冊子状媒体処理装置
【課題】ページを開いた状態で通帳等の冊子状媒体を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子状媒体の状態を考慮した搬送制御を行い、搬送路における冊子状媒体の搬送精度を向上させることができる冊子状媒体処理装置を提供する。
【解決手段】通帳処理ユニットは、一対の搬送ローラ31〜36を複数並べて形成した搬送路に沿って、ページを開いた通帳を搬送する。搬送部は、駆動モータであるパルスモータに駆動パルスを与える。磁気データ処理部は、搬送部が駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、磁気データの読取速度の変化を、搬送路に沿って搬送している通帳の搬送速度の変化として検出する。制御部は、検出した通帳の搬送速度の変化に応じて、搬送部による駆動モータの回転駆動を制御する。
【解決手段】通帳処理ユニットは、一対の搬送ローラ31〜36を複数並べて形成した搬送路に沿って、ページを開いた通帳を搬送する。搬送部は、駆動モータであるパルスモータに駆動パルスを与える。磁気データ処理部は、搬送部が駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、磁気データの読取速度の変化を、搬送路に沿って搬送している通帳の搬送速度の変化として検出する。制御部は、検出した通帳の搬送速度の変化に応じて、搬送部による駆動モータの回転駆動を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金融機関が開設されている口座に対して発行した通帳等の冊子状媒体を受け付けると、この冊子状媒体を搬送して印字等にかかる各種処理を行う冊子状媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関は、口座を開設した利用者に対して、当該口座における取引の履歴を記帳する通帳を発行している。金融機関の店舗等に設置されている現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)や、記帳機等の自動機は、取引履歴を通帳に記帳する通帳処理ユニットを備えている。
【0003】
利用者は、通帳処理ユニットの通帳挿入口に、通帳を開いた状態で挿入する。通帳を開くページは、取引履歴が印字されている最終印字行のページ(今回、取引履歴の印字を開始するページ)である。通帳処理ユニットは、通帳挿入口に挿入された通帳を一対の搬送ローラで挟持して搬送する。一対の搬送ローラは、一方が駆動モータにより駆動される駆動ローラであり、他方が駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである。通帳の搬送路は、一対の搬送ローラを複数並べて構成している。通帳処理ユニットは、搬送路に沿って通帳を搬送し、この通帳の背表紙に貼付されている磁気ストライプに記録されている口座番号等の情報の読み取りにかかる処理(磁気データ読取処理)、通帳の開かれているページに対する取引履歴の印字にかかる処理(印字処理)、通帳のページを1枚捲るページ捲りにかかる処理(ページ捲り処理)等の各種処理を必要に応じて行う。
【0004】
通帳処理ユニットは、印字処理や、ページ捲り処理等を適正に行うために、搬送路における通帳の搬送位置を精度よく制御する必要がある。通帳処理ユニットは、通帳を搬送する搬送路にセンサを配置し、このセンサで搬送路に沿って搬送している通帳の先端や後端等の位置を検知することで、この通帳の搬送路上の位置を検知している。センサが通帳の先端や後端等を検知する搬送路上の位置を、ここでは検知位置と言う。この検知位置は、搬送路上に1、または複数設けているが、搬送路全体をカバーしていない。このため、通帳を搬送する位置(処理位置)が、センサで検知することができない位置(非検知位置)であるときには、その直前に通帳を検知した検知位置から、搬送先になる今回の処理位置までの当該通帳の搬送量を算出し、ここで算出した搬送量だけ通帳を搬送する搬送制御を行っている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−225518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通帳は冊子状の媒体であるため、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合、先端側が後端側に比べて薄い場合等、その状態に変化が生じている。搬送時における搬送ローラと、通帳との間で生じる搬送抵抗やスリップの大きさが、この状態の相違によって変化する。その結果、搬送ローラを駆動する駆動モータの駆動量が一定であっても、搬送している通帳の状態(開かれているページ)によって、搬送路における通帳の実際の搬送量が異なる。
【0007】
上述したように、通帳処理ユニットは、通帳を搬送する処理位置が非検知位置であるときには、その直前に通帳を検知した検知位置から、搬送先になる今回の処理位置までの当該通帳の搬送量を算出し、ここで算出した搬送量だけ通帳を搬送する搬送制御を行っている。すなわち、通帳処理ユニットは、処理位置が非検知位置であるとき、搬送路における通帳の状態を考慮した搬送制御を行っていなかった。このため、処理位置と、実際に通帳を搬送した搬送位置との間にずれが生じ、印字処理や、ページ捲り処理等が適正に行えず、失敗することがあった。
【0008】
この発明の目的は、ページを開いた状態で通帳等の冊子状媒体を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子状媒体の状態を考慮した搬送制御を行い、搬送路における冊子状媒体の搬送精度を向上させることができる冊子状媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の冊子状媒体処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために以下のように構成している。
【0010】
この発明にかかる冊子状媒体処理装置は、一対の搬送ローラを複数並べて形成した搬送路に沿って、ページを開いた状態の冊子(例えば、金融機関が発行した通帳)を、この一対の搬送ローラで挟持して搬送する。一対の搬送ローラは、一方が駆動モータにより回転駆動される駆動ローラであり、他方がこの駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである。
【0011】
モータ駆動部は、駆動モータを回転駆動する。駆動モータは、例えばパルスモータであり、この場合、モータ駆動部は駆動モータ(パルスモータ)に駆動パルスを与える。搬送速度変化検出部は、モータ駆動部が駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化を検出する。モータ駆動部が駆動モータを一定速度で回転駆動しているとき、
(1)搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが一定に保たれていると、冊子の搬送速度も一定になるが、
(2)搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが変化すると、この変化に応じて冊子の搬送速度が速くなったり、遅くなったりする。
【0012】
冊子は、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合、先端側が後端側に比べて薄い場合等、その状態に変化が生じる。冊子の状態の相違によって、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが変化する。この搬送抵抗やスリップの変化は、先端が一対の搬送ローラに突入するときや、冊子の背山が一対の搬送ローラを通過するとき等に顕著にあらわれる。そして、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップの変化によって、駆動モータの駆動量が同じであっても、搬送路における冊子の搬送量が変化する。
【0013】
駆動制御部は、搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化に応じて、モータ駆動部による駆動モータの回転駆動を制御する。すなわち、駆動制御部は、駆動モータの駆動量に対する冊子の搬送量が、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップの変化にともなって変化したときには、この変化に応じて駆動モータの駆動量を補正する制御を行う。したがって、ページを開いた状態で冊子を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子の状態を考慮した搬送制御が行え、搬送路における冊子の搬送精度を向上させることができる。
【0014】
また、搬送路に沿って搬送している開いた状態の冊子に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る磁気データ読取部を備える装置であれば、磁気データ読取部における磁気データの読取速度の変化を、搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化として検出することができる。
【0015】
このように構成すれば、搬送路に沿って搬送されている冊子の搬送速度を検出するためのハード構成を追加する必要がなく、装置本体の大型化が防止できるとともに、コストアップも十分に抑えられる。
【0016】
また、搬送路における冊子の搬送速度の複数の変化パターンについて、それぞれ駆動制御部による駆動モータの回転駆動の制御データを対応づけた駆動制御情報を駆動制御情報記憶部に記憶しておいてもよい。この場合、駆動制御部は、搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに対応する制御データを駆動制御情報記憶部から読み出し、ここで読み出した制御データに基づいて、モータ駆動部による駆動モータの回転駆動を制御すればよい。
【0017】
このように構成すれば、駆動制御部は、複雑な演算処理を行う必要がないので、その処理負荷が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ページを開いた状態で冊子を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子の状態を考慮した搬送制御が行え、搬送路における冊子の搬送精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】通帳処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】通帳処理ユニットの内部構成を示す概略図である。
【図3】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図4】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図5】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図6】磁気データ処理部における磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りにかかる構成を示す概略図である。
【図7】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図8】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図9】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図10】通帳処理ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図11】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図12】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図13】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図14】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図15】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図16】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図17】通帳挿入口に挿入された通帳が1冊であるか、複数冊であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態である通帳処理ユニットについて説明する。
【0021】
図1は、この通帳処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。また、図2は、この通帳処理ユニットの内部構成を示す概略図である。この通帳処理ユニット1は、図1に示すように、制御部2と、搬送部3と、検知部4と、磁気データ処理部5と、印字部6と、バーコード読取部7と、頁捲り部8と、通信部9と、を備えている。この通帳処理ユニット1は、銀行等の金融機関に設置される現金自動預け払い機(ATM)や、記帳機等の自動機に組み込める。この通帳処理ユニット1は、利用者の通帳を受け付け、その通帳に対応する口座に対して過去に行われた取引も含めて、その時点で取引内容を印字していない取引毎に、その取引の取引内容を受け付けた通帳に印字する。
【0022】
図1、および図2を参照しながら、各部の構成について説明する。制御部2は、通帳処理ユニット1本体各部の動作を制御する。制御部2は、CPUやメモリ(不揮発性メモリ、および揮発性メモリ)を有する。この制御部2が、この発明で言う駆動制御部、駆動制御情報記憶部にかかる構成を有する。
【0023】
搬送部3は、搬送路に沿って通帳を搬送する。搬送路は、一対の搬送ローラ31〜36を複数並べて形成している、一対の搬送ローラ31〜36は、一方がパルスモータ(不図示)により回転駆動される駆動ローラ31a〜36aであり、他方が駆動ローラ31a〜36aの回転に従動して回転する従動ローラ31b〜36bである。隣接する搬送ローラ31〜36の間隔は、ページを開いた状態の通帳の搬送方向における長さよりも短い。搬送部3は、通帳を、駆動ローラ31a〜36aと従動ローラ31b〜36bとで挟持して搬送する。搬送路は、通帳処理ユニット1本体正面に設けた通帳挿入口12と、後述するページ捲り位置とを結んでいる。また、搬送路の途中には、後述する磁気データ読取位置、印字位置、光学データ読取位置等が設定されている。搬送部3は、制御部2からの指示にしたがって、パルスモータに駆動パルスを入力することにより、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動する。また、搬送部3は、駆動ローラ31a〜36aの回転方向を切り替えることにより、通帳を通帳挿入口12から通帳処理ユニット1本体内部に取り込む方向、および通帳処理ユニット1本体内部から通帳挿入口12に排出する方向に搬送することができる。この搬送部3が、この発明で言うモータ駆動部にかかる構成を有する。
【0024】
なお、ここでは、搬送路を6つの搬送ローラ31〜36で構成した例を示しているが、搬送路を形成する搬送路ローラの個数については、6つに限定されることはなく、いくつであってもよい。
【0025】
検知部4は、搬送路を挟んで発光素子と受光素子とを対向させて配置した検知センサ41〜43を備えている。検知部4は、検知センサ41〜43により通帳の先端、または後端の通過を検知することで、搬送路における通帳の位置を検知する。検知部4は、検知センサ41〜43が通帳の先端と後端との間を検知しているとき、搬送路における通帳の位置を検知することはできない。図2に示す、検知センサ41は、通帳が通帳挿入口12に挿入されたかどうか、および通帳挿入口12に排出した通帳取り出されたかどうかを検知する。検知センサ42は、搬送路における磁気データ読み取り位置の手前側(通帳挿入口側)で、通帳の先端、および後端の通過を検知する。検知センサ43は、搬送路の後端位置に通帳の先端が達したことを検知する。
【0026】
なお、ここでは、検知センサ41〜43を搬送路に3つ配置した例を示しているが、その個数については、3つに限定されることはなく、いくつであってもよい。
【0027】
磁気データ処理部5は、搬送路を搬送されている通帳に貼付されている磁気ストライプに当接し、この磁気ストライプに対する磁気データの読取や記録を行う磁気ヘッド51を有している。この磁気ストライプには、対応する口座の口座番号等が記録されている。この磁気ヘッド51を配置している位置が、磁気データ読取位置である。磁気ヘッド51に対向配置しているローラ52は、通帳に貼付されている磁気ストライプを磁気ヘッド51に押圧する。ローラ52は、上述したパルスモータによって回転駆動される駆動ローラであってもよいし、搬送路を搬送されている通帳との摩擦によって回転する従動ローラであってもよい。この磁気データ処理部5が、この発明で言う磁気データ読取部、および搬送速度変化検出部にかかる構成を有する。
【0028】
印字部6は、搬送路を搬送されている通帳に対して取引内容を印字する印字ヘッド61を有している。この印字ヘッド61を配置している位置が、印字位置である。
【0029】
バーコード読取部7は、搬送路を搬送されている通帳の開かれている頁に印刷されているバーコード(頁番号等)を読み取るバーコードリーダ71を有している。このバーコードリーダ71を配置している位置が、光学データ読取位置である。
【0030】
頁捲り部8は、搬送路を搬送されている通帳の頁を捲る捲りローラ81を有している。頁捲り部8は、捲りローラ81を回転することにより、通帳の頁を捲る。
【0031】
さらに、通信部9は、この通帳処理ユニット1を組み込んだATMや記帳機等の上位装置の主制御部(不図示)との間における通信を行う。
【0032】
次に、搬送路に沿って搬送される通帳の状態と、磁気データ処理部5における磁気データの読取速度と、の関係について説明する。
【0033】
通帳は、開いた状態で通帳挿入口12に挿入される。このため、通帳は、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合(図3参照)、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合(図4参照)、先端側が後端側に比べて薄い場合(図5参照)等、その状態に変化が生じる。図3〜図5において、通帳の先端側は右側である。また、図3〜図5に示すように、通帳の背山の形状も異なる。
【0034】
図6は、磁気データ処理部における磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りにかかる構成を示す概略図である。磁気データは、公知のように磁気ストライプ上における磁化反転により磁気データを記録している。磁気データの読取は、この磁化反転の間隔を読み取ることで行える。磁気ヘッド51は、アンプ55に接続している。アンプ55は、磁気ヘッド51が磁気ストライプから読み取った磁化反転の信号を増幅し、出力する。波形整形回路56は、アンプ55の出力信号に対して波形整形を行う。データ読取回路57は、波形整形回路56が波形整形した信号から、磁気ストライプ上における磁化反転の間隔を読み取ることで、磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る。
【0035】
ここで、通帳に貼付されている磁気ストライプにおける磁気データの記録密度は一定であるとする。この場合、磁気ヘッド51上を通過する磁気ストライプの搬送速度が速くなるにつれて、磁気データの読み取り速度も速くなる。また、磁気データの読み取り速度の変化は、波形整形回路56が波形整形した信号における磁化反転の間隔の変化によって検出できる。
【0036】
例えば、図3に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなる(図7参照)。また、図4に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化しない(図8参照)。また、図5に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に遅くなる(図9参照)。
【0037】
この通帳の搬送速度が変化する原因は、搬送ローラ32における背山の蹴飛ばしや、乗り越えによって、搬送ローラ32と、通帳との間で生じる搬送抵抗やスリップの大きさが変化することである。また、搬送速度の変化は、搬送路における通帳の実際の搬送量の変化である。すなわち、パルスモータの駆動量に対する、通帳の実際の搬送量が変化している。
【0038】
なお、ここでは、搬送部3が、パルスモータによる駆動ローラ31a〜36aの回転速度を一定に制御しているものとして説明している。
【0039】
上述したように、図7〜図9に示す搬送速度の変化パターン間では、パルスモータの回転量(パルスモータに入力した駆動パルス数)に対する実際の通帳の搬送量が異なる。この通帳処理ユニット1は、図7〜図9に示す搬送速度の変化パターン毎に、以下に示す駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリに記憶している。
【0040】
駆動制御情報は、通帳を搬送する処理位置毎に、検知センサ42が先端(または後端)を検知してから、通帳が処理位置に到達するまでに必要なパルスモータの駆動パルス数を対応づけた情報である。例えば、検知センサ42が、通帳の後端を検知してから、その通帳をページ捲り位置まで搬送するのに必要なパルスモータの駆動パルス数や、検知センサ42が、通帳の後端を検知してから、その通帳を印字位置まで搬送するのに必要なパルスモータの駆動パルス数等を対応づけている。また、この印字位置は、通帳の開かれているページの先頭行に印字するときの位置であり、駆動制御情報には、印字する行を1行下げるのに必要なパルスモータの駆動パルス数も含まれている。
【0041】
なお、図7〜図9に示す各パターンの駆動制御情報は、上記の例に限らず、例えば図8に示すパターンを基準パターンとし、この基準パターンについて上述した駆動制御情報を記憶する。一方で、図7、および図9に示すパターンについては、処理位置毎に、基準パターンに対して追加、または減算するパルスモータの駆動パルス数を補正パルス数として対応づけた駆動制御情報を記憶してもよい。また、上記の補正パルス数は、基準パターンの駆動パルス数に対する割合(百分率)としてもよい。
【0042】
図10は、この通帳処理ユニットの動作を示すフローチャートである。通帳処理ユニット1は、検知部4において検知センサ41が通帳挿入口12に挿入された通帳を検知すると(s1)、この通帳を搬送路に沿って搬送する(s2)。通帳処理ユニット1は、磁気データ処理部5において、s2で搬送を開始した通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りを行う(s3)。このとき搬送部3は、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動するパルスモータの回転速度を一定に制御している。
【0043】
通帳処理ユニット1は、磁気データの読み取り時に波形整形回路56が波形整形した信号から、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の変化パターンが、上述した図7〜図9のいずれに対応するかを判断する(s4)。
【0044】
通帳処理ユニット1は、制御部2がs4で判断した通帳の搬送速度の変化パターンに応じた駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリから読み出す(s5)。通帳処理ユニット1は、通帳に対する印字処理等を含む各種処理を実行する(s6)。s6では、今回通帳に貼付されている磁気ストライプから読み取った磁気データに基づき、この通帳に対応する口座番号等の情報を取得する。また、制御部2は、通帳を任意の搬送先(印字位置、光学データ読取位置、ページ捲り位置等)に搬送するとき、搬送部3に対して、s5で読み出した駆動制御情報に基づいて、パルスモータに入力する駆動パルス数を指示する。したがって、搬送部3は、搬送している通帳の状態に応じて、この通帳を各処理位置に精度よく搬送することができる。すなわち、通帳処理ユニット1は、通帳の状態を考慮して、この通帳の搬送位置を制御することができ、搬送路における通帳の搬送精度を向上させることができる。
【0045】
通帳処理ユニット1は、通帳に対する各種処理が完了すると、通帳の磁気ストライプに対する磁気データの書き込みを行う(s7)。このとき、通帳処理ユニット1は、磁気ヘッド51上を通過する磁気ストライプの搬送速度を一定にするため、駆動ローラ31a〜36aと、従動ローラ31b〜36bとの間隔を少し広げる。すなわち、通帳の背山が、搬送ローラ31〜36を通過するときの抵抗をなくし、通帳が一定速度で搬送されるようにしている。これにより、磁気ストライプの搬送方向における磁気データの記録密度を一定にできる。
【0046】
通帳処理ユニット1は、通帳を通帳挿入口12に排出する(s8)。このとき、検知部4は検知センサ41が通帳挿入口12に排出した通帳を検知している。通帳処理ユニット1は、この通帳が抜き取られると(s9)、本処理を終了する。s9では、検知部4が検知センサ41により通帳挿入口12に排出した通帳を検知していない状態になると、この通帳が抜き取られたと判定する。
【0047】
また、上記の例では、搬送部3が、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動するパルスモータの回転速度を一定に制御している状態で、搬送路における通帳の搬送速度の変化を磁気データ処理部5における磁気データの読取速度の変化によって検知する構成としているので、搬送路に沿って搬送されている通帳の搬送速度を検出するためのハード構成を別途設ける必要がなく、通帳処理ユニット1本体の大型化が防止できるとともに、コストアップも十分に抑えられる。
【0048】
なお、搬送路に沿って搬送されている通帳の搬送速度を検出するためのハード構成を別途設ける構成であっても特に問題はない。また、上記の例では、制御部2の不揮発性メモリに駆動制御情報を記憶する、搬送速度の変化パターンを3つとしたが、図7や、図9において、搬送速度の変化を示す山や谷の大きさによって、搬送速度の変化パターンを4つ以上設定し、それぞれについて駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。
【0049】
次に、別の例にかかる通帳処理ユニット1について説明する。この通帳処理ユニット1も上述した図1、図2に示す構成である。
【0050】
この通帳処理ユニット1は、図2に示す磁気ヘッド51と搬送ローラ33との間隔が、通帳に貼付されている磁気ストライプの搬送方向の長さよりも短い。したがって、磁気データ処理部5が磁気データの読み取りを行っているときに、搬送されている通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入する。この突入時においても、搬送抵抗やスリップの大きさが変化する。
【0051】
例えば、図3に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる(図11参照)。
【0052】
また、図4に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化せず、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる(図12参照)。
【0053】
また、図5に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に遅くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにほとんど変化しない(図13参照)。
【0054】
通帳処理ユニット1は、上記の例と同様に、図11〜図13に示した搬送速度の変化パターン毎に、駆動制御情報を制御部2のメモリに記憶している。
【0055】
この通帳処理ユニット1も、上述した図10に示す処理を行う。この例にかかる通帳処理ユニット1は、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときの搬送速度の変化だけでなく、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの搬送速度の変化も加えて搬送している通帳の状態を判断している。したがって、搬送している通帳の状態の判断精度を向上させることができる。
【0056】
また、この例にかかる通帳処理ユニット1は、以下のようにして、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねた状態で通帳挿入口12に挿入されたことを検知するようにしてもよい。
【0057】
例えば、図3に示す状態の通帳を、図4に示す状態の通帳の上に重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図14に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる。また、この場合、図11で示した状態に比べて、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下量が大きい。図14では、この例にかかる搬送速度の変化を実線で示しており、図11で示した例にかかる搬送速度の変化を破線で示している。
【0058】
また、図4に示す状態の通帳を2冊重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図15に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときは、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化しないが、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が遅くなる。また、この場合、図12で示した状態に比べて、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下量が大きい。図15では、この例にかかる搬送速度の変化を実線で示しており、図12で示した例にかかる搬送速度の変化を破線で示している。
【0059】
また、図5に示す状態の通帳を、図4に示す状態の通帳の上に重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図16に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がともに遅くなる。
【0060】
このことから、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がともに遅くなる場合や、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにおける通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下が大きいときに、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねた状態で通帳挿入口12に挿入されたと判断できる。
【0061】
なお、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにおける通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下の大きさについて、通帳が複数冊であるかどうかを判定する大きさ(所謂、閾値)を予め設定しておけばよい。この閾値は、通帳が一冊である場合に、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに生じる通帳の搬送速度の低下の最大値よりも少し大きくすればよい。
【0062】
図17は、通帳処理ユニットにおける、通帳挿入口に挿入された通帳が1冊であるか、複数冊であるかを判別する処理を示すフローチャートである。
【0063】
この処理は、図10に示したs4に組み込めばよい。通帳処理ユニット1は、磁気データの読み取り速度が2箇所で低下しているかどうか(s11)、および磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所があるかかどうか(s12)を判定する。s11、s12にかかる判定は、順番を入れ替えてもよい。
【0064】
s11は、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの両方で、磁気データの読み取り速度が低下したかどうかを判定している。すなわち、磁気データの読み取り速度が、図15に示したパターンであるかどうかを判定している。
【0065】
また、s12は、図14、または図16に示したいずれかのパターンであるかを判定している。
【0066】
通帳処理ユニット1は、s11で磁気データの読み取り速度が2箇所で低下していると判定した場合、またはs12で磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所があると判定した場合、複数冊の通帳が重なっていると判断し、エラー処理を行う(s13)。一方、通帳処理ユニット1は、s11で磁気データの読み取り速度が2箇所で低下していないと判定し、且つs12で磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所がないと判定した場合、上述した図10に示すs5以降の処理を行う。
【0067】
このように、この例にかかる通帳処理ユニット1は、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねられた状態で通帳挿入口12に挿入されときに、そのことを検知することができる。したがって、通帳処理ユニット1の搬送路が破損する等の事態の発生が抑えられる。
【0068】
なお、上記の説明では、本願発明を、通帳処理ユニットに適用した場合を例にして説明したが、これに限らず、冊子状の媒体を搬送し、この冊子状の媒体に対して処理を行う装置であれば、他の種類の装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1…通帳処理ユニット
2…制御部
3…搬送部
4…検知部
5…磁気データ処理部
6…印字部
7…バーコード読取部
8…頁捲り部
9…通信部
31〜36…搬送ローラ
31a〜36a…駆動ローラ
31b〜36b…従動ローラ
41〜43…検知センサ
51…磁気ヘッド
52…ローラ
55…アンプ
56…波形整形回路
57…データ読取回路
61…印字ヘッド
【技術分野】
【0001】
この発明は、金融機関が開設されている口座に対して発行した通帳等の冊子状媒体を受け付けると、この冊子状媒体を搬送して印字等にかかる各種処理を行う冊子状媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関は、口座を開設した利用者に対して、当該口座における取引の履歴を記帳する通帳を発行している。金融機関の店舗等に設置されている現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)や、記帳機等の自動機は、取引履歴を通帳に記帳する通帳処理ユニットを備えている。
【0003】
利用者は、通帳処理ユニットの通帳挿入口に、通帳を開いた状態で挿入する。通帳を開くページは、取引履歴が印字されている最終印字行のページ(今回、取引履歴の印字を開始するページ)である。通帳処理ユニットは、通帳挿入口に挿入された通帳を一対の搬送ローラで挟持して搬送する。一対の搬送ローラは、一方が駆動モータにより駆動される駆動ローラであり、他方が駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである。通帳の搬送路は、一対の搬送ローラを複数並べて構成している。通帳処理ユニットは、搬送路に沿って通帳を搬送し、この通帳の背表紙に貼付されている磁気ストライプに記録されている口座番号等の情報の読み取りにかかる処理(磁気データ読取処理)、通帳の開かれているページに対する取引履歴の印字にかかる処理(印字処理)、通帳のページを1枚捲るページ捲りにかかる処理(ページ捲り処理)等の各種処理を必要に応じて行う。
【0004】
通帳処理ユニットは、印字処理や、ページ捲り処理等を適正に行うために、搬送路における通帳の搬送位置を精度よく制御する必要がある。通帳処理ユニットは、通帳を搬送する搬送路にセンサを配置し、このセンサで搬送路に沿って搬送している通帳の先端や後端等の位置を検知することで、この通帳の搬送路上の位置を検知している。センサが通帳の先端や後端等を検知する搬送路上の位置を、ここでは検知位置と言う。この検知位置は、搬送路上に1、または複数設けているが、搬送路全体をカバーしていない。このため、通帳を搬送する位置(処理位置)が、センサで検知することができない位置(非検知位置)であるときには、その直前に通帳を検知した検知位置から、搬送先になる今回の処理位置までの当該通帳の搬送量を算出し、ここで算出した搬送量だけ通帳を搬送する搬送制御を行っている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−225518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通帳は冊子状の媒体であるため、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合、先端側が後端側に比べて薄い場合等、その状態に変化が生じている。搬送時における搬送ローラと、通帳との間で生じる搬送抵抗やスリップの大きさが、この状態の相違によって変化する。その結果、搬送ローラを駆動する駆動モータの駆動量が一定であっても、搬送している通帳の状態(開かれているページ)によって、搬送路における通帳の実際の搬送量が異なる。
【0007】
上述したように、通帳処理ユニットは、通帳を搬送する処理位置が非検知位置であるときには、その直前に通帳を検知した検知位置から、搬送先になる今回の処理位置までの当該通帳の搬送量を算出し、ここで算出した搬送量だけ通帳を搬送する搬送制御を行っている。すなわち、通帳処理ユニットは、処理位置が非検知位置であるとき、搬送路における通帳の状態を考慮した搬送制御を行っていなかった。このため、処理位置と、実際に通帳を搬送した搬送位置との間にずれが生じ、印字処理や、ページ捲り処理等が適正に行えず、失敗することがあった。
【0008】
この発明の目的は、ページを開いた状態で通帳等の冊子状媒体を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子状媒体の状態を考慮した搬送制御を行い、搬送路における冊子状媒体の搬送精度を向上させることができる冊子状媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の冊子状媒体処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために以下のように構成している。
【0010】
この発明にかかる冊子状媒体処理装置は、一対の搬送ローラを複数並べて形成した搬送路に沿って、ページを開いた状態の冊子(例えば、金融機関が発行した通帳)を、この一対の搬送ローラで挟持して搬送する。一対の搬送ローラは、一方が駆動モータにより回転駆動される駆動ローラであり、他方がこの駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである。
【0011】
モータ駆動部は、駆動モータを回転駆動する。駆動モータは、例えばパルスモータであり、この場合、モータ駆動部は駆動モータ(パルスモータ)に駆動パルスを与える。搬送速度変化検出部は、モータ駆動部が駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化を検出する。モータ駆動部が駆動モータを一定速度で回転駆動しているとき、
(1)搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが一定に保たれていると、冊子の搬送速度も一定になるが、
(2)搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが変化すると、この変化に応じて冊子の搬送速度が速くなったり、遅くなったりする。
【0012】
冊子は、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合、先端側が後端側に比べて薄い場合等、その状態に変化が生じる。冊子の状態の相違によって、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップが変化する。この搬送抵抗やスリップの変化は、先端が一対の搬送ローラに突入するときや、冊子の背山が一対の搬送ローラを通過するとき等に顕著にあらわれる。そして、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップの変化によって、駆動モータの駆動量が同じであっても、搬送路における冊子の搬送量が変化する。
【0013】
駆動制御部は、搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化に応じて、モータ駆動部による駆動モータの回転駆動を制御する。すなわち、駆動制御部は、駆動モータの駆動量に対する冊子の搬送量が、搬送ローラと、この搬送ローラが挟持している冊子との間における搬送抵抗やスリップの変化にともなって変化したときには、この変化に応じて駆動モータの駆動量を補正する制御を行う。したがって、ページを開いた状態で冊子を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子の状態を考慮した搬送制御が行え、搬送路における冊子の搬送精度を向上させることができる。
【0014】
また、搬送路に沿って搬送している開いた状態の冊子に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る磁気データ読取部を備える装置であれば、磁気データ読取部における磁気データの読取速度の変化を、搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化として検出することができる。
【0015】
このように構成すれば、搬送路に沿って搬送されている冊子の搬送速度を検出するためのハード構成を追加する必要がなく、装置本体の大型化が防止できるとともに、コストアップも十分に抑えられる。
【0016】
また、搬送路における冊子の搬送速度の複数の変化パターンについて、それぞれ駆動制御部による駆動モータの回転駆動の制御データを対応づけた駆動制御情報を駆動制御情報記憶部に記憶しておいてもよい。この場合、駆動制御部は、搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに対応する制御データを駆動制御情報記憶部から読み出し、ここで読み出した制御データに基づいて、モータ駆動部による駆動モータの回転駆動を制御すればよい。
【0017】
このように構成すれば、駆動制御部は、複雑な演算処理を行う必要がないので、その処理負荷が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ページを開いた状態で冊子を搬送路に沿って搬送するときに、開かれているページによって生じている冊子の状態を考慮した搬送制御が行え、搬送路における冊子の搬送精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】通帳処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】通帳処理ユニットの内部構成を示す概略図である。
【図3】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図4】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図5】搬送路に沿って搬送する通帳の状態を例示する図である。
【図6】磁気データ処理部における磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りにかかる構成を示す概略図である。
【図7】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図8】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図9】搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図10】通帳処理ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図11】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図12】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図13】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図14】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図15】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図16】別の例にかかる搬送路に沿って搬送する通帳の状態と、磁気データの読み取り速度との対応を説明する図である。
【図17】通帳挿入口に挿入された通帳が1冊であるか、複数冊であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態である通帳処理ユニットについて説明する。
【0021】
図1は、この通帳処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。また、図2は、この通帳処理ユニットの内部構成を示す概略図である。この通帳処理ユニット1は、図1に示すように、制御部2と、搬送部3と、検知部4と、磁気データ処理部5と、印字部6と、バーコード読取部7と、頁捲り部8と、通信部9と、を備えている。この通帳処理ユニット1は、銀行等の金融機関に設置される現金自動預け払い機(ATM)や、記帳機等の自動機に組み込める。この通帳処理ユニット1は、利用者の通帳を受け付け、その通帳に対応する口座に対して過去に行われた取引も含めて、その時点で取引内容を印字していない取引毎に、その取引の取引内容を受け付けた通帳に印字する。
【0022】
図1、および図2を参照しながら、各部の構成について説明する。制御部2は、通帳処理ユニット1本体各部の動作を制御する。制御部2は、CPUやメモリ(不揮発性メモリ、および揮発性メモリ)を有する。この制御部2が、この発明で言う駆動制御部、駆動制御情報記憶部にかかる構成を有する。
【0023】
搬送部3は、搬送路に沿って通帳を搬送する。搬送路は、一対の搬送ローラ31〜36を複数並べて形成している、一対の搬送ローラ31〜36は、一方がパルスモータ(不図示)により回転駆動される駆動ローラ31a〜36aであり、他方が駆動ローラ31a〜36aの回転に従動して回転する従動ローラ31b〜36bである。隣接する搬送ローラ31〜36の間隔は、ページを開いた状態の通帳の搬送方向における長さよりも短い。搬送部3は、通帳を、駆動ローラ31a〜36aと従動ローラ31b〜36bとで挟持して搬送する。搬送路は、通帳処理ユニット1本体正面に設けた通帳挿入口12と、後述するページ捲り位置とを結んでいる。また、搬送路の途中には、後述する磁気データ読取位置、印字位置、光学データ読取位置等が設定されている。搬送部3は、制御部2からの指示にしたがって、パルスモータに駆動パルスを入力することにより、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動する。また、搬送部3は、駆動ローラ31a〜36aの回転方向を切り替えることにより、通帳を通帳挿入口12から通帳処理ユニット1本体内部に取り込む方向、および通帳処理ユニット1本体内部から通帳挿入口12に排出する方向に搬送することができる。この搬送部3が、この発明で言うモータ駆動部にかかる構成を有する。
【0024】
なお、ここでは、搬送路を6つの搬送ローラ31〜36で構成した例を示しているが、搬送路を形成する搬送路ローラの個数については、6つに限定されることはなく、いくつであってもよい。
【0025】
検知部4は、搬送路を挟んで発光素子と受光素子とを対向させて配置した検知センサ41〜43を備えている。検知部4は、検知センサ41〜43により通帳の先端、または後端の通過を検知することで、搬送路における通帳の位置を検知する。検知部4は、検知センサ41〜43が通帳の先端と後端との間を検知しているとき、搬送路における通帳の位置を検知することはできない。図2に示す、検知センサ41は、通帳が通帳挿入口12に挿入されたかどうか、および通帳挿入口12に排出した通帳取り出されたかどうかを検知する。検知センサ42は、搬送路における磁気データ読み取り位置の手前側(通帳挿入口側)で、通帳の先端、および後端の通過を検知する。検知センサ43は、搬送路の後端位置に通帳の先端が達したことを検知する。
【0026】
なお、ここでは、検知センサ41〜43を搬送路に3つ配置した例を示しているが、その個数については、3つに限定されることはなく、いくつであってもよい。
【0027】
磁気データ処理部5は、搬送路を搬送されている通帳に貼付されている磁気ストライプに当接し、この磁気ストライプに対する磁気データの読取や記録を行う磁気ヘッド51を有している。この磁気ストライプには、対応する口座の口座番号等が記録されている。この磁気ヘッド51を配置している位置が、磁気データ読取位置である。磁気ヘッド51に対向配置しているローラ52は、通帳に貼付されている磁気ストライプを磁気ヘッド51に押圧する。ローラ52は、上述したパルスモータによって回転駆動される駆動ローラであってもよいし、搬送路を搬送されている通帳との摩擦によって回転する従動ローラであってもよい。この磁気データ処理部5が、この発明で言う磁気データ読取部、および搬送速度変化検出部にかかる構成を有する。
【0028】
印字部6は、搬送路を搬送されている通帳に対して取引内容を印字する印字ヘッド61を有している。この印字ヘッド61を配置している位置が、印字位置である。
【0029】
バーコード読取部7は、搬送路を搬送されている通帳の開かれている頁に印刷されているバーコード(頁番号等)を読み取るバーコードリーダ71を有している。このバーコードリーダ71を配置している位置が、光学データ読取位置である。
【0030】
頁捲り部8は、搬送路を搬送されている通帳の頁を捲る捲りローラ81を有している。頁捲り部8は、捲りローラ81を回転することにより、通帳の頁を捲る。
【0031】
さらに、通信部9は、この通帳処理ユニット1を組み込んだATMや記帳機等の上位装置の主制御部(不図示)との間における通信を行う。
【0032】
次に、搬送路に沿って搬送される通帳の状態と、磁気データ処理部5における磁気データの読取速度と、の関係について説明する。
【0033】
通帳は、開いた状態で通帳挿入口12に挿入される。このため、通帳は、開かれているページによって、先端側が後端側に比べて厚い場合(図3参照)、先端側と後端側とが略同じ厚さである場合(図4参照)、先端側が後端側に比べて薄い場合(図5参照)等、その状態に変化が生じる。図3〜図5において、通帳の先端側は右側である。また、図3〜図5に示すように、通帳の背山の形状も異なる。
【0034】
図6は、磁気データ処理部における磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りにかかる構成を示す概略図である。磁気データは、公知のように磁気ストライプ上における磁化反転により磁気データを記録している。磁気データの読取は、この磁化反転の間隔を読み取ることで行える。磁気ヘッド51は、アンプ55に接続している。アンプ55は、磁気ヘッド51が磁気ストライプから読み取った磁化反転の信号を増幅し、出力する。波形整形回路56は、アンプ55の出力信号に対して波形整形を行う。データ読取回路57は、波形整形回路56が波形整形した信号から、磁気ストライプ上における磁化反転の間隔を読み取ることで、磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る。
【0035】
ここで、通帳に貼付されている磁気ストライプにおける磁気データの記録密度は一定であるとする。この場合、磁気ヘッド51上を通過する磁気ストライプの搬送速度が速くなるにつれて、磁気データの読み取り速度も速くなる。また、磁気データの読み取り速度の変化は、波形整形回路56が波形整形した信号における磁化反転の間隔の変化によって検出できる。
【0036】
例えば、図3に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなる(図7参照)。また、図4に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化しない(図8参照)。また、図5に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に遅くなる(図9参照)。
【0037】
この通帳の搬送速度が変化する原因は、搬送ローラ32における背山の蹴飛ばしや、乗り越えによって、搬送ローラ32と、通帳との間で生じる搬送抵抗やスリップの大きさが変化することである。また、搬送速度の変化は、搬送路における通帳の実際の搬送量の変化である。すなわち、パルスモータの駆動量に対する、通帳の実際の搬送量が変化している。
【0038】
なお、ここでは、搬送部3が、パルスモータによる駆動ローラ31a〜36aの回転速度を一定に制御しているものとして説明している。
【0039】
上述したように、図7〜図9に示す搬送速度の変化パターン間では、パルスモータの回転量(パルスモータに入力した駆動パルス数)に対する実際の通帳の搬送量が異なる。この通帳処理ユニット1は、図7〜図9に示す搬送速度の変化パターン毎に、以下に示す駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリに記憶している。
【0040】
駆動制御情報は、通帳を搬送する処理位置毎に、検知センサ42が先端(または後端)を検知してから、通帳が処理位置に到達するまでに必要なパルスモータの駆動パルス数を対応づけた情報である。例えば、検知センサ42が、通帳の後端を検知してから、その通帳をページ捲り位置まで搬送するのに必要なパルスモータの駆動パルス数や、検知センサ42が、通帳の後端を検知してから、その通帳を印字位置まで搬送するのに必要なパルスモータの駆動パルス数等を対応づけている。また、この印字位置は、通帳の開かれているページの先頭行に印字するときの位置であり、駆動制御情報には、印字する行を1行下げるのに必要なパルスモータの駆動パルス数も含まれている。
【0041】
なお、図7〜図9に示す各パターンの駆動制御情報は、上記の例に限らず、例えば図8に示すパターンを基準パターンとし、この基準パターンについて上述した駆動制御情報を記憶する。一方で、図7、および図9に示すパターンについては、処理位置毎に、基準パターンに対して追加、または減算するパルスモータの駆動パルス数を補正パルス数として対応づけた駆動制御情報を記憶してもよい。また、上記の補正パルス数は、基準パターンの駆動パルス数に対する割合(百分率)としてもよい。
【0042】
図10は、この通帳処理ユニットの動作を示すフローチャートである。通帳処理ユニット1は、検知部4において検知センサ41が通帳挿入口12に挿入された通帳を検知すると(s1)、この通帳を搬送路に沿って搬送する(s2)。通帳処理ユニット1は、磁気データ処理部5において、s2で搬送を開始した通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データの読み取りを行う(s3)。このとき搬送部3は、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動するパルスモータの回転速度を一定に制御している。
【0043】
通帳処理ユニット1は、磁気データの読み取り時に波形整形回路56が波形整形した信号から、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の変化パターンが、上述した図7〜図9のいずれに対応するかを判断する(s4)。
【0044】
通帳処理ユニット1は、制御部2がs4で判断した通帳の搬送速度の変化パターンに応じた駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリから読み出す(s5)。通帳処理ユニット1は、通帳に対する印字処理等を含む各種処理を実行する(s6)。s6では、今回通帳に貼付されている磁気ストライプから読み取った磁気データに基づき、この通帳に対応する口座番号等の情報を取得する。また、制御部2は、通帳を任意の搬送先(印字位置、光学データ読取位置、ページ捲り位置等)に搬送するとき、搬送部3に対して、s5で読み出した駆動制御情報に基づいて、パルスモータに入力する駆動パルス数を指示する。したがって、搬送部3は、搬送している通帳の状態に応じて、この通帳を各処理位置に精度よく搬送することができる。すなわち、通帳処理ユニット1は、通帳の状態を考慮して、この通帳の搬送位置を制御することができ、搬送路における通帳の搬送精度を向上させることができる。
【0045】
通帳処理ユニット1は、通帳に対する各種処理が完了すると、通帳の磁気ストライプに対する磁気データの書き込みを行う(s7)。このとき、通帳処理ユニット1は、磁気ヘッド51上を通過する磁気ストライプの搬送速度を一定にするため、駆動ローラ31a〜36aと、従動ローラ31b〜36bとの間隔を少し広げる。すなわち、通帳の背山が、搬送ローラ31〜36を通過するときの抵抗をなくし、通帳が一定速度で搬送されるようにしている。これにより、磁気ストライプの搬送方向における磁気データの記録密度を一定にできる。
【0046】
通帳処理ユニット1は、通帳を通帳挿入口12に排出する(s8)。このとき、検知部4は検知センサ41が通帳挿入口12に排出した通帳を検知している。通帳処理ユニット1は、この通帳が抜き取られると(s9)、本処理を終了する。s9では、検知部4が検知センサ41により通帳挿入口12に排出した通帳を検知していない状態になると、この通帳が抜き取られたと判定する。
【0047】
また、上記の例では、搬送部3が、駆動ローラ31a〜36aを回転駆動するパルスモータの回転速度を一定に制御している状態で、搬送路における通帳の搬送速度の変化を磁気データ処理部5における磁気データの読取速度の変化によって検知する構成としているので、搬送路に沿って搬送されている通帳の搬送速度を検出するためのハード構成を別途設ける必要がなく、通帳処理ユニット1本体の大型化が防止できるとともに、コストアップも十分に抑えられる。
【0048】
なお、搬送路に沿って搬送されている通帳の搬送速度を検出するためのハード構成を別途設ける構成であっても特に問題はない。また、上記の例では、制御部2の不揮発性メモリに駆動制御情報を記憶する、搬送速度の変化パターンを3つとしたが、図7や、図9において、搬送速度の変化を示す山や谷の大きさによって、搬送速度の変化パターンを4つ以上設定し、それぞれについて駆動制御情報を制御部2の不揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。
【0049】
次に、別の例にかかる通帳処理ユニット1について説明する。この通帳処理ユニット1も上述した図1、図2に示す構成である。
【0050】
この通帳処理ユニット1は、図2に示す磁気ヘッド51と搬送ローラ33との間隔が、通帳に貼付されている磁気ストライプの搬送方向の長さよりも短い。したがって、磁気データ処理部5が磁気データの読み取りを行っているときに、搬送されている通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入する。この突入時においても、搬送抵抗やスリップの大きさが変化する。
【0051】
例えば、図3に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる(図11参照)。
【0052】
また、図4に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化せず、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる(図12参照)。
【0053】
また、図5に示す状態の通帳を搬送している場合、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に遅くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにほとんど変化しない(図13参照)。
【0054】
通帳処理ユニット1は、上記の例と同様に、図11〜図13に示した搬送速度の変化パターン毎に、駆動制御情報を制御部2のメモリに記憶している。
【0055】
この通帳処理ユニット1も、上述した図10に示す処理を行う。この例にかかる通帳処理ユニット1は、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときの搬送速度の変化だけでなく、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの搬送速度の変化も加えて搬送している通帳の状態を判断している。したがって、搬送している通帳の状態の判断精度を向上させることができる。
【0056】
また、この例にかかる通帳処理ユニット1は、以下のようにして、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねた状態で通帳挿入口12に挿入されたことを検知するようにしてもよい。
【0057】
例えば、図3に示す状態の通帳を、図4に示す状態の通帳の上に重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図14に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときに、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が一時的に速くなり、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに遅くなる。また、この場合、図11で示した状態に比べて、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下量が大きい。図14では、この例にかかる搬送速度の変化を実線で示しており、図11で示した例にかかる搬送速度の変化を破線で示している。
【0058】
また、図4に示す状態の通帳を2冊重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図15に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するときは、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がほとんど変化しないが、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)が遅くなる。また、この場合、図12で示した状態に比べて、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下量が大きい。図15では、この例にかかる搬送速度の変化を実線で示しており、図12で示した例にかかる搬送速度の変化を破線で示している。
【0059】
また、図5に示す状態の通帳を、図4に示す状態の通帳の上に重ねた状態で通帳挿入口12に挿入した場合、磁気データの読み取り速度は、図16に示すように変化する。具体的には、2冊重ねられた通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がともに遅くなる。
【0060】
このことから、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するとき、通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)がともに遅くなる場合や、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにおける通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下が大きいときに、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねた状態で通帳挿入口12に挿入されたと判断できる。
【0061】
なお、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときにおける通帳の搬送速度(磁気データの読み取り速度)の低下の大きさについて、通帳が複数冊であるかどうかを判定する大きさ(所謂、閾値)を予め設定しておけばよい。この閾値は、通帳が一冊である場合に、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときに生じる通帳の搬送速度の低下の最大値よりも少し大きくすればよい。
【0062】
図17は、通帳処理ユニットにおける、通帳挿入口に挿入された通帳が1冊であるか、複数冊であるかを判別する処理を示すフローチャートである。
【0063】
この処理は、図10に示したs4に組み込めばよい。通帳処理ユニット1は、磁気データの読み取り速度が2箇所で低下しているかどうか(s11)、および磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所があるかかどうか(s12)を判定する。s11、s12にかかる判定は、順番を入れ替えてもよい。
【0064】
s11は、通帳の背山が搬送ローラ32を通過するとき、および、通帳の先端が搬送ローラ33の駆動ローラ33aと従動ローラ33bとの間に突入するときの両方で、磁気データの読み取り速度が低下したかどうかを判定している。すなわち、磁気データの読み取り速度が、図15に示したパターンであるかどうかを判定している。
【0065】
また、s12は、図14、または図16に示したいずれかのパターンであるかを判定している。
【0066】
通帳処理ユニット1は、s11で磁気データの読み取り速度が2箇所で低下していると判定した場合、またはs12で磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所があると判定した場合、複数冊の通帳が重なっていると判断し、エラー処理を行う(s13)。一方、通帳処理ユニット1は、s11で磁気データの読み取り速度が2箇所で低下していないと判定し、且つs12で磁気データの読み取り速度の低下が予め設定した大きさよりも大きい箇所がないと判定した場合、上述した図10に示すs5以降の処理を行う。
【0067】
このように、この例にかかる通帳処理ユニット1は、誤って通帳が複数冊(例えば2冊)重ねられた状態で通帳挿入口12に挿入されときに、そのことを検知することができる。したがって、通帳処理ユニット1の搬送路が破損する等の事態の発生が抑えられる。
【0068】
なお、上記の説明では、本願発明を、通帳処理ユニットに適用した場合を例にして説明したが、これに限らず、冊子状の媒体を搬送し、この冊子状の媒体に対して処理を行う装置であれば、他の種類の装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1…通帳処理ユニット
2…制御部
3…搬送部
4…検知部
5…磁気データ処理部
6…印字部
7…バーコード読取部
8…頁捲り部
9…通信部
31〜36…搬送ローラ
31a〜36a…駆動ローラ
31b〜36b…従動ローラ
41〜43…検知センサ
51…磁気ヘッド
52…ローラ
55…アンプ
56…波形整形回路
57…データ読取回路
61…印字ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が駆動モータにより回転駆動される駆動ローラで、他方が前記駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである一対の搬送ローラを複数並べて形成した搬送路に沿って、開いた状態の冊子を前記一対の搬送ローラで挟持して搬送する冊子状媒体処理装置において、
前記駆動モータを回転駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部が前記駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、前記搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化を検出する搬送速度変化検出部と、
前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化に応じて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの回転駆動を制御する駆動制御部と、を備えた冊子状媒体処理装置。
【請求項2】
前記搬送路に沿って搬送している開いた状態の冊子に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る磁気データ読取部を備え、
前記搬送速度変化検出部は、前記磁気データ読取部における磁気データの読取速度の変化を、前記搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化として検出する、請求項1に記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記駆動制御情報記憶部から、前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに応じて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの駆動量を制御する、請求項1、または2に記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項4】
前記搬送路における冊子の搬送速度の複数の変化パターンについて、それぞれ前記駆動制御部による前記駆動モータの回転駆動の制御データを対応づけた駆動制御情報を記憶する駆動制御情報記憶部を備え、
前記駆動制御部は、前記駆動制御情報記憶部から、前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに対応する前記駆動モータの回転駆動の制御データを読み出し、ここで読み出した制御データに基づいて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの回転駆動を制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項5】
前記駆動モータは、パルスモータであり、
前記駆動制御部は、前記モータ駆動部による前記パルスモータへの駆動パルス数を制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項1】
一方が駆動モータにより回転駆動される駆動ローラで、他方が前記駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラである一対の搬送ローラを複数並べて形成した搬送路に沿って、開いた状態の冊子を前記一対の搬送ローラで挟持して搬送する冊子状媒体処理装置において、
前記駆動モータを回転駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部が前記駆動モータを一定速度で回転駆動している状態で、前記搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化を検出する搬送速度変化検出部と、
前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化に応じて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの回転駆動を制御する駆動制御部と、を備えた冊子状媒体処理装置。
【請求項2】
前記搬送路に沿って搬送している開いた状態の冊子に貼付されている磁気ストライプに記録されている磁気データを読み取る磁気データ読取部を備え、
前記搬送速度変化検出部は、前記磁気データ読取部における磁気データの読取速度の変化を、前記搬送路に沿って搬送している冊子の搬送速度の変化として検出する、請求項1に記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記駆動制御情報記憶部から、前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに応じて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの駆動量を制御する、請求項1、または2に記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項4】
前記搬送路における冊子の搬送速度の複数の変化パターンについて、それぞれ前記駆動制御部による前記駆動モータの回転駆動の制御データを対応づけた駆動制御情報を記憶する駆動制御情報記憶部を備え、
前記駆動制御部は、前記駆動制御情報記憶部から、前記搬送速度変化検出部が検出した冊子の搬送速度の変化パターンに対応する前記駆動モータの回転駆動の制御データを読み出し、ここで読み出した制御データに基づいて、前記モータ駆動部による前記駆動モータの回転駆動を制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の冊子状媒体処理装置。
【請求項5】
前記駆動モータは、パルスモータであり、
前記駆動制御部は、前記モータ駆動部による前記パルスモータへの駆動パルス数を制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の冊子状媒体処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−254859(P2012−254859A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128761(P2011−128761)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]