説明

円筒物の搬送装置

【課題】大きなコストをかけることなく、ローラコンベアの合流部でのジャムリを軽減することのできる円筒物の搬送装置を提供する。
【解決手段】排出コンベア10には、ローラコンベア20の搬送方向と反対側に円筒物を落下させるためのガイド11が設けられており、排出コンベア10とローラコンベア20の間には、排出コンベア10から落下する円筒物aを受け入れる高さにある入口30aと、搬送方向と逆向きに下方へ傾斜したスロープ30bと、ローラコンベア20のローラR間に保持された円筒物aより上方で且つローラR間に保持された隣接する2つの円筒物aに乗った円筒物aの中心軸よりも下方に位置する出口30cとを有するシューター30が設置されている。そのシューター30の出口30cの後部には、ローラR上で斜めになって姿勢が崩れた円筒物aが通過するときにその向きを矯正してローラR間に保持させるための強制面Sが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨き用などのラミネートチューブの半製品のような円筒物を搬送する装置に関するものであり、詳しくは、ローラコンベアや山谷コンベアにより上流の工程から下流の工程へと円筒物を等ピッチ間隔で移動させる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯磨き用などのラミネートチューブの半製品、すなわち中身を充填する前の空チューブのような円筒状の物品や他の円柱状の物品(以下、これらを円筒物という)を上流の工程から下流の工程へと移動させる搬送装置として、種々の工夫をしたものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−156706号公報
【特許文献2】実開平7−24824号公報
【特許文献3】特開平8−157044号公報
【特許文献4】特開平11−129359号公報
【0004】
このような円筒物の搬送手段として、しばしばローラコンベアや山谷コンベアが使われており、円筒物はローラとローラの間、もしくは山谷の谷部分で保持されて整列し、等ピッチ間隔で搬送される。図1にラミネートチューブの半製品である円筒物のローラコンベアによる搬送例を示す。
【0005】
図1に示すように、ここで用いられている搬送装置は、ラミネートチューブの半製品である円筒物aを上流の工程から搬送する排出コンベア10と、排出コンベア10から落下する円筒物aをローラR間で保持して下流の工程へと搬送するローラコンベア20とを備えている。上方の排出コンベア10には、ローラコンベア20の搬送方向側に円筒物aを落下させるためのガイド11とスロープ12が設けられており、上流の工程から排出コンベア10に乗って搬送されてくる円筒物aを下方のローラコンベア20に移し替え、ローラR間で保持することで整列し、等ピッチ間隔で下流の工程へと搬送する。
【0006】
このように搬送装置を工程間でのつなぎで使用する場合、上流の工程よりも下流の工程の方が処理能力が高いと、上流の工程の機械台数が増えるため、ローラコンベア20上での製品の合流が発生する。例えば、図2の加工ラインは、ラミネートチューブの肩部成形を行う上流工程の成形機M1 〜M4 が4台、キャッピング及びキャップ部シュリンクを行う下流工程の加工機Nが1台の場合を示しており、上流の各成形機M1 〜M4 からそれぞれ排出コンベア10を経てローラコンベア20上で円筒物aを合流させ、整列状態で下流の加工機Nへと搬送している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図2のように複数の排出コンベア10から円筒物aを合流させてローラコンベア20で整列して搬送する場合、いわゆるジャムリの問題が生じる。すなわち、図2の成形機M3 が円筒物a3 を排出するときに、図3に示すように、成形機M1 ,M2 の円筒物a1 ,a2 がローラコンベア20上に2ピッチ以上続けて置かれていると、それらの上に成形機M3 の円筒物a3 が落下し、2つの円筒物a1 ,a2 の間に保持されてジャムリの原因となる。また、図4(a)に示すように、強引に壁や障害物などの強制ガイドGをつけて、2つの円筒物a1 ,a2 の上に乗った円筒物a3 を落とそうとすると、図4(b)に示すように、下の円筒物a2 が上の円筒物a3 に押されてクルクル回って移動し、強制ガイドG付近でジャムったり、図5のようにローラコンベア20上で斜めになったりする。そして、図5のように円筒物a3 がローラコンベア20上で斜めになると、これもまたジャムリの原因となる。このようにして、頻繁にジャムリが生じるようになると、それを直す人員が必要になったり、ジャムった製品が不良になったり、歩留りを悪くする原因となる。
【0008】
このジャムリを軽減するために、図6に示すようなエアシリンダを用いた搬送装置の導入が考えられる。この搬送装置は、上方の排出コンベア10と下方のローラコンベア20の間にシューター1を設置し、そのシューター1の上下2箇所にホルダー2,3をそれぞれエアシリンダ4,5で出入可能に設けた構造で、2段のホルダー2,3が排出コンベア10から落下した円筒物aをストックし、円筒物のないローラコンベア20上に確実に落とすようになっている。この搬送装置を図2の加工ラインにおける成形機M1 〜M4 の合流部に設置したとし、成形機M3 の円筒物a3 が排出コンベア10から落下する合流部での動作を説明すると次のようである。
【0009】
図6(a)はホルダー2,3に円筒物a3 がストックされていないイニシャル状態を示している。すなわち、上側のエアシリンダ4がOFF(開放)、下側のエアシリンダ5がON(貯留)、在荷センサ6がON(未検出)となった状態である。
【0010】
この状態で成形機M3 の円筒物a3 が排出コンベア10から落下すると、図6(b)に示す如くその円筒物a3 を下側のホルダー3でストックする。このとき、在荷センサ6がOFF(検出)となるので、これに合わせて上側のエアシリンダ4をON(貯留)とする。次いで、図6(c)に示すように、位置落下センサ7がローラコンベア20の空いている位置を検出すると、タイミングを測って円筒物a3 をローラコンベア20の空き位置αに落下させる。すなわち、在荷センサ6がOFF(検出)で且つ落下位置センサ7がON(検出)になると、タイミングを見て下側のエアシリンダ5をOFF(開放)とする。このとき、排出コンベア10から次の円筒物a3 が上側のホルダー2にストックされる。
【0011】
そして、図6(d)に示すように、円筒物a3 がローラコンベア20の空き位置αに落下し、在荷センサ6がON(未検出)になったら、下側のエアシリンダ5をON(貯留)とする。これを見てから上側のエアシリンダ4をOFF(開放)として、次の円筒物a3 を下側のホルダー3でストックし、図6(b)の状態に戻る。
【0012】
この合流システムは、ジャムリを軽減する機能を果たすことが十分に可能である。しかしながら、1つの合流部でエアシリンダが2つ、センサが2つ、シューターが1つと構成要素が多く、その合流システムのユニットが図2の場合は3箇所必要で、且つ制御盤も必要なため、システム自体のコストが高くなる点がネックであり、実際に導入するには二の足を踏むのが現状である。
【0013】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大きなコストをかけることなく、ローラコンベアの合流部でのジャムリを軽減することのできる円筒物の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、円筒物を搬送する排出コンベアと、その排出コンベアから落下する円筒物をローラ間で保持して搬送するローラコンベアとを備えた円筒物の搬送装置であって、排出コンベアには、ローラコンベアの搬送方向と反対側に円筒物を落下させるためのガイドが設けられており、排出コンベアとローラコンベアの間には、排出コンベアから落下する円筒物を受け入れる高さにある入口と、搬送方向と逆向きに下方へ傾斜したスロープと、ローラコンベアのローラ間に保持された円筒物より上方で且つローラ間に保持された隣接する2つの円筒物に乗った円筒物の中心軸よりも下方に位置する出口とを有するシューターが設置されており、そのシューターの出口の後部には、ローラ上で斜めになって姿勢が崩れた円筒物が通過するときにその向きを矯正してローラ間に保持させるための強制面が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排出コンベアから落下した円筒物はシューターを通ってローラコンベア上に落下するが、落下しようとするところに連続した円筒物があると、それらの円筒物の上でスロープに押されて浮き上がり、転がりつつ空いているところに落ちることになり、また落下して斜めになった円筒物はシューターの出口の後部に設けた強制面で押されてローラ間へと移動することから、動力を使うことなく、排出コンベアからの円筒物をローラコンベアの空いている箇所に落とすことができ、かつ、落下した姿勢が崩れていても矯正することができ、その結果、安価に合流部でのジャムリを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明に係る円筒物の搬送装置の一例を示す概略構成図であり、(a)と(b)はそれぞれ上面図と側面図である。
【0018】
この搬送装置は、図1の搬送装置と同様に、上流の工程から円筒物aを搬送する排出コンベア10と、排出コンベア10から落下する円筒物aをローラR間で保持して下流の工程へと搬送するローラコンベア20とを備えている。また、上方の排出コンベア10には、ローラコンベア20の搬送方向側に円筒物aを落下させるためのガイド11が設けられている。ただし、このガイド11は、ローラコンベア20の搬送方向と反対側に円筒物を落下させるように設けられている。
【0019】
排出コンベア10とローラコンベア20の間には、ガイド11に案内されて排出コンベア10から落下する円筒物aをローラコンベア20上へと案内するシューター30が設置されている。このシューター30は、図示のように、排出コンベア10から落下する円筒物aを受け入れる高さにある入口30aと、搬送方向と逆向きに下方へ傾斜したスロープ30bと、そのスロープ30bの先端にある出口30cとを有しており、ローラコンベア20の流れに逆らう方向で円筒物aを合流させるようになっている。
【0020】
シューター30のスロープ30bは、水平面からの角度が15度前後と比較的緩やかな傾斜になっており、入口30aから入った円筒物aはこのスロープ30bを転がるようにして出口30cに至る。そして、出口30cの高さは、ローラコンベア20のローラR間に保持された円筒物aより上方で且つローラR間に保持された隣接する2つの円筒物aに乗った円筒物aの中心軸よりも下方に位置するように設計されている。
【0021】
スロープ30bを通過した円筒物aが2つ以上の円筒物aが並んだ上に落下した場合、その落下した円筒物aはローラコンベア20上に落下できずに2つ並んだ円筒物aの間に乗ることになるが、上記したように、スロープ30bの角度は比較的緩やかであり、出口30cは2つの円筒物aの上に乗った円筒物aの中心軸よりも下に位置するため、2つの円筒物aの間に1つの円筒物aが乗った状態のままローラコンベア20が動き、上に乗った円筒物aは出口30付近でスロープ30bに乗り上げる。ローラコンベア20上に円筒物aがある場合はこの動きを繰り返し、ローラコンベア20上の空いているところが来たら、円筒物aはローラコンベア20上に落下することになる。
【0022】
また、シューター30の出口30cの後部には、ローラR上で斜めになって姿勢が崩れた円筒物aが通過するときにその向きを矯正してローラR間に保持させるための強制面Sが設けられている。この強制面Sは、ローラRの頂点に乗って斜めになった円筒物aが高さの制約で通過できないように設置する。ここでは、図示のように、ローラR間で保持された円筒物aの上端部より僅かに高い位置に断面L字形の部材31を設置し、それの底部水平面によって強制面Sを構成している。
【0023】
次に、図2の加工ラインにおける成形機M1 〜M4 の合流部に上記の搬送装置を設置した場合の動作を図8により具体的に説明する。図示のように、成形機M1 ,M2 から合流したラミネートチューブの半製品である円筒物a1 ,a2 がローラコンベア20上に乗っており、これら2つが隣接して並んだ状態で搬送されているものとする。
【0024】
図8(a)に示すように、成形機M3 で排出された円筒物a3 は、排出コンベア10から落下してシューター30を通過し、ローラコンベア20上で並んだ円筒物a1 ,a2 の上に落ちるとそれらの間に乗る。このように円筒物a1 ,a2 の上に円筒物a3 が乗ったままでローラコンベア20は動くが、その動きに連れて、図8(b)に示すように、円筒物a3 はシューター30の出口30c付近でスロープ30bに乗り上げ、スロープ30bに乗り上がった円筒物a3 はまた落ちてくる。ローラコンベア20上に円筒物が続いてある間はこの動作を繰り返す。そして、図8(c)に示すように、ローラコンベア20の動きに連れてシューター30の出口30cのところに空き位置が来ると、円筒物a3 はローラコンベア20上に落下する。
【0025】
円筒物a3 がローラコンベア20上に落下する際、ローラRの頂点の部分に落ち、円筒物aの姿勢が斜めになる場合がある。このようにローラRの頂点に乗って斜めになった円筒物a3 は、そのままでは高さの制約で出口30cの後部にある強制面Sの下を通過できないため、強制面Sに押されてローラRとローラRの間に入り姿勢が強制される。
【0026】
なお、上記の説明では、排出コンベアから落下する円筒物をローラコンベアで搬送する形態で説明したが、ローラコンベアに替えて山谷コンベアを使用する場合も同様であることは言うまでもない。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による円筒物の搬送装置は、上記した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ラミネートチューブの半製品である円筒物のローラコンベアによる搬送例を示す概略構成図であり、(a)と(b)はそれぞれ上面図と側面図である。
【図2】ラミネートチューブの半製品を製造する加工ラインを示す平面図である。
【図3】円筒物のローラコンベア上での重なり状態を示す説明図である。
【図4】重なった円筒物を解除するのに強制ガイドを使った場合の説明図である。
【図5】ローラコンベア上で円筒物が斜めになった状態を示す説明図である。
【図6】エアシリンダを用いた搬送装置の動作説明図である。
【図7】本発明に係る円筒物の搬送装置の一例を示す概略構成図であり、(a)と(b)はそれぞれ上面図と側面図である。
【図8】図1に示す搬送装置の動作説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 排出コンベア
11 ガイド
20 ローラコンベア
30 シューター
30a 入口
30b スロープ
30c 出口
31 部材
a,a1 〜a3 円筒物
R ローラ
S 強制面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒物を搬送する排出コンベアと、その排出コンベアから落下する円筒物をローラ間で保持して搬送するローラコンベアとを備えた円筒物の搬送装置であって、排出コンベアには、ローラコンベアの搬送方向と反対側に円筒物を落下させるためのガイドが設けられており、排出コンベアとローラコンベアの間には、排出コンベアから落下する円筒物を受け入れる高さにある入口と、搬送方向と逆向きに下方へ傾斜したスロープと、ローラコンベアのローラ間に保持された円筒物より上方で且つローラ間に保持された隣接する2つの円筒物に乗った円筒物の中心軸よりも下方に位置する出口とを有するシューターが設置されており、そのシューターの出口の後部には、ローラ上で斜めになって姿勢が崩れた円筒物が通過するときにその向きを矯正してローラ間に保持させるための強制面が設けられていることを特徴とする円筒物の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−42884(P2010−42884A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206768(P2008−206768)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】