説明

再利用防止フィルム積層体

【課題】簡便な手法で、偽造ないしは改ざんを確実に防止し得ることが可能な偽造防止用のフィルム積層体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面に、印刷層(2)として強密着インキ層(2−1)および弱密着インキ層(2−2)をそれぞれ有し、さらに印刷層の上に、透明保護フィルム(3)を有する多層フィルム積層体であって、熱可塑性樹脂フィルム(1)が、フィルム基材層(1−1)および表面イオン濃度が2.0〜10.0mg/mの範囲にある易印刷性層(1−2)を有し、加えて弱密着インキ層(2−2)がカチオンインキで構成されており、さらには透明保護フィルム(3)を多層フィルム積層体より剥離した場合に弱密着インキ層(2−2)のみが基材から剥離し判読不能となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用のラベルやシールもしくはシートなどとして使用されるフィルム積層体に関し、使用後の再利用による偽造行為を事前防止するための再利用防止フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偽造防止や再利用防止用のラベルやシールあるいはシートが多数提案されている。例えば、また特許文献1には、特定の細線もしくは網点パターンを異なる領域に2個以上有することで偽造防止をしたIDカードが提案されている。
特許文献2には、基材の少なくとも片面に塗工により凝集破壊層を設け、該破壊層の表面に粘着剤層を設けた貼替防止用積層体において、該破壊層が湿式凝固法で製造された多孔質層を有する貼替防止用積層体が提案されている。
特許文献3には、パターン状剥離層とホログラム層と透明反射層と粘着剤と離型層からなるステッカーが貼合された改ざん防止カードが提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1において提案されている貼替防止ラベルでは、デジタルスキャナーやIJプリンターの性能が向上している近年では偽造防止の防止としては未だ不完全である。
また特許文献2で提案されている貼替防止用積層体は、湿式凝固法で多孔層を製造するプロセスが煩雑でコスト上昇することに加え、多孔層の表面強度が弱いことから、オフセット印刷等では、多孔層の表面強度不足によりインキ転移不良等が発生するという欠点を有している。
加えて特許文献3において提案されている改ざん防止ラベルでは改ざん防止能力は高いものの、ホログラム使用による製造コスト上昇に加え、製造工程が極めて煩雑になるという欠点を有している。
【0004】
【特許文献1】特開平06−040190号公報
【特許文献2】特開平2006−099051号公報
【特許文献3】特開平2004−145007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便な手法で、偽造ないしは改ざんを確実に防止し得ることが可能な偽造防止用のフィルム積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することを目的として、本発明者らが鋭意検討した結果、下記の構成を有する再利用防止フィルム積層体が該課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面に、印刷層(2)として強密着インキ層(2−1)および弱密着インキ層(2−2)をそれぞれ有し、さらに印刷層の上に、透明保護フィルム(3)を有する多層フィルム積層体であって、熱可塑性樹脂フィルム(1)が、フィルム基材層(1−1)および表面イオン濃度が2.0〜10.0mg/mの範囲にある易印刷性層(1−2)を有し、加えて弱密着インキ層(2−2)がカチオンインキで構成されており、さらには透明保護フィルム(3)を多層フィルム積層体より剥離した場合に弱密着インキ層(2−2)のみを基材から剥離し、判読不能となることを特徴とする再利用防止フィルム積層体、である。
【0007】
本発明では、易印刷層(2−2)がカチオン系、両性系、及びアニオン系から選ばれた1種以上の高分子系帯電防止剤(a)を含有することが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面固有抵抗が、1×10〜1×1013Ωであることが好ましい。
加えて、熱可塑性樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルムまたは熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムから選ばれたフィルムであることが好ましい。
さらに加えて、強密着インキ層(2−2)が、紫外線硬化するラジカル重合インキを使用していることが好ましく、また 透明保護フィルム層(3)が、接着剤層(3−1)および透明フィルム層(3−2)からなることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルム(1)が不透明度80〜100(%)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡便な手法で、偽造ないしは改ざんを確実に防止し得ることが可能な偽造防止用のフィルム積層体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を以下に説明する。
〈熱可塑性樹脂フィルム(1)〉
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(1)は、フィルム基材層(1−1)および易印刷性層(1−2)から構成されており、フィルム基材層(1−1)が耐水性や耐折れ曲げ性といったメディア芯材としての特性を有し、易印刷性層(1−2)が、メディア表面としての特性を有する。
[フィルム基材層(1−1)]
フィルム基材層(1−1)は、その主構成材として熱可塑性樹脂を含み、さらに主構成材として熱可塑性樹脂に加えて無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一種を含むものであることが好ましい。フィルム基材層(1−1)の構造は単層であっても2層以上の多層からなる積層フィルムであってもよい。
【0010】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、フィルム基材層(1−1)の主構成材、即ちマトリクス樹脂として用いるものである。
上記フィルム基材層に使用可能な熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、エチレングリコールとテレフタル酸を主原料とするポリエチレンテレフタレートや3元系以上の共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0011】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点から、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂または熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、特に中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはプロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。またプロピレンを主成分とし、これとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレン系共重合体を
使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0012】
(無機フィラーおよび/又は有機フィラー)
無機フィラーおよび/又は有機フィラーは熱可塑性樹脂フィルム(1)の構成材として、白色性付与、および延伸形成時に空孔を形成する目的から添加するものである。
上記熱可塑性樹脂フィルム(1)に使用可能な無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの無機フィラー、無機フィラーを核としこの周囲にアルミニウム酸化物乃至は水酸化物を有する複合無機フィラー、中空ガラスビーズ等を例示することができる。中でも重質炭酸カルシウム、焼成クレー、珪藻土は安価で延伸時に多くの空孔を形成させることができるために好ましい。
また上記熱可塑性樹脂フィルム(1)に使用可能な有機フィラーとしては、空孔形成の目的のために、マトリクスとして用いる上記の熱可塑性樹脂よりも融点又はガラス転移点が高く、且つ上記の熱可塑性樹脂に非相溶性の樹脂の中から選択して用いることが好ましい。
【0013】
有機フィラーの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル酸エステル乃至はメタクリル酸エステルの単独重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチルエーテルケトン、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレン等のα−オレフィンとの共重合体(COC)等を例示することができる。上記熱可塑性樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラーとして、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(COC)より選択されるものを用いることが好ましい。
【0014】
(配合比)
熱可塑性樹脂フィルム(1)の原料組成は、上記の、熱可塑性樹脂20〜90重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ10〜80重量%とを含み、好ましくは熱可塑性樹脂40〜80重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ20〜60重量%とを含み、更に好ましくは熱可塑性樹脂50〜80重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ20〜50重量%とを含む。
【0015】
(製造法)
上記フィルム基材層は、無延伸フィルムもしくは延伸フィルムとして当業者に公知の種々の方法およびそれらの組み合わせによって製造することができる。いかなる方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムであっても、本発明に記載された条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
本発明で使用する熱可塑性樹脂フィルム(1)が延伸フィルムである場合は、熱可塑性樹脂と無機フィラー及び/又は有機フィラーとを所定の割合で混合し、溶融混練した後に押出し等の方法により製膜し、製膜後に熱可塑性樹脂の融点より低い温度、好ましくは5〜60℃低い温度条件下で1軸方向乃至2軸方向に延伸を行うことによって得られる。
本発明において2種以上の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合、延伸は、用いる熱可塑性樹脂の配合量(重量%)が最大である熱可塑性樹脂の融点より5℃以上低い温度で行うことが好ましい。
【0016】
本発明においてフィルム基材層として多層フィルムを用いる場合には、各層は、それぞれの層を個別に形成した後に積層することによって得られたものでもよいし、積層した後
にまとめて延伸して得られたものでもよい。例えば、基層(ア)の表裏面に表層(イ)の樹脂組成物を積層してイ/ア/イの多層構造とした後、1軸乃至は2軸方向に延伸することにより、全層1軸方向乃至は全層2軸方向に配向した多層フィルムとして得ることができる。また基層(ア)を1軸方向に延伸した後、その表裏面に表層(イ)を表裏それぞれに積層してイ/ア/イの多層構造とし、前段とは異なる延伸軸方向に再度1軸延伸することにより、1軸/2軸/1軸方向に配向した多層フィルムとして得ることもできる。
各層を別個に延伸した後に積層することも可能であるが、上記のように各層を積層した後にまとめて延伸する方が工程数は少なく簡便であり、製造コストも安くなるので好ましい。
【0017】
(延伸)
延伸には、当業者間で公知の種々の延伸方法を使用することができる。
延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸、テンターオーブンとリニアモーターを利用した同時二軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフを利用した同時二軸延伸、チューブラー法を利用したインフレーション(同時二軸延伸)形成法などを挙げることができる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、任意の剛性、クッション性、不透明性、軽量性を有するフィルムを得ることが容易であり好ましい。
【0018】
延伸倍率は特に限定されるものではなく、本発明で所望する物性と、用いる熱可塑性樹脂の特性を考慮して決定する。ロール間延伸は通常は4〜11倍が好ましく、4〜10倍であることがより好ましく、5〜7倍であることがさらに好ましい。テンターオーブンを利用したクリップ延伸の場合は4〜11倍であることが好ましく、6〜9倍であることがより好ましい。これらを組み合わせた二軸延伸の場合は、面積倍率として、通常は4〜80倍であり、好ましくは4〜60倍、より好ましくは5〜50倍である。面積倍率を4倍以上にすることによって、低密度でより空孔が多い、且つ延伸ムラを防いでより均一な厚さのフィルム基材層(1−1)を製造することが容易になる。また80倍以下にすることによって、延伸切れや粗大な穴あきをより効果的に防ぐことができる傾向がある。
延伸後のフィルムには熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、延伸温度から延伸温度より30℃高い温度の範囲内を選択することが好ましい。熱処理を行うことにより、延伸方向の延伸応力に起因する熱収縮率が低減し、製品保管時の巻き締まりや熱による収縮から生じるシートの波打ち等が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。これらの処理は延伸したフィルムを緊張下に保持された状態において熱処理するのがより高い処理効果が得られるので好ましい。
【0019】
[易印刷性層(1−2)]
本発明では、強インキ密着層(2−1)および弱インキ密着層(2−2)の接着強度差を発現するために、表面イオン濃度が2.0〜10.0mg/mである特定範囲の表面イオン濃度を示す易印刷性層を設けることが必要である。
上記範囲にある印刷性層を設けることで、弱インキ密着層に使用したカチオン重合インキの硬化を抑制しつつ、強ラジカルインキ密着層のインキの硬化を落とさずに密着することが可能となり、再利用防止機能を有するフィルム積層体を得ることが可能となる。
表面イオン濃度が2.0mg/m未満である場合は、カチオン重合インキの硬化が抑制できないことから好ましくない。
さらに、表面イオン濃度が10.0mg/mを超える場合は、ラジカル重合インキの硬化が抑制できないことから好ましくない。
本発明では、上記表面イオン濃度に調整し、熱可塑性樹脂フィルムの印刷時の搬送トラブルを防止するといった目的で、易印刷性層にカチオン型、アニオン型、及び両性型の帯電防止剤から選ばれた1種以上の高分子型帯電防止剤を含有させることが好ましい。
【0020】
(高分子型帯電防止剤)
本発明で使用可能な高分子型帯電防止剤としては、高分子薬剤入門(三洋化成工業株式会社刊)に記載のカチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型などのものが挙げられる。
カチオン型としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するものが挙げられる。
アニオン型としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸などのアルカリ金属塩(例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有するものが挙げられる。
両性型としては、上記のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有するもので、例としてはベタイン型が挙げられる。これらの中で好ましくは窒素含有高分子型帯電防止剤であり、より好ましくは第三級窒素またはカチオン型の第四級窒素を含有するアクリル系高分子である。
帯電防止剤としてはノニオン系界面活性剤等の低分子型界面活性剤が販売されるが、本発明においては強インキ密着層のインキ密着性が低下してしまうことから再利用防止機能が発現せず好ましくない。
【0021】
(高分子バインダー)
本発明の易印刷性層(1−2)は、印刷インキの定着性やフィルム基材層(1−1)への密着性を向上させるために、高分子バインダーを含有することが好ましい。
高分子バインダーの具体例としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体等の水系エマルジョンやポリビニルアルコール、シラノール基を含むエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、メチルエチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、各種でんぷん、各種ゼラチン等の水溶性ポリマーが挙げられる。
【0022】
上記の高分子バインダーの中で、インキ定着性向上およびフィルム基材層(1−1)との密着性の点から下記一般式(I)で表されるポリエチレンイミン系重合体またはポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物が好ましい。
【化1】

(式中、RとRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10の範囲の直鎖または分岐状のアルキル基、脂環式構造を有するアルキル基、またはアリル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20の範囲のアルキル基、アリル基、脂環式構造を有するアルキル基、アリル基乃至はこれらの水酸化物であり、mは2〜6の範囲の整数であり、nは20〜3000の範囲の整数であり、これらを単独または数種類複合させても良い。)
【0023】
(フィラー成分)
フィルム基材層(1−1)と易印刷性層(1−2)との密着性が低下しない範囲であれば、易印刷性層(1−2)に、インキ定着成分や白色度向上成分としてフィラー成分を含有させることも可能である。フィラー成分の具体例として、合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナヒドロゾル、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、二酸化チタン、プラスチックピグメント等が挙げられるが、これらの中でも炭酸カルシウム、シリカ、クレー、硫酸バリウム等の無機フィラーを使用することが好ましい。
【0024】
(その他成分)
また上記易印刷性層(1−2)には、エポキシ系、イソシアネート系、ホルマリン系、オキサゾリン系の架橋剤を含有させることも可能である。これらの樹脂を加えると易印刷性層(1−2)と強密着性インキとの耐水密着性を更に改良することができる。架橋剤としては、特にビスフェノールA−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂が好ましく、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、あるいは単官能乃至多官能のグリシジルエーテル、グリシジルエステル類が特に好ましい。尚、本発明を構成する易印刷性層(A)には、印刷性や密着性を損なわない範囲で、消泡剤、その他の助剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0025】
(配合比)
易印刷性層(1−2)の配合量比としては、高分子バインダー20〜90重量%、高分子型帯電防止剤1〜60重量%、フィラー成分0〜60重量%、架橋剤等のその他成分0〜40重量%であることが好ましい。
【0026】
(活性化処理)
易印刷性層(1−2)をフィルム基材層(1−1)上に設ける前に、両者の密着向上のためフィルム基材層上に各種の活性化処理を施しても良い。活性化処理とは、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理方法であり、好ましくはコロナ処理である。コロナ処理における適正な処理量は5〜200W・分/m、好ましくは10〜100W・分/mである。5W・分/m未満では、コロナ放電処理の効果が不十分で、その後の塗工により易印刷性層(1−2)を設ける際にはじきが生じやすい傾向にあり好ましくない。200W・分/m超では処理の効果が頭打ちとなるので200W・分/m以下で十分である。易印刷性層(1−2)を設けた後、その表面に、更に上記の活性化処理を施してもよい。
【0027】
(塗工方法)
易印刷性層(1−2)として、上記の高分子バインダーや帯電防止剤を配合した水溶液(以下「塗工剤」と表記する。)をフィルム基材層(1−1)上へ設ける塗工方法としては、ダイ、バー、ロール、グラビア、スプレー、ブレード、エアーナイフ、サイズプレス等の塗工方法およびこれらの塗工方法を組み合わせた方法を採用することができる。塗工剤の粘度、塗工量、塗工速度に応じて、ダイ、ロール、グラビア、スプレー等を用いて規定量の塗工剤を計量してロール、サイズプレスに転写して塗工したり、ダイ、ロールで規定量以上の塗工剤を転写させた後にバー、ブレード、エアーナイフ等で余分な塗工剤を掻き取って規定量の塗工剤を塗工したり、ダイ、スプレー等を用いて規定量の塗工剤を直接塗工することが可能である。
より具体的な例として、塗工剤の粘度が10〜1000cP(0.01〜1Ns/m)、塗工量が1〜20g/m、塗工速度が300m/分以下で塗工する場合の塗工方式として、オフセットグラビア方式やスプレーシステム、ローターダンプニングを用いることができる。オフセットグラビア方式はグラビアとロールの組み合わせであり、塗工剤はグラビア版からロールに転写され、各ロール間で液の転写が行われる際にグラビア版目の除去と塗工剤の平滑化が行われた後、各層の表面に転写される。
【0028】
また、スプレーとサイズプレスを組み合わせたスプレーシステムは、塗工剤が供給装置からスプレー塗工装置を通じてサイズプレスに均一な塗工剤膜が形成され、サイズプレスから樹脂層に転写されるため少量の塗工剤を塗工する方法として好ましい。ローターダンプニングはスプレー塗工の一種であり、ベルト駆動で高速回転するローターで塗工剤を霧状にして、各層の表面に直接噴霧する方法である。塗工剤をフィルム基材層(1−1)上
へ塗工後、さらに必要によりスムージング(表面平滑化処理)を行い、乾燥工程を経て余分な水や親水性溶剤の除去を行うことにより、易印刷性層(1−2)が得られる。
本発明において、易印刷性層(1−2)中の高分子型帯電防止剤が、単位面積(m)当たり固形分量として0.001〜10g、好ましくは0.002〜8g、さらに好ましくは0.002〜5g、特に好ましくは0.005〜0.1gとなるように含有させるのが良い。高分子型帯電防止剤分布量が0.001g未満では帯電防止効果が十分に現れず、10gを超えると印刷インキの密着性が不十分になる傾向がある。
【0029】
〈印刷層(2)〉
熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面に印刷層(2)として、強密着インキ層(2−1)および弱密着インキ層(2−2)をそれぞれ有することが本発明の特徴である。
[弱密着インキ層(2−2)]
本発明での弱密着インキ層(2−2)は、カチオン重合インキを使用することが必要である。カチオン重合インキの使用例は、既存特許文献(特開平7−157668号公報、特開平7−352297号公報)にも記載されているが、カチオン重合成物質(A)と光カチオン重合開始剤(B)を含有するインキである。
カチオン重合性物質(A)の例としては、エポキシ樹脂類やビニルエーテル化合物等が挙げられる。
エポキシ樹脂類の具体例としては、例えは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げることができる。
【0030】
ビニルエーテル化合物の例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、1,9−ノナンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキシル−1,4−ジメチロールモノビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキシル1,4−ジメチロールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等の反応性ビニルエーテル単量体、
【0031】
エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオール類とトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソポロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート類と水酸基含有ビニルエーテル類(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキシル−1,4−ジメチロールモノビニルエーテル等)の反応物であるウレタンビニルエーテル、前記、水酸基含有ビニルエーテル類とポリカルボン酸クロライド類(例えば、フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テトラヒドロフタル酸ジクロライド等)の反応物であるポリエステルポリビニルエーテル等の反応性ビニルエーテルオリゴマー等を挙げることができる。
【0032】
光カチオン開始剤(B)の具体例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、SP−170、SP−150(旭電化社製、商品名)、FC−508、FC−512(3Mカンパニー社製、商品名)、UVE−1014(ゼネラルエレクトリックカンパニー社製
、商品名)等のポリアクリルスルホニウム塩、Irg−261(チバ・ガイギー社製、商品名)等のメタロセン化合物、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ノニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ジエトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩等を挙げることができる。これら光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
本発明の樹脂組成物には、更に必要に応じて、染料、顔料等の着色剤、消泡剤、レベリンク剤、重合禁止剤、ワックス類酸化防止剤、非反応性ポリマー、シランカップリング剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
本発明のカチオン重合インキはカチオン重合性物質(A)及び光カチオン開始剤(B)の各成分を溶解、混合、混練等をすることにより調製することができる。本発明の樹脂組成物中、各成分の使用割合は以下のようにすることができる。(A)成分100重量部に対して(B)成分は、0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0033】
[強密着インキ層(2−1)]
本発明で使用可能な強密着インキ層は、上記熱可塑性樹脂フィルムへの密着性が良好なインキであれば公知のインキが使用可能である。
インキ例としては、公知文献(印刷インキ入門 印刷学会出版部刊 P.86〜148)にも詳しく説明されているが、凸版インキ、平版インキ、グラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ等が挙げられるが、上記弱密着インキ層を構成する光カチオン重合インキと同一工程で印刷できることから、光ラジカル重合インキ、特に中でも、光ラジカル重合凸版インキ、光ラジカル重合平版インキが好ましい。
上記光ラジカル重合凸版もしくは平版インキは、光ラジカル重合可能なプレポリマー(a)、ラジカル重合性モノマー(b)、ラジカル重合開始剤(c)を含有するものである。
光重合可能なプレポリマー(a)の具体例としては、ウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、アクリル系オリゴマー等を挙げることができる。
【0034】
より具体的には、ウレタン系オリゴマーとして、例えば、ダイセル・ユーシービ社製の商品名、EB230、EB244、EB245、EB270、EB284、EB285、EB4830、EB4835、EB4858、EB1290、EB210、EB215、EB4827、EB4849、EB6700、EB204、EB8804、EB8800−20R、EB204、共栄社化学社製の商品名、AH−600、AT−600、UA−306H、荒川化学工業社製の商品名、ビームセット502H、ビームセット504H、ビームセット505A−6、ビームセット550B、ビームセット575、AKCROS社製の商品名、Actilane200、Actilane200TP20、Actilane210TP30、Actilane230HD30、Actilane250HD25、Actilane250TP25、Actilane270、Actilane280、Actilane290、Actilane165、Actilane167、Actilane170、
【0035】
サートマー社製の商品名、CN929、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN983E80、CN964、CN965、CN980、CN981、東亞合成社製の商品名、アロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−1600、日本化薬社製の商品名、カヤラッドUX−2201、カヤラッドUX−2301、カヤラッドUX−3204、カヤラッドUX−3301、カヤラッドUX−4101、カヤラッドUX−7101等を挙げることができる。
【0036】
ポリエーテル系オリゴマーの具体例として、例えば、BASF社製の商品名、PO84F、LR−8894等を挙げることができる。
エポキシ系オリゴマーの具体例として、例えば、AKCROS社製の商品名、Actilane300、Actilane310、Actilane320、Actilane320DA25、Actilane340、Actilane330、ダイセル・ユーシービ社製の商品名、EB600、EB3500、EB3600、EB3700−20H、EB3702、サートマー社のCN104、CN111、CN115、CN151等を挙げることができる。
【0037】
ポリエステル系オリゴマーの具体例として、例えば、荒川化学工業社製の商品名、ビームセット700、ビームセット710、ビームセット720、ビームセット730、ビームセット750、ダイセル・ユーシービ社製の商品名、EB770、EB81、EB830、東亞合成社製の商品名、アロニックスM−6100、アロニックスM−6200、アロニックスM−7100等を挙げることができる。
アクリル系オリゴマーの具体例として、例えば、ダイセル・ユーシービ社製の商品名、EB1701、EB767等が挙げられる。
本発明で使用可能な光ラジカル重合成モノマー(b)としては、脂肪族系(メタ)アクリレート、脂環式系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタアクリレートの少なくともいずれかを含有するものを意味する。
【0038】
より具体的な他の光ラジカル重合性モノマー(b)としては、例えば、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシル−カルビトールアクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエートアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ビニルカプロラクタム、
【0039】
アクリロイルモルホリン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−1アクリロイロキシプロピルメタクリレート、9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールポリプロピレンオキサイド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート等を挙げることができる。
【0040】
光ラジカル重合開始剤(c)としては、アリールケトン系光重合開始剤、例えば、ベンジルジメチルケタール類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、オキシムケトン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等、含イオウ系光重合開始剤、例えば、スルフィド類、チオキサントン類等、その他、紫外線硬化型樹脂組成物で用いられる各種の光重合開始剤を挙げることができる。本発明において、光重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して含むことができる。
また、光重合開始剤(c)にさらに、アミン類等の光増感剤と組み合わせて含むことも
できる。具体的には、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、メチルジエタノールアミン等の光増感剤を挙げることができる。
【0041】
より具体的な光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトンフェノン、2,4−ジエチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ビス−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、
【0042】
4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、
【0043】
4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アシルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0044】
また、本発明に係る光ラジカル重合インキには、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱重合防止剤等の安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料分散剤、帯電防止剤、防曇剤等の界面活性剤類、ワックス、スリップ剤、近赤外線吸収剤等の各種添加剤を、適宜配合しても良い。更に、着色顔料や体質顔料等の微粒子を分散させても良い。
顔料の具体例としては、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、紫顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料等が挙げられる。
【0045】
〈透明保護フィルム(3)〉
本発明では、インキ層の上に、接着剤層(3−1)と透明フィルム層(3−2)とからなる透明保護フィルム(3)を重ねることで、使用中においてはインキ層を保護し、使用後には該フィルムの剥離により弱インキ層のみ剥離することにより使用不可とすることができ、それにより再利用防止を図るものである。
[接着剤層(3−1)]
本発明での接着剤層(3−1)は、市販の感熱接着剤もしくは粘着剤が使用可能である。
感熱接着剤としては、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリエチレン−アクリル酸系エチル共重合体、ポリエチレン−メタクリル酸等90〜120℃の融点を持つ熱可塑性樹脂が使用される。
粘着剤としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等が使用でき、これらの合成高分子粘着剤は、有機溶媒溶液や、ディスパージョンやエマルジョンといった水に分散された形態で使用可能である。
感熱接着剤もしくは粘着剤層の厚みは、保護フィルムの使用目的に応じて種々選択が可能であるが、通常2〜30μm、好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0046】
[透明フィルム層(3−2)]
透明フィルム層としては、高透明性でかつ柔軟性のフィルムであれば公知のフィルムが使用可能である。
フィルムの具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、エチレングリコールとテレフタル酸を主原料とするポリエチレンテレフタレートや3元系以上の共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂フィルムが使用可能である。
好ましくは、ポリエチレンやポリプロピレン系樹脂のポリオレフィン系樹脂、さらには、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂のフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。各実施例、比較例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、各実施例、比較例にて使用した材料の詳細を表1に記載した。同表中の「MFR」はメルトフローレートを意味する。また、各実施例、比較例の熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造にあたって使用したフィルム基材層(1−1)の材料の種類と配合量(重量%)、延伸条件、各層の坪量、並びに易印刷性層(1−2)の材料、その配合率、塗工量、イオン濃度、AS性を表2に記載した。
【0048】
(製造例1)
表2に記載の組成を有する配合物を250℃に設定した押出機で溶融混練して、ダイよりシート状に押出形成した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを表2に記載の延伸温度に加熱した後、ロール間延伸にて縦方向に延伸し、縦1軸延伸フィルムを基層(ア)として得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記縦1軸延伸フィルムの表裏両面に表層(イ)として積層して、これを表面平滑な金属ロールとゴムロール(バックアップロール)とからなるニップロールの間に通し、各層を圧着して積層フィルム(表層(イ)/基層(ア)/表層(イ))を得た。この例では、表面側の表層(イ)がフィルム基材層(1−1)に相当する。
【0049】
この積層フィルムを表2に記載の延伸温度に加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に9倍に延伸し、更に延伸温度(2)より20℃高い温度でアニーリング処理(熱処理)を行い、各層が1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸されているフィルム基材層(1−1)を得た。
さらにこのフィルム基材層(1−1)の両面に40W・min/mの強度でコロナ放電処理を施し、熱可塑性樹脂フィルム(1)の基材とした
コロナ放電処理を行った後に、表2に示す塗工剤液をグラビア塗工方式にて表裏塗工し、乾燥させて易印刷性層(1−2)を設けて熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
【0050】
(製造例2)
製造例1の積層フィルムを得る際に、塗工剤液の塗工量を表2に示す量に変えた以外は、製造例1と同様の製造方法で熱可塑性樹脂フィルム(1)とした。
(製造例3)
製造例1の積層フィルムを得る際に、表2に示す表層組成に変更した以外は、製造例1と同様の製造方法で熱可塑性樹脂フィルム(1)とした。
(製造例4〜8)
製造例1の積層フィルムを得る際に、表2に示す塗工剤液に変更した以外は、製造例1と同様の製造方法で熱可塑性樹脂フィルム(1)とした。
【0051】
[実施例1]
上記製造例1で得た熱可塑性樹脂フィルム(1)を名刺サイズ(55mm×91mm)に切断し、表3に示す組成の強密着インキを表4に示す使用インキとしてシルクスクリーンメッシュ(目開き:420mesh)で塗工量8g/mになるように部分印刷した後、UV照射器にて強度200mJ/cmの紫外線を照射した。さらに表3に示す組成の弱密着インキを表4に示す使用インキとして別のシルクスクリーンメッシュ(目開き:420mesh)で同じく塗工量8g/mになるように塗工した後、UV照射器にて強度200mJ/cmの紫外線を照射した。さらに保護フィルム(3)として、日東アクリル系粘着剤付きポリエステルテープ(日東電工社製、商品名;NO.31B、フィルム厚み50μm)を印刷後の熱可塑性樹脂フィルムに貼合し、多層印刷フィルム積層体とした。使用したインキの組成を表3に、使用したインキの種類、再利用防止機能を表4に示す。
【0052】
[実施例2〜3]
上記実施例1で得た多層印刷フィルム積層体において熱可塑性樹脂フィルム(1)を表3に示す熱可塑性樹脂フィルム(1)に変更した以外は実施例1と同様な方法で多層印刷フィルム積層体を得た。使用したインキの組成を表3に、使用したインキの種類、再利用防止機能を表4に示す。
【0053】
[実施例4]
上記製造例1で得た熱可塑性樹脂フィルム(1)を名刺サイズ(55mm×91mm)に切断し、表3に示す組成の強密着インキを表4に示す使用インキとしてシルクスクリーンメッシュ(目開き:420mesh)で塗工量8g/mになるように部分印刷した後、UV照射器にて強度200mJ/cmの紫外線を照射した。さらに表4に示す弱密着インキを別のシルクスクリーンメッシュ(目開き:420mesh)で同じく塗工量8g/mになるように塗工した後、UV照射器にて強度200mJ/cmの紫外線を照射した。さらに保護フィルム(3)として、熱ラミネートPETフィルム(日本オフィスラミネート社製商品名、基材厚み80μm)をロール式ラミネーター(日本オフィスラミネート社製RSL−380S)にて熱貼合し多層印刷フィルム積層体とした。使用したインキの組成を表3に、使用したインキの種類、再利用防止機能を表4に示す。
【0054】
[比較例1〜4]
上記実施例1で得た多層印刷フィルム積層体において熱可塑性樹脂フィルム(1)を表4に示す熱可塑性樹脂フィルム(1)に変更した以外は実施例1と同様な方法で多層印刷フィルム積層体を得た。使用したインキの組成を表3に、使用したインキの種類、再利用防止機能を表4に示す。
【0055】
(表面イオン濃度)
本サンプル0.1mを箱型に折込み、超純水を20ml加え、80℃、1時間イオン抽出を行う。本サンプルをイオンクロマトグラフ法にて定量化した。
陽イオンの抽出には、ダイオネクス社製ICS−1500を、陰イオンの抽出には、ダイオネクス社製ICS−2000を使用した。
測定対象とした陰イオンは、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、PO3−、陽イオンは、NHとした。
(表面固有抵抗)
JIS−K−6911:1995に準拠し、剥離性フィルムを温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2時間以上状態調整した後、該フィルムの易印刷性層(A)表面の表面固有抵抗値(Ω/m)を絶縁計(型番:DSM−8103、東亜電波工業(株)社製)を用いて測定した。
【0056】
(不透明度)
JIS−P−8138に準拠し、測定試料背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値で示す。一般に不透明度が低いほど光の裏抜けが多くなり、印刷物の鮮明性に欠ける。
(再利用防止性)
多層印刷フィルム積層体から、保護フィルムを手で剥がした時のインキ剥離度合いを残留面積より下記評価基準により判定を行う。
残留面積(%)
判定 強密着インキ 弱密着インキ
〇 90〜100 0〜10
△ 70〜89 11〜20
× 0〜69 21〜100
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の再利用防止フィルム積層体は、偽造防止用のラベルやシールもしくはシート等として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の再利用防止フィルム積層体の概略断面図であり、(a)は透明保護フィルム剥離前の断面図であり、(b)は隔離後の断面図である。
【図2】本発明の再利用防止フィルム積層体を用いたラベルの鳥瞰図である。
【符号の説明】
【0063】
1 :熱可塑性樹脂フィルム
1−1 :フィルム基材層
1−2 :易印刷性層
2 :印刷層
2−1 :強密着インキ層
2−2 :弱密着インキ層
3 :透明保護フィルム
3−1 :接着剤層
3−2 :透明フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面に、印刷層(2)として強密着インキ層(2−1)および弱密着インキ層(2−2)をそれぞれ有し、さらに印刷層の上に、透明保護フィルム(3)を有する多層フィルム積層体であって、熱可塑性樹脂フィルム(1)が、フィルム基材層(1−1)および表面イオン濃度が2.0〜10.0mg/mの範囲にある易印刷性層(1−2)を有し、加えて弱密着インキ層(2−2)がカチオンインキで構成されており、さらには透明保護フィルム(3)を多層フィルム積層体より剥離した場合に弱密着インキ層(2−2)のみが基材から剥離し判読不能となることを特徴とする再利用防止フィルム積層体。
【請求項2】
易印刷性層(2−2)がカチオン系、両性系、及びアニオン系から選ばれた1種以上の高分子系帯電防止剤(a)を含有することを特徴とする請求項1に記載の再利用防止積層体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面固有抵抗が、1×10〜1×1013Ωであることを特徴とする請求項1または2に記載の再利用防止フィルム積層体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルム(1)が、ポリオレフィン系樹脂フィルムまたは熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムから選ばれたフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再利用防止フィルム積層体。
【請求項5】
強密着インキ層(2−1)が、紫外線で硬化するラジカル重合インキで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の再利用防止フィルム積層体。
【請求項6】
透明保護フィルム(3)が、接着剤層(3−1)および透明フィルム層(3−2)からなることを特徴とした請求項1〜5のいずれかに記載の再利用防止フィルム積層体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルム(1)が不透明度80〜100(%)のフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の再利用防止フィルム積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120174(P2010−120174A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293295(P2008−293295)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】