5〜15mPa・s(CBC株式会社:ラボ用振動粘度計VM-10Aで常温で測定)の範囲から設定し、ワーク3の周速を0.1〜10m/sの範囲から設定し、引き上げ速度を0.02〜2m/sの範囲から設定することが望ましい。ここで、塗布液1の粘度調整は、溶剤の量を調整することによって行われる。
【0037】
なお、例えば、塗布液1の色素材料濃度60mg/cc、粘度を12mPa・sにするとともに、周速0.5m/sでワーク3を回転させながら、0.2m/sの速度で引き上げ、ワーク3の回転速度を徐々に上げていくことで周速を1m/sまで上げて乾燥を行うと、フォトレジスト層5の膜厚を略均一(1.5μm)にすることができる。より具体的には、ワーク3を液槽2から完全に引き上げるまでは、周速0.5m/sに保ち、引き上げた後5〜20秒も周速0.5m/sのままに保つ。次に、5〜20秒かけて、周速を1m/sまで上げる。さらに、その後、5〜10秒かけて、周速を1.5m/sまで上げる。これにより、塗布液1がワーク3上で十分乾いていない場合には、ワーク3を低速回転することで、ワーク3からの塗布液1の飛散が抑制され、塗布液1がある程度乾燥したときにワーク3を徐々に高速回転していくことで、塗布液1の乾燥を早めることができる。なお、ワーク3の周方向における加速度としては、0.05〜0.2m/s、より好ましくは0.05〜0.1m/sが望ましい。また、フォトレジスト層5の膜厚は、ワーク3の周速や引き上げ速度だけでなく、塗布液1の物性、塗布液1とワーク3の外表面3aとの濡れ性などにも影響を受けるので、必要に応じて適宜条件を変更しながら、膜厚を調整するのが望ましい。
【0038】
その後は、図3(a)に示すように、ワーク3を把持させたままのチャック装置4を、レーザ照射装置6の前まで移動させる。そして、図3(a),(b)に示すように、チャック装置4によって、ワーク3を回転させながら中心軸CAに沿って移動させるとともに、レーザ照射装置6から集光したレーザ光を出射することで、フォトレジスト層5に螺旋状の凹部パターン51を形成する(光照射工程)。
【0039】
具体的には、フォトレジスト層5に、材料の光吸収波長域に入る波長(材料で吸収される波長)のレーザ光を照射すると、フォトレジスト層5によってレーザ光が吸収され、この吸収された光が熱に変換され、光の照射部分の温度が上昇する。これにより、フォトレジスト層5が、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化を起こす。そして、このような変化を起こした材料が移動または/および消失して、ワーク3の外表面3a上から除去されることで、凹部パターン51が形成される。
【0040】
なお、レーザ照射装置6から出射されるレーザ光の出力値等は、比較的短時間のレーザ光の照射によりワーク3の外表面3aが露出するような値に適宜設定されている。また、凹部パターン51の幅(半値幅)が1μm以下となるように、レーザ光のスポット径が適宜設定されている。ここで、半値幅とは、凹部パターン51の深さの半分の深さ位置での幅を意味する。
【0041】
また、レーザ照射装置6としては、例えばパルステック工業株式会社製NE500(波長405nm、NA0.85)を採用することができる。さらに、凹部パターン51の形成方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(例えば、特許第3096239号公報段落[0012])を適用することができる。
【0042】
そして、フォトレジスト層5に螺旋状の凹部パターン51を形成した後は、図4(a),(b)に示すように、ワーク3を図示せぬ真空チャンバーに入れて、ワーク3の外表面3aとフォトレジスト層5の外表面5aに対して金属材料の一例としてのクロム7を蒸着またはスパッタリングにより成膜する。その後は、図4(c)に示すように、エタノールなどの洗浄液でフォトレジスト層5を洗い流すと、ワーク3の外表面3aにクロム7からなるパターン(凸部)が形成される(凹凸形成工程)。そして、以上のように構成された円筒状のワーク3の内部に円柱部材を嵌め込むことで、外表面に凹凸パターンを有した円柱状のスタンパロール30が製造される。
【0043】
次に、スタンパロール30を用いたパターンシートの製造方法について説明する。参照する図面において、図5は、スタンパロールを用いたパターンシートの製造方法を示す概念図である。
【0044】
図5に示すように、スタンパロール30は、公知のパターンシート製造装置10(例えば、特開2007−83447号参照)に組み込まれることにより、走行するシートWに微細パターンを連続的に形成することに寄与する。具体的に、パターンシート製造装置10では、シート供給手段11より、一定速度でシートWを送り出す。シートWは塗布手段12へ送り込まれ、シートWの表面に樹脂液が塗布される。
【0045】
ここで、塗布手段12は、シートWの表面に放射線硬化樹脂液を塗布する装置であり、放射線硬化樹脂液を供給する液供給源12Aと、液供給装置(送液ポンプ)12Bと、塗布ヘッド12Cと、塗布の際にシートWを巻き掛けて支持する支持ローラ12Dと、液供給源12Aより塗布ヘッド12Cまで放射線硬化樹脂液を供給するための配管等より構成される。
【0046】
そして、塗布手段12による樹脂液の塗布後に乾燥手段19によりシートWに塗布された樹脂液が乾燥され、溶剤分が蒸発する。次いで、シートWはスタンパロール30とニップローラ14からなる成形手段へ送り込まれる。これにより、連続走行するシートWが、回転するスタンパロール30とニップローラ14との間で押圧される。すなわち、スタンパロール30に、走行するシートWを巻き付けて型付けすることにより、シートWの樹脂層にスタンパロール30の外表面の凹凸パターンが連続的に転写される。
【0047】
次いで、シートWがスタンパロール30に巻き掛けられている状態で、樹脂硬化手段15によりシートWを透過して樹脂液層に放射線照射を行い、樹脂液層を硬化させる。その後、シートWを剥離ローラ16に巻き掛けることにより、シートWがスタンパロール30から剥離する。
【0048】
剥離されたシートWは、シート巻き取り手段18に搬送され、保護フィルム供給手段17より供給される保護フィルムHがシートWの表面に供給され、両フィルムが重なった状態でシート巻き取り手段18の巻き取りロールにより巻き取られ、収納される。以上により、微細パターンが形成されたパターンシートが製造される。
【0049】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
ワーク3を液槽2に浸けた後回転させながら引き上げることで、ワーク3上の塗布液1が遠心力によって略均一の厚さになるとともに略同時に乾燥されるので、フォトレジスト層5の膜厚を略均一に形成して良好なパターン形状をスタンパロール30の円筒状の外表面に形成することができる。
【0050】
取出工程の後に引き続きワーク3を回転させることで塗布液1を乾燥させるので、重力の影響による塗布液1の厚さのムラの抑制を維持しつつ、塗布液1を迅速に乾燥させることができる。
【0051】
本実施形態のような取出工程および乾燥工程を経ることにより、非常に薄いフォトレジスト層5をワーク3の外表面3aに略均一の膜厚で形成することができるので、ワーク3の外表面3aに形成するクロム7のパターンを例えばサブミクロンオーダーで形成することができる。そのため、このような微細パターンが形成されたスタンパロール30を用いてパターンシートを製造することで、サブミクロンオーダーの微細パターンを有するパターンシート(反射防止膜、偏光板、波長板、電子材料など)を、大面積で効率良く生産できる。なお、スタンパロール30は低コストで製造することができるので、スタンパロール30を予備ロールとして複数製作して、スタンパロールの再生産にかかる費用を抑制することができる。
【0052】
フォトレジスト層5を構成する化合物を有機溶剤に溶解することで塗布液1を生成するので、塗布液1を早く乾燥させて重力による影響をより受け難くすることができ、乾燥中に塗布液1が垂れてしまうことを抑制できる。
【0053】
ワーク3の外表面に形成したフォトレジスト層5に螺旋状に凹部パターン51を形成することでワーク3の回転やワーク3に対するヘッドの軸方向への相対的な移動を止めることなく加工を行うことができるので、ヘッドを断続的に軸方向へ動かすことでロール径1周分の加工を軸方向へ繰り返し行う方法に比べ、ヘッド等を止める無駄を無くして、加工時間を短縮することができる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、フォトレジスト層5に凹部パターン51を形成した後、クロム7を蒸着して、フォトレジスト層5を除去することで、ワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6(a)〜(c)に示すように、メッキによりワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。
【0055】
具体的に、この方法では、図6(a)に示すように、フォトレジスト層5に凹部パターン51を形成した後、ワーク3を図示せぬメッキ槽に入れて、図6(b)に示すように、ワーク3の露出する外表面3aにメッキ材料Mからなるメッキ膜を成長させる。その後、フォトレジスト層5を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、図6(c)に示すように、ワーク3の外表面3aにメッキ材料Mのパターンを形成する(メッキパターン形成工程)。この方法でも、ワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを良好に形成することができる。なお、メッキ材料Mとしては、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、アルミニウム、チタン、銅などの金属または金属含有物などを採用できる。
【0056】
また、図7(a)〜(c)に示すように、エッチングによりワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。
【0057】
具体的に、この方法では、図7(a)に示すように、フォトレジスト層5に凹部パターン51を形成した後、ワーク3の外表面3aに残ったフォトレジスト層5をマスクとしてエッチングを行うことによって、図7(b)に示すように、ワーク3の外表面3aに凹部3bを形成する。ここで、エッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチング、RIE(リアクティブイオンエッチング)など、種々のエッチング方法を採用できる。
【0058】
そして、凹部3bを形成した後は、フォトレジスト層5を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、ワーク3の外表面3aにエッチングによるパターン(凹部3b)が形成される(エッチングパターン形成工程)。この方法でも、ワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを良好に形成することができる。
【0059】
また、図8(a),(b)に示すように、凹部パターン51を形成したフォトレジスト層5の外表面5aとワーク3の外表面3aとに連続するように、金属材料MMを蒸着またはスパッタリングによって成膜することでワーク3の外表面3aに微細な凹凸パターンを形成してもよい。これによれば、前記実施形態のように蒸着またはスパッタリング処理の後にワーク3の外表面3aに残るフォトレジスト層5を除去することなく、凹凸パターンを形成することができるので、フォトレジスト層5を除去するための設備等が不要となり、製造コストを低減することができる。なお、図8のようにフォトレジスト層5の外表面5aとワーク3の外表面3aとに連続するように金属材料MMを成膜するには、スパッタリングを採用するのが望ましく、図4のように金属材料(クロム7)を断続的に成膜するには、真空蒸着を採用するのが望ましい。また、この図8の実施形態については、ワーク3の外表面3aが露出するまで凹部パターン51を形成する必要はない。すなわち、凹部パターン51の底面でワーク3の外表面3aが覆われていても、金属材料MMからなる凹凸パターンを形成することができる。
【0060】
前記実施形態では、ワーク3を回転させながら取り出した後、その回転を継続させることでワーク3の乾燥を行ったが、本発明はこれに限定されず、ワーク3を回転させながら取り出した後、その回転を止めてワーク3の乾燥を行ってもよい。ただし、前記実施形態のようにワーク3を回転させながら乾燥させる場合には、乾燥工程中においても重力の影響によるフォトレジスト層5の膜厚のムラを抑えることができるので、乾燥工程中においてもワーク3を回転させるのが望ましい。
【0061】
前記実施形態では、凹部パターンとして螺旋状の凹部パターン51を採用したが、本発明はこれに限定されず、どのようなパターンであってもよい。
【0062】
前記実施形態では、チャック装置4によってワーク3を回転させながら中心軸CA方向に移動させたが、本発明はこれに限定されず、光をワークに対して相対移動させればよい。例えば、静止状態のワークに対してレーザ照射装置をワークの中心軸を中心にして回転させながら、その中心軸に沿って移動させる方法や、ワークを回転させながら、ワークの中心軸に沿ってレーザ照射装置を移動させる方法などを採用してもよい。
【0063】
前記実施形態では、円筒状のワーク3を加工対象としたが、本発明はこれに限定されず、例えば有底筒状や円柱状のワークを加工対象としてもよい。すなわち、本発明は、円筒状の外表面を有するワークであれば、中空ロールや中実ロール等のどのようなワークであってもよい。
【0064】
前記実施形態では、露出したワーク3の外表面に成膜する金属材料としてクロムを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばニッケル、クロム、コバルト、モリブデンなどを採用してもよい。
【0065】
前記実施形態では、塗布液1に入れる色素材料として化学式1で示すような材料を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色素材料を有するフォトレジスト層5の好適な例としては、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。中でも、メチン色素、オキソノール色素、大環状色素、アゾ色素が好ましい。
【0066】
中でも、色素型のフォトレジスト層5は、露光波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。特に、光の吸収量を示す消衰係数kの値は、その上限が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1以下であることが最も好ましい。その理由は、消衰係数kが高すぎると、フォトレジスト層5の光の入射側から反対側まで光が届かず、不均一な穴が形成されるからである。また、消衰係数kの下限値は、0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。その理由は、消衰係数kが低すぎると、光吸収量が少なくなるため、その分大きなレーザパワーが必要となり、加工速度の低下を招くからである。
【0067】
なお、フォトレジスト層5は、前記したように露光波長において光吸収があることが必要であり、かような観点からレーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
【0068】
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。この中でも、フタロシアニン色素またはペンタメチンシアニン色素を用いるのが好ましい。
【0069】
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
【0070】
さらに、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0071】
以下、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合、405nm付近であった場合に対し、フォトレジスト層5(フォトレジスト材料)としてそれぞれ好ましい化合物の例を挙げる。ここで、以下の化学式2,3で示す化合物(I-1〜I-10)は、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合の化合物である。また、化学式4,5で示す化合物(II-1〜II-8)は、660nm付近であった場合の化合物である。さらに、化学式6,7で示す化合物(III-1〜III-14)は、405nm付近であった場合の化合物である。なお、本発明はこれらをフォトレジスト材料に用いた場合に限定されるものではない。
【0072】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化2】

【0073】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化3】

【0074】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化4】

【0075】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化5】

【0076】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化6】

【0077】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化7】

【0078】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0079】
このような色素型のフォトレジスト層5は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液1を調製し、次いで、この塗布液1を、ワーク3上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液1を塗布する面の温度は、10〜40℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が、15℃以上であり、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さを均一とすることができる。
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、フォトレジスト層5は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液1中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0080】
塗布液1の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。なお、フッ素系溶剤、グリコールエーテル類、ケトン類が好ましい。特に好ましいのはフッ素形溶剤、グリコールエーテル類である。更に好ましいのは、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液1中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0081】
また、塗布の際、塗布液1の温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、25〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0082】
塗布液1が結合剤を含有する場合、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。フォトレジスト層5の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
【0083】
また、フォトレジスト層5には、フォトレジスト層5の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0084】
なお、色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0085】
レーザで凹部パターン51を形成する波長λwは、色素吸収波長λaとの関係において、λa<λwの関係であることが好ましい。このような関係にあれば、色素の光吸収量が適切で形成効率が高まるし、きれいな凹凸形状が形成できるからである。
【0086】
なお、凹部パターン51を形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1000nm以下が好ましい。
【0087】
また、レーザ光の種類としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザや半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0088】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光でフォトレジスト層5を走査する速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wがさらに好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWがさらに好ましい。
【0089】
さらに、レーザ光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、露光ストラテジ(凹部パターン51を適正に形成するための光パルス照射条件)は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、露光速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0090】
また、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解は、その変化の割合が大きく、急峻であることが好ましい。具体的には、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上である。また、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少の傾き(昇温1℃あたりの重量減少率)が0.1%/℃以上であることが好ましく、より好ましくは0.2%/℃以上、更に好ましくは0.4%/℃以上である。
【0091】
また、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化の転移温度は、その上限値が、2000℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましい。その理由は、転移温度が高すぎると、大きなレーザパワーが必要となるからである。また、転移温度の下限値は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。その理由は、転移温度が低すぎると、周囲との温度勾配が少ないため、明瞭な穴エッジ形状を形成することができなくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】円筒外表面の加工方法に用いる設備を示す断面図である。
【図2】浸漬工程を示す断面図(a)と、取出工程および乾燥工程を示す断面図(b)である。
【図3】フォトレジスト層に光を照射して凹部パターンを形成し始める状態を示す断面図(a)と、凹部パターンの形成が終了した状態を示す断面図(b)である。
【図4】フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の外表面とワークの外表面とにクロムを成膜した状態を示す断面図(b)と、ワークの外表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図5】スタンパロールを用いたパターンシートの製造方法を示す概念図である。
【図6】メッキによりワークの外表面に凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、ワークの外表面にメッキ材料を成長させた状態を示す断面図(b)と、ワークの外表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図7】エッチングによりワークの外表面に凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、ワークの外表面をエッチングした状態を示す断面図(b)と、ワークの外表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図8】フォトレジスト層の外表面とワークの外表面とに連続するように金属材料を成膜することで凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の外表面とワークの外表面とに連続するように金属材料を成膜した状態を示す断面図(b)である。
【符号の説明】
【0093】
1 塗布液
2 液槽
3 ワーク
3a 外表面
3b 凹部
5 フォトレジスト層
5a 外表面
6 レーザ照射装置
7 クロム
10 パターンシート製造装置
30 スタンパロール
51 凹部パターン
CA 中心軸
M メッキ材料
MM 金属材料
W シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外表面を有するワークの外表面に凹凸パターンを形成する円筒外表面の加工方法であって、
ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を構成する化合物を有する塗布液を入れた液槽に、前記ワークを中心軸が鉛直方向に沿うように入れて、塗布液中に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程の後、ワークを中心軸回りに回転させながら引き上げる取出工程と、
前記ワークの外表面に塗布された塗布液を乾燥させて前記フォトレジスト層を形成する乾燥工程と、
前記フォトレジスト層に光を照射することで凹部パターンを形成する光照射工程と、
を備えることを特徴とする円筒外表面の加工方法。
【請求項2】
前記乾燥工程において、
前記取出工程に引き続いてワークを回転させることでワーク上の塗布液を乾燥させたことを特徴とする請求項1に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項3】
前記塗布液は、前記フォトレジスト層を構成する化合物が有機溶剤に溶解されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項4】
前記塗布液の粘度が、0.5〜20mPa・sであることを特徴とする請求項3に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項5】
前記光照射工程において、前記ワークの外表面が露出するまで光を照射して前記フォトレジスト層を除去することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項6】
前記ワークの外表面と前記フォトレジスト層の外表面とに金属材料を成膜させてからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項7】
前記ワークをメッキ槽に入れて、露出した前記ワークの外表面にメッキ膜を成長させてからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面にメッキ材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項8】
前記ワークの外表面に残ったフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行ってからフォトレジスト層を除去することで、ワークの外表面にエッチングによる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項9】
前記ワークの外表面と前記フォトレジスト層の外表面とに連続して金属材料を成膜することで、ワークの外表面に前記金属材料からなる凹凸パターンを形成する凹凸形成工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項10】
前記光照射工程において、
前記ワークの中心軸回りにワークまたは光を回転させながら、前記中心軸に沿ってワークまたは光を移動させることで、ワークの外表面に螺旋状の凹部パターンを形成することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項11】
前記凹部パターンの幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の円筒外表面の加工方法。
【請求項12】
スタンパロールに、走行するシートを巻き付けて型付けすることにより、走行するシートにパターンを連続的に形成するパターンシートの製造方法であって、
前記スタンパロールとして、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の加工方法により円筒状の外表面に凹凸パターンが形成されたスタンパロールを用いることを特徴とするパターンシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−216875(P2009−216875A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59350(P2008−59350)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】