説明

再剥離性粘着シート及びそれを用いた被着体加工方法

【課題】加熱処理前は被着体との十分な接着性を発揮するとともに、加熱処理後は余分な力を加えることなく被着体から容易に剥離可能であり、かつ、より効率的に被着体を加工することのできる再剥離製粘着シートを提供する。
【解決手段】熱膨張性微小球、粘着剤、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなり、基材を有さないとともに、少なくとも一方の表面が被着体との接触面である再剥離性粘着シートである。この再剥離性粘着シートは、60℃におけるポリイミドフィルムに対する180°剥離力が、1.8〜4.0N/25mmであり、かつ、接触面の面積(S)に対する、熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における接触面の面積(S)の比の値が、(S)/(S)=2.0〜4.0であり、厚みが35〜55μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離性粘着シート、及びこの再剥離性粘着シートを用いた被着体加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱膨張性微小球を含有する粘着層を基材の片面又は両面に配設した粘着部材が提案され、用いられている(例えば、特許文献1〜5参照)。かかる粘着部材は、被着体に貼り付け、使用目的を終え不要となった後には簡単に剥離することのできる再剥離性粘着シートとして、電気・電子業界において広く用いられている。具体的には、フレキシブルプリント基板(FPC)製造工程における裏打用シートや、半導体ウェハの切断工程、積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート、メッキ用マスキングシート等として好適に用いられている。
【0003】
これらの粘着部材は、所定の温度で加熱処理することにより熱膨張性微小球が膨張して被着体との接触面積が減少するため、不要となった後には被着体から容易に剥離できるものとされている。しかしながら、実際の使用に際しては、必ずしも良好な剥離性が発揮されない場合もあり、ある程度の力を加えなくては被着体から剥離できない場合があった。また、無理に剥離させようとすると、被着体に糊残りが生じたり、被着体を損傷してしまう等の不具合が発生する場合もあった。このため、被着体からの剥離性の更なる改良が求められている。
【0004】
一方、近年の電気・電子業界における薄膜化及び高精度化された製品の開発スピードには目覚しいものがある。但し、世界的な視点からみると、環境保護対策や使用エネルギーの削減等のニーズも高まりつつある。かかるニーズに対応するため、再剥離性粘着シートについても高密着性、高信頼性等の機能をより高めることの他、環境・資源の保護、コスト削減、生産時間短縮等に貢献する必要性がある。
【0005】
例えば、FPC製造工程においても基板の薄膜化、高精度化とともに、コスト削減、生産時間短縮等を目的として被着体の両面同時加工が可能である裏打用シート開発の要望が高まっている。関連する従来技術として、熱膨張粒子を含有する接着層を基材の両面に設けた加熱剥離型の接着シートを使用し、2枚の銅張積層板を同時に加工処理する方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、この接着シートを、いわゆるロール−to−ロールの製造工程等に用いようとすると満足する追従性が発揮されず、工程中で浮きを生ずるという問題があった。このため、被着体の加工効率の更なる改良を図る必要性がある。
【0006】
一方、粘着剤と熱膨張性微小球とを含有する粘着体層の両面に形成した樹脂層に対して、同時に所定の加工を施すことによりFPCを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。この方法は、積層体の中心部に基材のない、いわゆる基材レスの状態で加工を行う方法である。従って、ロール−to−ロールの製造工程に、より柔軟に対応することができ、加工効率の向上を図ることが可能であった。しかしながら、メッキ処理工程における被着体との密着力、及び被着体からの剥離性については、未だ十分な改良がなされているとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−252681号公報
【特許文献2】特開平11−302614号公報
【特許文献3】特開2002−69422号公報
【特許文献4】特開2003−160765号公報
【特許文献5】特開2004−18604号公報
【特許文献6】特開2001−57472号公報
【特許文献7】特開2004−319659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、加熱処理前は、被着体との十分な接着性を発揮するとともに、加熱処理後は、余分な力を加えることなく被着体から容易に剥離可能であり、かつ、より効率的に被着体を加工することのできる再剥離性粘着シートを提供することにある。また、被着体加工の高精度化を図ることが可能であるとともに、加工済み被着体に損傷等を与えることなく、被着体加工効率の向上を図ることができる被着体加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、(1)加熱処理されて熱膨張性微小球が膨張した後の再剥離性粘着シートの接触面の面積は、加熱前に比べて増大すること、及び(2)接触面の面積が増大することにより接着力が低下し、被着体から剥離させ易くなること、を見出した。そして、加熱処理による接触面の面積の増大割合とともに、その厚みを所定の範囲内に規定することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下に示す再剥離性粘着シート、及び被着体加工方法が提供される。
【0011】
[1]熱膨張性微小球、粘着剤、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなり、基材を有さないとともに、少なくとも一方の表面が被着体との接触面である再剥離性粘着シートにおいて、前記粘着剤組成物が、前記粘着剤100質量部に対して、前記熱膨張性微小球を20〜75質量部、前記粘着付与樹脂を5〜100質量部含み、前記粘着剤が、前記架橋剤と反応し得る活性基をその分子構造中に有し、前記粘着付与樹脂の軟化点が150〜200℃であり、60℃におけるポリイミドフィルムに対する180°剥離力が、1.8〜4.0N/25mmであり、かつ、前記接触面の面積(S)に対する、前記熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における前記接触面の面積(S)の比の値が、(S)/(S)=2.0〜4.0であり、厚みが35〜55μmである再剥離性粘着シート。
【0012】
[2]前記粘着剤組成物が、前記粘着剤100質量部に対して、前記熱膨張性微小球を25〜70質量部含むものである前記[1]に記載の再剥離性粘着シート。
【0013】
[3]前記熱膨張性微小球の平均粒径が、5〜40μmであり、前記熱膨張性微小球の熱膨張温度が、80〜150℃である前記[1]又は[2]に記載の再剥離性粘着シート。
【0014】
[4]前記粘着剤が、架橋剤と反応し得る活性基をその分子構造中に有するアクリル系粘着剤である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【0015】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の再剥離性粘着シートの前記接着面に、加工対象となる被着体を貼り付けて積層体を得、得られた前記積層体の前記被着体について所定の加工を行って加工済み積層体を得、得られた前記加工済み積層体を加熱することにより、前記加工済み積層体から前記再剥離性粘着シートを剥離して、前記所定の加工がなされた加工済み被着体を得ることを含む被着体加工方法。
【0016】
[6]前記被着体が、その表面上に導電体層を有するフィルム又はシートであるとともに、前記所定の加工が、少なくとも前記導電体層をパターン化する工程を含む加工であり、かつ、前記加工済み被着体が、フレキシブルプリント基板(FPC)である前記[5]に記載の被着体加工方法。
【0017】
[7]前記被着体が、合成樹脂製の薄膜体、又は前記薄膜体と金属製薄膜体との積層体であるとともに、前記所定の加工が、導電体層形成加工である前記[5]に記載の被着体加工方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の再剥離性粘着シートは、加熱処理前は被着体との十分な接着性を発揮するとともに、加熱処理後は余分な力を加えることなく被着体から容易に剥離可能であり、かつ、より効率的に被着体を加工することができるという効果を奏するものである。
【0019】
また、本発明の被着体加工方法によれば、加熱処理前は被着体との十分な接着性を発揮するとともに、加熱処理後は余分な力を加えることなく被着体から容易に剥離可能な再剥離性粘着シートを用いるため、被着体加工の高精度化を図ることが可能である。また、加工済み被着体に損傷等を与えることなく、被着体加工効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
本発明の再剥離性粘着シートの一実施形態は、熱膨張性微小球及び粘着剤を含む粘着剤組成物からなる、基材を有さないとともに、少なくとも一方の表面が被着体との接触面であるものであり、粘着剤組成物が、前記粘着剤100質量部に対して、前記熱膨張性微小球を20〜75質量部含むとともに、粘着付与樹脂を更に含み、その厚みが35〜55μmであるとともに、60℃におけるポリイミドフィルムに対する180°剥離力が、1.5〜4.5N/25mmであり、かつ、接触面の面積(S)に対する、熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における接触面の面積(S)の比の値が、(S)/(S)=2.0〜4.0のものである。以下、その詳細について説明する。
【0022】
本実施形態の再剥離性粘着シートを構成する粘着剤組成物は、熱膨張性微小球、及び粘着剤を含んでなるものである。この粘着剤組成物に含まれる熱膨張性微小球は、弾性を有する殻内に、所定の温度まで加熱することにより容易にガス化して膨張する物質(気化物質)を内包させたものである。殻に内包される気化物質の好適例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の物質、又はこれらの物質の混合物を挙げることができる。なお、気化物質は、熱膨張性微小球を膨張させようとする所望の温度に応じて適宜選択することができる。
【0023】
上述の気化物質を内包する殻としては、例えば、熱溶融性物質、熱膨張により破壊する物質で形成されたものを挙げることができる。殻を形成する物質としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等を挙げることができる。なお、熱膨張性微小球の具体例としては、マイクロスフェア(商品名(松本油脂製薬社製))等の市販品を挙げることができる。また、熱膨張性微小球は、これに内包される気化物質の体積膨張率が5倍以上、好ましくは7倍以上、更に好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有するものであることが、加熱処理により再剥離性粘着シートの粘着力を効率よく低下させることができるために好ましい。
【0024】
更に、熱膨張性微小球の大きさは、平均粒径で5〜40μmの範囲から適宜選択することが好ましい。また、熱膨張性微小球の熱膨張温度は、使用する温度により最適な熱膨張温度のものを適宜選択すればよく、特に制限はないが、被着体加工温度よりも25℃以上高いことが好ましい。一般的には、熱膨張温度が80〜185℃である熱膨張微性微小球が好適に使用される。なお、本明細書中にいう「熱膨張温度」とは、TMA測定における熱膨張開始温度のことをいう。
【0025】
粘着剤組成物に含まれる粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤のいずれでもよい。但し、熱膨張性微小球の膨張前における温度条件下での保持力、強粘着力を発揮する点でアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤には、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの単量体成分と、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との共重合体が包含される。即ち、アクリル系粘着剤は、その分子構造中に架橋剤と反応し得る活性基を有するものであることが好ましい。この活性基としては、例えばカルボキシル基、水酸基、アミド基等を挙げることができる。
【0026】
アクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステルを構成するアルキルエステルとしては、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等を挙げることができる。
【0027】
架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体としては、その官能基がカルボキシル基であるアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等の他、官能基がヒドロキシル基であるアクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシオクチル、メタクリル酸ヒドロキシオクチル、アクリル酸ヒドロキシデシル、メタクリル酸ヒドロキシデシル、アクリル酸ヒドロキシラウリル、メタクリル酸ヒドロキシラウリル等、更には、官能基がアミド基であるアクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、官能基が反応性アミノ基であるメタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ターシャリーブチルアミノエチル等を挙げることができる。これらの単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
更に、所望により上述してきた単量体以外の単量体を併用してもよい。具体的にはスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びテトラフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0029】
粘着剤は、前述のアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの単量体と、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体とをラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法はよく知られており、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、及び光重合法等を挙げることができる。また、粘着剤は、架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤は粘着剤に合せて適宜選択すればよく、特に制約はない。具体的には、イソシアネート系架橋剤、金属キレート架橋剤、エポキシ系架橋剤等が用いられる。
【0030】
また、粘着剤組成物には、粘着付与樹脂が含まれている。この粘着付与樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系、若しくはテルペンフェノール系のテルペン系樹脂や、ガム系、ウッド系、若しくはトール油系等の天然系ロジン、又はこれらに水素化、付近化、重合、マレイン化、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂、石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、その軟化点が150〜200℃であるものが好ましい。これらの粘着付与樹脂は軟化点が高いものであるため、粘着層のタックを常温においては消失させ、加熱下における被着体との貼り合わせ、及び作業環境では被着体との密着性に優れる。しかも、加熱処理して熱膨張性微小球を膨張させることにより、被着体から容易に剥離可能となるため好ましい。なお、粘着剤組成物は、粘着剤100質量部に対して、粘着付与樹脂を5〜100質量部含むものであることが好ましく、10〜80質量部含むものであることが更に好ましく、30〜70質量部含むものであることが特に好ましい。
【0031】
なお、粘着剤組成物には、上記の粘着付与樹脂以外に、ガラス転移点のコントロール剤としての各種の樹脂を添加することが、被着体との密着性をコントロールすることができるために好ましい。添加する樹脂としては、ゴム、ワックス、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、及びエポキシ樹脂等を好適例として挙げることができる。
【0032】
本実施形態の再剥離性粘着シートは、その厚みが35〜55μm、好ましくは35〜50μm、更に好ましくは35〜48μmである。厚みが35μm未満であると、被着体との密着性が低下することになる。また、実質的に入手又は製造可能な熱膨張性微小球の平均粒径を考慮すると、35μm未満の厚みとすることは困難な場合がある。一方、厚みが55μm超であると、熱膨張微小球を膨張させるために必要とされるエネルギーが再剥離性粘着シートの全体にいきわたらない場合がある。このため、加熱処理後であっても、余分な力を加えなければ被着体から剥離させることが困難となる。
【0033】
本実施形態の再剥離性粘着シートは、60℃におけるポリイミドフィルムに対する180°剥離力が1.5〜4.5N/25mm、好ましくは1.5〜4.0N/25mm、更に好ましくは1.8〜4.0N/25mmである。その剥離力が1.5N/25mm未満であると、メッキ液処理工程において薬液のしみこみが生じることになる。一方、4.5N/25mm超であると、加熱処理後であっても、被着体から剥離させることが困難となる。
【0034】
被着体に貼り付けられた本実施形態の再剥離性粘着シートは、所定の温度以上に加熱処理して熱膨張性微小球を膨張させることにより、被着体から剥離させることができる。ここで、本実施形態の再剥離性粘着シートの、接触面の面積(S)に対する、熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における接触面の面積(S)の比の値は、(S)/(S)=2.0〜4.0、好ましくは(S)/(S)=2.0〜3.5、更に好ましくは(S)/(S)=2.0〜3.0である。(S)/(S)の値が2.0未満であると、加熱処理後に余分な力を加えなければ、被着体から剥離させることが困難となる。一方、(S)/(S)の値が4.0超であっても、加熱処理後に余分な力を加えなければ、被着体から剥離させることが困難となる。なお、加熱時間においては特に制限はないが、作業性、被着体への汚染・不具合等を考慮すると、3〜20分程度が適当である。
【0035】
次に、本実施形態の再剥離性粘着シートを作製する方法について概説する。先ず、熱膨張性微小球及び粘着剤を含む粘着剤組成物を適当な溶剤に溶解又は分散させ、固形分濃度が20〜60質量%程度の塗工液を調製する。ここで、粘着剤組成物は、粘着剤100質量部に対して、熱膨張性微小球を20〜75質量部含むものであることが好ましく、22〜70質量部含むものであることが更に好ましく、25〜70質量部含むものであることが特に好ましい。熱膨張性微小球の含有割合が、粘着剤100質量部に対して20質量部未満であると、加熱処理後の接着性が低下し難くなる傾向にある。一方、熱膨張性微小球の含有割合が、粘着剤100質量部に対して75質量部超であると、加熱処理前の被着体との密着性が低下する傾向にある。
【0036】
次に、調製した塗工液を、適当な基材上に直接又は適当な中間層を介して常法に従って塗工することにより、所定厚みの塗工層を形成する。基材の材質は特に限定されるものではない。基材の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリアリレート等の各種樹脂、ポリエチレンラミネート紙、ポリブチレンラミネート紙、クリーコート紙、樹脂コート紙、又はグラシン紙等の各種紙材等を挙げることができる。なお、塗工液が塗工される面に、適当な離型処理が施された基材を用いることが好ましい。離型処理の例としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の離型剤の塗布等を挙げることができる。
【0037】
塗工層の厚みは、乾燥による収縮量を考慮し、乾燥後の厚みが35〜55μmとなるように適宜調整する。形成された塗工層を乾燥することにより、基材上に担持された、本実施形態の再剥離性粘着シートを作製することができる。乾燥後の厚みが35〜55μmとなるように塗工層の厚みを調整するとともに、塗工液中に含まれる熱膨張性微小球の量を、アクリル系樹脂100質量部に対して20〜75質量部とすることにより、接触面の面積(S)に対する、熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における接触面の面積(S)の比の値が、(S)/(S)=2.0〜4.0である、本実施形態の再剥離性粘着シートを製造することができる。なお、得られた再剥離性粘着シートの保存性や取り扱い性等を考慮し、その上に適当な基材を配設することによって、再剥離性粘着シートを二つの基材間に挟持してもよい。このとき用いられる基材としては、塗工液が塗工される前述の基材と同様のものを具体例として挙げることができる。
【0038】
得られた再剥離性粘着シートに残存する揮発分の量(以下、「残存揮発分量」ともいう)によっては、熱膨張性微小球が膨張する温度以上に加熱した後における、被着体からの剥離性、糊残り性等に少なからず影響を及ぼす場合がある。従って、再剥離性粘着シート中の残存揮発分量は、4質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。なお、所望とする残存揮発分量とするためには、粘着層形成塗工液を調製するための溶剤の量や、塗工後の乾燥時間等を調整すればよい。粘着層形成塗工液には、従来慣用されている各種添加剤、例えば界面活性剤、潤滑剤、安定剤、粘度調整剤、染料等を添加することができる。
【0039】
本実施形態の再剥離性粘着シートの一方の接着面を被着体に貼り付けた後に基材を剥離させ、他方の接着面に別の被着体を貼り付けていわゆる基材レスの状態とすれば、例えばFPC等をはじめとする基板の製造工程において、基板(被着体)の薄膜化に好適に対応することができる。更に、再剥離性粘着シートの両面での同時加工が可能となるため、加工効率の向上を図ることができる。また、基材を剥離させた後は、高温条件下で作業した場合であっても、基材の寸法変化の影響がなくなる。従って、本実施形態の再剥離性粘着シートは、高精度な配線基板等の製造工程用の裏打用シートとして好適である。
【0040】
本実施形態の再剥離性粘着シートは、一方の接着面に加工対象となる被着体、他方の接着面に基材をそれぞれ貼り付けて積層体(積層体A)を構成すれば、この被着体の加工に使用することができる。また、両接着面に被着体を貼り合わせた積層体(積層体B)や、一方の接着面に被着体、他方の接着面に支持体又は適当な治具等をそれぞれ貼り付けた積層体(積層体C)を構成すれば、これらの被着体の加工に使用することができる。
【0041】
次に、本発明の被着体加工方法について説明する。本発明の被着体加工方法の一実施形態は、上述してきたいずれかの再剥離性粘着シートの接着面に、加工対象となる被着体を貼り付けて積層体を得、得られた積層体の被着体について所定の加工を行って加工済み積層体を得、得られた加工済み積層体を加熱することにより、加工済み積層体から再剥離性粘着シートを剥離して、所定の加工がなされた加工済み被着体を得ることを含む被着体加工方法である。以下、その詳細について説明する。
【0042】
本実施形態の被着体加工方法では、先ず、前述の再剥離性粘着シートの接着面に、加工対象となる被着体を貼り付けて積層体を得る。例えば、再剥離性粘着シートの両面(接着面)にそれぞれ被着体を貼り付けることにより、積層体とすることができる。加工対象となる被着体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、液晶ポリマー等の耐熱性を有する合成樹脂製のフィルムやシート、ガラス、金属、又はセラミックからなるシート等を挙げることができる。また、これらの材料からなるシート等の複数を積層した複合体も、被着体として使用することができる。
【0043】
本実施形態の被着体加工方法では、これまで述べてきたいずれかの再剥離性粘着シートを、加工対象となる被着体を裏打ちして保持するため裏打用シートとして使用する。このため、例えば被着体の形状が薄膜状であっても、裏打ちして適度な定形性を維持しつつ高い精度で加工可能である。
【0044】
また、加工完了後には、所定の加工を行って得られた加工済み積層体を、例えば熱膨張性微小球の膨張温度以上に加熱することにより、加工済み積層体から再剥離性粘着シートを剥離して加工済み被着体を得ることができる。ここで、使用する本発明の実施形態である再剥離性粘着シートは、加熱処理後の剥離性が極めて良好なものである。従って、例えば、FPCの製造、半導体ウェハの切断、積層セラミックコンデンサーの小片化、メッキ、スパッタリング等による被着体表面上への導電層の形成等を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態の被着体加工方法においては、被着体が、銅張り積層板(CCL)をはじめとする、その表面上に導電体層が形成されたフィルム又はシートであり、かつ、再剥離性粘着シートに貼り付けられた状態の被着体に対して行う所定の加工が、少なくとも導電体層をパターン化する工程を含む加工であることが好ましい。即ち、本実施形態の被着体加工方法では、これまで述べてきたいずれかの再剥離性粘着シートを用いるため、被着体上に高精度なパターン配線が形成されたFPCを効率よく製造することができる。
【0046】
次に、被着体表面の導電体層をパターン化する工程を含む、FPCを製造するための加工の一例について概説する。先ず、FPCを製造するための加工を実施するに先立ち、裏打用シートとして本発明の実施形態である再剥離性粘着シートを用い、前述の積層体A、B、又はCを構成する。加工対象となる基板(被着体)は、例えばCCL等であり、その樹脂面を、再剥離性粘着シートに貼り付けることにより、積層体A、B、又はCを構成することができる。
【0047】
その後、被着体の表面上に配設された導電体層をパターン化する。パターン化は、従来公知の片面構造のFPCを製造するための各種の方法により実施すればよく、具体例としては以下に示す写真法、又は印刷法等を挙げることができる。パターン化完了後は、熱膨張性微小球の膨張温度以上の温度に加熱することにより再剥離性粘着シートを剥離させれば、加工が施された被着体に過剰の負荷をかけることなく加工済み被着体であるFPCを得ることができる。
【0048】
[写真法]:先ず、導電体層の表面全体に、液状の感光剤を塗布・乾燥する、又は感光性のドライフィルムを貼り付ける。次いで、導体パターン部分のみを露光させるとともに現像して、露光した箇所に耐エッチング性皮膜を残す。次に、エッチング液により、露出した導体の不要部分(導体パターン部分以外の部分)を溶解・除去する。その後、エッチングレジスト層を剥離・除去し、導体パターン部分を形成・露出させ、露出した導体パターン部分の表面にカバーレイフィルムを貼り合わせるとともに、加熱プレスしてカバーレイフィルムを硬化させることにより、導電体層をパターン化する。
【0049】
[印刷法]:先ず、導電体層の表面に、耐エッチング性インキをスクリーン印刷により印刷(塗布)・乾燥する。次に、エッチング液により、露出した導体の不要部分(導体パターン部分以外の部分)を溶解・除去する。その後、エッチングレジスト層を剥離・除去し、導体パターン部分を形成・露出させ、露出した導体パターン部分の表面にカバーレイフィルムを貼り合わせるとともに、加熱プレスしてカバーレイフィルムを硬化させることにより、導電体層をパターン化する。
【0050】
なお、再剥離性粘着シートの両面(接着面)に加工対象となる被着体を貼り合わせた積層体Bを使用すれば、二つの被着体の加工を一度に行うことが可能であり、加工コスト削減の面で有利である。また、この積層体Bは、いわゆる基材レスの構成を有するものであるため、加工時における薄膜化が可能になる。更には、高温作業時に基材の熱収縮を考慮する必要がなくなるために好ましい。
【0051】
また、本実施形態の被着体加工方法においては、再剥離性粘着シートに貼着された状態の被着体に対して行う所定の加工が、切断加工であることが好ましい。即ち、本実施形態の被着体加工方法では、これまで述べてきたいずれかの再剥離性粘着シートを用いるため、切断加工がなされた被着体に過剰の負荷をかけることなく裏打用シートとして用いた再剥離性粘着シートを剥離することができ、切断加工された加工済み被着体を得ることができる。
【0052】
切断加工を実施するに先立ち、裏打用シートとして本発明の実施形態である再剥離性粘着シートを用い、前述の積層体A、B、又はCを構成する。加工対象となる被着体は、例えばセラミックシート、半導体ウェハ等である。次に、積層体A、B、又はCの被着体について、これらを小片化する等の切断加工をする。切断加工完了後は、熱膨張性微小球の膨張温度以上の温度に加熱することにより再剥離性粘着シートを剥離させれば、加工が施された被着体に過剰の負荷をかけることなく加工済み被着体を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態の被着体加工方法においては、被着体が、合成樹脂製の薄膜体、又はこの薄膜体と金属製薄膜体との積層体であるとともに、再剥離性粘着シートに貼着された状態の被着体に対して行う所定の加工が、導電体層形成加工であることが好ましい。即ち、本実施形態の被着体加工方法では、これまで述べてきたいずれかの再剥離性粘着シートを用いるため、導電体層形成加工がなされた被着体に過剰の負荷をかけることなく裏打用シートとして用いた再剥離性粘着シートを剥離することができ、導電体層形成加工された加工済み被着体を得ることができる。なお、導電体層形成加工の具体例としては、メッキ加工、ラミネート加工、スパッタリング加工等を挙げることができる。
【0054】
導電体層形成加工を実施するに先立ち、裏打用シートとして本発明の実施形態である再剥離性粘着シートを用い、前述の積層体A、B、又はCを構成する。加工対象となる被着体である合成樹脂製の薄膜体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、液晶ポリマー等の耐熱性を有する合成樹脂製のフィルム又はシートを挙げることができる。また、合成樹脂製の薄膜体と金属製薄膜体との積層体としては、例えばCCL等を挙げることができる。積層体A、B、又はCの被着体について、定法に従って導電体層形成加工をする。導電体層形成加工完了後は、熱膨張性微小球の膨張温度以上の温度に加熱することにより再剥離性粘着シートを剥離させれば、加工が施された被着体に過剰の負荷をかけることなく加工済み被着体を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))53質量部、アクリル系粘着剤(アクリル酸ブチルとアクリル酸からなる共重合体、Mw=51万、ガラス転移点=−31℃)100質量部、キシレン系粘着付与樹脂(軟化点170℃)49質量部、エポキシ系架橋剤(N,N,N’N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)1.0質量部、トルエン200質量部、及び酢酸エチル100質量部を均一に混合、溶解し、粘着層形成塗工液を調製した。この粘着層形成塗工液を、その一方の表面がシリコーン離型処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に、ベーカー式アプリケーターを使用して所定の厚みとなるように塗工した。100℃で十分乾燥して粘着層を形成した後、この粘着層の表面上に、その一方の表面がシリコーン離型処理された厚さ50μmのPETシートを配設することにより、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(実施例1)を作製した。なお、ここで使用されるPETシートはこれらに限定されるものではない。作製した再剥離性粘着シートのシート厚は45μmであった。再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。なお、シート厚、180°剥離力、及び(S)/(S)値の測定方法、並びに加熱剥離性の評価方法を以下に示す。
【0057】
[シート厚]:マイクロメーターを使用して、2枚のPETシートを含めた厚みを測定し、測定値から2枚のPETシートの厚みを減ずることにより算出した。
【0058】
[(S)/(S)]:所定の大きさに切り出した再剥離性粘着シートを、オーブン(熱風強制循環式循環式乾燥機A−3型(株式会社高杉製作所社製))上で160℃、10分間加熱した。放冷後、再剥離性粘着シートをハンドローラーで十分になめし、面積(S)を測定した。測定した数値(S)と、加熱前面積(S)とから、「(S)/(S)」を算出した。
【0059】
[180°剥離力(60℃、N/25mm)]:再剥離性粘着シート(幅25mm)の接着面(両面)にポリイミドフィルム(厚み:25μm)を貼り付けて積層体を得、貼付30分後に60℃のホットプレート上にてJIS Z 0237に従って180°剥離力を測定した。
【0060】
[加熱剥離性]:再剥離性粘着シートの接着面(両面)にポリイミドフィルム(厚み:25μm)を貼り付けて積層体を得、得られた積層体を、ホットプレート上で160℃、10分間加熱した。放冷後、再剥離性粘着シートの剥離性を以下の基準で評価した。
○:再剥離性粘着シートがポリイミドフィルムから無理なく剥離した。
△:再剥離性粘着シートがポリイミドフィルムから余分な力を加えても部分的にしか剥離しなかった。
×:再剥離性粘着シートがポリイミドフィルムから余分な力を加えても全面的に貼りついたままで剥離しなかった。
【0061】
(実施例2)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))を66質量部使用したこと、及びシート厚が37μmとなるように粘着層形成塗工液を塗工したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(実施例2)を作製した。作製した再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))を40質量部使用したこと、及びシート厚が40μmとなるように粘着層形成塗工液を塗工したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(実施例3)を作製した。作製した再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
シート厚が60μmとなるように粘着層形成塗工液を塗工したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(比較例1)を作製した。作製した再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))を16質量部使用したこと、及びシート厚が31μmとなるように粘着層形成塗工液を塗工したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(比較例2)を作製した。作製した再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))を79質量部使用したこと、及びシート厚が47μmとなるように粘着層形成塗工液を塗工したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2枚のPETシート間に挟持された再剥離性粘着シート(比較例3)を作製した。作製した再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例4)
熱膨張性微小球(商品名「マツモトマイクロスフェアーF−100D」(松本油脂製薬社製))25質量部、アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシルとメタクリル酸からなる共重合体、Mw=27万、ガラス転移点=−31℃)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点125℃)30質量部、エポキシ系架橋剤(N,N,N’N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)0.57質量部、及びトルエン120質量部を均一に混合、溶解し、粘着層形成塗工液を調製した。この粘着層形成塗工液を使用して、実施例1と同様の方法により再剥離性粘着シート(比較例4)を作製した。なお、作製した再剥離性粘着シートのシート厚は50μmであった。再剥離性粘着シートのシート厚(μm)とともに、(S)/(S)値、180°剥離力の測定結果、及び加熱剥離性の評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示すように、実施例1〜3の再剥離性粘着シートは、比較例1〜3の再剥離性粘着シートに比べて、180°剥離力が高く、かつ、優れた加熱剥離性を有するものであることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の再剥離性粘着シートは、フレキシブルプリント基板(FPC)製造工程における裏打用シートや、半導体ウェハの切断工程、及び積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性微小球、粘着剤、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含む粘着剤組成物からなり、基材を有さないとともに、少なくとも一方の表面が被着体との接触面である再剥離性粘着シートにおいて、
前記粘着剤組成物が、前記粘着剤100質量部に対して、前記熱膨張性微小球を20〜75質量部、前記粘着付与樹脂を5〜100質量部含み、
前記粘着剤が、前記架橋剤と反応し得る活性基をその分子構造中に有し、
前記粘着付与樹脂の軟化点が150〜200℃であり、
60℃におけるポリイミドフィルムに対する180°剥離力が、1.8〜4.0N/25mmであり、かつ、
前記接触面の面積(S)に対する、前記熱膨張性微小球の熱膨張温度+20〜60℃の温度で加熱した場合における前記接触面の面積(S)の比の値が、(S)/(S)=2.0〜4.0であり、
厚みが35〜55μmである再剥離性粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、前記粘着剤100質量部に対して、前記熱膨張性微小球を25〜70質量部含むものである請求項1に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項3】
前記熱膨張性微小球の平均粒径が、5〜40μmであり、
前記熱膨張性微小球の熱膨張温度が、80〜150℃である請求項1又は2に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤が、架橋剤と反応し得る活性基をその分子構造中に有するアクリル系粘着剤である請求項1〜3のいずれか一項に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の再剥離性粘着シートの前記接着面に、加工対象となる被着体を貼り付けて積層体を得、
得られた前記積層体の前記被着体について所定の加工を行って加工済み積層体を得、
得られた前記加工済み積層体を加熱することにより、前記加工済み積層体から前記再剥離性粘着シートを剥離して、前記所定の加工がなされた加工済み被着体を得ることを含む被着体加工方法。
【請求項6】
前記被着体が、その表面上に導電体層を有するフィルム又はシートであるとともに、前記所定の加工が、少なくとも前記導電体層をパターン化する工程を含む加工であり、かつ、前記加工済み被着体が、フレキシブルプリント基板(FPC)である請求項5に記載の被着体加工方法。
【請求項7】
前記被着体が、合成樹脂製の薄膜体、又は前記薄膜体と金属製薄膜体との積層体であるとともに、前記所定の加工が、導電体層形成加工である請求項5に記載の被着体加工方法。

【公開番号】特開2013−32534(P2013−32534A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212105(P2012−212105)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2005−80523(P2005−80523)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】