説明

再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物及び粘着シート

【課題】粘着力上昇防止性、外観特性、被着体に対する低汚染性に優れた、再剥離が可能な粘着剤層を形成しうる水分散型のアクリル系粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマーとして構成され、原料モノマー全量中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が70〜99.5重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が0.5〜10重量%であるアクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、並びに、化学式[RaO−(PO)l−(EO)m−(PO)n−Rb]で表される化合物(D)を含み、前記アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値が13未満であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離が可能な水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。詳しくは、凹みなどの外観不良が低減されており外観特性に優れ、また、経時による粘着力の上昇の防止性に優れた粘着剤層を形成しうる再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。また、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、反射防止板などの光学フィルムをはじめとする光学部材(光学材料)の製造・加工工程においては、表面の傷、汚れ防止、切断加工性向上、クラック抑制などの目的で、表面保護フィルムが、光学部材の表面に貼付されて用いられている(特許文献1、2参照)。これら表面保護フィルムとしては、プラスチックフィルム基材の表面に再剥離性の粘着剤層を設けた、再剥離性の粘着シートが一般的に用いられている。
【0003】
従来、これらの表面保護フィルム用途には粘着剤として溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが(特許文献1、2参照)、これら溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒を含有しているため、塗工時の作業環境性の観点より、水分散型のアクリル系粘着剤への転換が図られている(特許文献3〜5参照)。
【0004】
これらの表面保護フィルムには、光学部材に貼付されている間は十分な接着性を発揮することが求められる。さらに、光学部材の製造工程などで使用された後は剥離されるため、優れた剥離性(再剥離性)が求められる。なお、優れた再剥離性を有するためには、剥離力が小さいこと(軽剥離)に加えて、光学部材などの被着体に貼付後、経時で粘着力(剥離力)が上昇しない特性(粘着力上昇防止性)が必要とされる。
【0005】
上記の軽剥離や粘着力上昇防止性などの特性を得るためには、粘着剤(又は粘着剤組成物)に非水溶性架橋剤を用いることが有効である。非水溶性架橋剤を用いた粘着剤組成物としては、例えば、油溶性架橋剤を含有する再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物が知られている(特許文献6、7参照)。
【0006】
しかしながら、上記粘着剤組成物のように、非水溶性架橋剤を用いた水分散型アクリル系粘着剤組成物は、粘着剤組成物中に非水溶性架橋剤の大きな粒子が十分に分散せずに残存し、それに起因して、粘着剤層を形成する際に、粘着剤層表面に「凹み」などの外観不良を生じやすい。このため、特に表面保護フィルムの粘着剤層に対して非水溶性架橋剤を用いる場合には、表面保護フィルムを貼付したまま、被着体の検査を行いにくくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0007】
従って、接着性と再剥離性(特に粘着力上昇防止性)に優れ、「凹み」等の外観不良の低減された外観特性に優れた粘着剤層を形成しうる再剥離性の水分散型アクリル系粘着剤組成物は得られていないのが現状である。
【0008】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物は、安定した水分散性を得るために、粘着剤組成物中に界面活性剤成分が存在し、それに起因して、粘着剤組成物が起泡し易くなる問題がある。特に粘着剤組成物の攪拌工程においては、攪拌時に空気を抱き込みやすく、また抱き込んだ気泡が界面活性剤により安定になるため、気泡が抜け難い問題を有している。これらの気泡は、粘着剤層を形成する際に、粘着剤層中に残存したり、粘着剤層表面に「凹み」などを形成し、外観不良を生じる。このため、特に表面保護フィルムの粘着剤層などとして用いる場合には、表面保護フィルムを貼付したまま、被着体の検査を行いにくくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0009】
特に、表面保護フィルム用途(中でも、光学部材の表面保護フィルム用途)などにおいては、粘着剤層中に残存する気泡や粘着剤層表面に存在する「凹み」が貼り付けられる部材(被着体である光学部材等)の欠点なのか、表面保護フィルムの欠点なのか区別しにくくなり、品質検査や品質管理の妨げとなる場合があるため、これらの気泡由来の欠点がない表面保護フィルムが強く求められている。
【0010】
これら気泡由来の欠点を改善する手法としては消泡剤の添加が用いられており、その優れた消泡性からシリコーン系消泡剤や疎水性シリカ含有の消泡剤が知られている(特許文献8、9参照)。
【0011】
しかしながら、シリコーン系消泡剤は、粘着剤組成物への均一分散性に劣り、局所的に疎水性の高い部分を形成し、これが起点となって粘着剤組成物塗工時のハジキを生じてしまう問題がある。また、シリコーン系消泡剤はアクリルエマルション系重合体との相溶性に劣り、粘着剤層形成後に粘着剤層表面にブリードしてしまうため、被着体への汚染を発生してしまう問題も有している。特に光学部材の表面保護フィルム用途においては汚染物が光学特性に影響を及ぼす可能性があるため、大きな問題となる。
一方、疎水性シリカ含有の消泡剤は、粘着剤組成物への均一分散性には優れるが、含有する疎水性シリカが2次凝集物を形成し、シリカ粒子起点の欠陥を生じてしまう問題がある。また、光学部材の表面保護フィルム用途においては、粘着剤組成物中に異物が存在すると光学欠点を形成してしまうため、粘着剤組成物をフィルターなどで濾過して用いることが一般的である。この場合、シリカ粒子がフィルターに詰まってしまい、生産効率を落とす問題も有している。
【0012】
さらに、表面保護フィルム用途(特に光学部材の表面保護フィルム用途)などにおいては、粘着シートの剥離の際の被着体(光学部材等)表面への粘着剤の残留(いわゆる「糊残り」)や、粘着剤層に含まれる成分の被着体表面への転写などによる被着体表面の汚染が、光学部材の光学特性への悪影響などの問題となる。このため、粘着剤や粘着剤層には被着体に対する低汚染性が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−961号公報
【特許文献2】特開2001−64607号公報
【特許文献3】特開2001−131512号公報
【特許文献4】特開2003−27026号公報
【特許文献5】特許第3810490号明細書
【特許文献6】特開2004−91563号公報
【特許文献7】特開2006−169496号公報
【特許文献8】特開平8−34963号公報
【特許文献9】特開2005−279565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、再剥離が可能な粘着剤層であって、粘着力上昇防止性と外観特性(凹みなどの外観不良が低減されていること)、更には低汚染性に優れた粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物を提供することにある。また、該粘着剤組成物による粘着剤層を有する粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定組成の原料モノマーより得られるアクリルエマルション系重合体、非水溶性架橋剤、特定のアセチレンジオール系化合物、および特定構造のポリエーテル化合物を構成成分とすることで、粘着力上昇防止性と外観特性、更には低汚染性に優れた粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマーとして構成され、原料モノマー全量中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が70〜99.5重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が0.5〜10重量%であるアクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、並びに、下記式(I)
aO−(PO)l−(EO)m−(PO)n−Rb (I)
(式中、Ra及びRbは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、水素原子を表す。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。l、m及びnは、それぞれ正の整数である。EOとPOの付加形態はブロック型である。)
で表される化合物(D)を含み、アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値が13未満であることを特徴とする再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、アクリルエマルション系重合体(A)が、分子中にラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤を用いて重合された重合体である前記の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記カルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基1モルに対する、非水溶性架橋剤(B)のカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数が0.3〜1.3モルである前記の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、基材の少なくとも片面側に、前記の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着シートを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、前記粘着剤層の溶剤不溶分が90重量%以上、破断点伸度が200%以下である前記の粘着シートを提供する。
【0021】
さらに、本発明は、光学部材用の表面保護フィルムである前記の粘着シートを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粘着剤組成物は水分散型であり、さらに前記構成を有しているので、該粘着剤組成物から形成された粘着剤層及び該粘着剤層を有する粘着シートは、優れた再剥離性、接着性、外観特性を有し、なおかつ剥離後に、被着体表面に汚染が発生せず、低汚染性に優れている。また、経時での被着体との粘着力上昇も防止される。さらに、上記粘着剤層は加湿保存下でも白化しにくい効果も有する。このため、光学フィルムの表面保護用途として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物(単に「粘着剤組成物」と称する場合がある)は、アクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、及び下記式(I)で表される化合物(D)を必須の成分として含有している。
aO−(PO)l−(EO)m−(PO)n−Rb (I)
(式中、Ra及びRbは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、水素原子を表す。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。l、m及びnは、それぞれ正の整数である。EOとPOの付加形態はブロック型である。)
なお、「式(I)で表される化合物(D)」を、単に「化合物(D)」と称する場合がある。
【0024】
[アクリルエマルション系重合体(A)]
本発明の粘着剤組成物におけるアクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマー(原料モノマー成分)として構成された重合体である。即ち、アクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須成分とするモノマー混合物より得られる重合体である。アクリルエマルション系重合体(A)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、本発明では、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」のことをいう。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する主たるモノマー成分として用いられ、主に接着性、剥離性などの粘着剤(又は粘着剤層)としての基本特性を発現する役割を担う。中でも、アクリル酸アルキルエステルは粘着剤層を形成するポリマーに柔軟性を付与し、粘着剤層に密着性、粘着性を発現させる効果を発揮する傾向があり、メタクリル酸アルキルエステルは粘着剤層を形成するポリマーに硬さを与え、粘着剤層の再剥離性を調節する効果を発揮する傾向がある。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、炭素数が1〜16(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜8)の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0026】
中でも、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2〜14(より好ましくは4〜8)のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチルである。
【0027】
また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2〜16(より好ましくは2〜8)のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環式のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、メタクリル酸n−ブチルである。
【0028】
なお、後述の粘着剤層の外観を向上させる目的で、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレートを用いてもよい。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全量)(全原料モノマー)(100重量%)中、70〜99.5重量%であり、より好ましくは85〜99重量%、さらに好ましくは91〜98重量%である。含有量が99.5重量%を超えるとカルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が低下することにより、粘着剤組成物より形成された粘着剤層の投錨性、低汚染性やエマルションの安定性が低下し、70重量%未満では粘着剤層の接着性、再剥離性が低下する。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中におけるアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの含有量比(アクリル酸アルキルエステルの含有量:メタクリル酸アルキルエステルの含有量)は特に限定されないが、100:0〜30:70(重量比)が好ましく、より好ましくは100:0〜50:50である。
【0031】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリルエマルション系重合体(A)からなるエマルション粒子表面に保護層を形成し、粒子の剪断破壊を防ぐ機能を発揮することができる。これはカルボキシル基を塩基で中和することによってさらに向上する。なお、粒子の剪断破壊に対する安定性は、より一般的には機械的安定性という。また、カルボキシル基と反応する多官能化合物(例えば、多官能性エポキシ化合物)を1種あるいは2種以上組み合わせることで、水除去による粘着剤層形成段階での架橋点としても作用することもできる。さらに多官能化合物を介し、粘着剤層と基材との密着性(投錨性)を向上させることもできる。このようなカルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。なお、カルボキシル基含有不飽和単量体には、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有不飽和単量体も含むものとする。これらの中でも、粒子表面での相対濃度が高く、より高密度な保護層を形成し易いことから、アクリル酸が好ましい。なお、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中、0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%である。含有量が10重量%を超える場合には、カルボキシル基含有不飽和単量体(例えば、アクリル酸)は一般的に水溶性であるため、水中で重合して増粘(粘度増加)を引き起こす。さらには、粘着剤層を形成した後、被着体である偏光板表面の官能基との相互作用が増大して、経時で粘着力が増大、剥離が困難になる場合がある。一方、0.5重量%未満では、エマルション粒子の機械的安定性が低下する。また、粘着剤層と基材との密着性(投錨性)が低下し、糊残りの原因となる。
【0033】
アクリルエマルション系重合体(A)を構成するモノマー成分(原料モノマー)としては、特定の機能付与を目的として、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシル基含有不飽和単量体以外の他のモノマー成分を併用してもよい。このようなモノマー成分としては、例えば、凝集力向上の目的で、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーやN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーを、それぞれ0.1〜15重量%程度添加(使用)してもよい。また、屈折率調整、リワーク性などの目的で、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン等のスチレン系モノマーを、それぞれ15重量%以下の割合で添加(使用)してもよい。さらに、エマルション粒子内架橋および凝集力向上の目的で、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマーやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーを、それぞれ5重量%未満の割合で添加(使用)してもよい。さらに、ヒドラジド系架橋剤を併用してヒドラジド架橋を形成し、特に低汚染性を向上させる目的で、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM)、アリルアセトアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のケト基含有不飽和単量体を10重量%未満の割合で(好ましくは0.5〜5重量%)添加(使用)してもよい。
【0034】
また、上記他のモノマー成分として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有不飽和単量体を使用してもよい。ヒドロキシル基含有不飽和単量体は、白化汚染をより低減する観点からは添加量(使用量)は少ない方が好ましい。具体的には、ヒドロキシル基含有不飽和単量体の添加量は、1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは実質的に含まない(例えば、0.05重量%未満)ことが好ましい。ただし、水酸基とイソシアネート基の架橋や金属架橋の架橋等の架橋点の導入を目的とする場合には、0.01〜10重量%程度添加(使用)してもよい。
【0035】
なお、上記の他のモノマー成分の添加量(使用量)は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中の含有量である。
【0036】
特に、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着シート(粘着剤層)の外観を向上させる観点からは、アクリルエマルション系重合体(A)を構成するモノマー成分(原料モノマー)として、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド及び酢酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも1つのモノマーを使用することが好ましい。特に好ましくは、メタクリル酸メチルである。アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中の、上記モノマー(メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド及び酢酸ビニルからなる群より選ばれたモノマー)の含有量は、0.5〜15重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。含有量が0.5重量%未満では外観を向上させる効果が得られない場合があり、15重量%を超えると粘着剤層を形成するポリマーが硬くなり密着性の低下を引き起こす場合がある。なお、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマー中に、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド及び酢酸ビニルからなる群より選ばれた2以上のモノマーが含まれる場合には、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド及び酢酸ビニルの含有量の合計量(合計含有量)が上記の範囲を満たせばよい。
【0037】
本発明におけるアクリルエマルション系重合体(A)は、上記の原料モノマー(モノマー混合物)を、乳化剤、重合開始剤によりエマルション重合することによって得られる。さらに、アクリルエマルション系重合体(A)の分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0038】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合に用いる乳化剤としては、分子中にラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤(ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤)を用いることが好ましい。これらの乳化剤は単独でまたは2種以上が用いられる。
【0039】
上記ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤(以下、「反応性乳化剤」と称する)は、分子中(1分子中)に少なくとも1つのラジカル重合性官能基を含む乳化剤である。上記反応性乳化剤としては、特に限定されず、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等のラジカル重合性官能基を有する種々の反応性乳化剤から、1種又は2種以上を選択して使用できる。当該反応性乳化剤を用いることにより、乳化剤が重合体中にとりこまれ、乳化剤由来の汚染が低減するため好ましい。
【0040】
上記反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのノニオンアニオン系乳化剤(非イオン性の親水性基を持つアニオン系乳化剤)にプロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入された形態を有する(又は該形態に相当する)反応性乳化剤が挙げられる。なお、以下では、アニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「アニオン系反応性乳化剤」と称する。また、ノニオンアニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「ノニオンアニオン系反応性乳化剤」と称する。
【0041】
特に、アニオン系反応性乳化剤(中でも、ノニオンアニオン系反応性乳化剤)を使用した場合に、乳化剤が重合体中にとりこまれることにより、低汚染性を向上させることができる。さらに、特に非水溶性架橋剤(B)がエポキシ基を有する多官能性エポキシ系架橋剤である場合には、その触媒作用により架橋剤の反応性を向上させることができる。アニオン系反応性乳化剤を使用しない場合、エージングでは架橋反応が終了せず、経時で、粘着剤層の粘着力が変化する問題が生じる場合がある。さらに、未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇する問題が生じる場合がある。また、当該アニオン系反応性乳化剤は重合体中にとりこまれるため、エポキシ系架橋剤の触媒として一般的に使用される、第4級アンモニウム化合物(例えば、特開2007−31585号公報参照)のように被着体の表面に析出しないため、白化汚染の原因になり得ないため好ましい。
【0042】
このような反応性乳化剤としては、商品名「アデカリアソープSE−10N」(株式会社ADEKA製)、商品名「アデカリアソープSE−20N」(株式会社ADEKA製)、商品名「アデカリアソープSR−10」(株式会社ADEKA製)、商品名「アデカリアソープSR−20」(株式会社ADEKA製)、商品名「アクアロンHS−10」(第一工業製薬(株)製)、商品名「アクアロンHS−05」(第一工業製薬(株)製)、商品名「ラテムルPD−104」(花王(株)製)などの市販品を用いることも可能である。
【0043】
また、特に不純物イオンが問題となる場合があるため、不純物イオンを取り除き、SO42-イオン濃度が100μg/g以下の乳化剤を用いることが望ましい。また、アニオン系乳化剤の場合、アンモニウム塩乳化剤を用いることが望ましい。乳化剤から不純物を取り除く方法としては、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法など適宜な方法を用いることができる。
【0044】
上記反応性乳化剤の配合量(使用量)は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜6重量部、さらに好ましくは1〜4.5重量部、最も好ましくは1〜3重量部である。配合量が10重量部を超えると粘着剤(粘着剤層)の凝集力が低下して被着体への汚染量が増加したり、また乳化剤による汚染が起こる場合がある。一方、配合量が0.1重量部未満では安定した乳化が維持できない場合がある。
【0045】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合に用いる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤、例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせによるレドックス系重合開始剤などを用いることができる。なお、上記重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
上記重合開始剤の配合量(使用量)は、開始剤や原料モノマーの種類などに応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。
【0047】
上記アクリルエマルション系重合体(A)の重合においては、アクリルエマルション系重合体(A)の分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。上記連鎖移動剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の配合量(使用量)は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0048】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法を用いることができ、その方法は特に限定されるものではない。なお、低汚染化の観点からは、一括重合でかつ低温(例えば55℃以下、好ましくは30℃以下)で重合することが望ましい。このような条件で重合を行うと、高分子量体が得られやすく、低分子量体が少なくなるため、汚染が減少するものと推定される。
【0049】
上記アクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及びカルボキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位を必須の構成単位とする重合体である。アクリルエマルション系重合体(A)中の、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、70〜99.5重量%が好ましく、より好ましくは85〜99重量%、さらに好ましくは91〜98重量%である。アクリルエマルション系重合体(A)中の、カルボキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位の含有量は、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは2〜4重量%である。
【0050】
上記アクリルエマルション系重合体(A)の溶剤不溶分(溶剤不溶成分の割合、「ゲル分率」と称する場合もある)は70%(重量%)以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。溶剤不溶分が70重量%未満では、アクリルエマルション系重合体(A)中に低分子量体が多く含まれるため、架橋の効果のみでは十分に粘着剤層中の低分子量成分を低減できないため、低分子量成分等に由来する被着体汚染が生じたり、粘着力が高くなりすぎる場合がある。上記溶剤不溶分は、重合開始剤、反応温度、乳化剤や原料モノマーの種類等により制御できる。上記溶剤不溶分の上限値は、特に限定されないが、例えば、99重量%である。
【0051】
なお、本発明において、アクリルエマルション系重合体(A)の溶剤不溶分は、以下の「溶剤不溶分の測定方法」により算出される値である。
(溶剤不溶分の測定方法)
アクリルエマルション系重合体(A):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、アクリルエマルション系重合体(A)(上記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、上記のアクリルエマルション系重合体(A)をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式から溶剤不溶分を算出する。
溶剤不溶分(重量%)=(a−b)/(c−b)×100 (1)
(式(1)において、aは浸漬後重量であり、bは包袋重量であり、cは浸漬前重量である。)
【0052】
本発明の粘着剤組成物中のアクリルエマルション系重合体(A)の含有量は、特に限定されないが、粘着剤組成物の不揮発分100重量%に対して、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90〜99重量%である。
【0053】
[非水溶性架橋剤(B)]
本発明の粘着剤組成物における非水溶性架橋剤(B)は、非水溶性の化合物であり、分子中(1分子中)にカルボキシル基と反応しうる官能基を2個以上(例えば、2〜6個)有する化合物である。1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数は3〜5個が好ましい。1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数が多くなるほど、粘着剤組成物が密に架橋する(即ち、粘着剤層を形成するポリマーの架橋構造が密になる)。このため、粘着剤層形成後の粘着剤層のぬれ広がりを防ぐことが可能となる。また、粘着剤層を形成するポリマーが拘束されるため、粘着剤層中の官能基(カルボキシル基)が被着体面に偏析して、粘着剤層と被着体との粘着力が経時で上昇することを防ぐことが可能となる。一方、1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数が6個を超えて多すぎる場合には、ゲル化物が生じる場合がある。
【0054】
上記非水溶性架橋剤(B)におけるカルボキシル基と反応しうる官能基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基などが挙げられる。中でも、反応性の観点からエポキシ基が好ましい。さらに、反応性が高いため、架橋反応における未反応物が残りにくく低汚染性に有利である、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇することを防止できるという観点から、グリシジルアミノ基が好ましい。即ち、非水溶性架橋剤(B)としては、エポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましく、中でも、グリシジルアミノ基を有する架橋剤(グリシジルアミノ系架橋剤)が好ましい。なお、非水溶性架橋剤(B)がエポキシ系架橋剤(特にグリシジルアミノ系架橋剤)である場合には、1分子中のエポキシ基(特にグリシジルアミノ基)の個数が2個以上(例えば、2〜6個)であり、3〜5個が好ましい。
【0055】
上記非水溶性架橋剤(B)は、非水溶性の化合物である。なお、「非水溶性」とは、25℃における水100重量部に対する溶解度(水100重量部に溶解しうる化合物(架橋剤)の重量)が5重量部以下であることをいい、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。非水溶性の架橋剤を使用することにより、架橋せずに残存した架橋剤が、高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。水溶性架橋剤のみで架橋させる場合には、高湿度環境下では、残存した架橋剤が水分に溶けて被着体に転写しやすくなるため、白化汚染を引き起こしやすい。また、非水溶性架橋剤は、水溶性架橋剤と比較して、架橋反応(カルボキシル基との反応)への寄与が高く、粘着力の経時上昇防止効果が高い。さらに、非水溶性架橋剤は架橋反応の反応性が高いため、エージングで速やかに架橋反応が進行し、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇することを防止できる。
【0056】
なお、上記の架橋剤の水に対する溶解度は、例えば、以下のようにして測定しうる。
(水に対する溶解度の測定方法)
同重量の水(25℃)と架橋剤を、攪拌機を用いて回転数300rpm、10分の条件で混合し、遠心分離により水相と油相に分ける。次いで、水相を採取し120℃で1時間乾燥して、乾燥減量から水相中の不揮発分(水100重量部に対する不揮発成分の重量部)を求める。
【0057】
具体的には、非水溶性架橋剤(B)としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン(例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−X」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のグリシジルアミノ系架橋剤;Tris(2,3−epoxypropyl)isocyanurate(例えば、日産化学工業(株)製、商品名「TEPIC−G」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のその他のエポキシ系架橋剤などが例示される。なお、上記非水溶性架橋剤(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物の作製時に上記非水溶性架橋剤(B)を配合する際には、非水溶性架橋剤(B)は、液状の非水溶性架橋剤(B)をそのまま添加(配合)してもよいし、有機溶剤で溶解及び/又は希釈して添加してもよい(但し、有機溶剤の使用量はなるべく少ない方が好ましい)。なお、非水溶性架橋剤(B)を乳化剤により乳化して添加する方法は、乳化剤がブリードして、汚染(特に白化汚染)を引き起こしやすく好ましくない。
【0059】
上記非水溶性架橋剤(B)の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられるカルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基1モルに対する、非水溶性架橋剤(B)のカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数が0.3〜1.3モルとなる配合量とすることが好ましい。即ち、「アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられる全てのカルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基の総モル数」に対する、「全ての非水溶性架橋剤(B)のカルボキシル基と反応しうる官能基の総モル数」の割合[カルボキシル基と反応しうる官能基/カルボキシル基](モル比)が0.3〜1.3であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.1、さらに好ましくは0.5〜1.0である。[カルボキシル基と反応しうる官能基/カルボキシル基]が0.3未満では、粘着剤層中に未反応のカルボキシル基が多く存在し、カルボキシル基と被着体との相互作用のため、経時による粘着力上昇が生じる場合がある。また、1.3を超えると、粘着剤層中に未反応の非水溶性架橋剤(B)が多く存在し、外観不良が生じる場合がある。
【0060】
特に、非水溶性架橋剤(B)がエポキシ系架橋剤である場合には、[エポキシ基/カルボキシル基](モル比)が0.3〜1.3であることが好ましく、より好ましく0.4〜1.1、さらに好ましくは0.5〜1.0である。さらに、非水溶性架橋剤(B)がグリシジルアミノ系架橋剤である場合には、[グリシジルアミノ基/カルボキシル基](モル比)が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0061】
なお、例えば、粘着剤組成物中に、カルボキシル基と反応しうる官能基の官能基当量が110(g/eq)の非水溶性架橋剤(B)を4g添加(配合)する場合、非水溶性架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
非水溶性架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数 = [非水溶性架橋剤(B)の配合量(添加量)]/[官能基当量] = 4/110
例えば、非水溶性架橋剤(B)として、エポキシ当量が110(g/eq)のエポキシ系架橋剤を4g添加(配合)する場合、エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数 = [エポキシ系架橋剤の配合量(添加量)]/[エポキシ当量] = 4/110
【0062】
[アセチレンジオール系化合物(C)]
本発明の粘着剤組成物におけるアセチレンジオール系化合物(C)は、分子内にアセチレン結合を有するジオール化合物である。特に限定されないが、アセチレンジオール系化合物(C)としては、以下の式(II)で表される化合物、式(III)で表される化合物が好ましい。
【0063】
上記アセチレンジオール系化合物(C)としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0064】
【化1】

【0065】
上記式(II)中のR1、R2、R3およびR4は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、R1、R2、R3およびR4は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
上記式(II)中のR1、R2、R3およびR4は、直鎖状または分岐鎖状のいずれの構造であってもよい。中でも、R1およびR4は、炭素数2〜10のアルキル基が好ましく、特に、炭素数4のn−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基が好ましい。また、R2およびR3は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、炭素数1又は2のメチル基やエチル基が好ましい。
【0067】
上記式(II)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)の具体例としては、例えば、7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールなどが挙げられる。
【0068】
また、本発明の粘着剤組成物の作製時に、上記式(II)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)を配合する際には、配合作業性を向上させる目的で、上記のアセチレンジオール系化合物(C)を各種溶媒に分散または溶解したものを用いてもよい。溶媒としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの溶媒の中でも、エマルション系への分散性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく用いられる。また、配合の際のアセチレンジオール系化合物(C)を溶媒に分散または溶解したもの(100重量%)に対する溶媒含有率は、エチレングリコールを溶媒として用いる場合には、40重量%未満(例えば、15〜35重量%)が好ましく、プロピレングリコールを溶媒として用いる場合には70重量%未満(例えば、20〜60重量%)が好ましい。
【0069】
上記式(II)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)は市販品を用いてもよく、例えば、エアープロダクツ社製のサーフィノール104シリーズが挙げられる。より具体的には、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50などが挙げられる。
【0070】
上記アセチレンジオール系化合物(C)としては、例えば、下記式(III)で表される化合物が好ましい。
【0071】
【化2】

【0072】
上記式(III)中のR5、R6、R7およびR8は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、R5、R6、R7およびR8は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、上記式(III)中のp及びqは0以上の整数であり、pとqの和[p+q]は1以上であり、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜9である。なお、p及びqは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。p及びqは、アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値が13未満になるように調整される数である。また、pが0の場合[−O−(CH2CH2O)pH]は水酸基[−OH]であり、qについても同じである。
【0073】
上記式(III)中のR5、R6、R7およびR8は、直鎖状または分岐鎖状のいずれの構造であってもよい。中でも、R5およびR8は、炭素数2〜10のアルキル基が好ましく、特に、炭素数4のn−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基が好ましい。また、R6およびR7は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、炭素数1又は2のメチル基やエチル基が好ましい。
【0074】
上記式(III)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)の具体例としては、例えば、7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオールのエチレンオキシド付加物、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。なお、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物のエチレンオキシドの平均付加モル数は、9以下が好ましい。
【0075】
上記式(III)中のp及びqは、アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値が13未満になるように調整される数である。例えば、上記式(III)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)が2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物である場合には、pとqの合計は9以下が好ましい。
【0076】
本発明の粘着剤組成物の作製時に、上記式(III)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)(エチレンオキシド付加アセチレンジオール系化合物)を配合する際には、溶媒を用いず化合物(C)のみを配合することが好ましいが、配合作業性を向上させる目的で、上記のアセチレンジオール系化合物(C)を各種溶媒に分散または溶解したものを用いてもよい。上記溶媒としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもエマルション系への分散性の観点からエチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0077】
上記式(III)で表されるアセチレンジオール系化合物(C)は市販品を用いてもよく、例えば、エアープロダクツ社製のサーフィノール400シリーズが挙げられる。より具体的には、サーフィノール420、サーフィノール440などが挙げられる。
【0078】
上記のアセチレンジオール系化合物(C)は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0079】
上記アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値(単に「HLB」と称する場合もある)は、13未満であり、好ましくは1〜10、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜5である。HLB値が13以上では、高湿度環境下で粘着剤層の白化が起き易くなる。また、被着体への汚染性が悪くなる。なお、HLB値は、GriffinによるHydrophile−Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値である。HLB値の定義については、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄 共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書株式会社出版、昭和47年11月25日、p179〜182などに記載されている。
【0080】
上記アセチレンジオール系化合物(C)の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜7重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。上記配合量が0.01重量部未満では、非水溶性架橋剤の凹み欠点による外観不良が生じる場合があり、10重量部を超えると、アセチレンジオール系化合物(C)による被着体への汚染が生じる場合がある。
【0081】
上記アセチレンジオール系化合物(C)を配合することにより、粘着剤組成物中の非水溶性架橋剤の分散性向上や粘着剤層形成時のレベリング効果が働くためと推定されるが、非水溶性架橋剤由来の凹み欠点の発生を抑止しうる。
【0082】
[化合物(D)]
本発明の粘着剤組成物における化合物(D)は、下記式(I)で表される化合物である。
aO−(PO)l−(EO)m−(PO)n−Rb (I)
【0083】
なお、本明細書において、POはオキシプロピレン基[−CH2CH(CH3)O−]を表し、EOはオキシエチレン基[−CH2CH2O−]を表す。
【0084】
上記式(I)中、Ra及びRbは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、水素原子を表す。RaとRbは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。上記Ra及びRbは、共に水素原子であることが特に好ましい。
【0085】
上記式(I)中、POはオキシプロピレン基[−CH2CH(CH3)O−]を表す。また、l及びnは、それぞれ、正の整数(1以上の整数)であり、1〜100が好ましく、より好ましくは10〜50、さらに好ましくは10〜30である。lとnは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
上記式(I)中、EOはオキシエチレン基[−CH2CH2O−]を表す。また、mは、正の整数(1以上の整数)であり、1〜50が好ましく、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜15である。
【0087】
上記式(I)において、EOとPOの付加形態(共重合形態)はブロック型である。即ち、上記化合物(D)は、EOからなるブロック[ポリオキシエチレンブロック、ポリエチレングリコール(PEG)ブロック]の両側にPOからなるブロック[ポリオキシプロピレンブロック、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロック]を有するトリブロック共重合体またはその誘導体である。
【0088】
上記化合物(D)の、「化合物(D)の総重量」に対する「EOの総重量」の割合[(EOの総重量)/(化合物(D)の総重量)×100](単位:重量%(%))は、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。上記割合(EO含有率)が50重量%を超えると、化合物(D)の親水性が高くなり、消泡性が失われる場合がある。また、上記割合が5重量%未満では、化合物(D)の疎水性が高くなりすぎ、ハジキの原因となる場合がある。上記の「化合物(D)の総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全ての化合物(D)の重量の合計量」であり、「EOの総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全ての化合物(D)に含まれるEOの重量の合計量」である。なお、上記の「化合物(D)の総重量」に対する「EOの総重量」の割合を、「エチレンオキシド含有率」又は「EO含有率」と称する場合がある。EO含有率の測定方法は、例えば、核磁気共鳴(NMR)、クロマトグラフィーまたは飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)が挙げられる。
【0089】
上記化合物(D)の数平均分子量(Mn)は、1200〜4000が好ましく、より好ましくは1500〜3500である。Mnが4000を超えると被着体への汚染が発生する場合があり、1200未満では被着体への汚染が発生する場合がある。なお、上記数平均分子量(Mn)は、本発明の粘着剤組成物中に含まれる全ての化合物(D)についての数平均分子量である。上記数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。具体的な測定方法は、以下の方法が挙げられる。
[測定方法]
分子量は、東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8220GPC」を用いて測定を行い、ポリスチレン換算値にて求める。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2wt%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H 1本+TSKgel SuperHZM−H 2本
リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC 1本
検出器:示差屈折計
【0090】
上記化合物(D)は、例えば、脂肪酸や高級アルコールに、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを反応させて得ることができる。または、エチレングリコールとプロピレングリコールを反応させることにより得ることができる。
【0091】
上記化合物(D)は、市販品を用いることも可能であり、具体的には、例えば、(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」、「アデカプルロニック 25R−2」、「アデカプルロニック 17R−2」、「アデカプルロニック 17R−3」;BASFジャパン(株)製、「プルロニックRPEシリーズ」;SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、「ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)」などが挙げられる。
【0092】
上記化合物(D)は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0093】
上記化合物(D)の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体(A)100重量部に対して、0.01〜2.5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜1.5重量部、さらに好ましくは0.02〜1.0重量部、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部、最も好ましくは0.02〜0.3重量部である。上記配合量が0.01重量部未満では、十分な消泡性が得られない(気泡欠点による外観不良が生じやすくなる)場合があり、2.5重量部を超えると、被着体への汚染が発生し易くなる場合がある。
【0094】
本発明の粘着剤組成物の作製時に上記化合物(D)を配合する際には、溶媒を用いず化合物(D)のみを配合することが好ましいが、配合作業性を向上させる等の観点から、各種溶媒に化合物(D)を分散または溶解させたものを用いてもよい。上記溶媒としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。
【0095】
上記化合物(D)を粘着剤組成物中に配合することで、その消泡性により、気泡由来の欠点をなくすことが可能となる。
【0096】
上記化合物(D)は、ポリオキシエチレンブロックが分子の中央部に位置するブロック型の構造であり、分子の両端部に疎水基であるPOからなるブロックが存在する構造であるため、気−液界面に均一に並びにくく、消泡性に特に優れる。ポリオキシエチレンブロックを分子の両端部に有するPEG−PPG−PEGトリブロック共重合体、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのジブロック共重合体やEOとPOのランダム共重合体は、PPG−PEG−PPGトリブロック共重合体に比べて気−液界面に均一に並びやすいため、消泡性に劣る。
【0097】
さらに、上記化合物(D)は、疎水性が高いため、高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。親水性の高い化合物(特に水溶性の化合物)の場合には、高湿度環境下では、化合物が水分に溶けて被着体に転写しやすくなったり、被着体にブリードした化合物が膨潤して白化しやすくなったりするため、白化汚染を引き起こしやすい。
また、上記化合物(D)を用いることにより、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は加湿保存下でも白化(吸湿白化)しにくい。粘着シートを光学部材用の表面保護フィルムに用いる場合には、粘着剤層が白化(即ち、粘着シートが白化)すると光学部材の検査工程に支障が生じる場合がある。
【0098】
[再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート]
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物は、上述の通り、アクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、及び化合物(D)を必須の成分として含有している。さらに、必要に応じて、非水溶性架橋剤(B)以外の架橋剤(「その他の架橋剤」と称する場合がある)、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物は、水分散型の粘着剤組成物である。なお、「水分散型」とは、水性媒体に分散可能なことをいい、即ち、本発明の粘着剤組成物は水性媒体に分散可能な粘着剤組成物である。上記水性媒体は、水を必須成分とする媒体(分散媒)であり、水単独のほかに、水と水溶性有機溶剤との混合物であっても良い。なお、本発明の粘着剤組成物は上記水性媒体等を用いた分散液であってもよい。
【0100】
本発明の粘着剤組成物は、上記非水溶性架橋剤(B)以外の架橋剤(その他の架橋剤)を含有していてもよい。上記のその他の架橋剤としては、特に限定されないが、多官能性ヒドラジド系架橋剤が好ましい。多官能性ヒドラジド系架橋剤を用いることで、粘着剤組成物より形成される粘着剤層の再剥離性、接着性及び基材との投錨性を向上させることができる。多官能性ヒドラジド系架橋剤(単に「ヒドラジド系架橋剤」と称する場合がある)は、分子中(1分子中)にヒドラジド基を少なくとも2個有する化合物である。1分子中のヒドラジド基の個数は、2または3個が好ましく、より好ましくは2個である。このようなヒドラジド系架橋剤に用いられる化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタル酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジドなどのジヒドラジド化合物が好ましく挙げられる。中でも、特に好ましくは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。これらのヒドラジド系架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記ヒドラジド系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成工業(株)製「アジピン酸ジヒドラジド(試薬)」、和光純薬工業(株)製「アジポイルジヒドラジド(試薬)」等が使用できる。
【0102】
上記ヒドラジド系架橋剤の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられるケト基含有不飽和単量体のケト基1モルに対して、0.025〜2.5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜2モル、さらに好ましくは0.2〜1.5モルである。配合量が0.025モル未満では、架橋剤添加の効果が小さく、粘着剤層又は粘着シートが重剥離化するとともに、粘着剤層を形成するポリマーに低分子量成分が残存して、被着体の白化汚染が生じやすくなる場合がある。また2.5モルを超えると、未反応架橋剤成分が汚染の原因となる場合がある。
【0103】
本発明の粘着剤組成物には、低汚染性の観点から、第4級アンモニウム塩を添加しないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を添加しないことが好ましい。従って、本発明の粘着剤組成物は、第4級アンモニウム塩を実質的に含まないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を実質的に含まないことが好ましい。これらの化合物は、エポキシ系架橋剤の反応性を向上させるための触媒等として一般的に使用される。しかし、これらの化合物は、粘着剤層を形成する重合体中に組み込まれず粘着剤層中を自由に移動できるため、被着体表面に析出しやすく、粘着剤組成物中にこれらの化合物が含まれる場合には、白化汚染が引き起こされやすく、低汚染性が達成できない場合がある。具体的には、本発明の粘着剤組成物中の第4級アンモニウム塩の含有量は、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、0.1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。さらに、第4級アンモニウム化合物の含有量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0104】
なお、第4級アンモニウム塩は、特に限定されないが、具体的には、例えば、下記式で表される化合物である。
【0105】
【化3】

【0106】
上記式において、R9、R10、R11、R12は、水素原子を除き、アルキル基、アリール基又はそれらから誘導された基(例えば、置換基を有するアルキル基やアリール基等)を表す。また、X-は対イオンを表す。
【0107】
上記の第4級アンモニウム塩や第4級アンモニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化アルキルアンモニウムやその塩類、水酸化テトラフェニルアンモニウム等の水酸化アリールアンモニウムやその塩類、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジココイルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ジオレイルジメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、ベヘニルトリメチルアンモニウムイオン、ココイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレン(15)ココステアリルメチルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ココベンジルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、デシルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオンを陽イオンとする塩基やその塩類などが挙げられる。
【0108】
また、本発明の粘着剤組成物には、低汚染性の観点から、上記の第4級アンモニウム塩(又は第4級アンモニウム化合物)と同様に、エポキシ系架橋剤の反応性を向上させるための触媒等として一般的に使用される第3級アミン及びイミダゾール化合物を添加しないことが好ましい。従って、本発明の粘着剤組成物は第3級アミン及びイミダゾール化合物を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、本発明の粘着剤組成物中の、第3級アミン及びイミダゾール化合物の含有量(第3級アミン及びイミダゾール化合物の合計の含有量)は、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、0.1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。
【0109】
上記の第3級アミンは、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン及びα−メチルベンジル−ジメチルアミンなどの第三級アミン系化合物が挙げられる。上記のイミダゾール化合物は、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、4−ドデシルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−4−メチルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0110】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、疎水性シリカを実質的に含まないことが好ましい。具体的には、本発明の粘着剤組成物中の、疎水性シリカの含有量は、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、5×10-4重量%未満が好ましく、より好ましくは1×10-4重量%未満、さらに好ましくは1×10-5重量%未満、最も好ましくは0重量%である。粘着剤組成物中に疎水性シリカが含まれると、疎水性シリカが2次凝集物を形成し、シリカ粒子起点の欠陥(外観欠点)を生じてしまう問題がある。また、粘着剤組成物をフィルターなどで濾過する場合には、シリカ粒子がフィルターに詰まり、生産効率が低下する場合がある。
【0111】
なお、本発明の粘着剤組成物は、汚染性に影響を与えない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、老化防止剤、防腐剤などが挙げられる。
【0112】
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、及び化合物(D)を混合することにより作製できる。必要に応じて、他にも、その他の架橋剤、その他の各種添加剤を混合してもよい。上記混合方法は、公知慣用のエマルションの混合方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、攪拌機を用いた攪拌が好ましい。攪拌条件は、特に限定されないが、例えば、温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。攪拌時間は5〜30分が好ましく、より好ましくは10〜20分である。攪拌回転数は、10〜2000rpmが好ましく、より好ましくは30〜1000rpmである。
【0113】
上述のようにして得られた粘着剤組成物を基材(「支持体」又は「支持基材」ともいう)の少なくとも片面側の表面に塗布し、必要に応じて、乾燥させることにより粘着剤層を形成し、本発明の粘着シート(基材の少なくとも片面側に本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート)を得ることができる。架橋は、乾燥工程での脱水、乾燥後に粘着シートを加温すること等により行う。なお、本発明において粘着剤層は上記のように基材表面に粘着剤組成物を直接塗布するいわゆる直写法により設けられることが好ましい。本発明の粘着剤層は溶剤不溶分が高いため、剥離フィルム上に一旦粘着剤層を設けた後に基材上に転写する転写法では、基材との十分な投錨性(密着性)が得られない場合があるため、直写法の方が好ましく用いられる。ただし、本発明の粘着シートは、基材の少なくとも片面側に本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートであればよく、製造方法は特に限定されない。
【0114】
本発明の粘着シートにおける粘着剤層(架橋後)の厚みは、1〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜35μm、さらに好ましくは3〜25μmである。
【0115】
本発明の粘着シートにおける粘着剤層(架橋後)の溶剤不溶分(ゲル分率)は、90%(重量%)以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。溶剤不溶分が90重量%未満では、被着体への汚染物の転写が増加し白化汚染が生じたり、再剥離性が不足(重剥離化)する場合がある。
なお、上記粘着剤層(架橋後)の溶剤不溶分は、前述のアクリルエマルション系重合体(A)の溶剤不溶分の測定方法と同様の方法で測定することができる。具体的には、前述の「溶剤不溶分の測定方法」において、「アクリルエマルション系重合体(A)」を「粘着剤層(架橋後)」に読み替えた方法で測定することができる。
【0116】
本発明の粘着シートにおける粘着剤層(架橋後)の、引張試験(23℃、50%RHの環境下)における破断点伸度(破断点伸び)は、粘着剤層の架橋度の観点から、200%以下が好ましく、より好ましくは150%以下、さらに好ましくは130%以下、さらに好ましくは40〜120%、最も好ましくは60〜115%である。上記破断点伸度は粘着剤層の架橋度の目安であり、200%以下であれば、粘着剤層を形成するポリマーの架橋構造が密である。このため、粘着剤層形成後の粘着剤層のぬれ広がりを防ぐことが可能となる。また、粘着剤層を形成するポリマーが拘束されるため、粘着剤層中の官能基(カルボキシル基)が被着体面に偏析して、被着体との粘着力が経時で上昇することを防ぐことが可能となる。
【0117】
また、本発明の粘着シートにおける粘着剤層を形成するアクリルポリマー(架橋後)のガラス転移温度は、−70〜−10℃が好ましく、より好ましくは−70〜−20℃、さらに好ましくは−70〜−40℃、最も好ましくは−70〜−60℃である。ガラス転移温度が−10℃を超えると粘着力が不足して、加工時などに浮きや剥がれが生じる場合がある。また、−70℃未満ではより高速の剥離速度(引張速度)領域で重剥離化し、作業効率が低下するおそれがある。この粘着層を形成するアクリルポリマー(架橋後)のガラス転移温度は、例えば、アクリルエマルション系重合体(A)を調製する際のモノマー組成によっても調整できる。
【0118】
本発明の粘着シートの基材としては、高い透明性を有する粘着シートが得られる観点から、プラスチック基材(例えば、プラスチックフィルムやプラスチックシート)が好ましい。プラスチック基材の素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン(ポリオレフィン系樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル(ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリスチレン、アセテート、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロースなどの透明樹脂が用いられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記の中でも、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂が好ましく、さらに、PET、ポリプロピレンおよびポリエチレンが、生産性、成型性の面から好ましく用いられる。即ち、基材としては、ポリエステル系フィルムやポリオレフィン系フィルムが好ましく、さらに、PETフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムが好ましい。上記のポリプロピレンとしては、特に限定されないが、単独重合体であるホモタイプ、α−オレフィンランダム共重合体であるランダムタイプ、α−オレフィンブロック共重合体であるブロックタイプのものが挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニア低密度ポリエチレン(L−LDPE)が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。上記基材の厚みは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。
【0119】
また、上記基材の粘着剤層を設ける側の表面には、粘着剤層との密着力の向上等の目的で、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理が施されていることが好ましい。また、基材と粘着剤層の間に、中間層を設けてもよい。この中間層の厚さとしては、例えば0.05〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0120】
本発明の粘着シートは、引張速度0.3m/分における偏光板(トリアセチルセルロース(TAC)板)(表面の算術平均粗さRaが50nm以下のもの)に対する粘着力(180°剥離試験)(偏光板に貼付した粘着シートを剥離する際の剥離力)が、0.01〜5N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜3N/25mm、さらに好ましくは0.03〜2N/25mm、最も好ましくは0.04〜1N/25mmである。上記粘着力が5N/25mmを超えると、偏光板や液晶表示装置の製造工程で、粘着シートを剥離しにくく、生産性、取り扱い性が低下する場合がある。また、0.01N/25mm未満では、製造工程で粘着シートの浮きや剥がれが発生し、表面保護用の粘着シートとしての保護機能が低下する場合がある。なお、上記算術平均粗さRaは、例えば、ケーエルエー・テンコール(KLA Tencor)社製P−15(接触式の表面形状測定装置)を用いて測定することができる。表面粗さ(算術平均粗さRa)の測定条件は、特に限定されないが、例えば、測定長1000μm、走査速度50μm/秒、走査回数1回、荷重2mgで測定を行うことができる。
【0121】
本発明の粘着シートは、被着体の白化汚染抑止性に優れる。これは例えば以下のようにして評価できる。粘着シートを、偏光板(商品名「SEG1425DUHC」、日東電工(株)製)に、0.25MPa、0.3m/分の条件で貼り合わせ、80℃で4時間放置した後粘着シートを剥離する。該粘着シート剥離後の偏光板を、さらに23℃、90%RHの環境下で12時間放置した後に、表面を観察する。この際、偏光板表面に白化が見られないことが好ましい。粘着シートの貼付・剥離後に、加湿条件(高湿度条件)下、被着体である偏光板に白化が生じる場合には、光学部材の表面保護フィルム用途としては低汚染性が十分ではない。
【0122】
本発明の粘着シートは巻回体とすることができ、剥離フィルム(セパレータ)で粘着剤層を保護した状態でロール状に巻き取ることができる。また、粘着シートの背面(粘着剤層が設けられた側とは反対側の面)にはシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による、離型処理及び/又は防汚処理を施し、背面処理層(離型処理層、防汚処理層など)が設けられていてもよい。本発明の粘着シートとしては、中でも、粘着剤層/基材/背面処理層の形態が好ましい。
【0123】
さらに、本発明の粘着シートは、帯電防止処理されてなるものがより好ましい。上記の帯電防止処理としては、一般的な帯電防止処理方法を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、基材背面(粘着剤層とは反対側の面)に帯電防止層を設ける方法や、基材に練り込み型帯電防止剤を練り込む方法を用いることができる。
【0124】
帯電防止層を設ける方法としては、帯電防止剤又は帯電防止剤と樹脂成分を含有する帯電防止性樹脂、導電性物質と樹脂成分とを含有する導電性樹脂組成物や導電性ポリマーを塗布する方法や、導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法等が挙げられる。
【0125】
上記帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩などのカチオン性官能基(例えば、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等)を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、りん酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;更には、上記カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤で示すイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体が挙げられる。
【0126】
具体的には、上記カチオン型帯電防止剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン系共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などが挙げられる。上記アニオン型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン系共重合体などが挙げられる。上記両性イオン型帯電防止剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合体などが挙げられる。上記ノニオン型帯電防止剤としては、脂肪酸アルキロールアミド、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドから成る共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0127】
上記導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。
【0128】
上記導電性物質としては、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物などが挙げられる。
【0129】
上記樹脂成分としては、ポリエステル、アクリル、ポリビニル、ウレタン、メラミン、エポキシなどの汎用樹脂が用いられる。なお、帯電防止剤が高分子型帯電防止剤の場合には、帯電防止性樹脂には上記樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止性樹脂には、架橋剤としてメチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物を含有させることも可能である。
【0130】
上記帯電防止層の塗布による形成方法としては、上記帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂組成物を、有機溶剤もしくは水などの溶媒又は分散媒で希釈し、この塗液を基材に塗布、乾燥する方法が挙げられる。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらは単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することが可能である。塗布方法については公知の塗布方法が用いられ、具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、含浸およびカーテンコート法が挙げられる。
【0131】
上記の塗布により形成される帯電防止層(帯電防止性樹脂層、導電性ポリマー層、導電性樹脂組成物層)の厚みは、0.001〜5μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μmである。
【0132】
上記の導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などが挙げられる。
【0133】
上記の蒸着あるいはメッキにより形成される帯電防止層(導電性物質層)の厚みは、20〜10000Åが好ましく、より好ましくは50〜5000Åである。
【0134】
上記の練り込み型帯電防止剤としては、上記の帯電防止剤が適宜用いられる。上記練り込み型帯電防止剤の配合量は、基材の総重量(100重量%)に対して、20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%である。練り込み方法としては、上記練り込み型帯電防止剤が、例えばプラスチック基材に用いられる樹脂に均一に混合できる方法であれば特に限定されず、一般的には加熱ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練機等を用いた方法などが挙げられる。
【0135】
本発明の粘着剤組成物は、接着性と再剥離性(易剥離性)に優れ、再剥離が可能な粘着剤層を形成しうる粘着剤組成物であり、再剥離される用途に用いられる粘着剤層を形成するため(再剥離用)に用いられる。即ち、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する粘着シートは再剥離される用途[例えば、建築養生用マスキングテープ、自動車塗装用マスキングテープ、電子部品(リードフレーム、プリント基板等)用マスキングテープ、サンドブラスト用マスキングテープなどのマスキングテープ類、アルミサッシ用表面保護フィルム、光学プラスチック用表面保護フィルム、光学ガラス用表面保護フィルム、自動車保護用表面保護フィルム、金属板用表面保護フィルムなどの表面保護フィルム類、バックグラインドテープ、ペリクル固定用テープ、ダイシング用テープ、リードフレーム固定用テープ、クリーニングテープ、除塵用テープ、キャリアテープ、カバーテープなどの半導体・電子部品製造工程用粘着テープ類、電子機器や電子部品の梱包用テープ類、輸送時の仮止めテープ類、結束用テープ類、ラベル類]等に用いられる。
【0136】
さらに、本発明の粘着シートは、粘着剤層の「凹み」などの外観不良が低減されており外観特性に優れる。また、被着体に貼付され用いられる場合に、被着体に白化汚染などの汚染が生じず、低汚染性に優れる。このため、本発明の粘着シートは、特に優れた外観特性や低汚染性が要求される、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、フィールドエミッションディスプレイなどのパネルを構成する偏光板、位相差板、反射防止板、波長板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムなど光学部材(光学プラスチック、光学ガラス、光学フィルム等)の表面保護用途(光学部材用の表面保護フィルム等)として好ましく用いられる。ただし、用途はこれに限定されるものではなく、半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際の表面保護や破損防止、あるいは異物等の除去、マスキング等にも使用することができる。
【実施例】
【0137】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0138】
実施例1
(アクリルエマルション系重合体(A)の調製)
容器に、水90重量部、及び、表1に示すように、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)96重量部、アクリル酸(AA)4重量部、ノニオンアニオン系反応性乳化剤((株)ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」)3重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、上記で調製したモノマーエマルションのうち10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.05重量部を添加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加して、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液を調製した。
【0139】
(再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリルエマルション系重合体の水分散液に、アクリルエマルション系重合体(固形分)100重量部に対して、非水溶性架橋剤(B)としてエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッド−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]3重量部、アセチレンジオール系化合物(C)としてHLB値が4のアセチレンジオール系化合物(組成物)[エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール104H」、有効成分75重量%]1重量部(アセチレンジオール系化合物として0.75重量部)および化合物(D)として、商品名「アデカプルロニック25R−1」 [(株)ADEKA製] 1重量部を攪拌機を用いて、23℃、300rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0140】
(粘着剤層の形成、粘着シートの作製)
上記で得られた再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を、PETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名「T100C38」、厚さ:38μm)のコロナ処理面上に、テスター産業(株)製アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布(コーティング)し、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させ、シリコーンで表面処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)のシリコーン処理面と貼り合わせた後、50℃で3日間養生(エージング)して粘着シートを得た。
【0141】
実施例2、3、5〜8、比較例1〜6
実施例1と同様にして、表1に示す配合にて、再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、粘着シートを得た。
【0142】
実施例4
表1に示すように、原料モノマーの種類、配合量を変更し、実施例1と同様にして、モノマーエマルションを調製した。
上記モノマーエマルションを用いた以外は、実施例1と同様にして、再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0143】
[評価]
実施例および比較例で得られた粘着シート及び再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物について、下記の測定方法又は評価方法により評価を行った。なお、粘着剤層(架橋後)の溶剤不溶分は、前述の測定方法で測定した。
評価結果は、表1に示した。
【0144】
(1)低汚染性(白化汚染抑止性)[加湿試験]
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/分の条件で、偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DUHC」、70mm幅×120mm長さ)上に貼り合わせた。
上記粘着シートを貼り合わせた偏光板を、粘着シートを貼り合わせたまま、80℃で4時間放置した後、粘着シートを剥離した。その後、粘着シートを剥離した偏光板を加湿環境下(23℃、90%RH)で12時間放置し、偏光板表面を目視にて観察し、以下の基準で低汚染性を評価した。
低汚染性良好(○) : 粘着シートを貼付した部分と貼付していない部分で変化が見られない。
低汚染性不良(×) : 粘着シートを貼付した部分に白化が見られた。
【0145】
(2)粘着力上昇防止性
(初期粘着力)
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/分の条件で、偏光板(材質:トリアセチルセルロース(TAC)、表面の算術平均粗さRaがMD方向で約21nm、TD方向で約31nm、MD方向とTD方向の平均で約26nmである)に貼り合わせた。
上記の粘着シートと偏光板の貼り合わせサンプルを用い、23℃、50%RHの環境下、20分間放置後に、下記の条件に従い、180°剥離試験を行い、粘着シートの偏光板に対する粘着力(N/25mm)を測定し、「初期粘着力」とした。
(40℃1週間貼付保存後粘着力)
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/分の条件で、偏光板(材質:トリアセチルセルロース(TAC)、表面の算術平均粗さRaがMD方向で約21nm、TD方向で約31nm、MD方向とTD方向の平均で約26nmである)に貼り合わせた。
上記の粘着シートと偏光板の貼り合わせサンプルを用い、40℃の環境に1週間保存した後、23℃、50%RHの環境下に2時間放置後、下記の条件に従い、180°剥離試験を行い、粘着シートの偏光板に対する粘着力(N/25mm)を測定し、「40℃1週間貼付保存後粘着力」とした。
上記の180°剥離試験は、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、引張速度0.3m/分で行った。
初期粘着力と40℃1週間貼付保存後粘着力の差[(40℃1週間貼付保存後粘着力)−(初期粘着力)]が、0.10N/25mm以下であれば、粘着力上昇防止性が優れていると判断できる。
【0146】
(3)外観(凹み及び気泡の有無)
実施例および比較例で得られた粘着シートの、粘着剤層表面の状態を目視で観察した。縦10cm×横10cmの観察範囲内の欠点(凹み及び気泡)の個数を測定し、以下の基準で評価した。
欠点個数が0〜100個 : 外観が良好である(○)。
欠点個数が101個以上 : 外観が悪い(×)。
【0147】
(4)粘着剤層(架橋後)の破断点伸度(破断点の伸び)[引張試験]
実施例および比較例で得られた再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物を、表面をシリコーン処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)のシリコーン処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにコーティングして、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させて、50℃で3日間養生を行い、粘着剤層を得た。
次いで上記粘着剤層を丸めて、円柱状の粘着剤層サンプル(長さ50mm、断面積(底面積)1mm2)を作製した。
引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、測定を行った。測定の初期長(チャック間隔)が10mmとなるように、チャックを設定し、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い、破断点の伸び(破断点伸度)を測定した。
なお、破断点の伸び(破断点伸度)は、引張試験で、試験片(粘着剤層サンプル)が破断したときの伸びを表し、下記の式で計算される。
「破断点の伸び(破断点伸度)」(%) = (「破断時の試験片の長さ(破断時のチャック間隔)」−「初期長(10mm)」)÷「初期長(10mm)」×100
【0148】
(5)加湿保存下での粘着シートの白化
実施例および比較例で得られた粘着シートを、50℃、95%RHの環境に24時間放置(加湿保存)後、日本電色工業(株)製「デジタルヘイズメーター(DIGITAL HAZEMETER) NDH−20D」にてヘイズ値を測定した(「加湿保存後のヘイズ値」とした)。測定は、50℃、95%RHの環境からサンプルを取り出した後3分以内に行った。また、比較のため、加湿保存前のヘイズ値も測定した(「加湿保存前のヘイズ値」とした)。
【0149】
【表1】

【0150】
表1で用いた略号は以下のとおりである。表1において、再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物の各成分の配合量は、実配合量(商品の配合量)で示した。なお、アクリルエマルション系重合体(A)は固形分の重量で示した。
(原料モノマー)
2EHA : 2−エチルヘキシルアクリレート
MMA : メチルメタクリレート
AA : アクリル酸
(乳化剤)
SE−10N : (株)ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」(ノニオンアニオン系反応性乳化剤)
(架橋剤)
TETRAD−C : 三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C(テトラッド−C)」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4)
デナコールEX−512 : ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコール EX−512」(Polyglycerol Polyglycidyl Ether、エポキシ当量:168、官能基数:約4)
(アセチレンジオール系化合物)
サーフィノール104H : エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール104H」(HLB値4、有効成分75重量%)
サーフィノール104PG−50 : エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール104PG−50」(HLB値4、有効成分50重量%)
サーフィノール420 : エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール420」(HLB値4、有効成分100重量%)
サーフィノール440 : エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール440」(HLB値8、有効成分100重量%)
サーフィノール465 : エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール465」(HLB値13、有効成分100重量%)
(ポリエーテル化合物)
アデカプルロニック25R−1 : (株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック25R−1」(数平均分子量2800、EO含有率10重量%、有効成分100重量%)
アデカプルロニック17R−3 : (株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック17R−3」(数平均分子量2000、EO含有率30重量%、有効成分100重量%)
PPO−PEO−PPO : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)、数平均分子量2000、EO含有率50重量%、有効成分100重量%
POLYRan(EO−PO) : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、数平均分子量2500、EO含有率75重量%、有効成分100重量%
PEO−PPO−PEO : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)、数平均分子量1900、EO含有率50重量%、有効成分100重量%
(シリコーン型消泡剤)
SNデフォーマー1315 : サンノプコ(株)製、商品名「SNデフォーマー1315」(シリコーン型消泡剤)
【0151】
表1の結果から明らかなように、本発明の規定を満たす粘着剤組成物により粘着剤層を形成した粘着シート(実施例)は外観が良好で、貼付、剥離後の偏光板に高湿度環境下での白化汚染が生じない低汚染性に優れた粘着シートであった。また、貼付後の経時での粘着力上昇も小さかった。
一方、非水溶性架橋剤を用い、化合物(D)を用いない場合(比較例1〜5)には、シリコーン型消泡剤を用いた場合(比較例2)、化合物(D)以外のポリエーテル化合物を用いた場合(比較例4、5)も含め、いずれも外観が悪いものとなった。また、アセチレンジオール系化合物のHLB値が13以上の場合(比較例3)には、高湿度環境下で被着体に対する白化汚染が生じ、さらに加湿保存後に粘着シートの白化が生じた。さらに、非水溶性架橋剤を用いない場合(比較例6)には、貼り付け保存後粘着力が大きく、経時での粘着力上昇が大きくなった。また、高湿度環境下で被着体に対する白化汚染が生じた。
このように、本発明の規定を満たさない粘着剤組成物を用いた場合には、外観特性、低汚染性、粘着力上昇防止性の全てを満足することはできなかった。
さらに、本発明の規定を満たす粘着剤組成物により粘着剤層を形成した粘着シート(実施例)は、加湿保存後においても白化が抑制された優れた粘着シートであった

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマーとして構成され、原料モノマー全量中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が70〜99.5重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が0.5〜10重量%であるアクリルエマルション系重合体(A)、非水溶性架橋剤(B)、アセチレンジオール系化合物(C)、並びに、下記式(I)
aO−(PO)l−(EO)m−(PO)n−Rb (I)
(式中、Ra及びRbは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、水素原子を表す。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。l、m及びnは、それぞれ正の整数である。EOとPOの付加形態はブロック型である。)
で表される化合物(D)を含み、アセチレンジオール系化合物(C)のHLB値が13未満であることを特徴とする再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
アクリルエマルション系重合体(A)が、分子中にラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤を用いて重合された重合体である請求項1に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基1モルに対する、非水溶性架橋剤(B)のカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数が0.3〜1.3モルである請求項1または2に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
基材の少なくとも片面側に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層の溶剤不溶分が90重量%以上、破断点伸度が200%以下である請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
光学部材用の表面保護フィルムである請求項4または5に記載の粘着シート。

【公開番号】特開2012−219247(P2012−219247A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89554(P2011−89554)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】