説明

円錐バネセット

【課題】複数個のバネを使用することなく荷重を変化させられる1つのバネとすることで、部品数を減らせ軽量化し、組立作業時間の短縮と、コストを抑えることができる。
【解決手段】荷重により撓むことのできるバネで、バネは最小径と最大径を有し、最大径側より支持または、固定できる支持台に、バネ最大内径より小さく、バネを完全圧縮した状態の高さより高い複数の突起を設け、突起はバネが撓むことによりバネの最小径と最大径の間を抑止できる、荷重を変化させることのできるバネとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円錐バネを使用し、バネの圧縮を抑止する円柱状突起によって円錐バネにかかる荷重を変化させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の表示装置の入力機として使用されるトラックボールは操作者が球状回転体を指で回転させ、表示装置のカーソル位置の変更、選択を行い、球状回転体を押す事で入力の確定をすることができる。また、入力ペンはペン先を表示装置上のタブレットに近づけることで筆記入力、カーソル位置の変更ができ、ペン先が押し込まれることにより破壊防止できる構造となっている。
トラックボールは球状回転体を支持、回転させるためのバネや入力を確定させるためバネ等、複数の荷重の違うバネを備え、入力ペンはペン先を出没させ入力を開始させるためのバネやペン先を押し込みによる破損から保護するためのバネなど複数のバネを備えている。
【特許文献1】特開平06−089139号
【特許文献2】特開2008−165477号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数のバネを入力機器内に設けるには、支持台に設けたバネを挿入して保持させるので、バネが支持台から脱落するおそれがあり、バネが圧縮状態で使用されることから、収容する作業時にバネの弾性力で、バネ自身が飛び出してしまうおそれがあるため、組立作業が複雑になり、作業性が悪い。また、電子機器の入力機(例えば電子ペン等)は少スペースに、構成部品を組み付けるため、複数のバネ固定用の部品が増加することで、重量が重くなり、コストがあがるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたもので、最小径側から最大径側へ長手方向に沿って順次拡径する円錐バネの最大径側を、円柱状突起を有する支持台に固定した円錐バネセットであって、自由状態においては前記円錐バネは前記円柱状突起と接触することなく前記円柱状突起をバネの内側に内包した状態で固定されていると共に、前記円柱状突起の外径rは前記円錐バネの最小内径Rより大きく最大内径Rより小さく、且つ前記円錐バネが長手方向に完全に圧縮されきったときの内径がr以上の部分の高さHより前記円柱状突起の高さhが高い円錐バネセットを提案するものである。
【発明の効果】
【0005】
円錐バネが圧縮した時に、円錐バネの一部を抑制させる支持台に固定した円柱状突起を設けることで、円錐バネを1つにすることができ、組立作業時間の短縮とコストを抑えることができる。また、従来の構成より部品数を減らせるため軽量化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
円錐バネを使用し、円錐バネの最大径より小さく、円錐バネを完全に圧縮した状態の高さより高い、支持台に固定した円柱状突起を設け、円錐バネが荷重で圧縮して、円錐バネが圧縮することにより、円錐バネの最小径と最大径の間で、円柱状突起が前記円錐バネの内壁に当接することにより円錐バネに係る荷重を変化させる事が可能となる。
【実施例1】
【0007】
以下、図1、図2、図3より本発明のトラックボールに使用する円錐バネと支持台セットの実施例について説明する。
図1は支持台1を示す概略断面図である。樹脂(ABS、POM、PC等)で成形された支持台1は金属の線材(ばね鋼鋼材、硬鋼線、ピアノ線等)で成形された円錐バネ2の座巻き2aを受ける座面1bと、第3有効バネ2dを受ける突起1aを一体で成形されている。突起1aは円柱状とし、突起1a内にはスイッチ3を設置した基板4の信号を送るケーブル(図示せず)を通す孔1cが成形されている。突起1aは円錐バネ2の座巻き2a内径D2より小さく、第3有効バネ2d内径D3より大きく、円錐バネ1を完全に圧縮されきったときの状態の高さHより高いhとした。図2は円錐バネ2の自由状態を示す断面図である。円錐バネ2は最大内径D2を有する座巻き2a、第1有効バネ2b、第2有効バネ2c、突起1aに当接され、最小内径D1より大きい内径D3を有する第3有効バネ2d、第4有効バネ2e、回転体を載せ支持できる最小径D2を有する回転体座2fが順次螺旋状に巻かれ、高さH’で構成される。図3は円錐バネ2が完全に圧縮されきったときの状態を示す断面図である。円錐バネ2は圧縮方向3より完全圧縮する荷重を受け、圧縮された高さH状態になる。
【0008】
図4、図5はトラックボールの設置状態を示す断面図である。スイッチ3の頭部3aは突起1aより僅かに高く突出した位置に設けられている。円錐バネ2の座巻き2aは突起1aを最大内径D2内に挿入し、座面1bに当接設置する。回転体座2fは回転体5を載せ、全てが内部に沈み込まない径とし、回転体5を安定させ、回転体座2f端面が当たる事無く、スムーズに回転できる形状としている。球状に成形された回転体5は座面1b上に設置される。
図5はトラックボールの蓋6を取り付けた状態を示す断面図。蓋6は回転体5の最大径より小さく回転体5が出没できる孔5aを設け、支持台1のネジ1dに螺号固定できる形状とする。蓋6を支持台1に固定することで第1有効バネ2bが圧縮、第1有効バネ2bの弾性により、常に回転体5は蓋6方向に押され、回転体5が蓋6より外れない構成となる。
【0009】
図5、6よりトラックボールの動作について説明する。図5はトラックボール回転状態の断面図である。操作者(図示せず)は回転体5を回転方向32に回転させるため、加重が荷重方向に押され円錐バネ2の第1有効バネ2b、第2有効バネ2cが圧縮されることで、蓋6より離れ、回転体座2f上で自由に回転が可能となる。回転させる荷重は操作者(図示せず)により違うため、一定加重で止まる必要がり、回転させるため荷重33は第3有効バネ2dが突起1a当接されることにより操作者(図示せず)に回転させる荷重33の変化に気付かせることができる。
【0010】
図7は操作確定状態の断面図である。操作を確定する際、操作者(図示せず)は回転体5を第3有効バネ2dより強い荷重でスイッチ3側に押すことで、回転体5がスイッチ3aを押し込み確定できる構成とした。
【0011】
図8は突起1aがない場合と突起1aある場合の荷重と圧縮量の関係を表すグラフである。突起がない場合、第3有効バネ2dの圧縮はA’点で荷重はB’となるが、突起があることで第3有効バネ2dの圧縮はA点で抑止され第3有効バネ2dの荷重がA点まで移動する。たわみ量が少ない時点で急激に荷重の変化を与えることができ、回転させる荷重と確定させる荷重に差を設ける事により、確実な操作が可能となる。
【実施例2】
【0012】
図9,図10で第2の実施例として入力ペンの構成について説明する。図6は操作者(図示せず)が外筒11を把持し、ペン先12をタブレット13面上に当接した筆記状態を示すペン先端部の断面図である。ペン先12は筆記するため、タブレット13に当接されることにより円錐バネ14が圧縮外筒10内に押される。チャック15を介してセンサー軸16がフォトインタラプタ17内入り、ペン信号検出の駆動(ON)動作が可能となる。ペン先12の軸12aで検出された電気信号は導通接触したチャック15、円錐バネ14を介してペン基板18に送られ、座標信号として制御装置(図示せず)に送信される筆記可能となる。タブレット13面よりペン先12を離すと、円錐バネ14の反発力によりフォトインタラプタ17はOFFされる。
【0013】
筆記による荷重によりペン先12が外筒11内に押されることで、円錐バネ14は支持台19側の最大径より圧縮する。円錐バネ14の最大径が撓むことにより最小径と最大径の間の一部が支持台19に設けた突起のバネ受け19aに抑止され、ペン先12が外筒11内に入り込みが制限され、スムーズな筆記が可能となる。
【0014】
図4はペン先12が外筒11内に完全に収納された状態のペン先端部の断面図である。
市場での使われ方として筆記荷重より強い力でペン先12が押された場合や叩かれた場合、円錐バネ14は支持台に設けた突起のバネ受け19aより抑止された径より小さい径が徐々に圧縮、ペン先12が完全に外筒11内に押し込まれる。外筒11内に完全に押し込まれたペン先12は外筒11により保護される。ペン先12は押し込みを解除することで円錐バネ14の反発力で元の位置に戻る。
【0015】
以上説明した本発明の円錐バネは回転による荷重や筆記による荷重で圧縮、バネが縮むことにより固定台に設けた突起が円錐バネの最小径と最大径の間を抑止することで荷重を変化させることができる。荷重を変化させる円錐バネを1つにすることができ、組立作業時間の短縮と、部品数を減らせ軽量化が可能となり、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のトラックボールの支持台概略断面図
【図2】本発明円錐バネ2の自由状態を示す断面図
【図3】本発明円錐バネ2が完全に圧縮されきったときの状態を示す断面図
【図4】本発明のトラックボールの概略断面図
【図5】本発明のトラックボール設置状態を示す断面図
【図6】本発明のトラックボール回転状態の断面図
【図7】本発明のトラックボール操作確定状態の断面図
【図8】本発明の荷重と圧縮量の関係を表すグラフ
【図9】本発明の入力のペン先端部の断面図
【図10】本発明の入力ペンのペン先押し込み状態のペン先端部の断面図
【符号の説明】
【0017】
1 支持台
1a 突起
1b 座面
1c 孔
2 円錐バネ
2a 座巻き
2b 第1有効バネ
2c 第2有効バネ
2d 第3有効バネ
2e 第4有効バネ
2f 回転体座
3 スイッチ
3a スイッチ頭部
4 基板
5 蓋
5a 孔
6 サイドスイッチ
11 外筒
12 ペン先
12a 軸
13 タブレット
14 円錐バネ
15 チャック
16 センサー軸
17 フォトインタラプタ
18 ペン基板
19 支持台
19a バネ受け
31 圧縮方向
32 回転方向
33 回転荷重


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小径側から最大径側へ長手方向に沿って順次拡径する円錐バネの最大径側を、円柱状突起を有する支持台に固定した円錐バネセットであって、自由状態においては前記円錐バネは前記突起と接触することなく前記突起をバネの内側に内包した状態で固定されていると共に、前記突起の外径rは前記円錐バネの最小内径Rより大きく最大内径Rより小さく、且つ前記円錐バネが長手方向に完全に圧縮されきったときの内径がr以上の部分の高さHより前記円柱状突起の高さhが高いことを特徴とする円錐バネセット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate