説明

円筒形状物の外観検査装置

【課題】 汚れに強く、段取りやメンテナンスを容易化すると共に、コスト低減を図ることができる円筒形状物の外観検査装置を提供する。
【解決手段】 この外観検査装置は、円筒形状物である被検査物の外観を検査するものである。外観検査装置は、回転自在に設置され回転中心軸L1と同心に配置した軸受1の端面を接触させる端面治具5と、端面治具5の軸受1を接触させる側面に回転中心軸L1と同心に設けられた円錐面状の照明反射部6と、外輪3を回転させる駆動装置18と、外輪押えローラー19と、内輪押えローラー20と、照明反射部6に照射する照明装置8と、この照明装置8で照射され照明反射部6および内輪2の内周面2aで順次反射された反射光により内輪2の内周面2aを撮像する撮像装置11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒形状物の外観検査装置に関し、例えば、軸受の内周面等の外観を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形状物の内周面を検査する装置が種々提案されている。例えば、図9に示すように、先端に円錐状鏡面部が設けられたミラー部品50を、検査対象の部品51に挿入することで、貫通孔の内面に光を照射すると共に孔の内面画像を撮像する外観検査装置が提案されている(特許文献1)。
また図10に示すように、ワークWを基台52に端面を上にして載置し、このワークWの内側に反射体53を配置し、投光手段54によりワークWの内周面に向けて照射する。ワークWの内周面から反射した反射光は、反射体53により方向を変え、撮像手段55に受光される外観検査装置も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−205218号公報
【特許文献2】特開平11−44650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の図9の外観検査装置では、照明だけでなく映像も反射させて撮像することから、ミラー部品50の鏡面部は汚れが無いことが必須と考えられる。しかし、例えば、軸受製造ラインは、一般的に研磨工程等の他工程からのミストの侵入等がある場合もある。したがって、ミラー部品50で実像を撮像する場合、このミラー部品50がミスト等で汚れてしまう等ミラー部品50の表面状態にばらつきが生じると、検査精度に影響することから、汚れに強い検査法が求められる。
ミラー部品50は、軸受の外径・内径サイズに合わせてセットする必要がある段取り部品となる。このため、軸受の各種サイズに対応させるためには、複数の段取り部品を準備する必要があるため、段取り部品のコストが掛かる。
【0005】
従来の図10の外観検査装置では、撮像手段としていわゆるエリアカメラを使用しており、ワークWが大型となった場合、カメラ分解能を高く維持したまま撮像するためには、円弧状に分割撮像する必要がある。このため、検査対象またはカメラを操作する必要がある。全体を1撮像で検査する場合、内径内部の非検査空間の撮像エリアとなり、無駄が生じると共に、高解像度のカメラが必要となり、高コストのシステムとなる。
【0006】
ここでラインカメラによりワークを回転させて撮像することが考えられる。しかし軸受は、内輪と外輪が転動体を介し、自由に回転することから、ワーク全体を同一回転数で回転させ、回転数を測定することで全面検査が出来たことを測定するシステムの構築が必須となる。
【0007】
この発明の目的は、汚れに強く、段取りやメンテナンスを容易化すると共に、コスト低減を図ることができる円筒形状物の外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の円筒形状物の外観検査装置は、円筒形状物である被検査物の外観を検査する円筒形状物の外観検査装置において、回転自在に設置され回転中心軸と同心に配置した前記被検査物の端面を接触させる端面治具と、前記端面治具の被検査物を接触させる側面に回転中心軸と同心に設けられた円錐面状の照明反射部と、前記端面治具と前記被検査物とを共回りさせる回転機構と、前記照明反射部に照射する照明装置と、この照明装置で照射され前記照明反射部および前記被検査物の内周面で順次反射された反射光により前記被検査物の内周面を撮像する撮像装置とを備えたものである。
【0009】
この構成によると、照明装置から照射された光は、照明反射部および被検査物の内周面で順次反射される。撮像装置は、この反射光により被検査物の内周面を撮像する。端面治具は、被検査物の端面に接触しており、検査時、これら端面治具と被検査物とを、回転機構により共回りさせる。撮像装置で撮像した画像は、例えば、画像処理ユニットに取り込み、画像処理判定を行う。この判定結果を出力する等することで、被検査物の内周面の外観を検査し得る。
【0010】
照明反射部に映った実体を検査するのではなく、照明反射部を単に照明を反射する部材として使用している。このため、照明反射部の全面または一部が汚れたとしても、検査精度の劣化を軽減し、被検査物を検査することが可能となる。
照明反射部は、照明のみを拡散させて照射させるものであるため、照明装置から拡散光を被検査物に照射し、照明装置と同じ側に設置された撮像装置で撮像可能となる。したがって、外観検査装置を設備化するうえで、設備前面に、照明装置、撮像装置を設置できるため、段取りやメンテナンスが容易となる。これにより外観検査装置全体のコスト低減を図ることができる。
また端面治具は、回転自在に設置され回転中心軸と同心に配置した被検査物の端面を接触させるうえ、回転機構がこれら端面治具と被検査物とを共回りさせる。このため、被検査物のサイズによらず、撮像装置の分解能を高く維持したまま、被検査物の内周面の全周を検査することができる。
【0011】
前記回転機構は、被検査物をその軸心回りに回転させる駆動装置を有し、この駆動装置により、前記被検査物の端面に接触させた端面治具を共回りさせるものとしても良い。
前記回転機構は、端面治具を被検査物の軸心回りに回転させる駆動装置を有し、この駆動装置により、前記端面治具に接触させた被検査物を共回りさせるものとしても良い。
前記被検査物を軸受とし、この軸受における内輪の内周面を前記撮像装置で撮像するものとしても良い。この場合、軸受を回転機構により連続回転させて、検出したい欠陥等を検査し得る。
【0012】
前記端面治具と内輪端面とを接触させ、前記回転機構は、これら端面治具と内輪とを共回りさせるものとしても良い。
前記端面治具と内輪端面および外輪端面とを接触させ、前記回転機構は、これら端面治具、内輪、および外輪を一体に共回りさせるものとしても良い。
これらの場合、端面治具と被検査物とを共回りさせる回転機構を簡単な構成にすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0013】
前記回転機構は、内輪と外輪とを同期回転させる駆動装置を有するものとしても良い。内輪は転動体を介して外輪に対し相対的に自由に回転するが、駆動装置により、内輪と外輪とを同期回転させることで被検査物全体を所望の回転数で回転させて、被検査物の内周面の全周を検査することができる。
前記前記回転機構は、被検査物の外周面の円周方向複数箇所を載置支持する複数の回転ローラーを有し、これら回転ローラーは、端面治具の回転中心軸にそれぞれ平行で回転自在に支持されるものとしても良い。このように複数の回転ローラーで被検査物の外周面を載置支持するため、これら回転ローラーの相対位置を変更するだけで、種々の外径寸法の被検査物を容易に載置できる。したがって、外観検査装置の汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の円筒形状物の外観検査装置は、円筒形状物である被検査物の外観を検査する円筒形状物の外観検査装置において、回転自在に設置され回転中心軸と同心に配置した前記被検査物の端面を接触させる端面治具と、前記端面治具の被検査物を接触させる側面に回転中心軸と同心に設けられた円錐面状の照明反射部と、前記端面治具と前記被検査物とを共回りさせる回転機構と、前記照明反射部に照射する照明装置と、この照明装置で照射され前記照明反射部および前記被検査物の内周面で順次反射された反射光により前記被検査物の内周面を撮像する撮像装置とを備えている。このため、汚れに強く、段取りやメンテナンスを容易化すると共に、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図2】同外観検査装置の正面図である。
【図3】同外観検査装置の画像処理装置のブロック図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図6】この発明のさらに他の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係る外観検査装置の概略構成図である。
【図9】従来例の外観検査装置の断面図である。
【図10】他の従来例の外観検査装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の第1の実施形態に係る外観検査装置を図1ないし図3と共に説明する。以下の説明は円筒形状物の外観検査方法についての説明をも含む。
この実施形態に係る外観検査装置は、図1に示すように、例えば、円筒形状物である被検査物を軸受1とし、この軸受1の外観を検査する装置に適用される。前記軸受1として、内外輪2,3および転動体4が組立てられた転がり軸受の組立品が検査に供される。この外観検査装置では、軸受1における、内輪2の内周面2a、外輪3の外周面3a、内外輪2,3の端面2b,3bの性状がそれぞれ検査され、疵、素材欠陥、および加工不良の少なくともいずれか1つを検出可能となっている。図1、図2の例では、転がり軸受として玉軸受が適用されているが、ころ軸受や自動調心軸受を適用することも可能である。被検査物は、軸受1に限定されるものではなく、円筒形状物であれば良い。軸受1の組立品ではなく、内輪2、外輪3、および図示外の保持器のいずれか一つの軸受部品を被検査物としても良い。
【0017】
図1に示すように、外観検査装置は、端面治具5と、照明反射部6と、回転機構7と、照明装置8,9,10と、撮像装置11,12,13と、モニタ14と、画像処理装置15とを有する。端面治具5は、この例では、水平軸心回りに回転自在に設置され、この回転中心軸L1と同心に配置した軸受1の外輪3の一端面を接触させるようになっている。端面治具5は、略円盤状に形成され、図示外の基台に、回転中心軸L1回りに回転自在に支持されている。端面治具5において、外輪3の一端面を接触させる一側面に、接触部16、環状段差部17、および照明反射部6がそれぞれ設けられている。接触部16は、外輪3の一端面が接触する部分であり、環状段差部17よりも軸方向に突出するように設けられる。この接触部16の径方向寸法は、例えば、外輪3の外径寸法および内径寸法に応じて適宜定められる。
【0018】
端面治具5の一側面には、この端面治具5の回転中心軸L1と同心に、円錐面状の照明反射部6が設けられている。この照明反射部6は、端面治具5の軸方向内方に向かうに従って凹となる円錐面状であり、照明装置8、撮像装置11、および被検査面である内輪2の内周面2aの位置関係等に応じて、円錐角αが定められる。また照明反射部6は、回転中心軸L1に対し360度同一形状の円錐面状に形成されている。
【0019】
回転機構7について説明する。
図2に示すように、回転機構7は、端面治具5と被検査物とを共回りさせる機構であり、外輪3を回転させる駆動装置18と、外輪3を押さえて外輪3の回転力により受動的に回転する外輪押えローラー19と、軸方向に与圧力を与えて軸方向の隙間をなくして外輪3,転動体4,内輪2のそれぞれの摩擦力にて、外輪3が回転することにより前記外輪3と内輪2とを一体に回転させる内輪押えローラー20とを有する。駆動装置18は、前記基台に設置されており、2個の回転ローラー18a,18aを有する。各回転ローラー18a,18aは、端面治具の回転中心軸L1に対しそれぞれ平行で駆動装置18により回転駆動可能に設けられる。これら回転ローラー18a,18aは、外輪3の外周面3aの円周方向二箇所を載置支持して外輪3に回転力を与えるものであり、外輪3の外径寸法に応じて互いに離隔させて設けられる。外輪3の外周面のうち円周方向位置の異なる二箇所を、2個の回転ローラー18a,18aの外周面にそれぞれ載置させている。また安定的に外輪3を回転させるために、外輪3の外周面3の他の一箇所を、外輪押えローラー19により押さえている。
【0020】
図1に示すように、この外輪押えローラー19は、回転中心軸L1に平行で回転自在に支持される。また外輪押えローラー19は、外輪3が一定回転数で回転したかを計測する回転検出機構22を有する。この回転検出機構22は、例えばエンコーダが採用され、前記基台に設けられている。外輪3が駆動装置18により回転力を与えられて回転すると、外輪押えローラー19は、この外輪押えローラー19の外周面と外輪3の外周面3aとの摩擦力により、受動的に回転するようになっている。なお外輪押えローラー19は、例えば上下移動可能に構成され、外輪押えローラー19が外輪3の外周面3aよりも径方向外方に離隔した上方位置にて軸受1を装置に着脱可能とし、外輪押えローラー19が外輪3を押える下方位置(図1)にて軸受1が外観検査に供されるようになっている。
前記エンコーダでは、外輪押えローラー19の回転に伴い、この外輪押えローラー19と一体に図示外の回転スリット板が回転し、その回転を光学式センサ部で検出する。この光学式センサ部では、回転する回転スリット板の各スリットが発光素子と受光素子の光軸上を通過する毎に、発光素子からの放射光を受光素子で受光する。その検出信号を波形整形回路等で処理して、回転スリット板の回転すなわち外輪押えローラー19および外輪3の回転を検出する。
【0021】
内輪押えローラー20は、その外周面で内輪2の一端面2bを押さえて軸受軸方向に与圧力を与えて軸方向の隙間をなくして、内外輪2,3および転動体4と共に一体回転するものである。この内輪押えローラー20は、回転中心軸L1に直交する軸心L2回りに、回自在に支持される。内輪押えローラー20は、内輪2が一定回転数で回転したかを検出する回転検出機構24を有する。この回転検出機構24も、前述のエンコーダが採用され、前記基台に設けられている。外輪3が駆動装置18により回転力を与えられて回転すると、外輪3,転動体4,内輪2のそれぞれの摩擦力にてこれら軸受構成部品が一体回転するようになっている。なお内輪押えローラー20は、前後(図1左右方向)に移動可能に構成され、内輪押えローラー20が内輪2の端面2bよりも離隔した離隔位置にて軸受1を装置に着脱可能とし、内輪押えローラー20が内輪2の端面2bを押える接触位置にて軸受1が外観検査に供されるようになっている。なおモニタ14には、外輪押えローラー19および外輪3の回転数と、内輪押えローラー20および内輪2の回転数とがそれぞれ出力され、各回転数が一定回転数で回転しているか(つまり内外輪2,3および転動体4が一体に回転しているか)を目視確認し得る。
【0022】
照明装置8は、照明反射部6に光を照射する装置であって、端面治具5の一側面に対向する設備前面(図1右側)に設置されている。この照明装置8は、内輪2の内周側空間を介して照明反射部6に照射する。撮像装置11は、この照明装置8で照射され照明反射部6および内輪2の内周面2aで順次反射された反射光により、内輪2の内周面2aを撮像する。この撮像装置11は、前記照明装置8と同様に設備前面で反射光の向きに対向する傾斜姿勢で設置される。
図2に示すように、照明装置9は、外輪3の外周面3aに光を照射する装置であって、外輪3の半径方向外方に設置されている。撮像装置12は、外輪3の半径方向外方に設置され、前記照明装置9で照射された外輪3の外周面3aを撮像する。図1に示すように、照明装置10は、内外輪2,3の端面2b,3bに光を照射する装置であって、端面治具5の一側面に対向する設備前面に設置されている。撮像装置13は、前記照明装置10で照射された内外輪2,3の端面2b,3bを撮像する。
【0023】
各撮像装置11,12,13、モニタ14、および画像処理装置15は電気的に接続され、各撮像装置11,12,13で撮像された画像が、表示装置であるモニタ14で表示されると共に、画像処理装置15にて処理され、例えば、疵、素材欠陥、加工不良等の自動判別に用いられる。前記素材欠陥とは、例えば、黒皮残りやクラック等を意味し、前記加工不良とは、例えば、研石の当たり異常等を意味する。但し、これらの内容に限定されるものではない。
【0024】
画像処理装置15は、各撮像装置11,12,13で撮像した画像を表面性状の判定を容易化した画像、つまり画像データに処理する画像処理手段15aと、この画像処理手段15aで処理された画像データを、欠陥候補を抽出した後、輝度や、長さ、面積等幾何学的な特徴により、定量評価できる閾値で判定を行う判定手段15bと、各種定量評価するデータベースを記憶した記憶手段15cとを有する。画像処理手段15aで実行する画像処理としては、例えば、2値化処理や、グレースケール処理、明暗を強調する処理、または濃淡の領域を計算する処理等、いずれの処理であっても良い。なお判定手段15bは、内外輪2,3等に施された刻印やレーザーマーカーの認識のため、記憶手段cに事前に登録保存された文字との照合を行なう機能を有しても良い。
駆動装置18により、内外輪2,3を一体に同一回転数で連続回転させながら、各被検査面の展開画像を撮像する。つまり外輪3の外周面3aに照明装置9で光を照射し、前記外周面3aの展開画像を撮像装置12により撮像する。画像処理装置15は、例えば、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータ等のコンピュータと、これに実行されるプログラムやデータからなるが、独立して設けられた電子回路であっても良い。
【0025】
作用効果について説明する。
回転ローラー18a,18a上に、被検査物である軸受1を外輪3が接触するように載置し、外輪押えローラー19により外輪3を上部から押さえる。次に、内輪2の一端面を内輪押えローラー20で軸方向に加圧し、転動体4を介して、内外輪2,3を一体で回転できる状態にする。その後、駆動装置18により、内外輪2,3を一体に連続回転させながら、各被検査面の展開画像を撮像する。つまり外輪3の外周面3aに照明装置9で光を照射し、前記外周面3aの展開画像を撮像装置12により撮像する。内外輪2,3の端面2b,3bに照明装置10で光を照射し、前記端面2b,3bの展開画像を撮像装置13により撮像する。照明反射部6に照明装置8で光を照射し、照明反射部6および内輪2の内周面2aで順次反射された反射光により、前記内周面2aの展開画像を撮像する。撮像された各画像は、モニタ14で表示されると共に、画像処理装置15にて処理され、例えば、疵、素材欠陥、加工不良等の判定に用いられる。モニタ14には、画像処理装置15で判定された判定結果(疵:有りまたは無し)が各画像と共に表示される。
【0026】
内輪2の内周面2aを検査するとき、照明反射部6に映った実体を検査するのではなく、照明反射部6を単に照明を反射する部材として使用している。このため、照明反射部6の全面または一部が汚れたとしても、検査精度の劣化を軽減し、被検査物を検査することが可能となる。したがって、研磨工程等の他工程からのミストの侵入等がある軸受製造ラインにおいても、この外観検査装置を用いて軸受1を検査することができる。
照明反射部6は、照明のみを拡散させて照射させるものであるため、照明装置8から拡散光を被検査物に照射し、照明装置8と同じ側に設置された撮像装置11で撮像可能となる。したがって、外観検査装置を設備化するうえで、設備前面に、照明装置8、撮像装置11を設置できるため、段取りやメンテナンスが容易となる。これにより外観検査装置全体のコスト低減を図ることができる。
また端面治具5は、回転自在に設置され回転中心軸L1と同心に配置した軸受1の一端面を接触させるうえ、回転機構7がこれら端面治具5と軸受1とを共回りさせる。このため、軸受サイズによらず、撮像装置11の分解能を高く維持したまま、内輪内周面2aの全周を検査することができる。
【0027】
他の実施形態について説明する。以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
図4に示すように、円筒形状物である被検査物Wをその軸心回りに回転させる駆動装置21を設けた構成としても良い。この駆動装置21の回転軸21aに外輪押えローラー19が設けられている。図5に示すように、端面治具5を被検査物Wの軸心回りに回転させる駆動装置25を設けた構成としても良い。図5の駆動装置25としては、端面治具5の他側面に同駆動装置25の回転軸を連結したものであっても良いし、駆動装置25により回転するローラの端面と、端面治具5の他側面との摩擦力により、端面治具5を回転させるものであっても良い。これらの場合、第1の実施形態のような内輪押えローラー20や回転ローラー18a,18aが不要となるため、外観検査装置の構造を簡単化でき、コスト低減を図れる。
【0028】
図6に示すように、端面治具5の接触部16と、軸受1の内輪端面とを接触させ、これら端面治具5と内輪2とを共に回転可能に設けた構成としても良い。図7に示すように、端面治具5の接触部16と、内外輪2,3の端面とを接触させて固定し、端面治具5と内外輪2,3とが一体に回転する構成としても良い。これらの場合にも、同期回転させる他の駆動装置が不要となるため、外観検査装置の構造を簡単化でき、コスト低減を図れる。
【0029】
図8に示すように、端面治具5の接触部と、内外輪2,3の端面とを接触させ、内外輪2,3を同期回転させる駆動装置21,23をそれぞれ設けても良い。この図8の例では、外輪押えローラー19は、例えばモータ等の駆動装置21により回転駆動可能に構成される。駆動装置21は前記基台に設けられている。駆動装置21により外輪押えローラー19を回転させることで、この外輪押えローラー19の外周面と外輪3の外周面3aとの摩擦力により、外輪3を回転させるようになっている。この外輪回転時、図示しない回転ローラー18a,18a(図1)は、外輪3を支持すると共に、外輪3の外周面との摩擦力により回転する。回転検出機構22は、内輪2と外輪3とを同期回転させるために用いられる。
【0030】
内輪押えローラー20は、例えばモータ等の駆動装置23により回転駆動可能に構成される。駆動装置23は前記基台に設けられている。駆動装置23により内輪押えローラー20を回転させることで、この内輪押えローラー20の外周面と内輪2の一端面2bとの摩擦力により、内輪2を回転させるようになっている。回転検出機構24も、例えば、前述のエンコーダ等が採用される。駆動装置21,23を制御する制御装置(図示せず)は、回転検出機構22,24からそれぞれ検出された内外輪2,3の回転数の情報が入力され、内外輪2,3つまり転がり軸受全体を同一回転数で回転させるように駆動装置21,23を同期制御する。
【符号の説明】
【0031】
1…軸受
2…内輪
2a…内周面
3…外輪
5…端面治具
6…照明反射部
7…回転機構
8,9,10…照明装置
11,12,13…撮像装置
18…駆動装置
22,24…回転検出機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状物である被検査物の外観を検査する円筒形状物の外観検査装置において、
回転自在に設置され回転中心軸と同心に配置した前記被検査物の端面を接触させる端面治具と、
前記端面治具の被検査物を接触させる側面に回転中心軸と同心に設けられた円錐面状の照明反射部と、
前記端面治具と前記被検査物とを共回りさせる回転機構と、
前記照明反射部に照射する照明装置と、
この照明装置で照射され前記照明反射部および前記被検査物の内周面で順次反射された反射光により前記被検査物の内周面を撮像する撮像装置と、
を備えた円筒形状物の外観検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回転機構は、被検査物をその軸心回りに回転させる駆動装置を有し、この駆動装置により、前記被検査物の端面に接触させた端面治具を共回りさせるものとした円筒形状物の外観検査装置。
【請求項3】
請求項1において、前記回転機構は、端面治具を被検査物の軸心回りに回転させる駆動装置を有し、この駆動装置により、前記端面治具に接触させた被検査物を共回りさせるものとした円筒形状物の外観検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記被検査物を軸受とし、この軸受における内輪の内周面を前記撮像装置で撮像するものとした円筒形状物の外観検査装置。
【請求項5】
請求項4において、前記端面治具と内輪端面とを接触させ、前記回転機構は、これら端面治具と内輪とを共回りさせるものとした円筒形状物の外観検査装置。
【請求項6】
請求項4において、前記端面治具と内輪端面および外輪端面とを接触させ、前記回転機構は、これら端面治具、内輪、および外輪を一体に共回りさせるものとした円筒形状物の外観検査装置。
【請求項7】
請求項4において、前記回転機構は、内輪と外輪とを同期回転させる駆動装置を有する円筒形状物の外観検査装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記回転機構は、被検査物の外周面の円周方向複数箇所を載置支持する複数の回転ローラーを有し、これら回転ローラーは、端面治具の回転中心軸にそれぞれ平行で回転自在に支持される円筒形状物の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96967(P2013−96967A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243149(P2011−243149)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】