説明

円錐セル型スクラバーとこれを利用した空気洗浄器

【課題】汚染された空気を効率よく洗浄水と接触させ空気中の悪臭等も除去可能な空気洗浄器の提供。
【解決手段】多数の透孔を付けた円錐について、その頂点部を一部切断して開口し、その開口した頂点部を下にした円錐セルを複数並列に並べ、これを積み重ねて構成した円錐セル型スクラバーとこれを利用する空気洗浄器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を洗浄水として空気を浄化する、多数の透孔を付けた略円錐形のセルを用いたスクラバーとこれを用いた空気洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの液体を洗浄液として、汚染空気中の粒子や有害物質を洗浄液の液滴や液膜中に捕集して分離をする方法が用いられている。この方法には、液滴による空気中の粒子や有害物質の分離を有効にするため、液滴、液膜等の形成と洗浄方法に種々の工夫がされている。溜水中に汚染空気をくぐらせることにより集じんする方法、汚染空気の流れに加圧水を噴射する方法、プラスチック・磁器などの充てん物に噴霧した洗浄液の水膜に汚染空気を接触させて集じんする方法、洗浄液を回転体で分散させて汚染空気を接触させる方法等がある。
【0003】
これらの方法については多くの先行技術がある。その内、薬剤等を使用せず、物理的な手段のみによる方法としては以下の特許出願等が見受けられる。
貯水タンクと小型のポンプと、水を噴霧するための導電性のノズルと、ノズルの近傍に配置された対向電極とを備え、ノズルおよび対向電極の間に電位差を与えて、ノズルより噴霧される水滴を微細化することを特徴とする水滴微細化装置を空気導入口に備え、逆円錐型の旋回流円筒の中心部に前記旋回流円筒よりも径の小さい空気排出用垂直流円筒を設けることを特徴とする気液接触部と、前記気液接触部に空気を取り込んで排出するためのファンと、前記気液接触部と前記ファンの間に、一定の間隔で配列され、導電性を有し、交互に異なる電圧が印加される電極を備えた電気集塵部により、効率良く粉塵や悪臭などを除去する空気浄化装置(特許文献1)、空気吸入口からエアチャンバに吸入された空気は、開口部から受水槽の水面に吹き付けられた後、凹凸連続状に形成された下端部と水面との狭い間隙を乱流となって通過し、エアチャンバの下部外側に水中から立設したバッフルプレートにより形成された若干広い間隙及び狭められた上部間隙の中で渦流となり、この間で水分をこの乱流中に巻き込み空気と水分の十分な攪拌、接触状態を得て、塵埃、有害ガスが十分に取り除かれ、さらに、水洗塔内を上昇しながら、散水部材で均一的に散水された水流、水分ミストで洗浄され、残存塵埃、有害ガスなど取り除かれる空気浄化装置(特許文献2)、洗浄塔内に、上下の貫通孔を多数有し、上方から温水が供給される多孔温水プレートを水平に備え、洗浄塔内における上記多孔温水プレートの上位に、上下の貫通孔を多数有し、上方から冷水が供給される多孔冷水プレートを水平に備えており、洗浄塔内に吸入した空気を多孔温水プレートを下から上に通過させて温水と接触させ、さらに多孔冷水プレートを下から上に通過させて冷水と接触させて空気中の粉塵を除去し、浄化された空気を洗浄塔内から排出するようにした多段塔スクラバー(特許文献3)等がある。
【0004】
また、水の性質については古くから研究され、水素結合により水分子が相互に結合しているが磁気等によりこの結合が分解し、極めて短時間であるが単分子の水となって活性化するとの見解がある。この水の性質に着目し、磁気を利用し水を活性化して廃水処理、飲料水に役立てようとする特許出願が以下のように見受けられる。例えば有機物を構成し且つ環境汚染の直接的原因物質となる炭素、窒素、リン、それに難分解性有機物質、重金属類、コロイド状無機物質等を含む排水を処理する排水処理手段を有する排水処理装置であって、排水処理手段で処理し排出される排水の流動管路に、所定の流速で流動する排水のクラスターを磁気力により細分化する磁気処理装置を設けて、排水を浄化するようにした排水処理施設(特許文献4)、被処理水は凝集沈殿槽を経て活性化装置7に送給される。この活性化装置には永久磁石が備えられており、その磁力によって被処理水中の水分子のクラスターが細分化される。こうして活性化された被処理水は、セラミックフィルターに送給される。このように被処理水中のクラスターを細分化した後に、セラミックフィルターを通過させるようにしたため、セラミックフィルターの透水量が増加し、処理能力が向上できる浄水処理方法(特許文献5)、水容器と、水を加熱する加熱手段と、コーヒー液を抽出するコーヒー抽出室と、前記加熱手段によって得られた湯を前記コーヒー抽出室に給湯する給湯手段と、抽出されたコーヒー液を貯える保管容器とを備え、前記給湯手段に磁石を設けたもので、磁力により水のクラスターを細分化して水がコーヒー粉に浸透し易くなることでコーヒーの抽出効率を向上させ濃い目のコーヒーを得る事ができるコーヒー湯沸かし器(特許文献6)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−280698号公報
【特許文献2】特開2001−170434号公報
【特許文献3】特開平9−38441号公報
【特許文献4】特開2006−55826号公報
【特許文献5】特開2000−334467号公報
【特許文献6】特開2008−295624号公報
【0006】
本発明者は、長年、環境関係特に廃水処理設備、空気洗浄設備等の開発を行ってきた。そして、工場内等の汚染された空気を洗浄水で浄化する構造の空気洗浄器では、汚染された空気と洗浄水を効率よく接触させるかが重要であり、その方法について検討を重ねてきた。その方法の1つとして、透孔の付いた円錐を複数平面的に配置し、さらにこれを積み重ねることにより空気と水が効率よく接触できることが試行錯誤の結果判った。そこで、この方法を利用した構造が簡単な空気洗浄器を発明するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場内等の汚染された空気を水で効率よく浄化でき、構造が簡単な空気洗浄器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1発明は、多数の透孔を付けた中空の円錐の頂点部を一部切断して開口し、その開口した頂点部を下にした円錐セルを複数同一平面上に並べ、これを積み重ねて構成した円錐セル型スクラバーである。
【0009】
透孔とは、洗浄水や空気が通過する孔であり、多数の透孔により空気と水が接触する機会を多くするものである。円錐は底面と頂点及びこれを結ぶ側面からなっているが、中空の円錐とは、底面はなく、空洞の円錐という意味である。この円錐の頂点を下に底面を上にして使用するものである。頂点部を切断し開口したのは、この開口した頂点部を下にして、この開口部からも空気や水を通過させるためである。
【0010】
この多数の透孔を付けた円錐のその頂点部を切断して開口し、その開口した頂点部を下にして、底面を上にしたものを円錐セルと称することとする。この円錐セルを複数同一平面状に配列し、これを積み重ねたものを円錐セル型スクラバーとした。スクラバーとは、水等の液体を洗浄液として、汚染空気中の粒子や悪臭物質を洗浄液の液滴や液膜中に捕集させて分離するものである。
【0011】
続いて、第2発明は、円錐セルの中に多数の透孔を付けた中空の補助円錐を入れ、更にその上に多数の透孔を付けたスクリュー形の羽根板を載せた第1発明の円錐セル型スクラバーである。
【0012】
円錐セルには多数の透孔が付けられているが、より空気と水の接触効率を上げるために円錐セルの中に、多数の透孔を付けた中空の円錐とその上に多数の透孔を付けたスクリュー形の羽根板を載せるものである。
【0013】
円錐セルの中には、多数の透孔を付けた中空の補助円錐が入る。中空は、前述の通りである。この補助円錐は、頂点を切断することなく円錐形のままである。補助円錐の上には、スクリュー形の羽根板を載せ、空気、水の流れ方向を変化させ、より空気と水を接触させるものである。スクリュー形の羽根板を載せとしたのは、機械的な固定をしないという意味である。
【0014】
続いて、第3発明は、円錐セルの頂点開口部に磁石を固定した第1発明又は第2発明のいずれかの円錐型スクラバーである。
【0015】
円錐セルの頂点開口部には空気、水が集中する。ここに磁石を固定し、前述した磁力による水のクラスター分解での効果を期待するものである。汚染空気には、塵だけでなく悪臭物質等も含まれる。この悪臭物質等をクラスター分解された水により効率よく捕集することが可能となる。
【0016】
続いて、第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかの円錐セル型スクラバーの上方に洗浄水のシャワー設備を取り付け、円錐セル型スクラバーの下に気液分離室を連結し、さらに、その下に隔壁を隔てて貯水室を設け、ダクトからの汚染空気を洗浄水のシャワーを通した後、洗浄水とともに円錐セル型スクラバーを通し、気液分離室にて洗浄水と空気は分離され、浄化された空気は排風機より排出され、洗浄水は貯水室に流下し、貯水室の洗浄水をシャワー設備に再送する円錐セル型空気洗浄器である。
【0017】
第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかの円錐セル型スクラバーを使用した空気洗浄器である。ダクトから送風される汚染空気は、洗浄水のシャワーの下を通り、洗浄水とともに第1発明から第3発明のいずれかの円錐セル型スクラバーを通過していく。その経過において、汚染空気は洗浄水により洗浄される。円錐セル型スクラバーの下にある気液分離室にて洗浄水と洗浄された空気とが分離され、洗浄された空気は排風機により排出され、洗浄水は気液分離室の下にある貯水室に流下し、貯水室の洗浄液はシャワー設備に再送される。なお、第1発明から第3発明のいずれかの円錐セル型スクラバーを使用した空気洗浄器を円錐セル型空気洗浄器とした。
【発明の効果】
【0018】
第1発明は、構造が簡単で、汚染された空気を洗浄水と効率よく接触させるスクラバーを提供するものであり、第2発明は、汚染された空気と洗浄水とをより接触する機会を増やすものである。第3発明は、水のクラスター分解での効果を期待し、汚染空気に含まれる悪臭物質等を洗浄水に捕集するものである。第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかの円錐セル型スクラバーを使用する空気洗浄器を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、円錐セルとその展開図である。
【図2】図2は、羽根板の試作品の図である。
【図3】図3は 円錐セル内に補助円錐が入り、その上に羽根板が載った図である。
【図4】図4は、円錐セルの横方向断面図である。
【図5】図5は、円錐セル型スクラバーの平面図である。
【図6】図6は、円錐セル型空気洗浄器の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の代表的な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0021】
図1は、第1発明の円錐セルとその展開図である。(A)斜視図であり(B)は展開図である。本円錐セル3は、後述する補助円錐4、羽根板5と同様にパンチングメタルにより製造されている。パンチングメタルとは、金属素材を主体とした板をプレスによって孔開け加工を行った製品の総称であり、この孔が円錐セルの透孔31となっている。このパンチングメタルを図1(B)の展開図に従い、レーザー光により切断しシーム溶接して製造した。なお、パンチングメタルの使用、製造方法はこれに限られるものではなく、汚染空気と洗浄水が接触できる透孔の付いた円錐セルであれば足りる。
【0022】
図2は、第2発明のスクリュー形の羽根板5である。略円形のパンチングメタルを中心部を除き4方向から切断し、これを折り曲げて羽根板5とするものである。この羽根板5は、空気と洗浄水の方向を変化させると同時にその行程を長くして、空気と洗浄水の接触効率を上げるものであり、折り曲げ角度、折り曲げ方向は任意に加工する。なお、羽根板5は上記の機能をすればよく、その形状等は問わない。
【0023】
図3は、円錐セル3内に補助円錐4が入り、その上に羽根板5が載った図である。
ダクトから送風された汚染空気は、シャワーからの洗浄水に、羽根板5補助円錐4、円錐セル3を通過しながら接触し浄化される。
次に、円錐セル3の頂点開口部に付けられた磁石6にあたり、クラスター分解された洗浄水により、汚染空気に含まれた悪臭物質等も効率よく除去される。なお、磁石6は、筒状となっていて、その中央空洞部61からも汚染空気や洗浄水が通過する。
【0024】
図4は、円錐セル3の横方向断面図である。補助円錐4は円錐セル3と同じ高さの位置に置き、空気と洗浄水が補助円錐の透孔41を通し接触しやすくしている。また羽根板5は、補助円錐4の上に載せられている。
【0025】
図5は、円錐セル型スクラバー2の平面図である。補助円錐4が入り、その上に羽根板5が載った円錐セル3が円錐セル型スクラバー2の中に配置されている。
【0026】
図6は、円錐セル型空気洗浄器1の全体図である。なお、図6には、羽根板5、補助円錐4は省いている。ダクト10より送風される汚染空気は、洗浄水シャワー設備7の下を通り、次に、洗浄水とともに羽根板5、補助円錐4の各透孔31、41を通過し、更に円錐セルの透孔31を通過して効率よく洗浄水と接触する。さらに、洗浄水は磁石6にあたり、クラスター分解による水の活性化により汚染空気に含まれている悪臭成分等を捕集する。この作業を繰り返し、図7では円錐セル3を複数平面に6段積み重ねているため6回繰り返し汚染空気は浄化される。気液分離室8に流下した空気と水は分離され、空気は気液分離室8についた排風機82により排出される。この浄化された空気は、工場内等へ戻し再利用される場合もある。洗浄液は、隔壁81の下の貯水槽9に流下し、洗浄水循環ポンプ91により洗浄水循環配管92を通し洗浄水シャワー設備7に送られ再利用される。なお、洗浄水が所定以上の汚染度となった場合には、廃水処理施設に送られ、新鮮な洗浄水が貯水槽9に送られ使用される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
多数の透孔を有する円錐セルにより空気と水が効率よく接触でき、汚染空気内の塵や悪臭物質を効率よく除去できるため需要が期待される。
【符号の説明】
【0028】
1 円錐セル型空気洗浄器
2 円錐セル型スクラバー
3 円錐セル 31円錐セルの透孔
4 補助円錐 41補助円錐の透孔
5 羽根板 51 羽根板の透孔
6 磁石 61 磁石の中央空洞部
7 洗浄水シャワー設備
8 気液分離室 81 隔壁 82 排風機
9 貯水槽 91洗浄水循環ポンプ 92洗浄水循環配管
10 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の透孔を付けた中空の円錐の頂点部を一部切断して開口し、その開口した頂点部を下にした円錐セルを複数同一平面上に並べ、これを積み重ねて構成した円錐セル型スクラバー。
【請求項2】
円錐セルの中に多数の透孔を付けた中空の補助円錐を入れ、更にその上に多数の透孔を付けたスクリュー形の羽根板を載せた請求項1の円錐セル型スクラバー。
【請求項3】
円錐セルの頂点開口部に磁石を固定した請求項1又は請求項2のいずれかの円錐型スクラバー
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの円錐セル型スクラバーの上方に洗浄水のシャワー設備を取り付け、円錐セル型スクラバーの下に気液分離室を連結し、さらに、その下に隔壁を隔てて貯水室を設け、ダクトからの汚染空気を、洗浄水のシャワーを通した後、洗浄水とともに円錐セル型スクラバーを通し、気液分離室にて洗浄水と空気は分離され、浄化された空気は排風機より排出され、洗浄水は貯水室に流下し、貯水室の洗浄水をシャワー設備に再送する円錐セル型空気洗浄器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−22542(P2013−22542A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161423(P2011−161423)
【出願日】平成23年7月23日(2011.7.23)
【出願人】(504234015)
【Fターム(参考)】