説明

再剥離性粘着シート

【課題】再生処理工程において簡単に剥離、除去でき、且つ、手でも容易に剥離できる粘着ラベル用再剥離性粘着シートを提供すること。
【解決手段】剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、前記粘着剤層が2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系共重合体を含む水分散型粘着性組成物に安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加した水分散型粘着剤を含むことを特徴とする再剥離性粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離性粘着ラベルに関し、ポリエステル製ボトル、たとえば、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(以下、PETボトルと記載することがある)などの表面に貼付される粘着ラベル等に用いられる再剥離性粘着シート、さらに詳しくは、特にPETボトルのようなポリエステル製ボトルをリサイクルする際の粘着ラベル剥離作業を容易に行うことのできる粘着ラベル用再剥離性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
再剥離性粘着シートまたは粘着ラベルは、被着体に貼付したラベルをある期間経過後に被着体から容易に剥がすことのできる機能を有し、例えば値段の貼り替えが多い食品、雑貨等のプライスラベルや商品の物流時の管理ラベルあるいはインデックスラベルとして必要情報を印刷等により記載し、情報伝達等の目的が不要となった時点で剥離される用途などに使用されている(たとえば、特許文献1、2)。
特許文献1および2においては、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体に粘着付与剤とポリグリシジル化合物を配合した粘着剤が使用されている。
【0003】
一方、前記のような粘着ラベルとは異なる分野のものとして、各種飲料ボトル用の粘着ラベルが知られている。
飲料水、清涼飲料水、ジュース、茶、紅茶、日本酒、焼酎などの容器としてポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのようなポリエステル製ボトルが広く利用されている。このポリエステル製ボトルに対し、近年、環境保護の観点からリサイクルの要請が著しく高まっている。
ポリエステル製ボトルには、ほとんどの場合、商品名や内容物などを表示するための粘着ラベルが貼付されており、ポリエステル製ボトルをリサイクルする場合にはこの粘着ラベルを再生処理設備における熱水処理工程において剥離、除去させる必要がある。また、再生処理を効率よく行うため、ポリエステル製ボトルを廃棄する前に各家庭で粘着ラベルを剥離することが望まれている。
このため、前記粘着ラベルはボトルへの貼付性及び貼付操作性に優れるという特性とともに、ボトル内容物が消費されるまではボトルに密着性よく貼付されて容易には剥離せず、内容物消費後には簡易に剥離できるという相反する特性が要求される。
また、空のボトルに粘着ラベルを貼付した後、内容物を充填する場合には、内容物充填前にボトル内を水や弱アルカリ性洗浄液などで洗浄することになる。この洗浄工程では、粘着ラベルは剥がれず、貼付された状態を保持している必要がある。
このような粘着ラベル用の粘着剤として、近年の環境衛生上の観点より、溶剤を用いない水分散型粘着剤への志向が強く、種々検討されている。
例えば、特許文献3にはアルカリ溶解性を有する高分子層からなる粘着剤より形成されてなる粘着シートが瓶類用のラベルとして用いられることが開示されているが、粘着性と再剥離性のバランスの点で改善の必要がある。
また、特許文献4には、アルカリ可溶性アクリル系のエマルジョン型粘着剤と、前記アルカリ可溶性アクリル系のエマルジョン型粘着剤100重量部に対し、架橋剤が1〜3重量部添加されたことを特徴とするラベルが開示されている。しかしながら、手剥がしによるラベル再剥離性や熱水剥離性が不十分であった。
さらに、特許文献5では、2−エチルヘキシルアクリレートを主たるモノマー成分とし、かつ窒素含有ビニル単量体を併用したアクリル系共重合体を粘着樹脂として含む水分散型粘着剤組成物を使用することにより、粘着剤の好適な粘着性と優れた再剥離性を実現することが提案されているが、添加剤の組み合わせをさらに工夫することにより耐水性、粘着性、及び再剥離性のバランスのとれたものが得られることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−183935号公報
【特許文献2】特開平8−225774号公報
【特許文献3】特開平7−82537号公報
【特許文献4】特開2003−098969号公報
【特許文献5】特開2008−239872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、加工された後の粘着ラベルのボトルへの貼付性及び貼付操作性に優れるとともに、ラベルを貼付した後、ボトル内容物が消費されるまではボトルから剥離しにくく、且つボトル内容物消費後には再生処理設備における再生処理工程において簡単に剥離、除去でき、かつ、手でも容易に剥離できる粘着ラベル用再剥離性粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定のアクリル系共重合体を含む水分散型粘着剤組成物に、安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加した水分散型粘着剤を塗布して得られる粘着剤層を、表面基材の裏面に設けた再剥離性粘着シートにより上記課題が解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記
(1)剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、前記粘着剤層が2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系共重合体を含む水分散型粘着性組成物に安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加した水分散型粘着剤を含むことを特徴とする再剥離性粘着シート、
(2)前記2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が、前記アクリル系共重合体を構成する単量体成分中の90質量%以上である上記(1)に記載の再剥離性粘着シート、
(3)前記安息香酸エステル化合物がグリコールジベンゾエート類である上記(1)または(2)に記載の再剥離性粘着シート、
(4)前記オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物がHLB10以上のポリオキシアルキレンアミンおよび/またはトリエタノールアミンである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の再剥離性粘着シート、
(5)前記粘着剤層が粘着付与剤を含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の再剥離性粘着シート、
(6)前記粘着付与剤が水添ロジンエステルおよび/または芳香族変性テルペン樹脂である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の再剥離性粘着シート、
(7)前記粘着剤層が架橋剤を含む上記(1)〜(6)のいずれかに記載の再剥離性粘着シート、
(8)前記架橋剤が、分子中に2個以上のグリシジル基を有するポリグリシジル化合物である上記(7)に記載の再剥離性粘着シート、
(9)ポリエチレンテレフタレート製ボトル貼付用ラベルである上記(1)〜(8)のいずれかに記載の再剥離性粘着シートおよび
(10)前記再剥離性粘着シートに印刷、ラベル加工、印字等を施し、該ラベルをポリエチレンテレフタレートボトルに貼付し、80℃の熱水に浸漬した際にラベルがポリエチレンテレフタレートボトルから30分以内に剥離する上記(1)〜(9)のいずれかに記載の再剥離性粘着シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクリル系共重合体を含む水性エマルションと安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加した水分散型粘着剤から形成された粘着剤層を有する再剥離性粘着シートを用いることにより、特にPETボトルへの貼付性及び貼付操作性に優れ、再生処理設備における熱水処理工程において簡単に剥離、除去でき且つ手でも容易に剥離できる、すなわち、熱水剥離性に優れた再剥離性粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
本発明の再剥離性粘着シートは、たとえば、PETボトルの洗浄工程において、熱水中にPETボトルを浸漬することによって、PETボトルから除去される。本発明の再剥離性粘着シートにおいて、支持体となる表面基材は、特に限定されないが、熱水中でPETボトルと粘着ラベルの比重差を利用して剥離した粘着ラベルを容易に分離させる必要があり、比重1未満の基材、例えば、上質紙、クレープ紙、耐水紙等の紙類や内部に空洞を有する合成紙、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、発泡ポリエチレンフィルムが好適に用いられ、延伸フィルムまたは無延伸フィルムでも好適に用いることができる。
これらの中でも、表面基材として、印刷性、剛性、コスト、ラベリング適性などに優れていることから、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などからなるポリオレフィン系合成樹脂フィルム、これらのポリオレフィン系樹脂より製造される合成紙、などを好適に用いることができる。
表面基材としての合成樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向又は二軸方向に延伸されていてもよい。
表面基材の厚みは、特に制限はないが、通常、10〜200μmの範囲であるが、取り扱い易さの面から、好ましくは25〜150μmである。
表面基材は、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、粘着ラベルとして用いる場合、その表面基材の一方の面には、印刷、印字等を施されていてもよい。
したがって、表面基材には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字等が可能な印字受像層、印刷性向上層等が設けられていてもよい。
また、表面基材のもう一方の面(粘着剤層形成面)には、粘着剤層と密着力(キーイング力)を向上させる目的で、プライマー処理やコロナ処理等が施されてもよい。
【0009】
本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤層を形成させるためには、粘着剤組成物がアクリル系共重合体を含む水性エマルションを主成分とし、好ましくは、さらに粘着付与剤や架橋剤を含有する。前記アクリル系共重合体を構成する単量体成分として2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系共重合体を含む水分散型粘着性組成物に、安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加したものである。安息香酸エステル化合物は、たとえば、ディレードタック型粘着剤組成物用の可塑剤として知られており、オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物は、一般的には帯電防止剤や界面活性剤として知られているものである。
【0010】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が用いられる。中でも、粘着性や再剥離性とのバランスの取り易さ、入手の容易さという観点から、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋化起点をエマルション粒子の中心部と外郭部に偏在させることができるという観点からアクリル酸とメタクリル酸を併用することが望ましい。
前記アクリル系共重合体を構成する単量体成分中のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体の含有量は0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2質量%である。0.1質量%以上とすることにより、凝集力と機械安定性が向上し、5質量%以下とすることによりラベル加工前の再剥離性粘着シートでの経時安定性に優れ、再剥離性と粘着力のバランスが良好となる。
【0011】
2−エチルヘキシルアクリレートの含有量は、前記アクリル系共重合体を構成する単量体成分中の90質量%以上が好ましく、90質量%以上とすることで、たとえば、PETボトルへの貼付経時後の手剥がしによる再剥離時のしっとり感を付与し、被着体の汚染を防止することができる。
Tgの低い共重合体が得られ、かつ、粘着力と再剥離性とのバランスの取れた性能が得られるという観点から2−エチルヘキシルアクリレートの含有量は好ましくは96質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0012】
また、粘着剤層の各種特性を制御するために、2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体以外の単量体成分を適宜使用しても良い。他の単量体成分としては、2−エチルヘキシルアクリレートを除く炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが使用することが好ましい。
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等の単量体成分を例示でき、これらの1種または2種以上が用いられる。
中でも、好適な単量体成分は、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートであり、n−ブチルアクリレートが特に好適である。前記単量体成分の含有量は、アクリル系共重合体を構成する単量体成分中0〜10質量%が好適である。当該範囲内とすることで、再剥離性を損なうことなく、例えば、PETボトルに対して強粘着力が発現させることができる。
【0013】
さらに、上記の単量体のほかに、粘着剤層の凝集力を向上させるため、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能性単量体の群より選ばれる1種以上を使用してもよい。これら多官能性単量体の含有量は、前記全単量体100質量部に対して0〜2質量部程度添加するのがよい。その使用量が2質量部を超える場合には、表面基材への密着性及び再剥離性が低下する。
【0014】
上記単量体成分を用いて、本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤層中のアクリル系共重合体を乳化重合法で調製する際、重合開始剤が用いられる。用いられる重合開始剤として、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。又過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤も使用することができる。これらの重合開始剤は、通常は、乳化重合の各段階ごとに、所定量を添加して、重合反応を行わせるようにすればよい。
【0015】
本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤層中のアクリル系共重合体の水性エマルションを乳化重合法で調製する際、重合安定性を確保するため、アニオン系やノニオン系乳化剤が適量用いられる。アニオン系乳化剤としては、具体的にラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。また、プロペニル基、アクリロイル基等を導入したラジカル重合性の反応性乳化剤も使用することができる。これらの乳化剤を単独又は併用して使用することもできる。
【0016】
乳化重合の条件としては、特に限定されず、通常の乳化重合で適用される条件をそのまま適用することができる。一般的には、反応器内を不活性ガスで置換した後、還流下撹拌しながら昇温を開始し40〜100℃程度の温度範囲、昇温開始後1〜8時間程度重合を行う。
本発明の粘着シートにおける水分散型粘着性組成物中のアクリル共重合エマルション粒子の平均粒子径は、80〜500nm、好ましくは150〜400nmである。平均粒子径が上記範囲内であると、得られる粘着剤の物性バランス、すなわち粘着力や再剥離性、更に機械安定性のバランスに優れた粘着剤が得られる。
平均粒子径を80nm以上とすることにより、安定なエマルション粒子が得られ、界面活性剤の使用量も少量で済むため好ましい。平均粒子径を500nm以下とすることにより、表面基材に対する密着性や得られる粘着剤層の耐水性が低下するのを防止することができる。
【0017】
本発明の再剥離性粘着シートの粘着剤は、上記水分散型粘着性組成物に、安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加して、混合することにより得られる。本発明において、安息香酸エステル化合物は主として可塑剤として作用し、オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物は主として親水化などの界面活性剤として作用していると考えられる。
熱水剥離性を考慮した場合には、水溶性可塑剤が有効であるが、水溶性可塑剤を過剰量添加した場合には、常温での耐水性が悪化する。このため、可塑剤として安息香酸エステル化合物を使用した場合に、常温での耐水性と熱水剥離性の両立が可能となった。
安息香酸エステル化合物としては、非水溶性のものが好ましく、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエートのようなグリコールジベンゾエート類、1,4-ブタンジオールジベンゾエート、1,6-ヘキサンジオールジベンゾエート、1,8−オクタンジオールジベンゾエート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジベンゾエートのようなアルカンジオールジベンゾエート類、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート、ベンジルベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、トリメチロールプロパントリベンゾエート等が挙げられる。中でも、沸点が高いため揮散しにくく、かつバランスの良い粘着剤としての性能が得られるという観点から、グリコールジベンゾエート類、より具体的にはジプロピレングリコールジベンゾエートが特に好ましい。
【0018】
オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物としては、トリエタノールアミン、HLBが10以上のポリオキシアルキレンアミン等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアミンの市販品としてはライオン・アクゾ株式会社製のアミンアルキレンオキサイド付加物〔エソミンシリーズ〕、日本乳化剤(株)製のアミンアルキレンオキサイド付加物〔ニューコールLA−407、ニューコールOD−410、ニューコールOD−420、ニューコールTA−420〕、日油株式会社製のポリエチレングリコール高級アルキルアミン〔ナイミーンSシリーズ、ナイミーンOシリーズ、ナイミーンT2シリーズ、ナイミーンL−202、ナイミーンL−207〕、花王(株)製の酸化エチレン付加脂肪アミン〔アミートシリーズ〕等が挙げられる。
【0019】
安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物の添加量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、各々0.2〜10.0質量部が好ましく、0.5〜8.0質量部がより好ましく、0.5〜3.0質量部がさらに好ましい。
両者の配合割合は安息香酸エステル化合物:オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物の質量比で1:0.15〜1:2.5が好ましく、1:0.2〜1:2.0がより好ましく、1:0.2〜1:1.5がさらに好ましい。
【0020】
本発明の再剥離性粘着シートにおいて用いられる水分散型粘着剤組成物には、被着体への濡れ性および剥離に対するある程度の抵抗を持たせるために、粘着付与剤を配合することが好ましい。
使用する粘着付与剤としては、ロジン、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂、テルペン低重合体、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂等の粘着付与剤が例示され、水添ロジンエステルおよび/または芳香族変性テルペン樹脂が好ましく用いられる。
軟化点については80〜160℃である粘着付与剤が好ましく、又これらの粘着付与剤を2種以上併用しても良い。
配合部数は、使用する単量体によって異なるが、アクリル系共重合体を構成する単量体成分の合計量100質量部に対し、通常0.1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部添加される。粘着付与剤を0.1質量部以上とすることにより、実質的な効果として、優れた粘着力、基材密着性が得られる。20質量部以下とすることにより、粘着剤層の見かけのTgが高くなるのを防止し、粘着力、基材密着性が低下するのを防止する。
【0021】
粘着付与剤は、乳化重合前や乳化重合途中に添加してもよいし、乳化重合後の水分散型アクリル系共重合体の水性エマルションにエマルション型の粘着付与剤として添加してもよい。
表面基材との密着性を考慮した場合、粘着付与剤を乳化重合する際に単量体成分と共存させることが望ましい。粘着付与剤を単量体成分と共存させて乳化重合すると、粘着付与剤への連鎖移動が起こりやすくなり、粘着剤層のゲル分率が低下するおそれがあるが、本発明では、後述する架橋剤を用いることにより、粘着剤のゲル分率を40〜80質量%の範囲にすることで目的とする効果が得られる。
本発明でいうゲル分率は後述する実施例において測定された方法で得られたゲル分率である。粘着剤層のゲル分率を40質量%以上とすることにより、粘着剤層のはみ出しが減少し、粘着ラベルの裁断及び抜き打ち等の二次加工性が得られる。また、80%以下とすることにより、充分な粘着力が得られる。ゲル分率の好ましい範囲は40〜60質量%である。
【0022】
本発明の水分散型粘着剤組成物には、アクリル系共重合体を架橋してゲル分率を40〜80質量%の範囲に調整するために、エポキシ系化合物のような架橋剤を配合することが好ましい。
架橋剤としては、主に、アクリル系共重合体中のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来するカルボキシル基と反応して架橋するもので、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ポリイソシアネート化合物、メラミン系化合物、金属錯体系化合物、アミン系化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン誘導体等が挙げられる。架橋剤は必要に応じて、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。表面基材に対する密着性や再剥離性、被着体に貼付後の経時な粘着力の上昇が少ないこと、耐汚染性に優れる点で、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物が主として用いられる。
これらの架橋剤は水分散型粘着剤組成物中の主要な樹脂成分であるアクリル系共重合体中に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.4〜1当量の割合で添加される。添加量を0.4当量以上とすることにより、ゲル分率が低過ぎて実質的な効果が得られなくなるのを防止し、基材密着性、凝集力が劣るのを防止する。1当量以下とすることにより、ゲル分率が高くなり過ぎて被着体や基材界面へ架橋剤がブリードするのを防止するとともに、被着体汚染や基材密着性が低下するのを防止し、アルカリ可溶性が低下するのを防止する。
【0023】
エポキシ系化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−321」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−211」等)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−212」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−850」、「デナコールEX−851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」等)、ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中では、分子中に2個以上のグリシジル基を有するポリグリシジル化合物が密着性、再剥離性、粘着力の経時安定性および耐汚染性の点で特に好ましく用いられる。
【0024】
オキサゾリン系化合物としては、2位の炭素位置に不飽和炭素−炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2−オキサゾリン(例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)と他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、市販品として、日本触媒社製の「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」等が挙げられる。
【0025】
カルボジイミド系化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば日清紡社製の「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」等が挙げられる。
【0026】
また、本発明の再剥離性粘着シートにおける粘着剤層には、必要に応じて、安息香酸エステル以外の可塑剤(例えば、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレート、グリセリン等)、防腐剤、防錆剤、凍結溶融安定剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。
上記添加剤は、重合後の水分散型粘着剤組成物に添加されることが多いが、乳化重合前や乳化重合途中で添加することもできる。
本発明の粘着シートにおける水分散型粘着剤組成物(アクリル系共重合体、安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を含む水性エマルション)は、固形分が30〜65質量%、好ましくは40〜55質量%である。
【0027】
また、水分散型粘着剤組成物の粘度は50〜12,000mPa・s(BM型粘度計、25℃)、好ましくは100〜10,000mPa・sである。
pHは6〜9の範囲であることが好ましい。水分散型粘着剤組成物の固形分、粘度及びpHが上記範囲内であると、乾燥性、塗工性、及び取り扱いの面から好ましい。
【0028】
本発明の再剥離性粘着シートを製造する方法としては、特に制限されるものではない。例えば、上記水性エマルションに架橋剤等を混合(アクリル系共重合体の乳化重合時に粘着付与剤を添加しなかった場合は、エマルション型の粘着付与剤も混合)し、必要に応じてポリアクリル酸などの増粘剤を添加混合して25℃で5000〜10000mPa・s程度の粘度に調整した水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤を調製する。
次いで、粘着剤を剥離シートへ塗布し、乾燥した後に、表面基材表面と貼り合わせる転写塗工法、先に表面基材表面へ粘着剤を直接塗布し、乾燥後に剥離シートと貼り合わせる直接塗工法により形成させることもできる。
【0029】
剥離シートとしては、特に限定されるものではないが、支持基材として、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙のような紙基材、及び上質紙、グラシン紙、コート紙等にセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂などで目止め処理した紙基材等が挙げられ、合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂からなるフィルム、及びこれらの合成樹脂フィルムにコロナ放電処理等の易接着処理を施したフィルムなどが挙げられ、これらの支持基材に剥離処理を施したものであることが望ましい。
【0030】
剥離処理剤としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン樹脂以外の剥離シートに対して)、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、アルキド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂など公知の処理剤を使用することが可能である。
剥離処理剤の層の厚みは0.05〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。
剥離シートの支持基材の厚みは、特に制限はないが、通常、30〜200μmである。
【0031】
粘着剤の塗工方法としては、特に制限はないが、従来公知の塗布方法が使用可能であり、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の塗布装置による方法が挙げられる。
粘着剤層の厚みは、特に制限はないが、通常、10〜50μm、好ましくは12〜30μmである。なお、本発明の再剥離性粘着シートは、平面のシート状であってもよいし、ロール状に巻き取ったものであってもよい。
【0032】
上記のようにして調製された本発明の再剥離性粘着シートは、PET製ボトルに貼付後、再生処理設備における再生処理工程において、80℃の熱水に浸漬した際に粘着剤層が同PET製ボトルから30分以内に剥離することを特徴としている。
本発明の再剥離性粘着シートは、上記工程において、PET製ボトルから簡単に剥離、除去でき、且つ、手でも容易に剥離できるため、PET製ボトル貼付用ラベルとして特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例において、部あるいは%とあるのはすべて質量部あるいは質量%を意味するものである。
【0034】
〔実施例1〕
2−エチルヘキシルアクリレート99.4部、アクリル酸0.2部、メタクリル酸0.4部を仕込み、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩〔花王(株)製の界面活性剤、商品名:ラテムルE−118B〕0.5部、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム〔第一工業製薬(株)製の界面活性剤、商品名:アクアロンKH−05〕0.1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル〔花王(株)製の界面活性剤、商品名:エマルゲン103〕1部、水添ロジンエステル〔イーストマンケミカル社製の粘着付与剤、商品名:フォーラル105〕2.0部、芳香族変性テルペン樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製の粘着付与剤、商品名:YSレジンTO−125)0.5部とイオン交換水80質量部を加え、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に投入して室温(25℃)で攪拌して不飽和単量体の混合物の乳化物を予め調製した。
別途、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、及び滴下ロートを備えた反応装置にイオン交換水28重量部を仕込み、窒素を封入して内温80℃まで昇温し、その温度に保ちながら10質量%の過硫酸アンモニウム水溶液0.5質量部を仕込んだ。
次に、予め調整した不飽和単量体の混合物の乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。
これと併行して5質量%過硫酸アンモニウム水溶液4質量部を滴下して、内温80℃で乳化重合を行った。滴下終了後、80℃で4時間熟成し、アクリル系共重合体エマルションを得た。
その後、室温まで冷却し、アンモニア水で中和した後に水を加えて、固形分50質量%、pH8.0の水分散型粘着剤組成物を得た。
【0035】
ついで、ジプロピレングリコールジベンゾエート(表1中ではDPGDBと記載)2.5部およびポリオキシエチレンアルキルアミン(ライオン・アクゾ株式会社製の長鎖一級アミンのエチレンオキサイド付加物、商品名:エソミンC/25、HLB15.4、中和当量:860、エチレンオキサイド付加モル数:15、表1中ではC/25と記載)0.5部、トリエタノールアミン(表1中ではTEAと記載)0.5部を添加した。
次に、該水分散型粘着剤組成物100質量部にポリアクリル酸系増粘剤〔ロームアンドハース(株)社製、商品名:ASE−60〕を添加して、粘度8000mPa・sに増粘させた。
さらに、上記水分散型粘着剤組成物100質量部に対して、架橋剤〔ナガセケムテックス社製のグリセロールポリグリシジルエーテル、商品名:デナコールEX−313(有効成分99%以上)〕を0.9質量部添加し、得られた粘着剤を剥離シート〔リンテック(株)製のシリコーン樹脂で剥離処理したグラシン紙、商品名:SP−8Kアオ)の剥離処理面上にロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが15μmになるように塗工し、90℃にて2分間乾燥し、粘着剤層を形成した。
ついで、表面基材として表面に印刷受容層を備えた合成紙〔ユポコーポレーション(株)製、商品名:ユポSGS80〕の裏面(印刷受容層を備えていない面)と貼り合わせて、23℃、相対湿度50%の雰囲気で7日間放置後、再剥離性粘着シートを作製した。
また、上記合成紙の代わりに剥離シート〔リンテック社製、シリコーン樹脂で剥離処理したポリエステルフィルム、商品名:SP−PET3811〕の剥離処理面と貼り合わせて、23℃、相対湿度50%の雰囲気で7日間放置して作製した粘着シートを用いてゲル分率を測定した。
同再剥離性粘着シートをSUS板、ポリエステル板にそれぞれ貼り付け、粘着力を測定し、次いで、同再剥離性粘着シートを粘着ラベルに加工して耐水性、再剥離性(手剥離性および熱水剥離性)を測定した。
【0036】
〔実施例2〜6〕
可塑剤の種類や量を変える以外は、実施例1と全く同様に水分散型粘着剤を調製して、再剥離性粘着シートを得て実施例1と全く同様に粘着力等を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1におけるジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびトリエタノールアミンをいずれも添加しない以外は、実施例1と全く同様に水分散型粘着剤を調製して、比較用の再剥離性粘着シートを得て実施例1と全く同様に粘着力等を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
〔比較例2〜5〕
実施例1の可塑剤を単独にして量を変更した以外は、実施例1と全く同様に水分散型粘着剤を調製して、比較用の再剥離性粘着シートを得て実施例1と全く同様に粘着力等を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例及び比較例において測定された各物性および性能の評価は以下のようにして行った。
<水分散型粘着剤の各物性値の測定>
(1)粘度
JISK−6833に準じて25℃の環境下、BM型粘度計〔東京計器社製〕を用い、No.4ローターを用いて12回転/分で粘着剤組成物の粘度を測定した(単位:mPa・s)。
(2)ゲル分率
粘着剤層約500mgを#300のSUS製メッシュに包み、テトラヒドロフラン中に72時間浸漬後、SUSメッシュごと取り出し120℃で3時間乾燥後、浸漬前との質量比より粘着剤層のゲル分率を算出した(単位:質量%)。
【0040】
<再剥離性粘着シートおよび粘着ラベルの特性試験>
(1)粘着力
再剥離性粘着シートを幅25mmに切断し、SUS板、ポリエステル板にそれぞれ貼り付け、質量2kgのローラーで1往復圧着した後、相対湿度50%で24時間放置した後に剥離速度300mm/分で剥離角度180°にて剥離した際の測定値であり、単位はN/25mm(幅)である。
(2)耐水性
再剥離性粘着シートを幅25mm×長さ50mm、の粘着ラベルとし、この粘着ラベルをPETボトルに貼り付け、23℃の水に72時間浸潰させた時のラベルの浮き剥がれを目視にて観察した。
○:浮き剥がれなし
×:浮き剥がれあり
(3)再剥離性
[手剥離性]
耐水性試験に用いたものと同じ粘着ラベルをPETボトルに貼り付け、40℃、相対湿度80%条件下で1週間放置後の再剥離性を手で剥離することにより確認した。
○:再剥離性良好、糊残りなし
×:再剥離せず、糊残りあり
[熱水剥離性]
耐水性試験に用いたものと同じ粘着ラベルをPETボトルに貼り付け、80℃の熱水に30分間浸潰させた時点でラベルが自然に剥離するか否かを目視にて観察した。
○:30分以内にラベルの自然剥離あり。
△:ラベルの一部自然剥離あり。
×:ラベルの自然剥離なし。
【0041】
〔使用原材料〕
表1中の添加剤の配合量における数値は、アクリル系共重合体100質量部に対する有効成分量を示す。表1中の添加剤の略号は下記の通りである。
DPGDB:ジプロピレングリコールジベンゾエート
TEA:トリエタノールアミン
C/25:ライオン・アクゾ(株)製のポリオキシエチレンアルキルアミン〔商品名:エソミンC/25、HLB15.4、中和当量:860、エチレンオキサイド付加モル数:15〕
O/20:ライオン・アクゾ(株)製のポリオキシエチレンアルキルアミン〔商品名:エソミンO/20、HLB12.5、中和当量:700、エチレンオキサイド付加モル数:10、表1中ではO/20と記載〕
LA−407:日本乳化剤(株)製のポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル〔商品名:ニューコールLA−407、HLB12.6、表1中ではLA−407と記載〕
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の再剥離性粘着シートは、特に、各種飲料用のボトル用、より具体的にはPETボトル用の粘着ラベルとして有用である。本発明の再剥離性粘着シートに用いられている粘着剤層はアルカリ可溶性であるため、たとえば、PETボトルをリサイクルする際に必要な粘着ラベルの剥離作業を容易に行うことができ、この分野で極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離シート、粘着剤層、表面基材を積層してなる再剥離性粘着シートにおいて、前記粘着剤層が2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系共重合体を含む水分散型粘着性組成物に安息香酸エステル化合物とオキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物を添加した水分散型粘着剤を含むことを特徴とする再剥離性粘着シート。
【請求項2】
前記2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が、前記アクリル系共重合体を構成する単量体成分中の90質量%以上である請求項1に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項3】
前記安息香酸エステル化合物がグリコールジベンゾエート類である請求項1または2に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項4】
前記オキシエチレン基を有する水溶性3級アミン化合物がHLB10以上のポリオキシアルキレンアミンおよび/またはトリエタノールアミンである請求項1〜3のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層が粘着付与剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【請求項6】
前記粘着付与剤が水添ロジンエステルおよび/または芳香族変性テルペン樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層が架橋剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【請求項8】
前記架橋剤が、分子中に2個以上のグリシジル基を有するポリグリシジル化合物である請求項7に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項9】
ポリエチレンテレフタレート製ボトル貼付用ラベルである請求項1〜8のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。
【請求項10】
前記再剥離性粘着シートに印刷、ラベル加工、印字等を施し、該ラベルをポリエチレンテレフタレートボトルに貼付し、80℃の熱水に浸漬した際にラベルがポリエチレンテレフタレートボトルから30分以内に剥離する請求項1〜9のいずれかに記載の再剥離性粘着シート。

【公開番号】特開2013−36011(P2013−36011A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175766(P2011−175766)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】