説明

円筒状ガスケット及びその製造方法並びに該円筒状ガスケットを使用した差し込み型排気管継手

【課題】密封性と剛性とを合わせもつと共に差し込み型排気管継手に使用されて好適な円筒状ガスケット及びその製造方法並びに該円筒状ガスケットを使用した差し込み型排気管継手を提供すること。
【解決手段】円筒状ガスケット27は、圧縮された帯状金網5からなる補強材70と、補強材70の帯状金網5の網目に充填されている耐熱材71と、補強材70及び耐熱材71に分散されて配された気孔とを具備しており、円筒状ガスケット27の内周面23及び外周面24並びに環状の端面25及び26は、耐熱材71と補強材70とが混在した平滑な面になっており、円筒状ガスケット27において、補強材70と耐熱材71と気孔との体積含有率は、夫々32〜60%、5〜58%及び10〜35%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATV(All Terrain Vehicle:四輪バギー)、雪上車、二輪自動車等の車輌に使用される差し込み型排気管継手に使用されて好適な円筒状ガスケット及びその製造方法並びに該円筒状ガスケットを使用した差し込み型排気管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
差し込み型排気管継手は、内管と、この内管の外径とほぼ同一の内径を有する外管とを有しており、外管は、その管端部に径拡大部を有しており、内管は、外管の径拡大部を通ると共に一端部で外管の管端部に嵌合する管端部とを有しており、内管の管端部と外管の径拡大部との間の環状の隙間の中にガスケットが嵌められており、外管の外周面に配された締付けバンドにより、内、外管の間における隙間をシールするようになっている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0003】
そして、上記排気管継手に使用されるガスケットとしては、膨張黒鉛シートを一定の幅と長さとを有するように切断して条片とし、この条片の上に、該膨張黒鉛シートの長さとほぼ等しい長さに切断した金網を重ね合わせ、これを円筒状の芯金の回りに、金網を内側として捲回して円筒状体を作製し、この円筒状体を金型内に入れ、その軸線方向に圧縮成形し、内周面に金網又は膨張黒鉛が露出し、その両端面と外周面とは、膨張黒鉛によって覆われたガスケットが提案されている(特許文献1及び特許文献3参照)。
【0004】
また、膨張黒鉛シートの表面全面に金属製の網材により包囲してなるガスケット主体を設け、該ガスケット主体を環状に湾曲してプレス機により圧縮して膨張黒鉛と網材とを一体的に固着した環状ガスケットも提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
上記特許文献1ないし特許文献3において提案されたガスケットに使用される膨張黒鉛において、耐熱性、耐薬品性、低摩擦性を有するという特性は、普通の黒鉛(グラファイト)と同等であるが、斯かる膨張黒鉛は、結合剤を使用することなく、加圧することによって容易に薄板やブロックに成形でき、得られた造形物は、前記黒鉛と異なり、柔軟で、可撓性を有するという特性を有している。
【0006】
したがって、排気管継手の内管と外管の径拡大部との間に配された膨張黒鉛と金網からなるガスケットは、内管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張すると共に柔軟性と可撓性を有しているので、内管と外管の間のすきまに良く順応し、適合して内管と外管の間の密封性を向上させることができるというものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−244815号公報
【特許文献2】実公平6−36273号公報
【特許文献3】特開平6−146875号公報
【特許文献4】実開平5−47620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年においては、騒音対策として排気管が大型化し、また排気ガス対策として排気管には触媒装置が装着されるようになり、差し込み型排気管継手に過大な荷重が負荷されるようになっている。特に、悪路走行により該継手部位に振動荷重、曲げトルクや内、外管間にこじれが繰返し生じることになる。
【0009】
上記した繰返し生じる振動荷重、曲げトルクやこじれに対し、ガスケットには、密封性を発揮させるために要求される柔軟性と、締付けバンドで締付ける際にヘタリ等を生じることなく締付け力を受け止める剛性とが要求される。この相反する二つの性能に対し、上記した従来のガスケットは、柔軟性又は剛性のいずれかの性能に特化しており、双方の性能を両立させることが難しく、その結果、剛性に特化したガスケットにおいては、密封性に問題を生じ、一方、柔軟性に特化したガスケットにおいては、ガスケットのヘタリ等に起因する締付けバンドの緩み等により、内、外管間における隙間の密封性を低下させるという問題を生じる虞がある。
【0010】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、密封性と剛性とを合わせもつと共に差し込み型排気管継手に使用されて好適な円筒状ガスケット及びその製造方法並びに該円筒状ガスケットを使用した差し込み型排気管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の差し込み型排気管継手に用いられる円筒状ガスケットは、圧縮された金網からなる補強材と、該補強材の金網の網目に充填されていると共に圧縮された黒鉛、酸処理黒鉛及び無機バインダーを含有した耐熱材と、当該補強材及び耐熱材に分散されて配された気孔とを具備しており、当該補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有しており、補強材は、円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、円筒状ガスケット全体の体積に対して、補強材は、32〜60%の体積を、耐熱材は、5〜58%の体積を、そして、気孔は、10〜35%の体積を占めていることを特徴とする。
【0012】
本発明の円筒状ガスケットによれば、補強材及び耐熱材の含有率が体積割合で、夫々32〜60%及び5〜58%であり、補強材が円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されているため、締付けバンドによる締付力や振動による荷重を主として金網からなる補強材が負担する結果、ヘタリが生じ難く、また当該補強材の金網の網目には耐熱材が充填されていると共に気孔の含有率が体積割合で10〜35%であるため、密封性にも優れており、而して密封性と剛性とを合わせもつと共に差し込み型排気管継手に使用されて好適な円筒状ガスケットを提供することができる。
【0013】
また、本発明の円筒状ガスケットによれば、耐熱材に含有された酸処理黒鉛は、当該円筒状ガスケットが組込まれる排気管継手の排気管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張を来たし、円筒状ガスケットの内、外周面及び端面側に膨張して該円筒状ガスケットと排気管の内、外周面との間の隙間を密封し、それによって円筒状ガスケットの密封性をより高めることができる。
【0014】
さらに、本発明の円筒状ガスケットによれば、円筒状ガスケットが組込まれる排気管継手の排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で、耐熱材に含有された無機バインダーに加熱脱水による縮合及び高温加熱による結晶の転移等により硬化結合性が発現され、それによって円筒状ガスケットの剛性がより高められる。
【0015】
本発明の円筒状ガスケットにおいて、耐熱材に含有される黒鉛には、好適には、鱗状黒鉛、土状黒鉛、鱗片状黒鉛及び塊状黒鉛からなる天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解黒鉛からなる人造黒鉛及び膨張黒鉛のうちの少なくとも一つから選択されて使用される。
【0016】
本発明の円筒状ガスケットにおいて、耐熱材に含有される膨張処理前の酸処理黒鉛には、上記天然黒鉛又は人造黒鉛の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とを利用して、黒鉛の層間に無機酸を挿入し、酸処理をして得られる炭素の層状構造を維持した結晶化合物が好適に使用される。
【0017】
本発明の円筒状ガスケットにおいて、耐熱材に含有される無機バインダーには、燐酸二水素アルミニウム(第一燐酸アルミニウム)〔Al(HPO〕、燐酸水素アルミニウム(第二燐酸アルミニウム)〔Al(HPO〕、燐酸二水素マグネシウム(第一燐酸マグネシウム)〔Mg(HPO〕、燐酸水素マグネシウム(第二燐酸マグネシウム)(MgHPO)、燐酸二水素カルシウム(第一燐酸カルシウム)〔Ca(HPO〕、燐酸水素カルシウム(CaHPO)及び燐酸(HPO)のうちの少なくとも一つが選択されて使用されるとよい。
【0018】
これら無機バインダーは、耐熱材に含有された黒鉛同士の接合及び黒鉛と酸処理黒鉛との接合と、耐熱材の補強材の金網の網目への接合とを行うと共に円筒状ガスケットが組込まれる排気管継手の排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で、加熱脱水による縮合及び高温加熱による結晶の転移等により硬化結合性を発現し、円筒状ガスケットの剛性を高めるという効果を発揮する。
【0019】
本発明の円筒状ガスケットにおいて、耐熱材に含有される黒鉛と酸処理黒鉛との質量比は、好ましくは、1:0.01〜0.5であり、黒鉛及び酸処理黒鉛と無機バインダーの質量比は、好ましくは、1:0.1〜1である。
【0020】
酸処理黒鉛の質量が黒鉛1に対し、0.01未満では、排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で酸処理黒鉛の体積膨張の割合が少なく、結果として、円筒状ガスケットの体積膨張による排気管の内管と外管との間の隙間を密封する作用が低減される虞があり、また酸処理黒鉛の質量比が黒鉛1に対し、0.5を超えると反対に排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で酸処理黒鉛の体積膨張の割合が多くなりすぎ、円筒状ガスケットの剛性を低下させる虞がある。
【0021】
また、無機バインダーの質量が黒鉛及び酸処理黒鉛の質量1に対し、0.1未満では、無機バインダーのバインダーとしての作用が乏しく、補強材の金網の網目からの耐熱材の脱落を生じやすくなり、また無機バインダーの質量が黒鉛及び酸処理黒鉛の質量1に対し、1を超えると、無機バインダーのバインダーとしての作用に加え、無機バインダーにおける加熱脱水による縮合及び高温加熱による結晶の転移等による硬化結合性の発現により、円筒状ガスケットの剛性を高めすぎ、密封性を低下させる虞がある。
【0022】
圧縮された帯状金網からなる補強材と、該補強材の帯状金網の網目に充填されていると共に圧縮された黒鉛、酸処理黒鉛及び無機バインダーを含有した耐熱材と、補強材及び耐熱材に分散されて配された気孔とを具備しており、当該補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有すると共に補強材が円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、円筒状ガスケット全体の体積に対して、補強材は、32〜60%の体積を、耐熱材は、5〜58%の体積を、そして、気孔は、10〜35%の体積を占めていると共に差し込み型排気管継手に用いられる本発明の円筒状ガスケットの製造方法は、(1)黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末と無機バインダーと蒸留水とを所定量の割合で混合して、これらを混練して湿潤性を有すると共に黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末と無機バインダーとを含有した混合物を作製する工程と、(2)金属細線を編んで得られた筒状金網を一対のローラ間に通して径方向に圧縮して帯状金網を作製する工程と、(3)帯状金網の両面に前記混合物を供給すると共にローラ間で混合物を圧延して該帯状金網の網目に混合物を充填した後、帯状金網の網目に充填された混合物を乾燥して当該混合物中の水分を除去し、帯状金網の網目に混合物が充填保持された複合帯状材を作製する工程と、(4)複合帯状材を円筒状芯金の周りに円筒状に少なくとも2周捲回して筒状母材を作製する工程と、(5)該筒状母材を金型の円筒状中空部に挿入すると共に該金型内において該筒状母材をその軸方向に圧縮成形する工程とを具備していることを特徴とする。
【0023】
本発明の円筒状ガスケットの製造方法によれば、圧縮された帯状金網からなる補強材と、該補強材の帯状金網の網目に充填されていると共に圧縮された耐熱材とを具備しており、当該補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有すると共に補強材が円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、補強材と耐熱材と気孔との含有率を体積比で夫々補強材32〜60%、耐熱材5〜58%及び気孔10〜35%とした密封性と剛性とを合わせもった円筒状ガスケットを得ることができる。
【0024】
本発明の製造方法において、好ましくは、黒鉛粉末は、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末及び膨張黒鉛粉末のうちの少なくとも一つから選択され、膨張黒鉛粉末は、膨張黒鉛シートを裁断、粉砕して形成された粉末であるとよく、また、酸処理黒鉛粉末は、膨張処理前の酸処理黒鉛粉末であるとよく、無機バインダーは、燐酸二水素アルミニウム、燐酸水素アルミニム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、燐酸二水素カルシウム、燐酸水素カルシウム及び燐酸のうちの少なくとも一つから選択されているとよく、好ましい例では、湿潤性を有する混合物に含有される黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量比は、1:0.01〜0.5であり、黒鉛粉末及び酸処理黒鉛粉末と無機バインダーとの質量比は、1:0.1〜1である。
【0025】
本発明の差し込み型排気管継手は、管端部、当該管端部に環状肩部を介して拡径して設けられた拡径円筒部、当該拡径円筒部の軸方向の一方の端部に設けられた開口端部、当該開口端部の外周面に径方向外方に伸びて設けられたフランジ部、該拡径円筒部及びフランジ部に該開口端部の環状端面から軸方向に沿いかつ円周方向に等配されて設けられた複数個のスリットを夫々備えた外管と、当該外管の拡径円筒部の内部を通ると共に一端部で外管の管端部に嵌合された管端部、当該管端部の他端部の外周面に立設されたフランジを備えた内管と、該内管の管端部の円筒外面と外管の拡径円筒部の円筒内面との間の環状隙間に嵌合された上記の円筒状ガスケットと、締結により、外管の拡径円筒部の円筒内面を円筒状ガスケットの円筒状の外周面に押し付け、この押し付けを介して円筒状ガスケットの円筒状の内周面を内管の管端部の円筒外面に押し付けるべく、外管の拡径円筒部の円筒外面に配された締結バンドとを具備しており、前記環状隙間において、軸方向の一方の端部の環状の端面が内管のフランジに当接して配された該円筒状ガスケットは、該耐熱材に含有された酸処理黒鉛が内管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張するようになっており、その円筒状の外周面と外管の拡径円筒部の円筒状の内周面との間の隙間とその円筒状の内周面と内管の管端部の円筒外面との間の隙間とを密封すると共にその一方の端面と内管の管端部と外管の径拡大部の環状肩部とによって形成された空間を密封するようになっている。
【0026】
本発明の差し込み型排気管継手によれば、内管の管端部の外周面と外管の拡径円筒部の円筒内面との間の環状隙間に嵌合された円筒状ガスケットは、補強材と耐熱材と気孔との全体に対する体積含有率を夫々補強材32〜60%、耐熱材5〜58%及び気孔10〜35%としていることから、密封性と剛性とを合わせもっており、その結果、内管と外管との間における隙間の密封性が向上され、当該隙間からの排気ガスの漏洩が極力防止される。
【0027】
また、円筒状ガスケットは、該耐熱材に含有された酸処理黒鉛が内管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張し、その円筒状の外周面で外管の拡径円筒部の円筒状の内周面とに密に接触し、また、その円筒状の内周面で内管の外周面と密に接触して両者間の隙間を密封すると共にその一方の端面で内管の管端部と外管の径拡大部の環状肩部とによって形成された空間を密封するので、内管と外管との間における隙間の密封性をより向上できる。
【0028】
体積膨張する円筒状ガスケットを排気管継手における外管の径拡大部の内周面に挿入する際、円筒状ガスケットの寸法公差を外管の径拡大部の内周面の寸法に対し、マイナス公差とすることができるので、円筒状ガスケットの挿入作業性を向上させることができる。
【0029】
さらに、円筒状ガスケットは、排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で、耐熱材に含有された無機バインダーに加熱脱水による縮合及び高温加熱による結晶の転移等により硬化結合性が発現され、それによってその剛性がより高められるので、ヘタリ等の不具合を生じることなく長期間にわたって剛性を維持することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、補強材と耐熱材と気孔との含有率を体積比で夫々補強材32〜60%、耐熱材5〜58%及び気孔10〜35%としているので、密封性と剛性とを合わせもった円筒状ガスケット及びその製造方法を提供することができ、また、当該円筒状ガスケットを組込むことにより、円筒状ガスケットの耐熱材に含有された酸処理黒鉛が内管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張し、内管と外管との間における隙間の密封性を向上でき、当該隙間からの排気ガスの漏洩を極力防止することができる差し込み型排気管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の一例で製造された円筒状ガスケットの斜視説明図である。
【図2】図2は、図1のII−II線矢視断面模式説明図である。
【図3】図3は、本発明の円筒状ガスケットの製造工程における補強材の形成方法の斜視説明図である。
【図4】図4は、補強材の金網の網目の平面説明図である。
【図5】図5は、本発明の円筒状ガスケットの製造工程における複合帯状材の形成方法の断面説明図である。
【図6】図6は、本発明の円筒状ガスケットの製造工程における筒状母材の平面説明図である。
【図7】図7は、図6に示す筒状母材のVII−VII線矢視断面説明図である。
【図8】図8は、本発明の円筒状ガスケットの製造工程における金型中に筒状母材を挿入した状態を示す断面説明図である。
【図9】図9は、本発明の円筒状ガスケットの一例を組込んだ差し込み型排気管継手の縦断面説明図である。
【図10】図10は、差し込み型排気管継手の内管の斜視説明図である。
【図11】図11は、差し込み型排気管継手の外管の斜視説明図である。
【図12】図12は、差し込み型排気管継手の締結バンドの斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明を、図に示す実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されない。
【0033】
本発明の円筒状ガスケットにおける構成材料及び円筒状ガスケットの製造方法について説明する。
【0034】
<耐熱材(混合物):酸処理黒鉛について>
耐熱材に用いる酸処理黒鉛粉末は、天然黒鉛又は人造黒鉛の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とを利用して、黒鉛の層間に無機酸を挿入し、酸処理をして得られる炭素の層状構造を維持した結晶化合物である。
【0035】
酸処理黒鉛粉末の製造方法の一例について説明する。無機酸として濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら強酸化剤として過酸化水素水の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間攪拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0036】
<耐熱材(混合物):黒鉛について>
耐熱材に用いる黒鉛粉末は、鱗状黒鉛、土状黒鉛及び鱗片状黒鉛のうちの少なくとも一つからなる天然黒鉛粉末、キッシュ黒鉛及び熱分解黒鉛のうちの少なくとも一つからなる人造黒鉛粉末及び膨張黒鉛粉末のうちの少なくとも一つから選択される。
【0037】
ここで、膨張黒鉛粉末は、上記した酸処理黒鉛粉末を、950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粉末(膨張倍率240〜300倍)である。この膨張黒鉛粉末は、本発明における耐熱材として使用することができるが、この膨張黒鉛粉末は、かさ密度が0.05g/cmと非常に低いため、その取り扱いが難しい。そこで、本発明においては、上記膨張黒鉛粉末を所望のロール隙間に調整した双ロール装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを裁断し、粉砕機で粉砕して得られる膨張黒鉛粉砕粉末を膨張黒鉛粉末として使用することが好ましい。膨張黒鉛シートを使用することにより、例えば、膨張黒鉛シートを所望の型に沿って切り出した際に生じる余分な切れ端、所謂端材を有効利用することができ、それにより膨張黒鉛粉末の材料コストの低減を図り得、ひいては円筒状ガスケット自体のコスト低減を図ることができる。
【0038】
<耐熱材(混合物):無機バインダーについて>
上記黒鉛粉末同士の接合と同時に黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との混合粉末を補強材となる帯状金網及びその網目に保持する接合剤として作用する無機バインダーとしては、燐酸二水素アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、燐酸二水素カルシウム、燐酸水素カルシウム及び燐酸のうちの少なくとも一つが選択されて使用される。
【0039】
<補強材について>
補強材となる金網は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430などのステンレス鋼線、鉄線(JISG3532)もしくは亜鉛メッキ鉄線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を一本又は二本以上使用して編んで形成される編組金網、平板状の編組金網、特に円筒状編組金網からなる筒状金網が使用されて好適である。
【0040】
金網を形成する金属細線において、線径は0.05〜0.50mm程度のものが使用され、該線径の金属細線で編まれた補強材用の金網には、その網目の目幅(編組金網を示す図4参照)が縦1.5〜6.0mm、横1.0〜5.0mm程度のものが使用されて好適である。
【0041】
次に、上記した構成材料からなる円筒状ガスケットの製造方法について、図面に基づき説明する。
【0042】
(第一工程)
酸処理黒鉛粉末として天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び膨張黒鉛シートを粉砕した天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末及び膨張黒鉛粉末のうちの少なくとも一つから選択された黒鉛粉末と、燐酸二水素アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、燐酸二水素カルシウム、燐酸水素カルシウム及び燐酸のうちから選択された少なくとも一つの無機バインダーと、酸処理黒鉛粉末と、蒸留水とを所定量の割合で混合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物1を作製する。この湿潤性を有する混合物1に含有される黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量比を1:0.01〜0.5とすると共に無機バインダーの質量比を黒鉛と酸処理黒鉛との質量1に対し0.1〜1とすることが好ましい。
【0043】
(第二工程)
図3に示すように、線径が0.05〜0.50mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる網目の目幅が縦1.5〜6.0mm、横1.0〜5.0mm程度(図4参照)の円筒状編組金網からなる筒状金網2を一対のローラ3及び4間に通して所望の幅の帯状金網5を作製する。
【0044】
(第三工程)
図5に示すように、圧延装置6におけるホッパー7に帯状金網5を挿入し、帯状金網5の挿入端部を一対のローラ8及び9間に通過させ、帯状金網5によって二分されたホッパー7内にコンベア10及び11から湿潤性を有する混合物1を供給する。ホッパー7に供給された混合物1は、ローラ8及び9間の帯状金網5に供給され、ローラ8及び9間で混合物1を圧延して、帯状金網5の網目に混合物1を充填し、帯状金網5と当該帯状金網5及びその網目に保持された混合物1とが一体となった複合帯状素材12aを作製し、該複合帯状素材12aをロール状に巻き取る。なお、図5中、符号13は一方のローラ8側に配されたロードセル、符号14は他方のローラ9側に配された流体シリンダを示す。
【0045】
(第四工程)
ロール状に巻き取った複合帯状素材12aを乾燥炉において乾燥し、複合帯状素材12aにおける混合物1から水分を蒸発逸散させて除去した後、複合帯状素材12aを所望の長さに切断して、この切断してなる複合帯状材12を、図6及び図7に示すように、芯金(図示せず)の周りに少なくとも2周、実施の形態では3周、うず巻き状に捲回して筒状母材15を作製する。
【0046】
(第五工程)
内部に貫通孔16を有するキャビティ17の当該貫通孔16に段付きコア18を嵌挿することによって内部に中空円筒部19が形成された図8に示す金型20を準備し、該金型20の段付きコア18に筒状母材15を挿入する。
【0047】
金型20の中空円筒部19に挿入された筒状母材15をパンチ21でコア軸方向に98〜294N/mm(1〜3トン/cm)の圧力で圧縮成形し、図1及び図2に示すような、貫通孔22を規定する円筒状の内周面23と、円筒状の外周面24と、環状の端面25及び26とを備えた円筒状ガスケット27を作製する。
【0048】
筒状母材15の圧縮成形により作製された円筒状ガスケット27は、圧縮された帯状金網5からなる補強材70と、補強材70の帯状金網5の網目に充填されていると共に圧縮された酸処理黒鉛粉末、黒鉛粉末及び無機バインダーの混合物1からなる耐熱材71と、補強材70及び耐熱材71に分散されて配された気孔とを具備しており、補強材70と耐熱材71とが互いに絡み合って構造的一体性を有しており、補強材70は、円筒状の内周面23から円筒状の外周面24にかけて径方向に密に含有されており、円筒状ガスケット27の内周面23及び外周面24並びに環状の端面25及び26は、耐熱材71と補強材70とが混在した平滑な面になっており、円筒状ガスケット27において、補強材70と耐熱材71と気孔との体積含有率は、夫々32〜60%、5〜58%及び10〜35%である。
【0049】
円筒状ガスケット27に含有される気孔の含有率の多寡は、円筒状ガスケット27の密封性の良否に係るもので、特に、気孔の含有率が体積比で10%未満では、円筒状ガスケット27自体の剛性が高められるが、円筒状ガスケット27の排気管内周面への挿入性に困難性をもたらし、排気管内周面との初期なじみ性が悪く、結果として密封性を低下させる虞があり、気孔の含有率が35体積%を超えると、円筒状ガスケット27に連続した気孔が多く現れ、密封性を低下させると共に円筒状ガスケット27の剛性を低下させる虞がある。したがって、円筒状ガスケット27に含有される気孔の含有率は、体積比で、好ましくは、10〜35%、より好ましくは、15〜30%である。
【0050】
円筒状ガスケット27は、図9に示す差し込み型排気管継手に組込まれて使用される。図9に示す差し込み型排気管継手は、管端部28、管端部28にテーパ状の環状肩部29を介して拡径して形成された拡径円筒部30、拡径円筒部30の軸方向の一方の端部に形成された開口端部31、開口端部31の外周面に径方向外方に伸びて形成されたフランジ部32並びに拡径円筒部30及びフランジ部32に開口端部31の開口端面33から軸方向に沿いかつ円周方向に等配されて設けられた複数個のスリット34を夫々備えた外管35(図9及び図11参照)と、外管35の拡径円筒部30の内部を通ると共に軸方向の一端部36で外管35の管端部28に嵌合された管端部37、管端部37の軸方向の他端部38の円筒外面に立設されたフランジ39を備えた内管40(図9及び図10参照)と、内管40の管端部37の円筒外面41と外管35の拡径円筒部30の円筒内面42との間の環状空間43に挿入された円筒状ガスケット27と、拡径円筒部30の円筒外面44に配された締結バンド45(図9及び図12参照)とを具備しており、円筒本体46並びに円筒本体46から径方向外方に一体的に突設した一対の耳部47及び48を具備した締結バンド45は、一対の耳部47及び48の貫通孔49及び50に挿入されたボルトなどの締結具51の締め付けによる円筒本体46の縮径で、円筒本体46の内周面52を介して外管35の拡径円筒部30の円筒内面42を円筒状ガスケット27の円筒状の外周面24に押し付け、この押し付けを介して円筒状ガスケット27の円筒状の内周面23を内管40の管端部37の円筒外面41に押し付けるようになっており、円筒状ガスケット27は、環状空間43において、軸方向の一方の端部の端面26が内管40のフランジ39に当接して配されており、而して、円筒状ガスケット27は、内管40と外管35との間の環状空間43を密封し、環状空間43からの排気ガスの漏洩を防止するようになっている。
【0051】
上記した差し込み型排気管継手において、締結バンド45の軸方向の端部53及び54のうちの一方の端部53には、径方向内方に向かって突出するフック部55が設けられており、外管35の拡径円筒部30のフランジ部32に形成された切欠き部56と同様の横断面を有しているフック部55は、締結バンド45が外管35の拡径円筒部30の円筒外面44に装着されたとき、フランジ部32に形成された切欠き部56を自由に通過して、その内面で内管40のフランジ39の軸方向側面に接触して、フランジ39に係合するために、外管35は、そのフランジ部32において締結バンド45と軸方向に係合する結果、内管40と外管35とに両者を軸方向に離間させる力が作用しても、内管40と外管35は離脱することがない。
【0052】
差し込み型排気管継手に組込まれて使用される円筒状ガスケット27は、排気管継手の内管40内を流動する排気ガスの熱により体積膨張し、円筒状ガスケット27の円筒状の外周面24と外管35の拡径円筒部30の円筒内面42とが密に接触し、また、円筒状ガスケット27の円筒状の内周面23と内管40の管端部37の円筒外面41とが密に接触すると共に内管40の管端部37と円筒状ガスケット27の他方の端部の環状の端面25と外管35の拡径円筒部30の環状肩部29とによって形成された空間Sを密封するので、内管40と外管35と円筒状ガスケット27との間の隙間の密封性がより向上されるので、当該隙間からの排気ガスの漏洩は一層防止される。
【0053】
また、円筒状ガスケット27では、排気管継手の内管40内を流動する排気ガスの熱の作用で、円筒状ガスケット27を形成する耐熱材の無機バインダーに加熱脱水による縮合及び熱による結晶の転移等により硬化結合性が発現して、耐熱材の剛性が高められるため、円筒状ガスケット27にヘタリ等の不具合を生じることはなく、長期間にわたって円筒状ガスケット27の剛性が維持される。
【0054】
なお、本発明においては、剛性が高められた円筒状ガスケット27は、締結バンド45による大きな締付け力によってもヘタリ等を生じることがなく、締結バンド45に締付け力の低下に起因する締結力のゆるみを生じないので、締結バンド45に形成されたフック部55と外管35のフランジ部32に形成された切欠き部56とを必ずしも設けなくてもよい。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されない。
【0056】
実施例1
酸処理黒鉛粉末として、濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら強酸化剤として過酸化水素水の60%水溶液を加えてこれを反応液とし、この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行った後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間攪拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰返し、酸処理黒鉛から硫酸分を充分除去し、硫酸を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥して得た酸処理黒鉛粉末を使用した。
【0057】
黒鉛粉末として、密度1.12Mg/mであって、厚さが0.4mmの膨張黒鉛シートを裁断し、粉砕して得た膨張黒鉛粉末を使用した。
【0058】
無機バインダーとして、燐酸水素マグネシウム(第二燐酸マグネシウム)を使用した。
【0059】
上記膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比を1:0.01の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0060】
金属細線として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を7本使用して網目の目幅が縦2.0mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通してこれを補強材用の帯状金網とした。
【0061】
図5に示す圧延装置を使用し、該圧延装置のホッパーに、帯状金網を挿入し、該帯状金網の挿入端部を一対の圧延ローラ間に通過させると共に該帯状金網によって二分されたホッパー内にコンベアから湿潤性を有する混合物を供給して、ホッパー内に供給された混合物を帯状金網の両面に供給すると同時に圧延ローラ間に供給し、当該混合物を圧延ローラ間で圧延して帯状金網と帯状金網の網目に充填保持された混合物とが一体となった複合帯状素材を作製した。
【0062】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、乾燥後の複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:4.36g、酸処理黒鉛粉末:0.04g、燐酸水素マグネシウム1.1g)を作製した。
【0063】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製した。
【0064】
内面に貫通孔を有するキャビティの該貫通孔に段付きコアを嵌挿することによって内部に中空円筒部が形成された図8に示す金型の段付きコアに筒状母材を挿入した。
【0065】
金型の中空円筒部に配した筒状母材をコア軸方向に196N/mm(2トン/cm)の圧力で圧縮成形し、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.4%及び18.7%であった。
【0066】
実施例2
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、前記実施例1と同様の燐酸水素マグネシウムを使用した。
【0067】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.05の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.18:0.82の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0068】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0069】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0070】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、乾燥後の複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:31.92g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.81g、酸処理黒鉛粉末:0.19g、燐酸水素マグネシウム0.72g)を作製した。
【0071】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、29.4%及び23.7%であった。
【0072】
実施例3
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素アルミニウムを使用した。
【0073】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.1の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素アルミニウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0074】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0075】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0076】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.64g、酸処理黒鉛粉末:0.36g、燐酸二水素アルミニウム:1g)を作製した。
【0077】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、33.9%及び19.2%であった。
【0078】
実施例4
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素アルミニウム(第一燐酸アルミニウム)を使用した。
【0079】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.3の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素アルミニウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0080】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0081】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0082】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.38g、酸処理黒鉛粉末:1.02g、燐酸二水素アルミニウム:1.1g)を作製した。
【0083】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.8%及び18.3%であった。
【0084】
実施例5
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素カルシウム(第一燐酸カルシウム)を使用した。
【0085】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.2の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素カルシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0086】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0087】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0088】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.67g、酸処理黒鉛粉末:0.73g、燐酸二水素カルシウム:1.1g)を作製した。
【0089】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.0%及び19.1%であった。
【0090】
実施例6
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸水素カルシウム(第二燐酸カルシウム)を使用した。
【0091】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.1の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸水素カルシウムと蒸留水とを0.2:0.8の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0092】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0093】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0094】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.0g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.64g、酸処理黒鉛粉末:0.36g、燐酸水素カルシウム:0.8g)を作製した。
【0095】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、29.4%及び気孔23.7%であった。
【0096】
実施例7
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸(HPO:75%水溶液)を使用した。
【0097】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.3の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸を0.25の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0098】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0099】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0100】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.1g、酸処理黒鉛粉末:0.9g、燐酸:1g)を作製した。
【0101】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、32.4%及び20.7%であった。
【0102】
実施例8
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、前記実施例1と同様の燐酸水素マグネシウムを使用した。
【0103】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.5の割合で配合すると共に、膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0104】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0105】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0106】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:2.67g、酸処理黒鉛粉末:1.33g、燐酸水素マグネシウム:1.0g)を作製した。
【0107】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、31.3%及び21.8%であった。
【0108】
比較例1
密度が1.2Mg/mであって、厚さが0.4mmの幅75mm、長さ257mmの寸法に切断した短冊状の耐熱材用の膨張黒鉛シート片を準備した。
【0109】
金属細線として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4.00mm、横3.0mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して幅68mmの連続した帯状金網とし、該帯状金網を長さ257mmの寸法に切断して、これを補強材用の帯状金網とした。
【0110】
円筒状ガスケットの環状の端面となる補強材用の帯状金網の幅方向の両端縁から膨張黒鉛シート片が幅方向にはみ出していると共に、膨張黒鉛シート片の長さ方向の一方の端縁と当該端縁に対応する膨張黒鉛シート片の長さ方向の端縁を合致させて当該膨張黒鉛シート片と帯状金網とを互いに重ね合わせた重合体を作製した。
【0111】
円筒状の芯金の外周面に、重合体を、膨張黒鉛シート片を内側にしてうず巻き状であって膨張黒鉛シート片が1周多くなるように捲回して、内周面側及び外周面側の両方に膨張黒鉛シート片が露出した筒状母材を作製した。この筒状母材においては、膨張黒鉛シート片の幅方向の両端部は夫々帯状金網の幅方向に突出し(はみ出し)ている。
【0112】
内面に貫通孔を有するキャビティの該貫通孔に段付きコアを嵌挿することによって内部に中空円筒部が形成された図8に示す金型を準備し、該金型の段付きコアに筒状母材を挿入した。
【0113】
金型の中空円筒部に配した筒状母材をコア軸方向に196N/mm(2トン/cm)の圧力で圧縮成形し、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状端面とを備えた内径22.1mm、外径29.4mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、圧縮された帯状金網からなる補強材と同じく圧縮された膨張黒鉛シート片からなる耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々補強材9.8%、耐熱材49.6%及び気孔40.5%であった。
【0114】
比較例2
前記比較例1と同様の耐熱材用の膨張黒鉛シート片を準備した。
【0115】
金属細線として、前記比較例1と同様の線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を七本使用して網目の目幅が縦4.00mm、横3.0mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して幅68mmの連続した帯状金網とし、該帯状金網を長さ257mmの寸法に切断して、これを補強材用の帯状金網とした。
【0116】
以下、前記比較例1と同様の方法で、内径22.1mm、外径29.4mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔の含有率は、体積比で夫々補強材43.4%、耐熱材15.1%、気孔41.5%であった。
【0117】
次に、上記した実施例1ないし実施例8並びに比較例1及び比較例2で得た円筒状ガスケットを図9に示す差し込み型排気管継手に組込み、ガス漏れ量(l/min)及び締結バンドによる締付けトルクの低下率(%)について試験した。
【0118】
<ガス漏れ量の試験条件及び試験方法>
<ガス漏れ量の試験条件>
締結バンドによる締付け力:12N・m
加振角度:±0.5°(内管固定)
加振周波数(揺動速度):50Hz
温度(図9に示す内管の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
試験時間:24時間
【0119】
<ガス漏れ量の試験方法>
室温(25℃)において50Hzの加振周波数で±0.5°の揺動運動を継続しながら1時間で500℃の温度まで昇温し、その温度を22時間保持した状態で揺動運動を継続し、22時間経過後、1時間で室温まで降温し、室温(試験開始前)でのガス漏れ量と試験時間24時間経過後のガス漏れ量を測定した。
【0120】
<ガス漏れ量の測定方法>
図9に示す差し込み型排気管継手の外管の開口部を閉塞し、内管側から、30kPaの圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(内管と外管との間の隙間)からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験初期(試験開始直後)及び(2)24時間経過後の2回測定した。
【0121】
表1ないし表3は、上記試験結果を示す。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
表1ないし表3に示す試験結果から、実施例1ないし実施例8からなる円筒状ガスケットは、ガス漏れ量及び締付けトルクの低下率において、比較例1及び比較例2からなる円筒状ガスケットよりも優れていることがわかる。各実施例からなる円筒状ガスケットのガス漏れ量は、試験開始直後においては比較例1の円筒状ガスケットのガス漏れ量よりも多い傾向を示したが、各実施例の円筒状ガスケットのガス漏れ量は、試験時間の経過とともに減少傾向を示し、24時間経過後のガス漏れ量は極めて低いガス漏れ量であった。これは、試験時間の経過とともに排気管の温度上昇により円筒状ガスケットに体積膨張を来たし、該円筒状ガスケットの体積膨張により、円筒状ガスケットの内、外周面は、内管の円筒状の外周面及び外管の円筒状の内周面に密に当接し、両者間の隙間を閉塞したため、当該隙間からのガス漏れが減少したものと推察される。
【0126】
これに対し、比較例1からなる円筒状ガスケットは、試験時間の経過とともにガス漏れ量が増大する傾向を示したが、これは締付けトルクの低下率が当初の半分以下に減少し、該円筒状ガスケットにヘタリを生じて両者間の隙間が増大したことによるものと推察される。また、比較例2からなる円筒状ガスケットは、剛性に特化したガスケットであり、締付けトルクの低下率は、各実施例の円筒状ガスケットと大きな差は認められなかったが、試験開始直後から24時間経過後の試験時間を通してガス漏れ量が多い傾向を示した。
【0127】
以上説明したように、本発明の円筒状ガスケットは、補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有すると共に補強材は円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、補強材と耐熱材と気孔との含有率が体積比で夫々補強材32〜60%、耐熱材5〜58%及び気孔10〜35%であるので、締結バンドによる締付け力や振動による荷重に対する剛性を備えており、また当該補強材の金網の網目は耐熱材で充填されていると共に、該円筒状ガスケットは、差し込み型排気管継手に組込まれると、排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で体積膨張を来たし、円筒状ガスケットの内、外周面は、内管の円筒状の外周面及び外管の円筒状の内周面に密に当接し両者間の隙間を閉塞するので、排気管と円筒状ガスケットとの間の隙間の密封性にも優れている。したがって、本発明の円筒状ガスケットは、差し込み型排気管継手に組込まれ、締結バンドによって強固に締め付けられてもヘタリ等の不具合を生じることがなく、悪路走行により当該継手部位に振動荷重、曲げトルクや内、外管間にこじれが繰り返し生じた場合においても、排気管の継手部位からのガス漏れを極力防止することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 混合物
2 筒状金網
5 帯状金網
15 筒状母材
17 キャビティ
18 段付きコア
19 中空円筒部
20 金型
21 パンチ
27 円筒状ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し込み型排気管継手に用いられる円筒状ガスケットであって、圧縮された金網からなる補強材と、該補強材の金網の網目に充填されていると共に圧縮された黒鉛、酸処理黒鉛及び無機バインダーを含有した耐熱材と、当該補強材及び耐熱材に分散されて配された気孔とを具備しており、当該補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有しており、補強材は、円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、円筒状ガスケット全体の体積に対して、補強材は、32〜60%の体積を、耐熱材は、5〜58%の体積を、そして、気孔は、10〜35%の体積を夫々占めていることを特徴とする円筒状ガスケット。
【請求項2】
黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛及び膨張黒鉛のうちの少なくとも一つから選択されている請求項1に記載の円筒状ガスケット。
【請求項3】
酸処理黒鉛は、膨張処理前の酸処理黒鉛である請求項1又は2に記載の円筒状ガスケット。
【請求項4】
無機バインダーは、燐酸二水素アルミニウム、燐酸水素アルミニム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、燐酸二水素カルシウム、燐酸水素カルシウム及び燐酸のうちの少なくとも一つから選択されている請求項1から3のいずれか一項に記載の円筒状ガスケット。
【請求項5】
黒鉛と酸処理黒鉛との質量比は、1:0.01〜0.5であり、黒鉛及び酸処理黒鉛と無機バインダーとの質量比は、1:0.1〜1である請求項1から4のいずれか一項に記載の円筒状ガスケット。
【請求項6】
(1)黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末と無機バインダーと蒸留水とを所定の割合で配合してこれらを混練して湿潤性を有すると共に黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末と無機バインダーとを含有した混合物を作製する工程と、
(2)金属細線を編んで得られた筒状金網を準備し、該筒状金網を一対のローラ間に通して径方向に圧縮して帯状金網を作製する工程と、
(3)帯状金網の両面に前記混合物を供給すると共にロール間で混合物を圧延して該帯状金網の網目に混合物を充填した後、帯状金網の網目に充填された混合物を乾燥して当該混合物中の水分を除去し、該帯状金網の網目に混合物が充填保持された複合帯状材を作製する工程と、
(4)複合帯状材を円筒状に少なくとも2周捲回して筒状母材を作製する工程と、
(5)該筒状母材を金型の円筒状中空部に挿入すると共に該金型内において該筒状母材をその軸方向に圧縮成形する工程と、
を具備しており、差し込み型排気管継手に用いられる円筒状ガスケットであって、圧縮された帯状金網からなる補強材と、該補強材の帯状金網の網目に充填されていると共に圧縮された黒鉛、酸処理黒鉛及び無機バインダーを含有した耐熱材と、補強材及び耐熱材に分散されて配された気孔とを具備しており、当該補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有すると共に補強材が円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、円筒状ガスケット全体の体積に対して、補強材は、32〜60%の体積を、耐熱材は、5〜58%の体積を、そして、気孔は、10〜35%の体積を占めていることを特徴とする円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項7】
黒鉛粉末は、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末及び膨張黒鉛粉末のうちの少なくとも一つから選択される請求項6に記載の円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項8】
膨張黒鉛粉末は、膨張黒鉛シートを裁断、粉砕して形成された粉末である請求項7に記載の円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項9】
酸処理黒鉛粉末は、膨張処理前の酸処理黒鉛粉末である請求項6から8のいずれか一項に記載の円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項10】
無機バインダーは、燐酸二水素アルミニウム、燐酸水素アルミニム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、燐酸二水素カルシウム、燐酸水素カルシウム及び燐酸のうちの少なくと一つから選択されるる請求項6から9のいずれか一項に記載の円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項11】
湿潤性を有する混合物に含有される黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量比は、1:0.01〜0.5であり、黒鉛粉末及び酸処理黒鉛粉末と無機バインダーとの質量比は、1:0.1〜1である請求項6から10のいずれか一項に記載の円筒状ガスケットの製造方法。
【請求項12】
管端部、当該管端部に環状肩部を介して拡径して設けられた拡径円筒部、当該拡径円筒部の軸方向の一方の端部に設けられた開口端部、当該開口端部の外周面に径方向外方に伸びて設けられたフランジ部、該拡径円筒部及びフランジ部に該開口端部の環状端面から軸方向に沿いかつ円周方向に等配されて設けられた複数個のスリットを夫々備えた外管と、当該外管の拡径円筒部の内部を通ると共に一端部で外管の管端部に嵌合された管端部、当該管端部の他端部の外周面に立設されたフランジを備えた内管と、該内管の管端部の円筒外面と外管の拡径円筒部の円筒内面との間の環状隙間に嵌合された請求項1から5のいずれか一項に記載の円筒状ガスケットと、締結により、外管の拡径円筒部の円筒内面を円筒状ガスケットの円筒状の外周面に押し付け、この押し付けを介して円筒状ガスケットの円筒状の内周面を内管の管端部の円筒外面に押し付けるべく、外管の拡径円筒部の円筒外面に配された締結バンドとを具備しており、前記環状隙間において、軸方向の一方の端部の環状の端面が内管のフランジに当接して配された円筒状ガスケットは、該耐熱材に含有された酸処理黒鉛が内管内を流動する排気ガスの熱により体積膨張するようになっており、その円筒状の外周面と外管の拡径円筒部の円筒状の内周面との間の隙間と、該円筒状の内周面と内管の管端部の円筒外面との間の隙間とを密封すると共にその一方の端面と内管の管端部と外管の径拡大部の環状肩部とによって形成された空間を密封するようになっていることを特徴とする差し込み型排気管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113416(P2013−113416A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262740(P2011−262740)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】