説明

円筒形流動床炉

【課題】流動床内の広範囲で熱反応を行わせ、不燃物へのチャーの混入を防止できる円筒形流動床炉を提供する。
【解決手段】円筒形の炉本体10と、流動化ガスを供給する気体供給口31,32を設けた床板30と、炉本体10の軸心から偏芯して配置された不燃物排出口11と、炉本体10の軸心を挟んで不燃物排出口11と反対側にある炉壁に設けられた廃棄物供給口41とを備え、廃棄物供給口41がある側の炉壁と不燃物排出口11との間の床板30に設けられた気体供給口から噴出される流動化ガスの供給量に廃棄物供給口側と不燃物排出口側とで差を設けて不燃物排出口側の流動化速度を廃棄物供給口側の流動化速度より大きくし、廃棄物供給口側に流動媒体が沈降する移動層21を形成し、不燃物排出口側に流動媒体が上昇する流動層22を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を処理する円筒形流動床炉に係り、特に炉床の水平断面を円形とした円筒状の炉本体と円筒状の炉本体の中心から偏芯して設けられた不燃物排出口とを備える円筒形流動床炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から廃棄物処理装置として流動床炉が用いられている。流動床炉は流動媒体(砂等)の大きな熱容量を利用して、高温に熱した流動媒体中に廃棄物を投入し、廃棄物の乾燥、熱分解および燃焼を短時間に行なわせるもので、流動床焼却炉や流動床ガス化溶融炉(流動床式ガス化炉と溶融燃焼炉とで構成される)に用いられている。流動床炉は、激しく流動する流動媒体と処理対象物との間で熱交換が速やかに行われるため熱移動速度が速く、反応が速やかに行われるという特質および流動層では流動媒体が流動している縦方向での物質移動は行なわれやすいが水平方向での物質移動が行なわれにくいという特質を有している。そのため、流動床炉の廃棄物処理への適用においては、先ず、汚泥等の均質で分散しやすいものを対象物とし、炉床に均一に供給するようにされた。処理対象を都市ごみ等の固形廃棄物とする場合には、予め処理対象物を破砕し、炉床に均一に供給する方法が用いられた。
【0003】
流動床炉としては、炉床の水平断面を円形とし、即ち炉を円筒形状とし、炉床中央部に不燃物排出口を設けた円筒形流動床炉があり、この円筒形流動床炉は構造的に最もシンプルであり、円筒形状であるため熱応力も均等に分散し、耐火材等の耐久性に富むという利点があるため、従来から多く用いられている。この円筒形流動床炉では、炉床中央部の不燃物排出口の上方は流動化空気が供給されないため、いわゆる固定層となっている。そのため、この固定層に廃棄物が取り込まれると、流動媒体が流動化していないため、流動媒体と処理対象物の間の熱交換は熱伝導のみとなり、熱交換が速やかに行われないので、処理対象物の熱分解が進みにくく、また流動化空気の供給が無いため熱分解残渣(チャー)が流動化空気により燃焼することもない。そうすると、不燃物排出口から不燃物に混じって、熱分解残渣が排出されることになり、燃焼効率が低下すると共に、ダイオキシン類は熱分解残渣(チャー)に含まれるため、不燃物のダイオキシン類濃度が高くなるという不都合が生じる。この不都合が生じないように、不燃物排出口周辺の流動化空気量を増やし、上記固定層を不燃物排出口直上部の最小限の領域として、処理対象物や熱分解残渣(チャー)が不燃物排出口から排出されないようにしている。即ち、炉床全域で均等な流動化を行わせる、いわゆるバブリング流動層を採用している。
【0004】
上述した円筒形流動床炉では、炉内中央部に処理対象物を供給し、円形の炉床水平断面の周辺部の緩やかに下降する流動媒体中に処理対象物を飲み込ませ、流動床内で熱反応を行わせ、不燃物排出口から不燃物が流動媒体と共に排出される。円筒形流動床炉では、処理対象物を炉床中央部に供給するために、炉天井中央部より処理対象物を供給したり、炉床上部に処理対象物がスムーズに落下して炉床中央部に供給されるようなシュートを設けていた。
【0005】
しかしながら、炉天井部から供給するのでは施設の所要高さが高くなり、炉の側壁からシュートで炉床中央部を狙って供給しても、処理対象物が多種の成分からなる都市ごみ等の廃棄物では、各種成分の形状や比重等の違いにより落下位置が異なり、廃棄物を炉床に均等に供給して流動床内に取り込むことは困難であり、廃棄物の供給位置が偏りがちとなり炉床で熱反応が行われる領域も偏りがちであった。処理対象物を炉床周辺から均等に供給するためには多数の給じん装置を炉周辺に配置することとなり非現実的である。このため、炉床の全域において処理対象物の処理を行なうことが困難であり、廃棄物の処理は炉床の一部に偏って行われがちであった。
【0006】
一方、都市ごみ等の処理対象物中には石ころ、瓦礫、陶磁器片や金属類等の不燃物が含まれ、これらの不燃物を流動床から安定して排出させることが流動媒体を流動化させ安定した流動床を維持するために不可欠である。このため、砂等からなる流動媒体に、中央部よりも周辺部の方の質量速度が大きくなるように流動化ガスを供給することにより、炉の中央部に流動媒体が沈降拡散する移動層を形成し、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層を形成し、流動媒体を移動層と流動層との間を循環させ、流動床内に流動媒体の水平方向の移動を促進させたいわゆる旋回流式流動床炉が開発されている(特許文献1参照)。
【0007】
旋回流式流動床炉では流動媒体の循環流中に処理対象物を取り込み炉床中で熱反応を行わせるとともに、流動媒体の循環流により炉内周辺部にある不燃物排出口から不燃物を安定して排出するものである。流動媒体の循環流を用いて不燃物の排出を行わせるため、特許文献1に記載されているような炉床の水平断面を矩形とした流動床炉が多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭62−5242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、流動床炉は、炉床の水平断面を円形とした円筒形流動床炉と炉床の水平断面を矩形とした流動床炉に概略大別することができる。円筒形流動床炉は、構造的に最もシンプルで熱応力も均等に分散し、耐火材等の耐久性に富むという利点があるが、廃棄物を炉床に均等に供給して流動床内に取り込むことは困難であり、廃棄物の供給位置が偏りがちとなり炉床で熱反応が行われる領域も偏りがちであり、廃棄物の処理は炉床の一部に偏って行われがちであるという欠点がある。一方、炉床の水平断面を矩形とした循環流式流動床炉は、構造的に複雑で熱応力が角部等に集中しやすく耐火材等の耐久性に劣るという欠点があるが、不燃物を流動床から安定して排出することができるという利点がある。
【0010】
本発明者らは、円筒形流動床の構造的に優れた点に着目するとともに旋回流式流動床炉における不燃物を流動床から安定して排出することができる点に着目し、円筒形流動床炉に流動媒体の循環流を適用することを試みることにより以下の知見を得たものである。すなわち、炉床中央部に不燃物排出口を設けた円筒形流動床炉に循環流を適用する場合、炉内中央部に流動媒体が沈降拡散する移動層を形成し、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層を形成し、炉内中央部に廃棄物を供給すると、炉内中央部において沈降拡散する移動層の流動媒体とともに未反応の廃棄物が不燃物排出口から多量に排出されてしまうという問題がある。これを避けるために、炉内周辺部に流動媒体が沈降拡散する移動層を形成し、炉内中央部に流動媒体が活発に流動化している流動層を形成し、炉内中央部に廃棄物を供給すると、廃棄物は、流動床上部において炉内中央部から炉内周辺部に放射状に移動する流動媒体によって炉内周辺部に運ばれて炉内周辺部の移動層に飲み込まれて移動層内で熱反応が行われる。
しかしながら、炉内中央部に供給された廃棄物が炉内中央部から炉内周辺部に移動する流動媒体によって放射状に運ばれる際に、廃棄物が円周方向に均等に分散することが難しく、熱反応が行われる領域が偏りがちになるという問題がある。
【0011】
本発明者らは、上記知見に基づいて、円筒形流動床炉において廃棄物の供給条件と炉床流動化の条件を最適化するための試験を繰り返し行うことにより、流動媒体の循環流によって廃棄物を炉内中央部の流動層から炉内周辺部の移動層に放射状に均等に分散させて移動層の全面に均等に飲み込ませることは難しいため、炉内周辺部の移動層に直接に廃棄物を供給して廃棄物を飲み込ませることが廃棄物の供給条件としては最適であることを見出した。また、水平断面が円形の流動床炉においては炉内周辺部の移動層と炉内中央部の流動層との間で流動媒体が放射状に半径方向内方と外方との間で移動することになるため、円の中央付近から円の周方向に流動媒体を拡散させるに際し、流動媒体の均等な拡散は困難であり、炉内全面にわたって均一な循環流を形成することが難しく、流動媒体の循環流を形成する場合には移動層と流動層とが不燃物排出口を中心にして放射状に半径方向で同一の面積とした水平断面が円形の流動床炉が最適であることを見出し、本発明の創案に至ったものである。
すなわち、本発明は、炉床の不燃物排出口の位置を円筒形の炉本体の軸心から偏芯させ、不燃物排出口から遠い位置の炉壁の廃棄物供給口から廃棄物を供給し、炉床の廃棄物供給部と不燃物排出口との間に流動媒体の循環流を形成することにより、廃棄物を炉床に均一に供給する必要がなく、流動床内の広範囲で熱反応を行わせ、不燃物へのチャーの混入を防止することができる円筒形流動床炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の円筒形流動床炉は、廃棄物を処理する流動床炉において、水平断面が円形に形成された円筒形の炉本体と、前記炉本体の底部に配置され、流動化ガスを供給して流動媒体を流動させる気体供給口を設けた床板と、前記円筒形の炉本体の底部に設けられ、該円筒形の炉本体の軸心から偏芯して配置された不燃物排出口と、前記円筒形の炉本体の軸心を挟んで前記不燃物排出口と反対側にある炉壁に設けられた廃棄物供給口とを備え、前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口から噴出される流動化ガスの供給量に廃棄物供給口側と不燃物排出口側とで差を設けて前記不燃物排出口側の流動化速度を前記廃棄物供給口側の流動化速度より大きくし、前記廃棄物供給口側に流動媒体が沈降する移動層を形成し、前記不燃物排出口側に流動媒体が上昇する流動層を形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、廃棄物供給口の直下の炉床にある廃棄物供給部と不燃物排出口との間に、大きな面積の循環流流動層を形成することができる。この循環流流動層は水平断面が概略扇面状の流動床をなし、この概略扇面状の流動床において炉内周辺部の移動層と炉内中央部の流動層との間で流動媒体の循環流を形成する際に流動媒体が円の周方向に拡散することなく、水平断面が矩形の流動床に類似した流動媒体の循環流となる。そして、廃棄物供給口の直下には、流動媒体が比較的ゆっくりした速度で上方から下方に移動する移動層が形成されるため、廃棄物供給口から流動床に供給された廃棄物を移動層の沈降流により直ちに飲み込ませることができる。廃棄物は移動層に飲み込まれて流動媒体と共に下方に移動する際に、流動媒体の熱によって廃棄物の乾燥及び熱分解が行われて、廃棄物中の水分が蒸発し、廃棄物中の可燃分から可燃ガスが発生して、脆い熱分解残渣となる。熱分解残渣は、不燃物及び熱分解によって脆くなった未燃物(チャー)を含んでいる。移動層で生成される熱分解残渣は、流動媒体と共に、床板に至ると、傾斜した床板に沿って流動層に向かう。流動層に至った熱分解残渣は、流動化ガスにより未燃物(チャー)が不燃物から剥離し、未燃物(チャー)が剥離して残った不燃物は一部の流動媒体と共に不燃物排出口に向かう。このとき、不燃物排出口は円筒状の炉本体の軸心から偏芯しているので、不燃物から未燃物(チャー)が剥離するための移動距離を確保することができ、熱分解残渣中の不燃物が確実に流動層の一定距離を移動することとなって、未燃物(チャー)と不燃物との分離を適切に行うことができる。不燃物は、一部の流動媒体と共に不燃物排出口へ流入して流動床炉外へ排出される。
【0014】
他方、不燃物から剥離した未燃物(チャー)は、流動化ガスが供給されることに伴って流動する流動媒体と共に上方に移動する。このとき、未燃物(チャー)は、供給された流動化ガスによって燃焼が行われ、流動媒体を加熱しつつ燃焼ガスを発生し、気体に搬送される程度の微細な未燃物(チャー)及び灰分の粒子となる。流動層においては、未燃物(チャー)の燃焼に伴って徐々に温度が上昇して行くので、下部から上部に行くにつれて温度が比例的に上昇して行く。他方、流動層の上部に至った流動媒体は、流動床表面にばらまかれ、移動層の沈降流に飲み込まれる。流動媒体は、流動層において、移動層で廃棄物の熱分解を適切に行うことができる温度に上昇させられる。移動層に流入した流動媒体は、再び供給された廃棄物を受け入れて、上述の移動層及び流動層における熱反応を繰り返す。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口を廃棄物供給口側の気体供給口と不燃物排出口側の気体供給口とに2つ以上に分けることを特徴とする。
本発明によれば、廃棄物供給口側から不燃物排出口側までの気体供給口を2つ以上のグループに分け、分けられた各グループの気体供給口からの気体噴出量により流動媒体の流動化速度に差を設けることで、流動層における流動媒体の上昇流又は移動層の流動媒体の沈降流をより細かく調整することができ、廃棄物の熱反応がより進行するように流動層の不燃物の移動及び移動層における沈降が行われる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口は前記床板の下に設けた空気箱に仕切りを設けて分割することにより区画したことを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の炉内領域に、前記移動層と前記流動層との間を流動媒体が循環する循環流が形成されることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記円筒形の炉本体の軸心を挟んで前記廃棄物供給口がある側の炉壁と反対側の炉壁と、前記不燃物排出口との間の流動化速度を前記不燃物排出口側の大きな流動化速度と同等にして、不燃物排出口周囲に流動媒体が上下動を繰り返すバブリング流動層を形成したことを特徴とする。
本発明によれば、移動層と流動層とを有した水平断面が概略扇面状の循環流流動層に加えて、不燃物排出口を挟んで循環流流動層の領域の反対側にバブリング流動層を形成することにより、不燃物排出口の周辺の流動化ガス量を増やし、固定層を不燃物排出口直上部の最小限の領域として、廃棄物や熱分解残渣(チャー)が不燃物排出口から排出されないようにしている。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記床板に設けられた前記気体供給口は、前記不燃物排出口を中心とした同心円上および同心の円弧上に配列されていることを特徴とする。
本発明によれば、同心円上に配置された気体供給口からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、床板の同心円の上方に流動媒体が活発に流動する強流動化域を形成し、円弧上に配置された気体供給口からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、床板の円弧の上方に流動媒体が比較的ゆっくりした速度で流動する弱流動化域を形成する。前記同心円のうち、円弧に隣接している概略半円の部分の上方に形成された強流動化域と、円弧の上方に形成された弱流動化域とが相隣接して存在する結果、弱流動化域で流動媒体が比較的ゆっくりした速度で上方から下方に移動する移動層が形成されて、強流動化域で流動媒体が下方から上方に移動する流動層が形成される。したがって、弱流動化域と強流動化域とが相隣接する領域全体においては、流動媒体が、下部では弱流動化域から強流動化域(移動層から流動層)へ、上部では強流動化域から弱流動化域(流動層から移動層)へ移動することで、弱流動化域と強流動化域(移動層と流動層)との間を流動媒体が循環する循環流が形成される。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記廃棄物供給口の位置にスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置を設置したことを特徴とする。
本発明によれば、円筒状炉壁に設けた廃棄物供給口に、略水平方向に廃棄物を供給するスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置を設けたため、炉天井中央部より廃棄物を供給したり、炉床上部に廃棄物がスムーズに落下して炉床中央部に供給されるようなシュートを設ける必要がなく、施設の全高(高さ)を低くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)円筒形状の流動床炉であるため、構造的に最もシンプルとなり炉の製作が容易となり、また炉壁が円筒形状であるため、耐火物の耐久性が向上する。
(2)廃棄物供給口の直下の炉床にある廃棄物供給部と不燃物排出口との間に、大きな面積の循環流流動層を形成することができる。この循環流流動層は水平断面が概略扇面状の流動床をなし、この概略扇面状の流動床において炉内周辺部の移動層と炉内中央部側の流動層との間で流動媒体の循環流を形成する際に流動媒体が円の周方向に拡散することなく、水平断面が矩形の流動床に類似した流動媒体の循環流となり、炉内周辺部から不燃物排出口に向かう流動媒体の流れによって不燃物を炉外にスムーズに排出できる。
(3)廃棄物供給口の直下には、流動媒体が比較的ゆっくりした速度で上方から下方に移動する移動層が形成されているため、廃棄物供給口から流動床に供給された廃棄物を移動層の沈降流により直ちに飲み込ませることができる。そのため、廃棄物を炉床に均等に分散供給する必要がなく、廃棄物の供給が容易である。
(4)円筒状炉壁に設けた廃棄物供給口に、略水平方向に廃棄物を供給するスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置を設けたため、炉天井中央部より廃棄物を供給したり、炉床上部に廃棄物がスムーズに落下して炉床中央部に供給されるようなシュートを設ける必要がなく、施設の全高(高さ)を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の円筒形流動床炉の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は図1のII−II線断面図である。
【図3】図3(a)は炉本体の円筒状炉壁と床板とを示す平面図であり、図3(b)は炉本体の円筒状炉壁と床板とを示す縦断面図である。
【図4】図4は図3(a)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る円筒形流動床炉の実施の形態について図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の円筒形流動床炉の全体構成を示す縦断面図である。図2は図1のII-II線断面図である。図1および図2に示すように、円筒形流動床炉1は、廃棄物Wを処理する炉本体10と、導入した廃棄物Wを熱反応させる流動床20と、流動床20を支える床板30とを備えている。流動床20は、典型的には珪砂等の砂である流動媒体が集積して形成されたベッドである。炉本体10は、炉床の水平断面が円形に形成された円筒状の炉本体からなっている。炉本体10の底部には、円筒状の炉本体の中心から偏芯した位置に不燃物排出口11が設けられている。図2に示すように、不燃物排出口11は水平断面が円形であり、不燃物排出口11の中心11oは円筒状の炉本体10の中心(軸心)10oから距離Lだけ偏芯している。この偏芯距離Lは、円筒状の炉本体10の内径をdとすると、L(mm)=0.086d(mm)〜(d−1000)/2(mm)に設定されている。(但し、d(mm)>1500mm)
【0025】
前記炉本体10の炉壁には、不燃物排出口11から最も離間した位置にスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置40が設置されている。廃棄物供給装置40の先端部に廃棄物供給口41が形成されている。すなわち、廃棄物Wは、不燃物排出口11から遠い位置の炉壁に形成された廃棄物供給口41から流動床20に供給されるようになっている。このように、円筒状炉壁に設けた廃棄物供給口41に、略水平方向に廃棄物Wを供給するスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置40を設けたため、炉天井中央部より廃棄物Wを供給したり、炉床上部に廃棄物Wがスムーズに落下して炉床中央部に供給されるようなシュートを設ける必要がなく、施設の全高(高さ)を低くすることができる。
【0026】
また、炉本体10の上部には、廃棄物Wを熱反応させた際に生じるガスを排出する排気口12が形成されている。炉本体10内の流動床20の上方にある空間はフリーボード13になっている。炉本体10が焼却炉の場合にはフリーボード13に2次空気を供給して可燃ガスを燃焼させることにより燃焼ガスが排気口12から排出される。炉本体10がガス化炉の場合には可燃ガスが排気口12から排出される。
【0027】
図3(a)は炉本体10の円筒状炉壁と床板30とを示す平面図であり、図3(b)は炉本体10の円筒状炉壁と床板30とを示す縦断面図である。図3(a)に示すように、床板30は不燃物排出口11を中心として概略逆円錐状(すり鉢状)に形成されており、床板30には、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出するための多数の散気ノズル31,32が配置されている。これらの散気ノズル31,32は流動化空気を供給して流動媒体を流動させる気体供給口を構成する。散気ノズル31,32は、不燃物排出口11を中心とする複数の同心円(C1,C2,C3,C4,C5)上に配置されている。なお、図3(a)では、同心円(C1〜C5)上に配置された散気ノズル31,32の一部のみを図示している。また、C3,C4,C5は、円ではなく円弧になっているため、以下の説明では円弧C3,C4,C5として説明する。
【0028】
図3(b)に示すように、床板30の下方には、床板30から間隔をあけて底板33が設けられており、床板30と底板33との間の空間は、床板30から底板33まで延びる仕切板34によって2つの空間に分割されている。図3(a)において、点線で示すように、仕切板34は、5つの同心円および円弧C1〜C5のうち、2つの同心円C1,C2と3つの円弧C3,C4,C5とを分割するように配置されている。このように、床板30と底板33との間の空間が仕切板34で分割されることにより、床板30の下方に2つの空気箱35,36が形成されることとなる。2つの空気箱35,36には、炉外から空気箱35,36に流動化空気を導く空気管51,52がそれぞれ接続されている。空気管51,52には、内部を流れる空気流量を調節する調節弁V1,V2がそれぞれ配設されている。2つの空気管51,52は最上流部で合流して1つの空気管53となり、空気管53には流動化空気を圧送する空気ブロワ54が配設されている。なお、空気管51および52にそれぞれブロワを設けてもよい。
【0029】
図4は図3(a)の要部拡大図である。図4では散気ノズル31,32は図示を省略している。図3(b)に示すように構成された流動化空気供給系統において、調節弁V1の開度を調節して空気管51を流れる空気流量を調節することにより、2つの同心円C1,C2上に配置された散気ノズル31からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化空気を噴出する。その結果、図4に示すように、床板30の2つの同心円C1,C2の上方に流動媒体が活発に流動する強流動化域SFを形成する。また、図3(b)に示す調節弁V2の開度を調節して空気管52を流れる空気流量を調節することにより、3つの円弧C3,C4,C5上に配置された散気ノズル32からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化空気を噴出する。その結果、図4に示すように、床板30の3つの円弧C3,C4,C5の上方に流動媒体が比較的ゆっくりした速度で流動する弱流動化域WFを形成する。
【0030】
図4に示すように、前記2つの同心円C1,C2のうち、円弧C3,C4,C5に隣接している概略半円の部分C1−1,C2−1の上方に形成された強流動化域SFと、3つの円弧C3,C4,C5の上方に形成された弱流動化域WFとが相隣接して存在する結果、弱流動化域WFで流動媒体が比較的ゆっくりした速度で上方から下方に移動する移動層21が形成されて、強流動化域SFで流動媒体が下方から上方に移動する流動層22が形成される。したがって、弱流動化域WFと強流動化域WFとが相隣接する領域全体においては、流動媒体が、下部では弱流動化域WFから強流動化域SF(移動層21から流動層22)へ、上部では強流動化域SFから弱流動化域WF(流動層22から移動層21)へ移動することで、弱流動化域WFと強流動化域SF(移動層21と流動層22)との間を流動媒体が循環する循環流が形成される。
【0031】
一方、前記2つの同心円C1,C2のうち、円弧C3,C4,C5の反対側にある概略半円の部分C1−2,C2−2の上方に形成される強流動化域SFは、隣接する弱流動化域が存在しないため、この領域は、流動媒体が上下動を繰り返す、いわゆるバブリング流動層となる。すなわち、図4に示すように、流動床20内には、移動層21と流動層22とが相隣接することにより形成される循環流流動層と、強流動化域が単独で存在するために形成されるバブリング流動層とが併存することになる。図4において、循環流流動層は、概略扇面状の閉曲線CLで表される領域内に形成される。バブリング流動層は、不燃物排出口11を挟んで閉曲線CLで表される領域の反対側の領域に形成される。図2に示すように、不燃物排出口11の中心11oは円筒状の炉本体10の中心(軸心)10oから偏芯して設けられている。
【0032】
また、スクリューフィーダからなる廃棄物供給装置40は、中心11oと中心10oとを結ぶ線を延長した線上にあって不燃物排出口11から最も離間した位置の炉壁に設けられている。そのため、廃棄物供給装置40の先端部にある廃棄物供給口41の直下の炉床にある廃棄物供給部と不燃物排出口11との間に、大きな面積の循環流流動層(概略扇面状の閉曲線CLで示す)を形成することができる。この循環流流動層は水平断面が概略扇面状の流動床をなし、この概略扇面状の流動層においては炉内周辺部の移動層と炉内中央部の流動層との間で流動媒体の循環流を形成する際に流動媒体が円の周方向に拡散することなく、水平断面が矩形の流動床に類似した流動媒体の循環流となる。そして、廃棄物供給口41の直下には、流動媒体が比較的ゆっくりした速度で上方から下方に移動する移動層21が形成されるため、廃棄物供給装置40から流動床20に供給された廃棄物Wを移動層21の沈降流により直ちに飲み込ませることができる。
【0033】
図4においてはまた、散気ノズル31の流動化空気量をC1−1とC2−1とで差を設けることにより強流動化域SFにおいて流動化速度に差をつけることもできる。このようにすることで強流動化域SFの流動を細かく調整できる。さらに、3つの円弧C3,C4,C5の上方に形成される弱流動化域WFにおいてもC3,C4,C5の順に円弧の流動化空気量を相対的に小さくし、2段階又は3段階の差をつけた流動化速度となるようにすることもできる。このようにすることで弱流動化域WFの沈降を細かく調整することができる。強流動化域SF及び弱流動化域WFにおいて細やかに流動化速度を変えることにより、流動媒体の上昇及び沈降による熱反応をより効率よく進行させることができる。上述のC1−1とC2−1とで流動化速度に差をつけることで必然的に概略半円の部分C1−2とC2−2のバブリング流動層においても流動化速度に差をつけることができる。
【0034】
図3(a)および図3(b)に示す例においては、床板30の下方の空間を仕切板34によって2つの空気箱35,36に分割したが、仕切板34を省略して1つの空気箱としてもよい。その場合には、2つの同心円C1,C2がある領域の単位面積当たりの散気ノズル31の個数を3つの円弧C3,C4,C5がある領域の単位面積当たりの散気ノズル32の個数よりも多くすることにより、2つの同心円C1,C2がある領域の流動化空気量を3つの円弧C3,C4,C5がある領域の流動化空気量より多くして流動化速度に差をつけるようにすればよい。もしくは、2つの同心円C1,C2がある領域の単位面積当たりの散気ノズル31の通気抵抗が3つの円弧C3,C4,C5がある領域の単位面積当たりの散気ノズル32の通気抵抗より小さくなるように散気ノズル31および散気ノズル32の孔径を調整することにより、2つの同心円C1,C2がある領域の流動化空気量を3つの円弧C3,C4,C5がある領域の流動化空気量より多くして流動化速度に差をつけるようにすればよい。
【0035】
しかしながら、散気ノズルの個数や吹き出し孔径が決まってしまうと、流動化空気量を変更した場合に流動化空気量の配分も変化することになる。このため、流動化空気量の大小の配分を変えないで、流動化空気量の調整を可能とするために、床板下の空気箱を分割(同心円状に)して、それぞれの空気箱毎の流動化空気量を調整できるようにすることが好ましい。
図3(a)および図3(b)に示す例においては、床板30の下方の空間を仕切板34によって2つの空気箱35,36に分割したが、2つの同心円C1,C2において流動化空気量に差を設ける場合は、各円が存在する領域ごとに空気箱35を図示しない仕切板によりさらに分割してもよい。同様に3つの円弧C3,C4,C5においても空気箱36をさらに2分割(たとえばC3とC4及びC5とに分割)するか若しくは各円弧毎に3分割にすることによりC3,C4,C5の各領域の流動化空気量に2段階又は3段階の差をつけるようにしてもよい。
【0036】
次に、図1乃至図4に示すように構成された円筒形流動床炉1の作用を説明する。流動床炉1で処理される廃棄物Wは、典型的には、都市ごみ、汚泥、木くず等の、質や量が不均一であって、燃焼が不安定になりがちなものを想定しており、本実施の形態では都市ごみであるとして説明する。廃棄物Wは、概ね、水分と可燃分と灰分(不燃物を含む)とからなり、熱反応によって、水分は蒸発し、可燃分は一部が可燃ガス(熱分解ガス)として揮発し、熱分残渣Wrとなる。廃棄物Wから水分が蒸発し可燃ガスが揮発したもの、すなわち未燃物(チャー)Wcおよび不燃物Wnが熱分解残渣Wrである。熱分解残渣Wr中の未燃物(チャー)Wcは、流動層22内で不燃物Wnと分離されたうえで流動層22内で一部が燃焼して燃焼ガスや微細な未燃物(チャー)Wcとして流動化空気と共にフリーボード13に送られるのが好ましい。
【0037】
廃棄物Wは、スクリューフィーダからなる廃棄物供給装置40によって、移動層21に供給される。このとき、調節弁V1,V2の開度を調節して流動層22および移動層21に供給する流動化空気の流量を調節している。典型的には、流動層22に供給する流動化空気は、調節弁V1により、流動層22の流動媒体を上方へ運搬しつつ移動層21に到達するまで移動させることができ、かつ所定の基準で未燃物(チャー)Wcを燃焼させることができる空気(酸素)を流動層22に供給できる流量に調節される。「所定の基準で未燃物(チャー)Wcを燃焼させる」とは、典型的には、所定の濃度を超えた未燃物が不燃物Wnと共に流動床炉1外に流出しない程度に流動床20内の未燃物濃度を低下させると共に、流動層22から移動層21へ移った流動媒体によって移動層21における廃棄物Wの熱分解を適切に行うことができる熱量を流動媒体が保有するように流動層22において未燃物(チャー)Wcを燃焼させることである。
【0038】
ここで「所定の濃度を超えた未燃物が不燃物Wnと共に流動床炉1外に流出しない」未燃物の「所定の濃度」は、典型的には、流動媒体や不燃物Wnに未燃物(チャー)Wcが付着して同伴されると、ダイオキシン類は未燃物(チャー)Wcに含まれやすいため、不燃物Wnのダイオキシン類濃度が高くなることがないように、未燃物の濃度が0〜0.1重量%になるように管理される。
【0039】
そして、所定の濃度を超えた未燃物が不燃物Wnと共に流動床炉1外へ排出しないようにするため、移動層21における廃棄物Wの熱分解は、流動層22に移動したときに未燃物(チャー)Wcの不燃物Wnからの剥離が適切に行われる程度の脆さの熱分解残渣Wrを生成することができるようにする(廃棄物Wの適切な熱分解)。他方、移動層21に供給する流動化空気は、移動層21の流動媒体を流動層22との間で循環流動させることができる流量に調節される。移動層21に供給する流動化空気の質量流量が流動層22に供給する流動化空気の質量流量よりも小さくなるように調節し、本実施の形態では移動層21に供給する流動化空気の質量流量を0.5〜1.5Gmf、流動層22に供給する流動化空気の質量流量を1.5〜5Gmf程度としている。なお、流動媒体が流動化を開始する質量流量が1Gmfとなる。
【0040】
移動層21に供給された廃棄物Wは、移動層21に飲み込まれて流動媒体と共に下方に移動する。このとき、流動媒体の熱によって廃棄物Wの乾燥及び熱分解が行われて、廃棄物W中の水分が蒸発し、廃棄物W中の可燃分から可燃ガスが発生して、脆い熱分解残渣Wrとなる。熱分解残渣Wrは、典型的には、不燃物Wn及び熱分解によって脆くなった未燃物(チャー)Wcを含んでいる。移動層21で生成される熱分解残渣Wrは、流動媒体と共に、床板30に至ると、傾斜した床板30に沿って流動層22に向かう。流動層22に至った熱分解残渣Wrは、流動化空気により未燃物(チャー)Wcが不燃物Wnから剥離し、未燃物(チャー)Wcが剥離して残った不燃物Wnは一部の流動媒体と共に不燃物排出口11に向かう。このとき、不燃物排出口11は円筒状の炉本体10の中心(軸心)10oから距離Lだけ偏芯しているので、不燃物Wnから未燃物(チャー)Wcが剥離するための移動距離を確保することができ、熱分解残渣Wr中の不燃物Wnが確実に流動層22の一定距離を移動することとなって、未燃物(チャー)Wcと不燃物Wnとの分離を適切に行うことができる。不燃物Wnは、一部の流動媒体と共に不燃物排出口11へ流入して流動床炉1外へ排出され、不燃物分離装置(不図示)において未酸化かつ未燃物(チャー)の付着がない状態で回収される。不燃物分離装置(不図示)で不燃物Wnが回収された後の流動媒体は、流動媒体循環装置(不図示)を介して炉本体10内に戻される。
図3(b)に示すように、不燃物排出口11の半径をR、不燃物排出口11の中心11oから炉本体10の炉壁までの半径をR、不燃物排出口11の中心11oから仕切板34までの半径をRとすると、流動層の移動距離は(R−R)である。不燃物排出口11の中心11oは円筒状の炉本体10の中心(軸心)10oから距離Lだけ偏芯させているため、Rが大きくなり、流動層の移動距離が大きくなる。ちなみにR=R/√2である。
【0041】
他方、不燃物Wnから剥離した未燃物(チャー)Wcは、流動化空気が供給されることに伴って流動する流動媒体と共に上方に移動する。このとき、未燃物(チャー)Wcは、供給された流動化空気によって燃焼が行われ、流動媒体を加熱しつつ燃焼ガスを発生し、気体に搬送される程度の微細な未燃物(チャー)及び灰分の粒子となる。流動層22においては、未燃物(チャー)Wcの燃焼に伴って徐々に温度が上昇して行くので、下部から上部に行くにつれて温度が比例的に上昇して行く。他方、流動層22の上部に至った流動媒体は、移動層21に流入する。流動媒体は、流動層22において、移動層21に流動したときに廃棄物Wの熱分解を適切に行うことができる温度に上昇させられる。移動層21に流入した流動媒体は、再び供給された廃棄物Wを受け入れて、上述の移動層21及び流動層22における熱反応を繰り返す。
【0042】
上記のように作用する流動床炉1では、未燃物(チャー)Wcが不燃物Wnから剥離しきらずに不燃物Wnと共に不燃物排出口11に流出することを抑制するため、流動化空気の流量を調節することにより、流動層22の温度を調節する。流動化空気の増減は、未燃物(チャー)Wcの燃焼に用いられる酸素の増減に関係するため、流動層22の温度は、流動化空気の流量を増加させると上昇し、流量を減少させると下降する。
【0043】
他方、都市ごみ等の廃棄物Wは、その性質上、保有熱量にばらつきがあるため、燃焼が安定しにくいという事情がある。単位時間当たりに流動床炉1に導入される廃棄物Wの質や量が安定していないと、可燃ガスや燃焼ガスの発生量が変動するため、流動床炉1内の圧力が変動し、流動床炉1の安定した運転が困難となる。発生する可燃ガスの量の変動を抑制するために、移動層21における廃棄物Wの乾燥及び熱分解を緩やかに行わせることが好ましい。移動層21における廃棄物Wの乾燥及び熱分解が緩やかに行われると、流動層22に入る熱分解残渣Wrの量の変動も抑制されるため、燃焼ガスの発生量の変動も抑制されることとなる。移動層21における廃棄物Wの乾燥及び熱分解を緩やかにするには、移動層21の温度を、廃棄物Wの熱分解を適切に行うことができる範囲で極力低くするとよい。
【0044】
本実施形態の流動床炉1においては、移動層21と流動層22とを有した水平断面が概略扇面状の循環流流動層(閉曲線CLで示される)に加えて、不燃物排出口11を挟んで閉曲線CLで示される領域の反対側にバブリング流動層を形成することにより、不燃物排出口11の周辺の流動化空気量を増やし、固定層を不燃物排出口直上部の最小限の領域として、廃棄物や熱分解残渣(チャー)が不燃物排出口11から排出されないようにしている。
【0045】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 円筒形流動床炉
10 炉本体
10o 中心
11 不燃物排出口
11o 中心
13 フリーボード
20 流動床
21 移動層
22 流動層
30 床板
33 底板
34 仕切板
35,36 空気箱
31,32 散気ノズル
40 廃棄物供給装置
41 廃棄物供給口
51,52,53 空気管
54 空気ブロワ
C1,C2,C3,C4,C5 同心円
d 内径
L 偏芯距離
SF 強流動化域
WF 弱流動化域
V1,V2 調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理する流動床炉において、
水平断面が円形に形成された円筒形の炉本体と、
前記炉本体の底部に配置され、流動化ガスを供給して流動媒体を流動させる気体供給口を設けた床板と、
前記円筒形の炉本体の底部に設けられ、該円筒形の炉本体の軸心から偏芯して配置された不燃物排出口と、
前記円筒形の炉本体の軸心を挟んで前記不燃物排出口と反対側にある炉壁に設けられた廃棄物供給口とを備え、
前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口から噴出される流動化ガスの供給量に廃棄物供給口側と不燃物排出口側とで差を設けて前記不燃物排出口側の流動化速度を前記廃棄物供給口側の流動化速度より大きくし、前記廃棄物供給口側に流動媒体が沈降する移動層を形成し、前記不燃物排出口側に流動媒体が上昇する流動層を形成したことを特徴とする円筒形流動床炉。
【請求項2】
前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口を廃棄物供給口側の気体供給口と不燃物排出口側の気体供給口とに2つ以上に分けることを特徴とする請求項1記載の円筒形流動床炉。
【請求項3】
前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の床板に設けられた気体供給口は前記床板の下に設けた空気箱に仕切りを設けて分割することにより区画したことを特徴とする請求項2記載の円筒形流動床炉。
【請求項4】
前記廃棄物供給口がある側の炉壁と前記不燃物排出口との間の炉内領域に、前記移動層と前記流動層との間を流動媒体が循環する循環流が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形流動床炉。
【請求項5】
前記円筒形の炉本体の軸心を挟んで前記廃棄物供給口がある側の炉壁と反対側の炉壁と、前記不燃物排出口との間の流動化速度を前記不燃物排出口側の大きな流動化速度と同等にして、不燃物排出口周囲に流動媒体が上下動を繰り返すバブリング流動層を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の円筒形流動床炉。
【請求項6】
前記床板に設けられた前記気体供給口は、前記不燃物排出口を中心とした同心円上および同心の円弧上に配列されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の円筒形流動床炉。
【請求項7】
前記廃棄物供給口の位置にスクリューフィーダからなる廃棄物供給装置を設置したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の円筒形流動床炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251748(P2012−251748A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125985(P2011−125985)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(308024395)荏原環境プラント株式会社 (8)
【Fターム(参考)】