説明

円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法および装置

巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するために、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調して、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する。この場合、圧力変調を、伝動装置の変速比調節周波数を超えている周波数と、予め規定された振幅とによって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法および装置に関する。
【0002】
快適性、燃料消費および環境上の理由から、今日の自動車では自動化されたパワートレーンがますます使用されるようになっている。この種のパワートレーンは、たとえば連続的に可変の変速比を備えた円錐形ディスク巻掛け伝動装置を内蔵している。この種の伝動装置の持続的で確実な運転には、巻掛け手段と円錐形ディスクとの間の適切な圧着が重要である。ここでの適切な圧着とはつまり、巻掛け手段が滑らないことを保証する一方で、許容不可能な構成部材負荷が発生しないことであり、かつ提供しようとする高ハイドロリック圧によって効率を損なわないように圧着が不必要に高くないことを意味する。圧着を目的に合わせて制御するかまたは調整するために、巻掛け伝動装置の円錐形ディスクと巻掛け手段との間のトルク伝達確実性もしくはスリップ状態を正確に把握する必要がある。このスリップの直接測定には手間がかかる。なぜならば、円錐形ディスク対偶の回転数および巻掛け手段の速度の他に、正確な有効曲率半径も知っておく必要があるからである。この有効曲率半径に合わせて、巻掛け手段と円錐形ディスク対偶の円錐形面との間に摩擦係合がもたらされる。
【0003】
円錐形ディスクの圧着圧を変調し、スリップ量をたとえばロックイン原理または高速フーリエ変換(FFT)、場合によってはバンドパスフィルタ処理をすることで検出することにより、巻掛け伝動装置のトルク伝達能、もしくは巻掛け伝達装置のスリップ状態に相応するスリップ量が検出される場合、このことは通常、一義的な結果には繋がらない。
【0004】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の方法もしくは装置を改良して、巻掛け伝動装置のトルク伝達確実性を可能な限り表現可能であるスリップ量を検出することができる形式のものを提供することである。
【0005】
この課題の当該方法に該当する部分は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法によって解決される。当該方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する。この場合、圧力変調は、伝動装置の変速比調節周波数を越えている周波数と、予め規定された振幅とによって行われる。
【0006】
本発明に係る円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法の場合、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、圧力変調を、伝動装置の変速比調節周波数を超える周波数および予め規定された振幅によって行うことを特徴とする。
【0007】
圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出されたスリップ量が、圧着確実性の高さ(この高さは、たとえば実際の圧着が滑り限界における圧着を何ファクタだけ上回っているかを示す高さ)の他に圧着圧の変調の周波数と振幅とにも関係している。従って、本発明によれば、圧力変調は伝動装置の変速比調節周波数を越えている周波数、つまり伝動装置が、各円錐形ディスク対偶の円錐形ディスクの間の間隔の逆方向の変更を伴わずに圧着圧変化に反応する周波数によって行われる。従って、圧着圧の変調に伴う、円錐形ディスク対偶の回転数の差の変化は、圧着圧の変化の結果もたらされるスリップの変化にのみ起因することになる。圧着圧の変調は予め規定された振幅によって行われるので、測定されたスリップ量への変調振幅の変更による影響は排除することができる。
【0008】
本発明に係る円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、圧力変調を、伝動装置の変速比調節周波数を超える周波数によって行い、圧力変調の振幅を検出し、スリップ量を振幅に関連して検出することを特徴とする。
【0009】
本発明の課題のこの件に関する部分を解決する、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための別の方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する。この場合、圧力変調は、伝動装置の変速比調節周波数を越えている周波数によって行われ、圧力変調の振幅が検出され、振幅に関連してスリップ量が検出される。検出されたスリップ量への圧力変調の振幅の影響は、評価時に考慮することができる。最後に挙げた方法は、予め規定された振幅の遵守が不可能である場合に有利である。
【0010】
本発明に係る円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、圧力変調を、伝達装置の変速比調節周波数を超える周波数によって行い、圧力変調の周波数を検出し、スリップ量を周波数に関連して検出することを特徴とする。
【0011】
本発明の課題を解決するための、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するためのさらに別の方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する。この場合、圧力変調は、伝動装置の変速比調節周波数を超える周波数によって行われ、圧力変調の周波数が検出され、周波数に関連してスリップ量が検出される。こうして、検出されたスリップ量への周波数の影響は、評価時に考慮することができる。
【0012】
本発明に係る方法は、有利には、駆動される円錐形ディスク対偶における有効な圧着圧を変調する。
【0013】
本発明に係る方法は、有利には、円錐形ディスク対偶に設けられている有効な複数の圧力室において、有効な最大横断面をもって形成されている室内の有効な圧着圧を変調する。
【0014】
本発明に係る方法は、有利には、スリップ量をロックイン原理によって検出する。
【0015】
本発明に係る方法は、有利には、スリップ量の検出を、少なくとも1回のバンドパスフィルタ処理によって行う。
【0016】
本発明に係る方法は、有利には、スリップ量の圧力変調の所定のパラメータとの関連を表す特性線によって検出されたスリップ量から、正規化されたスリップ量を検出する。
【0017】
有利には、スリップ量の、圧力変調(たとえば周波数または振幅)の所定のパラメータとの関連性を含有している少なくとも1つの特性線に基づいて検出された1つもしくは複数のスリップ量(n)から、正規化されたスリップ量が検出される。この正規化されたスリップ量とは、巻掛け伝動装置の瞬時のトルク伝達能の再現可能で客観的な測度であり、円錐形ディスクと巻掛け手段との間の圧着力を制御するために使用することができる。このことは、この場合にこの正規化されたスリップ量が、実質的にはなお圧着確実性の高さにしか関連していないので、その限りでは有利である。この圧着確実性の高さは伝動装置の運転にとって極めて重要である。
【0018】
有利には、駆動される円錐形ディスク対偶における有効な圧着圧しか変調されない。
【0019】
円錐形ディスク対偶に設けられている有効な複数の圧力室において、有効な最大横断面をもって形成されている室内の有効な圧着圧が変調されるとさらに有利である。
【0020】
スリップ量を、たとえばロックイン原理によって検出することができる。
【0021】
スリップ量の検出が、少なくとも1回のバンドパスフィルタ処理によって行われるとさらに有利である。
【0022】
本発明に係る円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための装置は、巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための装置であって、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶によって巻掛け手段に加えられる圧着圧の変調を形成するための装置と、円錐形ディスク対偶の回転数を規定するための装置と、圧着圧変調の少なくとも1つのパラメータを検出するための装置と、円錐形ディスク対偶の回転数の比を検出し、スリップ量を規定するための分析・規定装置とが内蔵されており、該分析・規定装置が、請求項1から6までのいずれか一項記載の方法に応じて作動することを特徴とする。
【0023】
巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための装置は、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶によって巻掛け手段に加えられる圧着圧の変調を形成するための装置と、円錐形ディスク対偶の回転数を規定するための装置と、圧着圧変調の少なくとも1つのパラメータを検出するため装置と、円錐形ディスク対偶の回転数の差を検出してスリップ量を規定するための、請求項1から6までのいずれか一項記載の方法に基づき作動する分析・規定装置とを内蔵していて、当該装置によって本発明の課題のこのことに関する部分は解決される。
【0024】
以下に、本発明を概略図に基づき例示的かつ詳しく説明する。
【0025】
図1によれば、有利には自動クラッチ(図示せず)と回転方向変換伝動装置とを介在して内燃機関4が、円錐形ディスク式巻掛け伝動装置の入力軸6を駆動する。この入力軸6は、駆動側のディスクセットSS1の円錐形ディスク8と固定結合されている。別の円錐形ディスク10が入力軸6に対して相対回動不能にかつ軸線方向で移動可能に配置されている。入力軸6と固定結合された支持構成部材と円錐形ディスク10との間には、圧力室12,14が配置されている。これらの圧力室12,14の圧力負荷により、円錐形ディスク10を円錐形ディスク8に向かって押圧可能な力は可変である。
【0026】
同じように、出力側の円錐形ディスク対偶SS2が、駆動軸もしくは出力軸16と固定結合された円錐形ディスク18と、軸線方向に運動可能な円錐形ディスク20とを有している。この円錐形ディスク20は、所属の圧力室22,24の圧力負荷により円錐形ディスク18に向かって押しのけることができる。両ディスクセットSS1,SS2の間を、巻掛け手段、たとえばリンクチェーンが循環する。
【0027】
巻掛け手段26を円錐形ディスク対偶の円錐面に摩擦接続的に接触させる圧着力が、ハイドロリック弁28,30,32によって制御される。これらのハイドロリック弁28,30,32は圧力室内の圧力を規定する。
【0028】
弁28,30,32を制御するために電子的な制御装置34が用いられる。この制御装置34の入力側には、弁制御のための重要な情報を含む信号がセンサから供給される。情報は制御装置内に格納されているアルゴリズムに応じて、弁のための制御信号に変換される。制御装置34の別の出力側は、たとえば自動クラッチを制御することができる。図示の例では、ハイドロリック弁32は、制御装置34に結合せずに機械的なトルクセンサによって自立的に制御することができ、基本圧着圧を規定する。変速比調節用のハイドロリック弁28,30は、両方とも必要ということではない。有利には、制御装置34はブスライン36を介して別の制御装置もしくは車両の電子装置と通信する。
【0029】
これまで記載してきた装置の構造および機能はそれ自体公知であり、したがって詳しく説明しない。
【0030】
巻掛け伝動装置の持続的で確実な運転を保証するために、巻掛け手段26と円錐形ディスク対偶SS1,SS2との間の適切な圧着が重要である。この圧着は、既述したように、巻掛け伝動装置を滑らない、つまり許容できないくらい大きくスリップしないようにする一方で、不必要に強く圧着しないようになっていなければならない。
【0031】
このことを保証するために、スリップ量が検出されなければならない。このスリップ量は、伝動装置のスリップもしくはトルク伝達能もしくはトルク伝達確実性に相応し、圧着圧はスリップ量に基づき、伝動装置を運転条件に応じて予め規定された最適のスリップをもって作動させるように制御装置34によって制御することができる。
【0032】
スリップ量の規定のために、入力軸6には回転速度センサもしくは回転数センサ38が備え付けられていて、出力軸16には回転数センサ40が備え付けられている。これらの回転数センサは分析・規定装置42と結合されている。この分析・規定装置42は制御装置34とブス36を介して通信する。制御装置34内にはプログラムが格納されていて、これらのプログラムによって、たとえばハイドロリック弁30を、出力側のディスクセットSS2の圧力室24内の圧力が予め規定した形式で変調されるように操作することができる。瞬時の圧力はそれぞれ圧力センサ44によって検出される。この圧力センサ44は制御装置34と結合しているので、瞬時の圧力は制御装置34および(ブスライン36を介して)分析・規定装置42において既知となっている。
【0033】
今や、比較的大きな作用横断面をもって形成された、出力側のディスクセットSS2の圧力室24内の圧力が、変速比調節しない周波数、つまり各ディスク対偶の円錐形ディスクの逆方向の間隔変更によりもたらされる変速比を圧力変化に続いてもたらす周波数よりも高い周波数により変調されると、両円錐形ディスク対偶の間の変速比もしくは圧力変化への圧力変調の影響は、専ら巻掛け手段26と円錐形ディスク対偶との間のスリップの変化によるものである。典型的には、変速比調節は約10〜15Hzで実現可能であるので、有利な変調周波数は20Hz以上、たとえば33Hzである。
【0034】
図2の下側の曲線には、約33Hzの周波数で約0,1barの振幅を有する圧力変調が示してある。上側の曲線は、回転数比(センサ38,40で測定された回転数の間の比)が圧力変調にどのように続くかを示している。伝動装置のトルク伝達能が高い場合、つまり伝動装置が僅かなスリップをもって作動する場合には、回転数比は圧力変調にごく僅かにしか反応しない。伝達確実性が僅かであればあるほど、回転数比は圧力変調による励起に一層強く反応する。
【0035】
回転数差の反応が、伝達確実性の高さにも、圧力変調の振幅と周波数とにも関係しているということが分かった。この理由から、有効信号部分、つまり伝達確実性に関連している部分をよりはっきりと可視にする必要がある。このことは、記載の方法により正規化されたスリップ信号によって成功する。
【0036】
図3には、一定の励起周波数および伝達確実性の場合、回転数比が圧力変調の振幅に関連してどのように変化するかを示した曲線が示してある。1barの圧力振幅においては、回転数差の規定の変化がもたらされる。このことは図3では規準として用いられる。回転数差の規定の変化がもたらされる。圧力振幅が上昇するにつれて、回転数差の測定される変化もしくは検出されるスリップ量は増大し、たとえば約2,5barの圧力振幅の場合には、1barの圧力振幅において測定された値の約2倍になっている。従って、図3の曲線に基づき、規定の圧力振幅において測定されるスリップ量は、所定の圧力振幅、たとえば1barの圧力振幅において測定されるスリップ量に合わせて正規化することができ、これによって特性線に基づき、正規化されたスリップ量を検出することができる。この正規化されたスリップ量は、変調された圧着圧のそれぞれ既知の振幅とは無関係である。同じようにして、周波数に関連した曲線を、一定の圧力振幅の代わりに測定することができ、これによって測定されたスリップ量の周波数正規化も可能である。この正規化は、伝動装置の別の運転パラメータ、たとえば変速比および圧着確実性の高さに関連してよい。図3の形式の特性線は各伝動装置に規定されていて、特性線または特性マップ(正規化ファクタの圧力・周波数との関連性)として、たとえば分析・規定装置内に格納されていて、各運転点の実際のスリップ状態の規定に使用される。
【0037】
以下に、ロックイン原理(Lock−In Prinzip)によるスリップ量の検出を例示的に説明する。
【0038】
図4の曲線Aは、圧着圧の時間にわたっての変調Δpを示している。
【0039】
曲線Bは、圧力変調によりもたらされた、ディスクセットSS1,SS2の回転数の回転数差の変化Δn=(n1−ivarTP*n2)を示している。ローパスフィルタ処理された変速比は、たとえば回転数比n1/n2の相応のフィルタ処理により獲得することができる。
【0040】
曲線Cは変調された圧力の、その平均値を中心とした変動の極性を示したものであり、圧力が平均値よりも高いと曲線Cは−1の値をとり、圧力が平均値よりも低いと曲線Cは+1の値をとる。
【0041】
曲線Dは、曲線B,Cの積を示していて、回転数差の各変化の絶対値の測度である。
【0042】
曲線Eは、曲線Dの平均値を示していて、スリップSの測度である。
【0043】
スリップ量Sの検出のために別の方法、たとえばFFT法を講じることもできるということが自明である。さらに、バンドパスフィルタを用いることは有利であり、その結果、それぞれ関連する周波数範囲内でのみ評価されるか、もしくは平均値形成(曲線Dから曲線Eへの移行)は、ノイズまたはその他の影響要素を簡単に遮断して行うことができる。
【0044】
ロックイン原理により検出されたスリップ量は、それぞれ特性線を使用することで、たとえば図3により正規化されたスリップ量に変換することができ、正規化されたスリップ量として、巻掛け伝動装置の各トルク伝達確実性もしくはスリップを確実に示し、これによって圧力を、伝動装置のその時々のスリップもしくはトルク伝達確実性を最適に調整するために使用することができる。
【0045】
本発明は、多様に変更することができる。たとえば、図1のディスクセットの互いに対応している2つの圧力室を、同時に圧力変調して動かすことができる。しかしながら記載したように、有利には、出力側のディスクセットの比較的大きい圧力室内の圧力のみを変調する。その時々のトルク伝達確実性を検出するための圧力変調は、自動車の走行中に、スリップの軽度の変化を問題としない場合にそのつど行うことができる。スリップ量の検出は、車両乗員が感知できるような快適性損失と結び付いていない。なぜならば、車両乗員に感知可能な速度変化と、スリップ量の検出とは結び付いていないからである。回転数差の変化の代わりに、ディスク対偶の回転数比の差異の変化を、圧力変調に対する反応として評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】円錐形ディスク巻掛け伝動装置と所属の制御部材とを備えた自動車のパワートレーンの一部分の原理回路図である。
【図2】圧力変調と圧力変調に対する回転数差の反応とを示した図である。
【図3】正規化したスリップ量の検出を説明した特性線である。
【図4】ロックイン原理に基づくスリップ量の検出を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
4 内燃機関、 6 入力軸、 8,10 円錐形ディスク、 12,14 圧力室、 16 出力軸、 18,20 円錐形ディスク、 22,24 圧力室、 26 巻掛け手段、 28,30,32 ハイドロリック弁、 34 制御装置、 36 ブスライン、 38,40 回転数センサ、 42 分析・規定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法の場合、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、
圧力変調を、伝動装置の変速比調節周波数を超える周波数および予め規定された振幅によって行うことを特徴とする、円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法。
【請求項2】
巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、
圧力変調を、伝動装置の変速比調節周波数を超える周波数によって行い、圧力変調の振幅を検出し、スリップ量を振幅に関連して検出することを特徴とする、円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法。
【請求項3】
巻掛け手段を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための方法であって、当該方法では、少なくとも1つの円錐形ディスク対偶と巻掛け手段との間の圧着圧を変調し、スリップ量を、圧着圧の変調に対する円錐形ディスク対偶の回転数差の反応から検出する形式のものにおいて、
圧力変調を、伝達装置の変速比調節周波数を超える周波数によって行い、圧力変調の周波数を検出し、スリップ量を周波数に関連して検出することを特徴とする、円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための方法。
【請求項4】
駆動される円錐形ディスク対偶における有効な圧着圧を変調する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
円錐形ディスク対偶に設けられている有効な複数の圧力室において、有効な最大横断面をもって形成されている室内の有効な圧着圧を変調する、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
スリップ量をロックイン原理によって検出する、請求項1から3までのいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
スリップ量の検出を、少なくとも1回のバンドパスフィルタ処理によって行う、請求項1から4までのいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
スリップ量の、圧力変調の所定のパラメータとの関連を表す特性線によって検出されたスリップ量から、正規化されたスリップ量を検出する、請求項1から5までのいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
巻掛け手段(26)を介して摩擦係合している、円錐形ディスク巻掛け伝動装置の2つの円錐形ディスク対偶(SS1,SS2)の間のトルク伝達確実性を表すスリップ量を検出するための装置であって、
少なくとも1つの円錐形ディスク対偶によって巻掛け手段に加えられる圧着圧の変調を形成するための装置(28,34)と、
円錐形ディスク対偶の回転数を規定するための装置(38,44)と、
圧着圧変調の少なくとも1つのパラメータを検出するための装置(40)と、
円錐形ディスク対偶の回転数の比を検出し、スリップ量を規定するための分析・規定装置(42)とが内蔵されており、該分析・規定装置(42)が、請求項1から6までのいずれか一項記載の方法に応じて作動することを特徴とする、円錐形ディスク巻掛け伝動装置のトルク伝動確実性を表すスリップ量を検出するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−524516(P2008−524516A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545827(P2007−545827)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002110
【国際公開番号】WO2006/063547
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany
【Fターム(参考)】