説明

再封可能な処理チャンバを備えた試料処理装置

試料処理装置(10)における1つ以上の処理チャンバ(50)のボリュームを画定するのに用いる再封可能なフィルム(40)を含む装置が開示されている。再封可能なフィルムは、制御された穿孔を与え、穿孔部位を再封して、処理チャンバが周囲環境から実質的に分離されたままとする。本発明はまた、再封可能なフィルムを用いた試料処理装置の製造方法、および、再封可能なフィルムを通して処理チャンバへ、または処理チャンバから試料材料を移動する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝材料等を増幅するのに用いる方法のような、試料材料の処理のための装置、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる化学、生化学およびその他反応は、温度変化に対して感度がある。遺伝子増幅の領域における熱処理としては、これらに限られるものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サンガー塩基配列決定法等が例示される。こうした反応は、含まれる材料の温度に基づいて、促進または阻害される。試料を個別に処理して、試料毎に正確な結果を得ることも可能であるが、個別処理は時間も費用もかかる。
【0003】
様々な試料処理装置が、上述した反応を補助するために開発されている。かかる多くの装置に共通の問題は、例えば、反応前、反応中および反応後の反応の汚染を防ぐために、反応が生じるチャンバまたは壁を封止するのが望ましいということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの手法の多くに生じえる更に他の問題は、試料材料のボリュームが制限され、かつ/または試料材料に関連して用いる試薬のコストが制限および/または高価になる、ということである。その結果、ボリュームの小さな試料材料および関連の試薬を用いるのが望ましい。しかしながら、ボリュームの小さなこれらの材料を用いると、試料材料を例えば、熱サイクルさせると、試料材料および/または試薬のボリュームが蒸発等により失われることに関する更なる問題を生じる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、試料処理装置の1つ以上の処理チャンバを閉じるのに用いる再封可能なフィルムを含む装置を提供する。再封可能なフィルムは、制御された穿孔を与え、穿孔部位を再封して、処理チャンバが周囲環境から実質的に分離されたままとするのが好ましい。本発明はまた、再封可能な膜を通して処理チャンバに試料材料を分配し、膜を通して処理チャンバから材料を除去する方法も提供する。
【0006】
異なる処理を出発試料で連続して実施する接続された処理チャンバを含む実施形態においては、本発明は、最終生成物を得るのに多数の処理が必要であっても、出発試料から所望の最終生成物を得ることを必要とするのに統合された解決策を提供する。
【0007】
処理チャンバが充填チャンバ(出発試料を充填する)から多重化される他の実施形態において、単一出発試料から多数の最終試料を得ることが可能である。多重化処理チャンバが同じ最終試料を提供するために設計されている場合には、これらの多数の最終試料は同じであってもよい。あるいは、多数の最終試料は、単一の出発試料から得られる異なる試料であってもよい。
【0008】
本明細書で用いる「フィルムの破断点伸び」とは、ASTM規格D822により求められる破断時引張歪みのことを指す。
【0009】
本明細書で用いる「フィルム」とは、2つの主面を有する任意の形状の可撓性物品、例えば、シートや管のことを指す。任意で、フィルムは2枚以上の層を有している。フィルムの合計の厚さは、用いる材料および構造に応じて、約400マイクロメートル(0.016インチ)以下が好ましく、約250マイクロメートル(0.010インチ)以下がより好ましい。
【0010】
本明細書で用いる「フィルムの曲げ剛性」とは、フィルムの弾性率と慣性モーメントの積のことを指す。
【0011】
本明細書で用いる「負荷」とは、本体に適用された機械的な力のことを指す。
【0012】
本明細書で用いる「フィルムの弾性率」とは、フィルムを1歪単位変形するのに必要な力の量のことを指す。
【0013】
本明細書で用いる「フィルムの慣性モーメント」とは、フィルムの幾何剛性(すなわち、12で割った厚さの三乗)のことを指す。
【0014】
本明細書で用いる「穿孔性」とは、プローブの負荷をフィルムに加えたときの破断時変位のことを指す。
【0015】
本明細書で用いる「再封性」とは、穿孔部位を完全に閉じる点まで穿孔部位でフィルムの開口部のサイズを減じることのできるフィルムの能力のことを指す。再封性が望ましい本実施形態において、対象物を穿孔することによりフィルム中に作成される開口部は、開口部の周囲が穿孔対象物の周囲の50%未満となるように再封するのが好ましい。より好ましくは、開口部は穿孔対象物の周囲の20%未満まで減じる。
【0016】
本明細書で用いる「封止性」とは、フィルムを穿孔しながら、穿孔対象物周囲に封止を形成するフィルムの能力のことを指す。
【0017】
本明細書で用いる「フィルムの回復応力」とは、ASTM規格D822により求められる300%伸びでのフィルムの引張応力と、300%伸びまで伸張した後に元の長さまでフィルムが戻る応力の差のことを指す。
【0018】
本明細書で用いる「フィルムと穿孔対象物の間の表面摩擦」とは、ソリの法線力(重量)に比べた、穿孔対象物の材料からなるトラックについてそのフィルムでカバーされたソリを引っ張る接線力を表す線係数のことを指す。
【0019】
一態様において、本発明は、処理チャンバボリュームを有する少なくとも1つの処理チャンバを有する本体と、本体に取り付けられ、処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを有する再封可能なフィルムと、再封可能なフィルムの外側表面にある摩擦修正材料または再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料とを有し、組み込まれた摩擦修正材料が、再封可能なフィルムの外側表面に実質的に移動するため選択される試料処理装置を提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、処理チャンバボリュームを有する少なくとも1つの処理チャンバを有する本体と、本体に取り付けられ、処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを有する再封可能なフィルムと、再封可能なフィルムが第1の層を形成するプラスチック材料と第1の層に取り付けられた第2の層を形成するエラストマー材料を有する試料処理装置を提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、処理チャンバボリュームを備えた少なくとも1つの処理チャンバを有する本体を提供する工程と、処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを有する再封可能なフィルムを本体に取り付ける工程と、再封可能なフィルムの外側表面に摩擦修正材料を提供する工程とを有し、目的とするレベルの再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、再封可能なフィルムの曲げ剛性、再封可能なフィルムの回復応力、および再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法を提供する。
【0022】
他の態様において、本発明は、処理チャンバボリュームを備えた少なくとも1つの処理チャンバを有する本体を提供する工程と、処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを有する再封可能なフィルムを本体に取り付ける工程と、再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料を提供する工程とを有し、組み込まれた摩擦修正材料が、再封可能なフィルムの外側表面に実質的に移動するため選択して、目的とするレベルの再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、再封可能なフィルムの曲げ剛性、再封可能なフィルムの回復応力、および再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法を提供する。
【0023】
他の態様において、本発明は、処理チャンバボリュームを有する少なくとも1つの処理チャンバを備えた本体と、本体に取り付けられ、処理チャンバボリュームの一部を画定する内側表面と、処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを有する再封可能なフィルムとを有する試料処理装置を提供することにより試料材料を移動する方法を提供する。本方法は更に、再封可能なフィルムを、流体移動装置により穿孔して再封可能なフィルムに開口部を形成する工程と、処理チャンバボリューム内にその一部が配置された流体移動装置を再封可能なフィルムの開口部を通して挿入する工程と、流体移動装置を用いて処理チャンバへ、または処理チャンバから試料材料を移動する工程と、処理チャンバから流体移動装置を除去する工程とを有し、再封可能なフィルムが流体移動装置の除去後に開口部を再封する。
【0024】
本発明の装置、システムおよび方法のこれらおよびその他の特徴および利点を、本発明の例証の実施形態により以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、熱処理、例えば、PCR増幅、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自立シーケンス複製、酵素運動論、均一配位子結合アッセイ、および正確な熱制御および/または即時の熱変化を必要とするより複雑な生化学またはその他プロセスのような高感度化学処理といった熱処理を含む方法に用いることのできる装置を提供する。
【0026】
装置の例証の一実施形態を後述してあるが、本発明の原理による試料処理装置は、2000年6月28日出願の米国特許仮出願第60/214,508号明細書「熱処理装置および方法(THERMAL PROCESSING DEVICES AND METHODS)」、2000年6月28日出願の米国特許仮出願第60/214,642号明細書「試料処理装置、システムおよび方法(SAMPLE PROCESSING DEVICES, SYSTEMS AND METHODS)」、2000年10月2日出願の米国特許仮出願第60/237,072号明細書「試料処理装置、システムおよび方法(SAMPLE PROCESSING DEVICES, SYSTEMS AND METHODS)」および2001年4月18日出願の米国特許第60/284,637号明細書「改善された試料処理装置、システムおよび方法(ENHANCED SAMPLE PROCESSING DEVICES, SYSTEMS AND METHOD)」に記載された原理に従って製造される。その他の可能性のある装置構造は、例えば、2000年11月10日出願の米国特許出願第09/710,184号明細書「試料処理装置の遠心分離充填(CENTRIFUGAL FILLING OF SAMPLE PROCESSING DEVICES)」および2001年1月6日出願の米国特許出願第60/260,063号明細書「試料処理装置、システムおよび方法(SAMPLE PROCESSING DEVICES, SYSTEMS AND METHODS)」にある。更に他の構造は、国際公開第02/00347号パンフレット「改善された試料処理装置、システムおよび方法(ENHANCED SAMPLE PROCESSING DEVICES, SYSTEMS AND METHODS)」に記載されている。
【0027】
「上」および「下」のような相対的な位置の用語を本発明に関して用いているが、これらの用語は相対的な意味でのみ用いられるものと考えられる。例えば、本発明の装置に関して用いるときは、「上」および「下」は装置の対向する側部を表すのに用いられる。実際の使用においては、「上」または「下」と記載される構成要素は、任意の配向または位置にあり、方法、システムおよび装置を特定の配向または位置に限定しないものとする。例えば、装置の上部表面は実際には、使用中、装置の下部表面の下に配置される(ただし、下部表面から装置の逆側にあってもよい)。
【0028】
本発明の原理により製造された例証の装置を図1および2に示す。装置10は、図1に示された円形ディスクの形状にある。ただしその他の形状を用いることもできる。図示された装置10は、複数の処理チャンバ50を含み、それぞれ、試料および試料と共に処理されるその他材料を含有するボリュームを画定している。
【0029】
例証の装置10には、96の処理チャンバ50が含まれている。ただし、本発明により製造された装置に提供される処理チャンバの正確な数は、所望により96より多くしたり、少なくしたりしてよいものと考えられる。
【0030】
例証の装置10の処理チャンバ50は、チャンバの形態にあるが、本発明の装置の処理チャンバは、毛細管、通路、チャネル、溝またはその他任意の好適に画定されたボリュームの形態で提供されていてもよい。
【0031】
図示した装置は、材料を様々な処理チャンバに移動するのに遠心力および分配チャネルに頼っているが、本発明に関連した用いられる任意の試料処理装置は、分配チャネルまたはその他流体移動構造を含んでいてもいなくてもよいものと考えられる。逆に、本発明の試料処理装置は、材料が分配され、他の処理チャンバからは独立して除去される数多くの完全に分離された別個の処理チャンバを含んでいてもよい。例えば、本発明は、従来のマイクロタイタプレートおよび1つ以上の独立した別個の処理チャンバを含むその他試料処理装置を含んでいてもよい。
【0032】
図1および2の装置10は、基材20と、第1の層30と、再封可能なフィルム40とを含む多層複合体構造である。装置10の基材20と、第1の層30と、再封可能なフィルム40は、例えば、配置された構成要素が熱処理中に即時に加熱される際に、処理チャンバ50内で生じる膨張力に対する十分な強度で取り付けられたりボンドされるのが好ましい。コンポーネント間のボンドの耐性は、装置10を熱サイクル処理、例えば、PCR増幅に用いる場合には特に重要である。かかる熱サイクルに含まれる繰り返しの加熱および冷却は、装置10の側部間のボンドにより厳しい要求を強いるものである。コンポーネント間のより耐性のあるボンドにより生じるその他の可能性のある問題は、コンポーネントを製造するのに用いられる異なる材料の熱膨張係数の差である。
【0033】
図示した装置10の処理チャンバ50は、充填チャンバ62と共に、処理チャンバ50に試料を分配する分配システムを提供する分配チャネル60と流体連通している。充填チャンバ62を通して装置10に試料を導入することは、回転中心軸周囲で装置10を回転することにより行って、回転中に生成された遠心力により試料材料を外側に動かす。装置10を回転する前に、試料を充填チャンバ62に導入して、分配チャネル60を通して処理チャンバ50に分配することができる。処理チャンバ50および/または分配チャネル60は、空気を逃がすポートおよび/または試料材料を処理チャンバ50に分配するのを補助するその他特徴部分を含んでいてもよい。あるいは、試料材料は、真空または圧力を補助として処理チャンバ50に充填することができる。
【0034】
例証の装置10は、互いに分離された2つのサブチャンバ64を備えた充填チャンバ62を含んでいる。その結果、分配チャネル60を通して充填チャンバ62の各サブチャンバ64と流体連通している処理チャンバ50へと充填するために、異なる試料を各サブチャンバ64に導入することができる。充填チャンバ62は、1つのみのチャンバを含んでいてもよい、または任意の所望の数のサブチャネル64、例えば、2つ以上のサブチャンバ64を装置10に関して提供できるものと考えられる。
【0035】
図2は、1つの処理チャンバ50を含む装置10の一部の拡大部分断面図である。基材20には第1の主側面22と第2の主側面24がある。基材20を通して形成されたボイド26により、本実施形態の少なくとも一部において、各処理チャンバ50が形成される。例証のボイド26は、基材20の第1および第2の主面側22および24を通して形成されている。
【0036】
基材20は、ポリマーであるのが好ましいが、ガラス、ケイ素、水晶、セラミクス等のようなその他の材料でできていてもよい。更に、基材20は均質な一枚の一体型本体として図示されているが、この代わりに、例えば、同一または異なる材料の層の不均質な本体としてもよい。基材20が試料材料と直接接触する装置10については、基材20に用いる材料が試料材料と非反応性であるのが好ましい。多くの異なるバイオ分析用途の基材に用いることのできる好適なポリマー材料としては、これらに限られるものではないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン(例えば、イソタクチックポリプロピレン)、ポリエチレン、ポリエステル等が例示される。
【0037】
第1の層30は、例証の実施形態においては、基材20の片側にある。第1の層30は均質な一枚の一体型層として図示されているが、この代わりに、例えば、同一または異なる材料、例えば、ポリマー材料、金属層等の不均質な層、例えば、副層としてもよい。また、ある実施形態においては、処理チャンバ50は、処理チャンバ50のボリュームを画定するのに必要な第1の層30のない基材20に凹部として形成されていてもよい。
【0038】
処理チャンバ50のボリュームの残りを画定するために、再封可能なフィルム40が基材20の逆側にある。再封可能なフィルム40は均質な一枚の一体型層として図示されているが、この代わりに、例えば、同一または異なる材料、例えば、ポリマー材料等の不均質な層、例えば、副層としてもよい。再封可能なフィルム40は、処理チャンバ50のボリュームから離れて対向している外部表面42と、処理チャンバ50のボリュームに対向している内部表面44を含んでいる。
【0039】
処理チャンバ50のボリュームを画定する材料の少なくとも一部が、選択した波長の電磁エネルギーを透過するのが好ましい。図示した装置10において、本体20、第1の層30および/または再封可能なフィルム40は選択した波長の電磁エネルギーを透過してもよい。
【0040】
選択した波長は、例えば、処理チャンバ50の試料を加熱および/または識別するべく設計された電磁エネルギー、試料により放出される電磁エネルギー(例えば、蛍光)等、様々な因子により決めてよい。透過処理チャンバ50を提供することによって、チャンバ内の試料は、選択した電磁エネルギー(所望であれば)により識別でき、かつ/または試料から発散される選択した波長の電磁エネルギーを、好適な技術および機器により検出可能な処理チャンバ50から伝達することができる。例えば、電磁エネルギーは、自発的、または外部励起に応答して放出される。透過処理チャンバ50はまた、色の変化、または処理チャンバ50内の活性または変化のその他の表示器等、その他の検出技術を用いてモニターしてもよい。
【0041】
しかしながら、選択した波長の電磁エネルギーの処理チャンバへの透過を防ぐのが望ましい場合がある。例えば、紫外スペクトルの電磁エネルギーは、処理チャンバ内に配置された任意の試薬、試料材料等に悪影響を及ぼす恐れがあるため、処理チャンバへの透過は防ぐのが好ましい。
【0042】
同じく図2に図示されているのは、処理チャンバ50のボリューム内に配置された試料材料52である。試料材料は、少なくとも1種類の流体成分、好ましくは液体を含んでいる。更に、試料材料は生化学試料材料であってよい。
【0043】
図3は、流体移動装置70の再封可能なフィルム40を通した処理チャンバ50のボリュームへの挿入後の図2の処理チャンバの拡大部分断面図である。流体移動装置70は、流体を吸収かつ/または分配する、例えば、ピペット、ニードルまたはその他装置であってよい。更に、流体移動装置70は、再封可能なフィルム40自身を穿孔する十分な構造上の剛性を有しているのが好ましい。あるいは、流体移動装置70は、他の機器により既に穿孔された開口部を通して挿入されてもよい。流体移動装置70は、図示するような鋭先端72を有していてもよく、この先端は、再封可能なフィルム40および流体移動装置自身の特性に応じて鈍端であってもよい。
【0044】
図4は、処理チャンバ50のボリュームから流体移動装置70を除去した後の、図2および3の処理チャンバの拡大部分断面図である。図示した実施形態において、処理チャンバ50内の試料材料52の一部は、流体移動装置70を用いて除去されている(ただし、上述した通り、流体移動装置70はまた材料を処理チャンバ50に分配してもよい)。
【0045】
流体移動装置70が処理チャンバに出入りする開口部46は、流体移動装置70の除去に際して再封する再封可能なフィルム40に穿孔を有している。再封可能なフィルム40に用いる材料は、図4に図示した流体移動装置の除去に際して開口部46の再封性を示すが、再封可能なフィルム40はまた、流体移動装置70が層40を通して挿入されるときに封止性も示すのが好ましい。
【0046】
再封可能なフィルム40は、処理チャンバ50の少なくとも境界周囲の本体20に取り付けられて、試料材料52を封止する。任意の好適な技術または技術の組み合わせを用いて、再封可能なフィルム40を本体20に取り付けてよい。好適な取付け技術としては、これらに限られるものではないが、接着剤(例えば、感圧、ホットメルト、硬化性等)、熱溶接、超音波溶接、ヒート封止、化学溶接、クランピング、メカニカルファスナ等が例示される。
【0047】
再封可能なフィルム40は、ポリマーフィルム、国際公開第02/090091号パンフレット「制御された穿孔フィルム(CONTROLLED−PUNCTURE FILMS)」に記載された制御可能に穿孔でき、任意で封止および/または再封されるポリマーフィルムであるのが好ましい。一般的に、これらの特性は、フィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、およびフィルムと穿孔対象物間の摩擦の少なくとも1つにより決まる。
【0048】
再封可能なフィルム40における穿孔性の制御は、所望のレベルのフィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、およびフィルムと穿孔対象物、例えば、流体移動装置70の間の表面摩擦を与えるために、フィルム表面の修正により行うことができる。
【0049】
表面の修正は、数多くの方法により行うことができる。例えば、穿孔対象物による貫通の前および最中にフィルムの温度を変える、穿孔対象物による貫通の前にフィルムを任意で弛緩する、フィルム表面に修正材料を適用する、またはフィルムを含むバルク材料に修正材料を添加することによりフィルムのモジュラスを変更することができる。多層フィルムについては、修正にはまた、1枚以上の層の厚さを変更したり、穿孔対象物と最初に接触する表面層の特性を変更することも含まれる。
【0050】
その他の選択肢としては、穿孔対象物とフィルムの間の摩擦係数(以降COF)を修正して、フィルムの穿孔抵抗性を制御することである。穿孔対象物および可撓性フィルムは、通常、次のようにして相互作用する。すなわち、穿孔対象物がフィルムと接触すると、フィルムが穿孔対象物の動きの方向に変形する。これは、穿孔対象物先端附近のフィルムの局所伸張によりなされる。
【0051】
フィルムが伸張すると、フィルムの材料の弾性は、フィルム構造が、穿孔対象物に周応力(放射状に内側に圧縮)を及ぼすことを必要とする。この力は、穿孔対象物の側面に略法線に作用する。同時に、穿孔対象物を、下方かつフィルムの周応力により及ぶ力に垂直に駆動するのに関連した接線、または表面力がある。
【0052】
COFが高い(すなわち、穿孔対象物がフィルム表面に接合する)場合には、フィルムへと下方に穿孔対象物を駆動するのに関連した接線応力は、穿孔対象物に対してフィルムを保持するフィルムの周応力から法線の力に勝るほど大きくはない(すなわち、COFと法線力の積が接線力より大きい)。このように、穿孔対象物は、周りのフィルムを下方へ引っ張って、対象物により及ぶ力が、対象物と接触する全フィルム表面に分配される。
【0053】
穿孔対象物と接触しているフィルムは、機械的故障を生じるほど大きな応力を受けないため、対象物と接触しているフィルムが穿孔対象物の動きにより引っ張られるにつれて、穿孔対象物と接触していないフィルムの部分も引っ張られる。接触していないフィルムのこの変形によって、穿孔対象物の負荷を効率的に分配して、機械的故障は、変位の大きなところ、すなわち、大きなフィルム変形でしか生じない。
【0054】
逆に、COFが低い場合には、穿孔対象物からの接線力は、法線力に勝り、対象物はフィルム表面に対して滑る。これによって、穿孔対象物の負荷が、その先端で完全に集中して、対象物がフィルムを穿孔する(機械的破壊)まで、対象物の先端の下にあるフィルム材料の変形が大きくなる。このように、可撓性フィルムにおける穿孔は、COFを制御することにより容易に制御できる。
【0055】
更に、フィルムの慣性モーメントを変更することにより、フィルム中の穿孔を制御することができる。剛性フィルムは、可撓性フィルムよりも容易に穿孔される。説明した通り、穿孔対象物がフィルムと接触すると、穿孔対象物の直下にある領域は変形および伸張する。これによって、フィルムが内側に周応力を及ぼして、穿孔対象物と接触する(またはその周囲に馴染む)。
【0056】
しかしながら、穿孔対象物周囲で接触するこの能力は、対象物にフィルム自身が馴染む能力に応じて異なる。例えば、エラストマーコア層と比較的剛性の外側層の3層フィルムだと、フィルムが穿孔対象物の先端下で伸張されるにつれて、エラストマーコア層が、フィルムが周応力から回復する傾向により生成される力を及ぼして、フィルムを対象物と接触させる。コア層に比べて外側層が剛性でない場合には(フィルムの慣性モーメントが小さい、または弾性係数が低いために)、コア層材料が、フィルム全体を穿孔対象物と接触させる。しかしながら、外側層が厚い、または剛性の場合には、コア層はフィルム全体を穿孔対象物にあまり馴染ませることができない。フィルムが穿孔対象物に馴染む能力の程度はまた、穿孔抵抗性も制御する。フィルムが穿孔対象物表面に馴染まない場合には、対象物は、COFに関らず、先端の直下でその全負荷を集中させることができる。逆に、フィルムが穿孔対象物25表面に馴染むことができる場合には、COFが十分に高いと、穿孔は妨げられる。
【0057】
少なくとも2層のフィルムを、本発明において用いるときは、穿孔対象物と最初に接触しない層の回復応力を変更すると、穿孔性に影響する。この力が、穿孔対象物をフィルム表面と接触させるためである。低回復応力の材料の表面は、穿孔対象物とあまり接触しないため、穿孔がより容易になされる。
【0058】
あるフィルム構造の穿孔抵抗性は、フィルムの各層の破断点伸びが実質的に変化しなくてもフィルムの回復応力に影響を受ける。
【0059】
本発明のフィルムは、再封止フィルムとなるようなエラストマー層を含んでいるのが好ましい。穿孔抵抗性に関して上述した通り、エラストマーフィルムは高周応力、すなわち、円柱変形からの回復力(元の応力のかかっていない状態に戻ろうとするため)を及ぼす。この(穿孔対象物へ向かう)内側への力が再封を促す。変形に応答して再封または歪みを回復する回復力を生成する弾性の少ないフィルムの傾向が、エラストマーフィルムに比べて大幅に減じる。
【0060】
穿孔の容易さとフィルムが再封される能力の間には相関性があることが分かった。フィルムが容易に穿孔される場合には、フィルムの比較的小さな領域の周囲のみ(穿孔対象物の先端と接触している領域)が破断まで伸張される。穿孔対象物のサイズに応じて、それは、比較的小さな領域となり、得られる開口部も小さくなる。しかしながら、フィルムが穿孔抵抗性である場合には、フィルムが穿孔対象物に馴染む能力は増大して、穿孔対象物と接触しているフィルムの領域は、対象物の先端ばかりでなく、対象物の側面の少なくともある部分もカバーする。従って、破断応力のかかった領域の周囲は、対象物の側面と接触するフィルムの少なくとも一部分を含む。
【0061】
このように、高COFのフィルムについては、開口部(破断された周囲内の領域)は、比較的に大きく、フィルムは穿孔対象物のサイズおよび形状に応じて開口部を再封し難い。このように、フィルムの開口部の再封性は、フィルムの穿孔抵抗性と同時に(独立せずに)制御される。
【0062】
エラストマー層はまた、フィルムが穿孔対象物周囲を封止する能力にも寄与している。フィルムの弾性回復はまた、フィルムを穿孔対象物の形状に馴染ませる。この封止特性は、フィルムを穿孔しながら、周囲環境から処理チャンバを分離するのが望ましいときに有利である。例えば、封止性によって、汚染物質またはその他材料を穿孔部位に通過させることなくフィルムを穿孔することができる。
【0063】
一実施形態において、再封性は2枚の外側層と少なくとも1枚の内側層とのポリマー多層フィルムである。かかる多層フィルムの修正には、フィルムの外側層の少なくとも1枚を修正して、目的とするレベルのフィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、およびフィルムと穿孔対象物の間の摩擦のうち少なくとも1つを提供することが含まれる。例えば、外側層の厚さおよび/または剛性を変更して、フィルムの厚さまたは剛性を全体的に変化させることができる。あるいは、かかる多層フィルムの修正には、フィルムの内側層を修正して、目的とするレベルのフィルムの曲げ剛性およびフィルムの破断点伸びを得ることが含まれる。
【0064】
一般に、(AB)nA(nは1より大きい)構造のフィルムは、ABA構造の同じ厚さのフィルムより可撓性である。これは、例えば、A層が硬い剛性の材料で、B材料が軟性の撓む材料のときに生じる。フィルムを曲げると、一表面の材料が圧縮されて、逆の表面の材料が伸張する。フィルムの中間の材料は、大幅に圧縮されたり伸張されることはない。剛性材料が、フィルム表面またはその近傍にあり、軟性材料がフィルム中心近傍にある場合には、剛性材料がフィルムの中心近傍にあり、軟性材料が表面にある場合よりもフィルムの伸張にはより力が必要である。
【0065】
しかしながら、例えば、同じ厚さのABAフィルムと同じ相対量のAおよびBのABABABA構造のフィルムにおいては、軟性材料の一部は、曲げの間に伸張および圧縮が生じる表面から移動し、剛性材料の一部は、伸張および圧縮が最小のフィルムの中心に向かって移動する。剛性の材料をあまり伸張または圧縮する必要がないため、この構造によって、フィルムがより容易に曲がる。
【0066】
それでも、フィルムに(層に平行に)張力をかけて引っ張る場合には、同量のAおよびB材料が断面にあるため、フィルムの剛性は、ABAフィルムと同じでなければならない。
【0067】
本発明の一実施形態において、穿孔性、再封止性および任意で、ポリマーフィルムの穿孔部位の封止性の制御は、第1の層がプラスチック材料を含み、第2の層がエラストマー材料を含む少なくとも2枚の層を有するポリマーフィルムを作成することにより行われる。本実施形態において、第1の層および第2の層の材料の種類および量を選択して、特定のレベルのフィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、およびフィルムと穿孔対象物の間の摩擦を与える。
【0068】
他の実施形態において、穿孔性、封止性および任意でポリマーフィルムの穿孔部位の封止性の制御は、ポリマー材料および修正材料を選択し、ポリマー材料および修正材料を混合して溶融混合物を形成し、溶融混合物をフィルムに形成することにより行うことができ、ポリマーおよび修正材料0の種類および量を選択して、目的とするレベルのフィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、およびフィルムと穿孔対象物の間の摩擦のうち少なくとも1つを与える。
【0069】
ポリマーフィルム表面へ適用しようと、ポリマーフィルムと混合しようと、修正材料は、潤滑剤、接着剤またはその他モノマー、オリゴマーまたはポリマーのような、フィルムの曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、またはフィルムと穿孔対象物の間の摩擦のうち少なくとも1つを変更できる様々な材料とすることができる。穿孔性を向上する修正材料としては、シリコーン油および穿孔対象物に対して低COFを有する様々な熱可塑性材料を含む。
【0070】
例えば、穿孔対象物がポリプロピレンニードルの場合には、高密度ポリエチレンフィルムが適切な穿孔性フィルムである。穿孔抵抗性を向上する修正材料としては、例えば、粘着付与エラストマーまたは自己粘着性エラストマーのような比較的高COFとなるエラストマーが例示される。修正材料は、小さな直径の開口部が形成されるよう穿孔部位の再封性に寄与する特定の穿孔対象物に対して摺動する能力で選択する。より穿孔性のフィルムであればあるほど、穿孔対象物の力および効果が小さな領域に集中するため、より良好に再封できる。
【0071】
上述した通り、ポリマーフィルムは1層以上の層を含むことができる。例えば、ポリマーフィルムは、3層、すなわち、2枚の外側層と1枚のコア層を含むことができる。かかる3層構造においては、所望の程度の穿孔抵抗性および封止および再封能力は、フィルムコア層の特性またはフィルム外側層の少なくとも1枚の剛性を調整することにより影響を受ける。
【0072】
本発明に用いるのに好適なプラスチック材料としては、フィルム層へと形成可能で、弾性係数が108Paを超え、周囲温度で永久硬化(すなわち、永久変形)することなく20%を超える歪みを受けないものが挙げられる。好適なプラスチック材料としては、ポリエチレン(高密度、低密度および超低密度)、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリスチレンのような熱可塑材、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエステル、ビスフェノールAジシアネートエステル、オルトフタル不飽和ポリエステル、ビスフェノールAビニルエステルのような熱硬化材が例示される。
【0073】
本発明に用いるのに好適なエラストマー材料は、薄いフィルム層へと形成可能で、周囲条件でエラストマー特性を示すものであれば何れの材料とすることができる。エラストマーとは、伸張後、材料を元の形状に実質的に戻ることを意味する。更に、好ましくは、エラストマーは、変形および弛緩後にわずか永久硬化するだけで、硬化は、中程度の伸び、約400〜500%で、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満である。一般に、プラスチック外側層に比較的一定した永久変形を与える程度まで伸張することができれば何れのエラストマーも許容される。これは50%と低い伸びとすることができる。しかしながら、エラストマーは、室温で300〜1200%、最も好ましくは室温で600〜800%伸びることができるのが好ましい。エラストマーは、純粋なエラストマーおよびエラストマー相または室温で実質的にエラストマー特性を示す成分とのブレンドとすることができる。
【0074】
好適なエラストマー材料としては、当業者に知られたA−BまたはA−B−Aブロックコポリマーのようなエラストマーである天然または合成ゴムブロックコポリマーが例示される。かかるコポリマーは、例えば、米国特許第3,265,765号明細書、同第3,562,356号明細書、同第3,700,633号明細書、同第4,116,917号明細書および同第4,156,673号明細書に記載されている。有用なエラストマー組成物としては、例えば、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロック30コポリマー、エラストマーポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、エチレン/プロピレンモノマーコポリマーエラストマーまたはエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーエラストマーのようなエチレンコポリマーが挙げられる。これらのエラストマーの互いの、または非エラストマーとの変性によるブレンドもまた考えられる。例えば、ポリアルファメチルスチレンなどのポリビニルスチレン、ポリエステル、エポキシ、5ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンまたは特定のエチレン/酢酸ビニル、好ましくは高分子量のもの、またはクマロン−インデン樹脂のようなポリマーを50重量%まで、好ましくは30重量%未満硬化助剤として添加することができる。
【0075】
多層フィルムにおいて、プラスチック層は、外側または内側層(例えば、2枚のエラストマー層間に挟まれた)とすることができる。いずれの場合も、多層フィルムの弾性特性が修正される。
【0076】
穿孔後の多層フィルムの回復は、エラストマー層の性質、プラスチック層の性質、フィルムの伸張方法、およびエラストマーとプラスチック層の相対厚さのような数多くの因子に応じて異なる。パーセント回復(フィルムに負荷がかかっていない場合)とは、伸張長さから回復長さを引いて、その合計を元の長さで除算したものである。
【0077】
通常、プラスチック層は、打ち消す抵抗力により弾性力を妨げる。プラスチック外側層は、フィルム伸張後は内側エラストマー層により伸張せず(第2の伸張が第1より少ない場合には)、プラスチック外側層は剛性シートと共に広げられるだけである。これによって、コア層が強化され、エラストマーコア層の収縮に耐える、またはこれを妨げる。
【0078】
より穿孔性のフィルムを得るためには、穿孔対象物とフィルム表面の間の摩擦を減少させなければならない。様々な機構を用いて、対象物によりかかった負荷点での応力の集中がある場合には、この摩擦を減少させることができる。修正材料をフィルム表面に適用して、またはフィルム外側表面に異なる材料を選択して、穿孔対象物とフィルム表面の間の摩擦係数を減じる等が挙げられる。例えば、ポリプロピレン/スチレン−イソプレン合成ゴム/ポリプロピレン多層フィルムは、フィルム表面にシリコーン油をスプレーした場合、ポリプロピレン先端により更に穿孔性とすることができる。
【0079】
穿孔性は、フィルムを伸張することにより増大する。フィルムを30の伸張位置で保持すると、穿孔対象物に馴染み難くなるため、より穿孔性とすることができる。
【0080】
対照的に、エラストマーとプラスチック層の両方を含む多層フィルムを伸張および弛緩させると、フィルムの曲げ剛性を減少することにより穿孔性を減少させることができる。これは、プラスチック層の弾性限界を超えて多層フィルムを伸張することにより行うことができる。伸張と弛緩はまた、多層フィルムの摩擦係数および弾性係数も下げる。ある実施形態において、プラスチック層は、伸張したエラストマー層の制御された弛緩または回復、多層フィルムの弾性係数の修正および/または多層フィルムの形状の安定を行う機能を果たす。
【0081】
本発明は、修正された表面を備えた単一フィルムを含み、異なる程度の穿孔性、再封性および任意で特定の種類の穿孔性対象物、例えば、流体移動装置の形状に関して異なる程度の封止性を有するポリマーフィルムを提供する。一実施形態において、第1の主面に適用された対象物を穿孔することによりフィルムをある変位まで伸張すると、フィルムを穿孔することができるが、第2の対向する主面に適用された同じ穿孔対象物によりフィルムを同じ変位まで伸張すると、フィルムは穿孔できない。例えば、第1の主面に低COFと第2に高COFを有する2層フィルムは、第2の表面よりも第1の表面を通して対象物を穿孔することによりより容易に穿孔される。当然のことながら、穿孔対象物の先端の形状はまた、フィルムの穿孔性に影響する。
【0082】
本発明の単層フィルムは、押出し法または業界に公知のその他の好適な方法により作成してよい。
【0083】
本発明の多層フィルムは、層のコーティング、ラミネーション、共押出しまたは段階押出しのような簡便な層形成プロセスにより形成してよいが、共押出しが好ましい。共押出しは本質的に知られており、例えば、米国特許第3,557,265号明細書および第3,479,425号明細書に記載されている。層は、フィルムを形成しながら、様々な材料を接触させる専用フィードブロックまたは専用ダイを通して共押出しされるのが一般的である。
【0084】
共押出しは、多層フィードブロックまたはダイ、例えば、3層フィードブロック(ダイへの供給)またはテキサス州オレンジのクローレン30社(Cloeren 30 Co.,Orange,TX)製のような3層ダイにより実施してよい。好適なフィードブロックは、米国特許第4,152,387号明細書に記載されている。一般的に、異なる粘度で押出し機から流出する材料の流れは、別個に、フィードブロックに導入され集まってフィルムを形成する。好適なダイは、米国特許第6,203,742号明細書に記載されている。
【0085】
フィードブロックおよびダイは、ポリマーのフローおよび層の接着力を促進するために一般的に加熱される。ダイの温度は、用いるポリマーによって異なる。フィルムをコーティング、ラミネーション、連続押出し、共押出しまたはこれらの組み合わせにより作成しても、形成されたフィルムおよびその層は、フィルム全体に実質的に均一な厚さを有しているのが好ましい。
【0086】
本発明はまた、所望のレベルの穿孔性を得られるよう互いに調整可能な穿孔性の再封可能なフィルムおよび穿孔対象物(例えば、流体移動装置)のシステムも提供する。例えば、特定の流体移動装置を穿孔対象物として用いる場合には、フィルムの特性および特徴が、所望のレベルの穿孔し易さを与えるために穿孔対象物を補助できるようにする。流体移動装置は、特定の材料でできていてよく、特定の形状(その先端形状を含め)を有する等してよい。この情報により、フィルムの組成および構造を、フィルムの適切な曲げ剛性、フィルムの破断点伸び、フィルムの回復応力、所望のレベルのフィルムの穿孔し易さを与えるためのフィルムと穿孔対象物の間の摩擦を与えるようなものとすることができる。任意で、フィルムの封止性および再封性を同様にして調整することができる。
【0087】
逆に、組成、構造、曲げ剛性、破断点伸びおよび回復応力に基づいて、あるフィルムが穿孔される場合には、穿孔対象物は、組成(フィルムと穿孔対象物の間の摩擦に影響)およびその形状(その先端の形状を含め)に基づいて選択して、フィルムの所望のレベルの穿孔し易さ、再封性および任意で封止性を与えることができる。本発明の方法の特定の実施例および本発明の目的および利点を以下の実施例により更に説明するが、これらの実施例に挙げられた特定の材料および量、その他条件および詳細は本発明を不当に限定するものではない。
【0088】
試験方法
穿孔抵抗性試験
フィルム試料の穿孔抵抗性を、ASTM D3763−97aの2つの形態を用いて試験し、図5に示した装置110を用いて、穿孔対象物をフィルムへ駆動し、破壊または破断時曲げを測定した。形態Aでは、試験装置のクランプアセンブリ114の中心にある穴112の直径は25mmであり、穿孔対象物116は、10マイクロリットル(AL)ポリプロピレンプラスチックピペット(ドイツのエッペンドルフ(Eppendorf、Germany)より入手可能)を保持する固定具を備えた金属プランジャであった。
【0089】
ピペットは、外径が0.84mmの先端と、5mmの長さにわたってテーパを備え、約2mmの実質的に一定の直径のシャフトとを有している。形態Bでは、試験装置のクランプアセンブリ114の中心にある開口部112の直径は76mmであった。穿孔対象物116は、直径約12mmの半球先端を有する平滑な円柱金属プローブであった。プローブの速度は、508mm/分であった。破壊前のピーク負荷での撓み、すなわち変位量をインチで測定し、ミリメートルに換算した。記録された値はそれぞれ5回の試験の測定の平均である。
【0090】
動的摩擦係数試験
穿孔対象物と最初に接触するフィルム試料の表面の動的摩擦係数を、ASTMのセクション5.1に記載された通りにして、ASTMの図1の図cおよびソリにより、ASTM D1894−95を用いて求めた。摺動表面は、鋳造ポリプロピレンフィルムのシートであった(オハイオ州ボープレのシェルケミカル社(Shell Chemical Co.,Beaupre,Ohio)より7C12Nとして入手可能)。金属フィラメントワイヤを用いてソリを引っ張り、様々な重りをソリに配置して、試験している試料の面に法線で異なる力を得た。重力の加速度を乗算したソリの重量の質量として法線の力を計算した。各法線力について初期の過渡値後の定常状態の引張力を求め、法線力に対してプロットした。動的係数は、プロットされたデータの曲線の傾斜であった。
【0091】
開口部寸法測定
この測定を行うために、穿孔された開口部を50倍および200倍の対物レンズを用いてボッケラー(Boeckeler)VIA−170顕微鏡(アリゾナ州ツーソン(Tuscon,Arizona))で観察した。モリテックススコープマン(Moritex Scopeman)(型番MS803、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA))で寸法を測定し、データを面積測定値に換算した。記録された値はそれぞれ3回の試験の測定の平均である。
【実施例】
【0092】
実施例1
実施例1は、フィルムの動的摩擦係数が多層フィルムの穿孔抵抗性および再封性に与える影響を例証するものである。
【0093】
試料Aは、熱可塑性エラストマーコア層と高密度ポリエチレン(HDPE)外側層とを備えた3層フィルムであった。外側層は、熱可塑性HDPE A(ペトロテーン(PETROTHENE)LS3150−00として入手可能、破断点伸びパーセント300、テキサス州ヒューストンのエクイスターケミカルズ(Equistar Chemicals, Houston, Texas))でできていた。外側層材料を、単軸押出し機を備えた多数のゾーンを有する押出し機(直径19mm、L/Dが32/1、ニュージャージー州セダーグローブのキリオン社(Killion,Inc.,Cedar Grove,New Jersey)より入手可能)を通して搬送した。外側層材料押出し機を163℃〜216℃に増大するゾーン温度で操作した。外側材料を、216℃に設定された3層クローレン(Cloeren)フィードブロック(テキサス州オレンジのクローレン社(Cloeren Co.,Orange,TX)より入手可能))の「A」および「C」チャネルへギアポンプを通して搬送した。コア層は、熱可塑性エラストマー(クラトン(KRATON)D1107スチレン−イソプレンブロックコポリマーとして入手可能、回復応力(300%伸びで)2.07MPa(300psi)、オハイオ州ボープレのシェルケミカル社(Shell Chemical Co.,Beaupre,Ohio)製)からできており、単軸押出し機を備え多数のゾーンを有する押出し機(直径32mm、L/Dが24/1、キリオン社(Killion,Inc.)より入手可能)を通して搬送された。コア層材料押出し機を、188℃〜216℃に増大するゾーン温度で操作した。コア層材料を、クローレン(Cloeren)フィードブロックの「B」チャネルに通過させた。得られた多層フローストリームを、216℃の温度に設定した単一オリフィスフィルムダイ(幅254mm(10インチ)で、ウィスコンシン州チッペワフォール(Chippewa Falls,Wisconsin)のEDIより入手可能)を通して通過させた。得られた溶融フィルムを11℃の温度に設定したチルロール上にドロップ鋳造し、集めた。ラインスピードは12.2m/分であり、外側層およびコア層の個々のフローレートは各外側層の厚さが約3.1マイクロメートル(μm)、全体のフィルム厚さが約72μmとなるようなものとした。
【0094】
シリコーン油A(ミシガン州ミッドランドのダウコーニング(Dow Corning,Midland Michigan)よりDC−200PDMS油として入手可能)を3層フィルムの片側に適用した以外は、試料Aと同様にして試料Bを作成した。
【0095】
シリコーン油B(ニュージャージー州ピスカタウェイのレオメトリックサイエンティフィク(Rheometrics Scientific, Piscataway,New Jersey)より部品番号700−01015PDMS油として入手可能)を3層フィルムの片側に適用した以外は、試料Aと同様にして試料Cを作成した。
【0096】
厚さ約125μmの感圧接着剤(米国特許第5,804,610号明細書、実施例11に従って(IOA対AAの比を97:3ではなく98:2とした以外は)作成されたアクリレート系感圧接着剤(98/2イソオクチルアクリレート/アクリル酸))をラミネーションにより3層フィルムの片側に適用した以外は試料Aと同様にして試料Dを作成した。
【0097】
各試料の形態Aでの穿孔抵抗性、穿孔対象物と最初に接触する表面での動的摩擦係数および得られる開口部面積を測定した。結果を表1に示し、検討事項を表の後に続ける。
【0098】
【表1】

【0099】
表1のデータは、穿孔対象物と最初に接触するフィルム表面の摩擦特性が減少すると、破断時変位により測定された穿孔抵抗性が減少したということを示している。同様に、表面摩擦が増大すると、穿孔抵抗性は増大した。
【0100】
試料AおよびBについては、開口部の有効直径および穿孔対象物の軸も測定し、面積の比を計算した。開口部に入ったプラスチックピペットの最大直径に基づいて計算した穿孔対象物の有効面積は2.00mmであった。フィルムのギザのついた引裂き部の面積を等価面積を有する円へと換算した試料AおよびBの開口部の有効直径はそれぞれ約1.80mmと0.25mmであった。穿孔対象物の有効面積対試料AおよびBの得られた開口部の有効面積の比を計算したところ、それぞれ0.81と0.016であった。
【0101】
実施例2
実施例2は、フィルムの動的摩擦係数が単一層フィルムの穿孔抵抗性および再封性に与える影響を例証するものである。
【0102】
超低密度ポリエチレン(ミシガン州ミッドランドのダウコーニング(Dow Corning Company,Midland Michigan)よりエンゲージ(ENGAGE)8200として入手可能)を厚さ約75μmのフィルムへと押出すことにより試料Aを作成した。ポリマーを、実施例1で用いたフィードブロックのコア層スロットおよび単一オリフィスフィルムダイを通して単軸押出し機で搬送した。
【0103】
シリコーン油Aの層を単層フィルムの片側に適用した以外は、試料Aと同様にして試料Bを作成した。
【0104】
各試料の形態Aでの穿孔抵抗性および穿孔対象物と最初に接触する表面での動的摩擦係数を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
表2のデータは、穿孔対象物と最初に接触するフィルム表面の摩擦特性が減少すると、穿孔抵抗性が減少したということを示している。
【0107】
実施例3
実施例3は、フィルムの伸張および弛緩が、フィルムの穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0108】
3層フィルムを、機械方向と公差方向の両方に元の長さの500%まで一方向に伸張した以外は実施例1の試料Aと同様のやり方で試料Aを作成した。次に、約10分間定常状態に達するまでフィルムを回復させた。
【0109】
試料Aおよび実施例1の試料Aの形態Bでの穿孔抵抗性を測定した。結果を表3に示す。
【0110】
【表3】

【0111】
表3のデータは、穿孔前にフィルムを伸張および弛緩させると、穿孔抵抗性が増大したということを示している。
【0112】
実施例4
実施例4は、フィルムの伸張が、フィルムの穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0113】
実施例1の試料Aを試験試料ホルダに保持しながら、一方向に元の長さの300%まで更に伸張する(伸張中に穿孔した)ことにより、試料Aを作成した。
【0114】
試料の形態Aでの穿孔抵抗性を測定した。結果を実施例1の試料Aの結果と共に表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
表4のデータは、フィルムを伸張しながら穿孔すると、穿孔抵抗性が減少したということを示している。
【0117】
実施例5
実施例5は、異なる材料の2枚の層からなるフィルムのどちらの側を最初に穿孔対象物と接触させるかに応じて、穿孔抵抗性の小さい、または大きいフィルムを作成できるかを例証するものである。
【0118】
実施例1の試料Aの片側に異なる材料を更に適用することにより試料Aを作成した。シリコーン油Aを実施例1の試料Bと同様のやり方でフィルムの片側に適用し、接着剤を実施例1の試料Dと同様のやり方で2つの側に適用した。
【0119】
試料の形態Aでの穿孔抵抗性を測定した。結果を実施例1の試料Aの結果と共に表5に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
表5のデータは、貫通手段が、接着剤の側よりもシリコーン油の側と最初に接触すると、穿孔抵抗性が大幅に減じたということを示している。
【0122】
実施例6
実施例6は、異なる材料の2枚の層からなるフィルムのどちらの側を最初に穿孔対象物と接触させるかに応じて、穿孔抵抗性の小さい、または大きいフィルムを作成する他のやり方を例証するものである。
【0123】
側部2の外側層材料が、ダウケミカル(Dow Chemical)よりエンゲージ(ENGAGE)8200として入手可能なメタロセン触媒超低密度ポリエチレン(VLDPE)であった以外は実施例1の試料Aと同様のやり方で試料Aを作成した。VLDPEを、多数のゾーンを有する単軸押出し機(キリオン(Killion)型番KLB075)で搬送し、これをゾーン温度を160℃〜216℃まで増大させて操作した。材料を、3層フィードブロックのCチャネルに通過させた。ラインスピードは7.77m/分であり、全体の厚さを測定したところ91μmであった。
【0124】
試料の各側の形態Aでの穿孔抵抗性を測定した。結果を表6に示す。
【0125】
【表6】

【0126】
表6のデータは、どちらの外側層材料が最初に穿孔手段と接触するかに応じてこのフィルムも異なる穿孔抵抗性を有していたということを示している。
【0127】
実施例7
実施例7は、外側層厚さの穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0128】
コア層押出し機設定およびラインスピードは変更せずに、外側層押出し機のギアポンプ設定を調整して、表7に示す通り、各試料に異なる厚さの外側層を与えた以外は、実施例1の試料Aと同様にして試料A−Dを作成した。
【0129】
試料および実施例1の試料Aの形態Bでの穿孔抵抗性を測定した。結果を表7に示す。
【0130】
【表7】

【0131】
上の表のデータは、試験した構造の外側層の厚さが増大するにつれて、穿孔抵抗性が減少するということを示している。
【0132】
実施例8
実施例8は、合計のフィルム厚さの穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0133】
ラインスピード設定を調整して(両押出し機の設定は変更せずに)、表8に示す通り、各試料に異なる合計のフィルム厚さを与えた以外は、実施例7の試料Cと同様にして試料A−Cを作成した。
【0134】
試料の形態Bでの穿孔抵抗性を測定した。結果を実施例7の試料Cの結果と共に表8に示す。
【0135】
【表8】

【0136】
上の表のデータは、試験した構造の合計フィルム厚さが増大するにつれて、穿孔抵抗性が減少するということを示している。
【0137】
実施例9
実施例9は、それぞれ異なる破断点伸びを有する異なる外側層材料の3層構造の穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0138】
外側材料がHDPE B(ダウレックス(DOWLEX)IP60HDPE、破断点伸びパーセント225、ダウケミカル(Dow Chemical)製)であり、押出し機の上限温度が232℃に達し、ダイを232℃に設定した以外は実施例1の試料Aと同様にして試料Aを作成した。また、ラインスピードおよび押出し機フローレートを変更して、外側層の厚さがそれぞれ約10μmで、合計フィルム厚さは140μmとした。
【0139】
外側層材料がそれぞれHDPE A(実施例1に記載)およびHDPE C(エクイスター(Equistar)製アラトン(ALATHON)M5865HDPE、破断点伸びパーセント800)とした以外は、試料Bおよび試料Cを試料Aと同様にして作成した。
【0140】
試料の形態Bでの穿孔抵抗性を測定した。結果を表9に示す。
【0141】
【表9】

【0142】
上の表のデータは、外側層の破断点伸びが増大するにつれて、外側層の穿孔抵抗性が増大したということを示している。
【0143】
実施例10
実施例10は、外側層の厚さが、多層フィルムの穿孔抵抗性および再封性に与える影響を例証するものである。
【0144】
フィルムを軸直径が13.7mmの金属ロッドではなく、軸直径が2.0mmのプラスチックピペットで穿孔した以外は、試料A、BおよびCは実施例7の試料A、BおよびCと同じであった。
【0145】
試料の形態Aでの穿孔抵抗性および開口部の得られた面積を測定した。結果を表10に示す。
【0146】
【表10】

【0147】
表10に示す通り、開口部面積対穿孔対象物面積の比は、フィルムの穿孔抵抗性が減じるに従って減少した。
【0148】
実施例11
実施例11は、異なる回復応力を備えた異なるコア材料の外側層/コア層/外側層構造の穿孔抵抗性に与える影響を例証するものである。
【0149】
コア材料がシェルケミカルカンパニー(Shell Chemical Company)より入手可能な回復応力が1.45MPa(210psi)のクラトン(KRATON)D1112Pであった以外は実施例9の試料Bと同様にして試料Aを作成した。
【0150】
試料の穿孔抵抗性について測定した。結果を実施例9の試料Bの結果と共に表11に示す。
【0151】
【表11】

【0152】
上の表のデータは、コア材料の回復応力が減少するにつれて、フィルムの穿孔抵抗性が減少するということを示している。実施例9−Bおよび11Aのコア層材料の破断点伸びは、それぞれ1300%および1400%で実質的に同じであった。
【0153】
上記の説明は例証のためであり、限定のためではないものと考えられる。本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および目的から逸脱することなしに上述の説明から当業者には明白であり、本発明はここに規定した説明のための実施形態に不当に限定されないものと理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明による一装置の上部平面図である。
【図2】図1の処理チャンバの拡大部分断面図である。
【図3】再封可能なフィルムを通して処理チャンバに挿入された流体移動装置を備えた処理チャンバの拡大部分断面図である。
【図4】処理チャンバから流体移動装置を除去した後の処理チャンバの拡大部分断面図である。
【図5】穿孔対象物をフィルムへと駆動し、フィルム破壊または破断時の曲げを測定するのに用いる装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムと、
前記再封可能なフィルムの前記外側表面にある摩擦修正材料または前記再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料とを含み、前記組み込まれた摩擦修正材料が、前記再封可能なフィルムの前記外側表面に実質的に移動するため選択される試料処理装置。
【請求項2】
前記摩擦修正材料が潤滑剤を含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記摩擦修正材料がシリコーンを含む請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記摩擦修正材料が接着剤を含む請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記再封可能なフィルムが2枚の外側層と、前記2枚の外側層間にコア層を形成する少なくとも1枚の内側層とを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コア層がエラストマー材料を含み、少なくとも1枚の前記外側層がプラスチック材料を含む請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記コア層がエラストマー材料を含み、前記2枚の前記外側層がプラスチック材料を含む請求項5記載の装置。
【請求項8】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムとを含み、前記再封可能なフィルムが第1の層を形成するプラスチック材料と前記第1の層に取り付けられた第2の層を形成するエラストマー材料を含む試料処理装置。
【請求項9】
前記再封可能なフィルムがプラスチック材料でできた第3の層を含み、前記第2の層が前記第1の層と第3の層の間に配置されたコア層を含む請求項8記載の装置。
【請求項10】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体を提供する工程と、
前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムを前記本体に取り付ける工程と、
前記再封可能なフィルムの外側表面に摩擦修正材料を提供する工程とを含み、目的とするレベルの前記再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、前記再封可能なフィルムの曲げ剛性、前記再封可能なフィルムの回復応力、および前記再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法。
【請求項11】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体を提供する工程と、
前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムを前記本体に取り付ける工程と、
前記再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料を提供する工程とを含み、前記組み込まれた摩擦修正材料が、前記再封可能なフィルムの前記外側表面に実質的に移動するため選択して、目的とするレベルの前記再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、前記再封可能なフィルムの曲げ剛性、前記再封可能なフィルムの回復応力、および前記再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法。
【請求項12】
前記摩擦修正材料が潤滑剤を含む請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記摩擦修正材料がシリコーンを含む請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記摩擦修正材料が接着剤を含む請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記再封可能なフィルムが2枚の外側層と、前記2枚の外側層間にコア層を形成する少なくとも1枚の内側層とを含む請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コア層がエラストマー材料を含み、少なくとも1枚の前記外側層がプラスチック材料を含む請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記コア層がエラストマー材料を含み、前記2枚の外側層がプラスチック材料を含む請求項14記載の方法。
【請求項18】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムと
を含む試料処理装置を提供する工程と、
前記再封可能なフィルムを、流体移動装置により穿孔して前記再封可能なフィルムに開口部を形成する工程と、
前記処理チャンバボリューム内にその一部が配置された前記流体移動装置を前記再封可能なフィルムの前記開口部を通して挿入する工程と、
前記流体移動装置を用いて前記処理チャンバへ、または前記処理チャンバから試料材料を移動する工程と、
前記処理チャンバから前記流体移動装置を除去する工程とを含み、前記再封可能なフィルムが前記流体移動装置の除去後に前記開口部を再封する試料材料の移動方法。
【請求項19】
前記開口部が、前記流体移動装置の周囲の20%未満の周囲を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記流体移動装置がピペット先端を含む請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記流体移動装置がニードルを含む請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記試料材料が生化学試料材料を含む請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記再封可能なフィルムが、前記再封可能なフィルムの前記外側表面にある摩擦修正材料または前記再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料とを含み、前記組み込まれた摩擦修正材料が、前記再封可能なフィルムの前記外側表面に実質的に移動するため選択される請求項18〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記摩擦修正材料が潤滑剤を含む請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記摩擦修正材料がシリコーンを含む請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記摩擦修正材料が接着剤を含む請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記再封可能なフィルムが2枚の外側層と、前記2枚の外側層間にコア層を形成する少なくとも1枚の内側層とを含む請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コア層がエラストマー材料を含み、少なくとも1枚の前記外側層がプラスチック材料を含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記コア層がエラストマー材料を含み、前記2枚の外側層がプラスチック材料を含む請求項27記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムと、
前記再封可能なフィルムの前記外側表面にある摩擦修正材料または前記再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料とを含み、前記組み込まれた摩擦修正材料が、前記再封可能なフィルムの前記外側表面に実質的に移動するため選択される試料処理装置。
【請求項2】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムとを含み、前記再封可能なフィルムが第1の層を形成するプラスチック材料と前記第1の層に取り付けられた第2の層を形成するエラストマー材料を含む試料処理装置。
【請求項3】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体を提供する工程と、
前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムを前記本体に取り付ける工程と、
前記再封可能なフィルムの外側表面に摩擦修正材料を提供する工程とを含み、目的とするレベルの前記再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、前記再封可能なフィルムの曲げ剛性、前記再封可能なフィルムの回復応力、および前記再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法。
【請求項4】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体を提供する工程と、
前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムを前記本体に取り付ける工程と、
前記再封可能なフィルムに組み込まれた摩擦修正材料を提供する工程とを含み、前記組み込まれた摩擦修正材料が、前記再封可能なフィルムの前記外側表面に実質的に移動するため選択して、目的とするレベルの前記再封可能なフィルムと穿孔対象物の間の摩擦、前記再封可能なフィルムの曲げ剛性、前記再封可能なフィルムの回復応力、および前記再封可能なフィルムの破断点伸びのうち少なくとも1つを提供する試料処理装置の製造方法。
【請求項5】
処理チャンバボリュームを含む少なくとも1つの処理チャンバを含む本体と、
前記本体に取り付けられ、前記処理チャンバボリュームの一部を画定する内部表面と前記処理チャンバボリュームから離れた対向する外側表面とを含む再封可能なフィルムと
を含む試料処理装置を提供する工程と、
前記再封可能なフィルムを、流体移動装置により穿孔して前記再封可能なフィルムに開口部を形成する工程と、
前記処理チャンバボリューム内にその一部が配置された前記流体移動装置を前記再封可能なフィルムの前記開口部を通して挿入する工程と、
前記流体移動装置を用いて前記処理チャンバへ、または前記処理チャンバから試料材料を移動する工程と、
前記処理チャンバから前記流体移動装置を除去する工程とを含み、前記再封可能なフィルムが前記流体移動装置の除去後に前記開口部を再封する試料材料の移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510384(P2006−510384A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563142(P2004−563142)
【出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2002/040970
【国際公開番号】WO2004/058405
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】