説明

再使用のためにマイクロスケールデバイスを処理する方法およびシステム

本発明は、マイクロスケールデバイスを再使用のためにフラッシング、洗浄、およびプライミングするための、方法およびシステムを提供する。洗浄およびプライミングの方法は、マイクロ流体チップのウェルおよびマイクロチャネルをフラッシングするために、マニホールドから溶液を流すステップを含む。システムは、チップウェルを封止して、溶液またはガスをチップウェル内に流すように適合されたマニホールドを含む。デバイスは、マイクロスケールデバイスの再生ステータスを追跡するためのデータ記憶モジュールを有するマイクロ流体デバイスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年2月20日に出願された、ケチャギア(Kechagia)らによる米国仮特許出願第60/546,593号「再使用のためにマイクロスケールデバイスを処理する方法およびシステム(Methods and Systems for Processing Microscale Devices for Reuse)」、および2003年8月4日に出願された、ルリソン(Rulison)による仮特許出願第60/492496号「マイクロ流体チップの再調整のためのクレンザーの使用(Use of Cleansers to Recondition Microfluidic Chips)」の優先権および利益を主張するものである。前記先願のすべての開示は、その全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、分析システムの構成要素を、再使用のために再生するシステムおよび方法の分野に関する。特に、本発明は、マイクロ流体チップのフラッシング、洗浄、および再使用のためのシステムおよび方法を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体チップは、反復使用のための再生の際に問題が発生するため、一般には使い捨てデバイスである。マイクロチップの再使用は、取り扱いの問題、チップ内での試薬成分の蓄積、および一貫性のない結果を発生させる可能性のあるその他の変動要因が反復使用に伴って導入されることより、実用的でない場合がある。
【0004】
多くのマイクロ流体機器内で使用されるマイクロ流体チップは、機器全体の小さな部分であり、比較的安価な場合がある。マイクロ流体チップの自動化された製造プロセスにより、マイクロ流体チップのコストを削減すること、および異なるチップ上での実行の間で一貫した分析結果を提供することが可能となる。多くの場合、マイクロ流体チップは、マイクロ流体分析と関連した「使い捨て商品」と考えられている。しかし、大規模なマイクロ流体アッセイプロジェクトでは、チップのコストおよび廃棄物の発生が蓄積されて、非常に大きな出費となる可能性がある。さらに、同じハードウェア上で比較実験を実行するということには多くの利点がある。
【特許文献1】欧州特許出願EP1360992号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロ流体チップを洗浄して再使用するための試みは行われてきた。低予算および低人件費の実験室では、手作業でチップを洗浄することが知られている。チップのメーカーでは、マイクロ流体チップの試作品を手作業で洗浄することが知られている。それにもかかわらず、手作業による洗浄は大きな問題となる可能性がある。手作業によるマイクロ流体チップの洗浄は、実験台上で、技師が手作業により、ピペットを使用してマイクロリットル単位の量の洗浄溶液を個々のミリメートル単位の試薬ウェルに出し入れし、ポータルを通して挿入されたシリンジを使用してマイクロチャネルをフラッシングすることにより進められる場合がある。しかし、管理されていない環境により、および手作業の手順の不整合性により、しばしば問題が発生する。例えば、環境内の微粒子がチップ内に入ってマイクロチャネルを詰まらせる可能性、チップ内に意図せずに気泡が入る可能性、および試薬の使用と危険な廃棄物の蓄積が多くなりすぎる可能性がある。一貫性のない手作業による処理の結果として、手順の検証が困難になり、結果の信頼度が低下する可能性がある。手作業によるマイクロ流体チップの再生は、時間、労力、および経費が法外なものとなる可能性がある。
【0006】
チップの有効寿命を誤って超過しないように(超過すると、分析結果の崩壊という結果になる可能性がある)、再生されたマイクロ流体チップの識別情報および使用に関しては注意深く記録が維持されなければならない。現在のところ、そのような記録管理のために一般に使用される方法では、マイクロ流体デバイスの各個々のユーザが、どのマイクロ流体チップが使用されているか、デバイスが使用された目的、および使用中に処理されたサンプルの数をリストした、詳細な記録を維持する必要がある。この記録管理方法には、いくつかの制限がある。例えば、ユーザは単に、使用を記録し損なう可能性がある。また、マイクロ流体チップの表面に貼付された識別ラベルが、失われるか、またはマイクロ流体チップの湿式貯蔵のために判読不能になり、結果としてマイクロ流体チップを識別できなくなる可能性がある。識別ラベルが、マイクロ流体チップを保管するためのパッケージに貼付されている場合は、パッケージ内に間違ったデバイスが配置される可能性がある。
【0007】
上記を考慮すれば、マイクロ流体チップを再使用のために処理する、一貫した、高信頼の、制御された方法の必要性が存在することがわかる。マイクロ流体チップの再使用のためのクリーニングの、費用と廃棄物を減らすシステムが望まれている。マイクロ流体チップの使用履歴を効率的に、かつ高信頼で追跡するシステムおよび方法により、利益が提供される可能性がある。本発明は、これらの特徴、および以下を読むことにより明らかになるその他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マイクロスケールデバイスを、使用または再使用のために処理するのに役立つシステムおよび方法を提供する。システムは、例えば、溶液がオリフィスを通ってマイクロスケールデバイスのウェルおよび/またはチャネルに流れるためのメソスケール流路を有する、マニホールドを含んでいてもよい。本発明の方法は、例えば、1つまたは複数のオリフィスと流体接触した、メソスケールフラッシュチャネルおよび/または廃棄物チャネルを有する、マニホールドを提供するステップと、マイクロスケールデバイスのウェルをオリフィスと接触させるステップと、フラッシュチャネルからオリフィスを通してウェルへ処理溶液を流して、マイクロスケールデバイスを使用または再使用のために準備するステップとを含んでいてもよい。本発明のシステムおよび方法は、例えば、保存溶液をマイクロスケールデバイスからフラッシングすること、ワーキング溶液を使用してデバイスをプライミングすること、エンド処理溶液をデバイスからフラッシングすること、デバイスのチャネルおよび表面を洗浄すること、および/または、デバイスに保存溶液を満たすことが可能であってもよい。
【0009】
マイクロスケールデバイスを処理するための本発明のシステムは、例えば、1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいは1つまたは複数のメソスケール廃棄物チャネルを有するマニホールドと、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに機能的に接触するように適合された1つまたは複数のオリフィスと、メソスケールチャネル、オリフィス、およびマイクロスケールデバイスのウェルを含む流路内の1つまたは複数の処理溶液とを含んでいてもよい。システムの流路は、任意選択で、例えば、デバイスのマイクロスケールチャネル、および/または、マニホールドのメソスケール廃棄物チャネルを含んでいてもよい。
【0010】
システムは、例えば、所定の論理方式で処理溶液を選択し、流路を構成し、流量を制御し、流れ時間を制御するための、自動化されたフローコントローラを有していてもよい。自動化されたフローコントローラは、例えば、ソレノイドバルブ、空気圧バルブ、圧力調整器、デバイスハンドラなどのアクチュエータへの機能的な通信をインタフェースを介して行うコンピュータを含んでいてもよい。アクチュエータは、マイクロスケールデバイス内への、および/または、マイクロスケールデバイスから外への、処理溶液の流れを制御するために、システムのマニホールドと機能的に連結されていてもよい。本発明のシステムは、例えば自立型の独立した機器であってもよく、または、分析機器内に構成要素(例えば、サブシステム)として組み込まれていてもよい。
【0011】
システムのマニホールドは、例えば、処理溶液リザーバと、マイクロスケールデバイスのウェルとの間の流路区画を提供してもよい。マニホールドは、3次元的に延びるチャネル、溶液供給コンテナへの接続、および/または、制御アクチュエータのための取り付け位置を有する、多層構造であってもよい。マニホールドは、加圧された溶液を試薬コンテナから受け取ってもよく、また、メソスケールチャネルとオリフィスを通ってマイクロスケールデバイスのウェルに至るまでの適切な流路を提供してもよい。マニホールド内の流路は、1つまたは複数の寸法(例えば、幅および/または奥行き)が約5mm〜約0.1mmの範囲である、メソスケールチャネル区画を含んでいてもよい。そのようなメソスケールチャネルは、例えば、溶液のデッド容量を最小にし、小さなマニホールド内での複雑な3次元ネットワークを可能にするのに十分なだけ小さく、しかし、1つまたは複数のウェルあるいはマイクロスケールデバイスのマイクロスケールチャネルを通して処理溶液を迅速にフラッシングするための適切な流れを提供しながら、詰まりの問題を最小にするのに十分なだけ大きくてもよい。メソスケールフラッシュチャネルまたは廃棄物チャネル内の、溶液またはガスの流れは、例えば、溶液リザーバとオリフィスとの間の圧力差によって引き起こされてもよい。本発明の一態様では、例えば共通のオリフィスにおいてウェルへのアクセスを共有するために、フラッシュチャネルは廃棄物チャネルと軸を中心として同心円状になっていてもよい。
【0012】
システムマニホールドのメソスケールチャネルは、1つまたは複数のオリフィスにおいて終端してもよい。オリフィスは、例えば、サンプルウェル、試薬ウェル、廃棄物ウェルなどのマイクロスケールデバイスウェルにおいて、溶液を供給および/または除去してもよい。オリフィスは、例えば、マイクロスケールデバイスウェルを封止して、処理溶液を注入および/または除去するための、ノズルであってもよい。処理溶液は、例えば、洗浄溶液、保存溶液、あるいは、ウェルまたはマイクロチャネルを調整またはプライミングするための試薬であってもよい。処理溶液は、例えば、NaOH、水、試薬、界面活性剤、溶剤、加熱された溶液などを含んでいてもよい。オリフィスは、例えば、Oリング、および/またはウェル表面に相補的な先細り状の表面を提供することにより、ウェルに機能的に接触するように(例えば、ウェルを封止するように、またはウェルの至近距離に配置されるように)適合されていてもよい。オリフィスは、例えばウェルの効率的なフラッシングのために処理溶液またはフラッシングガスをウェル壁面上に均一に導く、例えば1つまたは複数のラジアルジェットを有していてもよい。
【0013】
好ましい実施形態では、システムマニホールドは、試薬コンテナから溶液供給ポートを通して溶液を受け取り、放射状に配置されたメソスケールチャネルを通してオリフィスに溶液を供給する、同心状のリングリザーバを有するように構成されてもよい。例えば、2つ以上の同心状のリングリザーバが、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、それらのリングリザーバの溶液は、1つまたは複数のチャネル区画で流路を共有してもよい。流路の共有は、通常、処理ステップの進行中に制御バルブにより制御される、メソスケールチャネル区画の論理的な順次タイムシェアリングにより構成される。
【0014】
システムのマニホールドは、例えば、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルに機能的に連結され、自動化されたフローコントローラと通信を行う、1つまたは複数の制御バルブを有していてもよい。制御バルブは、多くの場合、2つ以上のリングリザーバから流れるチャネルの間の交点に配置され、1つのリングリザーバからのチャネルに対しては常開、別のリングリザーバからのチャネルに対しては常閉になっている、3ウェイバルブである。制御バルブは、例えば、個々のウェル、2つ以上のウェル、または共通した処理溶液取り扱い要求を有するウェルのグループとの間の、処理溶液(またはフラッシングガス)の流れを制御することが可能である。例えば、1つの制御バルブが、サンプルウェル、試薬ウェル、洗浄ウェル、廃棄物ウェルなどのグループとの間のチャネル交点を制御することが可能である。制御バルブは、例えば、空気圧バルブ、ソレノイドバルブ、ニードルバルブ、積層バルブ、ダイヤフラムバルブ、スライダバルブ、ボールアンドシートバルブなどの、任意の適切なバルブであってもよい。
【0015】
処理溶液は、流路内の圧力差に沿って流れるガスを使用して、システムのチャネルおよびウェルからフラッシングされてもよい。1つのそのようなシステムは、処理溶液または廃棄物溶液がマニホールド、ウェル、またはマイクロ流体デバイスからフラッシングされるように、例えば、1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいは1つまたは複数のメソスケール廃棄物チャネルを有するマニホールドと、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルと機能的に接触するように適合された1つまたは複数のオリフィスと、圧力差を有する流路(1つまたは複数のメソスケールチャネル、1つまたは複数のオリフィス、およびマイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルを含む)の中のガスとを備えていてもよい。オリフィスとウェルとの間の接触は、例えば、フラッシュチャネルと廃棄物チャネルとの間の圧力差がウェルを介して継続可能なように、封止された接触であってもよい。一部または全部の圧力差は、例えば、廃棄物チャネルと流体接触した陰圧(大気圧よりも低い圧力)源などの、真空源によって提供されてもよい。ガスフラッシング流路の全体にわたっての圧力差は、例えば、約1psi〜約500psiの範囲であってもよい。流路は、1つまたは複数のマイクロチャネルを含んでいてもよい。
【0016】
本発明は、マイクロスケールデバイスに取り付けられたデータ記憶モジュールを含む。本発明のシステムは、例えば、マイクロスケールデバイスの使用に関連する情報を受信、記憶、および/または供給するための、データ記憶モジュールを備えたマイクロスケールデバイスを含んでいてもよい。例えば、マイクロスケールチャネルを有するマイクロスケールデバイスは、マイクロスケールデバイスの使用または洗浄の数をカウントするためのカウンタを含む、データ記憶モジュールを有していてもよい。マイクロスケールデバイスは、処理中のマニホールドオリフィスとの機能的な接触が可能であってもよい。データ記憶モジュールは、データリーダとの通信を容易にするように適合された向きに取り付けられてもよい。例えば、データ記憶モジュールは、マイクロ流体チップを保持する取り付けプレートに取り付けることにより、マイクロスケールデバイス(例えば、マイクロ流体カートリッジ)に取り付けられてもよく、または、データ記憶モジュールは、マイクロスケールデバイスに直接取り付けることにより、マイクロスケールデバイスに取り付けられてもよい。好ましい実施形態では、データ記憶モジュールは、無線周波数識別(RFID)タグである。
【0017】
データ記憶モジュールは、マイクロスケールデバイスまたは関連するシステムの動作の中で役立つ任意のデータを保持してもよい。データ記憶モジュールは、例えば、モジュールと通信を行っているリーダまたはその他のデバイスによりプログラム可能な、プログラマブルメモリを含んでいてもよい。モジュールにより記憶されるデータは、例えば、デバイス識別データ、デバイス使用データ、サンプル分析データ、処理サイクルデータ、部品番号、シリアル番号、作業命令番号、デバイス設計番号、キャリブレーションデータ、製造日、有効期限、使用限度数、エラーコードなどを含んでいてもよい。例えば、データ記憶モジュールは、マイクロスケールデバイスの洗浄サイクルの回数をカウントおよび記憶するように構成されていてもよい。好ましい実施形態では、マイクロスケールデバイスは2回以上使用されてもよく、データ記憶モジュールは、各使用とともにインクリメントされる使用カウントを提供してもよい。別の好ましい実施形態では、洗浄サイクルの回数が、プログラマブルメモリ内に記憶された所定の回数に達した場合に、マイクロスケールデバイスの使用は中止される。
【0018】
マイクロスケールデバイス内のデータ記憶モジュールとの通信を行うために、リーダが提供されてもよい。リーダは、例えば、無線周波数トランスミッタ、無線周波数レシーバ、アンテナ、データプロセッサ、ユーザインタフェース、光ファイバ、光トランスデューサ、および/または、データ記憶モジュールへの電気的接続などの構成要素を含んでいてもよい。リーダは、例えば、モジュールに電源を供給すること、および/または、トランスミッタを使用してデータ記憶モジュールにデータを送信することが可能である。リーダは、マイクロスケールデバイスに組み込まれていてもよく、ハンドヘルドであってもよく、または、データ記憶モジュールと通信を行うための独立した機器に組み込まれていてもよい。
【0019】
本発明は、マイクロスケールデバイスを、使用または再使用のために処理する方法を含む。例えば、本発明は、1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルまたはメソスケール廃棄物チャネルを有するマニホールドを提供するステップと、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、マイクロスケールデバイスのウェルと機能的に接触するように適合されたオリフィスを提供するステップと、ウェルをオリフィスと接触させるステップと、マイクロスケールデバイスのウェルおよび/または1つ以上のマイクロチャネルを処理するために、1つまたは複数の処理溶液をフラッシュチャネルを通してウェル内に流すステップとによってマイクロスケールデバイスを処理する方法を含む。好ましい実施形態では、マイクロスケールデバイスの再使用の前に、マイクロスケールデバイスのウェルおよびマイクロチャネルが、マニホールドのフラッシュチャネルからの、洗浄溶液を使用して洗浄され、分析試薬を使用してプライミングされる。本発明の方法を使用することにより、マイクロスケールデバイスは、5回、10回、20回、30回、またはそれ以上の使用のために効果的に処理されてもよい。
【0020】
マイクロスケールデバイスを、再使用のために処理する一般的な実施形態では、マイクロスケールデバイスの2つ以上のウェルに一度に機能的に接触するように適合された構成でマニホールド上に配置された2つ以上のオリフィスを有するマニホールドが提供され、オリフィスはウェルに機能的に接触するように配置され、処理溶液は、マニホールドフラッシュチャネルからオリフィスを通してウェル内に流れ、マニホールド廃棄物チャネルを通して、および/またはマイクロスケールデバイスの1つまたは複数のマイクロチャネルを通して、外に流れる。2つ以上のウェルを一度に処理するための方法では、マニホールドオリフィスの配置は、所定のウェルの組の向きに従うように、固定されていてもよく、または、異なるマイクロスケールデバイス上の異なるウェルの向きに従うように、調整可能であってもよい。一般的な実施形態では、マニホールド上のオリフィス、および/または、マイクロスケールデバイス上のウェルの、数の範囲は、約2〜約32、34、またはそれ以上であってもよい。
【0021】
別の実施形態では、使用済みマイクロスケールデバイスを再生するための本発明の方法は、マイクロスケールデバイスをマニホールドと機能的に接触するように配置するステップと、マイクロスケールデバイス内の1つまたは複数のウェルまたはマイクロスケールチャネルを洗浄するために、1つまたは複数の処理溶液をマニホールドからマイクロスケールデバイスへ流すステップと、プライミング溶液を使用してマイクロスケールデバイスをプライミングするステップと、マイクロスケールデバイスを再使用するステップとを含んでいてもよい。
【0022】
本発明の方法では、マニホールドは、例えば、マシニング、射出成形、リソグラフィ、積層構築、エッチングなどの技術により製造されてもよい。マニホールドは、約5mm〜約0.1mmの範囲の寸法を有するメソスケールフラッシュおよび/またはメソスケール廃棄物チャネルを含むように製造されてもよい。
【0023】
処理溶液は、例えば、メソスケールチャネルの全体にわたっての圧力差、および/または、チャネル内の制御バルブにより確立された流路を通しての圧力差による力のもとで、マニホールドチャネル内を流れてもよい。本方法で使用される処理溶液は、例えば、NaOH、水、界面活性剤、試薬、溶剤、高温溶液などを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、特定の故障モードまたはチャネル内のデブリの存在という問題が発生したマイクロスケールデバイスは、両性界面活性剤とキレート化剤の組み合わせを含むアルカリ性洗浄溶液を使用してデバイスをフラッシングすることにより再調整されてもよい。1つのそのようなアルカリ性洗浄溶液は、例えば、湿潤剤、乳化剤、両性界面活性剤、錯化剤、および燐酸カリウムの配合物である、ヘルマネックス(Hellmanex)II(ヘルマ社(Hellma GmbH&Co KG)、ミュールハイム(Muellheim)、ドイツ)であってもよい。処理溶液は、フラッシング、洗浄、プライミングのため、または保存の準備のために、例えば、サンプルウェル、試薬ウェル、または廃棄物ウェルなどのウェル内に強制的に入れられてもよい。
【0024】
本発明の方法の、ウェルに機能的に接触するように適合されたオリフィスを提供するステップは、例えば、オリフィスとウェルとの間にOリングを提供するステップ、先細り状のウェル壁面を提供するステップ、ウェル壁面に適合する先細り状のオリフィスを提供するステップ、または、ウェルからの処理溶液のオーバフローを防止するのに適切な、廃棄物チャネルの流れを提供するステップを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、オリフィスとウェル壁面との間に適合しているOリングは、マニホールドとマイクロスケールデバイスとの間の圧力差を伝達することが可能な封止を形成する。一実施形態では、オリフィスがウェルに封止され、圧力下の溶液またはガスは、オリフィスから流れ、ウェルを出て、マニホールドの廃棄物チャネル、またはマイクロスケールデバイスのマイクロチャネルを、交互に通るように導かれてもよい。そのような場合、加圧された溶液またはガスの流れは、任意選択で、代わりの出口であるメソスケール廃棄物チャネルの制御バルブを閉じることにより、マイクロスケールチャネルに導かれてもよい。別の態様では、ウェル壁面のフラッシングの効率を高めるために、ガスまたは処理溶液は、オリフィス内の1つまたは複数のラジアルジェットを通して流れてもよい。
【0025】
本発明の方法は、処理溶液の所望の流れを提供するための、リングリザーバおよび制御バルブの提供を含んでいてもよい。リングリザーバは、制御バルブと、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルとを介して、オリフィスと流体接触していてもよい。チャネルを通した処理溶液またはガスの流量および流路は、例えば、チャネル区画の全体にわたっての圧力差を調整することにより、および/または、チャネル内の制御バルブを調整することにより、制御されてもよい。制御バルブは、個々のウェルへの溶液またはフラッシュガスの流れをそれぞれ制御してもよく、または、特定のウェルのグループにおいて終端する2つ以上のチャネル支線を制御してもよい。廃棄物メソスケールチャネル内に配置された制御バルブは、開いている場合に処理溶液が廃棄物リングリザーバに流れ入り、閉じている場合に処理溶液がウェルのマイクロチャネルに流れ入るように、処理溶液を交互に導くために使用されてもよい。多くの場合、マイクロチャネルを処理する前に、ウェルを処理することが好ましい。
【0026】
制御システムは、複数のウェルへの、複数の溶液の流れを、正確なタイミングで柔軟に制御してもよい。本発明の一態様では、2つ以上のウェルが、異なる量の処理溶液を受け取るように、異なる種類の処理溶液を受け取るように、異なるフラッシングガスの流れを受け取るように、および/または、異なる時期に処理溶液を受け取るように、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネル内の流れが制御されてもよい。
【0027】
本発明の方法は、フラッシングガスを使用して流路をフラッシングするステップを含んでいてもよい。例えば、供給ラインとポート、リングリザーバ、メソスケールフラッシュチャネル、ウェル、メソスケール廃棄チャネル、および/またはマイクロチャネルから、処理溶液をフラッシングするために、流路に沿って圧力差が作られてもよい。マニホールドおよび/またはマイクロスケールデバイスから処理溶液をフラッシングする方法は、1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルまたはメソスケール廃棄物チャネルを有するマニホールドを提供するステップと、フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルと機能的に接触するように適合された、1つまたは複数のオリフィスを提供するステップと、1つまたは複数のウェルを1つまたは複数のオリフィスと接触させるステップと、マニホールドの1つまたは複数のメソスケールチャネル、1つまたは複数のウェル、および/または、マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のマイクロチャネルから処理溶液をフラッシングするために、1つまたは複数のウェルとフラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルとを含む流路を通してガスを流すステップとを含んでいてもよい。マイクロチャネルは、通常、マイクロチャネルと流体接触したウェルにマニホールドオリフィスを封止し、溶液が廃棄されるように強制するために圧力を提供することにより、ガスを使用してフラッシングされる。
【0028】
本発明の方法は、マイクロスケールデバイスのウェルおよびマイクロチャネルを、効果的にフラッシングおよび洗浄することができる。テストサンプルまたは分析試薬などのアッセイ溶液は、高い効率で、ウェルおよびチャネルの容積と表面から取り除かれることが可能である。例えば、本発明の方法を使用したマイクロスケールデバイスの処理は、ウェル内および/またはマイクロスケールチャネル内の検体を、100万分の1に、または1百万分率(part per million)(ppm)未満に減らすことができる。
【0029】
定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、多様であることが当然可能な、特定の装置または方法に限定されないということが理解されるべきである。さらに、ここで使用されている用語は、特定の実施形態のみの説明を目的とするものであり、限定することを意図したものではないということも理解されるべきである。本明細書および添付した特許請求の範囲では、単数形で記載されていても、内容により明確に示されていない限り、複数を指す場合がある。したがって、例えば、「構成要素」という記載は、2つ以上の構成要素の組み合わせを含む場合があり、また、「試薬」という記載は、試薬の混合物を含む場合がある。
【0030】
特に定義しない限り、ここで使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明に関連する技術分野の当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施には、ここで説明する内容に類似した、または、ここで説明する内容を修正した、あるいは、ここで説明する内容と同等の、多くの方法および材料を、必要以上の実験を行うことなしに使用することが可能ではあるが、ここでは、好ましい方法および材料について説明する。本発明の説明および特許請求において、以下の用語は、以下に記載した定義に従って使用される。
【0031】
「メソスケール」という用語は、ここで使用される場合、約5mm〜約0.1mmの範囲の寸法を表す。メソスケールチャネルは、例えば、メソスケール範囲の直径、幅、および/または厚さを有していてもよい。
【0032】
「マイクロチャネル」という用語は、ここで使用される場合、例えば約500μm〜約0.1μmの、マイクロスケール範囲の寸法を有するチャネルを表す。
【0033】
「マイクロスケールデバイス」という用語は、ここで使用される場合、1つまたは複数のマイクロチャネルを有するデバイスを表す。代表的なマイクロスケールデバイスは、例えば、マイクロ流体チップ、またはマイクロ流体カートリッジである。
【0034】
「マイクロ流体カートリッジ」という用語は、ここで使用される場合、取り付けプレート(例えば、キャディー)に取り付けられたマイクロ流体チップを含む、マイクロスケールデバイスを表す。
【0035】
「データ記憶モジュール」という用語は、ここで使用される場合、情報を保持することが可能なデバイスを表す。一般に、本発明のデータ記憶モジュールは、識別子、現在のステータス、またはイベントカウントの保持および指示が可能な、電気的または機械的な装置である。本発明のデータ記憶モジュールの多くの実施形態は、集積回路などの、電子メモリを有する構成要素を含む。好ましい実施形態では、データ記憶モジュールは、リーダからの命令を受信すること、またはリーダに情報を送信することが可能な、無線周波数識別(RFID)タグである。
【0036】
「オリフィス」という用語は、ここで使用される場合、本発明のマニホールドの外面上またはその付近で終端する、メソスケールフラッシュチャネルまたはメソスケール廃棄物チャネルの領域を表す。オリフィスは、通常、溶液および/またはガスを、提供および/または除去するために、マイクロスケールデバイスのウェルと機能的に接触するように、マニホールドの表面上で適切な向きに配置される。いくつかの実施形態では、オリフィスは、マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに溶液を供給するための、またはマイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルから溶液を除去するための、ピペットチップまたはノズルなどの突起要素であってもよい。
【0037】
「ラジアルジェット」という用語は、ここで使用される場合、オリフィスの外面上に放射状に配列された、フラッシュチャネルからの流出口を表す。ラジアルジェットは、例えば、ウェル壁面およびオリフィスとウェルとの間の空間を均一にフラッシングするための、ウェル壁面上への直接的な流れのために配列されてもよい。任意選択で、ラジアルジェットは、溶液またはガスをウェルから均一に除去するために、廃棄物チャネルと流体接触していてもよい。
【0038】
「ウェル」という用語は、ここで使用される場合、マイクロスケールデバイス内への流体アクセスのポートを表す。ウェルは、通常、デバイスの動作時に使用される、例えば試薬、緩衝液、サンプル、対照、リファレンス、洗浄溶液、廃棄物溶液などの溶液を受け取って保持するチャンバーを、マイクロスケールデバイスの上に保持している。一部のマイクロスケールデバイスは、流体アクセスのポートにおいて、一般的なマイクロ流体カートリッジウェルを有さない場合があり、したがって、マイクロスケールデバイスへの流体アクセスの、任意の封止可能なポートが、本発明の「ウェル」と見なされてもよいということを、当業者は理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
マイクロスケールデバイスの通常の使用中に、ウェルおよびマイクロチャネルをアッセイ溶液に晒すと、結果として、化学反応が発生して溶液成分が表面上に蓄積される可能性がある。例えば、蛋白質、疎水性成分、ポリマー、および/またはイオン性基が、ウェルおよびチャネルの壁面上に吸着される可能性がある。微粒子がデバイス内に入り、流れを制限する可能性がある。特に再使用の場合は、溶液成分の蓄積が、流れ、および/または、検出器の感度に影響を及ぼし始め、結果として、感度、精度、および再現性が失われる可能性がある。
【0040】
本発明は、再利用のためにマイクロスケールデバイスを洗浄および/またはプライミングするための、方法およびシステムを提供する。本発明の方法は、例えば、マイクロスケールデバイスのウェルを封止するように適合されたオリフィスと流体接触したメソスケールチャネルを備えたマニホールドを提供するステップと、ウェルを封止するようにオリフィスを配置するステップと、マイクロスケールデバイスを洗浄またはプライミングするために、1つまたは複数の溶液をウェルに流入させるステップとを含んでいてもよい。本発明のシステムは、一般に、例えば、制御された流路を通してマイクロスケールデバイスのウェルに溶液および/またはフラッシングガスを配送するための、1つまたは複数のオリフィスに至るメソスケールチャネルを有するマニホールドを含む。システムおよび方法は、品質管理の目的のために洗浄または使用サイクルを追跡するための、データ記憶モジュールを使用してもよい。
【0041】
マイクロスケールデバイスを再生するためのシステム
本発明の、マイクロスケールデバイスを再生するためのシステムは、一般に、リザーバおよびバルブを通した、マニホールド内のメソスケールチャネルへの、そしてマイクロスケールデバイスのウェルを封止するように適合されたオリフィスから外への、コンピュータ制御された溶液の流れを含む。システムは、溶液の消費を減らし、処理時間を短縮するために、リザーバおよびチャネルの効率的なレイアウトを有していてもよい。システムは、マイクロスケールデバイスの効率的で一貫性のある再生のために、情報を処理し、流れを論理的に導く、制御構成要素を有していてもよい。
【0042】
システムは、フラッシングガス、洗浄溶液、および/またはプライミング試薬を、マイクロスケールデバイスの壁面および/またはマイクロチャネルに導くことにより、マイクロスケールデバイスを再使用のために処理してもよい。本発明のマイクロスケールデバイスは、例えば、約0.5μm〜約500μm、約1μm〜約500μm、または約10μm〜約100μmのマイクロスケール範囲の寸法のチャネルを有する、マイクロ流体チップを含む。マイクロスケールデバイスは、例えば、デバイスの外面におけるウェルまたはポートから、インキュベーションチャネル、セパレーションチャネル、および検出チャネルなどの機能チャネル領域へ、そして廃棄物ウェルへの出口に至る、マイクロチャネルを含んでいてもよい。マイクロスケールデバイスは、例えば、洗浄溶液、分析試薬、サンプル、廃棄物、対照などの溶液を保持する、ウェルを含んでいてもよい。本発明のシステムは、マイクロスケールデバイスを再使用のために処理(フラッシング、洗浄、および/またはプライミング)するためのガスまたは溶液を連続的に適用するための、ウェルを封止するように適合された、またはマイクロスケールデバイスのチャネルと流体接触したその他のポートを封止するように適合された、マニホールドを有していてもよい。
【0043】
一般的なシステムでは、例えば、処理溶液が、マイクロスケールの試薬容器内に保持され、自動制御のもとで、本発明のマニホールド内のリングリザーバに導かれる。溶液は、リングリザーバから、自動バルブにより制御されたメソスケールチャネルを通して、マイクロスケールデバイスのウェルを封止するオリフィスに、連続的に流れる。所望どおりの流れを発生させるために、マニホールドのメソスケールチャネルおよび/またはマイクロスケールデバイスのマイクロスケールチャネルの全体にわたって圧力差を誘導することができる。例えば、処理溶液は、加圧された試薬容器から、リングリザーバを通り、開制御バルブを通過し、マニホールドオリフィスを出て、マイクロスケールデバイスのウェル内に流れてもよい。処理溶液は、ウェルをフラッシングおよび洗浄した後、メソスケール廃棄物チャネルを通してウェルから除去され、陰圧(相対的低圧)下の廃棄物リザーバ内に流れてもよい。任意選択で、処理溶液は、ウェルを封止するオリフィスから、マイクロスケールデバイスのマイクロチャネルを通して、圧力下で継続して流れてもよい。
【0044】
本発明のシステムは、独立型の装置であってもよく、あるいは、例えば、マイクロスケールデバイスを使用したマイクロ流体分析機器内に組み込まれていてもよい。マイクロスケールデバイスを再生するための独立型のシステムは、例えば、多数の使用済みマイクロスケールデバイスを、各デバイスを順に再生するために、いくつかの分析機器から受け取ってもよい。マイクロスケールデバイスの、機器への、および機器からの移送は、技師またはロボット装置によって、あるいはコンベアシステムによって行われてもよい。システムは、例えば、使用サイクルを追跡するため、および/または、各特定のマイクロスケールデバイスにとって適切な洗浄およびプライミングパラメータを指定するために、マイクロスケールデバイスに結合されたデータ記憶モジュールと通信を行ってもよい。任意選択で、本発明のシステムは、マイクロスケールデバイスを使用する装置に組み込まれた専用構成要素であってもよい。
【0045】
マニホールド
本発明のマニホールドは、例えば試薬容器から、リングリザーバに至り、メソスケールチャネルを通って、制御バルブを通過し、そしてオリフィスから出て、マイクロスケールデバイスのウェルに至るまでの、溶液の効率的な流量制御を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、マニホールドは、フラッシングガスの流量制御を、類似した方法で提供してもよい。マニホールドは、マイクロスケールデバイスのフラッシング、洗浄、またはプライミングに必要ないくつかの機能を組み合わせるための構造を提供する。例えば、マニホールドは、試薬導管から溶液を受け取るための構造、溶液を均一かつ迅速に少量分配するためのリングリザーバ、溶液を目的のウェルへ、および目的のウェルから導くためのメソスケールチャネル、制御バルブの取り付けおよびバルブを作動させるエネルギーの受け取りのための構造、コンピュータシステムと、データ記憶モジュール、トランスデューサ、およびセンサとの間にデータ通信回線を取り付けて配線するための構造、ならびに/あるいは、マイクロスケールデバイスのウェルとの、オリフィスの適切な位置合わせおよび接触のための取り付け面を提供する。マニホールドは、通常、マイクロスケールデバイスへの溶液の供給およびマイクロスケールデバイスからの溶液の除去を迅速に行い、さらに、廃棄物の生成を減少させるように配置された、3次元方式の内部溶液リザーバおよびチャネルを有する、ラミネート構造である。
【0046】
本発明のマニホールドは、例えば、図1に示すように、積層状マニホールド組立体10を含み、積層状マニホールド組立体10の中では、溶液が、溶液供給ポート11から、同心状のリングリザーバ12に、そしてメソスケールチャネル13を通して、マイクロスケールチップのウェルと機能的に整列するように配置されたオリフィス14に供給される。放射状設計により、例えば、リザーバとオリフィスとの間の均一な経路長、リザーバとオリフィスとの間の短い経路長、2つ以上の溶液を配送するためにチャネル区画を共有する機能、および各個々のオリフィスに至る個々の制御可能なチャネルの可能性を含む、多くの利点が提供される。均一な経路長により、各ウェルにおける均一な量の配送および均一な溶液供給時間のための、均一な流れ抵抗が提供されることが可能となる。短い経路長により、処理のサイクル時間を短縮し、溶液の廃棄物を減らすことが可能となる。チャネル区画の共有により、制御システムを簡素化し、チャネルのレイアウトを単純にし、溶液廃棄物を減らすことが可能になる。各ウェルへの溶液の流れを個々に制御する機能により、配送される溶液の種類、配送のタイミング、配送する量などを、処理される各マイクロスケールデバイスウェルについて、別々に決定する柔軟性が提供される。
【0047】
放射状設計は、例えば、図2に示すような3次元ラミネートマニホールド構造を使用することに実施されてもよい。リングリザーバ12は、マニホールド層を貫通する溶液供給ポート11から、リングリザーバと交差する位置において、溶液またはガスを受け取ってもよい。メソスケールチャネル13は、マニホールド層の平面内を通って、接続チャネル20との流体接触を行い、他のマニホールド層を横切って、例えば、オリフィス14において終端する。空気圧アクチュエータ21は、リングリザーバから溶液を運んでいるメソスケールチャネル区画に対応する、マニホールド上の位置に、並べて取り付けられていてもよい。空気圧アクチュエータは、マニホールド層を貫通して、メソスケールチャネル区画に隣接する点にある制御バルブ機構に動力を供給してもよい。これにより、各リングリザーバから、メソスケールチャネルを通って、各オリフィスおよびマイクロスケールデバイス22のウェルに至る溶液の流れが、空気圧アクチュエータにガス圧力を加えることによって制御されることが可能になる。
【0048】
本発明のマニホールドは、マイクロスケールデバイスのウェルから廃棄物溶液を運び去ってもよい。例えば、図2に示すように、廃棄溶液除去マニホールド層23内のメソスケールチャネルは、一方の端がオリフィスと流体結合され、もう一方の端は、廃棄物ポート24に連結されたリングリザーバに流体結合されていてもよい。オリフィスから廃棄物溶液リングリザーバへの流れを発生させるために、廃棄物ポートは、真空源と流体接触していてもよい。オリフィス14は、2つ以上のメソスケールチャネルに通じていてもよい。例えば、図3に示すように、溶液および廃棄物の接続チャネル区画20は、並べて、または同心状に、オリフィスまで通されていてもよい。
【0049】
溶液は、メソスケールチャネルに直接提供されるか、または、リング設計ではないリザーバを通して提供されてもよいが、本発明のマニホールドでは、リングリザーバを使用することが好ましい。メソスケールチャネルへの供給が、溶液ポートから直接行われるか、または、偏心したリザーバから行われる場合、異なるオリフィスに到達するための流路長は、通常、大幅に異なることになる。流路長が異なることの結果として、流路抵抗が大幅に異なり、配送時間が一致せず、異なるオリフィスでは配送量も異なることになる可能性がある。リングリザーバを使用せずに均一な流路長を提供するための取り組みでは、多くの場合、曲がりくねった、または不規則に曲がるチャネルが必要とされ、通常、その流路長は最も長いものとなる。流路長が長い場合、結果として、溶液の移動および溶液の廃棄はより遅くなる可能性がある。
【0050】
一実施形態では、異なる外径を有するリングリザーバが、マニホールドの異なる層内に、同心状に配置されてもよい。直径が異なることにより、溶液供給ポートまたは廃棄物ポートから、目的としないリザーバと接触することなしに、いくつかのマニホールド層を通してリザーバに到達することが可能となる。異なる直径を有するリングリザーバにより、共有メソスケールチャネル区画を通した、連続溶液の自動フラッシングの進行が可能となる。例えば、3つの溶液を必要とする洗浄およびプライミングシーケンスは、処理溶液が、第1のメソスケールチャネルを通して、内側のリングリザーバから流れて、マイクロスケールデバイスのウェルを洗浄することから開始されてもよい。リンス溶液が、第2のメソスケールチャネルを通して、中間半径リングリザーバから流れて、共有されている第1のメソスケールチャネル区画と交差してフラッシングし、その後、ウェルのリンスを行ってもよい。最後に、プライミング溶液が、第3のメソスケールチャネルを通して、外半径リングリザーバから流れて、共有されている第2の、次に第1の、メソスケールチャネル区画と交差してフラッシングし、その後、ウェルのプライミングを行ってもよい。このシーケンスでは、利用可能なメソスケールチャネルが効率的に使用される。このシーケンスでは、内側のメソスケールチャネルから以前の緩衝液をフラッシングすることにより、溶液の浪費を減少させ、「役に立たない」チャネル内での溶液の停滞を回避し、マニホールドがその後動作する間の試薬の相互汚染の可能性を減少させる。
【0051】
制御バルブが、例えば、リングリザーバとオリフィスとの間の流路内に配置されてもよい。一般に、制御バルブは、メソスケールチャネルとリングリザーバとが接触する点に配置される。内側のリングリザーバからの流れを制御する制御バルブは、通常、内側のリングリザーバと、内側のリングリザーバから離れるメソスケールチャネルと、外側のリングチャネルから来るメソスケールチャネルとの共通の交点に配置された3ウェイバルブである。3ウェイバルブは、例えば、バルブの作動により、内側のリングリザーバからの流れから、外側のリングリザーバからの流れに変更されるように、内側のリングリザーバからの流れに対しては常開、外側のリングリザーバからのメソスケールチャネル内の流れに対しては常閉であってもよい。代替の機能バルブ構成は、当業者にとって明らかであろう。制御バルブは、例えば、空気圧バルブ、ソレノイドバルブ、ニードルバルブ、積層バルブ、ダイヤフラムバルブ、スライダバルブ、ボールアンドシートバルブなどの、特定のシステムに適切な任意のバルブであってもよい。バルブの作動(切り換え)は、例えば、手動で、電気的に、空気圧により、または液圧により行われてもよい。一実施形態では、マニホールド内の溶液の流れの自動制御を提供するために、コンピュータインタフェースによりガスライン上のソレノイドバルブが電気的に作動させられて、加圧されたガスが解放され、それによりマニホールド上の制御バルブに連結された空気圧アクチュエータが作動させられる。任意選択で、メソスケールチャネルの流れは、ソレノイドバルブによって直接制御されてもよい。溶液またはガスは、各個々のオリフィスへの流れを制御する専用のバルブを作動させることにより、個々のウェルまたはウェルのグループに出入りするように導かれてもよい。任意選択で、共通の溶液またはガスを必要とするウェルのグループは、単一のソレノイドバルブまたは空気圧バルブにより流れが制御される複数のメソスケールチャネルを通して、オリフィスのグループから溶液を受け取ってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、圧力差により、廃棄物溶液が、マイクロスケールデバイスのウェルから、マニホールド内のメソスケール廃棄物チャネルを通して除去されてもよい。一実施形態では、図4に示すように、メソスケール廃棄物チャネル40が、廃棄物御バルブ42を介した、真空源廃棄物コンテナ41とオリフィス14との間の流体接点を提供する。マニホールドは、溶液を、溶液リザーバ12から、メソスケールフラッシュチャネル13を通して流し、ラジアルジェット45を介してオリフィスから流れ出させて、ウェルの壁面に接触させることにより、マイクロスケールデバイス43のウェル44を処理するように動作させられてもよい。溶液は、ウェル全体をフラッシングするにつれて、オリフィスの(関連するフラッシュチャネルと同心状の)廃棄物チャネル46を通し、廃棄物溶液メソスケールチャネルを通して、真空源廃棄物コンテナに排出されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、マニホールド10のオリフィス14と、(図3にも示す)マイクロスケールデバイス43のウェル44との間に配置されたOリング30によって、封止が形成されてもよい。ウェルをフラッシングおよび洗浄するために、溶液リザーバからの加圧された溶液は、オリフィスジェットからウエルに流れ入り、そして同心状の廃棄物チャネルに流れ出てもよい。任意選択で、加圧された溶液またはガスをマイクロスケールチャネル内に導き、それによりマイクロチャネルを洗浄またはプライミングするために、廃棄物制御バルブが閉じられてもよい。
【0053】
マニホールドまたはマイクロスケールデバイス構成要素のガスフラッシングを含む多くの実施形態では、制御バルブおよびチャネルが、加圧されたフラッシュガス源からのガスの流れを導いてもよい。マニホールドは、圧力勾配を有する流路に沿ってフラッシングガスを導くことにより、メソスケールチャネル、ウェル、および/またはマイクロスケールチャネルから、溶液をフラッシングするように動作させられてもよい。例えば、図4に示すように、フラッシュガス源48と真空源41との間に圧力差を作ることにより、マイクロスケールデバイスウェル44から、デバイス実行後の残存処理溶液が取り除かれてもよい。例えば、加圧された空気がガス源(通常は、大気圧よりも大きな圧力を有する)を出て、適切に構成された制御バルブを通り、フラッシュチャネル13を通って、ラジアルジェット45を介してオリフィスから流れ出て、ウェルの壁面に触れ、残存溶液をフラッシングにより取り除いてもよい。溶液およびガスは、真空源からの多大な寄与による圧力差を有する流路に従って、オリフィス廃棄チャネル46を通り、メソスケール廃棄物チャネル40を通って進み、廃棄物コンテナ41に吸い込まれてもよい。図4の構成で、フラッシュガスは、(2つ以上の処理溶液で共有される)メソスケールフラッシュチャネル区画、ウェル、メソスケール廃棄物チャネル、および任意選択でマイクロチャネルから、処理溶液をフラッシングにより取り除いてもよい。他の構成では、フラッシュガスは、例えば、独立したリングリザーバ、フラッシュチャネル、オリフィス、および/または、廃棄物チャネルなどの、処理溶液の流路からは独立した流路を有していてもよい。ガスをフラッシングするための圧力差は、加圧されたガス源と、大気ベント、大気圧源、および真空源との間で、または加圧源と真空源との間で提供されてもよい。ガスフラッシュ流路内の圧力差は、約1psi〜約500psi、約10psi〜約100psi、または約15psiの範囲であってもよい。オリフィスとウェルとの間の封止された接点が、フラッシュチャネルと廃棄物チャネルとの間での圧力差の継続を可能にしてもよい。一実施形態では、残存処理溶液は、真空源へと流れる大気(フラッシュガス)によってウェルからフラッシングされる、つまり、溶液は、真空源によってウェルから吸引される。別の実施形態では、オリフィスからの加圧されたフラッシュガスのジェットが、残存溶液を、ウェルの上部を通して外に排出する。他の実施形態では、オリフィスがウェルを封止し、加圧されたフラッシュガスが、溶液を、ウェルと流体接触したマイクロ流体デバイスのチャネルから押し流すために使用される。
【0054】
メソスケールチャネルは、通常、リザーバとマニホールドオリフィスとの間に通される。本発明のメソスケールチャネルの寸法は、例えば、直径、幅、および/または厚さが、例えば、約5mm〜約0.1mm、約1mm〜約0.2mm、または約0.5mmのメソスケール範囲である。メソスケール範囲は、本発明のシステム内で、マイクロスケールデバイスのウェルに溶液またはガスを供給するため、およびマイクロスケールデバイスから廃棄物溶液を除去するために有用である。メソスケールチャネルは、マイクロスケールデバイスのウェルおよび/またはマイクロスケールチャネルへの、機能的なフラッシング、洗浄、およびプライミングの流れを、短い時間間隔にわたって供給するための、適切な容量を、一般に使用される圧力下で有する。より大きなチャネルは、マニホールド内で余分な空間を占め、多くの場合、溶液の廃棄物を増加させる可能性がある。より小さなチャネルは、多くの場合、不適切な、または信頼性の低い溶液流量を提供する可能性がある。
【0055】
本発明のマニホールド上のオリフィスは、マイクロスケールデバイスの構成要素を、例えばフラッシング、洗浄、リンス、および/またはプライミングするために、マイクロスケールデバイスのウェルと相互作用する。オリフィスは、例えば、マニホールドの表面と同一平面上にあるか、または、ウェルと機能的に相互作用するために、マニホールドからある程度突出していてもよい。2つ以上のオリフィスが、2つ以上の対応するウェルと相互作用する場合、オリフィスは、ウェルとの機能的な接触のために適切に並ぶように、マニホールドの表面上で間隔を空けて配置されてもよい。好ましい実施形態では、マニホールドは、4つのオリフィス、8つのオリフィス、約16のオリフィス、約34のオリフィス、またはそれ以上を有する。オリフィスの配列は、特定のマイクロスケールデバイス上の対応するウェルの配列と相互作用するように、マニホールド上に恒久的に配置されてもよく、または、オリフィスは、異なる配置のウェル配列との機能的な相互作用を可能にするために、マニホールド上で調整可能な位置を有していてもよい。任意選択で、オリフィス配列は、特定のマイクロスケールデバイスに適合された数および位置のオリフィスを有し、標準化されたマニホールド構造に、所望の流体接続を有して装着することが可能な、交換可能な付属設備として提供されてもよい。
【0056】
オリフィスは、特定のマイクロスケールデバイスのウェルと機能的に相互作用するように成形されていてもよい。ウェルが、マイクロスケールデバイスの表面と同一平面上にある単純なアクセスポートである場合、オリフィスは、ウェルとの接点において、例えばOリングによって封止可能な、例えば平らな面を提供してもよい。より一般的には、ウェルは、マイクロスケールデバイスの上面にある、上部が覆われていない、壁で囲まれたチャンバーである。この場合、例えば図3に示すように、オリフィスは、ウェルの表面に相補的な構造によって適合するように、突き出ていてもよい。例えば、当業者によって理解されるように、円錐形または半球形のオリフィスは、円柱形、円錐形、または半球形のウェルに挿入される際に、自動調心されてぴったりと適合することが可能である。先細り形状を有する突起型オリフィスは、マイクロスケールデバイスへのマニホールドの位置合わせおよび封止に役立つため、好ましい実施形態である。
【0057】
好ましい実施形態では、図3に示すように、弾性のOリングを使用して、先細り状のウェルに、先細り状のオリフィスが封止されてもよい。溶液接続チャネル14は、溶液メソスケールチャネル31から、ジェット45を介して、ウェルに通じている。ジェットから流れる溶液は、オリフィスとウェル壁面との間の空間を通して均一に下に流れて、ウェルの中身を、同心状の廃棄物接続チャネルを通して追い出し、その際の混合は最小限となる。好ましい実施形態では、ジェットは、オリフィスの側面を通る、放射状に配列された送り穴を形成する。
【0058】
その他のシステムユーティリティ
さまざまなユーティリティサブシステムが、本発明のマニホールドを補助するために使用されてもよい。マニホールドは、例えば、圧力源、真空源、試薬源、廃棄物受け器、物理的取り付け台などを必要としてもよい。本発明のシステムの動作の間、フラッシング、洗浄、またはプライミングのステップのシーケンスでは、例えば、マニホールドをマイクロスケールデバイスと機能的に整列するように配置すること、洗浄溶液の流れ、リンス溶液の流れ、プライミング溶液の流れ、廃棄物溶液の除去、および/または、マニホールドをマイクロスケールデバイスとの接点から取り外すことが必要とされてもよい。
【0059】
本発明のマニホールドは、マイクロスケールデバイスと機能的に整列するように、および/または、マイクロスケールデバイスを機能的に封止するように、例えば、手動、ステージアンドピボットシステムからの誘導、ロボットシステムなどによって配置されてもよい。例えば、技師が、マイクロスケールデバイスを本発明のシステムまで運び、ウェルを、システムマニホールドのオリフィスと位置合わせして、マニホールドのウェルと接触するようにオリフィスを押してもよい。好ましい実施形態では、マニホールドは、マニホールドとマイクロスケールデバイスとの間の一貫性のある正確な整列および接触のための、整列および位置決め機構(例えば、図8に示すようなもの、または、バーント,M(Berndt,M)により公開された欧州特許出願EP1360992号明細書、Apparatus for the Operation of a Microfluidic Deviceに記載の、「折り畳み式の第2の物理ユニット78(folding down second physical unit 78)」に類似したもの)などの、必要なすべてのユーティリティを含む機器の一部分である。あるいは、例えば電動機付き関節式アームの、ロボットシステムが、マニホールドおよびマイクロスケールデバイスを機能的に整列するように位置決めしてもよい。
【0060】
本発明のシステムは、図5に示すように、試薬源からの流れを発生させるための圧力源を含んでいてもよい。加圧されたガスが、空気ポンプ50から、ガスライン51を通って、試薬容器52へと供給されてもよい。システムの一態様では、フラッシングガスの流路59は、加圧ガス源から、マニホールド10を経由して、例えば、真空廃棄物コンテナ53まで通っている。例えば洗浄溶液、リンス溶液、マイクロスケールデバイスプライミング試薬などの処理溶液は、試薬容器から、流路内の圧力勾配に沿って、マニホールド10およびマイクロスケールデバイスを経由して、廃棄物コンテナ53まで流れるように強制されてもよい。マニホールドを経由して廃棄物コンテナに至る廃棄物溶液の流れを発生させる圧力勾配は、廃棄物コンテナにおける、真空ポンプ54により生成される陰圧(相対的低圧)により提供されてもよい。
【0061】
一定した溶液の流れ時間および流量を得るのに役立つように、システムの圧力調整構成要素が、一定して、正確で、再現可能な圧力をシステム内で提供するために有益に使用されてもよい。圧力調整は、例えば、従来のばね式ダイアフラムベースの圧力調整器によって、または好ましくは、ニューハンプシャー州アマーストのコントロールエアー社(ControlAir、Inc.(Amherst, New Hampshire))によるタイプ900モデル調整器(Type 900 model regulators)などの、電子式ガス圧力調整器55によって提供されてもよい。手動または自動の圧力供給バルブ56および試薬供給バルブ57が、例えば、流れを可能にするため、またはシステム構成要素を隔離するために提供されてもよい。機械式、電子式の、アナログまたはデジタル圧力計58が、技師による読み取り、またはシステム内でのデータ収集のために提供されてもよい。
【0062】
フラッシングガスは、例えば、空気ポンプ50からの、または任意選択で、フラッシングガスの加圧されたタンクからの、圧縮空気として提供されてもよい。ガスのタンクは、所望のフラッシングガス圧力を提供するための圧力調整器を有していてもよい。フラッシングガスは、例えば、空気、窒素、不活性ガス、二酸化炭素、消毒ガスなどであってもよい。一実施形態では、フラッシングガスの流路の一方の端は、大気に対して開放されており、もう一方の端では、真空ポンプ54により相対的陰圧が提供されている。
【0063】
自動化されたシステム
システムの流れを手動で制御することは可能ではあるが、自動化されたシステムの流量制御が好ましい。例えば、溶液の流路、流量、および流れ時間を制御するようにバルブを作動させるために、コンピュータが、コンピュータインタフェースを介してコマンドを送信してもよい。一般的な実施形態では、コンピュータが、プログラムされたバルブ位置命令を、通信インタフェースを介して送信することにより、加圧されたガスの流れを制御するソレノイドバルブに電流が通され、それにより、メソスケールチャネル内の溶液の流れを制御する空気圧制御バルブの位置が変化する。
【0064】
本発明のシステム内のコンピュータは、例えば、プログラムされた、またはプログラム可能なデジタルプロセッサを含んでいてもよい。例えば、コンピュータは、デスクトップパーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、メインフレームコンピュータ、デジタルメモリおよび中央処理ユニットを有する処理ユニット、電子的にプログラム可能な読み出し専用メモリ、ハードワイヤード集積回路などであってもよい。コンピュータは、プログラム可能で、他のシステム構成要素と通信可能であってもよい。コンピュータは、例えば、センサからの情報の受信、電子的および機械的構成要素への時限式命令の送信、条件の評価とシステム調整の提供、処理の進行の追跡、および処理データの記憶を行ってもよい。本発明のシステムは、例えば、ここで説明するマイクロスケールデバイス処理方法を実施するためにソフトウェアシステムに入れられたデータセットおよび命令セットを有する、デジタルコンピュータを含んでいてもよい。コンピュータは、例えば、PC(DOS、OS2(登録商標)、ウィンドウズ(WINDOWS)(登録商標)オペレーティングシステムとの互換性を有するインテル(Intel)x86またはペンティアム(Pentium)チップ)、マッキントッシュ(MACINTOSH)(登録商標)、パワーピーシー(Power PC)、またはサン(SUN)(登録商標)ワークステーション(リナックス(LINUX)またはユニックス(UNIX)オペレーティングシステムとの互換性を有する)、あるいは、当業者に知られているその他の市販のコンピュータであってもよい。データの受信および処理の制御のためのソフトウェアは、入手可能であり、または、ビジュアルベーシック(Visualbasic)、フォートラン(Fortran)、ベーシック(Basic)、ジャバ(Java)などの標準プログラミング言語を使用して当業者により容易に構築されることが可能である。
【0065】
コンピュータは、例えばコンピュータインタフェースを介して、他のシステム構成要素と通信を行ってもよい。コンピュータインタフェースは、例えば、システムセンサまたはキーパッドから、アナログまたはデジタル信号を受信してもよい。コンピュータインタフェースは、例えば、デジタルまたはアナログ命令の送信、または機械的アクチュエータへの電力の供給を行ってもよい。例えば、コンピュータがバルブを開くための命令を送信する場合、インタフェースは、バルブの機械的な切り換えを行う電気回路に電圧を印加してもよい。コンピュータインタフェースは、フロリダ州コラルスプリングズのオプティマックス・コントロールズ(Optimux Controls(Coral Springs, Florida))により販売されているものなどを、一般に入手することができる。
【0066】
データ記憶モジュール
データ記憶モジュールは、例えば特定のマイクロスケールデバイスの履歴を識別および追跡するための、マイクロスケールデバイス処理システムの一部であってもよい。データ記憶モジュールは、例えば関連する情報をリアルタイムで入手して更新できるように、マイクロスケールデバイス内に、またはマイクロスケールデバイス上に取り付けられていてもよい。例えば、データ記憶モジュールは、デバイスに関連付けられた、イベントカウンタ、チップ識別データ、チップ使用データ、サンプル分析データ、洗浄サイクルデータ、部品番号、シリアル番号、作業命令番号、チップ設計番号、キャリブレーションデータ、製造日、有効期限、使用限度数、エラーコードなどを提供してもよい。好ましい実施形態では、データ記憶モジュールのメモリ内のカウンタは、各使用サイクルで更新されてもよい。マイクロスケールデバイスの使用は、例えば、2サイクル、5サイクル、10サイクル、20サイクル、40サイクル、100サイクル、またはそれ以上の、所定の最大サイクル数だけ使用された場合に中止されてもよい。
【0067】
データ記憶ユニットの、マイクロスケールデバイスへの取り付けは、例えば、マイクロスケールデバイス内への組み込み、マイクロスケールデバイス上への取り付け、マイクロ流体カートリッジマイクロスケールデバイスの取り付けプレートへの取り付けなどによって行われてもよい。一般的な実施形態では、図6に示すように、マイクロ流体カートリッジマイクロスケールデバイス60は、データ記憶モジュール62を組み込んだ取り付けプレート61を含む。マイクロ流体カートリッジは、取り付けプレートに貼付されたマイクロ流体チップ63を含む。
【0068】
取り付けプレートは、例えばマイクロ流体チップまたはデータ記憶モジュールなどの、マイクロスケールデバイスの構成要素の保持および取り扱いのための枠組みを提供する、マイクロスケールデバイスの部分であってもよい。取り付けプレートは、例えば、マイクロスケールデバイスを安定した向きに取り付けるため、マイクロスケールデバイスの容易な取り扱いを提供するため、マイクロスケールデバイスのマイクロチャネルと流体接触したウェル壁面を提供するため、清潔で粒塵の少ない環境をマイクロスケールデバイスのために提供するため、マイクロスケールデバイスの操作に使用される電気信号、光信号、または加圧流体などのユーティリティのための経路および接続を提供するため、データ記憶モジュールおよび検出器構成要素などのアクセサリデバイスのための取り付け位置を提供するため、および/または、その他のための、枠組みであってもよい。取り付けプレートは、マイクロスケールデバイスの取り扱い中に、比較的壊れやすいチップ63を保護する、硬質で耐久性のある材料で作られていてもよい。本発明の取り付けプレートには、アクリル樹脂、ポリエチレン、およびポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が特に適しているが、ガラス繊維、炭素繊維、およびその他のエポキシベースの材料などの複合材料が使用されてもよい。任意選択で、取り付けプレートは、マイクロチップを含む単一構造の一部であってもよい。
【0069】
一実施形態では、図6に示すように、データ記憶モジュール62は取り付けプレート61内に埋め込まれていてもよい。取り付けプレートは、例えば、熱可塑性物質により、データ記憶モジュール62を取り付けるために含まれるポケット64を有するように成形されてもよい。データ記憶モジュールは、ポケット内に配置され、例えば、次にエポキシ樹脂などの重合性基材を使用して恒久的に取り付けられてもよい。別の実施形態では、例えば、マイクロスケールデバイスが独立した取り付けプレートを含まない場合、あるいは、データ記憶モジュールがチップの至近距離にあることが望ましい場合に、データ記憶モジュールはチップ63に直接取り付けられてもよい。
【0070】
一実施形態では、データ記憶モジュールは、マイクロスケールデバイスに関連する情報のタグからの読み出し、および/または、タグへの書き込みを可能にする、RFIDタグである。図7に、一般的なRFIDタグのブロック図を示す。RFIDタグ70は、パッシブ共振無線周波数(RF)回路71を含んでいてもよい。RF回路は、当業界で知られている任意の適した回路であってもよく、例えば、コイルアンテナ72およびキャパシタ73により形成される、所定の共振周波数を有する共振回路であってもよい。RF回路は、例えば、RFIDタグへの電力供給、信号の送信、および/または、信号の受信などの役割を果たしてもよい。RF回路の共振周波数は、通常、125kHz〜2.45GHzの範囲である。RFIDタグは、データを記憶するために、2048ビットまたはより大きなメモリなどの、プログラマブルメモリ75を有する集積回路74を含んでいてもよい。これらの構成要素は、通常、プラスチックパッケージ内で組み立てられ、例えば、アンテナ72の一区画がパッケージの外に突き出ている。好ましい実施形態では、RFIDタグは、関連するRFIDリーダのレシーバまたはトランスミッタ構成要素に適切に近接することを可能にするために、マイクロ流体カートリッジの周囲に配置される。
【0071】
RFID技術は周知であり、また、RFIDタグはすでに開発されており、フィリップス・セミコンダクターズ(Philips Semiconductors)、モトローラ(Motorola)、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)、およびアイ・ビー・エム(IBM)などの多くの会社から市販品を入手できる。そのようなRFIDタグの一例は、カリフォルニア州サニーヴェールのフィリップス・セミコンダクターズ(Philips Semiconductors(Sunnyvale,CA))から入手可能な、HITAG(商標)1 スティック・トランスポンダ(Stick Transponder)、モデル番号(Model No.)HT1 DC20 S30である。RFIDタグは、製造中にフォーマットされた、何も記録されていないメモリとともに、製造業者から入手することが可能である。RFIDリーダがRFIDタグに電力を供給すると、集積回路74からの情報の読み出し、または集積回路74への情報の書き込みが可能になる。そのような情報は、例えば、分析のためのキャリブレーションデータ、および/または、特定の業界における規制条件を満足するために使用される統計情報を含んでいてもよい。
【0072】
集積回路プログラマブルメモリは、デバイス識別コード、およびデバイスに関連するパラメータを保持してもよい。例えば、IC内に記憶される情報は、部品番号、シリアル番号、作業命令番号、またはチップ設計番号などのさまざまなチップ識別情報、製造中に決定されるさまざまなキャリブレーションデータ、製造日、チップの有効期限、許容される分析の最大回数、実行された分析の現在のカウント、許容される洗浄の最大回数、完了した洗浄サイクルの現在のカウント、チップ内で検出された問題を示すエラーコード、および/または、巡回冗長検査を含んでいてもよい。このデータの多く(例えば、チップID番号および最大サイクル数など)は、製造時において最初に決定され、通常は、マイクロスケールデバイスの寿命がある間に変更されることはない。実行された分析の回数、または完了した洗浄の回数などの、その他の情報は、段階的、反復的、および自動的に、適宜更新されてもよい。
【0073】
データ記憶モジュールおよび関連するサブシステムは、本発明のマイクロスケールデバイス再生システム内に組み込まれていてもよく、同様に、マイクロ流体分析システム内に組み込まれていてもよい。図8に示すように、マイクロスケールデバイス80は、例えば、マイクロスケールデバイスと相互作用するユーティリティと検出デバイスとを提供することが可能な分析装置81のような、機器の中で使用されてもよい。本発明の再生システムおよびデータ記憶モジュールを使用可能な、1つのそのような装置は、2000年6月15日に出願された係属中の欧州特許出願EP1360992号明細書に記載されている(その出願の全体は、参照により本明細書に援用される)。アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)から入手可能なアジレント2100バイオアナライザ(Agilent 2100 BioAnalyzer)などの、多くのそのようなデバイスは、市販されている。本発明のデータ記憶モジュールとともに使用するために、分析装置81は、分析装置に組み込まれたRFIDリーダ82も、例えば、マイクロスケールデバイスおよび関連するRFIDタグのすぐ近くに含んでいてもよい。RFIDタグの電力は、RFIDリーダが、タグから特定の距離以内(通常は約5mm以下)に持って来られた場合に、(図7に示す)タグアンテナから得られてもよい。
【0074】
タグリーダは、図9のブロック図に示すように、リーダアンテナ91を有するRFIDリーダ90を含んでいてもよく、リーダアンテナ91は、RFIDタグ上のタグアンテナ92を励振するRFフィールドを作って、上述のようにRF回路の共振を発生させることが可能である。RFIDリーダは、例えば、RFIDタグ94から送信された記憶情報を読み取るためのレシーバ93、およびRFIDタグ上に記憶された情報を更新するための信号を送信するトランスミッタ95を含んでいてもよい。RFIDリーダは、RFIDタグ信号を解釈するため、および/または、RFIDタグに記憶されたパラメータを更新する情報を正しく送信するための、適切なプロトコルを含む、データプロセッサ96を含んでいてもよい。RFIDリーダは、例えばイベントログを維持するための、デジタルメモリを有していてもよい。図8の分析装置81は、キーパッド84またはタッチスクリーンを有する入出力デバイス83を含んでいてもよく、それにより、技師は、例えば許可パスワード、更新データ、および/または、処理命令を手動で入力できるようになる。入出力デバイスは、装置および/またはマイクロスケールデバイスに関連する情報を表示するための、ディスプレイ85を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、RFIDリーダは、タグアンテナから適切な至近距離にあることを保証するために、マイクロスケールデバイス内(例えば取り付けプレート内など)に組み込まれていてもよい。そのような場合、例えばマイクロスケールカートリッジと任意の関連する装置との間で情報を転送するための、通信接触が提供されてもよい。任意選択で、RFIDリーダは、通信を可能にするためにユーザがRFIDタグの近くに配置することが可能な、独立したハンドヘルドユニットであってもよい。
【0075】
RFIDタグは本発明に特に適しているが、その他のデバイスが、任意選択で、本発明のデータ記憶モジュールとしての役割を果たしてもよい。例えば、チップ識別情報および変化しないその他の情報は、その他の特定のコーディング機構を使用して、変更不可能な読み出し値として記憶されてもよい。例えば、データは、メカニカルキー、取り付けプレート内に組み込まれたばね式ピン、または分析装置上の読み出しスロット内に適合する、取り付けプレートまたはチップ内に成形された突起の形態で記憶されてもよい。当業界で周知の、バーコードラベルおよびレーザベースのバーコードリーダが、変化しない情報を維持するのに適したデータ記憶を提供してもよい。別の実施形態では、集積回路内のプログラマブルメモリを有するEEPROMが、情報の記憶および更新が可能なデータ記憶モジュールとして使用されてもよい。そのようなEEPROMデータ記憶モジュールは、信頼性の高い電源とともに提供されることが好ましい。さらに別の実施形態では、レーザ読み取り可能/書き込み可能反射パターンを使用するコンパクトディスク技術などの、光読み取り/書き込みデバイスが、マイクロスケールデバイスの取り付けプレート内に統合されていてもよい。分析装置上に配置されたレーザが、光記憶デバイス上の情報の読み出し、または書き込みを行ってもよい。
【0076】
マイクロスケールデバイスを処理するための方法
マイクロ流体チップなどのマイクロスケールデバイスは、多くの場合、分析操作に関連して、かなりの量の処理および準備を必要とする。これは、例えば、新しいチップの予備的なフラッシングおよび洗浄、ならびに使用済みチップのフラッシング、洗浄、およびプライミングなどの、デバイス表面上への処理溶液のフラッシングを含む可能性がある。そのような分析以外の処理は、手作業で行う場合、多大な時間と労力を必要とすることがある。ここで説明するマイクロスケールデバイスの再生方法は、マイクロスケールデバイスのクリーニング、リンス、およびプライミングの、速度、効率、および信頼性を大幅に向上することが可能である。
【0077】
マイクロスケールデバイスは、分析のために使用または再使用される前に、通常、ウェルおよびチャネルをきれいにするため、および表面を調質するために洗浄される。洗浄は、一般に、例えば、NaOHまたはサンプル緩衝液による洗浄と、それに続く、蒸留水によるフラッシングという、2つのステップで行われる。洗浄処理溶液は、デバイスの適切なウェルに陰圧または陽圧を加えることにより、ウェルから、および/または、マイクロチャネルを通して、フラッシングされてもよい。一般的な手順における、NaOHまたはサンプル緩衝液による洗浄のステップの間に、圧力と洗浄時間との組み合わせによって、マイクロスケールデバイスのさまざまなウェルおよびチャネルを通して、例えば、少なくとも10〜50容積がフラッシングされることが保証されてもよい。蒸留水によるフラッシングのステップの間に、通常、5〜30容積がチャネルを通過する。洗浄のステップは、約400秒以下で完了することが望ましい。少なくとも30使用サイクルにわたる信頼性の高いデバイス再使用を可能にする処理条件を提供することが望ましい。洗浄処理の後は、多くの場合、技師が選択媒体を装填して、手作業の注入方法で、緩衝液を使用してデバイスをプライミングする必要がある。ここで説明する処理方法を使用することにより、時間と労力を節約し、信頼性を向上することが可能となる。
【0078】
マイクロスケールデバイスの洗浄
マイクロスケールデバイスは、最初の使用の前に処理されるか、または、使用後に再生されてもよい。洗浄処理は、一般に、デバイスからの古い流体のフラッシング、デバイス表面からの残留物の除去、およびデバイスからの洗浄処理溶液のフラッシングを含む。本発明の方法によるマイクロスケールデバイスの洗浄は、デバイスのウェルおよび/またはマイクロチャネル全体にわたって、圧力により誘導されたガスまたは溶液の流れを提供するために、デバイスのウェルに例えば接触および封止するように構成された、マニホールドを使用することにより容易になる。例えば、デバイスを封止するように適合されたオリフィスへのメソスケールチャネルを有するマニホールドが、マイクロスケールデバイスのウェルに機能的に接触するように配置されてもよく、1つまたは複数の処理溶液またはフラッシングガスが、デバイスのウェル表面および/またはマイクロチャネル表面の全体にわたってフラッシングされてもよい。
【0079】
マイクロスケールデバイスを洗浄するためのマニホールドは、処理溶液を、溶液源から、リングリザーバを通し、メソスケールチャネルを通して送り、マイクロスケールデバイスのウェルに機能的に接触するように配置されたオリフィスを通して外に出す、メソスケールチャネルを有する構造を含んでいてもよい。マニホールドは、例えば、2つ以上の処理溶液を時限式の順序で配送するための、3次元的に延びるメソスケールチャネルを有する、ブロックまたはウェハ状の構造であってもよい。好ましい実施形態では、マニホールドは層状に製造され、その構成要素は論理計画によりレイアウトされ、層間の表面接触において機能的な接続が提供される。例えば、特定の処理溶液の輸送のためのメソスケールチャネルおよびリングリザーバが1つの層に配置されてもよく、他の処理溶液のためのメソスケールチャネルおよびリングリザーバは他の層に配置されてもよい。廃棄物溶液を戻すためのチャネルおよびリザーバは、マニホールド構造のさらに他の層内に存在していてもよい。任意選択で、2つ以上の溶液を輸送するためのチャネルおよびリザーバが、同じ層状に配置されてもよい。溶液は、マニホールドの他の導管との機能的な相互接続のための接続チャネルおよび溶液源チャネルを通して、マニホールドの層間を移行してもよい。
【0080】
マニホールドは、射出成形、ロストワックス方式、マイクロマシニング、エッチング、フォトリソグラフィなどの、当業界で知られている方法によって製造されてもよい。一実施形態では、チャネルおよびリングは、その周囲に恒久的な非層状のマニホールド構造が形成された後で溶解または融解させられる、一時的材料の形態でレイアウトされてもよい。好ましい実施形態では、マニホールド層は、射出成形またはリソグラフィによって別個に製造され、相互接続チャネルが適切に位置合わせされて機能的に積み重ねられ、例えば熱、接着剤、圧力、光活性化された樹脂などを加えることによって融合される。
【0081】
処理溶液を使用したマイクロスケールデバイスの洗浄は、例えば、溶液を試薬容器からリザーバへ、メソスケールチャネルを通して流し、オリフィスから流出させて、デバイスのウェルおよびマイクロチャネルをフラッシングすることを含んでいてもよい。流れの制御は、手動による、チャネル区画全体にわたっての圧力の調整、および/または、バルブ位置の設定により行われてもよい。好ましい実施形態では、バルブおよび圧力の制御は、機械的アクチュエータおよび/またはセンサと相互作用するコンピュータインタフェースを使用して自動化される。
【0082】
残存している保存または処理溶液は、任意選択で、マニホールド、ウェル、およびマイクロスケールデバイスから、フラッシングガスを使用してフラッシングされてもよい。フラッシングガスは、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、不活性ガスなどの、任意の適したガスであってもよい。好ましい実施形態では、フラッシングガスは圧縮空気である。フラッシングガスは、残存溶液を、ウェルから排出してもよく、または、例えば廃棄物チャネルまたはマイクロチャネルなどの、出口チャネルを通して追い出してもよい。フラッシングガスは例えば、約1psi(ポンド/平方インチ)未満〜約500psi以上、約10psi〜約100psi、または約15psiの範囲の圧力差の影響下で流れてもよい。
【0083】
フラッシングガスは、マイクロスケールデバイスのウェルから、残存処理溶液を取り除くことも可能である。例えば、ウェルは、メソスケールフラッシュチャネル、メソスケール廃棄物チャネル、マイクロチャネル、および/または、ウェルの上部開口部を含む、フラッシングガス流路の一部であってもよい。多くの用途では、残存溶液は、メソスケールフラッシュチャネルからの、オリフィスを通したフラッシングガスの流れによって、ウェルから除去される。いくつかの実施形態では、残存溶液は、ウェル内のほぼ大気圧から、廃棄物チャネルと流体接触した大気圧未満(陰圧)までの圧力勾配(差)に沿って、フラッシングガスによって押し流されることにより、廃棄物チャネルを通してウェルから除去される。他の実施形態では、処理溶液は、メソスケールチャネルから、ウェルに封止されたオリフィスを通り、真空源と流体接触したメソスケール廃棄チャネルから出るまでの流路を流れる、加圧されたフラッシングガスによって、ウェルからフラッシングされる。いくつかの実施形態では、残存溶液は、例えば、マニホールドからの高圧ガスのジェットによって、ウェルの上部開口部から外部に排出されてもよい。さらに他の実施形態では、フラッシュチャネルからのフラッシングガスを使用してウェルを封止および加圧し、マイクロスケールデバイスのマイクロチャネル内に溶液を押し流すことによって、溶液がウェルから除去されてもよい。フラッシングガスを除去するためにプライミングのステップが必要になる場合は、マイクロチャネル内に溶液を押し流す際に、マイクロチャネル内にフラッシングガスを導入することは回避するのが一般に望ましい。
【0084】
フラッシングガスは、本発明のマニホールドから処理溶液を取り除くために使用されてもよい。例えば、緩衝液の処理シーケンスの最後において、新しい溶液および/または異なる溶液の導入のための準備として、メソスケールチャネルおよび/またはリングリザーバをきれいにするために、フラッシングガスが使用されてもよい。内側のリングリザーバから外側のリングリザーバへの順序で、放射状のメソスケールチャネル内に処理溶液が導入される実施形態では、すべての共通チャネル区画が、通常は、処理の最後の溶液を含む。この状況では、フラッシングガスを使用して、共通チャネル区画から最後の溶液をフラッシングした後で、1つまたは複数の以前の処理溶液を使用してプライミングすることが望ましい可能性がある。処理の実行の間に、検体固有の試薬などの、処理溶液を変更することが望ましい実施形態では、試薬容器から、試薬供給ラインを通り、リングマニホールドおよび/またはメソスケールチャネルに至るまでの流路全体が、例えば、異なる検体に固有の洗浄溶液または試薬のために道をあけるように、フラッシングされてもよい。例えばデバイスと接触していないオリフィスから溶液を排出することなどによる、マイクロスケールデバイスとは独立の圧力勾配流路に沿ったフラッシングガスを使用した置換によって、本発明のマニホールドから溶液が取り除かれてもよい。任意選択で、マニホールドをウェルとともにきれいにするために、例えば、マイクロスケールデバイスのウェルは、加圧されたガス源、リングリザーバ、メソスケールフラッシュチャネル、ウェル、メソスケール廃棄物チャネル、および真空源を含む流路の一部であってもよい。
【0085】
マイクロスケールデバイスのマイクロチャネルから、フラッシングガスを使用して溶液が取り除かれてもよい。ガスは、液体よりも粘性がはるかに小さいため、マイクロチャネルのフラッシングに有利な可能性がある。マイクロチャネルは、マイクロチャネルと流体接触したウェルに封止されたオリフィスを経由した、フラッシュチャネルおよび/または廃棄物チャネルからのフラッシングガスを使用してきれいにされてもよい。任意選択で、圧力差流路は、例えば、マイクロスケールデバイスの廃棄物ウェルに封止された真空源を含んでいてもよい。
【0086】
障害物によりマイクロスケールデバイスの故障が発生した特定の状況では、本発明の方法により、デバイスチャネルからデブリが取り除かれてもよい。一実施形態では、マニホールドおよびクリーニング溶液により、マイクロスケールデバイス(チップ)からデブリが取り除かれてもよい。例えば、故障したチップのウェルは、例えば、チップウェルと接触しているマニホールドからのフラッシングガスを使用して、空にされてもよい。1%ヘルマネックス(Hellmanex)II溶液をチップ内に30分間押し流すために、マニホールドとチップ廃棄物ウェルとの間に圧力差が生成されてもよい。別のガスフラッシングを使用してウェルから溶液が除去されてから、保存緩衝液を使用してウェルおよびマイクロチャネルが4分間フラッシングされてもよい。最後に、分析実行の準備として通常行われる通りに、チップは、選択ゲル媒体を使用してプライミングされてもよい。
【0087】
処理のために、マイクロスケールデバイスウェルを、マニホールドオリフィスと接触させるということには、例えば、オリフィスがマイクロスケールデバイス上のウェルと整列するようにマニホールドの向きを定めること、および、ウェルと機能的に接触するようにオリフィスを配置することが含まれていてもよい。機能的な接触には、例えば、ラジアルジェットがウェル壁面をリンスすることができるように、オリフィスをウェルに挿入すること、溶液の移送が発生するようにオリフィスをウェルの十分近くに配置すること、先細り状のオリフィス外部壁面を、ウェル上部表面または相補的に先細り状になったウェル内部壁面と接触させること、オリフィスとウェルとの間のインタフェースをOリングで封止することなどを含んでいてもよい。機能的な接触には、実際の物理的接触のいかんにかかわらず、オリフィスとウェルとの間の溶液の所望の流れを提供する、配置が含まれていてもよい。好ましい実施形態では、オリフィスはウェルに液圧的に封止され、それにより、例えば液圧または静水圧がオリフィスとウェルとの間で伝達されてもよい。例えば、マイクロスケールデバイスのマイクロチャネルの洗浄は、マイクロチャネルと流体接触したウェルにオリフィスを封止すること、洗浄溶液の加圧源をオリフィスからウェルに適用すること、およびすべてのメソスケール廃棄物チャネル排出口のバルブを閉じて、それにより洗浄溶液がマイクロスケールチャネル内に流れるように強制することにより実現されてもよい。ウェルへのオリフィスの封止は、溶液の乾燥またはウェルからの溶液のオーバフローを有利に防止することができる。任意選択で、例えば、廃棄物チャネルの陰圧と容量がオーバフローを防止するのに適切である場合、フロー制御の精度がオーバフローを防止するのに適切である場合、フラッシングまたは洗浄処理においてオーバフローが望ましい場合、マイクロチャネルの流れが、ウェル圧力によってではなく、マイクロチャネル流出口における相対的陰圧によって引き起こされる場合などには、オリフィスはウェルと、液圧的な封止なしに、機能的に接触してもよい。
【0088】
マイクロスケールデバイスの洗浄は、例えば、処理溶液のシーケンスを、マニホールドのメソスケールチャネル、およびマイクロスケールデバイスのウェルまたはマイクロチャネル表面を通して流すことを含んでいてもよい。前記シーケンスは、例えば、古い溶液をデバイスからフラッシングするため、分析中に蓄積された残留物を除去するため、強力な洗浄溶液をデバイスからフラッシングするため、および新しい試薬およびサンプルの受け取りのためにデバイスを調整するために、適切な量の処理溶液を、適切な時間に流すことを含んでいてもよい。処理溶液の流れは、例えば、次のように引き起こされ、制御されてもよい。調製された処理溶液が、溶液供給ポートへの流体接点をサイホン管を通して有する加圧された試薬容器内に配置されてもよく(圧力は溶液の流量に影響を及ぼす)、溶液は圧力下で専用のリングリザーバへ流れてもよく、溶液供給流路内の任意の場所(好ましくは、メソスケールチャネル内、またはメソスケールチャネルの交点)に配置された流量制御バルブが、メソスケールチャネルを経由した、リングリザーバの中心に配置されたオリフィスに向けての、各処理溶液の流れを導いてもよく(開放するバルブの選択は、処理溶液の配送順序を制御し、バルブの開放期間の長さは、チャネルを通して流れる処理溶液の量に影響を及ぼす)、処理溶液は、オリフィスをウェルに封止することにより作成されるチャンバーの中を流れてもよく、処理溶液は、ウェルをフラッシングして、廃棄物メソスケールチャネルを通してチャンバーから流出してもよく、かつ/または、ウェルと流体接触したマイクロスケールチャネル内に流入してもよい。処理溶液のシーケンスは、貯留された役に立たない溶液の、シーケンスを外れた開放を防止するために、例えば、内側のリングリザーバから外側のリングリザーバへ、または外側のリングリザーバから内側のリングリザーバへ進行してもよい。マイクロスケールデバイスの処理に要する時間は、例えば、処理溶液の組成、流れを引き起こす圧力差、流路チャネルの横断面積、流量制御のタイミングなどに依存してもよい。好ましい実施形態では、システムおよび方法は、約1000秒、約500秒、約400秒、約200秒、約60秒、またはそれ未満でマイクロスケールデバイスを処理するための適切な流れを提供するように構成される。
【0089】
処理溶液を順に流すことにより、マイクロスケールデバイスを再使用または保存するための、クリーニングおよび/または準備が提供されてもよい。例えば、洗浄処理には、残っているサンプルまたは試薬を除去するために、マイクロスケールデバイスを水または緩衝液を使用してフラッシングすること、ウェル表面またはマイクロチャネル表面から残留物を取り除くために、界面活性剤溶液またはNaOH溶液などの洗浄溶液を流すこと、水またはコンディショニング溶液を使用してマイクロスケールデバイスをリンスすること、マイクロスケールデバイスのウェルおよびマイクロチャネル内に、保存溶液を流すこと、および/または、プライミング溶液を流すことが含まれていてもよい。好ましい実施形態では、クリーニングシーケンスは、400秒またはそれ未満で完了する。保存溶液は、例えば、0.1N NaOH、20%エタノール、アジ化物溶液などを含んでいてもよい。プライミング溶液は、例えば、中和緩衝液、コンディショニング緩衝液、選択媒体、アッセイ緩衝液などを含んでいてもよい。
【0090】
本発明の一態様では、例えば試薬の消費を減らすために、ウェル内の処理溶液がマニホールド内に回収されてもよい。例えば、処理溶液が消費または廃棄できないほど高価である場合、マイクロスケールデバイスウェル内に残っている余分な溶液は、後の処理実行で使用するために、マニホールド内に移送されてもよい。処理溶液は、圧力下で、ウェルから、オリフィスを通し、メソスケールチャネルを通して、リングリザーバまで流れてもよく、将来の処理で必要とされるまでそこに保持されてもよい。好ましい実施形態では、リングリザーバに相対的低圧がかけられ、制御バルブは、将来の使用のために適切なリザーバに試薬を戻すように構成される。
【0091】
本発明の別の態様では、処理溶液は、マイクロスケールデバイスウェルからフラッシングされないことにより保存され、その間に、他のウェルおよびチャネルには、再生シーケンスのフラッシング、洗浄、その他が行われてもよい。これにより、例えば、入手が困難な抗体または組換えタンパク質などの、高価な試薬が、デバイスが次に使用されるまで、同じ試薬ウェル内に保持されてもよい。好ましい実施形態では、他のウェルからの逆流がマイクロチャネルを通して侵入し、保持されている試薬を汚染することのないように、保持されている試薬ウェルには低圧がかけられて、他のウェルの洗浄中に遅い流量が提供される。
【0092】
本発明の方法によりマイクロスケールデバイスを洗浄することにより、デバイスを高い信頼性で繰り返し再使用することが、実行間の大きなキャリーオーバなしに可能となる。例えば、図10に示す1つの実験では、アルファフェトプロテイン(AFP)分析用のマイクロスケールデバイスが使用され、各アッセイ後に、1N NaOHとそれに続く脱イオン水のシーケンスを用いて30回洗浄された。図10Aは、最初のAFP実行で10pMのAFPが検出されたことを示している。図10Bは、30回洗浄した後の、ブランクサンプルについてのグラフであり、大きなAFPキャリーオーバは検出されていないことを示している。図10Cは、30回目のAFPサンプル実行の結果であり、AFP信号の大きな劣化はないことを示している。サンプル検体は、100万分の1、または1ppm未満になるまで、ウェルまたはマイクロスケールチャネルから除去されることが可能であるということは、本発明の一態様である。
【0093】
自動化された制御
本発明のマイクロスケールデバイスを処理する方法は、例えば、コンピュータなどのデジタル論理デバイスを使用して、処理を制御することを含んでいてもよい。例えば、マイクロスケールデバイス上へのマニホールドの配置、および処理溶液の流れの制御などの、処理ステップは、上述の「自動化されたシステム」の項で説明したシステムを使用して自動化されてもよい。本方法の、データ処理の態様は、自動化されたシステムを使用して実施されてもよい。
【0094】
ウェルのオリフィスとの接触は、自動化されてもよい。例えば、技師がキーボードを介してコンピュータに命令を入力してもよい。コンピュータは、マイクロスケールデバイスを受け取り、マニホールドと位置合わせして、オリフィスをウェルと接触させるための、ロボットシステムまたはその他の機械的アクチュエータを作動させてもよい。マイクロスケールデバイスの識別およびステータスに関する情報は、例えば、マイクロスケールデバイスに結合されたデータ記憶モジュールから読み取られてもよい。
【0095】
処理溶液の流れは、自動化されたシステムの制御下にあってもよい。例えば、コンピュータインタフェースと、マニホールドのバルブ位置および圧力差を制御する機械的アクチュエータとの間の相互作用を機能的に調整するための、ソフトウェアが書かれてもよい。当業者によって理解されることが可能なように、加圧およびバルブ開放の時限式シーケンスは、ソフトウェアにより決定された順序、流量、分量のフラッシングガスまたは処理溶液を、ソフトウェアにより決定された期間にわたって提供してもよい。処理方法は、技師による介入なしに、自動的に完了および反復されてもよい。
【0096】
処理および特定のマイクロスケールデバイスに関する情報の、保持および更新は、本発明の処理方法の信頼性を保証するために役立つ可能性がある。マイクロスケールデバイスに結合されたデータ記憶モジュールの情報の読み出しおよび書き込みにより、傾向分析のための履歴の追跡が可能にされてもよい。例えば、データ記憶モジュールが取り付けられたカートリッジを有する特定のマイクロスケールデバイスが、処理のための装置上に配置されている場合、データリーダが、マイクロスケールデバイスの識別情報を、処理サイクル履歴などのその他の情報とともに読み込んでもよい。コンピュータデータベースと通信を行っているデータリーダは、特定のマイクロスケールデバイスについてのファイル履歴の更新、および適切な動作の決定を行ってもよい。識別情報は、マイクロスケールデバイスの処理に適切な、マニホールドのタイプ、処理溶液、流量、フローシーケンスなどを示してもよい。デバイスについてのファイル履歴は、デバイスの現在の信頼性を示す品質管理情報を提供するか、または、デバイスのために残された所定の使用数を示すトータルサイクルデータを提供してもよい。
【0097】
データ記憶モジュールからの読み出し、およびデータ記憶モジュールへの書き込みは、デバイスのタイプにより異なってもよい。物理的にコード化された情報を有するデータ記憶モジュールは、通常、データリーダとの物理的接触を、情報の転送のために必要とする。これは通常、マイクロスケールデバイスが、例えば、処理システムに連結されたステージの上に配置されている場合に達成される。より典型的には、データ記憶モジュールを有するマイクロスケールデバイスがリーダの近傍に配置された場合に、バーコードまたはRFID信号が受信される。単純な実施形態では、リーダは、データ記憶モジュールから識別情報を受信して、コンピュータデータベース内に記憶する。マイクロスケールデバイスが最大使用限度に達したことを、コンピュータデータベースが示す場合、さらなる処理が終了されるか、または、デバイスが廃棄されることが可能なように技師に通知が表示されてもよい。特定のRFIDタグなどの、より精巧なデータ記憶モジュールは、リーダから送信された信号などの情報を受信することが可能である。例えば、データ記憶モジュールは、記憶されたサイクルカウントを増加するように、または、アッセイ履歴データベースにサンプル識別情報を追加するように、リーダにより指示されてもよい。
【0098】
電子デバイスなどの、データ記憶モジュールは、外部電源により、またはデバイスとともに取り付けられた専用電源により、電源を供給されてもよい。揮発性メモリを使用するデータ記憶モジュールには、作動を継続するためのバッテリが提供されていてもよい。外部電源は、連結された太陽電池セルを、例えばリーダからの光を使用して、照らすことにより、または、処理システムとの電気接点を介して電流を提供することにより、または、RFIDタグのRF回路に、適切なRFエネルギーを伝送することにより提供されてもよい。
【実施例1】
【0099】
以下の実施例は、説明のために提供されるものであり、請求の範囲に規定される本発明を限定するために提供されるものではない。
【0100】
実施例1−マイクロ流体カートリッジ再生システム
本実施例では、独立型の処理システムが、デジタルI/Oインタフェースを介して空気圧コントローラおよびソレノイドバルブと相互作用するパーソナルコンピュータと、空気圧コントローラに接続され、溶液供給ポートおよび溶液供給制御バルブを介してマニホールドのリングリザーバに溶液を供給する、加圧された試薬容器(コンテナ)と、マニホールドに動作可能なように取り付けられた空気圧バルブへの、ハウス加圧空気の流れを制御するソレノイドバルブと、リングリザーバから、マニホールド内のメソスケールチャネルを通り、開放された空気圧バルブを通過して、マニホールドの表面上に配列されたオリフィスまで流れる溶液とを含む。
【0101】
マニホールドは、マイクロスケールデバイスを所定の向きに保持するように適合されたステージの上方にある、スイングアーム上に取り付けられる。マイクロスケールデバイスは、取り付けプレート内に取り付けられたRFIDタグデータ記憶モジュールを含む、マイクロ流体カートリッジである。カートリッジがステージ上に配置された後は、14のマニホールドオリフィスと14に対応するマイクロ流体チップウェルとの間の機能的接触が正確に行われるように、マニホールドが円弧を描くように下ろされる。カートリッジ内のRFIDタグの近くにある、ステージに取り付けられたデータリーダが、タグを作動させるために、RF回路に電磁エネルギーを伝送する。作動させられたタグは、識別データおよび現在の使用カウントデータを、コンピュータとの通信のために、リーダに送信する。
【0102】
コンピュータは、使用カウントが、そのタイプのカートリッジについての既定の最大値を超えていないことを確認して、適切な処理シーケンスを開始する。
1)I/Oインタフェースを介して、コンピュータは、空気圧コントローラによる試薬容器の加圧と、外側の1N NaOHのリングリザーバから、チップウェルとのOリング封止された接点を有する14のオリフィスのそれぞれにおけるラジアルジェットまでに至るメソスケールフラッシュチャネル上の、14の空気圧バルブを開くための、加圧空気を開放する第1のソレノイドバルブを開くことと、各オリフィスの中心から、陰圧下にある廃棄物リングリザーバまでに至るメソスケール廃棄物チャネル上の、14の空気圧バルブを開くための、加圧空気を開放するソレノイドバルブを開くこととを命令する。このシステム構成では、1N NaOHは、圧力勾配に沿って、試薬容器から、リングリザーバを通り、メソスケールフラッシュチャネルを通って、ウェルの壁面上部に向けられたラジアルジェットを介して、ウェルの下部に流れ、そこでメソスケール廃棄物チャネルに吸い上げられて、廃棄物リングリザーバを通り、最終的に、マニホールドの外にある陰圧下の廃棄物容器に流れる。
2)NaOHの所定の流れが、ウェルから古い溶液をフラッシングした後は、メソスケール廃棄物チャネルを制御する空気圧バルブは、廃棄物ウェルからの流れを制御するバルブを除いて閉じられ、それにより、他のウェルに連結されたマイクロスケールチャネル内へのNaOHの流れが強制される。NaOHの流れは、サンプル溶液、試薬溶液、および選択媒体をマイクロチャネルからフラッシングし、以前の実行からのすべての残留物を、マイクロチャネル表面から化学的に除去する。NaOHは、マイクロスケールチャネルから、共通のチップ廃棄物チャネルへ、そして廃棄物ウェルへ継続して流れ、そこで、開いたままの1つのメソスケール廃棄物チャネルを通して除去される。
3)NaOHを使用した所定の流れと時間の後、コンピュータは、外側のリングリザーバから通じるメソスケールフラッシュチャネル上の、14の空気圧バルブを閉じるために、第1のソレノイドバルブを閉じることと、内側の脱イオン水のリングリザーバから通じるメソスケールフラッシュチャネル上の、別の14の空気圧バルブの組を開くための、加圧空気を開放する、第2のソレノイドバルブを開くこととを命令する。メソスケール廃棄物チャネル上の空気圧バルブは開いたままにされる。1N NaOHの流れは停止し、脱イオン水の流れが、共通のメソスケールフラッシュチャネル区画から、ラジアルジェットを通り、ウェルを通って、NaOHをフラッシングし、メソスケール廃棄物チャネルを通って、廃棄物リングリザーバに出る。NaOHをウェルからフラッシングするための十分な流れと時間の後は、フラッシング水をチップのマイクロスケールチャネル内に入れ、廃棄物ウェルを通して外に出すように強制する、廃棄物流路が構成される。
4)空気圧コントローラと容器との間の導管上にあるベントバルブを開くコンピュータ命令により、試薬容器は減圧される。マニホールドは円弧を描くように持ち上げられて、マイクロ流体カートリッジとの接点から外され、カートリッジはさらなる使用のために取り外される。
【0103】
実施例2−マイクロスケールデバイスの再使用
本発明の処理システム(洗浄設備)を使用して洗浄した後の、同じマイクロ流体カートリッジを繰り返し使用して、同じサンプルに対するAFP分析が繰り返し実行された。AFP分析は、タンパク質の異なる部位に結合する2つの抗体(WA−1およびIgG)への、AFPの反応およびオンチップでの結合を含む、液相結合アルファフェトプロテイン(AFP)アッセイである。WA−1抗体は、検出のための蛍光ラベル(Alexa)を保持するDNA分子に結合される。さまざまな複合体および反応生成物は、ポリマーマトリックス(サイズ選択媒体)を含むセパレーションチャネル内で、電界の影響下で分離され、移動度に基づいて、異なる時間で検出位置に現れる。10%血清条件におけるアッセイの、代表的なエレクトロフェログラムを、図11に示す。
【0104】
実験の方法の簡単な概要は、以下のとおりである。
1)洗浄設備上のカートリッジチップを1N NaOHで満たし、すべてのウェルを洗浄する(マイクロチャネルをフラッシングするための9分間の加圧を含む)。
2)洗浄設備上のチップをHOで満たし、すべてのウェルをフラッシングする。
3)最初の10pM AFPアッセイを実行する。血清なし、LCAまたはヘパリンなしの通常の選択媒体ゲル。
4)洗浄設備上でHOを使用してチップをフラッシングする。
5)LCA+ヘパリンを有するゲルをアッセイのために使用して、10%血清内1uM AFPアッセイを実行する。
6)洗浄設備上で1N NaOHによりチップを洗浄する。
7)HOを使用して廃棄物ウェルラインを2回フラッシングする。
8)洗浄設備上でHOを使用してウェルおよびマイクロスケールチャネルをフラッシングする。
9)ステップ5〜8を4回繰り返す(それにより、チップ上での10%血清内1uM AFPアッセイとそれに続く洗浄が5回連続して実行される)。
10)高濃度AFPおよびチップの洗浄を5回実行した後のキャリーオーバを調べる。つまり、LCAまたはヘパリンなしの通常のゲルへの結合を有する、「ブランク」の、血清なし、AFPなしのサンプルを実行する。
11)洗浄設備上でHOを使用してチップを洗浄する。
12)10pM AFPアッセイ(血清なしの条件)を実行して、洗浄後のチップ上のアッセイ性能を確認する。LCAまたはヘパリンなしの通常のゲルを使用。
13)洗浄設備上でHOを使用してチップを洗浄する。
14)ステップ5〜13を繰り返して、合計30回のアッセイと6回のブランク実行を行う。
【0105】
30回のAFPアッセイの実行を通してアッセイデータが蓄積された(5回の実行が6組、各組はキャリーオーバテストブランクの実行により区切られている)。分析結果とパラメータは、30回のアッセイ実行の間、安定したままであった。例えば、AFPサンドイッチ複合体の泳動時間が有する変動係数(CV)は2%未満、ピーク高さCVは約13%、ピーク面積CVは約14%であった(ただし、異常値サンプル28を除く)。実際のアッセイの定量的な結果は、内標準による補正効果により、はるかにより正確なものとなったであろう。AFPシングル複合体のピークなどの、他のピークについてのチップ性能はより高く、泳動時間変動係数(CV)は2%、ピーク高さCVは約3%、ピーク面積CVは約3%であった(ただし、異常値サンプル28を除く)。
【0106】
ここで説明した実施例および実施形態は、説明のみを目的とするものであるということ、および、それらを参照したさまざまな修正または変更が、当業者に示唆され、本出願の意図および範囲内および添付の請求の範囲内に含まれるということが理解される。
【0107】
上記の発明は、明確さおよびわかりやすさのためにある程度詳しく説明したが、当業者にとっては、本開示を読むことにより、本発明の真の趣旨から逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変更を行うことが可能であることが明らかであろう。例えば、上述の多くの技術および装置は、さまざまな機能的組み合わせで使用されるように構成されることが可能である。
【0108】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、および/またはその他の文献は、各個々の刊行物、特許、特許出願、および/またはその他の文献が、すべての目的のために参照により本明細書に援用されることが個々に示された場合と同範囲まで、すべての目的のために参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】例示的マニホールド設計の概略図である。
【図2】積層3次元マニホールドの拡大図の概略図である。
【図3】マイクロスケールデバイスのウェルと接するマニホールドのオリフィスの断面図を示す概略図である。
【図4】マイクロスケールデバイスのウェルおよび/またはマイクロスケールチャネルを、フラッシング、洗浄、および/またはプライミングするように構成されたマニホールドの概略図である。
【図5】補助ユーティリティを含む処理システムの概略図である。
【図6】マイクロ流体カートリッジタイプのマイクロスケールデバイスおよび組み込まれたデータ記憶モジュールの概略図である。
【図7】無線周波数識別(RFID)タグの概略図である。
【図8】RFID読み取り/書き込み機能を含む装置の概略図である。
【図9】一般的なRFIDタグ:RFIDリーダシステムの概略ブロック図である。
【図10】マイクロスケールデバイスを30回使用および洗浄した後で、大きなキャリーオーバがないこと、およびアッセイ結果に再現性があることを示す、一連のグラフである。
【図11】マイクロスケールデバイス上で実行されたアルファフェトプロテイン(AFP)アッセイのエレクトロフェログラムである。
【符号の説明】
【0110】
10 積層状マニホールド組立体
11 溶液供給ポート
12 リングリザーバ
13 メソスケールチャネル
14 オリフィス
20 接続チャネル区画
21 空気圧アクチュエータ
22 マイクロスケールデバイス
23 廃棄溶液除去マニホールド層
24 廃棄物ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロスケールデバイスを処理するためのシステムであって、前記システムは、
1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいは1つまたは複数のメソスケール廃棄物チャネルを含むマニホールドと、
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに機能的に接触するように適合された、1つまたは複数のオリフィスと、
前記1つまたは複数のメソスケールチャネル、前記1つまたは複数のオリフィス、および前記マイクロスケールデバイスの前記1つまたは複数のウェルを含む流路の中の、1つまたは複数の処理溶液とを備えるシステム。
【請求項2】
前記マイクロスケールデバイスは、前記1つまたは複数のウェルと流体接触した1つまたは複数のマイクロチャネルを含み、前記流路は、前記1つまたは複数のマイクロチャネルをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つまたは複数の処理溶液を前記1つまたは複数のマイクロチャネル内に導くことが可能な、前記1つまたは複数の廃棄物チャネル内の1つまたは複数の制御バルブをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記メソスケールチャネルは約5mm〜約0.1mmの範囲の寸法を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記フラッシュチャネルおよび廃棄物チャネルは、1つまたは複数の同心状区画を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルは、圧力差を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の処理溶液は、NaOH、水、試薬、界面活性剤、溶剤、または高温を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つまたは複数の処理溶液は、ヘルマネックス(Hellmanex)(登録商標)II、または、両性界面活性剤とキレート化剤とのアルカリ性溶液を含有する洗浄溶液を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記適合されたオリフィスは、Oリング、先細り状の表面、またはその両方を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ウェルは、サンプルウェル、試薬ウェル、廃棄物ウェル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記オリフィスは、1つまたは複数のラジアルジェットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記マニホールドは、前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触した1つまたは複数のリングリザーバをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記リングリザーバのうちの2つ以上は同心状であり、1つまたは複数のチャネル区画内で流路を共有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のリングリザーバと、溶液供給ポートを介して流体接触した、1つまたは複数の試薬コンテナをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記マニホールドはさらに多層構造を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記マニホールドは、前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと機能的に連結された、1つまたは複数の制御バルブをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つまたは複数の制御バルブのうちの1つは、前記1つまたは複数のウェルのうちの1つ、前記1つまたは複数のウェルのうちの2つ以上、あるいは1つまたは複数の、ウェルのグループへの、前記処理溶液またはフラッシングガスの流れを制御する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ウェルのグループは、サンプルウェル、試薬ウェル、洗浄ウェル、または廃棄物ウェルを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つまたは複数の制御バルブは、空気圧バルブ、ソレノイドバルブ、ニードルバルブ、積層バルブ、ダイヤフラムバルブ、スライダバルブ、またはボールアンドシートバルブを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
自動化されたフローコントローラをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記自動化されたフローコントローラは、コンピュータ、インタフェース、ソレノイドバルブ、空気圧バルブ、または電子式圧力調整器を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
フラッシングガスを前記流路内にさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
独立した機器としての、または分析機器の構成要素としてのシステム構成をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記マイクロスケールデバイスに取り付けられたデータ記憶モジュールをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記処理溶液は、前記1つまたは複数のウェルあるいは1つまたは複数のマイクロチャネルを調整またはプライミングするための試薬を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
マイクロスケールデバイスを処理するためのシステムであって、前記システムは、
1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいは1つまたは複数のメソスケール廃棄物チャネルを含むマニホールドと、
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに機能的に接触するように適合された、1つまたは複数のオリフィスと、
前記1つまたは複数のメソスケールチャネル、前記1つまたは複数のオリフィス、および前記マイクロスケールデバイスの前記1つまたは複数のウェルを含む流路の中のガスとを備え、前記流路は圧力差を有し、
それにより、処理溶液または廃棄物溶液が前記マニホールド、ウェルまたはマイクロ流体デバイスからフラッシングされるシステム。
【請求項27】
前記1つまたは複数のオリフィスと前記1つまたは複数のウェルとの間の前記接触は、封止された接点を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記廃棄物チャネルは、大気圧よりも低い圧力を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記圧力差は、約1psi〜約500psiの範囲である、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記流路は、1つまたは複数のマイクロチャネルをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
マイクロスケールデバイスを処理する方法であって、前記方法は、
1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいはメソスケール廃棄物チャネルを含むマニホールドを提供するステップと、
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに機能的に接触するように適合された、1つまたは複数のオリフィスを提供するステップと、
前記1つまたは複数のウェルを前記1つまたは複数のオリフィスと接触させるステップと、
1つまたは複数の処理溶液を、前記フラッシュチャネルを通して、前記1つまたは複数のウェルの中に流すステップと、
それにより、前記1つまたは複数のウェル、または前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のマイクロチャネルを処理するステップとを含む方法。
【請求項32】
マニホールドの提供は、マシニング、射出成形、エッチング、リソグラフィ、または積層構築を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記メソスケールチャネルは、5mm〜0.1mmの範囲の寸法を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記処理溶液を流す前記ステップは、前記フラッシュチャネルまたは前記廃棄物チャネルの全体にわたって圧力差をかけるステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記処理溶液は、NaOH、水、界面活性剤、試薬、溶剤、または高温を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の処理溶液は、ヘルマネックス(Hellmanex)(登録商標)II、または、両性界面活性剤とキレート化剤とのアルカリ性溶液を含有する洗浄溶液を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記ウェルに機能的に接触するように適合されたオリフィスを提供する前記ステップは、前記オリフィスとウェルとの間にOリングを提供するステップ、先細り状のウェル壁面を提供するステップ、ウェル壁面に適合する先細り状のオリフィスを提供するステップ、または前記ウェルからの処理溶液のオーバフローを防止するのに適切な廃棄物チャネルの流れを提供するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記ウェルは、サンプルウェル、試薬ウェル、または廃棄物ウェルを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記処理するステップは、前記ウェル内、あるいは前記1つまたは複数のマイクロスケールチャネル内の検体を、100万分の1に、または1ppm未満に減少させるステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記処理溶液またはフラッシングガスを、前記オリフィス内の1つまたは複数のラジアルジェットを通して流すステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触した1つまたは複数のリングリザーバを提供するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
チャネル区画全体にわたっての1つまたは複数の圧力差を調整することにより、または前記チャネル内の1つまたは複数の制御バルブを調整することにより、前記チャネル内の処理溶液の前記流れまたはフラッシングガスの流れを、制御するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
1つのバルブを調整することにより、処理溶液またはフラッシングガスの、個々のウェルへの、またはウェルのグループへの流れが制御される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のウェルから、マニホールド内へ、溶液を回収ステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
1つまたは複数のウェル内の処理溶液を、他のウェルが再生されている間、保持するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記1つまたは複数の廃棄物チャネル内のバルブ位置を設定することにより、前記1つまたは複数のマイクロチャネルに、前記1つまたは複数の処理溶液またはフラッシングガスが流れ入るように導くステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記マイクロチャネルを処理する前に前記ウェルを処理するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
1つまたは複数のフラッシュチャネルからの、1つまたは複数の分析試薬を使用して、前記1つまたは複数のウェルあるいは前記1つまたは複数のマイクロチャネルをプライミングするステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
再使用のためにマイクロスケールデバイスを処理する方法であって、前記方法は、
1つまたは複数のフラッシュチャネルあるいは1つまたは複数の廃棄物チャネルを含むマニホールドを提供するステップと、
前記1つまたは複数のフラッシュチャネルあるいは前記1つまたは複数の廃棄物チャネルと流体接触し、前記マイクロスケールデバイスの2つ以上のウェルに機能的に接触するように適合された構成で前記マニホールド上に配置された、2つ以上のオリフィスを提供するステップと、
前記マニホールドオリフィスを、前記2つ以上のウェルと機能的に接触するように配置するステップと、
前記フラッシュチャネルから、前記オリフィスを通して、前記ウェルのうちの1つまたは複数の中へ、処理溶液を流すステップと、
前記廃棄物チャネルを通して、または前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のマイクロチャネルを通して、前記処理溶液を、前記1つまたは複数のウェルから外に流すステップと、
それにより、再使用のために前記マイクロスケールデバイスを処理するステップとを含む方法。
【請求項50】
前記オリフィスまたはウェルの数の範囲は、約2〜約34である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記マイクロスケールデバイスを、30回以上再使用するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記マイクロスケールデバイスに結合されたデータ記憶モジュール内に、処理サイクルのカウントを保持するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記オリフィスは、Oリング、ラジアルジェット、先細り形状、または同心状チャネルをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記処理溶液を流す前記ステップは、前記処理溶液に圧力をかけるステップ、または、前記1つまたは複数の廃棄物チャネルに相対的低圧をかけるステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記1つまたは複数のフラッシュチャネルは、1つまたは複数のリングリザーバから、処理溶液またはフラッシングガスを受け取る、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記リングリザーバのうちの2つ以上は同心状である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記1つまたは複数のフラッシュチャネルあるいは前記1つまたは複数の廃棄物チャネルは、メソスケールチャネルを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
2つ以上のウェルが、異なる量の処理溶液を受け取るように、異なる種類の処理溶液を受け取るように、フラッシングガスを受け取るように、または異なる時期に処理溶液を受け取るように、前記1つまたは複数のフラッシュチャネルあるいは前記1つまたは複数の廃棄物チャネルの中の前記流れを制御するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
1つまたは複数のウェルから、前記マニホールド内へ、溶液を回収ステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
1つまたは複数のウェル内の処理溶液を、他のウェルが再生されている間、保持するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
1つまたは複数のフラッシュチャネルからの、1つまたは複数の分析試薬を使用して、前記1つまたは複数のウェルあるいは前記1つまたは複数のマイクロチャネルをプライミングするステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
使用済みマイクロスケールデバイスを再生するための方法であって、前記方法は、
前記マイクロスケールデバイスを、マニホールドと機能的に接触するように配置するステップと、
前記マイクロスケールデバイス内の1つまたは複数のウェルまたはマイクロスケールチャネルを洗浄するために、前記マニホールドから前記マイクロスケールデバイスへ、1つまたは複数の処理溶液を流すステップと、
プライミング溶液を使用して、前記マイクロスケールデバイスをプライミングするステップと、
前記マイクロスケールデバイスを再使用するステップとを含む方法。
【請求項63】
前記プライミングするステップは、前記プライミング溶液を、前記マニホールドから、前記マイクロスケールデバイスへ流すステップを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
マニホールドまたはマイクロスケールデバイスから処理溶液をフラッシングする方法であって、前記方法は、
1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルあるいはメソスケール廃棄物チャネルを含むマニホールドを提供するステップと、
前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルと流体接触し、前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のウェルに機能的に接触するように適合された、1つまたは複数のオリフィスを提供するステップと、
前記1つまたは複数のウェルを前記1つまたは複数のオリフィスと接触させるステップと、
前記1つまたは複数のウェル、および前記フラッシュチャネルまたは廃棄物チャネルを含む流路を通して、ガスを流すステップと、
それにより、前記マニホールドの前記メソスケールチャネルのうちの1つまたは複数から、前記1つまたは複数のウェルから、あるいは前記マイクロスケールデバイスの1つまたは複数のマイクロチャネルから、1つまたは複数の処理溶液をフラッシングするステップとを含む方法。
【請求項65】
前記1つまたは複数のウェルまたはマイクロチャネルをフラッシングするステップは、ウェルにオリフィスを封止するステップを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
マイクロスケールデバイスであって、前記マイクロスケールデバイスは、
複数のマイクロスケールチャネルと、
前記マイクロスケールデバイスの使用回数をカウントするためのカウンタを含むデータ記憶モジュールとを備える、マイクロスケールデバイス。
【請求項67】
前記データ記憶モジュールは、無線周波数識別(RFID)タグを含む、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項68】
前記データ記憶モジュールは、デバイス識別データ、デバイス使用データ、サンプル分析データ、処理サイクルデータ、部品番号、シリアル番号、作業命令番号、デバイス設計番号、キャリブレーションデータ、製造日、有効期限、使用限度数、またはエラーコードのうちの、少なくとも1つをさらに含む、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項69】
前記使用回数は2以上である、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項70】
前記マイクロスケールデバイスは、マニホールドの1つまたは複数のメソスケールフラッシュチャネルと機能的に接触するように配置されるよう構成される、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項71】
前記データ記憶モジュールと通信を行うデータリーダをさらに含む、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項72】
前記リーダは、無線周波数トランスミッタ、無線周波数レシーバ、光ファイバ、アンテナ、データプロセッサ、ユーザインタフェース、光トランスデューサ、または、前記データ記憶モジュールへの電気的接続のうちの少なくとも1つを含む、請求項71に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項73】
前記リーダは、マイクロスケールデバイスに組み込まれているか、ハンドヘルドであるか、または独立した機器である、請求項71に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項74】
前記データ記憶モジュールは、プログラマブルメモリを含む、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項75】
前記マイクロスケールデバイスはマイクロ流体カートリッジであり、前記データ記憶モジュールは、取り付けプレートに、またはマイクロ流体チップに取り付けられている、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項76】
前記カウンタは、前記マイクロスケールデバイスの洗浄サイクルの回数をカウントするように構成されている、請求項66に記載のマイクロスケールデバイス。
【請求項77】
前記洗浄サイクルの回数が、前記プログラマブルメモリ内に記憶された所定の数に達した場合は、前記マイクロスケールデバイスの使用が中止される、請求項76に記載のマイクロスケールデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−524797(P2006−524797A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501319(P2006−501319)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020169
【国際公開番号】WO2005/016536
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
JAVA
Linux
PENTIUM
UNIX
ペンティアム
リナックス
【出願人】(505359333)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (4)
【Fターム(参考)】