説明

円筒歯車研削盤

【課題】創成研削により被研削歯車を研削する円筒歯車研削盤の構成を簡略化する。
【解決手段】被加工物主軸26を上下方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に保持した被加工物主軸台12を上下方向に移動させる。砥石主軸86を左右方向に延びる回転軸線まわりに回転可能に保持した砥石主軸台44を、前後,左右方向に移動させるとともに、前後方向に平行な旋回軸線まわりに旋回させる。被加工物主軸台12を砥石主軸台44の前側に設け、その左側面にドレッサ台110を固定する。砥石主軸台44と被加工物主軸台12との相対移動により砥石90と被研削歯車32との相対位置を合わせ、砥石主軸86と被加工物主軸26との同期回転により創成研削運動を生じさせて砥石90に被研削歯車32を研削させる。いずれも回転しているドレッサ112と砥石90とを接触させ、砥石主軸台44に砥石90の回転と同期した左右方向のドレッシング運動を付与し、ドレッシングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒歯車研削盤に関するものであり、特に、ドレッサを備え、砥石をドレッシングする機能を有する円筒歯車研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砥石のドレッシング機能を備えた円筒歯車研削盤は、例えば、下記の特許文献1に記載されているように広く知られている。特許文献1に記載の円筒歯車研削盤において研削に使用される砥石は、被研削歯車の歯形に応じた形状の研削歯を備え、被研削歯車の歯を1歯ずつ研削する。いわゆる成形研削により被研削歯車の歯を研削するのである。この砥石の研削歯はドレッシングにより形成される。そのため、砥石主軸を水平な回転軸線まわりに回転可能に保持する砥石主軸台は、砥石主軸台移動装置によって上下方向および砥石主軸の回転軸線に直角な水平方向に移動させられるとともに、その水平移動方向に平行な旋回軸線のまわりに旋回させられる。また、ドレッサ軸を回転可能に保持するドレッサ台は、被加工物主軸を回転可能に保持する被加工物主軸台と共に被加工物主軸台移動装置により、砥石の回転軸線に平行な方向に移動させられるとともに、上下方向に平行な軸線まわりに傾けられるようにされている。ドレッサ軸および被加工物主軸はそれぞれ、回転駆動装置により上下方向に平行な回転軸線まわりに回転させられ、これら砥石の水平方向,上下方向の各移動および旋回と、ドレッサの水平方向の移動および傾きとの組み合わせにより、ドレッサによって砥石にドレッシングが施される。
【特許文献1】特開2000−108028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、いわゆる創成研削により被研削歯車の歯を研削するとともに砥石のドレッシング機能を有する円筒歯車研削盤の構成を簡略化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明に係る円筒歯車研削盤は、(A)被研削歯車を保持する被加工物主軸を回転軸線まわりに回転可能に保持した被加工物主軸台と、(B)概して円筒状をなし、外周面に螺旋状の研削歯を備えた砥石を保持する砥石主軸を回転軸線まわりに回転可能に保持した砥石主軸台と、(C)それら被加工物主軸台と砥石主軸台とを相対移動させて前記砥石と前記被研削歯車との相対位置合わせを行う相対移動装置と、(D)前記被加工物主軸を回転駆動する被加工物主軸回転装置と前記砥石主軸を回転駆動する砥石主軸回転装置とそれら両回転装置を同期制御する同期制御装置とを含み、前記砥石と前記被研削歯車とに創成研削運動を付与する創成研削運動付与装置と、(E)ドレッサを保持するドレッサ軸を回転軸線まわりに回転可能に保持したドレッサ台と、(F)ドレッサ軸を回転駆動するドレッサ軸回転装置とを含み、かつ、前記ドレッサ台が前記被加工物主軸台に固定され、前記相対移動装置により前記ドレッサと前記砥石との相対位置合わせおよびドレッシング運動付与が行われることを特徴とする。
上記相対移動装置は、(a)前記砥石主軸台を前記砥石主軸の回転軸線と直交する旋回軸線まわりに旋回させ、かつ、その旋回軸線に平行なX軸方向および直角なZ軸方向に移動させる砥石主軸台移動装置と、(b)前記被加工物主軸台を前記X軸方向およびZ軸方向に直角で前記被加工物主軸に平行なY軸方向に移動させる被加工物主軸台移動装置とを含むものとすることができる。
前面側から見て、前記X軸方向が前後方向、前記Y軸方向が上下方向、前記Z軸方向が左右方向である円筒歯車研削盤においては、前記砥石主軸が右と左との一方から他方に向かって突出した先端部において前記砥石を保持し、前記被加工物主軸台が前記砥石主軸台の前側に設けられ、前記ドレッサ台が前記被加工物主軸台の前記右と左との他方の側に取り付けられる。
このドレッサ台は、前記Y軸方向と平行な回動軸線まわりの姿勢を調節する姿勢調節装置を介して前記被加工物主軸台に取り付けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る円筒歯車研削盤においては、相対移動装置により被加工物と砥石との相対位置合わせが行われ、創成研削運動付与装置により創成研削運動が付与されるとともに相対移動装置の一部により被加工物と砥石とが被加工物の軸方向に相対移動させられて、砥石の研削歯により被研削歯車の歯が研削される。そのため、砥石の研削歯は螺旋状を成すものとされるが、断面形状は、成形研削を行う砥石の研削歯に比較して単純で済む。例えば、台形でよいのであり、ドレッサも円錐台状等単純な形状のもので済む。そのドレッサが取り付けられるドレッサ軸を回転可能に保持したドレッサ台と、砥石主軸台とが、砥石と被研削歯車との相対位置合わせを行う相対移動装置により相対移動させられてドレッサと砥石との相対位置合わせが行われ、ドレッサがドレッサ軸回転装置によりに回転させられるとともに相対移動装置によりドレッサと砥石とにドレッシング運動が付与されてドレッシングが行われる。
このように本円筒歯車研削盤においては、ドレッサ台が被加工物主軸台に固定されるため、ドレッサ台を独立して設ける場合に比較して占有スペースが小さくて済み、創成研削を行う円筒歯車研削盤を小形化することができる。また、ドレッサ台を移動させるための専用のドレッサ台移動装置が不要であり、円筒歯車研削盤をシンプルにかつ安価に構成することができる。例えば、ドレッサ台が砥石主軸台と共に被研削歯車に対して移動可能に設けられる場合には、砥石主軸台と被加工物主軸台とを相対移動させる装置の他に、ドレッシング開始前にドレッサ台を砥石主軸台に対して移動させ、ドレッサと砥石との相対位置合わせを行うためのドレッサ台移動装置が必要であり、構成が複雑となる上、円筒歯車研削盤が大形となる。それに対し、本発明に係る円筒歯車研削盤においては、被加工物主軸台と砥石主軸台とを相対移動させる相対移動装置が、ドレッサ台と砥石主軸台とを相対移動させる装置を兼ねており、部品点数が少なく、小形で安価な円筒歯車研削盤が得られる。
相対移動装置が砥石主軸台移動装置と被加工物主軸台移動装置とを含む場合、砥石主軸台の旋回により砥石の研削歯と被研削歯車の歯との相対的な傾きが調整されるとともに、被加工物主軸台と砥石主軸台との互いに直交するX軸,Y軸およびZ軸方向における相対移動により砥石と被研削歯車との相対位置が合わされ、創成研削運動により被加工歯車の研削が行われる。
「円筒歯車研削盤の前面」は、オペレータが主として円筒歯車研削盤にアクセスする側の面であり、多くの場合、円筒歯車研削盤を覆うカバーの前面側に扉が開閉可能に設けられ、作業者が扉を開けてカバー内部の装置にアクセスすることができるようにされる。被加工物主軸台は砥石主軸台の前側に設けられており、前面側にいる作業者と被加工物主軸台との距離が短く、例えば、被研削歯車の被加工物主軸に対する取付け,取外しを容易にかつ迅速に行うことができる。また、ドレッサ台が被加工物主軸台に取り付けられる場合、被加工物主軸台の左右いずれの側に取り付けられる場合であっても、前面側にいる作業者とドレッサ台との距離が短く、作業者は、メンテナンス,段取替え等の作業を容易にかつ迅速に行うことができる。例えば、円筒歯車生産ラインにおいて生産される円筒歯車の種類が変わり、生産ラインを構成する円筒歯車研削盤において円筒歯車の種類に合わせて砥石やドレッサを変更,調整する段取替えが行われる場合に、砥石の交換と共に、ドレッサの交換やドレッサと砥石との相対位置合わせ等を容易に行うことができるのである。
さらに、姿勢調節装置を含む円筒歯車研削盤においては、ドレッサのY軸方向と平行な回動軸線まわりの姿勢を調節することにより、例えば、円筒歯車研削盤の構成部品の寸法誤差や組立誤差等によるドレッサのドレッシング面と砥石の研削面との相対位置誤差を低減させ、ドレッシング精度を向上させることができる。その結果、高精度で作動音の少ない歯車を安価に提供することができる。
【実施例】
【0006】
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0007】
図1に、本発明の一実施例である円筒歯車研削盤が概略的に図示されている。図1において符号10はベッドである。ベッド10上には被加工物主軸台12が設けられ、案内装置14により案内されつつ被加工物主軸台移動装置16(図3参照)によりY軸方向に移動させられる。本実施例においてY軸方向は上下方向である。案内装置14は、本実施例では、1対の案内部材としてのスプラインバー18と、被案内部材としてのスプラインナット(図示省略)と、複数のボール(図示省略)とを含むボールスプライン案内装置とされている。1対のスプラインバー18は、Z軸方向に並んでベッド10上に立設されている。Z軸方向は水平方向であり、本円筒歯車研削盤を前面側から見て左右方向である。円筒歯車研削盤の前面は、オペレータが主として円筒歯車研削盤にアクセスする側であり、本円筒歯車研削盤においては、被加工物主軸台12と正対する側(被加工物主軸台12にその正面から対する側)が正面側であって前面側とされている。本円筒歯車研削盤は、図示を省略するカバーにより覆われるとともに、そのカバーに扉が開閉可能に設けられ、作業者が扉を開けて円筒歯車研削盤の各種装置等についての作業を行うことができるようにされているが、カバーの前面側の部分に扉が設けられ、作業者は容易に被加工物主軸台12にアクセスすることができる。作業者が主としてアクセスする側に扉が設けられ、その扉が設けられた側が前面側であるということもできる。スプラインナットは被加工物主軸台12に取り付けられるとともに、ボールを循環可能に保持してスプラインバー18に嵌合され、スプラインバー18と共同して被加工物主軸台12の昇降を案内する。このように案内装置14をボールスプライン案内装置とすれば、スプラインナットとスプラインバー18とは精度良く嵌合させることが容易であり、スプラインナットをスプラインバー18に嵌合させた状態で被加工物主軸台12に固定すればよく、円筒歯車研削盤の製造時にガイドレールとスライドとの摺り合わせ作業を行う必要がなくなり、容易に製造することができる。後述するリニアガイド装置により構成される案内装置についても同様である。
【0008】
被加工物主軸台12は、被加工物主軸26を上下方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に保持しており、被加工物主軸台移動装置16は上下方向移動用モータ(図示省略)を駆動源として構成され、被加工物主軸台12を被加工物主軸26に平行な上下方向の任意の位置へ移動させる。被加工物主軸26は被加工物保持部28を備え、心押し部材30と共同して、被加工物としての被研削歯車32を、その軸線が上下方向に平行となる姿勢で保持する。被研削歯車32は、例えば、円筒歯車の一種である平歯車であり、その外周面に軸線に平行に延びる複数の歯34を有する。被加工物主軸26は、被加工物主軸回転装置38(図3参照)により回転駆動される。被加工物回転装置38は被加工物回転用モータ(図示省略)を駆動源とし、被加工物主軸26を正逆両方向に任意の角度回転させる。
【0009】
ベッド10には、被加工物主軸台12に対してX軸方向に隣接して砥石主軸台44が設けられており、砥石主軸台移動装置46により移動させられる。X軸方向は、前記Y軸方向およびZ軸方向に直角な水平方向であり、前後方向である。砥石主軸台44は被加工物主軸台12の後側に設けられており、被加工物主軸台12は砥石主軸台44の前側に設けられている。本実施例では、被加工物主軸台12および砥石主軸台44が並ぶ方向が前後方向であり、被加工物主軸台12側が本円筒歯車研削盤の前面側であり、被加工物主軸台12が円筒歯車研削盤の前部に設けられている。砥石主軸台移動装置46は、砥石主軸台前後方向移動装置48,砥石主軸台旋回装置50および砥石主軸台左右方向移動装置52を含む。砥石主軸台前後方向移動装置48は、前後方向移動台56および前後方向移動台駆動装置58(図3参照)を含む。前後方向移動台56は、ベッド10上に案内装置60により案内されて前後方向に移動可能に設けられている。案内装置60は、本実施例ではリニアガイド装置により構成され、前後方向に平行に設けられた1対の案内部材としてのガイドレール62と、ガイドレール62に移動可能に嵌合された1対の被案内部材としてのスライダ(図示省略)と、スライダにより循環可能に保持されたボール(図示省略)とを含み、前後方向移動台56はスライダを保持してガイドレール62に移動可能に嵌合されている。前後方向移動台駆動装置58は、前後方向移動用モータ(図示省略)を駆動源とし、前後方向移動台56を前後方向において任意の位置へ移動させる。
【0010】
前後方向移動台56上に砥石主軸台旋回装置50が設けられている。砥石主軸台旋回装置50は、旋回台66および旋回台駆動装置68(図3参照)を含む。旋回台66は、前後方向移動台56上に前後方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に設けられている。旋回台駆動装置68は砥石主軸台旋回用モータ(図示省略)を駆動源とし、旋回台66を正逆両方向に任意の角度回転させる。
【0011】
旋回台66上に前記砥石主軸台左右方向移動装置52が設けられている。砥石主軸台左右方向移動装置52は、左右方向移動台74および左右方向移動台駆動装置76(図3参照)を含む。左右方向移動台74は、旋回台66上に案内装置78により案内されて左右方向に移動可能に設けられている。案内装置78は、前記案内装置60と同様にリニアガイド装置とされており、1対のガイドレール80,図示を省略するスライダおよびボールを備え、左右方向移動台74はスライダを保持してガイドレール80に移動可能に嵌合されている。左右方向移動台駆動装置76は左右方向移動用モータ(図示省略)を駆動源とし、左右方向移動台74を左右方向において任意の位置へ移動させる。
【0012】
左右方向移動台74上に前記砥石主軸台44が設けられている。砥石主軸台44は、砥石主軸86を左右方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に保持しており、砥石主軸86は、本実施例では、本円筒歯車研削盤を前面側から見て、右から左に向かって突出させられ、その突出した先端部において砥石90を保持している。砥石90は、概して円筒状をなし、外周面に螺旋状の研削歯92を備えている。砥石90は、研削歯92が複数条の歯の砥石である場合もあり、1条歯の砥石である場合もある。砥石主軸86は、砥石主軸回動装置94(図3参照)により回転駆動される。砥石主軸回転装置94は、砥石主軸回転用モータを駆動源とする。砥石主軸台44は、旋回台66の回転により、前後方向に平行であって、左右方向に延びる砥石主軸86の回転軸線と直交する旋回軸線まわりに旋回させられるとともに、砥石主軸台前後方向移動装置48および砥石主軸台左右方向移動装置52により、旋回軸線に平行な前後方向および直角な左右方向に移動させられる。また、前記被加工物主軸台12の移動方向である上下方向は前後方向および左右方向に直角であり、被加工物主軸台12と砥石主軸台44とを相対移動させる相対移動装置は、砥石主軸台移動装置46および被加工物主軸台移動装置16を含む。
【0013】
図1に示すように、本円筒歯車研削盤を前面側から見て、前記被加工物主軸台12の左側の側面であって、砥石主軸86が突出させられた側の側面にドレッサ台110が取り付けられ、図2に示すように、ドレッサ112を保持するドレッサ軸114を左右方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に保持している。本実施例では、ドレッサ台110は、図2に示すように、姿勢調節装置120を介して被加工物主軸台12に取り付けられ、Y軸方向と平行な回動軸線まわりの姿勢が調節される。姿勢調節装置120は、本円筒歯車研削盤を前面側から見て、被加工物主軸台12から左方へ延び出させられ、被加工物主軸台12に着脱可能に固定されて支持部ないし取付部を構成する支持部材ないし取付部材122に上下方向に立設された支持軸126と、支持軸126の軸線を含み、砥石90の回転軸線に平行な鉛直面内において、本円筒歯車研削盤を前面側から見て支持軸126の軸線から左方へ離れた位置に立設された固定装置の一種であるボルト128とを含む。支持軸126により、ドレッサ台支持部材130が上下方向に平行な軸線まわりに回動可能に支持されるとともに、長穴132においてボルト128の軸部に、長穴132の長手方向に沿って相対移動可能に嵌合されている。長穴132は、支持軸126の軸線を中心とする部分円弧状を成す。
【0014】
ドレッサ台支持部材130は被加工物主軸台12から砥石主軸台44側へ突出させられ、その突出部にドレッサ台110が着脱可能に固定されている。本実施例では、ドレッサ112は1対設けられ、それぞれドレッサ軸114により保持されている。これらドレッサ112はそれぞれ、円錐台形を成し、その回転軸線を中心とする截頭円錐面状のドレッシング面140を備えている。2つのドレッサ軸114は、ドレッサ台110に左右方向に平行な回転軸線まわりに回転可能に、かつ同心状に保持されており、それらドレッサ軸114の互いに対向する側の端部にドレッサ112が、互いに接近するほどドレッシング面140の直径が増大する向きに保持されている。2つのドレッサ軸114はそれぞれ、ドレッサ軸回転装置142により回転駆動される。ドレッサ軸回転装置142はドレッサ軸回転用モータを駆動源とする。
【0015】
本円筒歯車研削盤は、図3に示す制御装置150により制御される。制御装置150はCPU152,ROM154,RAM156およびそれらを接続するバスを含むコンピュータ160を主体とするものである。コンピュータ160には入出力インタフェース164が接続されるとともに、駆動回路166を介して前記被加工物主軸台移動装置16等を制御する。これら被加工物主軸台移動装置16等の駆動源を構成するモータは、アクチュエータの一種であり、本実施例においては、電動モータの一種である電動回転モータであって、回転角度の正確な制御が可能な電動モータの一種であるサーボモータであり、エンコーダ付サーボモータとされている。サーボモータに代えてステップモータを用いてもよい。ROM154には、被研削歯車32の歯34の研削を行うためのプログラム,砥石90をドレッシングするためのプログラム等、各種プログラムおよびデータ等が記憶されている。
【0016】
以上のように構成された円筒歯車研削盤においては、砥石90の研削歯92によって被研削歯車32の歯34に研削加工が施される。この際、被研削歯車32は被加工物主軸26により保持され、砥石90は砥石主軸86により保持されるとともに、砥石主軸台44が砥石主軸台旋回装置50により旋回させられ、砥石90の傾きが調整される。被研削歯車32は、回転軸線まわりにおいて予め定められた位置に位置決めされ、停止させられており、砥石90も回転軸線まわりにおいて定位置に位置決めされ、停止させられている。これら砥石90および被研削歯車32の各定位相位置は、それらが研削開始位置に位置決めされて研削が開始されるとき、研削歯92と歯34とが噛み合って、研削歯92が歯34に研削を施すことができる位置である。この状態から、砥石主軸台44が、砥石主軸台前後方向移動装置48により前後方向に、砥石主軸台左右方向移動装置52により左右方向にそれぞれ移動させられるとともに、被加工物主軸台12が被加工物主軸台移動装置16により上下方向に移動させられて、砥石90と被研削歯車32とが予め定められた研削開始位置に位置決めされる。その後、砥石主軸86および被加工物主軸26が同期回転させられつつ、研削が開始される。被加工物主軸26は、砥石90が1回転させられる間に1歯分(砥石90が1条歯砥石であれば1歯分、2条歯砥石であれば2歯分)回転させられるとともに上下方向に送りを与えられる。このように被加工物主軸26と砥石主軸86との同期回転により付与される創成研削運動と、上下方向の相対移動により付与される送りとにより、研削歯92による歯34の研削が行われる。図4に示すように、被加工物主軸回転装置38および砥石主軸回転装置94が第一同期制御装置170により同期制御され、被加工物主軸26および砥石主軸86が同期回転させられ、その間、被加工物主軸台移動装置16が送り制御装置172により制御されて被加工物主軸26が上下方向に移動させられるのである。第一同期制御装置170は、制御装置150の被加工物主軸回転装置38および砥石主軸回転装置94を制御する部分を含み、被加工物主軸回転装置38および砥石主軸回転装置94と共に創成研削運動付与装置174を構成している。また、送り制御装置172は、制御装置150の被加工物主軸台移動装置16を制御する部分を含み、被加工物主軸台移動装置16および創成研削運動付与装置174と共に研削制御装置176を構成している。本実施例では、相対移動装置の一部である被加工物主軸台移動装置16は、被研削歯車32と砥石90との位置を合わせる相対位置合わせ装置としても、研削時の送り装置としても機能する。
【0017】
砥石90にドレッシングを施す必要が生じた場合には、砥石主軸台44が砥石主軸台前後方向移動装置48および砥石主軸台左右方向移動装置52によって前後方向および左右方向に移動させられるとともに、ドレッサ台110が被加工物主軸台移動装置16により上下方向に移動させられ、砥石90とドレッサ112とがドレッシング開始位置に位置決めされる。その際、必要であれば、ドレッサ112は、上下方向の軸線まわりの姿勢が調整され、ドレッシング面140の研削歯92に対する傾斜角度が調整される。この調整は作業者によって行われる。ボルト128の螺合を緩め、ドレッサ台支持部材130を支持軸126のまわりに回動させてドレッサ台110の上下方向に平行な軸線まわりの姿勢を調節し、調節後、ボルト128を締め付けてドレッサ台支持部材130を取付部122に固定する。ドレッサ台110は、砥石主軸台44の前側に設けられ、本円筒歯車研削盤の前部に位置する被加工物主軸台12に取り付けられているため、前面側に位置する作業者とドレッサ台110との距離が短く、作業者は円筒歯車研削盤を覆うカバーの扉を開け、ドレッサ台110の姿勢を容易に調整することができる。また、ドレッサ台110は被加工物主軸台12の、本研削盤を前面側から見て左側面に取り付けられ、砥石主軸86が突出させられた側と同じ側に取り付けられており、ドレッサ112と砥石90とが左右方向において近く、それらの位置決めやドレッシングが容易に行われる。
【0018】
砥石90とドレッサ112とのドレッシング開始位置への位置決め後、ドレッサ112および砥石90が回転させられるとともに、砥石主軸台左右方向移動装置52によって砥石主軸台44が砥石90の回転に同期して左右方向に移動させられることにより、ドレッシング運動が付与され、図2に二点鎖線で示すように、ドレッサ112のドレッシング面140による砥石90の研削歯92の歯面のドレッシングが行われる。2枚のドレッサ112はそれぞれ、研削歯92の異なる部分であって、砥石90の回転軸線に平行な方向に隔たった2部分の互いに逆向きの歯面を同時にドレッシングする。研削歯92の両側の歯面が同時にドレッシングされるのである。この際、図5に示すように、砥石主軸回転装置94および左右方向移動台駆動装置76が第二同期制御装置180により同期制御され、回転に送りが同期させられる。第二同期制御装置180は、制御装置150の砥石主軸回転装置94および左右方向移動台駆動装置76を制御する部分を含み、砥石主軸回転装置94および左右方向移動台駆動装置76と共にドレッシング運動付与装置182を構成している。本研削盤においては、相対移動装置の一部である砥石主軸台左右方向移動装置52が、砥石90とドレッサ112との位置を合わせる相対位置合わせ装置としても、ドレッシング時の送り装置としても機能する。
【0019】
なお、円筒歯車研削盤は、当該円筒歯車研削盤を前面側から見て、X軸方向が左右方向、Y軸方向が上下方向、Z軸方向が前後方向であり、砥石主軸が後方側から前方側に向かって突出した前端部において砥石を保持し、ドレッサ台が被加工物主軸台の前端部に取り付けられたものとしてもよい。この場合でも、前面側にいる作業者とドレッサ台との距離が短く、作業者は、メンテナンス,段取替え等の作業を容易にかつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例である円筒歯車研削盤を概略的に示す斜視図である。
【図2】上記円筒歯車研削盤のドレッサ台を示す平面図である。
【図3】上記円筒歯車研削盤を制御する制御装置を示すブロック図である。
【図4】上記円筒歯車研削盤において行われる創成研削を機能的に説明するブロック図である。
【図5】上記円筒歯車研削盤において行われるドレッシングを機能的に説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
12:被加工物主軸台 16:被加工物主軸台移動装置 26:被加工物主軸 32:被研削歯車 38:被加工物主軸回転装置 44:砥石主軸台 46:砥石主軸台移動装置 48:砥石主軸台前後方向移動装置 50:砥石主軸台旋回装置 52:砥石主軸台左右方向移動装置 86:砥石主軸 90:砥石 94:砥石主軸回転装置 110:ドレッサ台 112:ドレッサ 114:ドレッサ軸 120:姿勢調節装置 142:ドレッサ軸回転装置 150:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研削歯車を保持する被加工物主軸を回転軸線まわりに回転可能に保持した被加工物主軸台と、
概して円筒状をなし、外周面に螺旋状の研削歯を備えた砥石を保持する砥石主軸を回転軸線まわりに回転可能に保持した砥石主軸台と、
それら被加工物主軸台と砥石主軸台とを相対移動させて前記砥石と前記被研削歯車との相対位置合わせを行う相対移動装置と、
前記被加工物主軸を回転駆動する被加工物主軸回転装置と前記砥石主軸を回転駆動する砥石主軸回転装置とそれら両回転装置を同期制御する同期制御装置とを含み、前記砥石と前記被研削歯車とに創成研削運動を付与する創成研削運動付与装置と、
ドレッサを保持するドレッサ軸を回転軸線まわりに回転可能に保持したドレッサ台と、
前記ドレッサ軸を回転駆動するドレッサ軸回転装置と
を含み、かつ、前記ドレッサ台が前記被加工物主軸台に固定され、前記相対移動装置により前記ドレッサと前記砥石との相対位置合わせおよびドレッシング運動付与が行われることを特徴とする円筒歯車研削盤。
【請求項2】
前記相対移動装置が、
前記砥石主軸台を前記砥石主軸の回転軸線と直交する旋回軸線まわりに旋回させ、かつ、その旋回軸線に平行なX軸方向および直角なZ軸方向に移動させる砥石主軸台移動装置と、
前記被加工物主軸台を前記X軸方向およびZ軸方向に直角で前記被加工物主軸に平行なY軸方向に移動させる被加工物主軸台移動装置と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の円筒歯車研削盤。
【請求項3】
当該円筒歯車研削盤を前面側から見て、前記X軸方向が前後方向、前記Y軸方向が上下方向、前記Z軸方向が左右方向であり、前記砥石主軸が右と左との一方から他方に向かって突出した先端部において前記砥石を保持し、前記被加工物主軸台が前記砥石主軸台の前側に設けられ、前記ドレッサ台が前記被加工物主軸台の前記右と左との他方の側に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の円筒歯車研削盤。
【請求項4】
前記ドレッサ台が、前記Y軸方向と平行な回動軸線まわりの姿勢を調節する姿勢調節装置を介して前記被加工物主軸台に取り付けられたことを特徴とする請求項3に記載の円筒歯車研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−110699(P2006−110699A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303153(P2004−303153)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(591092615)豊精密工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】