説明

再分散可能な表面修飾粒子

本発明は、有機溶媒に分散可能な表面修飾粒子、ならびにポリマー、塗料およびコーティングへの混入のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒に分散可能な表面修飾粒子、ならびにポリマー、塗料、およびコーティングにおけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子、特にナノ粒子は、通常水性分散体中で生成し、しばしば有機媒体中に移送しなければならない。例えば親水性ナノ粒子を無極性環境中に過度に迅速に導入した場合には、粒子の凝集が発生する。ここで、親水性粒子を疎水性環境中で安定的に凝集がない状態で分散させることができるように、粒子表面に親水性表面修飾剤の十分高い被膜率を得ることが特に重要である。しかしながら、粒子は親水性溶媒中で疎水化を高めながら沈殿し、それ以上の被覆のために利用できなくなるため、技術的な困難を伴う。しかしながら、沈殿するまでに達成することができるコーティングは、多くの場合、所望の疎水性ターゲット溶媒中での凝集物のない再分散には不適である。
【0003】
この理由により、標準的な方法は通常、しばしば溶媒を大量に媒介させることによる、極めて低速の溶媒交換に基づく。これらの多段階方法は、低速であり複雑である。
代替の方法は、凝集したナノ粒子から開始し、表面修飾剤を加えるのと同時に高度の剪断力を用いて後者を分散させる。
前述の方法は、これらが極めて複雑であり、溶媒の高度な消費を必要とするか、または当該方法が、高度な剪断力を必要とし、これによっては凝集物の完全な分解が確実にならないという欠点を有する。
【0004】
したがって、これらの水性分散体から開始して、水性媒体中で生成することができ、有機媒体中に再分散させることができる、ナノ粒子およびこの製造方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【0005】
本目的は、本発明に基づく粒子およびその製造方法により、達成される。
したがって、本発明は先ず表面修飾無機粒子であって、a)無機粒子と少なくとも1種の表面修飾剤とを溶媒または溶媒混合物中で互いに反応させる段階、およびb)得られた反応混合物が1種または2種以上の外的要因の作用により不安定化されることによって表面修飾無機粒子が得られる段階を含む方法によって得られる、前記表面修飾無機粒子を提供することに関する。
【0006】
本発明は同様に、表面修飾無機粒子の製造方法であって、a)無機粒子と少なくとも1種の表面修飾剤とを溶媒または溶媒混合物中で互いに反応させる段階、およびb)得られた反応混合物が1種または2種以上の外的要因の作用により不安定化されることによって表面修飾無機粒子が得られる段階を含む、前記方法に関する。
本発明の他の態様において、無機粒子、特にナノ粒子を、表面修飾剤を適用する前に溶媒または溶媒混合物中に分散させることができるが、たとえばナノ粒子の分散体を直接用いることも、可能である。
【0007】
段階a)における溶媒または溶媒混合物は、水、アルコール、ケトンおよび/またはエーテル、特に水、イソプロパノール、アセトンおよび/またはTHFを包含する。
【0008】
本発明において必須な前提条件は、段階b)において1種または2種以上の外的要因の作用によって反応混合物の不安定化を制御することである。本発明の目的のために、不安定化は一方で表面修飾粒子の沈殿をもたらし、粒子を分離させる(および再分散させる)ことを可能にする粒子の不安定化を意味する。他方、不安定化はまた、2種または3種以上の溶媒の相分離を意味し、ここでは溶媒の1種、好ましくは有機溶媒に、粒子が懸濁したままとなる。
【0009】
本発明の粒子は、任意で分離および/または乾燥させることができる。分離操作は当業者に既知の方法で行うことができる。なお、さらに、粒子を乾燥させ、その後有機溶媒中に再び再分散させることができる。
本発明の方法のみにより、すべての所望の媒体および溶媒に、主要な問題および収量の損失を伴わず、測定可能な濁度が修飾されていない粒子より顕著に低くなるように再分散させることができるナノ粒子を得ることが可能である。
【0010】
本発明の表面修飾ナノ粒子で重要な点は、その優れた再分散性および得られる分散体の透明度である。この透明度は分散体の濁度を介して定量化され、濁度は150mm積分球を備えるLambda900紫外可視近赤外分光光度計で測定することができる。0.5cm厚のセルを使用して分散体の透過率が測定される。指向成分および拡散成分が計算される。透過率の拡散成分が小さいほど、濁度が小さくなり、よってサンプルはより透明に見える。サンプルの光学的外観は透明(乳白色)である。
【0011】
本発明では、化学的表面修飾が適用されるのが好ましい、すなわち表面修飾剤はナノ粒子表面に共有結合する。
表面が修飾されたナノ粒子を製造するための一般的な方法は、水性粒子分散体から開始し、これに、表面修飾剤を加える。
【0012】
特に疎水性表面コーティング剤が有機媒体との相溶化に用いられた場合、表面のコーティングは、沈殿物の形成をともなって、粒子分散を不安定化させる。沈殿によってナノ粒子表面は溶液に残留する修飾剤から分離され、好適で実質的に完全な被覆が抑制される。これはナノ粒子表面のごく一部が表面修飾剤によって被覆された時点で不安定化が生じた場合に特に不都合である。この方法により得られた粒子は凝集する傾向があり、すなわちこれらは完全に再分散させることができない。
【0013】
本発明に関して、ナノ粒子表面における表面修飾剤の適切な被覆率は、粒子分散の不安定化が特異的に制御された場合に達成される、すなわち、表面修飾ナノ粒子を含む懸濁液の不安定化は外的要因の特別な作用によってのみ制御される。不安定化は、好ましくは例えば表面修飾後のpH変化、溶媒の添加、可溶化剤の添加、温度調整、もしくは塩の添加などの外的要因によって制御することができる。
【0014】
たとえば、外的要因として異なる極性の溶媒を添加する場合、反応混合物の極性は増す。前記方法はナノ粒子表面の不均一な被覆率をもたらす早期の不安定化を防止し、これにより表面修飾剤による表面の被覆を所望の被覆率にすることができる。こうして主として外的要因の対応する変更を介して、特有の不安定化は既知の方法よりも通常遅い段階で生じる。
【0015】
いくつかの態様では、上流反応で表面修飾剤から初期に反応種が形成されなければならない点に、特別な課題を有している。これは、特に、アルコキシシランを使用する場合であり、アルコキシラジカルが完全にまたは部分的に加水分解された状態で存在している場合、極めて高い反応性を有する。
【0016】
そのため最初の目的は、表面修飾剤を反応性の高い状態にすることができる可能な限りもっとも安定な溶液を得ることであり、該溶液は迅速にナノ粒子表面との反応、その後の外的要因の修飾を介する不安定化に用いられる。これは、たとえば、シランの等電点に近いpHに調整することで実現され、そこでは、アルコキシラジカルの加水分解が迅速に進行するが、架橋は阻害される。外的要因として、後でpHを変更する場合、活性化シランは非常に急速に、ほぼ定量的にナノ粒子表面と反応する。この方法により沈殿したナノ粒子は他の反応方法で被覆されたナノ粒子よりも優れた再分散性を有する。
【0017】
さらに好適な態様において、表面修飾剤はポリマーであり、粒子と一緒に溶解され、ここで可溶化剤として溶媒を加えることができる。可溶化剤としてはアセトンが好ましい。可溶化剤は1〜50重量%の割合で用いられ、粒子分散に基づいて、好ましくは5〜20重量%の割合である。粒子を含む一般的な溶液中で、ポリマーはそれらの表面と反応し後者を官能化する。ポリマーおよびそのように修飾された粒子の安定性(溶解性)は、外的要因によって沈殿するといった影響をうける。外的要因は溶媒組成物で変えることができ、たとえば蒸留により成分の一種を除去する、好ましくは他の溶媒とは混ざり合うポリマーの非溶媒を添加する、または温度を変えるなどである。
【0018】
好ましくは、粒子表面と反応することができる反応基を複数、特に好ましくは1種有するポリマーの使用が好ましい。特に1種の反応基はポリマー上のシラン末端であり得る。
【0019】
機能化され、沈殿した粒子は溶媒混合物から容易に分離することができ、親水性または疎水性、好ましくは疎水性溶媒(ブチルアセテート、キシレン、脂肪炭化水素)に完全に再分散させることができる。
【0020】
表面コーティングは対象とするマトリックス(溶媒、コーティングシステムまたはポリマー溶解物)と相溶解できるだけでなく、乾燥した粒子の凝集を効果的に防ぐことができる。
【0021】
被覆後に不安定化させるために、1種または2種以上の塩、たとえば塩化ナトリウム、を添加することも適している。さらに、温度の昇降によって同様に不安定化させることができる。不安定化の具体的な調整のための外的要因の適用は、当業者の専門知識範囲内である。
【0022】
本発明のさらなる態様では、表面修飾剤はいわゆるLCSTまたはUCSTポリマーである。前記の特別なポリマーは、いわゆる下限臨界溶液温度(lower critical solution temperature)または上限臨界溶液温度(upper critical solution temperature)を有する。使われるポリマーによって、加熱または冷却によって均一な混合物を生成する。逆の操作では、ポリマーは粒子表面に沈殿する、すなわち、この場合、外的要因は温度変化である。
【0023】
本発明に適したLCSTポリマーは、たとえば、WO 01/60926および WO 03/014229に記載されているものである。特に適したLCSTポリマーは酸化ポリアルキレン誘導体であり、好ましくは酸化ポリエチレン(PEO)誘導体、酸化ポリプロピレン誘導体(PPO),オレフィン的に(olefinically)修飾されたPPO−PEOブロックコポリマー、アクリレートで修飾されたPEO−PPO−PEOトリブロックコポリマー、およびポリメチルビニルエーテル、ポリ−N−ビニルカプロラクタン、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(N−ポリプロピルアクリルアミド)およびポリシロキサン類からのポリマーまたはそれらの誘導体である。特に好ましいLCSTポリマーはシロキサンポリマーまたはオレフィンまたはシラノール基によって修飾されたポリエーテルである。
【0024】
適したUCSTポリマーは、特に、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマーおよび酸化ポリエチレンコポリマーである。
基質またはたとえば塗料マトリックスのような適用媒体と強い相互作用および/または化学結合を形成することができる、加溶媒分解可能な基(solvolysable)または官能基を含むLCSTまたはUCSTポリマーの使用が好ましい。当業者に既知のすべての官能基、特にシラノール、アミノ、ヒドロキシ、オレフィン、エポキシ、無水酸、および酸基が好適である。
【0025】
LCSTおよびUCSTポリマーは、好ましくは300〜500,000g/mol、特に500〜20,000g/molの分子量を有するものが好ましい。
外的要因のほかに、高い表面被覆率およびそれゆえに容易に再分散可能な粒子の製造は、対応する表面修飾剤の使用を通してもまた達成することができる。ここで、好適な表面修飾剤は下記に示す両親媒性シランである。ここではまた、両親媒性シランの使用において、当業者は当然上記外的要因の付加による影響を通して粒子の不安定化を自由に制御できる。
【0026】
好適な粒子は、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩あるいはケイ素の酸化物または水酸化物で被覆された金属、例えばAg、Cu、Fe、Au、Pd、Ptまたは合金をベースとする親水性および疎水性、特に親水性粒子、特にはナノ粒子からなる群から選択される。チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムもしくはジルコニウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩は、随意にケイ素の酸化物または水酸化物で被覆されていてもよい。
【0027】
個別の酸化物はまた、混合物の形態であってもよい。粒子は、好ましくは、Malvern ZETASIZER(動的光散乱法)または透過型電子顕微鏡により決定して、3〜200nm、特に20〜80nmおよび極めて特に好ましくは30〜50nmの平均粒径を有する。本発明の具体的な、同様に好ましい態様において、粒径分布は狭い。即ち、変動範囲は、平均の100%より低く、特に好ましくは平均の最大50%である(動的光散乱法により決定した粒子分布関数による)。特に二酸化ケイ素をベースにしたナノ粒子の使用が好ましい。
【0028】
また、例えばSuedchemieによりOptigel(登録商標)ブランドの下で、またはLaporteによりLaponite(登録商標)ブランドの下で市販されているナノヘクトライト(nanohectorites)の使用も好ましい。イオン交換水ガラスから製造したシリカゾル(SiO水溶液)もまた特に好ましい。
【0029】
特に、好適な表面修飾剤は、有機官能性シラン類、第四アンモニウム化合物、ホスホン酸塩類、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物、コポリマー、ポリマーまたはこれらの混合物である。表面修飾剤は、好ましくは、有機官能性シラン類の群から選択される。
さらに、末端トリアルコキシシラン、第四アンモニウム、ホスホン酸塩、ホスホニウムおよびスルホニウム基を1種または2種以上、特に1種のみ含む短鎖ポリマー(分子量(Mw)が50,000g/mol以下、特には10,000g/mol以下)が好ましい。
【0030】
記載した表面修飾剤の要求は、特に、本発明において、2または3以上の官能基を担持する接着促進剤により満足される。接着促進剤の1つの基は、ナノ粒子の酸化物表面と化学的に反応する。ここで考えられるのは、アルコキシシリル基(例えばメトキシ、エトキシシラン類)、ハロシラン類(例えばクロロシラン類)またはリン酸エステルもしくはホスホン酸およびホスホン酸エステル類またはカルボン酸の酸性基である。記載した基は、第2の官能基に、種々の長さのスペーサーを介して結合している。
【0031】
このスペーサーは、非反応性アルキル鎖、シロキサン、ポリエーテル、チオエーテルもしくはウレタンまたは式(C,Si)(N,O,S)で表され、式中n=1〜50、m=2〜100およびx=0〜50であるこれらの基の組み合わせである。官能基は、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアノ、イソシアネート、エポキシド、カルボキシルまたはヒドロキシル基が好ましい。
【0032】
シランをベースとする表面修飾剤は、例えばDE 40 11 044 C2に記載されている。リン酸をベースとする表面修飾剤は、特に、LUBRIZOL(Langer&Co.)からのLubrizol(登録商標)2061および2063として得られる。好適なシランは、例えば、ビニルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチルアミノ−N−プロピルジメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3−イソシアネートプロポキシトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロペニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1,2−エポキシ−4−(エチルトリエトキシシリル)シクロヘキサン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(ブトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(ブトキシ)シラン、である。特に、3−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが好ましい。このおよび他のシラン類は、たとえば、ABCR GmbH & Co., Karlsruhe、またはSivento Chemie GmbH, Duesseldorfから商業的に入手できる。
【0033】
ここでは、ビニルホスホン酸およびジエチルビニルホスホン酸塩が接着性促進剤として使用されてもよい。
【0034】
さらに、好適な表面修飾剤はまた、一般式(R)Si−S−Ahp−Bhb(I)で表される両親媒性シランであって、式中、ラジカルRは同一であっても異なっていてもよく、加水分解で除去可能なラジカルを表し、Sは、O、または1〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的もしくは完全に不飽和のシクロアルキルのいずれかを示し、これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよく、
hpは、親水性ブロックを示し、
hbは、疎水性ブロックを示し、
ここで少なくとも1種の反応性官能基がAhpおよび/またはBhbと結合している、両親媒性シランである。
【0035】
両親媒性シランは、複数の性質を併せ持つ利点を有する。これらは、たとえば、親水性ブロックを介して親水性表面を有すると同時に、疎水性ブロックを介して疎水性表面を有する粒子を提供することができる。これは、粒子表面の環境に応じる、親水性/疎水性の自己組織化スイッチングとなる。さらに、追加の反応性官能基は、たとえば周囲媒体とさらなる結合を形成することができる。
【0036】
粒子表面はこうして単一の修飾を介して極めて広い種類の用途に適用され、そうして全ての用途に適合できる。また、両親媒性シランはより大きな鎖長により、たとえば表面上で、シランの配列および配向に関して移動度が増加する。このことは、周囲の媒体と相互作用する両親媒性シラン各領域の配列改善を補助し、またそれから同様にそれで被覆された粒子と極めて広い範囲の媒体との適合性が改善する。
本発明の両親媒性シランにおいて、重要な要素は式(I)に示される個々のサブユニット構造である。
【0037】
両親媒性シラン類は、頭部基(R)Siを含み、ここでラジカルRは、同一であっても異なっていてもよく、加水分解で除去可能なラジカルを表す。ラジカルRは、好ましくは同一である。
【0038】
好適な加水分解で除去可能なラジカルは、例えば、1〜10個のC原子を有する、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、水素、2〜10個のC原子を有する、および特に2〜6個のC原子を有するアシルオキシ基、またはNR’基であり、ここでラジカルR’は、同一であっても異なっていてもよく、水素、または1〜10個のC原子を有する、特に1〜6個のC原子を有するアルキルから選択される。好適なアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ基である。好適なハロゲンは、特に、BrおよびClである。アシルオキシ基の例は、アセトキシおよびプロポキシ基である。さらにまた好適な加水分解で除去可能なラジカルはオキシム類である。オキシム類は、ここでは、水素またはすべての所望の有機ラジカルにより置換されていてもよい。ラジカルRは、好ましくはアルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシ基である。
【0039】
Si頭部基と親水性ブロックAhpとの間の連結要素として機能し、本発明の目的のために架橋機能を呈するスペーサーSPは、前述の頭部基に共有結合する。基Sは、−O−、または1〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的もしくは完全に不飽和のシクロアルキルのいずれかであり、これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。
【0040】
のC〜C18アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルもしくはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシル基である。これは、随意に、例えばジフルオロメチル、テトラフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピルまたはオクタフルオロブチル基のようにパーフルオロ化されていてもよい。
【0041】
複数の二重結合がまた存在し得る、2〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、ビニル、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C16、−C1018〜−C1834、好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
複数の三重結合がまた存在し得る、2〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキニルは、例えば、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C14、−C1016〜−C1832、好ましくはエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0042】
3〜7個のC原子を有する、非置換の、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニル基であってもよく、これらは、C〜Cアルキル基により置換されている。
【0043】
スペーサー基Sは、続いて親水性ブロックAhpに続く。これは、非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性イオン系親水性ポリマー、オリゴマーまたは基から選択することができる。最も単純な態様において、親水性ブロックは、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム基、カルボキシルを含むアルキル鎖、サルフェートおよびホスフェート側鎖を含んでもよく、ここでこれらはまた、対応する塩、遊離酸または塩の基を含む部分的にエステル化された無水物、少なくとも1つのOH基を含むOH置換アルキルもしくはシクロアルキル鎖(例えば糖)、NHおよびSHで置換されたアルキルもしくはシクロアルキル鎖、またはモノ、ジ、トリもしくはオリゴエチレングリコール基の形態であってもよい。対応するアルキル鎖の長さは、1〜20個のC原子、好ましくは1〜6個のC原子であってもよい。
【0044】
非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性イオン系親水性ポリマー、オリゴマーまたは基は、ここで、対応するモノマーから当業者に一般的に知られている方法による重合により調製することができる。好適な親水性モノマーは、ここでは、以下のものからなる群からの少なくとも1つの分散官能基を含む。
(i)中和剤によりアニオンに変換することができる官能基、およびアニオン基、および/または
(ii)中和剤および/または四級化剤によりカチオンに変換することができる官能基、およびカチオン基、および/または
(iii)非イオン系親水性基。
【0045】
官能基(i)は、好ましくは、カルボキシル、スルホニルおよびホスホニル基、酸性の硫酸およびリン酸基、並びにカルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、硫酸エステル基およびリン酸エステル基からなる群から選択され、官能基(ii)は、好ましくは、第一級、第二級および第三級アミノ基、第一級、第二級、第三級および第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基および第三級スルホニウム基からなる群から選択され、官能基(iii)は、好ましくはオメガ−ヒドロキシおよびオメガ−アルコキシポリ(アルキレンオキシド)−1−イル基からなる群から選択される。
中和されない場合には、第一級および第二級アミノ基はまた、イソシアネート反応性官能基として作用し得る。
【0046】
官能基(i)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸;オレフィン的に不飽和のスルホン酸もしくはホスホン酸またはこれらの部分エステル;あるいはマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルまたはフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、特にアクリル酸およびメタクリル酸である。
官能基(ii)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、2−アミノエチルアクリレートおよびメタクリレートまたはアリルアミンである。
【0047】
官能基(iii)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、オメガ−ヒドロキシまたはオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド)−1−イル、オメガ−メトキシポリ(プロピレンオキシド)−1−イル、またはオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)−1−イルアクリレートもしくはメタクリレート、並びにヒドロキシル置換エチレン類、アクリレート類またはメタクリレート類、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0048】
両性イオン系親水性ポリマーの生成に適するモノマーの例は、ベタイン構造が側鎖中に起こるものである。側鎖は、好ましくは、−(CH−(N(CH)−(CH−SO、−(CH−(N(CH)−(CH−PO2−、−(CH−(N(CH)−(CH−O−PO2−または−(CH−(P(CH)−(CH−SOから選択され、ここでmは、1〜30の範囲からの整数、好ましくは1〜6の範囲からの整数、特に好ましくは2を表し、nは、1〜30の範囲からの整数、好ましくは1〜8の範囲からの整数、特に好ましくは3を表す。
ここで、特に好ましいのは、親水性ブロックの少なくとも1つの構造単位がホスホニウムまたはスルホニウムラジカルを含むことであり得る。
【0049】
一般的に、対応する構造は下記の反応式にしたがって製造される。
【化1】

【0050】
ここで、ラウリルメタクリレート(LMA)およびジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の所望の量は既知の手法で、好ましくはトルエン中AIBNの添加によるフリーラジカルによって、コポリマー化される。ベタイン構造は1,3−プロパンとアミンの反応によって既知の手法で続いて得られる。
本発明の別の変法として、主成分にラウリルメタクリレート(LMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)からなるコポリマーを用いることが好ましく、これはトルエン中AIBNを用いるフリーラジカル重合による既知の手法で調製することができる。
【0051】
親水性モノマーを選択する際には、官能基(i)を含む親水性モノマーおよび官能基(ii)を含む親水性モノマーを、好ましくは、不溶性塩または複合体が生成しないように互いに混ぜ合わせることを、確実にすべきである。対照的に、官能基(i)を含む、または官能基(ii)を含む親水性モノマーを、所望により、官能基(iii)を含む親水性モノマーと混ぜ合わせることができる。
上記の親水性モノマーの中で、官能基(i)を含むモノマーを、特に好ましく用いる。
【0052】
アニオンに変換することができる官能基(i)についての中和剤は、好ましくは、ここで、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2−アミノメチルプロパノール、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンからなる群から選択され、カチオンに変換することができる官能基(ii)についての中和剤は、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸およびクエン酸からなる群から選択される。
【0053】
親水性ブロックは、極めて特に好ましくはモノ、ジおよびトリエチレングリコール構造単位から選択される。
疎水性ブロックBhbは、親水性ブロックAhpに結合して続く。ブロックBhbは、疎水性基をベースとするか、または親水性ブロックと同様に、重合に適する疎水性モノマーをベースとする。
【0054】
好適な疎水性基の例は、1〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキルであり、これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。このような基の例は、上記ですでに述べた。さらに、2個よりも多いC原子を有するアリール、ポリアリール、アリール−C〜Cアルキルまたはエステル類が、好適である。上記の基は、さらにまた、特にハロゲンにより置換されていてもよく、ここでパーフルオロ化されている基が、特に好適である。
【0055】
アリール−C〜Cアルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖の両方は、上記のようにFにより部分的または完全に置換されていてもよく、特に好ましくはベンジルまたはフェニルプロピルである。
【0056】
疎水性ブロックBhbに適する疎水性のオレフィン的に不飽和のモノマーの例は、以下のものである。
(1)オレフィン的に不飽和の酸で本質的に酸性基を有しないエステル、例えばアルキルラジカル中に20個までの炭素原子を有する(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル類、特に、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ステアリルおよびラウリルアクリレート、メタクリレート、クロトネート、エタクリレートまたはビニルホスホネートもしくはビニルスルホネート;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸の脂環式エステル類、特に、シクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタジエニル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンメタノールまたはtert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、クロトネート、エタクリレート、ビニルホスホネートまたはビニルスルホネート。
【0057】
これらは、少量の(メタ)アクリル酸、クロトン酸またはエタクリル酸の多官能アルキルまたはシクロアルキルエステル類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンジメタノールまたはシクロヘキサン−1,2−、−1,3−もしくは−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート並びに類似するエタクリレート類またはクロトネート類を含んでいてもよい。本発明の目的のために、少量の多官能モノマー(1)は、ポリマーの架橋またはゲル化をもたらさない量を意味するものと、解釈される。
【0058】
(2)分子あたり少なくとも1つの水酸基またはヒドロキシメチルアミノ基を担持しており、酸性基を本質的に有しないモノマー、例えば
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびエタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであって、ここで、ヒドロキシアルキル基が20個までの炭素原子を含み、例えば、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリレートもしくはエタクリレート;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンジメタノールもしくはメチルプロパンジオールモノアクリレート、モノメタクリレート、モノエタクリレートもしくはモノクロトネート;または環式エステル、例えばエプシロン−カプロラクトンおよびこれらのヒドロキシアルキルエステル類の反応の生成物;
【0059】
− オレフィン的に不飽和のアルコール類、例えばアリルアルコール
− ポリオール類のアリルエーテル類、例えばトリメチロールプロパンモノアリルエーテルまたはペンタエリスリトールモノ、ジもしくはトリアリルエーテル。多官能モノマーは、一般的に、少量で用いるに過ぎない。本発明の目的のために、少量の多官能モノマーは、ポリマーの架橋またはゲル化をもたらさない量を意味するものと、解釈される、
【0060】
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸と、分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝状モノカルボン酸のグリシジルエステル類との反応の生成物。アクリル酸またはメタクリル酸と、第三級アルファ−炭素原子を含むカルボン酸のグリシジルエステルとの反応は、重合反応の前、間または後に起こり得る。用いるモノマー(2)は、好ましくは、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、Versatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応の生成物である。グリシジルエステルは、Cardura(登録商標)E10の名称の下で、市販で入手できる。さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben [Roempp's Lexicon of Surface Coatings and Printing Inks], Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, .1998、605および606頁を参照する;
【0061】
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸類の、およびアルファ、ベータ−不飽和カルボキサミド類のアミノアルキルエステル類のホルムアルデヒド付加物、例えばN−メチロールおよびN,N−ジメチロールアミノエチルアクリレート、−アミノエチルメタクリレート、−アクリルアミドおよび−メタクリルアミド;並びに
【0062】
− アクリルオキシシラン基および水酸基を含むオレフィン的に不飽和のモノマー。これは、ヒドロキシ官能性シラン類とエピクロルヒドリン30との反応、およびその後の、中間体とアルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸、あるいはこれらのヒドロキシアルキルエステル類とのその後の反応により、調製することができる。
【0063】
(3)分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝状モノカルボン酸のビニルエステル類、例えばVeoVa(登録商標)ブランドの下で市販されているVersatic(登録商標)酸のビニルエステル;
(4)環式および/または非環式オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、ブト−1−エン、ペント−1−エン、ヘクス−1−エン、シクロヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン;
【0064】
(5)アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸のアミド類、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N,N−ジエチル−、N−プロピル−、N,N−ジプロピル−、N−ブチル−、N,N−ジブチル−および/またはN,N−シクロヘキシルメチル(メタ)アクリルアミド;
(6)エポキシド基を含むモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸のグリシジルエステル類;
【0065】
(7)ビニル芳香族(vinylaromatic)炭化水素、例えばスチレン、ビニルトルエンまたはアルファ−アルキルスチレン類、特にアルファ−メチルスチレン;
(8)ニトリル類、例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル;
【0066】
(9)以下からなる群から選択されたビニル化合物:ハロゲン化ビニル類、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、二塩化ビニリデン、二フッ化ビニリデン;ビニルアミド類、例えばN−ビニルピロリドン;ビニルエーテル類、例えばエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルおよびビニルシクロヘキシルエーテル;並びにビニルエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニル;
【0067】
(10)アリルエーテル類およびエステル類からなる群から選択されたアリル化合物、例えばプロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルまたは酢酸アリルもしくはプロピオン酸アリル;多官能性モノマーに関して、上記のものが同様に該当する;
【0068】
(11)シロキサンまたはポリシロキサンモノマー。これは、上記ですでに述べた飽和、不飽和、直鎖状もしくは分枝状アルキル基または他の疎水性基により置換されていてもよい。また好適なのは、1000〜40,000の数平均分子量Mnを有し、分子あたり平均で0.5〜2.5のエチレン的に不飽和の二重結合を含むポリシロキサンマクロモノマー、例えば1000〜40,000の数平均分子量Mnを有し、分子あたり平均で0.5〜2.5のエチレン的に不飽和の二重結合を含むポリシロキサンマクロモノマー;特に2000〜20,000、特に好ましくは2500〜10,000および特に3000〜7000の数平均分子量Mnを有し、分子あたり平均で0.5〜2.5、好ましくは0.5〜1.5のエチレン的に不飽和の二重結合を含むポリシロキサンマクロモノマーであり、これは、DE 38 07 571 A1、5〜7頁、DE 37 06 095 A1、3〜7欄、EP 0 358 153 B1、3〜6頁、US 4,754,014 A1、5〜9欄、DE 44 21 823 A1または国際特許出願WO 92/22615、12頁18行〜18頁10行に記載されている通りである;並びに
【0069】
(12)カルバメートまたはアロファナート基を含むモノマー、例えばアクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル、−プロピルまたは−ブチルカルバメートまたはアロファナート;カルバメート基を含む好適なモノマーのさらなる例は、特許明細書US 3,479,328 A1、US 3,674,838 A1、US 4,126,747 A1、US 4,279,833 A1またはUS 4,340,497 A1に記載されている。
【0070】
それぞれの親水性および疎水性ブロックを、原則的に、任意の所望の方式で互いに組合わせることができる。本発明の両親媒性シラン類は、好ましくは、2〜19の範囲内、好ましくは4〜15の範囲内のHLB値を有する。HLB値は、ここでは、
【数1】

として定義され、シランが一層親水性または疎水性に振る舞うか、即ち、2つのブロックAhpとBhbとのいずれが本発明によるシランの特性を支配するかを示す。HLB値は、理論的に計算され、親水性および疎水性基の質量分率から生じる。0のHLB値は、親油性化合物を示し、一方20のHLB値を有する化合物は、親水性成分のみを有する。
【0071】
両親媒性シラン類はさらに、Ahpおよび/またはBhbに少なくとも1種の反応性官能基が結合を形成している事実により、際立つ。反応性官能基は、好ましくは、疎水性ブロックBhbに、特に好ましくは、疎水性ブロックの末端に結合している。好ましい態様において、頭部基(R)Siと反応性官能基とは、可能な最大の距離を有する。これにより、例えば周囲の媒体と反応性基の可能な反応性を顕著に制限せずに、ブロックAhpおよびBhbの鎖長を特に柔軟に設定することが、可能になる。
【0072】
反応性基は、加水分解で除去可能なラジカル、OH、カルボキシル、NH、SH基、ハロゲンまたは二重結合を含む反応性基、例えばアクリレートまたはビニル基を含むシリル基から選択することができる。加水分解で除去可能なラジカルを含む好適なシリル基は、すでに頭部基(R)Siの説明において前に記載した。反応性基は、OH基が好ましい。
【0073】
不安定化後、本発明のナノ粒子は単離される。これは遠心分離、ろ過および随意に水および/またはアルコールで洗浄して行われる。
この方法で得られた表面修飾ナノ粒子は単純な方法で新たな媒体に分散させることができる。最も単純なケースでは、ナノ粒子を分散媒体に混合させる。
【0074】
本発明は同様に、塗料、コーティング、接着剤およびプラスチック、特に透明な用途における、本発明のナノ粒子の使用に関する。このように、本発明の粒子の混入は、特にナノ粒子の場合、ポリマーの化学的、熱的、および機械的安定性を改善させることまたは電磁波の部分に特に影響を与えることを可能にする。この点で、紫外線に対する保護は特に重点が置かれるべきである。
【0075】
ポリマーおよび表面コーティングへの混入は、ポリマー組成物の調製のための従来の方法で行うことができる。たとえば、ポリマー材料と本発明のナノ粒子を、好ましくは乾燥された粒子を、好ましくは押出機または配合機中で混合させることができ、また2成分コーティング系のポリマー発成分とナノ粒子を混合することによって、2成分コーティング系に混入させることができる。好適なポリマーはポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリイミド(PI)ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオレフィン、好ましくはポリブタジエンおよびポリイソプレン、ならびにある割合で上記ポリマーを含むコポリマーであり、2成分コーティング系も同様である。
【0076】
以下の例は、単に本発明を、保護の範囲を制限せずに例示する。特に、他の箇所に述べない限り、関連性のある問題が基づく定義された化合物(1種または2種以上)の当該箇所に記載した特徴、特性および利点をまた、詳細に述べていないが特許請求の範囲の保護の範囲内にある他の物質および化合物にも適用することができる。
【0077】
例:
表面修飾:
30重量%SiOナノ粒子(粒子直径9nm)水分散体4.16gをイソプロパノール(26ml)で5重量%に希釈する。様々な量のヘキサデシルトリメトキシシラン(HDTMS)を表面修飾剤としてこの単相分散体に添加する(表1.1参照)。12時間反応後、外的要因として15mlの水を加えることによって、反応混合物の極性を極端に向上させ、表面修飾粒子を沈殿させる。粒子をろ過し、n−ブチルアセテート中に回収する。
【0078】
【表1】

*ナノ粒子の比表面積に基づく(Asp=300m/g)
**ヘキサデシルトリメトキシシラン
***イソプロパノールなし
【0079】
イソプロパノールは表面修飾の際にSiOナノ粒子分散体とHDMS間の可溶化剤として働く。イソプロパノールなしでは(表2.1参照)、シランが修飾の初期段階で2相状態であり、シラン化が進行すると水中に粒子が沈殿する。そのため、サンプル6およびサンプル7の拡散および透過の測定も不可能となる(濁度実験参照)。
【0080】
濁度実験:
測定装置:150mm積分球を有するLambda 900 UV/VIS/NIR(紫外可視近赤外分光光度計)
分散体の0.5cm厚セル中の透過率を測定する。
指向および拡散成分を計算する(表2.1)。
【0081】
【表2】

*測定中、安定した分散体を認めない。
【0082】
濁度測定の結果は、シランの表面被覆率が減少すると拡散性透過の比が増加し、その結果指向性透過が減少することを示している。表面修飾工程は凝集体のないナノ粒子を確実にもたらすものであり、それはリファレンス(表面修飾無しまたはイソプロパノール無し)と比較して透過率の小さな拡散成分によって特徴づけられる。サンプルの光学的外観は透明(乳白色)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面修飾無機粒子であって、a)無機粒子と少なくとも1種の表面修飾剤とを溶媒または溶媒混合物中で互いに反応させる段階、およびb)得られた反応混合物を1種または2種以上の外的要因の作用によって不安定化させ表面修飾無機粒子を得る段階を有する方法によって得られることを特徴とする、前記表面修飾無機粒子。
【請求項2】
表面修飾剤を適用する前に無機粒子を溶媒または溶媒混合物に懸濁させることを特徴とする、請求項1に記載の表面修飾無機粒子。
【請求項3】
粒子が、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩および炭酸塩またはこれらの混合物を、あるいはケイ素の酸化物または水酸化物で被覆された金属、例えばAg、Cu、Fe、Au、Pd、Ptまたは合金、をベースとすることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面修飾無機粒子。
【請求項4】
チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩および炭酸塩あるいはこれらの混合物をベースとする粒子が、ケイ素の酸化物または水酸化物で被覆されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面修飾無機粒子。
【請求項5】
粒子が、動的光散乱法または透過型電子顕微鏡により決定して、3〜200nmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項6】
溶媒または溶媒混合物が水、アルコール、ケトンおよび/またはエーテルを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項7】
外的要因が、表面修飾後のpH変化、粒子分散体への溶媒添加または可溶化剤の添加、温度の変更あるいは塩の添加から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項8】
表面修飾剤が、有機官能性シラン類、第四アンモニウム化合物、ホスホン酸塩類、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物、コポリマー、ポリマーあるいはこれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項9】
表面修飾剤が無機粒子の表面に共有結合することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項10】
表面修飾剤がLCSTまたはUCSTポリマーであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項11】
粒子を分離および/または乾燥させることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項12】
粒子が有機溶媒中で再分散可能であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項13】
表面修飾無機粒子を、150mm積分球を備えるLambda900紫外可視近赤外分光光度計で決定される分散体の濁度によって評価される透明分散体を得るために分散させることができることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の表面修飾無機粒子。
【請求項14】
請求項1に記載の表面修飾無機粒子の製造方法であって、a)無機粒子と少なくとも1種の表面修飾剤を溶媒または溶媒混合物中で互いに反応させる段階、およびb)得られた反応混合物を1種または2種以上の外的要因の作用によって不安定化させ表面修飾無機粒子を得る段階を有する、前記方法。
【請求項15】
粒子を分離および/または乾燥させることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表面コーティング、接着剤、およびプラスチックにおける、請求項1〜13のいずれかに記載の表面修飾無機粒子の使用。
【請求項17】
ポリマーの化学的、熱的および機械的安定性を向上させるための、請求項1〜13のいずれかに記載の表面修飾無機粒子の使用。

【公表番号】特表2010−512434(P2010−512434A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540619(P2009−540619)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009938
【国際公開番号】WO2008/071286
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】