説明

円順列変異による新規タンパク質変異体

本発明は、円順列変異によって新規なタンパク質変異体を得る方法、およびその方法によって得られた新規なタンパク質変異体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円順列変異(circular permutation)によって新規なタンパク質変異体を回収する方法、およびその方法によって回収された新規タンパク質変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の洗浄剤(washing agent)酵素の特性を最適化するために、通常、突然変異形成法が用いられており、そこでは、標的とする様式にてもしくは偶然により突然変異が創出される、または、アミノ酸が挿入または欠失により導入されるまたは除去される。
【0003】
従来の突然変異形成法に対する代替法は、いわゆる円順列変異法によって代表される。円順列変異法は、しばらくの間、おおむね既存の分野において報告されてきた。GrafおよびSchachmannは、例えば(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93、11591-11596)、円順列変異法を行うのに使用されている酵素および他のタンパク質の概観を提供している。
【0004】
円順列変異法において、遺伝子工学によって、突然変異したタンパク質のN末端およびC末端を再規定する。基本的な前提は、円順列変異法はN末端およびC末端が互いに近接して位置するタンパク質においてのみ行うことができ、その結果、円順列変異はタンパク質の構造を実質的に変化させないことである。
【0005】
順列変異法が行われたこれまでに知られる酵素およびタンパク質に共通するさらなる特徴は、そのタンパク質は直接活性型にて発現されることである。しかしながら、プレタンパク質(preprotein)、プロタンパク質(proprotein)またはプレプロタンパク質(preproprotein)のような不活性型にて発現され、発現後にのみ酵素的切断によって活性型へと変換される、タンパク質、特に酵素のグループも存在する。タンパク質の「プレ」部分は、発現されたタンパク質を正しい目標細胞コンパートメントへ導くことに関与するシグナルペプチドであり、一方、タンパク質の「プロ」部分は、適切な場所および時期に、標的位置における活性化によって活性型へ転換されるまで、タンパク質を不活性型に維持しておく。
【0006】
これまで、円順列変異法は、一方で、互いに近接して位置するN末端およびC末端を有し、他方で、成熟アミノ酸配列を有して、すなわちプレ、プロおよび/またはプレプロタンパク質を有さずに天然に発現されるタンパク質によってのみ成功裏に行うことができると考えられてきた。というのも、成熟タンパク質に関してプレ、プロおよび/またはプレプロペプチドの局在化は、正しいプロセシングおよび折り畳みにとって不可欠であると考えられていたためである。
【発明の概要】
【0007】
今回、驚くべきことに、そしてあらゆる予想に反して、プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現される、それらのタンパク質、特に酵素の関連においてでも、円順列変異法が成熟タンパク質のDNA上にて行われ、かつ対応するシグナルペプチド、プロペプチドおよび/またはプレプロペプチドについてのDNAが順列変異によって得られたDNAに付加される場合に、円順列変異法によって新規なタンパク質変異体が得られることが見出された。
【0008】
これは驚くべきことであった。なぜならば、一方で、その人工コンストラクトがシグナルペプチドによって標的細胞コンパートメントへ成功裏に導かれ、他方で、タンパク質の「間違った」部位へシグナルペプチドおよびプロペプチドが局在化してもタンパク質の折り畳みが成功裏に起こり、さらに、タンパク質の活性化も所望のとおりに起こり得ることは予期しなかったためである。
【0009】
特に、本発明によると、驚くべきことに、洗浄剤酵素に対する円順列変異法によって、初期の分子と比較して改善された特性を示す新規な洗浄剤酵素を発見できることが見出された。
【0010】
それ故に、本発明の第一の対象は、プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質、特に酵素、の成熟タンパク質の円順列変異体をコードするDNAを製造する方法であって、その成熟タンパク質をコードするDNAを円順列変異法に供する方法である。
【0011】
それ故に、本発明の対象はまた、以下から選択されるポリヌクレオチドである:
a)プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質、特に酵素、の成熟タンパク質の円順列変異体をコードするポリヌクレオチド、
b)(a)に記載のポリヌクレオチドに対して、少なくとも80、好ましくは少なくとも85または90%、特に好ましくは少なくとも95、98または99%の配列相同性および/または配列同一性を有する(a)に記載のポリヌクレオチドの突然変異体、ここで配列の比較においては、一実施態様では、架橋リンカーをコードするポリヌクレオチドなしの円順列変異ポリヌクレオチドを参照し、別の実施態様においては、架橋リンカーをコードするポリヌクレオチドを含む円順列変異ポリヌクレオチドを参照する、
c)(a)に記載のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列に対して、50、40または30まで、好ましくは25、20または15まで、特に好ましくは10、9、8、7または6まで、特に5、4、3または2ヌクレオチドまでの、置換、挿入、欠失または逆位を有する、特に正確に1ヌクレオチドの挿入または欠失を有する、(a)に記載のポリヌクレオチドの突然変異体、ここで配列の比較においては、一実施態様では、架橋リンカーをコードするポリヌクレオチドなしの円順列変異ポリヌクレオチドを参照し、別の実施態様では、架橋リンカーをコードするポリヌクレオチドを含む円順列変異ポリヌクレオチドを参照する、
d)(a)、(b)または(c)に記載のポリヌクレオチドを包含するポリヌクレオチド、
e)本発明による円順列変異体をコードするポリヌクレオチド、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)に記載のポリヌクレオチドに相補的な配列を含むポリヌクレオチド。
【0012】
本発明による好ましい実施態様において、本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85または90%、特に好ましくは少なくとも95、98または99%の配列相同性および/または配列同一性を有するポリペプチドから選択されるBLAPの円順列変異体、および/または、配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチド配列を有するポリペプチドに対して、30、25または20まで、好ましくは18、16、14または12まで、特に好ましくは10、9、8、7または6まで、特に5、4、3または2アミノ酸までの挿入、欠失または逆位を有するポリペプチド、特に正確に1アミノ酸の挿入または欠失を有するポリペプチドから選択されるBLAPの円順列変異体をコードする。
【0013】
それらのポリヌクレオチドは、個々の鎖または二本鎖として存在し得る。また、本発明の対象は、デオキシリボ核酸に加え、その相同体および相補的リボ核酸である。
【0014】
また、特に、本発明によるポリペプチドの発現を可能にするために、発現のための宿主生物の異なるコドン利用についても考慮に入れて、特定の領域が他の領域によって置換されているそれらのポリヌクレオチドも本発明の対象である。
【0015】
本発明のさらなる対象は、プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質、特に酵素、の成熟タンパク質の円順列変異体を製造する方法であって、以下の工程を包含する方法である:
a)成熟タンパク質のDNAを用いて円順列変異法を行う工程、
b)(a)に記載の方法によって得られたDNAを、適切なベクター中に、シグナルペプチドおよび/またはプレプロペプチドをコードするDNAに関して3'方向に組み込む工程、
c)そのベクターをDNAの発現のための適切な宿主へ導入する工程、および
d)妥当な場合、得られたタンパク質を精製する工程。
【0016】
それ故に、本発明のさらなる対象はまた、以下から選択されるポリペプチドである:
a)本発明による方法を用いて得られた円順列変異体、すなわち、プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質の成熟タンパク質の円順列変異体、
b)(a)に記載の円順列変異体の配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85または90%、特に好ましくは少なくとも95、98または99%の配列相同性および/または配列同一性を有する、(a)に記載の円順列変異体の変異体、ここで配列の比較において、一実施態様では、リンカーの配列なしの円順列変異体のポリペプチド配列を参照し、別の実施態様では、リンカーの配列を含む円順列変異体のポリペプチド配列を参照する、
c)リンカーの配列なしの(a)に記載のポリペプチドのポリペプチド配列に対して、30、25または20までの、好ましくは18、16、14または12までの、特に好ましくは10、9、8、7または6までの、特に5、4、3または2アミノ酸までの置換、挿入、欠失または逆位を有する、特に正確に1アミノ酸の挿入または欠失を有する、(a)に記載の円順列変異体の変異体、ここで配列の比較において、一実施態様では、リンカーの配列なしの円順列変異体のポリペプチド配列を参照し、別の実施態様では、リンカーの配列を含む円順列変異体のポリペプチド配列を参照する、
d)(a)、(b)または(c)に記載のタンパク質変異体を包含するポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図面は、実施例3による円順列変異体NHT04240353を用いた洗浄試験の結果を示す。図1は、血液/ミルク/インク、全卵/カーボンブラック、およびチョコレートミルク/カーボンブラックに対する洗浄実験の結果を示す。野生型(WT)、すなわちBLAPを用いた結果を、各実験において100%に設定している。
【図2】図面は、実施例3による円順列変異体NHT04240353を用いた洗浄試験の結果を示す。図2は、草汁、ミルク/油、ココア、および再度血液/ミルク/インクに対する洗浄実験の結果を示す。野生型(WT)、すなわちBLAPを用いた結果を、各実験において100%に設定している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「成熟タンパク質」は、本発明によると、シグナルペプチドおよびプロペプチドについては考慮せずにそのタンパク質と理解されたい。
【0019】
円順列変異は、他の突然変異形成法と同様に、タンパク質の様々な特性に対して、例えばタンパク質の安定性に対して、または(酵素の場合には)活性または選択性に対して作用を有し得るとおおむね想像され得る。
【0020】
驚くべきことに、本発明によって、特定の株に関する洗浄剤酵素の洗浄パフォーマンスは、円順列変異によって顕著に改善できることが見出された。
【0021】
それ故に、本発明による円順列変異体は、好ましくは、酵素、特に好ましくはプロテアーゼ、特にスブチリシン(subtilisin)タイプのアルカリプロテアーゼの円順列変異体である。
【0022】
スブチリシンタイプのアルカリプロテアーゼの例には、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のアルカリプロテアーゼ(BLAP)ならびにスブチリシンBPN'およびカールスバーグ(Carlsberg)、さらに、プロテアーゼPB92、スブチリシン147および309、スブチリシンDY、および、(厳密な意味ではもはやスブチリシン類ではなくスブチラーゼ(subtilase)と分類されるべきである)酵素類、テルミターゼ(thermitase)、プロテイナーゼK、およびプロテアーゼTW3およびTW7がある。スブチリシンカールスバーグは、Novozymes A/S(Bagsvaerd、Denmark)から商品名Alcalase(登録商標)にて、さらに開発された形態にて入手可能である。スブチリシン147および309はNovozymes社によってそれぞれ商品名Esperase(登録商標)およびSavinase(登録商標)で市販されている。BLAP(登録商標)の名称で市販されている変異体は、バチルス・レンツスDSM 5483に由来するプロテアーゼに由来し(国際公開第91/02792 A1号パンフレット)、国際公開第92/21760 A1号パンフレット、国際公開第95/23221 A1号パンフレット、国際公開第02/088340 A2号パンフレットおよび国際公開第03/038082 A2号パンフレットに記載されている。バチルス種の様々な株およびバチルス・ギブソニイ(B. gibsonii)に由来するさらなる有用なプロテアーゼが、特許出願の国際公開第03/054185号パンフレット、国際公開第03/056017号パンフレット、国際公開第03/055974号パンフレットおよび国際公開第03/054184号パンフレットから明らかである。
【0023】
他の有用なプロテアーゼには、例えば、Novozymes社から商品名Durazym(登録商標)、Relase(登録商標)、Everlase(登録商標)、Nafizym、Natalase(登録商標)、Kannase(登録商標)およびOvozymes(登録商標)にて、Genencor社から商品名Purafect(登録商標)、Purafect(登録商標) OxPおよびProperase(登録商標)にて、Advanced Biochemicals Ltd.(Thane、インド)から商品名Protosol(登録商標)にて、Wuxi Snyder Bioproducts Ltd.(中国)から商品名Wuxi(登録商標)にて、Amano Pharmaceuticals Ltd.(名古屋、日本)から商品名Proleather(登録商標)およびProtease P(登録商標)にて、および花王株式会社(東京、日本)からプロテイナーゼK-16の名称にて入手可能な酵素がある。
【0024】
これらの酵素の円順列変異体、ならびに好ましくは先に示した相同性および同一性の値を有するその相同体は、好ましくは本発明による対象である。
【0025】
円順列変異がなされたスブチリシンは、特に好ましくは、配列番号1に記載の初期配列を有するBLAPプロテアーゼの円順列変異体、配列番号2に記載の初期配列を有するBPN'プロテアーゼの円順列変異体、または配列番号3に記載の初期配列を有するスブチリシンカールスバーグの円順列変異体、およびそれらの相同体である。
【0026】
本発明による円順列変異体において、成熟初期酵素の元来の末端は、好ましくは、1〜40、特に好ましくは5〜30、特に10〜20アミノ酸長の任意のリンカーによって互いに連結している。好ましくは、円順列変異スブチリシンを製造するために、10〜20アミノ酸長を有するリンカー、特に好ましくは12〜16アミノ酸を有するリンカー、特に13、14または15アミノ酸を有するリンカー、特にリンカーGAATSGKLNGSTAG(配列番号4)を用いる。
【0027】
リンカーは原理的にはいずれの配列を有するオリゴペプチドまたはポリペプチドであってもよい。妥当な場合、初期タンパク質の元来の2つの末端を互いに連結するのに十分な可動性(flexibility)をリンカーが有するようにリンカーの配列を選択することに注意しなければならない。配列GAATSGKLNGSTAGを有する上述のリンカーは、例えば、BLAPプロテアーゼを架橋するのに適していた。しかしながら、原理的には、元来の末端を連結するために、他のいずれの望ましいリンカーも当然ながら用いることができる。リンカーは酵素の活性中心から遠く離れて位置しているので、リンカーの配列は酵素の機能にとって副次的に重要である。
【0028】
円順列変異体の新たな末端は、好ましくは、元来の末端から少なくとも10アミノ酸、特に好ましくは少なくとも20アミノ酸、特に少なくとも30、35または40アミノ酸離れて存在する。
【0029】
好ましい実施態様において、円順列変異体の新たな末端は、実際の三次構造の外側に、特に初期の酵素のループ構造の領域内に、すなわちタンパク質の複雑な折り畳みの外側に位置する領域内に位置し、代わりに架橋特性を示す。
【0030】
それ故に、この実施態様において、円順列変異BLAPプロテアーゼの末端は、初期の酵素のアミノ酸1-4、10-14、18-26、32-45、49-62、70-76、78-87、93-102、115-118、122-131、142-146、154-169、175-179、181-183、185-192、196-199、203-207、211-215、231-237、247-264または267-268間に位置する。
【0031】
それ故に、この実施態様において、円順列変異BPN'プロテアーゼの末端は、それに対応して、初期の酵素のアミノ酸1-7、10-14、19-26、32-46、50-64、95-104、117-120、124-133、145-148、156-175、181-185、187-189、191-198、202-205、209-213、217-220、237-243、252-270または273-275間に位置する。
【0032】
それ故に、この実施態様において、円順列変異スブチリシンカールスバーグの末端は、それに対応して、初期の酵素のアミノ酸1-7、9-13、19-26、32-46、50-64、72-89、95-104、116-121、124-134、145-148、156-175、181-185、187-189、191-198、202-205、209-213、217-220、237-243、250-270または274-275間に位置する。
【0033】
しかしながら、驚くべきことに、本発明によると、ループ構造内または初期の酵素の実際の三次構造の外側に位置する同様の領域内に新たな末端が局在化することは、酵素の機能性にとって必要ではなく、その新たな末端は、酵素の活性または安定性を妨害することなく、折り畳まれた初期のタンパク質の三次および/または四次構造の真ん中に位置することも可能であることが見出された。それ故に、この実施態様において、円順列変異タンパク質の末端はループ構造の領域内には位置しない。
【0034】
それ故に、この実施態様において、円順列変異BLAPプロテアーゼの末端は、初期の酵素のアミノ酸4-10、14-18、26-32、45-49、62-70、76-78、87-93、102-115、118-122、131-142、146-154、169-175、179-181、183-185、192-196、199-203、207-211、215- 231、237-247、264-267または268末端間に位置する。
【0035】
それ故に、この実施態様において、円順列変異BPN'プロテアーゼの末端は、それに対応して、初期の酵素のアミノ酸7-10、14-19、26-32、46-50、64-95、104-117、120-124、133-145、148-156、175-181、185-187、189-191、198-202、205-209、213-217、220-237、243-252、270-273または275末端間に位置する。
【0036】
それ故に、この実施態様において、円順列変異スブチリシンカールスバーグの末端は、それに対応して、初期の酵素のアミノ酸7-9、13-19、26-32、46-50、64-72、89-95、104-116、121-124、134-145、148-156、175-181、185-187、189-191、198-202、205-209、213-217、220-237、243-250、270-274または275末端間に位置する。
【0037】
本発明による特に好ましい一実施態様において、BLAPの円順列変異体は、配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85または90%、特に好ましくは少なくとも95、98または99%の配列相同性および/または配列同一性を有するポリペプチドから、および/または、配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチド配列を有するポリペプチドと比較して、30、25または20までの、好ましくは18、16、14または12までの、特に好ましくは10、9、8、7または6までの、特に5、4、3または2アミノ酸までの挿入、欠失または逆位を有する、特に正確に1アミノ酸の挿入または欠失を有するポリペプチドから選択される。
【0038】
相同性の評価基準は、例えばD.J. Lipman and W.R. Pearson in Science 227 (1985), pp. 1435-1441により示されている方法によって決定され得るような、同一性のパーセンテージである。この指標は完全タンパク質またはそれぞれ割り当てられるべき領域を参照することができる。さらに解釈される相同性の用語、「類似性(similarity)」はまた、保存的変異体、すなわち、同様の(similar)化学的活性を有するアミノ酸を考慮に入れる。なぜならそれらはタンパク質内において同様の化学的活性を通常発揮するからである。核酸については、同一性のパーセンテージだけが知られている。本発明によると、同一性または相同性についての基とされるべき指標は、問題となっている本発明による特定のポリペプチド(またはポリヌクレオチド)の完全配列、または問題となっている本発明によるポリペプチド領域(またはポリヌクレオチド領域)の完全配列であり、単に、本発明によるポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または本発明によるポリペプチド領域(またはポリヌクレオチド領域)と、比較タンパク質(または比較ヌクレオチド)との間でそれぞれオーバーラップしている領域ではない。相同性および同一性に関する指標がリンカーペプチドを除く本発明によるポリペプチドを参照する場合は、リンカーによって架橋されているそのポリペプチド配列を1つの連続配列とみなすべきである。同様に、このことは本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に類推的に適用される。
【0039】
本発明のさらなる対象は、本発明によるポリヌクレオチドを含有するベクター、特にクローニングベクターおよび発現ベクター、ならびに本発明によるポリヌクレオチド、ベクターおよび/またはポリペプチドを含有する細胞、特に宿主細胞である。
【0040】
好ましい実施態様において、それらの細胞は、グラム陰性細菌から、特に大腸菌(Escherichia coli)またはクレブシエラ属(Klebsiella)の種のものから、特に大腸菌K12、大腸菌Bまたはクレブシエラ・プランチコラ(Klebsiella planticola)の株から、とりわけ大腸菌BL21(DE3)、大腸菌RV308、大腸菌DH5α、大腸菌JM 109、大腸菌XL-1またはクレブシエラ・プランチコラ(Rf)の株の誘導体から選択される。
【0041】
さらなる好ましい実施態様において、それらの細胞は、グラム陽性細菌から、特にバチルス属(Bacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)またはコリネバクテリウム属(Corynebacteria)のものから、とりわけバチルス・レンツス、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、バチルス・グロビギイ(B. globigii)、バチルス・ギブソニイ、バチルス・プミルス(B. pumilus)またはバチルス・アルカロフィルス(B. alcalophilus)、スタフィロコッカス・カルノスス(Staphylococcus carnosus)またはコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)の種から選択される。
【0042】
本発明によるポリペプチドを含有する作用剤(agent)
本発明のさらなる対象は、本発明による上述のポリペプチドを含有する作用剤によって表される。
【0043】
本発明による上記のタンパク質を加えることによりユーザビリティーが改善する、あらゆる種類の作用剤、特に混合物、製剤、溶液などが、これをもって本発明の保護の範囲に含まれる。これらは、適用する領域に応じて、例えば固体混合物、例えば凍結乾燥された、またはカプセル化されたタンパク質を有する粉末、またはゲル化したまたは液体の作用剤であり得る。好ましい製剤は、例えば、緩衝物質、安定剤、反応パートナー、および/またはプロテアーゼの補助因子、および/またはプロテアーゼと協力して作用する他の成分を含有する。それらのうち特に理解されたいのは、以降に記載の適用領域のための作用剤である。さらなる適用領域は、既存の分野から明らかである。
【0044】
この文脈における可能性ある適用領域は、特に、織物製造において原材料または中間産物を回復させるまたは処理するための利用、特に布地上の、特にウールまたは絹上の保護層の除去のための利用、ならびに天然繊維、特にウールまたは絹を含有する織物のケアにおける利用である。
【0045】
これに対応して、本発明の対象はまた、織物原材料を処理する方法および織物をケアする方法であって、本発明によるポリペプチドを少なくとも1つの工程において用いる方法である。それらのうちで好ましいものは、織物原材料、繊維、または天然構成物を有する織物のための方法、特にウールまたは絹を有するもののための方法である。これらは、例えば、織物に加工するために、例えば抗フェルト化最終加工(anti-felting finishing)のために材料を調製する方法;または、例えば、以前に使い古された織物のクリーニングにケアを提供する成分を補う方法であり得る。
【0046】
さらなる可能性有る適用領域は、例えば:
−生化学的分析または低分子量化合物またはタンパク質の合成のための利用;とりわけ好ましいものはペプチド配列分析の関連において末端基を決定するための利用である;
−天然物質または生物学的に有用な物質の調製、精製または合成のための利用;
−天然の原材料の処理のための利用、特に表面の処理のための利用、とりわけ皮革を処理するための方法、特に皮革を除毛するための方法における利用;
−写真用フィルムの処理のための、特にゼラチンを含有する保護層または同様の保護層を除去するための利用;および
−食物または動物の餌を製造するための、特に豆乳および/または豆乳産物の酵素処理のための利用。
【0047】
前述の本発明によるポリペプチドの使用であって、その使用が適切であることが判明するあらゆるさらなる技術分野における使用は、原則として本出願の保護の範囲に組み込まれる。
【0048】
本発明によるさらなる利用可能性は、化粧料における本発明によるポリペプチドの使用である。それらのうち特に理解されたいのは、ヒトの皮膚またはヒトの毛髪のためのあらゆるタイプのクリーニング剤およびケア提供剤、特にクリーニング剤である。意図する適用に応じて、その作用剤は医薬的作用剤でもあり得る。
【0049】
シャンプー、石けん、洗浄ローション、クリーム、ピール、ならびに口腔、歯科または歯科補綴のケア提供剤は、本発明による化粧品的および/または医薬的作用剤の例として挙げられ得る。これらの作用剤はまた、特に、例えば、洗浄剤およびクリーニング剤(cleaning agent)について以下に挙げられるものなどの構成成分を含有し得る。
【0050】
本発明による特に好ましい対象は、本発明によるポリペプチドを含有する洗浄剤およびクリーニング剤によって表される。これは、本出願の例示的実施態様に示されているように、驚くべきことに、本発明による好ましいプロテアーゼを有する洗浄剤およびクリーニング剤において、従来の様式において用いられるプロテアーゼを有する作用剤と比較して洗浄パフォーマンスの増大を確かめることができたためである。
【0051】
洗浄剤またはクリーニング剤のそれぞれ「洗浄パフォーマンス」または「クリーニングパフォーマンス」は、本出願の目的のために、問題の作用剤が、汚れた物体、例えば織物または硬い表面を有する物体に対して発揮する効果と理解されたい。かかる作用剤の個々の成分は、特に本発明による酵素は、それぞれ、完全な洗浄剤またはクリーニング剤の洗浄またはクリーニングパフォーマンスに対するそれらの貢献によって評価される。この関連において、酵素の酵素的特性から、作用剤の洗浄パフォーマンスに対するその貢献に関して即座には結論できないという事実に特に配慮を払わなければならない。反対に、酵素活性に加え、特に安定性、基質結合、クリーニングされる物質への結合、または洗浄剤またはクリーニング剤の他の成分との相互作用などの因子も、特に染みの除去の関連における可能性有る相乗効果を含め、ここで役割を果たす。
【0052】
それ故に、本発明のさらなる対象は、本発明によるポリペプチドを含有する洗浄剤およびクリーニング剤、特に界面活性剤および/または漂白剤を含有するものである。
【0053】
本発明による洗浄剤およびクリーニング剤は、洗浄機器において、または手作業による洗浄(laundering)またはクリーニングにおいて、商業規模にて用いるための、濃縮物および希釈せずに適用すべき作用剤の両方の、考え得るあらゆるタイプのクリーニング剤、を包含し得る。それらには、本発明による「洗浄剤」の語が用いられる、例えば、織物、カーペット、または天然繊維のための洗浄剤が含まれる。それらにはまた、例えば、自動食器洗い機のための食器洗浄剤、または手作業による食器洗浄剤、または固い表面、例えば、金属、ガラス、磁器、セラミック、タイル、石、塗面、プラスチック、木材、または皮革のためのクリーナーが含まれる;「クリーニング剤」なる用語は、本発明によるこれらの作用剤について用いられる。本発明の目的のための洗浄剤およびクリーニング剤とみなされるべきさらなるものは、滅菌剤および殺菌(disinfecting)剤である。
【0054】
本発明の実施態様は、本発明による洗浄剤またはクリーニング剤の、適切なおよび/または既存の分野によって確立された、あらゆる投与形態を包含する。それらには、例えば、固体の、粉末化された、液体の、ゲル化された、または糊のような作用剤が含まれ、それらはまた、必要に応じて圧縮されたまたは圧縮されていない複数の相から構成されていてもよく;それらにはまた、大きな容器および一部ずつの両方でパッケージされた、例えば、押し出し成型物(extrudate)、顆粒、錠剤、または小袋(pouch)が含まれる。
【0055】
本発明によるポリペプチドに加え、本発明による洗浄剤またはクリーニング剤は、必要に応じて、さらなる成分、例えば、さらなる酵素、酵素安定剤、界面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、および/または両性界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、ビルダー、溶媒、増粘剤、捕捉剤(sequestering agent)、電解質、光学的光沢剤(optical brightener)、抗灰色化剤(anti-gray agent)、銀腐食阻害剤、色移り阻害剤、発泡防止剤、研磨剤物質(abrasive substance)、染料(dye)、芳香剤(scent)、抗菌活性物質、UV吸収体、いわゆる防汚物質または撥汚剤(soil repellent)、および適用可能なさらなる通常の成分を含有してもよい。本発明により使用可能な上述の群の成分に関して、特にドイツ出願公開第10 2007 049 830.8号明細書を参照されたい。
【0056】
界面活性剤は、本発明によるクリーニング剤または洗浄剤中に、好ましくは完成した作用剤に基づいて、総量5〜50重量%、特に好ましくは8〜30重量%にて、含有される;好ましい実施態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0057】
洗浄剤またはクリーニング剤の漂白剤成分は、有利には漂白剤として利用されている、1〜40重量%、特に10〜20重量%の過ホウ酸塩一水和物または過炭酸塩であり得る。
【0058】
ビルダー物質は、本発明による洗浄剤またはクリーニング剤中に、妥当な場合、90重量%までの量にて含有され得る。それらは好ましくは75重量%までの量にて含有される。
【0059】
増粘剤は、本発明による作用剤中に、好ましくは完成した組成物に基づいて5重量%まで、特に0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1.5重量%の量にて含有される。
【0060】
洗浄およびクリーニングパフォーマンスを増大させるために、本発明による作用剤は、本発明によるポリペプチドに加えて、さらなる酵素、原理的に使用可能なこれらの目的のための既存の分野において確立されたあらゆる酵素を含有し得る。これらは、特に、さらなるプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼまたはオキシドレダクターゼ、ならびに好ましくはそれらの混合物を含む。これらの酵素はおおむね天然起源である;天然分子に基づく改善された変異体は、洗浄剤およびクリーニング剤用途に利用可能であり、したがって使用するのが好ましい。本発明による作用剤は、これらのさらなる酵素を、活性タンパク質に基づいて好ましくは1×10-6〜5重量パーセントの総量にて含有する。
【0061】
さらなるプロテアーゼのうち好ましいものは、先にすでに記載したスブチリシンタイプの酵素の天然型、ならびに先にすでに記載したさらなる洗浄剤プロテアーゼである。
【0062】
それらの例にはすでに先に挙げた酵素がある:バチルス・レンツス由来のアルカリ性プロテアーゼ、スブチリシンBPN'およびカールスバーグ、プロテアーゼPB92、スブチリシン147および309、スブチリシンDYおよび酵素(ただし、より狭義の意味においてもはやスブチリシンではなくスブチラーゼと分類されるべきである)、テルミターゼ、プロテイナーゼK、およびプロテアーゼTW3およびTW7。スブチリシンカールスバーグは、Novozymes A/S(Bagsvaerd、デンマーク)から商品名Alcalase(登録商標)としてさらに開発された形態にて入手可能である。スブチリシン147および309は、Novozymes社によってそれぞれEsperase(登録商標)およびSavinase(登録商標)の商品名として市販されている。BLAP(登録商標)の名称にて市販されている変異体は、バチルス・レンツスDSM 5483由来のプロテアーゼに由来し(国際公開第91/02792 A1号パンフレット)、特に国際公開第92/21760 A1号パンフレット、国際公開第95/23221 A1号パンフレット、国際公開第02/088340 A2号パンフレットおよび国際公開第03/038082 A2号パンフレットに記載されている。バチルス種およびバチルス・ギブソニイの様々な株由来のさらなる利用可能なプロテアーゼは、国際公開第03/054185号パンフレット、国際公開第03/056017号パンフレット、国際公開第03/055974号パンフレットおよび国際公開第03/054184号パンフレットから明らかである。
【0063】
他の利用可能なプロテアーゼには、例えば、Novozymes社から商品名Durazym(登録商標)、Relase(登録商標)、Everlase(登録商標)、Nafizym、Natalase(登録商標)、Kannase(登録商標)およびOvozymes(登録商標)として、Genencor社から商品名Purafect(登録商標)、Purafect(登録商標) OxPおよびProperase(登録商標)として、Advanced Biochemicals Ltd.(Thane、インド)から商品名Protosol(登録商標)として、Wuxi Snyder Bioproducts Ltd.(中国)から商品名Wuxi(登録商標)として、Amano Pharmaceuticals Ltd.(名古屋、日本)から商品名Proleather(登録商標)およびProtease P(登録商標)として、および花王(東京、日本)からProteinase K-16の名称にて、入手可能な酵素がある。
【0064】
本発明により利用可能なアミラーゼの例には、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリケファシエンスまたはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のα-アミラーゼ、および洗浄剤およびクリーニング剤において用いるために改善されたそれらのさらなる開発品がある。バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformus)由来の酵素は、Novozymes社から商品名Termamyl(登録商標)として、およびGenencor社から商品名Purastar(登録商標) STとして入手可能である。これらのα-アミラーゼのさらに開発された製品は、Novozymes社から商品名Duramyl(登録商標)およびTermamyl(登録商標) ultraとして、Gen9encor社からPurastar(登録商標) OxAmの名称にて、およびDaiwa Seiko Inc.(東京、日本)からKeistase(登録商標)として入手可能である。バチルス・アミロリケファシエンス由来のα-アミラーゼは、Novozymes社によってBAN(登録商標)の名称にて市販されており、バチルス・ステアロテルモフィルス由来のα-アミラーゼの派生変異体は、Novozymes社によってBSG(登録商標)およびNovamyl(登録商標)の名称にて市販されている。さらなる利用可能な市販品は、例えば、Amylase-LT(登録商標)およびStainzyme(登録商標)であり、後者はNovozymes社製である。
【0065】
本目的のために強調すべきものにはまた、国際公開第02/10356 A2号パンフレットに開示されているバチルス種A 7-7(DSM 12368)由来のα-アミラーゼ、および国際公開第02/44350 A2号パンフレットに記載されているバチルス・アガラドヘレンス(B. agaradherens)(DSM 9948)由来のシクロデキストリン-グルカノトランスフェラーゼ(CGTase)がある。α-アミラーゼの配列空間に属し、国際公開第03/002711 A2号パンフレットに規定されているアミロース分解性の酵素、および国際公開第03/054177 A2号パンフレットに記載されているものも利用可能である。上記の分子の融合産物も同様に利用可能であり、例えば、ドイツ出願公開第10138753 A1号明細書に記載のものがある。
【0066】
Novozymes社からFungamyl(登録商標)の商品名として入手可能であるアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)由来のα-アミラーゼのさらなる開発品も適している。さらなる市販品は、例えば、Amylase-LT(登録商標)である。
【0067】
本発明による作用剤は、特にそれらのトリグリセリド切断活性のためだけでなく、インサイチュにて適切な前駆体から過酸を作製するために、リパーゼまたはクチナーゼを含有し得る。これらには、例えば、もともとはフミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)(テルモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus))から入手可能であるリパーゼ、またはさらに開発されたリパーゼ、特にD96Lアミノ酸交換を有するものが含まれる。それらは、例えば、Novozymes社によって商品名Lipolase(登録商標)、Lipolase(登録商標) Ultra、LipoPrime(登録商標)、Lipozyme(登録商標)およびLipex(登録商標)として市販されている。例えば、さらに、もともとはフサリウム・ソラニ・プシ(Fusarium solani pisi)およびフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)から単離されたクチナーゼが利用可能である。さらなる利用可能なリパーゼは、Amano社からLipase CE(登録商標)、Lipase P(登録商標)、Lipase B(登録商標)またはLipase CES(登録商標)、Lipase AKG(登録商標)、Bacillis sp. Lipase(登録商標)、Lipase AP(登録商標)、Lipase M-AP(登録商標)およびLipase AML(登録商標)の名称にて入手可能である。開始酵素がもともとはシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)およびフサリウム・ソラニイ(Fusarium solanii)から単離された、リパーゼおよびクチナーゼ、例えばGenencor社からのものが利用可能である。さらなる重要な市販品として記載すべきものには、もともとはGist-Brocades社によって市販されている調製物M1 Lipase(登録商標)およびLipomax(登録商標)、およびMeito Sangyo KK(日本)によってLipase MY-30(登録商標)、Lipase OF(登録商標)およびLipase PL(登録商標)の名称にて市販されている酵素、ならびにGenencor社の製品Lumafast(登録商標)がある。
【0068】
本発明による作用剤は、特に織物の処理を対象とする場合は、純粋な酵素として、酵素調製物として、または混合物の形態としての目的に応じて、セルラーゼを含有し得、その混合物中では個々の成分はそれらの様々なパフォーマンスの側面によって互いに有利に捕捉し合う。これらのパフォーマンスの側面には、特に、第一の洗浄パフォーマンスに対する貢献、作用剤の第二の洗浄パフォーマンス(抗再析効果または灰色化阻害)、および増白(avivage)(織物の効果)、またはさらに「ストーン・ウォッシュ」効果の発揮も含まれる。
【0069】
エンドグルカナーゼ(EG)リッチな、真菌に基づく使用可能なセルラーゼ調製物およびそのさらなる開発物は、Novozymes社によって商品名Celluzyme(登録商標)として提供されている。同様にNovozymes社から入手可能な製品Endolase(登録商標)およびCarezyme(登録商標)はそれぞれ、フミコラ・インソレンスDSM 1800由来の50 kD EGおよび43 kD EGに基づいている。同社のさらなる使用可能な商品は、Cellusoft(登録商標)およびRenozyme(登録商標)である。後者は国際公開第96/29397 A1号パンフレットに基づいている。改善されたパフォーマンスのセルラーゼ変異体が、例えば、国際公開第98/12307 A1号パンフレットに記載されている。国際公開第97/14804 A1号パンフレットに記載されているセルラーゼも使用可能であり、例えばそこに開示されているメラノカルプス(Melanocarpus)由来の20 kD EGはAB Enzymes社(フィンランド)から商品名Ecostone(登録商標)およびBiotouch(登録商標)として入手可能である。AB Enzymes社の他の商品は、Econase(登録商標)およびEcopulp(登録商標)である。バチルス種CBS 670.93およびCBS 669.93由来の他の適切なセルラーゼが国際公開第96/34092 A2号パンフレットに開示されており、バチルス種CBS 670.93由来のものは、Genencor社から商品名Puradax(登録商標)として入手可能である。Genencor社の他の商品は、「Genencor detergent cellulase L」およびIndiAge(登録商標) Neutraである。
【0070】
特に明白な問題である染みを除去するために、本発明による作用剤は、本発明によるポリペプチドとともに、「ヘミセルラーゼ」なる語に分類されるさらなる酵素を含有し得る。これらには、例えば、マンナナーゼ、キサンタンリアーゼ、ペクチンリアーゼ(=ペクチナーゼ)、ペクチンエステラーゼ、ペクチン酸リアーゼ、キシログルカナーゼ(=キシラナーゼ)、プルラナーゼ、およびβ-グルカナーゼなどがある。適切なマンナナーゼは、例えば、Novozymes社からGamanase(登録商標)およびPektinex AR(登録商標)の名称にて、AB Enzymes社からRohapec(登録商標) B1Lの名称にて、Diversa Corp.(San Diego、CA、USA)からPyrolase(登録商標)の名称にて入手可能である。バチルス・アルカロフィルス由来の適切なβ-グルカナーゼが、例えば国際公開第99/06573 A1号パンフレットに明記されている。バチルス・スブチリスから回収されたβ-グルカナーゼがNovozymes社からCereflo(登録商標)の名称にて入手可能である。
【0071】
漂白効果を増強するために、本発明による洗浄剤およびクリーニング剤は、オキシドレダクターゼ、例えばオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、ハロ-、クロロ-、ブロモ-、リグニン、グルコースもしくはマンガンペルオキシダーゼ、ジオキシゲナーゼ、またはラッカーゼ(フェノールオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ)を含有し得る。名称を挙げられ得る適切な商品はNovozymes社のDenilite(登録商標)1および2である。有利には、関連するオキシドレダクターゼの活性を増強するために(エンハンサー)、または、酸化酵素と染みの間の酸化還元電位に大きな差異が有る場合に、電子の流れを保証するために(メディエーター)、酵素と相互作用する、好ましくは有機化合物、特に好ましくは芳香族化合物をさらに加える。
【0072】
本発明によるポリペプチドならびに付加的に用いられる酵素は、既存の分野によって確立されたいずれかの形態における本発明による作用剤に加えることができる。それらには、例えば、顆粒化、押し出しもしくは凍結乾燥によって得られた固体調製物、または、特に液体またはゲル化剤の場合には、有利には可能な限り濃縮した、水の少ないおよび/または安定剤が加えられた酵素の溶液が含まれる。
【0073】
あるいは、これらのタンパク質は、固体および液体の両方の投与形態のために、例えば酵素溶液を好ましくは天然のポリマーとともに噴霧乾燥するまたは押し出すことによって、またはカプセル、例えば凝固したゲルなどの中に酵素が封入されているカプセルの形態にて、または酵素を含有するコアが水、空気および/または化学物質に不浸透性の保護層によって覆われているコア-シェルタイプのものの中に、カプセル化することができる。さらなる活性物質、例えば安定剤、乳化剤、顔料(pigment)、漂白剤、または染料を、重ね合わせた層にさらに適用することができる。かかるカプセルは、既知の方法にしたがって、例えば振動による(vibratory)顆粒化または回転による(rolling)顆粒化によって、または流動床(fluidized bed)処理にて、適用される。かかる顆粒は有利には、例えばポリマーフィルム形成剤の適用の結果として、粉塵が少なく、またそのコーティングために保存において安定である。
【0074】
さらに、単一の顆粒がいくつかの酵素活性を示すように、2以上の酵素、例えば本発明によるポリペプチドとさらなる酵素をともにパッケージすることも可能である。
【0075】
本発明による作用剤に含有されるタンパク質、特に本発明によるポリペプチドなどは、特に保存期間中、例えば、物理的影響、酸化またはタンパク質分解的切断などから生じる不活性化、変性または分解などのダメージから保護することができる。タンパク質分解の阻害は、タンパク質および/または酵素の微生物的回収の関連において、特に作用剤がプロテアーゼも含有する場合に、特に好ましい。好ましい本発明による作用剤はこの目的のための安定剤を含有し得る。
【0076】
可逆性プロテアーゼ阻害剤は安定剤の1グループである。ベンズアミジン塩酸塩、ホウ砂、ホウ酸、ボロン酸またはそれらの塩もしくはエステル、とりわけ主に芳香族基を有する誘導体、例えばオルト-、メタ-もしくはパラ-置換フェニルボロン酸、特に4-ホルミルフェニルボロン酸、または前述の化合物のそれぞれの塩もしくはエステルは、しばしばこの目的に用いられる。ペプチドアルデヒド、すなわち還元されたC-末端を有するオリゴペプチド、特に2〜50モノマーから構成されるものも、この目的に用いられる。とりわけ、オボムコイドおよびロイペプチンは、ペプチドタイプの可逆性プロテアーゼ阻害剤に含まれる。プロテアーゼスブチリシンに特異的な可逆性ペプチド阻害剤、ならびにプロテアーゼと特異的プロテアーゼ阻害剤の融合タンパク質もこの目的に適する。
【0077】
さらなる酵素安定剤には、アミノアルコール、例えば、モノ-、ジ-、トリエタノール-およびプロパノールアミンおよびそれらの混合物、C12までの脂肪族カルボン酸、例えば、コハク酸、他のジカルボン酸、または前述の酸の塩などがある。末端がキャップされた脂肪酸アミドアルコキシレートもこの目的に適している。ビルダーとして用いられる有機酸もさらに、国際公開第97/18287号パンフレットに開示されているように、含有されている酵素を安定化することができる。
【0078】
低級脂肪族アルコール、ただし主にポリオール、例えばグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはソルビトールは、しばしば用いられる他の酵素安定剤である。ジグリセロールリン酸塩も物理的影響による変性に対して保護を行う。カルシウムおよび/またはマグネシウムの塩、例えば酢酸カルシウムまたはギ酸カルシウムも同様に用いられる。
【0079】
ポリアミドオリゴマーまたはポリマー化合物、例えば、リグニン、水溶性ビニルコポリマーまたはセルロースエーテル、アクリルポリマーおよび/またはポリアミドは、とりわけ物理的影響またはpHの変動に関して、酵素調製物を安定化する。ポリアミン-N-オキシド含有ポリマーは酵素安定剤および色移り阻害剤として同時に作用する。他のポリマー安定剤には直鎖C8〜C18ポリオキシアルキレンがある。アルキルポリグリコシドも本発明による作用剤の酵素学的成分を安定化することができ、好ましくはさらにそのパフォーマンスを増大させることができる。架橋窒素含有化合物は、好ましくは防汚剤および酵素安定剤としての二重の機能を行う。疎水性非イオン性ポリマーは、特に、含有され得るセルラーゼを安定化する。
【0080】
還元剤および抗酸化剤は、酸化的分解に対する酵素の安定性を強める;例えば、硫黄含有還元剤はこの目的のために一般的である。他の例には、亜硫酸ナトリウムおよび還元糖がある。
【0081】
特に、例えばポリオール、ホウ酸および/またはホウ砂から構成される安定剤の組合せ、ホウ酸またはホウ酸塩、還元塩およびコハク酸または他のジカルボン酸の組合せ、あるいはホウ酸またはホウ酸塩とポリオールまたはポリアミノ化合物との、および還元塩との組合せを用いるのが好ましい。ペプチドアルデヒド安定剤の効果は、ホウ酸および/またはホウ酸誘導体およびポリオールとの組合せによって、およびさらには、例えばカルシウムイオンなどの二価のカチオンのさらなる作用によって、都合良く増強される。
【0082】
本発明による作用剤はすべての考えられる形態にて提供され得るので、それぞれの作用剤に加えるのに適切な、あらゆる剤形の本発明によるポリペプチドは、本発明のそれぞれの実施態様を表す。これらには、例えば、液体製剤、固体顆粒またはカプセルが含まれる。
【0083】
カプセル化形態は、酵素または他の成分を、例えば漂白剤などの他の構成要素から保護するために、または制御放出を可能にするために、良い選択である。これらのカプセルのサイズに応じて、ミリ、マイクロおよびナノカプセルに分類され、酵素についてはマイクロカプセルが特に好ましい。かかるカプセルは、例えば、国際公開第97/24177号パンフレットおよびドイツ出願公開第19918267号明細書に開示されている。可能なカプセル化方法の1つは、タンパク質溶液とでんぷんまたはでんぷん誘導体の溶液または懸濁液との混合物から出発して、その物質においてタンパク質をカプセル化することを含む。この種のカプセル化方法は国際公開第01/38471号パンフレットに記載されている。
【0084】
固体作用剤の場合には、タンパク質(本発明によるポリペプチドならびに必要に応じて含有され得るさらなる酵素)を、例えば乾燥形態、顆粒化形態および/またはカプセル化形態にて用いることができる。それらは、別個に、すなわち独立した相として、または同じ相の中に他の構成要素とともに、圧縮(compact)してまたは圧縮せずに、加えることができる。マイクロカプセル化した酵素を固体形態に加工すべき場合、既存の分野からの既知の方法、例えば、噴霧乾燥、遠心分離または再可溶化を用いて調製物からの水溶液から水を除去することができる。この様式にて得られる粒子は通常50〜200μmの粒子サイズを有する。
【0085】
既存の分野に従って行ったタンパク質の回収および調製過程から得られたタンパク質は、濃縮された水性または非水性溶液、懸濁液またはエマルジョン、ならびにゲル形態またはカプセル化形態にて、または乾燥粉末として、本発明による液体、ゲル化または糊のような作用剤に加えることができる。本発明によるこの種の洗浄剤またはクリーニング剤は、導入可能な塊または溶液としての成分を自動ミキサー中に単純に混合することによって通常作製される。
【0086】
本発明によるクリーニング剤、特に固い表面のための本発明によるクリーナーは、通常1〜80重量%、好ましくは1.5〜30重量%、特に2〜10重量%、特に好ましくは2.5〜8重量%、非常に好ましくは3〜6重量%の量にて、1以上の噴霧剤(Propellant)(INCI命名法による)を含有し得る。
【0087】
本発明の本発明による特定の実施態様は、洗浄剤またはクリーニング剤の成分を活性化する、不活性化するまたは放出するための本発明によるポリペプチドの使用によって表される。
【0088】
本発明の特定の対象は、本発明によるポリペプチドが少なくとも1工程において用いられる、織物または固い表面をクリーニングするための方法によってさらに表される。
【0089】
それらには、手作業の方法および自動的な方法の両方が含まれ、自動的な方法は、例えば用いられる量および接触時間に関して可制御性がより正確であるため、好ましい。
【0090】
本発明のさらなる対象は、織物または固い表面のクリーニングのための、本発明によるアルカリプロテアーゼの使用によって表される。
【0091】
本発明のさらなる対象はまた、本発明による組成物または本発明による洗浄剤もしくはクリーニング剤、特に固い表面のための本発明によるクリーナー、およびスプレーディスペンサーを含む製造品である。本製造品は、この関連において、単一チャンバーの容器および複数チャンバーの容器、特に2チャンバーの容器の両方であり得る。この関連において、スプレーディスペンサーは好ましくは手動により動作するスプレーディスペンサーであり、エアロゾルスプレーディスペンサー(加圧ガス容器、とりわけスプレー缶とも称する)、それ自体が圧力を増大させるスプレーディスペンサー、ポンプスプレーディスペンサー、および引き金式スプレーディスペンサー、特に透明なポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート製の容器を有するポンプスプレーディスペンサーおよび引き金式スプレーディスペンサーを包含する群から特に選択される。スプレーディスペンサーは、国際公開第96/04940号パンフレット(ProcterおよびGamble)およびスプレーディスペンサーに関してそこに引用されている米国特許明細書により網羅的に記載されており、それらの特許明細書の全体をこの関連において参照し、これによりその内容は本出願に組み込まれる。引き金式スプレーディスペンサーおよびポンプ噴霧器(atomizer)は、加圧ガス容器と比較して、噴霧剤を用いる必要がなく、利点を有する。この実施態様におけるスプレーディスペンサー上の適切な粒子処理能のある付属物、ノズルなど(いわゆる「ノズル弁」)により、含有され得る酵素はまた必要に応じて、粒子上に固定化され、よってクリーニングの泡として計ることができる形態にて作用剤に加えることができる。
【0092】
以下の実施例にて本発明をさらに説明するが、本発明をこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0093】
実施例
実施例1:円順列変異を施す
成熟プロテアーゼについての遺伝子の両側に可変リンカー(Pリンカー;1〜40アミノ酸長)についてのDNAのフラグメントを隣接させ、それにより得られたコンストラクトをプラスミドにクローニングする(はじめのプラスミド)。Pリンカーをコードする2つのDNAフラグメントの、5'方向においては5'末端側面、および3'方向においては3'末端側面に位置するのは、制限酵素の結合面であり、制限消化の後に、互いに適合したオーバーハングを形成する。よって、成熟タンパク質の遺伝子に隣接し、Pリンカーをコードするその2つのDNAフラグメントは、制限消化の後に互いにライゲートすることができ、よってまた互いに成熟タンパク質のC末端およびN末端をコードする核酸に連結することができる。この目的のために、制限消化によって得られたコンストラクトをリガーゼを用いて環状に閉じる。Pリンカーの長さはネイティブなタンパク質におけるC末端とN末端の間の距離に及ぶように選択する。
【0094】
C末端およびN末端をコードするDNAのライゲーションの後、ついで環を無作為な位置にて酵素学的に開き、こうして新たなC末端およびN末端を有する成熟プロテアーゼをコードする核酸を産生する。ついで、可能な程度の特性を有する活性プロテアーゼをコードする、円順列変異によって得られたそれらの核酸を、適切な宿主中のスクリーニングプラスミドを用いるスクリーニング方法によって同定することができる。
【0095】
プロテアーゼのプレプロペプチドをコードする核酸の3'末端に、妥当な場合、可変リンカー(Lリンカー;0〜40アミノ酸長)をコードする核酸を設置し、スクリーニングされるべきコンストラクトの発現のためのプロモーターを含有するプラスミド(スクリーニングプラスミド)にクローニングし、必要に応じて耐性遺伝子を設置する。プレプロペプチドをコードする核酸から3'方向に、または、存在するならば、Lリンカーをコードし、プレプロペプチドをコードする核酸に隣接する核酸から3'方向に、1以上の制限酵素結合面が位置し、平滑末端クローニングによって、上記の方法によって得られた円順列突然変異体の組み込み、および後のそれらの発現が可能となる。
【0096】
Lリンカーの長さは、成熟プロテアーゼの新たなC末端と、プレプロタンパク質の正確なプロセシングに要求される、その新たなC末端に対するプレプロペプチドの位置との間の距離に依拠する。本発明によって、驚くべきことに、プレプロペプチドの位置が修飾されたにもかかわらず、プレプロタンパク質のプロセシングは一般に成功裏に進行するので、Lリンカーは一般に含めなくてもよいことが明らかになった。
【0097】
以下に概説として個々の工程をあらためて記載する。
【0098】
工程:
1. プラスミド制限
はじめのプラスミドを、対応する酵素によって、その酵素の製造者の指示に従って消化し、Pリンカーフラグメントをコードする核酸が隣接している、成熟タンパク質をコードする遺伝子を得る。
【0099】
2. アガロースゲル電気泳動およびゲル溶出
その消化物をアガロースゲルにおいて分離し、ついで所望のバンドを切り出す。キットを用いて、販売者のプロトコールに従ってゲル溶出を行う。
【0100】
3. T4リガーゼを用いるDNA環状化
1〜5.5 ng/μLのDNA濃縮物を用いてリガーゼ緩衝液においてライゲーション混合物を調製し、1〜40ユニットのリガーゼを加えることによってライゲーションを開始させる。
【0101】
4. エタノール沈殿
エタノール沈殿を行い、体積を減少させる。
【0102】
5. エキソヌクレアーゼIIIを用いて残存する直鎖DNAを消化する
エキソヌクレアーゼIIIを用いて37℃にて消化を行い、依然として存在する直鎖DNAを分解する。
【0103】
6. QIAquick精製
QIAquick精製キット(Qiagen、Hilden、ドイツ)のPCR精製プロトコールを用いてそのサンプルを再緩衝化する。
【0104】
7. DNase Iにより部分的に消化し、EDTAを加えることにより停止させて、環状遺伝子を直鎖化する
室温にて高希釈DNase IによりそのDNAを処理し、DNAを無作為に直鎖化する。
【0105】
8. QIAquick精製
PCR精製プロトコールを用いてそのサンプルを最緩衝化する。
【0106】
9. T4 DNAポリメラーゼおよびT4 DNAリガーゼを用いてdNTPを加えることにより直鎖化DNAを修復する
DNase Iによる消化過程においては完全な平滑末端は常には産生されないので、それらはこの工程において作製される。
【0107】
10. アガロースゲル電気泳動およびゲル溶出
アガロースゲルにおいて消化産物を分離し、所望のサイズのバンドを切り出す。キットを用いてプロトコールに従ってゲル溶出を行う。
【0108】
11. 直鎖化DNAのクローニングおよびスクリーニング
直鎖化DNAを、調製したスクリーニングベクターにクローニングし、プロテアーゼを持たない(negative)バチルス属株に形質転換する。得られたコロニーを用いてプロテアーゼ活性についてのスクリーニングを行う。
【0109】
円順列変異法の実行に関して以下の引用文献をさらに参照されたい:
Qian, Z., Lutz, S. (2005) Journal of the American Chemical Society 127(39), pp. 13466-13467;Beernink et al. (2001) Protein Science, 10 (3), pp. 528-537;Baird et al. (1999) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 96 (20), pp. 11241-11246;Graf, R., Schachman, H. K. (1996) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 93 (21 ), pp. 11591-11596。
【0110】
実施例2:14アミノ酸から構成されるリンカーを用いるBLAPプロテアーゼの円順列変異
成熟BLAPプロテアーゼの遺伝子を用いて円順列変異を行った;14アミノ酸長を有する、配列GAATSGKLNGSTAG(配列番号1)のリンカーをN末端およびC末端を運ぶリンカーとして用いた。この様式にて得たそのリンカーが隣接したコンストラクトを以下に示す(示すものはDNA自体ではなく、DNAに対応するタンパク質配列である):
【表1】

【0111】
2つのリンカーフラグメントに下線を引いている。成熟タンパク質の開始および末端を四角で囲んでいる。
【0112】
円順列変異を行ったところ、とりわけ、以下に示す2つの円順列変異体NHT04240353およびNHT04241867が得られ、ついでそれらの洗浄パフォーマンスについて試験した。
【0113】
順列変異体NHT04240353:
【表2】

【0114】
順列変異体NHT04241867:
【表3】

【0115】
実施例3:円順列変異体NHT04240353を用いた洗浄実験
NHT04240353クローンの洗浄パフォーマンスを調べるために以下の染みを試験した:
- 綿上の血液/ミルク/インク:CFT B.V.(Vlaardingen、オランダ)の製造品番号C5
- 綿上の全卵/顔料:wfk Testgewebe GmbH(Brueggen-Bracht、ドイツ)から得られる製造品番号10N、小片に切っている
- 綿上のチョコレートミルク/インク: CFT B.V.(Vlaardingen、オランダ)の製造品番号C3
- ポリエステル/綿上のピーナッツ油/顔料/インク: CFT B.V.(Vlaardingen、オランダ)の製造品番号PC10
- 綿上の草汁(grass):Eidgenoessische Material- und Pruefanstalt(EMPA)Testmaterialien AG[物質を試験するスイス連邦材料および試験機関](St. Gallen、スイス)から得られる製造品番号164
- 綿上のココア:Eidgenoessische Material- und Pruefanstalt(EMPA)Testmaterialien AG(St. Gallen、スイス)から得られる製造品番号112
【0116】
円順列変異体を以下に示す基準処方に組み込み、その洗浄パフォーマンスをはじめのBLAP酵素と比較して調べた。
【0117】
【表4】

【0118】
【表5】


インキュベーション:60分、40℃、約600 rpm。
【0119】
インキュベーション後:染みをリンスし(3回)、乾燥させ、固定する。CM508d比色計(Minolta)を用いた輝度測定。
【0120】
この試験のパフォーマンスのために、円い試験織物片(直径10 mm)を、24ウェルのマイクロ用量設定プレートにおいて1 ml洗浄濃縮溶液(liquor)中にて30分間、37℃、振盪頻度100 rpmにてインキュベートした。各実験を3回測定分行った。
【0121】
洗浄した後、洗浄された織物の白色度を、100%に標準化した白色標準(d/8、8 mm、SCI/SCE)との比較によって測定した(L値の決定)。その測定は比色計(Minolta CM508d)において10°/D65の光源設定を用いて行った。得られた結果をパーセンテージとしてのパフォーマンス(酵素を含まない基準洗浄剤と、100%に標準化されたWTプロテアーゼを有する洗浄剤との間の回復値の差異)として示した。
【0122】
この様式において、NHT04240353変異体は、驚くべきことに、全卵/カーボンブラックおよびココアに関して野生型BLAPよりもおおよそ50%良好なクリーニングパフォーマンスを示し、一方、草汁およびミルク/油に関するクリーニングパフォーマンスは野生型とほぼ同じ程度に良好であり、血液/ミルク/インクおよびチョコレートミルク/カーボンブラックに関するクリーニングパフォーマンスは野生型よりも多少乏しいことが見出された。
【0123】
図面
図面は、実施例3による円順列変異体NHT04240353を用いた洗浄試験の結果を示す。図1は、血液/ミルク/インク、全卵/カーボンブラック、およびチョコレートミルク/カーボンブラックに対する洗浄実験の結果を示す。図2は、草汁、ミルク/油、ココア、および再度血液/ミルク/インクに対する洗浄実験の結果を示す。野生型(WT)、すなわちBLAPを用いた結果を、各実験において100%に設定している。
【0124】
実施例4:特異的プロテアーゼのループの局在性
a)BLAP(バチルス・レンツスアルカリプロテアーゼ)のループ
ループは以下の配列セグメント中に位置する:
Ala 1 - Val 4、Arg 10 - Pro 14、Asn 18 - Val 26、Asp 32 - Gly 45、Phe 49 - His 62、Ile 70 - Ser 76、Gly 78 - Glu 87、Val 93 - He 102、Asn 115 - His 118、Leu 122 - Ala 131 、Ser 142 - Leu 146、Ser 154 - Met 169、Asp 175 - Asn 179、Ala 181 - Phe 183、Gly 185 - He 192、Gly 196 - Val 199、Tyr 203 - Thr 207、Leu 211 - Ser 215、Lys 231 - Asn 237、Thr 247 - Ala 264、およびAla 267 - Thr 268。
【0125】
BLAPのアミノ酸配列は以下の通りである:
AQSVPWGISRVQAPAAHNRGLTGSGVKVAVLDTGISTHPDLNIRGGASFVPGEPSTQDGNGHGTHVAGTIAALNNSIGVLGVAPSAELYAVKVLGADGRGAISSIAQGLEWAGNNGMHVANLSLGSPSPSATLEQAVNSATSRGVLVVAASGNSGASSISYPARYANAMAVGATDQNNNRASFSQYGAGLDIVAPGVNVQSTYPGSTYASLNGTSMATPHVAGAAALVKQKNPSWSNVQIRNHLKNTATSLGSTNLYGS GLVNAEAATR(配列番号1)
【0126】
b)BPN'のループ
ループは以下の配列セグメント中に位置する:
Ala 1 - Gly 7 、Gln 10 - Pro 14、Gln 19 - Val 26 、Asp 32 - Gly 46、Phe 50 - His 64、Val 95 - Tyr 104、Asn 117 - Asp 120、Met 124 - Ala 133、Ser 145 - Val 148、Glu 156 - He 175、Asp 181 - Gln 185、Ala 187 - Phe 189、Ser 191 - Val 198、Gly 202 - He 205、Leu 209 - Lys 213、Lys 217 - Thr 220、Lys 237 - Asn 243、Asn 252 - Val 270、およびAla 273 - Gln 275。
【0127】
BPN'のアミノ酸配列は以下の通りである:
AQSVPYGVSQIKAPALHSQGYTGSNVKVAVIDSGIDSSHPALKVAGGASFVPSETNPFQDNNSHGTHVAGTVLAVAPSASLYAVKVLGADGSGQYSWIINGIEWAIANNMDVINMSLGGPSGSAALKAAVDKAVASGVVVVAAAGNEGTSGSSSTVGYPGKYPSVIAVGAVDSSNQRASFSSVGPELDVMAPGVSIWSTLPGNKYGAKSGTCMASPHVAGAAALILSKHPNWTNTQVRSSLENTTTKLGDSFYYGKGLINV EAAAQ(配列番号2)
【0128】
c)スブチリシンカールスバーグ/ P300のループ:
ループは以下の配列セグメント中に位置する:
Ala 1 - Gly 7、Pro 9 - Ala 13、Gln 19 - Val 26、Asp 32 - Gly 46、Phe 50 - His 64、Val 72 - Ser 89、Val 95 - Tyr 104、Thr 116 - Val 121 、Met 124 - Ala 134、Arg 145 - Val 148、Ser 156 - He 175、Asp 181 - Asn 185、Ala 187 - Phe 189、Ser 191 - Val 198、Gly 202 - Val 205、Tyr 209 - Thr 213、Leu 217 - Thr 220、Lys 237 - Ala 243、Leu 250 - Val 270、およびAla 274 - Gln 275。
【0129】
スブチリシンカールスバーグのアミノ酸配列は以下の通りである:
AQTVPYGIPLIKADKVQAQGFKGANVKVAVLDTGIQASHPDLNVVGGASFVAGEAYNTDGNGHGTHVAGTVAALDNTTGVLGVAPSVSLYAVKVLNSSGSGSYSGIVSGIEWATTNGMDVINMSLGGASGSTAMKQAVDNAYARGVVVVAAAGNSGNSGSTNTIGYPAKYDSVIAVGAVDSNSNRASFSSVGAELEVMAPGAGVYSTYPTNTYATLNGTSMASPHVAGAAALILSKHPNLSASQVRNRLSSTATYLGSSF YYGKGLINVEAAAQ(配列番号3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択されるポリペプチド:
a)プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質の成熟タンパク質の円順列変異体、
b)(a)に記載の円順列変異体の配列に対して、架橋リンカーの配列を含んでおよび/または除いて、少なくとも80%の配列相同性および/または配列同一性を有する、(a)に記載の円順列変異体の変異体、
c)(a)に記載のポリペプチドのポリペプチド配列に対して、架橋リンカーの配列を含んでおよび/または除いて、30アミノ酸までの置換、挿入、欠失または逆位を有する、(a)に記載の円順列変異体の変異体、
d)(a)、(b)または(c)に記載のタンパク質変異体を含むポリペプチド。
【請求項2】
プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質が酵素である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
酵素がプロテアーゼである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
プロテアーゼがスブチリシンタイプのアルカリプロテアーゼである、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
スブチリシンタイプのアルカリプロテアーゼが、BLAP、BPN'およびスブチリシンカールスバーグおよびそれらの相同体から選択される、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
BLAPの円順列変異体が、配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%の配列相同性および/または同一性を有するポリペプチドから選択される、および/または配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチド配列を有するポリペプチドに対して30アミノ酸までの挿入、欠失または逆位を有するポリペプチドから選択される、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
成熟タンパク質の元来の末端が、1〜40アミノ酸長を有するリンカーによって互いに架橋されている、請求項1〜6のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項8】
円順列変異体の新たな末端が、元来の末端から少なくとも10アミノ酸離れている、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項9】
円順列変異体の新たな末端が、はじめのタンパク質のループの領域内に位置している、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項10】
円順列変異体の新たな末端が、はじめのタンパク質のループの領域内に位置していない、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質の円順列変異体を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)成熟タンパク質のDNAについて円順列変異法を行う工程、
b)(a)に記載の方法によって得られたDNAを、適切なベクター中、シグナルペプチド、プロペプチドおよび/またはプレプロペプチドをコードするDNAの3'方向に組み込む工程、
c)DNAの発現のための適切な宿主中に、該ベクターを導入し、妥当な場合は、得られたタンパク質を精製する工程。
【請求項12】
以下から選択されるポリヌクレオチド:
a)プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質の成熟タンパク質の円順列変異体をコードするポリヌクレオチド、
b)(a)に記載のポリヌクレオチドに対して、架橋リンカーをコードする配列を含んでおよび/または除いて、少なくとも80%の配列相同性および/または配列同一性を有する、(a)に記載のポリヌクレオチドの突然変異体、
c)(a)に記載のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列に対して、架橋リンカーをコードする配列を含んでおよび/または除いて、50ヌクレオチドまでの置換、挿入、欠失または逆位を有する、特に正確に1ヌクレオチドの挿入または欠失を有する、(a)に記載のポリヌクレオチドの突然変異体、
d)(a)、(b)または(c)に記載のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド
e)請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)に記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【請求項13】
プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質が酵素である、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
酵素がプロテアーゼである、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
プロテアーゼがスブチリシンタイプのアルカリプロテアーゼである、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
スブチリシンタイプのアルカリプロテアーゼがBLAP、BPN'およびスブチリシンカールスバーグから選択される、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列番号5または配列番号6に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%の配列相同性および/または配列同一性を有するポリペプチドから選択されるBLAPの円順列変異体をコードする、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドを含有する、請求項12〜17のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する、および/または請求項18に記載のベクターを含有する、宿主細胞。
【請求項20】
プレタンパク質、プロタンパク質および/またはプレプロタンパク質として天然に発現されるタンパク質の円順列変異体をコードするDNAを製造する方法であって、成熟タンパク質をコードするDNAを円順列変異法に供する方法。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドを含有する作用剤。
【請求項22】
洗浄剤および/またはクリーニング剤である、請求項21に記載の作用剤。
【請求項23】
化粧品的または医薬的調製物である、請求項21に記載の作用剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500042(P2011−500042A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529331(P2010−529331)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062937
【国際公開番号】WO2009/050022
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】