円筒袋状ワークのめっき処理用治具
【課題】人手を要しなくても陰極棒の接触位置が変更されて円筒袋状ワークの表面に接点跡が残ることのないめっき処理用治具を提供する。
【解決手段】本発明に係る筒袋状ワークのめっき処理用治具1は、円筒袋状ワークWの内方に差し入れられ円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極21を有し、陰電極は、円筒袋状ワークの内面に当接することにより円筒袋状ワークを保持して円筒袋状ワークを回転可能に形成され、かつ円筒袋状ワークを保持したときに円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部34を有する。
【解決手段】本発明に係る筒袋状ワークのめっき処理用治具1は、円筒袋状ワークWの内方に差し入れられ円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極21を有し、陰電極は、円筒袋状ワークの内面に当接することにより円筒袋状ワークを保持して円筒袋状ワークを回転可能に形成され、かつ円筒袋状ワークを保持したときに円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部34を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒袋状ワークのめっき処理に使用される治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車または電動スクータ等に使用されるニッケル水素電池等の二次電池は、角筒状のもののほかに、その内部構造の制約から形状が円筒状のものも実用化されている。このような二次電池は、装備される電気自動車等の長期間の使用にも支障が生じないことが求められる。そこで、例えば、ニッケル水素電池に使用される外装缶(ケース)には、炭素鋼に耐食性を有するニッケルめっきを施したものが使用される。
しかし、二次電池に使用される円筒状の外装缶は、例えば内径が38mmに対して長さが略96mmの、一方の端が閉じられた袋状であり、内径に比べてその深さが大きいという形状を有する。このような深底の円筒袋状ワークは、内外面全体に均一な厚さのめっきを施すのが容易ではない。これまで一般に行われている、バレル内部に被めっき物を収容し、このバレルをめっき液中で回転させてめっき処理する方法では、特に円筒袋状ワークの内部底面および曲がり部分(コーナー部)のめっきを確実に行うことが困難であった。
【0003】
そこで、円筒袋状ワークを含む多様な断面形状の筒袋状ワークの内外面に均一な厚さのめっきを施すために、筒袋状ワークの内側に陰極棒を挿入して内面に接触させ、かつ筒袋状ワークの内側に陽極補助電極棒を配してその先端の対向電極を筒袋状ワークの底部内面に対向させてめっき処理を行うめっき処理用治具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−277634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案されためっき処理用治具を使用したメッキ処理では、筒袋状ワークの内外面に比較的均一で十分な厚さのめっき膜を形成することができる。
特許文献1に提案されためっき処理用治具は、めっきされた筒袋状ワークの内面の陰極棒が接触する部分に接点跡が残るのを防止するために、めっき処理の途中に数度、陰極棒の接触位置を変更する必要がある。しかし、この接触位置を変更する作業の自動化は、設備の複雑化および製品コストのアップ等から容易ではなく、この作業を人手に頼らなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、人手を要しなくても陰極棒の接触位置が変更されて円筒袋状ワークの表面に接点跡が残ることのないめっき処理用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒袋状ワークのめっき処理用治具は、円筒袋状ワークのめっき処理時に前記円筒袋状ワークを保持するめっき処理用治具であって、前記円筒袋状ワークの内方に差し入れられ前記円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極を有し、前記陰電極は、前記円筒袋状ワークの内面に当接することにより前記円筒袋状ワークを保持して前記円筒袋状ワークを回転可能に形成され、かつ前記円筒袋状ワークを保持したときに前記円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部を有する。
好ましくは、前記円筒袋状ワークの開口部分の外方に位置させるための開口端膜圧抑制材を有し、前記開口端膜圧抑制材は、前記開口部分に対向させるための面である開口端膜圧抑制面を備えて前記陰電極の回転軸方向の異なる位置に移動可能に形成されている。
【0008】
好ましくは、前記円筒袋状ワークの底外面の外方に位置させるための底部膜圧抑制材を有し、底部膜圧抑制材は、前記陰電極の回転軸方向に貫通する貫通孔を備える。
好ましくは、前記円筒袋状ワークの内側に挿入するために前記陰電極の回転軸方向に伸びた補助陽電極と、前記円筒袋状ワークの底外面に当接し前記円筒袋状ワークが前記陰電極の回転軸方向に移動するのを防止するための係止装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、人手を要しなくても陰極棒の接触位置が変更されて円筒袋状ワークの表面に接点跡が残ることのないめっき処理用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はめっき処理用治具の側面断面図である。
【図2】図2は図1におけるA−A矢視断面図である。
【図3】図3は図1におけるB−B矢視断面図である。
【図4】図4はめっき処理用治具の平面図である。
【図5】図5は治具支持体の側面断面図である。
【図6】図6は治具支持体の正面図である。
【図7】図7は治具ユニットの側面図である。
【図8】図8は他のめっき処理用治具における図1のA−A矢視断面に相当する図である。
【図9】図9は図8におけるC−C矢視断面図である。
【図10】図10は他の形態の陰電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はめっき処理用治具1の側面断面図、図2は図1におけるA−A矢視断面図、図3は図1におけるB−B矢視断面図、図4はめっき処理用治具1の平面図である。
めっき処理用治具1は、円筒の一端が開放され他端が閉じられたワーク(以下「円筒袋状ワークW」という。)のめっき処理に使用される。めっき処理用治具1は、陰電極部11、補助陽電極12、開口端膜圧抑制材13、底部膜圧抑制材14、4本の支持棒15,15,15,15および位置決め部16からなる。
陰電極部11は、陰電極21、略円筒状のブシュ22、陰電極支持部23および歯車24で形成される。
【0012】
陰電極21は、ステンレス鋼で製作され、導通部31および導入部32からなる。導通部31は、本体33が丸棒であって、その長手方向の3箇所に、長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら丸棒を帯状1周する、外方に突起する突出帯部34を備えている。突出帯部34は、導通部31を軸方向から見たときに、その帯状の突起の一端(起点)および他端(終点)が連続するか、または重なる部分ができるように形成される。また、突出帯部34は、導通部31を軸方向から見たときに、その突起する端面が円となるように形成されている。導通部31は、その表面がポリプロピレン製チューブで覆われている。
【0013】
導入部32は、主要部分が導通部31の本体33よりも径大の丸棒であり、本体33の軸心にその軸心を一致させて一端が導通部31に連続している。導入部32は、他端から突出する雄ねじ35を有し、他端近傍から軸方向内方に向けた所定の長さが、外径が大きな径大部36となっている。
ブシュ22は、導入部32の主要部分の外径に略等しい内径と径大部36の外径に略等しい外径とを有し、その内側に陰電極21を嵌め入れて、一端で径大部36の一方の側面を係止する。ブシュ22は、陰電極21と固く一体化されている。
【0014】
陰電極支持部23は、導入部32の主要部分の外径に略等しい内径を有する円柱状の軸部37、および軸部37の一端に連続し軸部37よりも大きな外径の円柱状の頭部38からなる。陰電極支持部23は、軸部37における頭部38とは反対側の端に、導入部32の雄ねじ35に螺合可能な雌ねじが設けられている。
歯車24は、ブシュ22の外側に、ブシュ22の軸心を回転軸としてブシュ22と固定的に一体化されている。
ブシュ22はポリ塩化ビニルにより製作され、陰電極支持部23および歯車24は電気の不導体であるABS樹脂により製作されている。
【0015】
陰電極部11は、後に説明するように、基台3を貫通する陰電極用孔66に回転可能に取り付けられる。
補助陽電極12は、円管状の本体41と、本体の一端においてその外観が円錐台であるテーパ部42とからなる。本体41は、その軸心方向の途中2箇所に曲がり部分を有し、一端から一方の曲がり部分までと他端から他方の曲がり部分までとが平行になるように形成されている。テーパ部42は、本体41につながる端で最も外径が小さく、外方端に向けて次第に外径が大きくなっている。補助陽電極12の内部を長手方向に貫通する孔は、めっき液を流通させるための流路43である。
【0016】
補助陽電極12は、テーパ部42側の直管部分における一定の長さ部分が、ポリ塩化ビニルで形成された遮蔽部44により覆われている。ここで「一定の長さ」とは、円筒袋状ワークWがめっき処理用治具1に取り付けられたときに、遮蔽部44の端が円筒袋状ワークWの開口端よりもその内方となる長さである。「一定の長さ」は、例えば、円筒袋状ワークWの内方に位置する遮蔽部44の端から円筒袋状ワークWの開口端までの距離Dが10mm以上15mm以下となる長さである。遮蔽部44は、円筒袋状ワークWの開口端に対向する補助陽電極12を覆うことにより、円筒袋状ワークWの開口端近傍の内面が過大にめっきされるのを防止する働きをする。
【0017】
補助陽電極12は、本体41におけるテーパ部42とは逆側の端部が、後に説明するように、基台3に固定される。補助陽電極12は、炭素鋼に白金めっきが施されて形成され、酸洗等における耐食性が高められている。
開口端膜圧抑制材13は、外形が正面視(図2参照)において略矩形であり、断面が円形の凹状の凹部45を備える。この凹部45の底を形成する部分を薄肉部46といい、薄肉部46の外方周囲の肉厚となった部分を厚肉部47というものとする。
薄肉部46には、凹部45の円形断面と同心円であって凹部45よりも内径が小さな貫通する孔(貫通孔)48が設けられている。
【0018】
開口端膜圧抑制材13には、矩形状の四隅近傍に、厚肉部47を貫通する支持棒貫通孔49がそれぞれ設けられている。4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。
開口端膜圧抑制材13は、それぞれの支持棒貫通孔49を貫通する丸棒である支持棒15が基台3に固定されることにより、基台3と一体化される。開口端膜圧抑制材13の支持棒15,…,15への固定は、支持棒貫通孔49,…,49に直交する雌ねじに螺合されたねじ(なべ小ねじ)50,…,50を締めることにより行われる。
【0019】
開口端膜圧抑制材13は、ポリ塩化ビニルにより製作される。
底部膜圧抑制材14は、外形が正面視(図3参照)において略矩形であり、その形状は、開口端膜圧抑制材13と略同じである。底部膜圧抑制材14は、中心部に、めっき処理が予定される円筒袋状ワークWの外径よりも大きな径を有する円形断面の貫通孔51を備える。貫通孔51の一方の開口端には、傾斜が45度の面取りがなされている。貫通孔51の他方の端部は、その内面が軸心に対して45度で傾斜して開口端に向けて断面の面積が増加するテーパ状となっている。
【0020】
底部膜圧抑制材14は、矩形状の四隅近傍に、傾斜45度の面取りがなされた側の面に開口する4つの支持棒挿入孔52,…,52を備えている。支持棒挿入孔52,…,52は、底部膜圧抑制材14を開口端膜圧抑制材13と重ね合わせたときに、開口端膜圧抑制材13の4つの支持棒貫通孔49,…,49とその位置が一致するように形成される。
4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。4つの支持棒挿入孔52,…,52は、4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。
【0021】
底部膜圧抑制材14は、開口端膜圧抑制材13が支持棒15,…,15に固定された後に、支持棒15,…,15の端部が支持棒挿入孔52,45に挿入され、各雌ねじに螺合されたねじ(なべ小ねじ)53,…,53を締めることにより、支持棒15,…,15にに固定される。
底部膜圧抑制材14は、ポリ塩化ビニルにより製作される。
支持棒15は、ポリ塩化ビニルで製作されており、一端に雄ねじが設けられている。支持棒15は、雄ねじが設けられた一端側を基台3に貫通させ、突き出た雄ねじにナットを螺合させて基台3に固定される。
【0022】
位置決め部16は、係止部25、アーム26、アーム支持部27およびトグルリンク部28からなる。
係止部25は、邪魔板55、係止ピン56等からなる。邪魔板55は、円形の板である。係止ピン56は、先端が円錐状にテーパ加工されている。係止ピン56は、中心から偏った位置で邪魔板55を直交して突き抜け、突き抜けた先端側とは逆側でアーム26に取り付けられている。係止ピン56が貫通する邪魔板55における中心から偏った位置とは、後に説明するアーム支持部27に近い側の位置をいう。邪魔板55はポリ塩化ビニルで製作され、係止ピン56は、ポリプロピレン製である。
【0023】
アーム26は、断面が矩形の棒状体である。アーム26は、邪魔板55に平行に伸び、アーム支持部27に回動可能に支持されている。アーム26は、ABS樹脂で製作される。
アーム支持部27は、2つの支持部材57a,57bにより構成される。なお、図4では、図2および図3において上に位置する2つの支持棒15,15が省略されている。
支持部材57a,57bは、ステンレス鋼の帯状の板材が長手方向の2箇所で両端が異なる側となるように曲げられている。2つの支持部材57a,57bは、同一形状に形成されている。アーム支持部27は、これらが面対称となるように向き合わされ、両者の間隔の広い側が、後に説明する治具支持体2の基台3に固定される。基台3に固定されたアーム支持部27は、図1に示されるように、支持棒15,15、陰電極21および補助陽電極12に平行である。
【0024】
アーム支持部27は、対向する2つの支持部材57a,57bの間隔が狭くなった側の先端にアーム26の端部を挟み込み、回動ピン60により回動可能にアーム26を支持する。アーム26は、その長手方向がアーム支持部27の長手方向に対して0度から90度の範囲内で回動可能である。
トグルリンク部28は、ロッド58および引っ張りコイルバネ59からなる。ロッド58は、角(かど)が丸められた帯状の板であり、一端側が回動ピン60を介してアーム26に一体化されている。ロッド58は、係止部25側においてアーム26に対して略45度傾斜している。
【0025】
引っ張りコイルバネ59は、一端がロッド58の他端側に連結され、他端がアーム支持部27におけるロッド58よりも基台3側の離れた位置に連結されている。
位置決め部16は、係止ピン56の先端が円筒袋状ワークWの底外面に当接しこれを係止することにより、円筒袋状ワークWがめっき処理用治具1から脱落するのを防止する。したがって、位置決め部16は、円筒袋状ワークWがその軸心方向に移動するのを防止するための係止装置といえる。また、円筒袋状ワークWの底外面に当接する係止ピン56を係止装置ということもできる。
【0026】
図5は治具支持体2の側面断面図、図6は治具支持体2の正面図である。
治具支持体2は、めっき処理用治具1、基台3および回転伝達装置5からなる。
基台3は、全体として矩形かつ厚板状の外観を有する。基台3の内部には、その長手方向の略全長に渡り、幅広帯状の電気伝導体からなる陰極側導通部61が、基台3の厚み方向(図5における左右方向)の一方の表面62近くに埋め込まれている。陰極側導通部61は、基台3の長手方向一端側から外部に突出し、突出した端に接続端子が設けられている。
【0027】
基台3は、長手方向における陰極側導通部61が突出する側とは逆側の他方の表面63に、長手方向の略半分の範囲に渡り、帯状の電気伝導体からなる陽極側導通部64がボルトにより固定されている。
基台3には、陰極側導通部61が突出する側とは逆側の端近傍に補助陽電極用孔65、およびその長手方向内方にそれぞれ所定の距離を隔てて陰電極用孔66、中間孔および初段孔が一方の表面62から他方の表面63に貫通している。
補助陽電極用孔65は、その内径が補助陽電極12の外径に略等しい。
【0028】
補助陽電極12は補助陽電極用孔65に嵌め入れられ、他方の表面63から突出する端部を覆うストッパ69にボルトによって固定され、基台3に一体化される。ストッパ69は、陽極側導通部64と連結されており、補助陽電極12は、陽極側導通部64と電気的に連通する。
陰電極用孔66は陰極側導通部61を貫通している。陰電極用孔66が貫通する陰極側導通部61の周囲は円筒状となっており、その内面が陰電極用孔66の内面の一部となって円筒の端は一方の表面62に露出する。以下、この円筒状の部分をボス部70という。
【0029】
陰電極用孔66は、陰電極部11を回転可能に支持する。一体化された陰電極21、ブシュ22および歯車24は、雄ねじ35側が、基台3の一方の表面62から陰電極用孔66に挿入される。陰電極用孔66における基台3の他方の表面63への開口からは、ワッシャ状の摺動補助材71を挟んで陰電極支持部23の軸部37が挿入される。陰電極21の雄ねじ35は、陰電極用孔66内で軸部37の端に設けられた雌ねじと螺合され、陰電極部11は回転可能に陰電極用孔66に一体化される。陰電極部11は、径大部36の雄ねじ35側を向く側面および径大部36と雄ねじ35との間の周面が陰極側導通部61のボス部70と接することにより、陰極側導通部61と陰電極21とを電気的に連通させる。
【0030】
摺動補助材71には、自己潤滑性を有する樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)またはポリアミド(PA)が使用される。
中間孔は、回転伝達装置5における中段歯車73を回転可能に支持するためのものである。また、初段孔は、回転伝達装置5における初段歯車74を回転可能に支持するためのものである。
基台3は、その長手方向の陰極側導通部61が突出する端近傍における他方の表面63で、支持ロッド17と一体化されている。支持ロッド17は、陰電極21および支持棒15に平行に伸びる角棒である。支持ロッド17は、後に説明するプレート6に、途中に設けられた揺動支点72において揺動可能に一体化される。支持ロッド17は、円筒袋状ワークWを保持するめっき処理用治具1を各種の処理液に浸漬させ、およびこれらの処理液からめっき処理用治具1を取り出す動作を行わせる。
【0031】
回転伝達装置5は、中段歯車73、初段歯車74,伝達軸75およびスプロケット76で構成される。
中段歯車73は歯車24に噛み合わされ、初段歯車74は中段歯車73に噛み合わされて、歯車24から順に、基台3の長手方向に並べられている。また、中段歯車73および初段歯車74は、その回転軸が歯車24の回転軸とともに1平面に含まれるように配されている。中段歯車73および初段歯車74は、歯数およびその歯先径が歯車24と略同一であり、初段歯車74が1回転するごとに歯車24が1回転する。
【0032】
伝達軸75は、丸棒であって基台3を貫通して初段歯車74に一体化され、初段歯車74の回転軸として機能する。伝達軸75は、基台3の他方の表面63に直交して外方に伸び、端にスプロケット76が固定されている。伝達軸75は、スプロケット76の近傍内方で、支持ロッド17に固定された伝達軸支持部77に支持されている。
図7は治具ユニット4の側面図、図8は図7におけるC−C矢視図である。なお、図8において、治具支持体2のスプロケット76は省略されている。
治具ユニット4は、治具支持体2、プレート6、揺動支持部18、配電部および制御部からなる。
【0033】
プレート6は、細長い矩形の板材で形成される。プレート6は、一方の端近くに、プレート6の長手方向に長い略矩形の貫通する孔78を備える。
揺動支持部18は、プレート6の一方の表面における孔78の開口部分を覆うように設けられている。揺動支持部18は、プレート6の孔78に連続する孔79を有し、孔79に治具支持体2の支持ロッド17を貫通させ、治具支持体2を揺動支点72廻りに揺動可能に支持する。
揺動支持部18を貫通した支持ロッド17の先端には、支持ロッド17に対して回転自在な車80が取り付けられている。車80は、めっき処理装置における誘導板の下面に設けられた凹凸路を転動し、この凹凸路に沿って上下することにより支持ロッド17を揺動支点72廻りに揺動させる。
【0034】
配電部は、プレート6の他方の端近くの揺動支持部18が配された側と同じ側に設けられる。配電部は、めっき処理装置の操作盤から、めっき処理用の電力および制御用電力を受け入れるための装置である。
制御部は、プレート6の長手方向略中央の、配電部が配された側と同じ側に設けられる。制御部は、内部にマイクロコンピュータ、記憶装置(RAM)を収容し、めっき処理用の電力を制御するためのものである。
次に、図1〜図3および図7を参照しながら、円筒袋状ワークWにめっき処理を行うときのめっき槽7内におけるめっき処理用治具1の動作について説明する。
【0035】
円筒袋状ワークWは、例えば炭素鋼製であり、めっきされる金属はニッケルである。
初めに、位置決め部16のアーム26が90度回動されて底部膜圧抑制材14の貫通孔51が全開される。貫通孔51を通して、円筒袋状ワークWが、その内方に陰電極21および補助陽電極12を収容させてめっき処理用治具1に取り付けられる。円筒袋状ワークWは、その内面が陰電極21の突出帯部34,34,34に接し、これらにより保持される。
係止ピン56の先端が円筒袋状ワークWの底外面に当接可能なように、アーム26が90度回動されて元の位置に戻される。この状態で、円筒袋状ワークWは、邪魔板55から突出する係止ピン56の先端により、めっき処理用治具1からの脱落が防止される。
【0036】
なお、開口端膜圧抑制材13は、予め円筒袋状ワークWの長さ(軸心方向の全長)に応じて位置が決められる。開口端膜圧抑制材13の位置は、円筒袋状ワークWの底外面が係止ピン56の先端に当接した状態で、凹部45の表面と円筒袋状ワークWの開口端縁との距離gが1.5mm以上2.5mm以下であるのが好ましい。
続いて、円筒袋状ワークWを保持するめっき処理用治具1は、めっき処理装置によって支持ロッド17が揺動され、めっき液81が収容されためっき槽7内に浸漬される。めっき槽7内におけるめっき処理用治具1は、保持する円筒袋状ワークWの閉じられた底よりも開口部分を上に位置させるように、傾斜される。
【0037】
めっき処理用治具1のこの傾斜の角度は、水平に対して5度以上とするのが好ましい。なお、めっき処理用治具1においては、陰電極21(の軸心)、支持棒15,…,15および支持ロッド17がいずれも平行であり、傾斜の角度はこれらのいずれを基準としてもよい。
めっき処理用治具1は、めっき処理装置により駆動されるスプロケット76の回転が、初段歯車74、中段歯車73および歯車24に伝えられ、陰電極21が回転する。陰電極21の回転は、突出帯部34,34,34によってこれと接する円筒袋状ワークWの内面に伝えられ、円筒袋状ワークWが回転する。めっき処理における円筒袋状ワークWの回転速度は、例えば略1rpmである。
【0038】
陰電極21は、回転中常に突出帯部34,34,34が円筒袋状ワークWの内面に接して円筒袋状ワークWを保持するため、円筒袋状ワークWと電気的に常に連通している。制御部からは、めっき処理用電力が陰電極21および補助陽電極12に供給され、円筒袋状ワークWは陰極となって、めっき液中のニッケルイオンがその表面に析出し、円筒袋状ワークWのめっき処理が行われる。
めっき処理では、制御部からの電力供給とは別に、めっき槽7内に備えられた陽極82にも電力が供給される。
【0039】
めっき処理において、めっき槽7内のめっき液81が外部循環される。めっき液81は、循環ポンプ83により昇圧され、めっき槽7内に設けられたノズル84から補助陽電極12の開口部分に向けて噴出される。ノズル84から噴出されためっき液81は、補助陽電極12内の流路43を通ってテーパ部42から円筒袋状ワークWの底内面に吐出される。
めっき処理用治具1は、以上のように動作させることにより、種々の効果を奏する。
すなわち、めっき処理用治具1は、めっき処理時に陰電極21が回転することにより、円筒袋状ワークWの内面における突出帯部34,34,34に接する部分が常に変化する。めっき処理用治具1は、この陰電極21の回転により、めっき処理した円筒袋状ワークWの表面に接点跡が残らないという特長を有する。めっき処理用治具1を使用しためっき処理では、人手で円筒袋状ワークWを回転させる必要がなく、めっき処理の作業性を向上させることができる。
【0040】
めっき処理用治具1は、陰電極21における3つの突出帯部34,34,34が、長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら本体33を1周するように形成されているので、一層円筒袋状ワークWの内面への接点跡の発生を防止することができる。
また、めっき処理用治具1は、傾斜させて使用されることにより、めっき処理時に円筒袋状ワークW内で発生する水素および酸素の気泡を系外に円滑に排出することができる。そのため、めっき処理用治具1は、発生した気泡が内面に付着滞留することによるめっきムラの発生を防止することができる。
【0041】
さらに、めっき処理用治具1は、ノズル84から噴出されためっき液81を、補助陽電極12の内部の流路43を通過させてテーパ部42から円筒袋状ワークW内の底近傍に流入させることができる。そのため、めっき処理用治具1は、円筒袋状ワークW内のめっき液が常に入れ替わり、円筒袋状ワークW内面のめっきを効率よく行うことができる。
一般に、円筒袋状ワークWは、円筒部分と底とにより形成される角(かど)近傍および開口部分のめっき厚さが大きくなり易い。
しかし、開口部分のめっき厚さが大きい場合、例えば、ニッケル水素電池のケースとして使用される円筒袋状ワークWでは、開口部分に急激な曲げ加工が加えられたときに、めっきの割れが生ずるおそれがある。
【0042】
めっき処理用治具1では、円筒袋状ワークWの開口部分近傍に配された開口端膜圧抑制材13によって、開口部分のめっき厚さが過大となることが防止される。この開口部分のめっき厚さが過大となることの防止効果は、より具体的には、円筒袋状ワークWの開口端縁に対向する凹部45の表面によりもたらされる。そのため、凹部45の円筒袋状ワークWの開口端縁に対向する表面を、開口端膜圧抑制面ということができる。
また、めっき処理用治具1では、円筒袋状ワークWの底近傍に配された底部膜圧抑制材14により、底外面の角(かど)近傍においてめっき厚さが過大となることが防止される。
【0043】
位置決め部16における邪魔板55も、底外面の角(かど)近傍のめっき液81の入れ替わりを抑制することにより、底外面の角(かど)近傍におけるめっき厚さの増加の防止に寄与する。
めっき処理用治具1は、開口端膜圧抑制材13および底部膜圧抑制材14のいずれかを、またはいずれをも有しないものとすることができ、そのようなめっき処理用治具であっても、円筒袋状ワークWの表面に接点跡が残らないめっき処理を行うことができる。また、位置決め部16をめっき処理用治具1に一体化せず、めっき槽7に付属する装置、例えば、ノズルからめっき液を円筒袋状ワークWの底外面に向けてジェット噴出させて、傾斜しためっき処理用治具からの円筒袋状ワークWの落下を防止してもよい。
【0044】
図8は他のめっき処理用治具1Bにおける図1のA−A矢視断面に相当する図、図9は図8におけるC−C矢視断面図である。図8において、開口端膜圧抑制材13Bは想像線で表される。
めっき処理用治具1Bは、2つの陰電極部11B,11B、補助陽電極12、開口端膜圧抑制材13B、底部膜圧抑制材14B、4本の支持棒15,15,15,15および位置決め部16からなる。
めっき処理用治具1Bにおいて上に説明しためっき処理用治具1と同一の構成を有する部分については、図8および図9においてめっき処理用治具1におけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。
【0045】
陰電極部11Bは、陰電極21B、歯車24Bおよび陰電極支持部23で形成される。
陰電極21Bは、ステンレス鋼で製作され、導通部31および導入部32Bからなる。導通部31は、めっき処理用治具1の陰電極21における導通部31と同一である。
導入部32Bは、主要部分が導通部31の本体33にそのまま同一外径で続く丸棒である。導入部32Bは、本体33に続く側と逆側の端に突出する雄ねじ35を有し、この端近傍から軸方向内方に向けた所定の長さが、径が大きい径大部36となっている。
2つの陰電極21B,21Bは、基台3の一方の表面62から垂直に、幅方向(図8における横方向)に所定の間隔を有して外方に伸びている。
【0046】
歯車24Bは、基台3の幅方向に互いに干渉しないように2つ並べて配置可能な大きさである。また、歯車24Bは、軸心を陰電極21Bの導通部31と共通する。歯車24Bは、導通部31がめっき処理時に円筒袋状ワークWの内側に収容されるので、その歯の先端を結んで形成される円は、保持対象である円筒袋状ワークWの内径よりも小さいことが求められる。歯車24Bは、陰電極21Bにおける導入部32Bの外周を覆うようにして陰電極21Bと一体化されている。
陰電極支持部23は、めっき処理用治具1におけるものと同じであり、陰電極21Bおよび歯車24Bを回転可能に基台3一体化するためのものである。
【0047】
陰電極部11Bは、めっき処理用治具1における陰電極部11と同様にして、基台3を貫通する陰電極用孔65に回転可能に取り付けられる。
補助陽電極12は、めっき処理用治具1におけるものと同一であり、基台3への取り付けも、めっき処理用治具1におけるものと同様にして行われている。
開口端膜圧抑制材13Bは、正面視(図8参照)において略矩形であり、断面が円形の凹状の凹部45を備える。開口端膜圧抑制材13Bは、この凹部45を含め、めっき処理用治具1の開口端膜圧抑制材13におけるものと同一の構成の薄肉部46、厚肉部47、貫通孔48および4つの支持棒貫通孔49を備えている。
【0048】
開口端膜圧抑制材13Bは、それぞれの支持棒貫通孔49を貫通する丸棒である支持棒15,…,15が基台3に固定されることにより、基台3と一体化されている。
底部膜圧抑制材14Bは、正面視において略矩形であり、その外形は、開口端膜圧抑制材13Bと略同じである。底部膜圧抑制材14Bが備える貫通孔51および4つの支持棒挿入孔52,52は、めっき処理用治具1の底部膜圧抑制材14におけるものと同一であり、底部膜圧抑制材14Bの支持棒15,…,15への固定も、めっき処理用治具1における固定と同様にして行われる。
【0049】
めっき処理用治具1Bは、基台3および回転伝達装置5Bと一体化されて治具支持体2Bを形成する。
基台3は、治具支持体2におけるものと同一である。
回転伝達装置5Bは、第1中段歯車73Ba、第2中段歯車73Bb、初段歯車74B,伝達軸75およびスプロケットで構成される。
第1中段歯車73Baは歯車24Bに噛み合わされ、第2中段歯車73Bbは第1中段歯車73Baに噛み合わされ、初段歯車74Bは第2中段歯車73Bbに噛み合わされて、歯車24Bから順に、基台3の長手方向に並べられている。また、第1中段歯車73Ba、第2中段歯車73Bbおよび初段歯車74Bは、その回転軸が歯車24Bの回転軸とともに1平面に含まれるように配されている。
【0050】
歯車24B,24Bの歯数および歯先を結ぶ外径は、それぞれ初段歯車74Bの歯数および歯先を結ぶ外径と同一であり、歯車24B,24Bは、初段歯車74Bが1回転するごとに1回転する。
伝達軸75およびスプロケットは、治具支持体2におけるものと同一である。
めっき処理用治具1Bは、めっき処理時には、円筒袋状ワークWをその内方に2つの陰電極21B,21Bおよび補助陽電極12を収容させて円筒袋状ワークWを保持する。円筒袋状ワークWは、その内面が陰電極21B,21Bのそれぞれの突出帯部34,34,34に接し、これらにより保持される。
【0051】
めっき処理用治具1Bは、めっき槽7内において、保持する円筒袋状ワークWの閉じられた底よりも開口部分を上に位置させるように傾斜される。そして、めっき処理用治具1Bは、回転伝達装置5Bにより、ゆっくりと回転される。
めっき処理用治具1Bは、以上のように動作させることにより、めっき処理用治具1が奏する効果と同じ効果を奏する。
図10は他の形態の陰電極21Cを示す図である。
陰電極21Cは、めっき処理用治具1,1Bの陰電極21,21Bにおける突出帯部34の代わりに、一群の突起86Ca,86Cb,86Cc,…,86Cnからなる接点部87Cを備えている。
【0052】
一群の突起86Ca,86Cb,86Cc,…,86Cnは、それぞれが円柱状であって、本体33からその表面に直交して突出する。一群の突起86Ca,…,86Cnは、それぞれの突出端面が、本体33の長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら本体33を1周するように並べられている。また、一群の突起86Ca,…,86Cnは、本体33を軸方向から見たときに(図10(b)参照)、起点となる突起86Caと終点となる突起86Cnとが重なるように配されている。
突出帯部34の換わりにこのような接点部87Cを備えた陰電極21Cを有するめっき処理用治具においても、めっき処理用治具1,1Bと同様に、円筒袋状ワークWの表面に接点跡を残さないでめっき処理を行うことができる。
【0053】
陰電極21,21B,21Cは、1つの本体33に対して突出帯部34または接点部87Cが1箇所のみに設けられているものよりも、2箇所以上に設けられているものの方が円筒袋状ワークWを安定に回転させることができ、好ましい。また、円筒袋状ワークWの回転を安定させるために、陰電極21,21B,21Cの1つの本体33に対して突出帯部34または接点部87Cを1箇所設け、他に電気の不導体で形成され、例えば突出帯部34または接点部87Cと同一形状の回転安定手段を2箇所以上に設けてもよい。
突出帯部34または接点部87Cは、1つの本体33に対して2箇所以上に設けられる場合には、陰電極21,21B,21Cが回転するときに保持する円筒袋状ワークWの内面にいずれかの突出帯部34または接点部87Cが接していればよい。したがって、突出帯部34および接点部87Cは、本体33を一周しその帯状突起の一端(起点)および他端(終点)が連続し、または重なる部分ができるように形成されることを要しない。
【0054】
例えば、突出帯部34または接点部87Cが1つの本体33に対して2箇所設けられる場合には、陰電極21,21B,21Cは、1つの突出帯部34または接点部87Cが本体33を半周し、本体33を軸方向から見たときに、2つの突出帯部34,34または接点部87C,87Cが併されて、本体33を1周するように形成されていてもよい。
突出帯部34または接点部87Cが1つの本体33に対して3箇所以上設けられる場合にも同様に、陰電極21,21B,21Cは、本体33を軸方向から見たときに、全てのの突出帯部34,34または接点部87C,87Cが併されて、本体33を1周するように形成されていればよい。
【0055】
なお、上記における「本体33を1周するように形成されている」とは、1つもしくは複数の突出帯部34または1つもしくは複数の接点部87Cが、陰電極21,21B,21Cが回転するときに保持する円筒袋状ワークWの内面に全体として常に接するように形成されていることをいい、本体33を軸方向から見たときに、その帯状突起の一端(起点)および他端(終点)が連続するかまたは重なる部分ができるように形成されていること、および1つの本体33における異なる突出帯部34または接点部87Cの周方向の端同士が重なり合うことを要件とするものではない。
【0056】
また、突出帯部34および接点部87Cは、本体33に対して、長手方向と直交する方向に傾斜しながら1周するように形成されるのが好ましい。しかし、突出帯部34および接点部87Cを、(長手方向と直交する)周方向に、上記したような「1周」するように設けても、円筒袋状ワークWの内面における接触部分を散らすことができ、接点跡の発生を防止することができる。
上述の実施形態において、開口端膜圧抑制材13、底部膜圧抑制材14および邪魔板55は、めっき処理する円筒袋状ワークWの大きさ等により適切な形状、大きさ等に設計される。
【0057】
また、めっき処理用治具1,1Bは、上に記載した使用形態以外に、他の形態で使用することができる。
その他、めっき処理用治具1,1B、およびめっき処理用治具1,1Bの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、円筒袋状ワークのめっき処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1B めっき処理用治具
12 補助陽電極
13,13B 開口端膜圧抑制材
14,14B 底部膜圧抑制材
16 係止装置(位置決め部)
21,21B,21C 陰電極
34 接点部(突出帯部)
45 開口端膜圧抑制面(凹部の表面)
56 係止装置(係止ピン)
51 (底部膜圧抑制材の)貫通孔
87C 接点部
W 円筒袋状ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒袋状ワークのめっき処理に使用される治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車または電動スクータ等に使用されるニッケル水素電池等の二次電池は、角筒状のもののほかに、その内部構造の制約から形状が円筒状のものも実用化されている。このような二次電池は、装備される電気自動車等の長期間の使用にも支障が生じないことが求められる。そこで、例えば、ニッケル水素電池に使用される外装缶(ケース)には、炭素鋼に耐食性を有するニッケルめっきを施したものが使用される。
しかし、二次電池に使用される円筒状の外装缶は、例えば内径が38mmに対して長さが略96mmの、一方の端が閉じられた袋状であり、内径に比べてその深さが大きいという形状を有する。このような深底の円筒袋状ワークは、内外面全体に均一な厚さのめっきを施すのが容易ではない。これまで一般に行われている、バレル内部に被めっき物を収容し、このバレルをめっき液中で回転させてめっき処理する方法では、特に円筒袋状ワークの内部底面および曲がり部分(コーナー部)のめっきを確実に行うことが困難であった。
【0003】
そこで、円筒袋状ワークを含む多様な断面形状の筒袋状ワークの内外面に均一な厚さのめっきを施すために、筒袋状ワークの内側に陰極棒を挿入して内面に接触させ、かつ筒袋状ワークの内側に陽極補助電極棒を配してその先端の対向電極を筒袋状ワークの底部内面に対向させてめっき処理を行うめっき処理用治具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−277634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案されためっき処理用治具を使用したメッキ処理では、筒袋状ワークの内外面に比較的均一で十分な厚さのめっき膜を形成することができる。
特許文献1に提案されためっき処理用治具は、めっきされた筒袋状ワークの内面の陰極棒が接触する部分に接点跡が残るのを防止するために、めっき処理の途中に数度、陰極棒の接触位置を変更する必要がある。しかし、この接触位置を変更する作業の自動化は、設備の複雑化および製品コストのアップ等から容易ではなく、この作業を人手に頼らなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、人手を要しなくても陰極棒の接触位置が変更されて円筒袋状ワークの表面に接点跡が残ることのないめっき処理用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒袋状ワークのめっき処理用治具は、円筒袋状ワークのめっき処理時に前記円筒袋状ワークを保持するめっき処理用治具であって、前記円筒袋状ワークの内方に差し入れられ前記円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極を有し、前記陰電極は、前記円筒袋状ワークの内面に当接することにより前記円筒袋状ワークを保持して前記円筒袋状ワークを回転可能に形成され、かつ前記円筒袋状ワークを保持したときに前記円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部を有する。
好ましくは、前記円筒袋状ワークの開口部分の外方に位置させるための開口端膜圧抑制材を有し、前記開口端膜圧抑制材は、前記開口部分に対向させるための面である開口端膜圧抑制面を備えて前記陰電極の回転軸方向の異なる位置に移動可能に形成されている。
【0008】
好ましくは、前記円筒袋状ワークの底外面の外方に位置させるための底部膜圧抑制材を有し、底部膜圧抑制材は、前記陰電極の回転軸方向に貫通する貫通孔を備える。
好ましくは、前記円筒袋状ワークの内側に挿入するために前記陰電極の回転軸方向に伸びた補助陽電極と、前記円筒袋状ワークの底外面に当接し前記円筒袋状ワークが前記陰電極の回転軸方向に移動するのを防止するための係止装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、人手を要しなくても陰極棒の接触位置が変更されて円筒袋状ワークの表面に接点跡が残ることのないめっき処理用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はめっき処理用治具の側面断面図である。
【図2】図2は図1におけるA−A矢視断面図である。
【図3】図3は図1におけるB−B矢視断面図である。
【図4】図4はめっき処理用治具の平面図である。
【図5】図5は治具支持体の側面断面図である。
【図6】図6は治具支持体の正面図である。
【図7】図7は治具ユニットの側面図である。
【図8】図8は他のめっき処理用治具における図1のA−A矢視断面に相当する図である。
【図9】図9は図8におけるC−C矢視断面図である。
【図10】図10は他の形態の陰電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はめっき処理用治具1の側面断面図、図2は図1におけるA−A矢視断面図、図3は図1におけるB−B矢視断面図、図4はめっき処理用治具1の平面図である。
めっき処理用治具1は、円筒の一端が開放され他端が閉じられたワーク(以下「円筒袋状ワークW」という。)のめっき処理に使用される。めっき処理用治具1は、陰電極部11、補助陽電極12、開口端膜圧抑制材13、底部膜圧抑制材14、4本の支持棒15,15,15,15および位置決め部16からなる。
陰電極部11は、陰電極21、略円筒状のブシュ22、陰電極支持部23および歯車24で形成される。
【0012】
陰電極21は、ステンレス鋼で製作され、導通部31および導入部32からなる。導通部31は、本体33が丸棒であって、その長手方向の3箇所に、長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら丸棒を帯状1周する、外方に突起する突出帯部34を備えている。突出帯部34は、導通部31を軸方向から見たときに、その帯状の突起の一端(起点)および他端(終点)が連続するか、または重なる部分ができるように形成される。また、突出帯部34は、導通部31を軸方向から見たときに、その突起する端面が円となるように形成されている。導通部31は、その表面がポリプロピレン製チューブで覆われている。
【0013】
導入部32は、主要部分が導通部31の本体33よりも径大の丸棒であり、本体33の軸心にその軸心を一致させて一端が導通部31に連続している。導入部32は、他端から突出する雄ねじ35を有し、他端近傍から軸方向内方に向けた所定の長さが、外径が大きな径大部36となっている。
ブシュ22は、導入部32の主要部分の外径に略等しい内径と径大部36の外径に略等しい外径とを有し、その内側に陰電極21を嵌め入れて、一端で径大部36の一方の側面を係止する。ブシュ22は、陰電極21と固く一体化されている。
【0014】
陰電極支持部23は、導入部32の主要部分の外径に略等しい内径を有する円柱状の軸部37、および軸部37の一端に連続し軸部37よりも大きな外径の円柱状の頭部38からなる。陰電極支持部23は、軸部37における頭部38とは反対側の端に、導入部32の雄ねじ35に螺合可能な雌ねじが設けられている。
歯車24は、ブシュ22の外側に、ブシュ22の軸心を回転軸としてブシュ22と固定的に一体化されている。
ブシュ22はポリ塩化ビニルにより製作され、陰電極支持部23および歯車24は電気の不導体であるABS樹脂により製作されている。
【0015】
陰電極部11は、後に説明するように、基台3を貫通する陰電極用孔66に回転可能に取り付けられる。
補助陽電極12は、円管状の本体41と、本体の一端においてその外観が円錐台であるテーパ部42とからなる。本体41は、その軸心方向の途中2箇所に曲がり部分を有し、一端から一方の曲がり部分までと他端から他方の曲がり部分までとが平行になるように形成されている。テーパ部42は、本体41につながる端で最も外径が小さく、外方端に向けて次第に外径が大きくなっている。補助陽電極12の内部を長手方向に貫通する孔は、めっき液を流通させるための流路43である。
【0016】
補助陽電極12は、テーパ部42側の直管部分における一定の長さ部分が、ポリ塩化ビニルで形成された遮蔽部44により覆われている。ここで「一定の長さ」とは、円筒袋状ワークWがめっき処理用治具1に取り付けられたときに、遮蔽部44の端が円筒袋状ワークWの開口端よりもその内方となる長さである。「一定の長さ」は、例えば、円筒袋状ワークWの内方に位置する遮蔽部44の端から円筒袋状ワークWの開口端までの距離Dが10mm以上15mm以下となる長さである。遮蔽部44は、円筒袋状ワークWの開口端に対向する補助陽電極12を覆うことにより、円筒袋状ワークWの開口端近傍の内面が過大にめっきされるのを防止する働きをする。
【0017】
補助陽電極12は、本体41におけるテーパ部42とは逆側の端部が、後に説明するように、基台3に固定される。補助陽電極12は、炭素鋼に白金めっきが施されて形成され、酸洗等における耐食性が高められている。
開口端膜圧抑制材13は、外形が正面視(図2参照)において略矩形であり、断面が円形の凹状の凹部45を備える。この凹部45の底を形成する部分を薄肉部46といい、薄肉部46の外方周囲の肉厚となった部分を厚肉部47というものとする。
薄肉部46には、凹部45の円形断面と同心円であって凹部45よりも内径が小さな貫通する孔(貫通孔)48が設けられている。
【0018】
開口端膜圧抑制材13には、矩形状の四隅近傍に、厚肉部47を貫通する支持棒貫通孔49がそれぞれ設けられている。4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。
開口端膜圧抑制材13は、それぞれの支持棒貫通孔49を貫通する丸棒である支持棒15が基台3に固定されることにより、基台3と一体化される。開口端膜圧抑制材13の支持棒15,…,15への固定は、支持棒貫通孔49,…,49に直交する雌ねじに螺合されたねじ(なべ小ねじ)50,…,50を締めることにより行われる。
【0019】
開口端膜圧抑制材13は、ポリ塩化ビニルにより製作される。
底部膜圧抑制材14は、外形が正面視(図3参照)において略矩形であり、その形状は、開口端膜圧抑制材13と略同じである。底部膜圧抑制材14は、中心部に、めっき処理が予定される円筒袋状ワークWの外径よりも大きな径を有する円形断面の貫通孔51を備える。貫通孔51の一方の開口端には、傾斜が45度の面取りがなされている。貫通孔51の他方の端部は、その内面が軸心に対して45度で傾斜して開口端に向けて断面の面積が増加するテーパ状となっている。
【0020】
底部膜圧抑制材14は、矩形状の四隅近傍に、傾斜45度の面取りがなされた側の面に開口する4つの支持棒挿入孔52,…,52を備えている。支持棒挿入孔52,…,52は、底部膜圧抑制材14を開口端膜圧抑制材13と重ね合わせたときに、開口端膜圧抑制材13の4つの支持棒貫通孔49,…,49とその位置が一致するように形成される。
4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。4つの支持棒挿入孔52,…,52は、4つの支持棒貫通孔49,…,49は、それぞれがその軸心に直交する雌ねじと連通する。
【0021】
底部膜圧抑制材14は、開口端膜圧抑制材13が支持棒15,…,15に固定された後に、支持棒15,…,15の端部が支持棒挿入孔52,45に挿入され、各雌ねじに螺合されたねじ(なべ小ねじ)53,…,53を締めることにより、支持棒15,…,15にに固定される。
底部膜圧抑制材14は、ポリ塩化ビニルにより製作される。
支持棒15は、ポリ塩化ビニルで製作されており、一端に雄ねじが設けられている。支持棒15は、雄ねじが設けられた一端側を基台3に貫通させ、突き出た雄ねじにナットを螺合させて基台3に固定される。
【0022】
位置決め部16は、係止部25、アーム26、アーム支持部27およびトグルリンク部28からなる。
係止部25は、邪魔板55、係止ピン56等からなる。邪魔板55は、円形の板である。係止ピン56は、先端が円錐状にテーパ加工されている。係止ピン56は、中心から偏った位置で邪魔板55を直交して突き抜け、突き抜けた先端側とは逆側でアーム26に取り付けられている。係止ピン56が貫通する邪魔板55における中心から偏った位置とは、後に説明するアーム支持部27に近い側の位置をいう。邪魔板55はポリ塩化ビニルで製作され、係止ピン56は、ポリプロピレン製である。
【0023】
アーム26は、断面が矩形の棒状体である。アーム26は、邪魔板55に平行に伸び、アーム支持部27に回動可能に支持されている。アーム26は、ABS樹脂で製作される。
アーム支持部27は、2つの支持部材57a,57bにより構成される。なお、図4では、図2および図3において上に位置する2つの支持棒15,15が省略されている。
支持部材57a,57bは、ステンレス鋼の帯状の板材が長手方向の2箇所で両端が異なる側となるように曲げられている。2つの支持部材57a,57bは、同一形状に形成されている。アーム支持部27は、これらが面対称となるように向き合わされ、両者の間隔の広い側が、後に説明する治具支持体2の基台3に固定される。基台3に固定されたアーム支持部27は、図1に示されるように、支持棒15,15、陰電極21および補助陽電極12に平行である。
【0024】
アーム支持部27は、対向する2つの支持部材57a,57bの間隔が狭くなった側の先端にアーム26の端部を挟み込み、回動ピン60により回動可能にアーム26を支持する。アーム26は、その長手方向がアーム支持部27の長手方向に対して0度から90度の範囲内で回動可能である。
トグルリンク部28は、ロッド58および引っ張りコイルバネ59からなる。ロッド58は、角(かど)が丸められた帯状の板であり、一端側が回動ピン60を介してアーム26に一体化されている。ロッド58は、係止部25側においてアーム26に対して略45度傾斜している。
【0025】
引っ張りコイルバネ59は、一端がロッド58の他端側に連結され、他端がアーム支持部27におけるロッド58よりも基台3側の離れた位置に連結されている。
位置決め部16は、係止ピン56の先端が円筒袋状ワークWの底外面に当接しこれを係止することにより、円筒袋状ワークWがめっき処理用治具1から脱落するのを防止する。したがって、位置決め部16は、円筒袋状ワークWがその軸心方向に移動するのを防止するための係止装置といえる。また、円筒袋状ワークWの底外面に当接する係止ピン56を係止装置ということもできる。
【0026】
図5は治具支持体2の側面断面図、図6は治具支持体2の正面図である。
治具支持体2は、めっき処理用治具1、基台3および回転伝達装置5からなる。
基台3は、全体として矩形かつ厚板状の外観を有する。基台3の内部には、その長手方向の略全長に渡り、幅広帯状の電気伝導体からなる陰極側導通部61が、基台3の厚み方向(図5における左右方向)の一方の表面62近くに埋め込まれている。陰極側導通部61は、基台3の長手方向一端側から外部に突出し、突出した端に接続端子が設けられている。
【0027】
基台3は、長手方向における陰極側導通部61が突出する側とは逆側の他方の表面63に、長手方向の略半分の範囲に渡り、帯状の電気伝導体からなる陽極側導通部64がボルトにより固定されている。
基台3には、陰極側導通部61が突出する側とは逆側の端近傍に補助陽電極用孔65、およびその長手方向内方にそれぞれ所定の距離を隔てて陰電極用孔66、中間孔および初段孔が一方の表面62から他方の表面63に貫通している。
補助陽電極用孔65は、その内径が補助陽電極12の外径に略等しい。
【0028】
補助陽電極12は補助陽電極用孔65に嵌め入れられ、他方の表面63から突出する端部を覆うストッパ69にボルトによって固定され、基台3に一体化される。ストッパ69は、陽極側導通部64と連結されており、補助陽電極12は、陽極側導通部64と電気的に連通する。
陰電極用孔66は陰極側導通部61を貫通している。陰電極用孔66が貫通する陰極側導通部61の周囲は円筒状となっており、その内面が陰電極用孔66の内面の一部となって円筒の端は一方の表面62に露出する。以下、この円筒状の部分をボス部70という。
【0029】
陰電極用孔66は、陰電極部11を回転可能に支持する。一体化された陰電極21、ブシュ22および歯車24は、雄ねじ35側が、基台3の一方の表面62から陰電極用孔66に挿入される。陰電極用孔66における基台3の他方の表面63への開口からは、ワッシャ状の摺動補助材71を挟んで陰電極支持部23の軸部37が挿入される。陰電極21の雄ねじ35は、陰電極用孔66内で軸部37の端に設けられた雌ねじと螺合され、陰電極部11は回転可能に陰電極用孔66に一体化される。陰電極部11は、径大部36の雄ねじ35側を向く側面および径大部36と雄ねじ35との間の周面が陰極側導通部61のボス部70と接することにより、陰極側導通部61と陰電極21とを電気的に連通させる。
【0030】
摺動補助材71には、自己潤滑性を有する樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)またはポリアミド(PA)が使用される。
中間孔は、回転伝達装置5における中段歯車73を回転可能に支持するためのものである。また、初段孔は、回転伝達装置5における初段歯車74を回転可能に支持するためのものである。
基台3は、その長手方向の陰極側導通部61が突出する端近傍における他方の表面63で、支持ロッド17と一体化されている。支持ロッド17は、陰電極21および支持棒15に平行に伸びる角棒である。支持ロッド17は、後に説明するプレート6に、途中に設けられた揺動支点72において揺動可能に一体化される。支持ロッド17は、円筒袋状ワークWを保持するめっき処理用治具1を各種の処理液に浸漬させ、およびこれらの処理液からめっき処理用治具1を取り出す動作を行わせる。
【0031】
回転伝達装置5は、中段歯車73、初段歯車74,伝達軸75およびスプロケット76で構成される。
中段歯車73は歯車24に噛み合わされ、初段歯車74は中段歯車73に噛み合わされて、歯車24から順に、基台3の長手方向に並べられている。また、中段歯車73および初段歯車74は、その回転軸が歯車24の回転軸とともに1平面に含まれるように配されている。中段歯車73および初段歯車74は、歯数およびその歯先径が歯車24と略同一であり、初段歯車74が1回転するごとに歯車24が1回転する。
【0032】
伝達軸75は、丸棒であって基台3を貫通して初段歯車74に一体化され、初段歯車74の回転軸として機能する。伝達軸75は、基台3の他方の表面63に直交して外方に伸び、端にスプロケット76が固定されている。伝達軸75は、スプロケット76の近傍内方で、支持ロッド17に固定された伝達軸支持部77に支持されている。
図7は治具ユニット4の側面図、図8は図7におけるC−C矢視図である。なお、図8において、治具支持体2のスプロケット76は省略されている。
治具ユニット4は、治具支持体2、プレート6、揺動支持部18、配電部および制御部からなる。
【0033】
プレート6は、細長い矩形の板材で形成される。プレート6は、一方の端近くに、プレート6の長手方向に長い略矩形の貫通する孔78を備える。
揺動支持部18は、プレート6の一方の表面における孔78の開口部分を覆うように設けられている。揺動支持部18は、プレート6の孔78に連続する孔79を有し、孔79に治具支持体2の支持ロッド17を貫通させ、治具支持体2を揺動支点72廻りに揺動可能に支持する。
揺動支持部18を貫通した支持ロッド17の先端には、支持ロッド17に対して回転自在な車80が取り付けられている。車80は、めっき処理装置における誘導板の下面に設けられた凹凸路を転動し、この凹凸路に沿って上下することにより支持ロッド17を揺動支点72廻りに揺動させる。
【0034】
配電部は、プレート6の他方の端近くの揺動支持部18が配された側と同じ側に設けられる。配電部は、めっき処理装置の操作盤から、めっき処理用の電力および制御用電力を受け入れるための装置である。
制御部は、プレート6の長手方向略中央の、配電部が配された側と同じ側に設けられる。制御部は、内部にマイクロコンピュータ、記憶装置(RAM)を収容し、めっき処理用の電力を制御するためのものである。
次に、図1〜図3および図7を参照しながら、円筒袋状ワークWにめっき処理を行うときのめっき槽7内におけるめっき処理用治具1の動作について説明する。
【0035】
円筒袋状ワークWは、例えば炭素鋼製であり、めっきされる金属はニッケルである。
初めに、位置決め部16のアーム26が90度回動されて底部膜圧抑制材14の貫通孔51が全開される。貫通孔51を通して、円筒袋状ワークWが、その内方に陰電極21および補助陽電極12を収容させてめっき処理用治具1に取り付けられる。円筒袋状ワークWは、その内面が陰電極21の突出帯部34,34,34に接し、これらにより保持される。
係止ピン56の先端が円筒袋状ワークWの底外面に当接可能なように、アーム26が90度回動されて元の位置に戻される。この状態で、円筒袋状ワークWは、邪魔板55から突出する係止ピン56の先端により、めっき処理用治具1からの脱落が防止される。
【0036】
なお、開口端膜圧抑制材13は、予め円筒袋状ワークWの長さ(軸心方向の全長)に応じて位置が決められる。開口端膜圧抑制材13の位置は、円筒袋状ワークWの底外面が係止ピン56の先端に当接した状態で、凹部45の表面と円筒袋状ワークWの開口端縁との距離gが1.5mm以上2.5mm以下であるのが好ましい。
続いて、円筒袋状ワークWを保持するめっき処理用治具1は、めっき処理装置によって支持ロッド17が揺動され、めっき液81が収容されためっき槽7内に浸漬される。めっき槽7内におけるめっき処理用治具1は、保持する円筒袋状ワークWの閉じられた底よりも開口部分を上に位置させるように、傾斜される。
【0037】
めっき処理用治具1のこの傾斜の角度は、水平に対して5度以上とするのが好ましい。なお、めっき処理用治具1においては、陰電極21(の軸心)、支持棒15,…,15および支持ロッド17がいずれも平行であり、傾斜の角度はこれらのいずれを基準としてもよい。
めっき処理用治具1は、めっき処理装置により駆動されるスプロケット76の回転が、初段歯車74、中段歯車73および歯車24に伝えられ、陰電極21が回転する。陰電極21の回転は、突出帯部34,34,34によってこれと接する円筒袋状ワークWの内面に伝えられ、円筒袋状ワークWが回転する。めっき処理における円筒袋状ワークWの回転速度は、例えば略1rpmである。
【0038】
陰電極21は、回転中常に突出帯部34,34,34が円筒袋状ワークWの内面に接して円筒袋状ワークWを保持するため、円筒袋状ワークWと電気的に常に連通している。制御部からは、めっき処理用電力が陰電極21および補助陽電極12に供給され、円筒袋状ワークWは陰極となって、めっき液中のニッケルイオンがその表面に析出し、円筒袋状ワークWのめっき処理が行われる。
めっき処理では、制御部からの電力供給とは別に、めっき槽7内に備えられた陽極82にも電力が供給される。
【0039】
めっき処理において、めっき槽7内のめっき液81が外部循環される。めっき液81は、循環ポンプ83により昇圧され、めっき槽7内に設けられたノズル84から補助陽電極12の開口部分に向けて噴出される。ノズル84から噴出されためっき液81は、補助陽電極12内の流路43を通ってテーパ部42から円筒袋状ワークWの底内面に吐出される。
めっき処理用治具1は、以上のように動作させることにより、種々の効果を奏する。
すなわち、めっき処理用治具1は、めっき処理時に陰電極21が回転することにより、円筒袋状ワークWの内面における突出帯部34,34,34に接する部分が常に変化する。めっき処理用治具1は、この陰電極21の回転により、めっき処理した円筒袋状ワークWの表面に接点跡が残らないという特長を有する。めっき処理用治具1を使用しためっき処理では、人手で円筒袋状ワークWを回転させる必要がなく、めっき処理の作業性を向上させることができる。
【0040】
めっき処理用治具1は、陰電極21における3つの突出帯部34,34,34が、長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら本体33を1周するように形成されているので、一層円筒袋状ワークWの内面への接点跡の発生を防止することができる。
また、めっき処理用治具1は、傾斜させて使用されることにより、めっき処理時に円筒袋状ワークW内で発生する水素および酸素の気泡を系外に円滑に排出することができる。そのため、めっき処理用治具1は、発生した気泡が内面に付着滞留することによるめっきムラの発生を防止することができる。
【0041】
さらに、めっき処理用治具1は、ノズル84から噴出されためっき液81を、補助陽電極12の内部の流路43を通過させてテーパ部42から円筒袋状ワークW内の底近傍に流入させることができる。そのため、めっき処理用治具1は、円筒袋状ワークW内のめっき液が常に入れ替わり、円筒袋状ワークW内面のめっきを効率よく行うことができる。
一般に、円筒袋状ワークWは、円筒部分と底とにより形成される角(かど)近傍および開口部分のめっき厚さが大きくなり易い。
しかし、開口部分のめっき厚さが大きい場合、例えば、ニッケル水素電池のケースとして使用される円筒袋状ワークWでは、開口部分に急激な曲げ加工が加えられたときに、めっきの割れが生ずるおそれがある。
【0042】
めっき処理用治具1では、円筒袋状ワークWの開口部分近傍に配された開口端膜圧抑制材13によって、開口部分のめっき厚さが過大となることが防止される。この開口部分のめっき厚さが過大となることの防止効果は、より具体的には、円筒袋状ワークWの開口端縁に対向する凹部45の表面によりもたらされる。そのため、凹部45の円筒袋状ワークWの開口端縁に対向する表面を、開口端膜圧抑制面ということができる。
また、めっき処理用治具1では、円筒袋状ワークWの底近傍に配された底部膜圧抑制材14により、底外面の角(かど)近傍においてめっき厚さが過大となることが防止される。
【0043】
位置決め部16における邪魔板55も、底外面の角(かど)近傍のめっき液81の入れ替わりを抑制することにより、底外面の角(かど)近傍におけるめっき厚さの増加の防止に寄与する。
めっき処理用治具1は、開口端膜圧抑制材13および底部膜圧抑制材14のいずれかを、またはいずれをも有しないものとすることができ、そのようなめっき処理用治具であっても、円筒袋状ワークWの表面に接点跡が残らないめっき処理を行うことができる。また、位置決め部16をめっき処理用治具1に一体化せず、めっき槽7に付属する装置、例えば、ノズルからめっき液を円筒袋状ワークWの底外面に向けてジェット噴出させて、傾斜しためっき処理用治具からの円筒袋状ワークWの落下を防止してもよい。
【0044】
図8は他のめっき処理用治具1Bにおける図1のA−A矢視断面に相当する図、図9は図8におけるC−C矢視断面図である。図8において、開口端膜圧抑制材13Bは想像線で表される。
めっき処理用治具1Bは、2つの陰電極部11B,11B、補助陽電極12、開口端膜圧抑制材13B、底部膜圧抑制材14B、4本の支持棒15,15,15,15および位置決め部16からなる。
めっき処理用治具1Bにおいて上に説明しためっき処理用治具1と同一の構成を有する部分については、図8および図9においてめっき処理用治具1におけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。
【0045】
陰電極部11Bは、陰電極21B、歯車24Bおよび陰電極支持部23で形成される。
陰電極21Bは、ステンレス鋼で製作され、導通部31および導入部32Bからなる。導通部31は、めっき処理用治具1の陰電極21における導通部31と同一である。
導入部32Bは、主要部分が導通部31の本体33にそのまま同一外径で続く丸棒である。導入部32Bは、本体33に続く側と逆側の端に突出する雄ねじ35を有し、この端近傍から軸方向内方に向けた所定の長さが、径が大きい径大部36となっている。
2つの陰電極21B,21Bは、基台3の一方の表面62から垂直に、幅方向(図8における横方向)に所定の間隔を有して外方に伸びている。
【0046】
歯車24Bは、基台3の幅方向に互いに干渉しないように2つ並べて配置可能な大きさである。また、歯車24Bは、軸心を陰電極21Bの導通部31と共通する。歯車24Bは、導通部31がめっき処理時に円筒袋状ワークWの内側に収容されるので、その歯の先端を結んで形成される円は、保持対象である円筒袋状ワークWの内径よりも小さいことが求められる。歯車24Bは、陰電極21Bにおける導入部32Bの外周を覆うようにして陰電極21Bと一体化されている。
陰電極支持部23は、めっき処理用治具1におけるものと同じであり、陰電極21Bおよび歯車24Bを回転可能に基台3一体化するためのものである。
【0047】
陰電極部11Bは、めっき処理用治具1における陰電極部11と同様にして、基台3を貫通する陰電極用孔65に回転可能に取り付けられる。
補助陽電極12は、めっき処理用治具1におけるものと同一であり、基台3への取り付けも、めっき処理用治具1におけるものと同様にして行われている。
開口端膜圧抑制材13Bは、正面視(図8参照)において略矩形であり、断面が円形の凹状の凹部45を備える。開口端膜圧抑制材13Bは、この凹部45を含め、めっき処理用治具1の開口端膜圧抑制材13におけるものと同一の構成の薄肉部46、厚肉部47、貫通孔48および4つの支持棒貫通孔49を備えている。
【0048】
開口端膜圧抑制材13Bは、それぞれの支持棒貫通孔49を貫通する丸棒である支持棒15,…,15が基台3に固定されることにより、基台3と一体化されている。
底部膜圧抑制材14Bは、正面視において略矩形であり、その外形は、開口端膜圧抑制材13Bと略同じである。底部膜圧抑制材14Bが備える貫通孔51および4つの支持棒挿入孔52,52は、めっき処理用治具1の底部膜圧抑制材14におけるものと同一であり、底部膜圧抑制材14Bの支持棒15,…,15への固定も、めっき処理用治具1における固定と同様にして行われる。
【0049】
めっき処理用治具1Bは、基台3および回転伝達装置5Bと一体化されて治具支持体2Bを形成する。
基台3は、治具支持体2におけるものと同一である。
回転伝達装置5Bは、第1中段歯車73Ba、第2中段歯車73Bb、初段歯車74B,伝達軸75およびスプロケットで構成される。
第1中段歯車73Baは歯車24Bに噛み合わされ、第2中段歯車73Bbは第1中段歯車73Baに噛み合わされ、初段歯車74Bは第2中段歯車73Bbに噛み合わされて、歯車24Bから順に、基台3の長手方向に並べられている。また、第1中段歯車73Ba、第2中段歯車73Bbおよび初段歯車74Bは、その回転軸が歯車24Bの回転軸とともに1平面に含まれるように配されている。
【0050】
歯車24B,24Bの歯数および歯先を結ぶ外径は、それぞれ初段歯車74Bの歯数および歯先を結ぶ外径と同一であり、歯車24B,24Bは、初段歯車74Bが1回転するごとに1回転する。
伝達軸75およびスプロケットは、治具支持体2におけるものと同一である。
めっき処理用治具1Bは、めっき処理時には、円筒袋状ワークWをその内方に2つの陰電極21B,21Bおよび補助陽電極12を収容させて円筒袋状ワークWを保持する。円筒袋状ワークWは、その内面が陰電極21B,21Bのそれぞれの突出帯部34,34,34に接し、これらにより保持される。
【0051】
めっき処理用治具1Bは、めっき槽7内において、保持する円筒袋状ワークWの閉じられた底よりも開口部分を上に位置させるように傾斜される。そして、めっき処理用治具1Bは、回転伝達装置5Bにより、ゆっくりと回転される。
めっき処理用治具1Bは、以上のように動作させることにより、めっき処理用治具1が奏する効果と同じ効果を奏する。
図10は他の形態の陰電極21Cを示す図である。
陰電極21Cは、めっき処理用治具1,1Bの陰電極21,21Bにおける突出帯部34の代わりに、一群の突起86Ca,86Cb,86Cc,…,86Cnからなる接点部87Cを備えている。
【0052】
一群の突起86Ca,86Cb,86Cc,…,86Cnは、それぞれが円柱状であって、本体33からその表面に直交して突出する。一群の突起86Ca,…,86Cnは、それぞれの突出端面が、本体33の長手方向と直交する方向に対して傾斜しながら本体33を1周するように並べられている。また、一群の突起86Ca,…,86Cnは、本体33を軸方向から見たときに(図10(b)参照)、起点となる突起86Caと終点となる突起86Cnとが重なるように配されている。
突出帯部34の換わりにこのような接点部87Cを備えた陰電極21Cを有するめっき処理用治具においても、めっき処理用治具1,1Bと同様に、円筒袋状ワークWの表面に接点跡を残さないでめっき処理を行うことができる。
【0053】
陰電極21,21B,21Cは、1つの本体33に対して突出帯部34または接点部87Cが1箇所のみに設けられているものよりも、2箇所以上に設けられているものの方が円筒袋状ワークWを安定に回転させることができ、好ましい。また、円筒袋状ワークWの回転を安定させるために、陰電極21,21B,21Cの1つの本体33に対して突出帯部34または接点部87Cを1箇所設け、他に電気の不導体で形成され、例えば突出帯部34または接点部87Cと同一形状の回転安定手段を2箇所以上に設けてもよい。
突出帯部34または接点部87Cは、1つの本体33に対して2箇所以上に設けられる場合には、陰電極21,21B,21Cが回転するときに保持する円筒袋状ワークWの内面にいずれかの突出帯部34または接点部87Cが接していればよい。したがって、突出帯部34および接点部87Cは、本体33を一周しその帯状突起の一端(起点)および他端(終点)が連続し、または重なる部分ができるように形成されることを要しない。
【0054】
例えば、突出帯部34または接点部87Cが1つの本体33に対して2箇所設けられる場合には、陰電極21,21B,21Cは、1つの突出帯部34または接点部87Cが本体33を半周し、本体33を軸方向から見たときに、2つの突出帯部34,34または接点部87C,87Cが併されて、本体33を1周するように形成されていてもよい。
突出帯部34または接点部87Cが1つの本体33に対して3箇所以上設けられる場合にも同様に、陰電極21,21B,21Cは、本体33を軸方向から見たときに、全てのの突出帯部34,34または接点部87C,87Cが併されて、本体33を1周するように形成されていればよい。
【0055】
なお、上記における「本体33を1周するように形成されている」とは、1つもしくは複数の突出帯部34または1つもしくは複数の接点部87Cが、陰電極21,21B,21Cが回転するときに保持する円筒袋状ワークWの内面に全体として常に接するように形成されていることをいい、本体33を軸方向から見たときに、その帯状突起の一端(起点)および他端(終点)が連続するかまたは重なる部分ができるように形成されていること、および1つの本体33における異なる突出帯部34または接点部87Cの周方向の端同士が重なり合うことを要件とするものではない。
【0056】
また、突出帯部34および接点部87Cは、本体33に対して、長手方向と直交する方向に傾斜しながら1周するように形成されるのが好ましい。しかし、突出帯部34および接点部87Cを、(長手方向と直交する)周方向に、上記したような「1周」するように設けても、円筒袋状ワークWの内面における接触部分を散らすことができ、接点跡の発生を防止することができる。
上述の実施形態において、開口端膜圧抑制材13、底部膜圧抑制材14および邪魔板55は、めっき処理する円筒袋状ワークWの大きさ等により適切な形状、大きさ等に設計される。
【0057】
また、めっき処理用治具1,1Bは、上に記載した使用形態以外に、他の形態で使用することができる。
その他、めっき処理用治具1,1B、およびめっき処理用治具1,1Bの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、円筒袋状ワークのめっき処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1B めっき処理用治具
12 補助陽電極
13,13B 開口端膜圧抑制材
14,14B 底部膜圧抑制材
16 係止装置(位置決め部)
21,21B,21C 陰電極
34 接点部(突出帯部)
45 開口端膜圧抑制面(凹部の表面)
56 係止装置(係止ピン)
51 (底部膜圧抑制材の)貫通孔
87C 接点部
W 円筒袋状ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒袋状ワークのめっき処理時に前記円筒袋状ワークを保持するめっき処理用治具であって、
前記円筒袋状ワークの内方に差し入れられ前記円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極を有し、
前記陰電極は、
前記円筒袋状ワークの内面に当接することにより前記円筒袋状ワークを保持して前記円筒袋状ワークを回転可能に形成され、
かつ前記円筒袋状ワークを保持したときに前記円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部を有する
ことを特徴とする円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項2】
前記円筒袋状ワークの開口部分の外方に位置させるための開口端膜圧抑制材を有し、
前記開口端膜圧抑制材は、
前記開口部分に対向させるための面である開口端膜圧抑制面を備えて前記陰電極の回転軸方向の異なる位置に移動可能に形成されている
請求項1に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項3】
前記円筒袋状ワークの底外面の外方に位置させるための底部膜圧抑制材を有し、
底部膜圧抑制材は、
前記陰電極の回転軸方向に貫通する貫通孔を備えた
請求項1または請求項2に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項4】
前記円筒袋状ワークの内側に挿入するために前記陰電極の回転軸方向に伸びた補助陽電極と、
前記円筒袋状ワークの底外面に当接し前記円筒袋状ワークが前記陰電極の回転軸方向に移動するのを防止するための係止装置を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項1】
円筒袋状ワークのめっき処理時に前記円筒袋状ワークを保持するめっき処理用治具であって、
前記円筒袋状ワークの内方に差し入れられ前記円筒袋状ワークの軸心方向を回転軸として回転可能な陰電極を有し、
前記陰電極は、
前記円筒袋状ワークの内面に当接することにより前記円筒袋状ワークを保持して前記円筒袋状ワークを回転可能に形成され、
かつ前記円筒袋状ワークを保持したときに前記円筒袋状ワークを常に陰極とするための接点部を有する
ことを特徴とする円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項2】
前記円筒袋状ワークの開口部分の外方に位置させるための開口端膜圧抑制材を有し、
前記開口端膜圧抑制材は、
前記開口部分に対向させるための面である開口端膜圧抑制面を備えて前記陰電極の回転軸方向の異なる位置に移動可能に形成されている
請求項1に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項3】
前記円筒袋状ワークの底外面の外方に位置させるための底部膜圧抑制材を有し、
底部膜圧抑制材は、
前記陰電極の回転軸方向に貫通する貫通孔を備えた
請求項1または請求項2に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【請求項4】
前記円筒袋状ワークの内側に挿入するために前記陰電極の回転軸方向に伸びた補助陽電極と、
前記円筒袋状ワークの底外面に当接し前記円筒袋状ワークが前記陰電極の回転軸方向に移動するのを防止するための係止装置を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の円筒袋状ワークのめっき処理用治具。
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【図6】
【図7】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−270381(P2010−270381A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125385(P2009−125385)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(592204886)冨士発條株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(592204886)冨士発條株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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