円筒軸の製造方法及び印刷装置
【課題】高い精度を有する円筒軸の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒軸16の製造方法は、矩形金属板を円筒状に曲げて円筒軸16を形成する円筒曲げ工程と、円筒曲げ工程と同時又は後れて、継ぎ目80の一部に締結部85を一つ以上形成する工程と、締結部85までの距離が長い一端16s側から距離が短い他端16f側に向けて円筒軸16の表面16aを研磨する研磨処理工程と、を有する。
【解決手段】円筒軸16の製造方法は、矩形金属板を円筒状に曲げて円筒軸16を形成する円筒曲げ工程と、円筒曲げ工程と同時又は後れて、継ぎ目80の一部に締結部85を一つ以上形成する工程と、締結部85までの距離が長い一端16s側から距離が短い他端16f側に向けて円筒軸16の表面16aを研磨する研磨処理工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒軸の製造方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を印刷する印刷装置が用いられる。この印刷装置には、記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられる。搬送ユニットは、印刷装置の印字精度に影響するため、高い搬送精度を有する構成が求められる。搬送ユニットは、回転することで記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用される。
【0003】
中実の棒状部材を用いた搬送ローラーは、重量およびコストが嵩む。そこで、金属板を曲げ加工して円筒状に成形した円筒軸が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の円筒軸では、金属板の端面同士を突き合わせた繋ぎ目(継ぎ目)が軸方向に沿って形成される。この繋ぎ目が開くことを防止するために、繋ぎ目の一部には、締結部(嵌合やスポット溶接等による接合部位)が設けられる。
しかし、締結部は要求仕様に応じて円筒軸の軸方向の任意の位置に配置されるため、締結部が軸方向に対して均等に配置されないことが多い。このため、円筒軸の製造過程において、円筒軸の精度(真円度、振れ等の幾何公差)を悪化させてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、高い精度を有する円筒軸の製造方法を提供することを目的とする。また、このような円筒軸を用いた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒軸の製造方法は、矩形金属板の長手側端面同士を近接又は当接するように円筒状に曲げて円筒軸を形成する円筒曲げ工程と、前記円筒曲げ工程と同時又は後れて、前記長手側端面同士の継ぎ目の一部に前記長手側端面同士を締結する締結部を一つ以上形成する工程と、前記円筒軸の2つの端部のうち前記締結部までの距離が長い一端側から前記締結部までの距離が短い他端側に向けて、前記円筒軸の表面を研磨する研磨処理工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記締結部は、前記長手側端面の一方に形成された凹部に対して、他方に形成され凸部を圧入して形成され、前記研磨処理工程において、前記凸部の突出方向と一致する回転方向に、研磨処理を行うことを特徴とする。
【0009】
前記円筒軸に高摩擦層を形成する工程と、を含み、前記締結部は、前記高摩擦層の端部と前記他端側の中間よりも前記他端側に設けられることを特徴とする。
【0010】
前記他端側に動力伝達部材を取付ける取付工程を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る印刷装置は、搬送媒体に記録を行う記録部と、前記搬送媒体を搬送する搬送部と、を備え、前記搬送部は、上記円筒軸の製造方法のうちいずれかにより製造された搬送ローラーを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
【図2】(a)は搬送ユニット部分の平面図、(b)は駆動系の側面図である。
【図3】(a)は搬送ローラー機構の概略構成図、(b)は軸受の概略構成図である。
【図4】搬送ローラーの構成を示す側面図である。
【図5】ローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図6】プレス抜き工程の一部を示す図である
【図7】(a)〜(c)は本実施形態に係る曲げ工程を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は図7に続く曲げ工程を示す図である。
【図9】平板部が段階的に円筒状に形成された金属板を示す平面図である。
【図10】(a)ローラー本体の斜視図、(b)は繋ぎ目の側断面図である。
【図11】応力調整工程を示す図である。
【図12】センターレス研磨工程を示す図である。
【図13】ローラー本体を第二端部側からセンターレス研磨した場合の精度測定結果を示す図である。
【図14】ローラー本体を第一端部側からセンターレス研磨した場合の精度測定結果を示す図である。
【図15】高摩擦層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェットプリンター(印刷装置)1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に設けられた排紙部7と、を備えている。
【0016】
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(媒体、記録媒体、搬送媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。以下、用紙Pの搬送経路において、給紙トレイ11側を上流側、排紙部7側を下流側という。給紙トレイ11の下流側には、給紙ローラー13が設けられている。
【0017】
給紙ローラー13は、対向する分離パッド(不図示)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、下流側へ送り出すように構成されている。給紙ローラー13の下流側には、搬送ローラー機構19が設けられている。
【0018】
搬送ローラー機構19は、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17とを備えている。
【0019】
搬送ローラー15は、従動ローラー17との間に用紙Pを挟圧し、図2に示す駆動部30により回転駆動するように設けられている。これにより、搬送ローラー15は、用紙Pを下流側に配置された印字ヘッド(印刷部)21へ、搬送印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作により搬送することができるようになっている。
【0020】
印字ヘッド21はキャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されている。
【0021】
プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。
【0022】
ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に用紙Pを下側から支持するものであり、頂面が支持面として機能するようになっている。ダイヤモンドリブ25と印字ヘッド21との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっている。
これにより、用紙Pはダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過することが可能となっている。ダイヤモンドリブ25及び印字ヘッド21の下流側には、排紙ローラー機構29が設けられている。
【0023】
排紙ローラー機構29は、下側に配置された排紙ローラー27と上側に配置された排紙ギザローラー28とを備え、排紙ローラー27の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬送ローラー15、排紙ローラー27の駆動速度の関係について説明する。
【0024】
プリンター本体3には、図2(a),(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬送ローラー15が内挿されて連結されている。
このような構成のもとに、搬送モーター32等は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
【0025】
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように排紙ローラー27の軸体45となっている。
【0026】
このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構29の排紙ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
【0027】
なお、排紙ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
【0028】
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
【0029】
次に、搬送ローラー15及びこれを備える搬送ローラー機構19について説明する。
図3(a)は搬送ローラー機構19の概略構成を示す図、図3(b)は軸受の概略構成を示す図である。
図4は、搬送ローラー15の構成を示す側面図である。
【0030】
搬送ローラー15は、金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体(円筒軸)16と、ローラー本体16の表面の長手方向(軸方向)の一部に形成された高摩擦層50とを有している。
【0031】
ローラー本体16は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている。ローラー本体16は、コイルを巻き戻した金属板をプレス加工(抜き加工、曲げ加工)して形成される。
ローラー本体16は、図10に示すように、曲げ加工されて突き合わ(近接又は当接)された金属板の一対の端面61a,61b間に形成された繋ぎ目(継ぎ目)80を有している。
【0032】
高摩擦層(媒体支持領域)50は、図3(a)に示すように、ローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。高摩擦層50の表面には、無機粒子の鋭く尖った部分が露出した状態で固定され、高い摩擦力を発揮するようになっている。
【0033】
高摩擦層50は、ローラー本体16の表面の高摩擦層の形成領域に樹脂粒子を10μm〜30μm程度の均一な膜厚で選択的に塗布して樹脂膜を形成し、その樹脂膜の上に無機粒子を均一に散布した後、焼成することにより形成されている。
樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。また、無機粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整された酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。
【0034】
搬送ローラー15は、図3(a)に示すように、その両端部がプラテン24(図1参照)に一体成形された軸受26に回転可能に保持されている。
図3(b)に示すように、軸受26は、上方に開口するU字形に形成され、このU字形部位に搬送ローラー15を嵌め込むことで、搬送ローラー15を前後側及び下側の3方向から軸支する。そして、軸受26と搬送ローラー15との接触面(搬送ローラー15の表面)には、グリス等の潤滑油(潤滑液)が供給(塗布)される。
【0035】
搬送ローラー15の一端である第一端部16fには、インナーギア39や搬送駆動ギア35が回転不能に取付けられる。インナーギア39や搬送駆動ギア35の中心部に設けた貫通孔に対して、搬送ローラー15の第一端部16fを圧入することで、回転不能に取付けられる。
搬送ローラー15の他端である第二端部16sには、搬送伝達ギア46が回転不能に取付けられる。搬送ローラー15の第二端部16sには、いわゆるDカットと呼ばれる係合部(不図示)が形成される。この係合部に対して搬送伝達ギア46を係合することにより、回転不能に取付けられる。
【0036】
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向しかつ当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(不図示)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。
【0037】
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0038】
なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、フッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
以上の搬送ローラー15、軸受26、駆動部30及び従動ローラー17等により、インクジェットプリンター1の搬送部(搬送装置)20が構成されている。
【0039】
図4に示すように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目80には、締結部85が設けられる。締結部85は、繋ぎ目80が開くことを防止するものである。
締結部85は、高摩擦層高摩擦層50の端部と第一端部16fの中間よりも第一端部16f側に設けられる。つまり、締結部85は、高摩擦層高摩擦層50の端部と搬送駆動ギア(動力伝達部材)35等の中間よりも搬送駆動ギア35等側に設けられる。
【0040】
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
インクジェットプリンター1は、給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを給紙ローラー13によって挟圧して下流側へ送り出す。送り出された用紙Pは搬送ローラー機構19に至る。搬送ローラー機構19は、用紙Pを搬送ローラー15と従動ローラー17との間で挟圧し、搬送ローラー15の回転駆動による紙送り動作で印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送する。印字ヘッド21の下方に搬送された用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、印字ヘッド21によって高品質に印刷される。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7の排紙ローラー27によって順次排出される。
【0041】
排紙ローラー機構29の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているときには、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。したがって、このように排紙ローラー機構29と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。そのため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
【0042】
そして、ローラー本体16として中空の円筒軸を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して重量を大幅に減少させることができる。また、ローラー本体16に中実軸を用いる場合と比較して材料の切削性に対する要求が低くなる。したがって、ローラー本体16の材料として鉛等の有害物質を含まない材料を用いることが可能になり、環境負荷を低減することができる。
【0043】
また、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されている。そのため、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0044】
また、本実施形態の搬送部20は、搬送ローラー15とこれを支持する軸受26とを備えている。そのため、上述のように高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を軸受26により支持して回転させ、高摩擦層50により用紙Pを支持して高精度に搬送することができる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して搬送部20の重量を大幅に減少させ、環境負荷を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態のインクジェットプリンター1は、搬送部20によって用紙Pを高精度に搬送することができ、用紙Pに高い印刷精度で印刷処理を行うことできる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して装置全体の重量を大幅に減少させることができ、環境負荷を低減することができる。
【0046】
次に、搬送ローラー15(ローラー本体16)の詳細構造及び製造方法について、図5〜図14を用いて説明する。
【0047】
図5は、ローラー本体の基材としての金属板Mを示す平面図である。
搬送ローラー15を製造するには、図5に示すように、厚さ1mm程度の冷間圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板Mをプレス加工(抜き加工)して、搬送方向に連続する搬送用枠部66と、搬送方向と交差する方向に延びる帯状の平板部60と、平板部60と搬送用枠部66を連結する連結部位67と、を形成する。
平板部60は略長方形であり、短辺60aが搬送方向に平行で、長辺60bが搬送方向と直交するように型抜きされる。
【0048】
連結部位67は、後述する円筒軸形成工程において、平板部60を円筒状に曲げ加工する際に、曲げの基準位置として利用される。すなわち、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように曲げ加工される。
【0049】
平板部60の一方の長辺60b1には、長辺60b1に対して直交する方向に突出する矩形状の凸部86が型抜きされる。また、他方の長辺60b2には、長辺60b2に対して直交する方向に陥没する矩形状の凹部87が型抜きされる。
凸部86,凹部87の長辺60b1,60b2における位置(短辺60aからの距離)は、同一である。長辺60b1,60b2に平行な方向における凸部86,凹部87の幅は、凸部86の方が微少に長くなるように形成される。
凸部86及び凹部87は、高摩擦層50が形成される領域とは異なる領域に形成される。
【0050】
図6は、プレス抜き工程の一部を示す図である。
金属板Mをプレス加工(抜き加工)して、平板部60を形成する際に、平板部60の長辺60b(側部62a,62b)の抜き加工を斜めに抜き加工にする。
具体的には、図6(a)〜(c)に示すように、金属板Mは、雄型121と雌型122を用いたプレスにより抜き加工される。そして、雌型122の上面端部(金属板Mの搬送方向)は円弧状に丸められている。このため、図6(b)に示すように、雄型121と雌型122により金属板Mをプレス抜きする際に、平板部60の両側部62a,62bとなる部位は、雌型122の上面端部の形状に倣って湾曲した状態で切断(せん断加工)される。なお、プレス抜き加工の直後には、平板部60の両側部62a,62bは、その弾性力により平坦な状態に戻る。
これにより、図6(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの端面61a,61bは、平板部60の主面C1,C2に対して傾斜するように形成される。すなわち、端面61a,61bは、平板部60の主面C1(後述の外周面16a)に対して鋭角、主面C2(後述の内周面16b)に対して鈍角となるように、傾斜して形成される。
【0051】
そして、金属板Mを不図示の搬送部によって間欠的に搬送しながら繰り返しプレスを行うことで、平板部60と連結部位67は、金属板Mの搬送方向に等間隔に複数形成される。
【0052】
次いで、平板部60を、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)に示すように、円筒状(パイプ状)にプレス加工(曲げ加工)し、その両側(長辺60b)の端面61a、61bを近接又は当接させる(円筒軸形成工程)。
【0053】
具体的には、まず、図7(a)に示す雌型(曲げダイ)141と雄型(曲げパンチ)142とで金属板Mの平板部60をプレスし、平板部60の両側部62a,62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、平板部60と雌型141と雄型142との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、平板部60と雌型141、雄型142とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、図7(c)、図8(a)〜図8(c)においても同様である。
【0054】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(b)に示す第2の雌型(曲げダイ)143と第2の雄型(曲げパンチ)144とで、平板部60の短辺方向(曲げ方向)における中央部をプレスする。そして、平板部60を円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
【0055】
このように、平板部60の中央部をプレスして曲げ加工する際に、連結部位67が曲げの基準位置として利用される。すなわち、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように、平板部60を第2の雌型143及び第2の雄型144に対して位置決めする。
これにより、第2の雌型143及び第2の雄型144の円弧状のプレス面の中央位置(図7(b)の矢印の位置)に、連結部位67が配置される。
なお、後述する上型145及び下型146に対しても、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように位置決めされる。
【0056】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(c)に示すように、平板部60の内側に芯型147を配置する。そして、図7(c)に示す上型145と下型146とを用いて、図8(a)〜図8(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの両端面61a,61bを近接させる。
【0057】
また、図8(a)〜図8(c)に示すように下型146は左右一対の割型であり、これら割型146a,146bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0058】
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように左側の割型146aを上型145に近接させ、平板部60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
なお、上型145も下型146と同様左右一対の割型とし(割面145b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の上型を割型146aに近接させてもよい。
【0059】
次いで、図8(b)に示すように、芯型147を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)上型145側へ移動させるとともに、他方の側の割型146bを上型145に近接させ、平板部60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0060】
その後、図8(c)に示すように、芯型147および一対の割型146a,146bを共に上型145に近接させ、円筒状のローラー本体(中空パイプ)16を形成する。この状態で、左右両側の端面61a,61bは互いに対向して突き合わされた状態となる。すなわち、この円筒状のローラー本体16にあっては、基材である金属板Mの平板部60の両側の端面61a,61bが互いに近接して、これらの端面61a,61b間に繋ぎ目80が形成されている。
【0061】
上述したように、平板部60の中央部をプレスして曲げ加工する際に、連結部位67が曲げの基準位置として利用される。このため、平板部60は、短辺60a側から見ると、連結部位67を基準にして左右均等(左右対称)に曲げ加工される。したがって、ローラー本体16は、長手方向の端面側から見ると、左右均等(左右対称)に曲げ加工されて、応力バランスが取れた円筒軸となる。
【0062】
図9は、円筒曲げ工程を経て平板部60が段階的に円筒状に形成された金属板Mを示す平面図である。
上述したように、型抜きされた金属板Mは、第2プレス機140に到達し、一方向に間欠的に送られながら、平板部60がプレスにより順次曲げ加工される(順送プレス)。そのため、図9に示すように、第2プレス機140に到達した平板部60は、金属板Mの搬送方向の下流側ほど円筒に近くなっていく。
【0063】
図10(a)は、ローラー本体16の斜視図、(b)は繋ぎ目80の側断面図である。
金属板Mは、一方向に間欠的に送られながら、順送プレス加工により、順次、抜き加工、円筒曲げ加工が施される。これにより、図10(a),(b)に示すように、中空円筒状のローラー本体16が完成する。
金属板Mの平板部60の端面61a,61b同士が当接することにより形成される繋ぎ目80は、ローラー本体16の軸方向に平行となる。
【0064】
繋ぎ目80の一部には、締結部85が形成される。締結部85は、端面61a,61b(長辺60b1,60b2)に形成された凸部86と凹部87が結合したものである。つまり、凹部87に対して凸部86が嵌まり込んだものである。凹部87と凸部86の嵌合状態は締まり嵌めであるから、端面61a,61b同士は締結部85により強固に締結される。
なお、繋ぎ目80を形成する端面61a,61b同士は、当接する場合に限らず、近接場合であってもよい。
【0065】
次に、ローラー本体16に残留する応力を調整する工程(応力調整工程)を行う。
この応力調整工程では、ローラー本体16の外周面16aのうち少なくとも高摩擦層50が形成される領域に押圧力を加える。
応力調整工程としては、ロールレベラーを用いて、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面に対して押圧力を加える。
【0066】
ロールレベラー工程では、図11に示すように、2つの押圧ローラーR1及びR2を用いる。
押圧ローラーR1は、外周面が凸状(紡錘形)に形成されている。軸方向の両端が小径で中央が大径となるように径が漸次変化した円柱に形成されている。
一方、押圧ローラーR2は、外周面が凹状(鼓形)に形成されている。軸方向の両端が大径で中央が小径となるように径が漸次変化した円柱に形成されている。
【0067】
2つの押圧ローラーR1,R2は、その回転軸が平行となるように配置される。そして、この押圧ローラーR1,R2の間に、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2に対して平行に配置する。つまり、押圧ローラーR1,R2により、ローラー本体16を挟持する。
そして、押圧ローラーR1,R2の軸間距離を調整することで、挟持したローラー本体16に対して所望の押圧力を与えることができる。また、ローラー本体16を挟持した状態で、2つの押圧ローラーR1,R2を異なる方向に回転させる。
このように、押圧ローラーR1,R2を異なる方向に回転させることで、押圧ローラーR1,R2の間に挟持されたローラー本体16は、回転しつつ押圧力を受ける。
【0068】
また、図11に示すように、ローラー本体16の外周面のうち、押圧ローラーR1に接している面側には、圧縮力が作用する。一方、ローラー本体16の外周面のうち、押圧ローラーR2に接している面側には、引張力が作用する。そして、ローラー本体16が回転することにより、ローラー本体16の外周面には、全体としては押圧力を受けながら、微少に引張力と圧縮力が繰り返し作用することになる。
【0069】
そして、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2で押圧しつつ、ローラー本体16を中心軸の方向に相対的に移動させる。
つまり、押圧ローラーR1,R2を固定しておき、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2の間を回転しながら通過させる。これにより、ローラー本体16には、第二端部16sから第一端部16fへと順に押圧力が加えられることになる。この押圧力により、ローラー本体16に残留する応力が調整されることになる。
【0070】
ロールレベラー工程では、ローラー本体16に対して、塑性変形が発生するように圧縮力が与えられる。ローラー本体16の形成材料(金属板M)として、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた場合には、約0.25〜約0.5%(約0.0025〜約0.005)程度の(圧縮)ひずみが発生するように、ロールレベラー加工(押圧ローラーR1,R2の軸間距離)が調整される。
冷間圧延鋼板(SPCC)は、約0.1%のひずみが発生すると、塑性変形域に達する(塑性変形が発生する)と言われている。つまり、ロールレベラー工程では、ローラー本体16に対して、塑性変形が発生し始める外力(ひずみ)の約2倍から約5倍程度の外力(ひずみ)を与える。
これにより、ローラー本体16は塑性変形(圧縮変形)して、内部応力が均一化されるとともに経時変化も確実に抑制することができる。
【0071】
次いで、本実施形態では、ローラー本体16の真円度を高め、振れを少なくするべく、センターレス研磨加工を行う。
この研磨工程では、図12に示すように、円柱状(又は円筒状)に形成された砥石部材GDを用いてローラー本体16の外周面16aを研磨する。研磨工程では、ローラー本体16の外周面16aから所定の深さ(20μm〜100μm程度の厚さ。以下、「研磨深さ」と表記)の部分が研磨されることになる。
【0072】
ローラー本体16の外径よりも小さい間隔を空けて配置された2つの砥石部材GDの間に当該ローラー本体16を配置させ、ローラー本体16が2つの砥石部材GDの外周部分に接した状態とする。その後、2つの砥石部材GDを同じ方向に回転させる。この2つの砥石部材GDの回転により、各砥石部材GDとローラー本体16との間に摩擦力が発生する。
【0073】
2つの砥石部材GDとしては、ローラー本体16の長手方向の全体を一度に研磨できるように、長手方向(円柱の高さ方向)の寸法がローラー本体16よりも大きくなるように形成されたものを用いることが好ましい。また、砥石部材GDの回転時には、ローラー本体16の長手方向におけるマージンを確保するため、長手方向の全体が2つの砥石部材GDに接触するように、砥石部材GDの長手方向の中央部にローラー本体16を配置することが好ましい。
【0074】
砥石部材GDの回転によって発生した摩擦力により、ローラー本体16が当該砥石部材GDの回転方向とは反対方向に回転しつつ、当該ローラー本体16の外周面16aが研磨されることになる。このため、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面が満遍なく研磨され、研磨工程前に比べてローラー本体16の真円度がより良好になる。
【0075】
研磨工程を行うことにより、真円度が高く、かつ、振れ量の小さいローラー本体16が得られる。このローラー本体16にあっては、両端面61a、61b間がより狭まることで、これら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
【0076】
図12に示すように、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDに対して、第二端部16s側から投入される。ローラー本体16は、第二端部16s側が最初に研磨され、第一端部16f側が遅れて研磨される。
ローラー本体16の第二端部16s側には、繋ぎ目80の締結部85が存在しない。つまり、第二端部16sから締結部85までの距離は、第一端部16fから締結部85までの距離に比べて長い。すなわち、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDに対して、繋ぎ目80に締結部85が存在しない端部側から投入され、繋ぎ目80に締結部85が存在する端部側が遅れて投入される。
言い換えれば、ローラー本体16は、締結部85による繋ぎ目80の締結(接合)の効果がより及んでいない端部側から砥石部材GDに向けて投入され、締結部85による繋ぎ目80の締結の効果がより及んでいる端部側が後れて砥石部材GDに投入される。
【0077】
なお、繋ぎ目80に複数の締結部85を設けた場合には、第一端部16f,第二端部16sから同一の締結部85までの距離を比較するのではなく、第一端部16f,第二端部16sのそれぞれから最も近くに配置された締結部85までの距離を比較する。そして、その距離が長い方の端部側から、ローラー本体16を2つの砥石部材GDに向けて投入する。
【0078】
また、図12に示すように、2つの砥石部材GDの回転方向は、ローラー本体16が、締結部85を形成する凸部86が突出する方向に向けて回転するように設定される。
言い換えれば、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDにより、凸部86の先端側から研磨され始め、凸部86の根元側が遅れて研磨されるように設定される。
凸部86の先端側は、ローラー本体16の外周面16aよりも半径方向外側に突出しやすいので、この凸部86の先端側を確実に研磨するためである。
【0079】
このように、ローラー本体16を第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入することにより、ローラー本体16の第二端部16s側と第一端部16f側の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が高い水準で均一化される。
一方、ローラー本体16を第一端部16f側から2つの砥石部材GDに対して投入した場合には、第二端部16s側から砥石部材GDに投入した場合に比べて、精度が悪化しやすい。
【0080】
図13は、ローラー本体16を第二端部16s側から研磨加工(センターレス研磨)した場合の精度測定結果を示す図である。図14は、ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した場合の精度測定結果を示す図である。図13,図14において、(a)は真円度、(b)は振れ、(c)は表面粗さ、(d)は繋ぎ目80の段差を示すグラフである。
【0081】
ローラー本体16の長手方向の3箇所における真円度を測定した。3箇所の測定位置は、図4に示すa位置、b位置、c位置の3箇所である。ローラー本体16の第二端部16f側に締結部85を一つ設けた。
ローラー本体16を第二端部16s側から研磨加工した測定サンプル数は15個である。ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した測定サンプル数は3個である。
なお、ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した測定サンプル数が少ないのは、第一端部16f側から研磨加工するとローラー本体16の形状が安定しないために、測定困難となったサンプルが頻発したためである。
【0082】
図13(a)に示すように、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所の真円度は、約1.5μm以下となった。A位置からC位置の3箇所の真円度の平均値は、約1.0μm以下となった。
一方、図14(a)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所の真円度は、サンプル毎のばらつきが大きくなった。A位置からC位置の3箇所の真円度が約1.5μm以下となるサンプルもあれば、真円度が全て約3.0μm程度となるサンプルもあった。
【0083】
図13(b)に示すように、ローラー本体16の長手方向中央における振れ(最大振れ)は、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、約10μm以下となった。センターレス研磨加工の前後の振れを比較すると、センターレス研磨加工を施すことにより、ローラー本体16の振れに30〜70%の改善が見られた。
一方、図14(b)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、約10μm以下となったサンプルもあったが、約10μm以上となるサンプルもあった。センターレス研磨加工の前後の振れを比較すると、センターレス研磨加工を施すことにより、ローラー本体16の振れに50%程度の改善が見られるものもあったが、全く改善が見られないものもあった。
【0084】
図13(c)に示すように、ローラー本体16の長手方向の3箇所における表面粗さ(Rz)は、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約3.0μm以下となった。
一方、図14(c)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合も、A位置からC位置の3箇所で約3.0μm以下となった。
【0085】
図13(d)に示すように、ローラー本体16の繋ぎ目80における段差(径方向のずれ)の大きさは、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約2μm以下となった。
一方、図14(d)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約3μm以上となった。
【0086】
このように、ローラー本体16を第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入することにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が、高い水準で均一化することができる。つまり、ローラー本体16は、繋ぎ目80までの距離が長い方の端部(第二端部16s)側から砥石部材GDに投入することにより、高い精度が得られる。
【0087】
砥石部材GDに対するローラー本体16の投入方向により、ローラー本体16の精度に差が生じるのは、以下の理由によるものと推測される。
ローラー本体16を2つの砥石部材GDの間に投入して研磨すると、ローラー本体16に負荷が発生する。そして、センターレス研磨では、ローラー本体16の一端側から他端側に向けて徐々に研磨するので、ローラー本体16に発生した負荷が、後から投入される端部側に向けて徐々に蓄積される。このため、後から投入される端部側の精度が悪化しやすくなる。つまり、後から投入される端部側の繋ぎ目80が開きやすくなる。
このため、後から投入される端部側に締結部85を配置することにより、ローラー本体16の精度の悪化を防止することが可能となる。そこで、締結部85までの距離が短い第一端部16f側を後から研磨加工することになる。言い換えれば、ローラー本体16を、締結部85までの距離が長い第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入する。これにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が、高い水準で均一化することが可能となる。
【0088】
センターレス研磨加工が完了した後は、ローラー本体16に表面処理を施す。
まず、ローラー本体16の形成材料(金属板M)として、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた場合には、メッキ処理工程を行う。ローラー本体16に表面にメッキ層を形成することで、防錆性を高めている。
【0089】
次に、ローラー本体16の表面に、図3(a)に示すような高摩擦層50を形成する。
高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0090】
無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子を用いるものとする。
【0091】
アルミナ粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
なお、アルミナ粒子の粒径は、適宜、選択調整することができる。
【0092】
このような樹脂粒子と無機粒子とを用意したら、まず、ローラー本体16に前述の樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(不図示)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で−(マイナス)電位にしておく。
【0093】
そして、樹脂粒子を、静電塗装装置(不図示)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
【0094】
樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3(a)に示した高摩擦層50の形成領域に対応させる。すなわち、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、その両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図15(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。つまり、このローラー本体16からなる搬送ローラー15の、少なくとも搬送する用紙(媒体)Pに接触する領域となる中央部に対応する領域にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。
なお、図15(a)及び後述する図15(b),(c)では、繋ぎ目80については図示を省略している。
【0095】
樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。この樹脂膜51の膜厚については、前述のアルミナ粒子の粉径を勘案して、10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
【0096】
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を前述の塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット等によって別の塗装ブース(不図示)に移す。
そして、ローラー本体16を中心軸回りに回転させる。ローラー本体16をその軸廻りに、100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。
【0097】
そして、塗装ブースの上部に配置したコロナガンから前述のアルミナ粒子95を噴霧し吹き付けることにより、ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子95を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子を樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
【0098】
すると、前述したように、ローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子95が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子95は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
【0099】
特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子95が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図15(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子95は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子95はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子95は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
【0100】
したがって、アルミナ粒子95は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。ここで、アルミナ粒子95が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子95の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
【0101】
なお、このアルミナ粒子95の塗布(散布)については、アルミナ粒子95が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、スプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
【0102】
このようにしてアルミナ粒子95を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂膜51を焼成し硬化させる。これにより、アルミナ粒子95をローラー本体16に固着する。こうして、図15(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、搬送ローラー15が得られる。
【0103】
なお、本実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよい。
【0104】
以上のように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の製造方法において、研磨処理工程(センターレス研磨)では、ローラー本体16を第二端部16s側から研磨する。これにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)を高い水準で均一化することができる。
【0105】
また、応力調整工程において、ローラー本体16の外周面16aの全面に対して押圧力を加えることとしたので、ローラー本体16の全面における残留応力が均一に調整されることになる。これにより、搬送ローラー15全体の形状を安定化させることができる。
【0106】
そして、このようなローラー本体16を、インクジェットプリンター1(搬送ローラー機構19)の搬送ローラー15に用いた場合には、印刷用の用紙Pを高精度に搬送することが可能となり、高精度な印刷を行うことができる。
【0107】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0108】
上記実施形態においては、ローラー本体16は、圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている構成としたが、これに限られることは無い。
平板状の金属板を母材とし、当該平板金属板から上記平板部60とほぼ同形同寸法の金属板を形成して、当該金属板を加工することでローラー本体16を形成しても構わない。
したがって、上記説明あるいは以下の記載において、平板部60を当該金属板に置き換えた場合であっても適用可能である。
【0109】
また、ローラー本体16の繋ぎ目80の形状としては、軸方向に平行な直線形の場合について説明したが、様々な形状を採用することができる。
【0110】
また、繋ぎ目80を締結する手段として、凸部86と凹部87からなる締結部85を用いる場合について説明したが、これに限らない。繋ぎ目80(端面61a,61b)をスポット溶接する場合であってもよい。この場合には、円筒曲げ工程と研磨処理工程の間に、スポット溶接工程を行う。
【符号の説明】
【0111】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、 15…搬送ローラー、 16…ローラー本体(円筒軸)、 16f…第一端部(他端)、 16s…第二端部(一端)、 20…搬送部、 21…印字ヘッド(記録部)、 35…搬送駆動ギア(動力伝達部材)、 60…平板部(矩形金属板)、 61a…端面(長手側端面)、 61b…端面(長手側端面)、 80…繋ぎ目(継ぎ目)、 85…締結部、 86…凸部、 87…凹部、 P…用紙(記録媒体)、 GD…砥石部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒軸の製造方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を印刷する印刷装置が用いられる。この印刷装置には、記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられる。搬送ユニットは、印刷装置の印字精度に影響するため、高い搬送精度を有する構成が求められる。搬送ユニットは、回転することで記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用される。
【0003】
中実の棒状部材を用いた搬送ローラーは、重量およびコストが嵩む。そこで、金属板を曲げ加工して円筒状に成形した円筒軸が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の円筒軸では、金属板の端面同士を突き合わせた繋ぎ目(継ぎ目)が軸方向に沿って形成される。この繋ぎ目が開くことを防止するために、繋ぎ目の一部には、締結部(嵌合やスポット溶接等による接合部位)が設けられる。
しかし、締結部は要求仕様に応じて円筒軸の軸方向の任意の位置に配置されるため、締結部が軸方向に対して均等に配置されないことが多い。このため、円筒軸の製造過程において、円筒軸の精度(真円度、振れ等の幾何公差)を悪化させてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、高い精度を有する円筒軸の製造方法を提供することを目的とする。また、このような円筒軸を用いた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒軸の製造方法は、矩形金属板の長手側端面同士を近接又は当接するように円筒状に曲げて円筒軸を形成する円筒曲げ工程と、前記円筒曲げ工程と同時又は後れて、前記長手側端面同士の継ぎ目の一部に前記長手側端面同士を締結する締結部を一つ以上形成する工程と、前記円筒軸の2つの端部のうち前記締結部までの距離が長い一端側から前記締結部までの距離が短い他端側に向けて、前記円筒軸の表面を研磨する研磨処理工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記締結部は、前記長手側端面の一方に形成された凹部に対して、他方に形成され凸部を圧入して形成され、前記研磨処理工程において、前記凸部の突出方向と一致する回転方向に、研磨処理を行うことを特徴とする。
【0009】
前記円筒軸に高摩擦層を形成する工程と、を含み、前記締結部は、前記高摩擦層の端部と前記他端側の中間よりも前記他端側に設けられることを特徴とする。
【0010】
前記他端側に動力伝達部材を取付ける取付工程を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る印刷装置は、搬送媒体に記録を行う記録部と、前記搬送媒体を搬送する搬送部と、を備え、前記搬送部は、上記円筒軸の製造方法のうちいずれかにより製造された搬送ローラーを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
【図2】(a)は搬送ユニット部分の平面図、(b)は駆動系の側面図である。
【図3】(a)は搬送ローラー機構の概略構成図、(b)は軸受の概略構成図である。
【図4】搬送ローラーの構成を示す側面図である。
【図5】ローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図6】プレス抜き工程の一部を示す図である
【図7】(a)〜(c)は本実施形態に係る曲げ工程を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は図7に続く曲げ工程を示す図である。
【図9】平板部が段階的に円筒状に形成された金属板を示す平面図である。
【図10】(a)ローラー本体の斜視図、(b)は繋ぎ目の側断面図である。
【図11】応力調整工程を示す図である。
【図12】センターレス研磨工程を示す図である。
【図13】ローラー本体を第二端部側からセンターレス研磨した場合の精度測定結果を示す図である。
【図14】ローラー本体を第一端部側からセンターレス研磨した場合の精度測定結果を示す図である。
【図15】高摩擦層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェットプリンター(印刷装置)1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に設けられた排紙部7と、を備えている。
【0016】
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(媒体、記録媒体、搬送媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。以下、用紙Pの搬送経路において、給紙トレイ11側を上流側、排紙部7側を下流側という。給紙トレイ11の下流側には、給紙ローラー13が設けられている。
【0017】
給紙ローラー13は、対向する分離パッド(不図示)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、下流側へ送り出すように構成されている。給紙ローラー13の下流側には、搬送ローラー機構19が設けられている。
【0018】
搬送ローラー機構19は、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17とを備えている。
【0019】
搬送ローラー15は、従動ローラー17との間に用紙Pを挟圧し、図2に示す駆動部30により回転駆動するように設けられている。これにより、搬送ローラー15は、用紙Pを下流側に配置された印字ヘッド(印刷部)21へ、搬送印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作により搬送することができるようになっている。
【0020】
印字ヘッド21はキャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されている。
【0021】
プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。
【0022】
ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に用紙Pを下側から支持するものであり、頂面が支持面として機能するようになっている。ダイヤモンドリブ25と印字ヘッド21との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっている。
これにより、用紙Pはダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過することが可能となっている。ダイヤモンドリブ25及び印字ヘッド21の下流側には、排紙ローラー機構29が設けられている。
【0023】
排紙ローラー機構29は、下側に配置された排紙ローラー27と上側に配置された排紙ギザローラー28とを備え、排紙ローラー27の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬送ローラー15、排紙ローラー27の駆動速度の関係について説明する。
【0024】
プリンター本体3には、図2(a),(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬送ローラー15が内挿されて連結されている。
このような構成のもとに、搬送モーター32等は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
【0025】
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように排紙ローラー27の軸体45となっている。
【0026】
このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構29の排紙ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
【0027】
なお、排紙ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
【0028】
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
【0029】
次に、搬送ローラー15及びこれを備える搬送ローラー機構19について説明する。
図3(a)は搬送ローラー機構19の概略構成を示す図、図3(b)は軸受の概略構成を示す図である。
図4は、搬送ローラー15の構成を示す側面図である。
【0030】
搬送ローラー15は、金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体(円筒軸)16と、ローラー本体16の表面の長手方向(軸方向)の一部に形成された高摩擦層50とを有している。
【0031】
ローラー本体16は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている。ローラー本体16は、コイルを巻き戻した金属板をプレス加工(抜き加工、曲げ加工)して形成される。
ローラー本体16は、図10に示すように、曲げ加工されて突き合わ(近接又は当接)された金属板の一対の端面61a,61b間に形成された繋ぎ目(継ぎ目)80を有している。
【0032】
高摩擦層(媒体支持領域)50は、図3(a)に示すように、ローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。高摩擦層50の表面には、無機粒子の鋭く尖った部分が露出した状態で固定され、高い摩擦力を発揮するようになっている。
【0033】
高摩擦層50は、ローラー本体16の表面の高摩擦層の形成領域に樹脂粒子を10μm〜30μm程度の均一な膜厚で選択的に塗布して樹脂膜を形成し、その樹脂膜の上に無機粒子を均一に散布した後、焼成することにより形成されている。
樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。また、無機粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整された酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。
【0034】
搬送ローラー15は、図3(a)に示すように、その両端部がプラテン24(図1参照)に一体成形された軸受26に回転可能に保持されている。
図3(b)に示すように、軸受26は、上方に開口するU字形に形成され、このU字形部位に搬送ローラー15を嵌め込むことで、搬送ローラー15を前後側及び下側の3方向から軸支する。そして、軸受26と搬送ローラー15との接触面(搬送ローラー15の表面)には、グリス等の潤滑油(潤滑液)が供給(塗布)される。
【0035】
搬送ローラー15の一端である第一端部16fには、インナーギア39や搬送駆動ギア35が回転不能に取付けられる。インナーギア39や搬送駆動ギア35の中心部に設けた貫通孔に対して、搬送ローラー15の第一端部16fを圧入することで、回転不能に取付けられる。
搬送ローラー15の他端である第二端部16sには、搬送伝達ギア46が回転不能に取付けられる。搬送ローラー15の第二端部16sには、いわゆるDカットと呼ばれる係合部(不図示)が形成される。この係合部に対して搬送伝達ギア46を係合することにより、回転不能に取付けられる。
【0036】
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向しかつ当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(不図示)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。
【0037】
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0038】
なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、フッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
以上の搬送ローラー15、軸受26、駆動部30及び従動ローラー17等により、インクジェットプリンター1の搬送部(搬送装置)20が構成されている。
【0039】
図4に示すように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目80には、締結部85が設けられる。締結部85は、繋ぎ目80が開くことを防止するものである。
締結部85は、高摩擦層高摩擦層50の端部と第一端部16fの中間よりも第一端部16f側に設けられる。つまり、締結部85は、高摩擦層高摩擦層50の端部と搬送駆動ギア(動力伝達部材)35等の中間よりも搬送駆動ギア35等側に設けられる。
【0040】
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
インクジェットプリンター1は、給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを給紙ローラー13によって挟圧して下流側へ送り出す。送り出された用紙Pは搬送ローラー機構19に至る。搬送ローラー機構19は、用紙Pを搬送ローラー15と従動ローラー17との間で挟圧し、搬送ローラー15の回転駆動による紙送り動作で印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送する。印字ヘッド21の下方に搬送された用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、印字ヘッド21によって高品質に印刷される。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7の排紙ローラー27によって順次排出される。
【0041】
排紙ローラー機構29の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているときには、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。したがって、このように排紙ローラー機構29と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。そのため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
【0042】
そして、ローラー本体16として中空の円筒軸を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して重量を大幅に減少させることができる。また、ローラー本体16に中実軸を用いる場合と比較して材料の切削性に対する要求が低くなる。したがって、ローラー本体16の材料として鉛等の有害物質を含まない材料を用いることが可能になり、環境負荷を低減することができる。
【0043】
また、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されている。そのため、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0044】
また、本実施形態の搬送部20は、搬送ローラー15とこれを支持する軸受26とを備えている。そのため、上述のように高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を軸受26により支持して回転させ、高摩擦層50により用紙Pを支持して高精度に搬送することができる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して搬送部20の重量を大幅に減少させ、環境負荷を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態のインクジェットプリンター1は、搬送部20によって用紙Pを高精度に搬送することができ、用紙Pに高い印刷精度で印刷処理を行うことできる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して装置全体の重量を大幅に減少させることができ、環境負荷を低減することができる。
【0046】
次に、搬送ローラー15(ローラー本体16)の詳細構造及び製造方法について、図5〜図14を用いて説明する。
【0047】
図5は、ローラー本体の基材としての金属板Mを示す平面図である。
搬送ローラー15を製造するには、図5に示すように、厚さ1mm程度の冷間圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板Mをプレス加工(抜き加工)して、搬送方向に連続する搬送用枠部66と、搬送方向と交差する方向に延びる帯状の平板部60と、平板部60と搬送用枠部66を連結する連結部位67と、を形成する。
平板部60は略長方形であり、短辺60aが搬送方向に平行で、長辺60bが搬送方向と直交するように型抜きされる。
【0048】
連結部位67は、後述する円筒軸形成工程において、平板部60を円筒状に曲げ加工する際に、曲げの基準位置として利用される。すなわち、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように曲げ加工される。
【0049】
平板部60の一方の長辺60b1には、長辺60b1に対して直交する方向に突出する矩形状の凸部86が型抜きされる。また、他方の長辺60b2には、長辺60b2に対して直交する方向に陥没する矩形状の凹部87が型抜きされる。
凸部86,凹部87の長辺60b1,60b2における位置(短辺60aからの距離)は、同一である。長辺60b1,60b2に平行な方向における凸部86,凹部87の幅は、凸部86の方が微少に長くなるように形成される。
凸部86及び凹部87は、高摩擦層50が形成される領域とは異なる領域に形成される。
【0050】
図6は、プレス抜き工程の一部を示す図である。
金属板Mをプレス加工(抜き加工)して、平板部60を形成する際に、平板部60の長辺60b(側部62a,62b)の抜き加工を斜めに抜き加工にする。
具体的には、図6(a)〜(c)に示すように、金属板Mは、雄型121と雌型122を用いたプレスにより抜き加工される。そして、雌型122の上面端部(金属板Mの搬送方向)は円弧状に丸められている。このため、図6(b)に示すように、雄型121と雌型122により金属板Mをプレス抜きする際に、平板部60の両側部62a,62bとなる部位は、雌型122の上面端部の形状に倣って湾曲した状態で切断(せん断加工)される。なお、プレス抜き加工の直後には、平板部60の両側部62a,62bは、その弾性力により平坦な状態に戻る。
これにより、図6(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの端面61a,61bは、平板部60の主面C1,C2に対して傾斜するように形成される。すなわち、端面61a,61bは、平板部60の主面C1(後述の外周面16a)に対して鋭角、主面C2(後述の内周面16b)に対して鈍角となるように、傾斜して形成される。
【0051】
そして、金属板Mを不図示の搬送部によって間欠的に搬送しながら繰り返しプレスを行うことで、平板部60と連結部位67は、金属板Mの搬送方向に等間隔に複数形成される。
【0052】
次いで、平板部60を、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)に示すように、円筒状(パイプ状)にプレス加工(曲げ加工)し、その両側(長辺60b)の端面61a、61bを近接又は当接させる(円筒軸形成工程)。
【0053】
具体的には、まず、図7(a)に示す雌型(曲げダイ)141と雄型(曲げパンチ)142とで金属板Mの平板部60をプレスし、平板部60の両側部62a,62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、平板部60と雌型141と雄型142との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、平板部60と雌型141、雄型142とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、図7(c)、図8(a)〜図8(c)においても同様である。
【0054】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(b)に示す第2の雌型(曲げダイ)143と第2の雄型(曲げパンチ)144とで、平板部60の短辺方向(曲げ方向)における中央部をプレスする。そして、平板部60を円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
【0055】
このように、平板部60の中央部をプレスして曲げ加工する際に、連結部位67が曲げの基準位置として利用される。すなわち、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように、平板部60を第2の雌型143及び第2の雄型144に対して位置決めする。
これにより、第2の雌型143及び第2の雄型144の円弧状のプレス面の中央位置(図7(b)の矢印の位置)に、連結部位67が配置される。
なお、後述する上型145及び下型146に対しても、一対の連結部位67が曲げの中間位置となるように位置決めされる。
【0056】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(c)に示すように、平板部60の内側に芯型147を配置する。そして、図7(c)に示す上型145と下型146とを用いて、図8(a)〜図8(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの両端面61a,61bを近接させる。
【0057】
また、図8(a)〜図8(c)に示すように下型146は左右一対の割型であり、これら割型146a,146bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0058】
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように左側の割型146aを上型145に近接させ、平板部60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
なお、上型145も下型146と同様左右一対の割型とし(割面145b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の上型を割型146aに近接させてもよい。
【0059】
次いで、図8(b)に示すように、芯型147を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)上型145側へ移動させるとともに、他方の側の割型146bを上型145に近接させ、平板部60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0060】
その後、図8(c)に示すように、芯型147および一対の割型146a,146bを共に上型145に近接させ、円筒状のローラー本体(中空パイプ)16を形成する。この状態で、左右両側の端面61a,61bは互いに対向して突き合わされた状態となる。すなわち、この円筒状のローラー本体16にあっては、基材である金属板Mの平板部60の両側の端面61a,61bが互いに近接して、これらの端面61a,61b間に繋ぎ目80が形成されている。
【0061】
上述したように、平板部60の中央部をプレスして曲げ加工する際に、連結部位67が曲げの基準位置として利用される。このため、平板部60は、短辺60a側から見ると、連結部位67を基準にして左右均等(左右対称)に曲げ加工される。したがって、ローラー本体16は、長手方向の端面側から見ると、左右均等(左右対称)に曲げ加工されて、応力バランスが取れた円筒軸となる。
【0062】
図9は、円筒曲げ工程を経て平板部60が段階的に円筒状に形成された金属板Mを示す平面図である。
上述したように、型抜きされた金属板Mは、第2プレス機140に到達し、一方向に間欠的に送られながら、平板部60がプレスにより順次曲げ加工される(順送プレス)。そのため、図9に示すように、第2プレス機140に到達した平板部60は、金属板Mの搬送方向の下流側ほど円筒に近くなっていく。
【0063】
図10(a)は、ローラー本体16の斜視図、(b)は繋ぎ目80の側断面図である。
金属板Mは、一方向に間欠的に送られながら、順送プレス加工により、順次、抜き加工、円筒曲げ加工が施される。これにより、図10(a),(b)に示すように、中空円筒状のローラー本体16が完成する。
金属板Mの平板部60の端面61a,61b同士が当接することにより形成される繋ぎ目80は、ローラー本体16の軸方向に平行となる。
【0064】
繋ぎ目80の一部には、締結部85が形成される。締結部85は、端面61a,61b(長辺60b1,60b2)に形成された凸部86と凹部87が結合したものである。つまり、凹部87に対して凸部86が嵌まり込んだものである。凹部87と凸部86の嵌合状態は締まり嵌めであるから、端面61a,61b同士は締結部85により強固に締結される。
なお、繋ぎ目80を形成する端面61a,61b同士は、当接する場合に限らず、近接場合であってもよい。
【0065】
次に、ローラー本体16に残留する応力を調整する工程(応力調整工程)を行う。
この応力調整工程では、ローラー本体16の外周面16aのうち少なくとも高摩擦層50が形成される領域に押圧力を加える。
応力調整工程としては、ロールレベラーを用いて、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面に対して押圧力を加える。
【0066】
ロールレベラー工程では、図11に示すように、2つの押圧ローラーR1及びR2を用いる。
押圧ローラーR1は、外周面が凸状(紡錘形)に形成されている。軸方向の両端が小径で中央が大径となるように径が漸次変化した円柱に形成されている。
一方、押圧ローラーR2は、外周面が凹状(鼓形)に形成されている。軸方向の両端が大径で中央が小径となるように径が漸次変化した円柱に形成されている。
【0067】
2つの押圧ローラーR1,R2は、その回転軸が平行となるように配置される。そして、この押圧ローラーR1,R2の間に、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2に対して平行に配置する。つまり、押圧ローラーR1,R2により、ローラー本体16を挟持する。
そして、押圧ローラーR1,R2の軸間距離を調整することで、挟持したローラー本体16に対して所望の押圧力を与えることができる。また、ローラー本体16を挟持した状態で、2つの押圧ローラーR1,R2を異なる方向に回転させる。
このように、押圧ローラーR1,R2を異なる方向に回転させることで、押圧ローラーR1,R2の間に挟持されたローラー本体16は、回転しつつ押圧力を受ける。
【0068】
また、図11に示すように、ローラー本体16の外周面のうち、押圧ローラーR1に接している面側には、圧縮力が作用する。一方、ローラー本体16の外周面のうち、押圧ローラーR2に接している面側には、引張力が作用する。そして、ローラー本体16が回転することにより、ローラー本体16の外周面には、全体としては押圧力を受けながら、微少に引張力と圧縮力が繰り返し作用することになる。
【0069】
そして、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2で押圧しつつ、ローラー本体16を中心軸の方向に相対的に移動させる。
つまり、押圧ローラーR1,R2を固定しておき、ローラー本体16を押圧ローラーR1,R2の間を回転しながら通過させる。これにより、ローラー本体16には、第二端部16sから第一端部16fへと順に押圧力が加えられることになる。この押圧力により、ローラー本体16に残留する応力が調整されることになる。
【0070】
ロールレベラー工程では、ローラー本体16に対して、塑性変形が発生するように圧縮力が与えられる。ローラー本体16の形成材料(金属板M)として、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた場合には、約0.25〜約0.5%(約0.0025〜約0.005)程度の(圧縮)ひずみが発生するように、ロールレベラー加工(押圧ローラーR1,R2の軸間距離)が調整される。
冷間圧延鋼板(SPCC)は、約0.1%のひずみが発生すると、塑性変形域に達する(塑性変形が発生する)と言われている。つまり、ロールレベラー工程では、ローラー本体16に対して、塑性変形が発生し始める外力(ひずみ)の約2倍から約5倍程度の外力(ひずみ)を与える。
これにより、ローラー本体16は塑性変形(圧縮変形)して、内部応力が均一化されるとともに経時変化も確実に抑制することができる。
【0071】
次いで、本実施形態では、ローラー本体16の真円度を高め、振れを少なくするべく、センターレス研磨加工を行う。
この研磨工程では、図12に示すように、円柱状(又は円筒状)に形成された砥石部材GDを用いてローラー本体16の外周面16aを研磨する。研磨工程では、ローラー本体16の外周面16aから所定の深さ(20μm〜100μm程度の厚さ。以下、「研磨深さ」と表記)の部分が研磨されることになる。
【0072】
ローラー本体16の外径よりも小さい間隔を空けて配置された2つの砥石部材GDの間に当該ローラー本体16を配置させ、ローラー本体16が2つの砥石部材GDの外周部分に接した状態とする。その後、2つの砥石部材GDを同じ方向に回転させる。この2つの砥石部材GDの回転により、各砥石部材GDとローラー本体16との間に摩擦力が発生する。
【0073】
2つの砥石部材GDとしては、ローラー本体16の長手方向の全体を一度に研磨できるように、長手方向(円柱の高さ方向)の寸法がローラー本体16よりも大きくなるように形成されたものを用いることが好ましい。また、砥石部材GDの回転時には、ローラー本体16の長手方向におけるマージンを確保するため、長手方向の全体が2つの砥石部材GDに接触するように、砥石部材GDの長手方向の中央部にローラー本体16を配置することが好ましい。
【0074】
砥石部材GDの回転によって発生した摩擦力により、ローラー本体16が当該砥石部材GDの回転方向とは反対方向に回転しつつ、当該ローラー本体16の外周面16aが研磨されることになる。このため、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面が満遍なく研磨され、研磨工程前に比べてローラー本体16の真円度がより良好になる。
【0075】
研磨工程を行うことにより、真円度が高く、かつ、振れ量の小さいローラー本体16が得られる。このローラー本体16にあっては、両端面61a、61b間がより狭まることで、これら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
【0076】
図12に示すように、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDに対して、第二端部16s側から投入される。ローラー本体16は、第二端部16s側が最初に研磨され、第一端部16f側が遅れて研磨される。
ローラー本体16の第二端部16s側には、繋ぎ目80の締結部85が存在しない。つまり、第二端部16sから締結部85までの距離は、第一端部16fから締結部85までの距離に比べて長い。すなわち、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDに対して、繋ぎ目80に締結部85が存在しない端部側から投入され、繋ぎ目80に締結部85が存在する端部側が遅れて投入される。
言い換えれば、ローラー本体16は、締結部85による繋ぎ目80の締結(接合)の効果がより及んでいない端部側から砥石部材GDに向けて投入され、締結部85による繋ぎ目80の締結の効果がより及んでいる端部側が後れて砥石部材GDに投入される。
【0077】
なお、繋ぎ目80に複数の締結部85を設けた場合には、第一端部16f,第二端部16sから同一の締結部85までの距離を比較するのではなく、第一端部16f,第二端部16sのそれぞれから最も近くに配置された締結部85までの距離を比較する。そして、その距離が長い方の端部側から、ローラー本体16を2つの砥石部材GDに向けて投入する。
【0078】
また、図12に示すように、2つの砥石部材GDの回転方向は、ローラー本体16が、締結部85を形成する凸部86が突出する方向に向けて回転するように設定される。
言い換えれば、ローラー本体16は、2つの砥石部材GDにより、凸部86の先端側から研磨され始め、凸部86の根元側が遅れて研磨されるように設定される。
凸部86の先端側は、ローラー本体16の外周面16aよりも半径方向外側に突出しやすいので、この凸部86の先端側を確実に研磨するためである。
【0079】
このように、ローラー本体16を第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入することにより、ローラー本体16の第二端部16s側と第一端部16f側の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が高い水準で均一化される。
一方、ローラー本体16を第一端部16f側から2つの砥石部材GDに対して投入した場合には、第二端部16s側から砥石部材GDに投入した場合に比べて、精度が悪化しやすい。
【0080】
図13は、ローラー本体16を第二端部16s側から研磨加工(センターレス研磨)した場合の精度測定結果を示す図である。図14は、ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した場合の精度測定結果を示す図である。図13,図14において、(a)は真円度、(b)は振れ、(c)は表面粗さ、(d)は繋ぎ目80の段差を示すグラフである。
【0081】
ローラー本体16の長手方向の3箇所における真円度を測定した。3箇所の測定位置は、図4に示すa位置、b位置、c位置の3箇所である。ローラー本体16の第二端部16f側に締結部85を一つ設けた。
ローラー本体16を第二端部16s側から研磨加工した測定サンプル数は15個である。ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した測定サンプル数は3個である。
なお、ローラー本体16を第一端部16f側から研磨加工した測定サンプル数が少ないのは、第一端部16f側から研磨加工するとローラー本体16の形状が安定しないために、測定困難となったサンプルが頻発したためである。
【0082】
図13(a)に示すように、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所の真円度は、約1.5μm以下となった。A位置からC位置の3箇所の真円度の平均値は、約1.0μm以下となった。
一方、図14(a)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所の真円度は、サンプル毎のばらつきが大きくなった。A位置からC位置の3箇所の真円度が約1.5μm以下となるサンプルもあれば、真円度が全て約3.0μm程度となるサンプルもあった。
【0083】
図13(b)に示すように、ローラー本体16の長手方向中央における振れ(最大振れ)は、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、約10μm以下となった。センターレス研磨加工の前後の振れを比較すると、センターレス研磨加工を施すことにより、ローラー本体16の振れに30〜70%の改善が見られた。
一方、図14(b)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、約10μm以下となったサンプルもあったが、約10μm以上となるサンプルもあった。センターレス研磨加工の前後の振れを比較すると、センターレス研磨加工を施すことにより、ローラー本体16の振れに50%程度の改善が見られるものもあったが、全く改善が見られないものもあった。
【0084】
図13(c)に示すように、ローラー本体16の長手方向の3箇所における表面粗さ(Rz)は、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約3.0μm以下となった。
一方、図14(c)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合も、A位置からC位置の3箇所で約3.0μm以下となった。
【0085】
図13(d)に示すように、ローラー本体16の繋ぎ目80における段差(径方向のずれ)の大きさは、ローラー本体16を第二端部16s側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約2μm以下となった。
一方、図14(d)に示すように、ローラー本体16を第一端部16f側から砥石部材GDに対して投入した場合には、A位置からC位置の3箇所で約3μm以上となった。
【0086】
このように、ローラー本体16を第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入することにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が、高い水準で均一化することができる。つまり、ローラー本体16は、繋ぎ目80までの距離が長い方の端部(第二端部16s)側から砥石部材GDに投入することにより、高い精度が得られる。
【0087】
砥石部材GDに対するローラー本体16の投入方向により、ローラー本体16の精度に差が生じるのは、以下の理由によるものと推測される。
ローラー本体16を2つの砥石部材GDの間に投入して研磨すると、ローラー本体16に負荷が発生する。そして、センターレス研磨では、ローラー本体16の一端側から他端側に向けて徐々に研磨するので、ローラー本体16に発生した負荷が、後から投入される端部側に向けて徐々に蓄積される。このため、後から投入される端部側の精度が悪化しやすくなる。つまり、後から投入される端部側の繋ぎ目80が開きやすくなる。
このため、後から投入される端部側に締結部85を配置することにより、ローラー本体16の精度の悪化を防止することが可能となる。そこで、締結部85までの距離が短い第一端部16f側を後から研磨加工することになる。言い換えれば、ローラー本体16を、締結部85までの距離が長い第二端部16s側から2つの砥石部材GDに対して投入する。これにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)が、高い水準で均一化することが可能となる。
【0088】
センターレス研磨加工が完了した後は、ローラー本体16に表面処理を施す。
まず、ローラー本体16の形成材料(金属板M)として、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた場合には、メッキ処理工程を行う。ローラー本体16に表面にメッキ層を形成することで、防錆性を高めている。
【0089】
次に、ローラー本体16の表面に、図3(a)に示すような高摩擦層50を形成する。
高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0090】
無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子を用いるものとする。
【0091】
アルミナ粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
なお、アルミナ粒子の粒径は、適宜、選択調整することができる。
【0092】
このような樹脂粒子と無機粒子とを用意したら、まず、ローラー本体16に前述の樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(不図示)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で−(マイナス)電位にしておく。
【0093】
そして、樹脂粒子を、静電塗装装置(不図示)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
【0094】
樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3(a)に示した高摩擦層50の形成領域に対応させる。すなわち、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、その両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図15(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。つまり、このローラー本体16からなる搬送ローラー15の、少なくとも搬送する用紙(媒体)Pに接触する領域となる中央部に対応する領域にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。
なお、図15(a)及び後述する図15(b),(c)では、繋ぎ目80については図示を省略している。
【0095】
樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。この樹脂膜51の膜厚については、前述のアルミナ粒子の粉径を勘案して、10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
【0096】
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を前述の塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット等によって別の塗装ブース(不図示)に移す。
そして、ローラー本体16を中心軸回りに回転させる。ローラー本体16をその軸廻りに、100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。
【0097】
そして、塗装ブースの上部に配置したコロナガンから前述のアルミナ粒子95を噴霧し吹き付けることにより、ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子95を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子を樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
【0098】
すると、前述したように、ローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子95が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子95は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
【0099】
特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子95が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図15(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子95は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子95はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子95は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
【0100】
したがって、アルミナ粒子95は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。ここで、アルミナ粒子95が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子95の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
【0101】
なお、このアルミナ粒子95の塗布(散布)については、アルミナ粒子95が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、スプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
【0102】
このようにしてアルミナ粒子95を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂膜51を焼成し硬化させる。これにより、アルミナ粒子95をローラー本体16に固着する。こうして、図15(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、搬送ローラー15が得られる。
【0103】
なお、本実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよい。
【0104】
以上のように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の製造方法において、研磨処理工程(センターレス研磨)では、ローラー本体16を第二端部16s側から研磨する。これにより、ローラー本体16の精度(真円度、振れ等の幾何公差)を高い水準で均一化することができる。
【0105】
また、応力調整工程において、ローラー本体16の外周面16aの全面に対して押圧力を加えることとしたので、ローラー本体16の全面における残留応力が均一に調整されることになる。これにより、搬送ローラー15全体の形状を安定化させることができる。
【0106】
そして、このようなローラー本体16を、インクジェットプリンター1(搬送ローラー機構19)の搬送ローラー15に用いた場合には、印刷用の用紙Pを高精度に搬送することが可能となり、高精度な印刷を行うことができる。
【0107】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0108】
上記実施形態においては、ローラー本体16は、圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている構成としたが、これに限られることは無い。
平板状の金属板を母材とし、当該平板金属板から上記平板部60とほぼ同形同寸法の金属板を形成して、当該金属板を加工することでローラー本体16を形成しても構わない。
したがって、上記説明あるいは以下の記載において、平板部60を当該金属板に置き換えた場合であっても適用可能である。
【0109】
また、ローラー本体16の繋ぎ目80の形状としては、軸方向に平行な直線形の場合について説明したが、様々な形状を採用することができる。
【0110】
また、繋ぎ目80を締結する手段として、凸部86と凹部87からなる締結部85を用いる場合について説明したが、これに限らない。繋ぎ目80(端面61a,61b)をスポット溶接する場合であってもよい。この場合には、円筒曲げ工程と研磨処理工程の間に、スポット溶接工程を行う。
【符号の説明】
【0111】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、 15…搬送ローラー、 16…ローラー本体(円筒軸)、 16f…第一端部(他端)、 16s…第二端部(一端)、 20…搬送部、 21…印字ヘッド(記録部)、 35…搬送駆動ギア(動力伝達部材)、 60…平板部(矩形金属板)、 61a…端面(長手側端面)、 61b…端面(長手側端面)、 80…繋ぎ目(継ぎ目)、 85…締結部、 86…凸部、 87…凹部、 P…用紙(記録媒体)、 GD…砥石部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形金属板の長手側端面同士を近接又は当接するように円筒状に曲げて円筒軸を形成する円筒曲げ工程と、
前記円筒曲げ工程と同時又は後れて、前記長手側端面同士の継ぎ目の一部に前記長手側端面同士を締結する締結部を一つ以上形成する工程と、
前記円筒軸の2つの端部のうち前記締結部までの距離が長い一端側から前記締結部までの距離が短い他端側に向けて、前記円筒軸の表面を研磨する研磨処理工程と、
を有することを特徴とする円筒軸の製造方法。
【請求項2】
前記締結部は、前記長手側端面の一方に形成された凹部に対して、他方に形成され凸部を圧入して形成され、
前記研磨処理工程において、前記凸部の突出方向と一致する回転方向に、研磨処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項3】
前記円筒軸に高摩擦層を形成する工程と、
を含み、
前記締結部は、前記高摩擦層の端部と前記他端側の中間よりも前記他端側に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項4】
前記他端側に動力伝達部材を取付ける取付工程を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項5】
搬送媒体に記録を行う記録部と、前記搬送媒体を搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送部は、請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の円筒軸の製造方法により製造された搬送ローラーを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
矩形金属板の長手側端面同士を近接又は当接するように円筒状に曲げて円筒軸を形成する円筒曲げ工程と、
前記円筒曲げ工程と同時又は後れて、前記長手側端面同士の継ぎ目の一部に前記長手側端面同士を締結する締結部を一つ以上形成する工程と、
前記円筒軸の2つの端部のうち前記締結部までの距離が長い一端側から前記締結部までの距離が短い他端側に向けて、前記円筒軸の表面を研磨する研磨処理工程と、
を有することを特徴とする円筒軸の製造方法。
【請求項2】
前記締結部は、前記長手側端面の一方に形成された凹部に対して、他方に形成され凸部を圧入して形成され、
前記研磨処理工程において、前記凸部の突出方向と一致する回転方向に、研磨処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項3】
前記円筒軸に高摩擦層を形成する工程と、
を含み、
前記締結部は、前記高摩擦層の端部と前記他端側の中間よりも前記他端側に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項4】
前記他端側に動力伝達部材を取付ける取付工程を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の円筒軸の製造方法。
【請求項5】
搬送媒体に記録を行う記録部と、前記搬送媒体を搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送部は、請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の円筒軸の製造方法により製造された搬送ローラーを有することを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−99769(P2013−99769A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245651(P2011−245651)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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